説明

吸収性生物適合性材料

向上した治療因子の送達のための生物適合性キャリア材料が、本明細書中に記載されている。実施形態は、医療デバイスの表面の少なくとも一部分上に生分解性層を形成することによる、医療デバイスの表面上へ生分解性コーティングを作製するための材料および方法を包含し、この層は、コポリマー、および患者へのこのデバイスの埋め込み後に患者の中に放出可能な治療因子を含んでおり、このコポリマーは、約14〜約5,000の分子量を有する疎水性炭化水素側鎖を有するように誘導体化されたポリアミノ酸である。1つの実施形態は、疎水性側鎖を含むように修飾されている少なくとも1つのアミノ酸を含むポリペプチドである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願に対する相互参照)
本出願は、2004年5月25日に出願された米国仮特許出願第60/574,250号の利益を主張し、この出願は、本明細書中で参考として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明の分野は一般に、治療因子の送達のための生物吸収性生物適合性コーティングに関しており、疎水性側鎖で修飾されたポリペプチドを用いて作製されたコーティングを包含し得る。
【背景技術】
【0003】
(背景)
いくつかの医療デバイスは、患者へのこのデバイスの導入後、治療因子を放出する。例えば血管ステントは、脈管構造中への配置後、治療因子を放出し得る。この治療因子は、吸収性および/または分解性でない、ビヒクルとも呼ばれるキャリア材料中に配置されてもよい。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
(発明の要旨)
治療因子の向上した送達のための生物適合性キャリア材料が、本明細書中に記載されている。1つの実施形態は、疎水性側鎖を含むように修飾されている少なくとも1つのアミノ酸を含む分解性材料である。アミノ酸および疎水性側鎖の数および型は、この材料の特性を調節するように修飾されてもよい。そして親水性基もまた、この材料の特性を調節するためのさらなる手段として導入されてもよい。
【0005】
いくつかの実施形態は、医療デバイスの表面の少なくとも一部分上に(必要に応じて生分解性の)層を形成する工程によって、例えば、医療デバイスの表面上のコーティングおよびその表面上にコーティングを作製する方法に関し、この層は、コポリマー、および患者へのこのデバイスの埋め込み後に患者の中に放出可能な治療因子を含み、このコポリマーは、第一モノマー単位および第二モノマー単位を含み、第一モノマー単位がアミノ酸を含み、第二モノマー単位が、約14〜約5,000の分子量を有する疎水性炭化水素側鎖を有するように誘導体化されたアミノ酸を含む。
【0006】
ほかの実施形態は、コーティング、および医療デバイスを用いた治療因子の送達方法に関し、この方法は、治療因子および水溶性ポリアミノ酸を含んでいる層を、この医療デバイスの表面の少なくとも一部分へ適用する工程、およびこれらのポリアミノ酸を互いに架橋して、この層を安定させる工程を包含し、この治療因子は、この医療デバイスが患者に埋め込まれたときに放出可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
疎水性部分を有するように修飾された側鎖を有するアミノ酸を含む材料は、薬物を送達するための医療デバイス上のコーティングとして用いられてもよく、これらの材料は、キャリア材料と呼ばれることが特定の実施形態において、ポリアミノ酸は、有機溶媒中のポリアミノ酸の溶解性を変更するために疎水性基で装飾されている。誘導体化ポリアミノ酸の疎水性の程度は、溶媒との適合性、およびこのポリアミノ酸に関連した薬物の放出率に影響を与えるように制御されてもよい。さらに、溶解性および放出プロフィールをさらに制御するために、これらのポリアミノ酸中に親水性基が導入されてもよい。この材料の利点は、この材料が放出する治療因子の特徴に適合するように、その特性を調整することができるということである。例えば、ポリアミノ酸は、特定の治療因子に対して所望される溶媒中に、このポリアミノ酸を可溶化するために、必要に応じて、疎水性基で装飾されてもよい。ついでこのポリアミノ酸および因子のどちらも、医療デバイスの表面上に1つの層として沈着され得る組成物を形成するために、同じ溶媒中に可溶化されてもよい。
【0008】
医療デバイス、例えばステント、カテーテル、ガイドワイヤ、血管グラフト、創傷閉鎖デバイスなどが、多くの臨床手順において絶えず用いられている。これらのデバイスの性能は、患者の内部の部位特異的領域への、治療因子、診断因子、またはほかの因子の送達によって向上させることができる。そして分解性および生物適合性ビヒクルからの送達を提供することが望ましい。
【0009】
これらのキャリア材料は、生物適合性、および/または分解性、および/または吸収性、および/または除去性であってもよい。分解性とは、より小さい断片に分解するプロセスのことを言う。加水分解的分解は、水への暴露によって容易にされる分解プロセスである。生物活性的分解は、細胞または細胞生成物によって仲介される分解のプロセスであり、プロテアーゼ、酵素、およびマクロファージによる遊離基攻撃の作用を包含する。吸収性とは、身体の生物学的プロセスによって利用されるか、再循環されるか、または完全に破壊され得る成分に分解する材料を示すために、本明細書において用いられている用語である。例えばアミノ酸、ポリペプチド、および脂肪酸は、体内へのこれらの導入後に吸収されると考えられ、代謝プロセスの中に直接統合されてもよく、または例えばリソソーム中で破壊されてもよい。除去性材料は、例えば尿または汗を介して、体内から除去される材料である。
【0010】
現在、宿主と非吸収性送達ビヒクルとの間の長期間毒性反応の可能性がある場合、非吸収性かつ非分解性ビヒクルを利用するステントからの薬物送達の有意な商業的利益が存在する。これらの問題に対処するために、生物適合性かつ生物吸収性であるポリペプチド誘導体を含む実施形態が、本明細書中に記載される。これらの調製、特徴付け、および使用法も記載される。
【0011】
アミノ酸とは、遊離アミノ酸のみならず、互いに、または連結基と反応したアミノ酸のことも言うために、本明細書において用いられている用語である。より大きい分子を形成するために反応される場合、このアミノ酸のアミン末端基、およびカルボン酸末端基は、より大きい構造中で認識することができ、したがってこのアミノ酸の存在を同定することができる。アミノ酸は、天然または合成のアミノ酸であってもよい。天然とは、自然の中に見出されるアミノ酸のことであり、一方、合成とは、自然の中に見出されないアミノ酸のことを言う。アミノ酸は、D型またはL型、および誘導体化された主鎖を有するアミノ酸を包含する。特定の実施形態は、誘導体化されたアミノ酸に関し、これは、基、すなわちアミノ酸のN−末端、C−末端、側鎖、または3つすべてを付加するか、または置換することによって得ることができる化学構造を意味する。いくつかの場合、1つの分子は、装飾されていると言われ、これは、1つの基が、通常は少なくとも1つのほかの基の置換によって、1つの分子へ付加されたことを意味する。
【0012】
アミノ酸は、天然アミノ酸に由来する部分、例えばアラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、およびバリンであってもよい。天然アミノ酸は、一般式HNCH[R]−C(=O)−OH(式1)を有し、ここで、Rは、アミノ酸側鎖であり、例えばリシンについては、Rは−(CH−NH(Rと呼ばれる)であり、グルタメートの場合、Rは、−(CH−C(=O)−OH(Rと呼ばれる)である。アラニンの場合、Rは、−(CH)(Rと呼ばれる)である。従って、−[HN−CH[R]−C(=O)]は、nが反復単位の数であるポリリシンについての式である。記載されているように、ポリリシンは、ホモアミノ酸配列であり、このことは、これがすべて同じ型のアミノ酸を有することを意味する。ヘテロアミノ酸配列は、少なくとも2つの型のアミノ酸、例えば−[HN−CH[R]−C(=O)]−[HN−CH[R]−C(=O)]−[HN−CH[R]−C(=O)]−(式2)を含み、n、m、およびqは、反復単位の数を示している。天然アミノ酸についてのRの式は、周知である。Rへ結合したCは、α炭素と呼ばれる。
【0013】
ポリアミノ酸は、HN−{CH[R]−L}−COOH(式3)の式を有してもよく、ここで、Rは側鎖基であり、Lは、α炭素間の連結基である。Lの構造は、これらのα炭素間の連結を形成するために反応するアミノ酸のα炭素上の基に依存する。天然アミノ酸の場合、カルボキシル基とアミノ基とが反応してアミド結合を形成し、したがってLは、C(=O)−NHである。ほかの連結基は、別の主鎖を有するポリペプチドに適用可能である。あるいはまた、ポリアミノ酸は、例えばアミノ酸のN−末端が、別のアミノ酸の側鎖のカルボン酸と反応して結合を形成する、アミノ酸γ炭素を介して形成されたγポリアミノ酸であってもよい。γポリアミノ酸は、γ炭素を介して連結された、その中のアミノ酸のいくつかまたはすべてを有してもよい。
【0014】
ポリペプチド(ポリアミノ酸と相互変換可能に用いられる用語)のN−末端およびC−末端は、当業者に公知の化学を用いて、ポリペプチドが、Yn−{CH[R]−L}−Yc(YおよびYは独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシル基、チオール基、カルボキシル基、アミノ基、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、またはアルキニル基であるように選択される)として表わされるように修飾されてもよい。あるいは、Yおよび/またはYは、下の式4に関連して示されているように、Xであるように選択されてもよい。
【0015】
1つの実施形態は、A−Z−Tの式(式4)を有する化学物質を含む材料であり、ここで、Aは、ZおよびTで誘導体化された天然または合成のアミノ酸であり;Zは、結合であるか、または示されている基AとTとを、1または複数の共有結合によって連結する連結基であり、脂肪族基および少なくとも1つのヘテロ原子、例えばP、O、S、およびNを含んでいてもよく、この脂肪族基は、例えばアルカン、アルケン、アルキン、またはこれらの組合わせであってもよく、この連結基Zは、例えば約1個と約100個との間の原子を含んでいてもよく;Tは、Hまたは−(CH−X基の式を有し、ここで、Xは、H、ハロゲン、ヒドロキシル基、チオール基、カルボキシル基、アミノ基、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、またはアルキニル基であり、−(CHは、nが1と約100との間の整数である基であり、これらのメチレン基の1またはそれ以上は、必要に応じてO、S、N、C、C=O、NR基、CR基、CR基、またはSiRによって置換されており、ここで、R、R、R、R、R、およびRは、各々独立して、結合、pi結合、H、ヒドロキシル基、チオール基、カルボキシル基、カルバメート基、オキソカーボン基、アミノ基、アミド(amido)基、アミド(amide)基、ホスフェート基、スルホネート基、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルキニル基、シロキサン、または官能基である。
【0016】
1つの実施形態において、Tは、nが約2と約100との間である疎水性脂肪族基を含み、脂肪族基および少なくとも1つのヘテロ原子、例えばP、O、S、およびNを含んでいてもよい。この脂肪族基は、例えばアルカン、アルケン、アルキン、またはこれらの組合わせであってもよい。この脂肪族鎖はさらに、少なくとも1つの、または約1と約50との間の疎水性脂肪族基を有してもよく、当業者は、1〜50の明確に表現された範囲内のすべての値および範囲が企図されていることを、直ちに理解するであろう。ZおよびTはしたがって、アミノ酸のあらゆる側鎖であるように選択されてもよいことが注目される。さらに、Zは結合であるように選択されてもよく、そしてTは、CH基が主鎖上に形成されるように、Hであるように選択されてもよいことが注目される。
【0017】
1つの実施形態は、
【0018】
【化3】

式5の式を有する化学物質を含んでいる材料であるか、または
【0019】
【化4】

式6の式を有する化学物質を含んでいる材料であり、
ここで、
pは、ポリマーのモノマー単位を示す整数であり;
nは、約1と約500,000との間の整数であり;
...Tは独立して、Hまたは−(CH−X基の式を有するように選択され、ここで、Xは、H、ハロゲン、ヒドロキシル基、チオール基、カルボキシル基、アミノ基、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルキニル基であり、−(CHは、nが1と約100との間の整数である基であり、メチレン基の1またはそれ以上が場合により、O、S、N、C、C=O、NR基、CR基、CR基、またはSiRによって置換され、ここで、R、R、R、R、R、およびRは、各々独立して、結合、pi結合、H、ヒドロキシル基、チオール基、カルボキシル基、カルバメート基、オキソカーボン基、アミノ基、アミド(amido)基、アミド(amide)基、ホスフェート基、スルホネート基、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルキニル基、シロキサン、または官能基であり、L...Lは独立して、結合、または示されている炭素を、1または複数の共有結合によって連結する連結基であるように選択され、脂肪族基および少なくとも1つのヘテロ原子、例えばP、O、S、およびNを含んでいてもよく、この脂肪族基は、例えばアルカン、アルケン、アルキン、またはこれらの組合わせであってもよく、Lは、例えば約1個と約100個との間の原子を含んでいてもよく;Z...Zは独立して、結合、または示されているCをTへ、1または複数の共有結合によって連結する連結基であるように選択され、脂肪族基および少なくとも1つのヘテロ原子、例えばP、O、S、およびNを含んでいてもよく、この脂肪族基は、例えばアルカン、アルケン、アルキン、またはこれらの組合わせであってもよく、連結基Zは、例えば約1個と約100個との間の原子を含んでいてもよく;そしてYcおよびYnは各々独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシル基、チオール基、カルボキシル基、アミノ基、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルキニル基、シロキサン、または官能基であるように選択される。あるいは、Ynおよび/またはXは、上の式4に関連して示されているようにXとして規定されてもよい。
【0020】
例として、n=3である式6は、以下:
【0021】
【化5】

(式6a)の式を有し、
ここで、T、T、およびTは各々独立して、Z、Z、およびZであるように選択される。
【0022】
特定の実施形態において、式5〜8を参照すると、Tn、またはTnおよびZnはともに(TnはHもしくは−(CH−X基の式を有する)、疎水性脂肪族基を含み、nは約1と約100との間であり、そして脂肪族基および少なくとも1つのヘテロ原子、例えばP、O、S、およびNを含んでいてもよい。この脂肪族基は、例えばアルカン、アルケン、アルキン、またはこれらの組合わせであってもよい。当業者は、明確に表現されている範囲内のすべての値および範囲が、この説明のすぐ前にある範囲のみならず、本明細書に示されているほかの範囲が企図されることを即座に理解するであろう。
【0023】
特定の実施形態において、Tnは、約4個と約100個との間の(CH)を含み、約1個と約50個との間の(CH)が、少なくとも1つのヘテロ原子、例えばP、O、S、およびNを有する少なくとも一つの基で置換されている。
【0024】
特定の実施形態において、式5〜8の化合物のTnは、例えば式7に示されているような、別の官能基と共有結合を形成するために官能基FGを含んでいる:
【0025】
【化6】

式7、ここで、FGnは、任意の官能基FG...FGnを表わす。FGの例は、重合可能な基(例えばビニリックス(vinylics)基、フリーラジカル重合、付加重合、縮合重合によって重合可能な基)、カルボキシル、アミノ、ヒドロキシル、または酸塩化物、無水物、イソシアネート、チオシアネート、アジド、アルデヒド、ケトン、チオール、アリル、アクリレート、メタクリレート、エポキシド、アジリジン、アセタール、ケタール、アルキン、アシルハロゲン化物、アルキルハロゲン化物、ヒドロキシアルデヒドおよびケトン、アレン、アミド、ビスアミド、およびエステル、アミノカルボニル化合物、メルカプタン、アミノメルカプタン、無水物、アジン、アゾ化合物、アゾキシ化合物、ボラン、カルバメート、カルボジミド、カルボネート、ジアゾ化合物、イソチオネート、ヒドロキサミン酸、ヒドロキシ酸、ヒドロキシアミン、およびアミド、ヒドロキシルアミン、イミン、ラクタム、ニトリル、スルホンアミド、スルホン、スルホン酸、およびチオシアネートである。
【0026】
従って、式5〜8は、ポリマー、ブロックポリマー、またはランダムポリマーである化合物を説明するために用いられてもよい。一例として、ポリペプチド主鎖は、Rが、−(CH−NHであるリシンからなってもよく、従って、このアミンは、酸塩化物、酸無水物、イソシアネートと、およびほかの官能基と化学的に反応し得る。自然の中に見出されるポリペプチド主鎖は、式8の実施形態に示されているように、アミド連結基を有する:
【0027】
【化7】

式8、ここで、YnおよびYcは、上記の式5および6に関連して示されているように規定される。いくつかの実施形態において、Tnは、式5および6に関連して示されているように規定される;あるいは、Tnは、Hまたは直鎖脂肪族基または分岐脂肪族基、例えばC−C50、またはC−C25を含むようにのみ選択されてもよい。あるいは、ヘテロ原子(例えばO、S、P、およびN)の脂肪族への置換もまた、用いられてもよい。いくつかの実施形態において、Znは、式5および6に関連して示されているように規定される;あるいは、Znは、2と5、10、15、または20との間の原子を含み、TnとCとの間に共有結合を形成する結合またはリンカーとして選択されてもよい。あるいは、Znは、誘導体化されて側鎖とTnとの間に結合を形成する、結合またはアミノ酸側鎖であるように選択されてもよい。
【0028】
ポリペプチド、ポリペプチド主鎖、またはポリペプチドを含んでいる分子は、ホモアミノ酸配列またはヘテロアミノ酸配列であってもよい。例えばポリペプチドは、ブロックコポリマー、交互コポリマー、またはランダムポリマーであってもよい。ブロックコポリマーについては、各ブロックは、一組の同じアミノ酸型、例えばKKKAAA、KKKAAAKKKまたはKKKKKAAAKKAAAKKKKAAAAを有してもよく、ここで、KおよびAは、それぞれリシンおよびアラニンである。交互コポリマーについては、このポリマーは、特異的な規則正しい構造、例えばKAKAKAKAKAK、KKAKKAKKAKKAKKAまたはKKAAKKAAKKAAKKAAを有してもよい。これらのブロックコポリマーおよび交互コポリマーは、所望の場合2以上の型のアミノ酸を有してもよい。またはポリペプチドは、ランダム、例えばAKRCKKRACKRAAK(ここで、A、K、C、およびRはアミノ酸である)であってもよい。または主鎖は、アミノ酸間に連結基を含んでもよく、例えばAKR−Z−AKR−Z−KKA−Z−C−Z−AA−であり、ここで、A、K、R、およびCはアミノ酸であり、Zは、例えば式5および6に関連して、本明細書に規定されているような連結基である。アミノ酸の側鎖は、保護されていてもよく、保護されていなくてもよく、または、例えばC−C50の脂肪族鎖で誘導体化されていてもよい。1つの実施形態は、以下:
【0029】
【化8】

(式9)の式を有するポリペプチドであり、
ここで、p、p、...pは、ポリペプチド配列における単位であり、誘導体化側鎖をともなう/ともなわないアミノ酸であってもよい。Yn、Tn、Znおよび、Ycは、本明細書におけるほかの実施形態、例えば式5〜8について規定されているように規定されてもよい。従って、式9の実施形態は、ヘテロアミノ酸、ホモアミノ酸である主鎖を有してもよく、ブロック配列またはランダム配列を有してもよい。
【0030】
いくつかの実施形態において、ポリペプチド中のアミノ酸の側鎖は、炭化水素鎖で誘導体化されてもよく、例えば飽和もしくは一不飽和もしくはポリ不飽和であってもよい。このような長鎖炭化水素は、非限定的に、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、エルカ酸、リノール酸、(α)−リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、1−エイコサノール、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、ドデシルイソシアネート、ドデセニル無水コハク酸、ドデカノール、ドデカナール、ドデカンチオール、ドデカノラクトン、2−ドデセンジオン酸、シス−5−ドデセン酸、シス−7−ドデセン−1−オール、ヘキサデシルアミン、シス−9−ヘキサデセナール、シス−11−ヘキサデセン−1−オール、ヘキサデセニルイソシアネート、ヘキサデカンチオール、ヘキサデカノール、ヘキサデカンスルホニルクロライド、無水ヘキサデカン酸、ヘキサデシルイソシアネート、ヘプタデカノール、1−ノナデカノール、1−オクタデカノール、1−オクタデカンチオール、オクタデシルアミン(octadecyamine)、オクタデシルアミド、オクタデシルイソシアネート、ペンタデシルアミン、ペンタデカンチオール、パルミトレイン酸、トリデシルアミン、トリデカナール、トリデカノール、テトラデシルアミン、テトラデシルアルデヒド、シス−11−テトラデセン−1−オール、テトラデシルイソシアネートである。従って例えば、Tnは、例えばC−C50の炭化水素鎖として選択されてもよい。そして例えば、このようなポリペプチドは、約4と約100,000との間、または約6と約10,000との間のアミノ酸長、または約1,000と4百万との間のアミノ酸の分子量を有してもよい。
【0031】
ポリペプチドという用語は、交互化学部分で装飾されている天然または合成のアミノ酸を含んでいる実施形態を包含するように、本明細書において用いられている。ポリペプチドおよび誘導体化ポリペプチドの調製は、当業者によって、この開示を読んだ後に実施されうる。参考として本明細書中に援用されるポリペプチド化学参考文献としては、例えば、M.Bodanszky、「Peptide Chemistry」、Springer−Verlag、1988:Norbert Sewald、Peptides:Chemistry and Biology、Wiley、John & Sons、Incorporated、2002年8月;Gregory A.Grant、Synthetic Peptides:A User’s Guide、Oxford University Press、2002年3月が挙げられる。ペプチドを誘導体化するための反応スキームについての追加の詳細を提供する源は、本明細書中に参考として援用され、これらは、以下:T.W.Greene、Protective Groups in Organic Synthesis、第3版、Wiley:New York、1999;R.C.Larock、Comprehensive Organic Transformations:A Guide to Functional Group Preparations、New York、1989;B.M.Trost、I.Fleming(eds.−in−chief)、Comprehensive Organic Synthesis:Selectivity,Strategy & Efficiency in Modern Organic Chemistry:Cumulative Indexes、第9巻である。
【0032】
(置換および置換基)
置換は、この開示を読んだ後に当業者に公知であるように、これらの化合物の特性、例えば移動度、感受性、溶解性、適合性、安定性などに対する種々の物理的作用のために、化学基、および本明細書に記載されている式中の1つの位置を占めている原子に対して自由に許される。化学的置換基の説明において、当該分野に共通する特定の実施が存在し、これらは言語の使用に反映される。基という用語は、総称的に挙げられる化学物質(例えばアルキル基、アルケニル基、芳香族基、エポキシ基、アリールアミン基、芳香族へテロ環式基、アリール基、脂環式基、脂肪族基、ヘテロ環式非芳香族基など)が、この基の結合構造と一貫性があるあらゆる置換基をその上に有しうることを示している。例えば「アルキル基」という用語が用いられる場合、この用語は、非置換線状、分岐、および環状アルキル、例えばメチル、エチル、イソプロピル、tert−ブチル、シクロへキシル、ドデシルなどを包含するのみならず、ヘテロ原子を有する置換基、例えば3−エトキシルプロピル、4−(N−エチルアミノ)ブチル、3−ヒドロキシペンチル、2−チオヘキシル、1,2,3−トリブロモオプロピルなども包含する。しかし、このような命名法と一貫して、基礎をなす基の基本的な結合構造を改変するような置換は、この用語の中に含まれない。例えば、フェニル基が挙げられる場合、置換、例えば1−アミノフェニル、2,4−ジヒドロキシフェニル、1,3,5−トリチオフェニル、1,3,5−トリメトキシフェニルなどが、この用語の中で許容され得るが、一方、1,1,2,2,3,3−ヘキサメチルフェニルの置換は、許容されない。それは、この置換が、フェニル基の環結合構造が、この置換のために、非芳香族形態へ改変されることを要求するからである。
【0033】
アルキルという用語は、ほかに特定されていなければ、飽和直鎖、分岐、もしくは環状炭化水素のことを言い、具体的には、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、シクロペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、シクロヘキシル、3−メチルペンチル、2,2−ジメチルブチル、および2,3−ジメチルブチルを包含する。このアルキル基は、必要に応じてあらゆる適切な基で置換されていてもよく、これは非限定的に、ハロ、ヒドロキシル、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、アルコキシ、アリールオキシ、ニトロ、シアノ、スルホン酸、スルフェート、リン酸、ホスフェート、またはホスホネートから選択された1またはそれ以上の基を包含し、これらは当業者に公知であるように、非保護であるか、または必要に応じて保護されている。アルケニルという用語は、ほかに特定されていなければ、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する直鎖、分岐、または環状(C5−6の場合)炭化水素であり、上記のように置換されていてもよい。アルキニルという用語は、ほかに特定されていなければ、少なくとも1つの三重炭素−炭素結合を有する直鎖または分岐炭化水素であり、上記のように置換されていてもよい。いくつかの実施形態において、これらの置換基のサイズを、例えば約150未満、約100未満、約50未満、または約20未満の原子に限定することが有用である。
【0034】
ほかの適切な置換基としては、これらおよびほかのN−含有化合物、例えばアミン、アミド、アミジウムイオン、アミンイミド、アミン酸化物、アミニウムイオン、アミノニトレン、ニトレン、アミノキシド、ニトリル、およびニトリルイミドが挙げられる。ほかの適切な置換基としては、これらおよびほかのS−含有化合物、例えばスルホン酸、スルフェート、スルホネート、スルファミン酸、スルファン、スルファチド、スルフェンアミド、スルフェン、スルフェン酸、スルフェニウムイオン、スルフェニル基、スルフェニリウムイオン、スルフェニルニトレン、スルフェニルラジカル、スルフィド、スルフィルイミン、スルフィミド、スルフィミン、スルフィンアミド、スルフィンアミジン、スルフィン、スルフィン酸、無水スルフィン酸、スルフィンイミン、スルフィニルアミン、スルホ脂質、スルホンアミド、スルホンアミジン、スルホンジイミン、スルホン、スルホン酸、無水スルホン酸、スルホンアミド、スルホニウム化合物、スルホンフタレイン、スルホニルアミン、スルホキシド、スルホキシミド、スルホキシミン、硫黄ジイミド、チオール、チオアセタール、チオアルデヒド、チオアルデヒドS−酸化物、チオ無水物、チオカルボン酸、チオシアネート、チオエーテル、チオヘミアセタール、チオケトン、チオケトンS−酸化物、チオレート、およびチオニルアミンが挙げられる。ほかの適切な置換基としては、例えば、ROH(アルコール)、RCOOH(カルボン酸)、RCHO(アルデヒド)、RR’C=O(ケトン)、ROR’(エーテル)、およびRCOOR’(エステル)形態(Rは、結合または原子を示す)を有する、これらおよびほかのO−含有化合物が挙げられる。ほかの適切な置換基としては、これらおよびほかのP−含有化合物、例えばホスファン、ホスファニリデン、ホスファチジン酸、ホスファゼン、ホスフィン酸化物、ホスフィン、ホスフィン酸、ホスフィニデン、亜ホスフィン酸、ホスホグリセリド、リン脂質、ホスホン酸、ホスホニトリル、ホスホニウム化合物、ホスホニウムイリド、ホスホノ、亜ホスホン酸、ホスホラミド、およびホスホランが挙げられる。炭素は、置換基を作るのに有用であり、ヘテロ原子構造中の炭素数は、2とnとの間の原子が、例えばO、P、S、またはNを有する置換基を形成するために用いられる場合、例えば1とn−1との間であってもよい。いくつかの実施形態において、これらの置換基のサイズを、例えば約150未満、約100未満、約50未満、または約20未満の原子に限定することが有用である。
【0035】
本明細書において示されている式は、種々の基を記載している。これらの種々の基のすべては、既に記載されているように、必要に応じて置換基で誘導体化されていてもよい。このような「置換された」基上に存在してもよい適切な置換基としては、例えばハロゲン、例えばフルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨード;シアノ;H、ヒドロキシル基;エステル基;エーテル基;カルバメート、オキソ酸基、オキソ炭素基、オキソカルボン酸基、オキソ基、ケトン基;ニトロ;アジド;スルフヒドリル;アルカノイル、例えばC1−6アルカノイル基、例えばアセチルなど;カルボキサミド;1またはそれ以上の不飽和連結を有する基を含んでいるアルキル基、アルケニル基、およびアルキニル基;1またはそれ以上の酸素結合を有するアルコキシ基;アリールオキシ、例えばフェノキシ;アルキルチオ基;アルキルスルフィニル基;アルキルスルホニル基;アミノアルキル基、例えば1またはそれ以上のN原子を有する基;炭素環式アリール;アリールオキシ、例えばフェノキシ;1〜3個の別々の環または縮合環を有するアラルキル;1〜3個の別々の環または縮合環を有するアラルコキシ;または例えば1またはそれ以上のN、O、またはS原子を有する、1〜4個の別々の環または縮合環を有するヘテロ芳香族、ヘテロ環式基、またはヘテロ脂環式基、例えばクマリニル、キノリニル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジル、フリル、ピロリル、チエニル、チアゾリル、オキサゾリル、イミダゾリル、インドリル、ベンゾフラニル、ベンゾチアゾリル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、ピペリジニル、モルホリノ、およびピロリジニルが挙げられる。ほかの置換基としては、O、S、Se、N、P、Si、Cを含み、かつ2個と約150個との間の原子を有する基が挙げられ得る。いくつかの実施形態において、あらゆる置換基のサイズを、例えば約150未満、約100未満、約50未満、または約20未満の原子に限定することが有用である。官能基もまた、本明細書に記載された基上に自由に置換されてもよい。このような基の例は、式7に関連して、FGとして記載されている。
【0036】
(選択された特性のための疎水性基および親水性基)
いくつかの実施形態において、キャリア材料は、ホモアミノ酸配列および/またはヘテロアミノ酸配列を含んでいるポリペプチド主鎖を含む少なくとも一部分を有する分子を含んでおり、これによって親水性および疎水性バランスは、これらのアミノ酸の少なくとも1つの側鎖への化学連結によって調節される。疎水性基が疎水性を増すために加えられてもよく、親水性基が親水性を増すために加えられてもよい。疎水性基の例は、アルキル、アルケン、アルキン、芳香族基(例えばベンゼン)、多くの環構造(例えばシクロへキサン)、およびリン脂質である。
【0037】
親水性基の例は、ポリエチレン酸化物、糖残基、多糖類、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン、ポリアクリル酸、および双性イオン基、例えば双性イオンリン脂質の頭部)である。
【0038】
あるいは、このポリマーのTgは、疎水性基または親水性基の付加によって選択されてもよい。このような場合、ポリマーが選択され、疎水性基または親水性基が、選択されたTgを得るために、必要に応じて付加される。あるいはまた、疎水性基または親水性基の付加は、選択された治療因子の選択された放出率を得るために調節されてもよい;このような場合、例えば図3〜4に示されているように、これらの側鎖の種々の誘導体化を有するポリペプチドの層からのこの因子の放出率が測定される。所望の放出プロフィールは、誘導体化側鎖の数、およびこれらの側鎖上の疎水性部分または親水性部分の長さを調節することによって得られる。
【0039】
意外かつ驚くべき結果は、相対的により疎水性の材料が、より低い疎水性対親水性比を有する材料よりも急速に治療因子を放出したということであった。この傾向は、例えば図4において明白である。この図では、パクリタキセルは、相対的に最も疎水性の材料を用いて最も急速に放出された。特定の理論に結び付けられるわけではないが、ポリアミノ酸の相対的により長い疎水性部分によって形成されたドメインは、この材料を通るこの因子の移動により多くつながったかもしれない。放出のこの加速は驚くべきことであり、意外であるが、その理由は、側鎖の長さにおける比較的小さい変化が、放出の不均衡な増加率を引き起こしたからである。さらには、この結果は驚くべきことであるが、その理由は、放出率が、キャリア材料の水溶解性に高度に関連していると通常予想され、より溶解性の材料は、より迅速に水和されて、その中での因子の放出を加速させるであろうからである。したがって、いくつかの実施形態は、少なくとも約50〜500分子量の疎水性側鎖を有する、本明細書に記載されているようなポリマーに関する。
【0040】
いくつかの実施形態において、本明細書においてポリアミノ酸とも呼ばれるポリペプチドは、約1,000と約4,000,000との間の分子量を有する。あるいは、この分子量は、約20,000と約250,000との間であってもよい。この分子量は、これらの材料を用いて作製されたコーティングに対してある影響を有する。ポリペプチドの側鎖は、側鎖の総数に関して、部分的に誘導体化または完全に誘導体化されてもよく、例えば側鎖の総数の約1%と約100%との間、または約3%と約95%との間が誘導体化される。当業者は、これらの明確に記載された分子量および誘導体化範囲内のすべての範囲および値が企図されることを、即座に理解するであろう。
【0041】
一例はポリリシンであり、これは、長鎖炭化水素、例えばステアロイル基:−[HN−CH[R]−C(=O)−O]−[HN−CH[]−C(=O)−O](n−q)−(式10)で化学的に修飾されており、ここで、は、−(CH−NH−C(=O)−[CH16−CHであり、(n−q)は化学修飾度である。あるいはポリリシンは、実施例1に示されているように例えばN−ヒドロキシスクシンイミドエステルで、ヘキサンをその側鎖へ付着させることによって修飾されてもよい。このポリリシンは、修飾前には水性溶媒中に可溶であるが、ヘキサンで装飾された後は、水中に不溶である。この誘導体化ポリリシンは、アルコール、およびジメチルスルホキシド(DMSO)およびジメチルホルムアミド(DMF)中に可溶である。ポリリシンの側鎖の約60%は疎水性基で修飾され、側鎖のすべての約94%を修飾するために、その後のプロセシングが用いられた。
【0042】
種々の分子量およびモノマー単位を有する種々のポリアミノ酸は、誘導体化されてもよく、例えばポリリシン(実施例1)、ポリグルタメート(実施例4)、ポリアスパルテート(実施例5)、およびほかのアミノ酸を有するポリアミノ酸である。置換度は、利用可能な側鎖の約1%と約100%との間の置換が得られるように、例えば実施例1(ii)および1(iii)においてのように、これらの反応を改変することによって制御することができる。疎水性基および親水性基の長さは、例えばポリエチレングリコールまたはC−C50を含んでいる側鎖が得られるように、例えば実施例1〜8においてのように、変えることができる。異なるアミノ酸を有するコポリマーが、例えば実施例7においてのように合成されてもよい。実施例7では、アスパルテートおよびグルタメートが共重合され、これらの側鎖が誘導体化された。
【0043】
さらに、1つのポリマーの誘導体化部分は、これらをより疎水性またはより親水性にするために、さらに誘導体化されてもよい。例えば実施例8において、誘導体化ポリアミノ酸のエチル基は、トランスエステル化プロセスを用いて、ブチル基へ転化された。そして、例えば実施例9において、n−アルキル基が、グルタミン酸側鎖を有するようにトランスエステル化された。
【0044】
疎水性部分での化学修飾度が高ければ高いほど、親水性および疎水性バランスが、より疎水性になるシフトを生じる。化学修飾度は、生物吸収性率、したがって治療因子または診断因子の送達率に影響を与える。
【0045】
別の例として、ポリペプチド主鎖は、グルタメートおよびアラニンからなり、グルタメート単位は、カルボニルジイマダゾール(diimadazole)活性化ヒドロキシ長鎖炭化水素:
−[HN−CH[]−C(=O)−O](m−p)−[HN−CH[R]−C(=O)−O]−(式11)
で化学修飾され、
ここで、
は、−(CH−C(=O)−O−[CH16−CHであり、(m−p)は化学修飾度であり、Rは、−(CH)である。
【0046】
同様に、化学修飾度が高ければ高いほど、親水性および疎水性バランスが、より疎水性になるシフトを生じる。化学修飾度は、生物吸収性率、したがって治療因子または診断因子の送達率に影響を与える。
【0047】
参考として、BIORELEASEは、ホモアミノ酸配列およびまたはヘテロアミノ酸配列からなるポリペプチド主鎖のことを言うものとし、これによって、このポリペプチド主鎖への化学的連結により、親水性および疎水性バランスを調節することが可能である。参考として、BIORELEASE−Lys30−Lauric50は、リシン配列を含むホモペプチド主鎖のことを言うものとし、30は、ポリリシンの分子量範囲のことを言うものとし、主鎖は、ラウリン酸を組み込むために化学修飾され、50は、ラウレート基の組み込み度を言うものとし、これは、対応酸塩化物またはほかの適切な官能基と、ポリペプチド主鎖上のアミンとの反応によって得ることができる。
【0048】
別の実施形態において、BIORELEASE中への薬物負荷は、適切な共溶媒、例えばイソ−プロピルアルコール(IPA)/テトラヒドロフラン(THF)中へのこの薬物およびBIORELEASEの溶解性を利用することによって得られる。このような一例は、BIORELEASE−Lys30−Lauric50およびパクリタキセルである。これらは、IPA/THF中に可溶であることが見出されている。医療デバイス、例えばステントは、ディップコーティングまたはスプレー技術によってコーティングすることができる。放出プロフィールおよび分解率は、実験室で測定されてもよい。
【0049】
別の実施形態において、BIORELEASE−Lys1.5−Lauric50は、BIORELEASE−Glu1.5−Dodecan50と化学的にカップリングされ、BIORELEASE(Lys15−Lauric50)−(Glu15−Dodecan50)の最終BIORELEASE組成物を生じる。BIORELEASE−Glu1.5−Lauric50は、ポリペプチド主鎖上の酸基とカルボニルジイマダゾール活性化1−ドデカノールとの反応によって調製される。同様に、BIORELEASE中への薬物負荷は、適切な共溶媒、例えばIPA/THF中へのこの薬物およびBIORELEASEの溶解性を利用することによって達成される。このような一例は、BIORELEASE(Lys15−Lauric50)−(Glu15−Dodecan50)およびパクリタキセルであり、これらは、IPA/THF中に可溶であることが見出されている。医療デバイス、例えばステントは、ディップコーティングまたはスプレー技術によってコーティングすることができる。放出プロフィールおよび分解率は、実験室で測定されてもよい。
【0050】
別の実施形態において、個々のアミノ酸は、長鎖炭化水素によって化学修飾され、これらの修飾された個々のポリペプチドは、化学的に連結されて、BIORELEASEを形成する。
【0051】
一例として、アミノ酸リシンは、長鎖炭化水素、例えばステアロイルクロライドで化学修飾され、(Lys−Stearic)を生じる。このアミノ酸グルタメートは、カルボニルジイマダゾール活性化1−ドデカノールで化学修飾され、(Glu−Dodecan)を生じ、この後に、化学的カップリングが行なわれ、BIORELEASE:[(Lys−Stearic)−(Glu−Dodecan)(式12)を生じ、ここで、n、m、およびyは、反復単位の数である。
【0052】
参考として、この型のBIORELEASEは、BIORELEASE−[(LS)−(GD)と呼ばれる。
【0053】
疎水性および/または親水性基および/または治療因子は、種々の方法でアミノ酸側鎖へ付着されてもよい。例えばこれらは、アミド、エステル、カルボネート、カルバメート、オキシムエステル、アセタール、ケタール、ウレタン、ウレア、エノールエステル、オキサゾリンディーズ(oxazolindies)、無水物、またはオキシムエステルを介して付着されてもよい。一例として、カルバメート連結は、次のように用いられてもよい:
カルバメート
【0054】
【化9】

またはカルボネート連結が用いられてもよい:
カルボネート連結
【0055】
【化10】

またはオキシムエステル連結が用いられてもよい:
オキシムエステル
【0056】
【化11】

(コーティング)
コーティングが1つの物体上に形成される。これに対して、ほかの構築物、例えばシース、スリーブ、膜、および成形物体は、特定のデバイスとは別個に製造することができる。その結果、コーティングは、ポリマー構築物のほかの型とは異なる。例えば、スリーブ、シース、または膜は、1つの物体と組合わされる前に、その同一性を維持するように、ある最小限の機械的堅牢性を必要とする。さらにコーティングプロセスは、このコーティングと多くの場合望ましいデバイスとの間の接触の緊密性を生じる。この理由から、いくつかのプロセスは、ほかの製造手順の代わりに、コーティングを包含する。さらに、物体のコーティングのいくつかのプロセス、例えばスプレーまたは浸漬は、ほかのプロセスにおいて利用可能でない物理的性質または加工処理の機会を生じる。さらに、デバイスの処理に関連したほかの教示は、これらの差に起因して、コーティングに適用可能でないことがある。
【0057】
しかし、コーティングは可変の特徴を有し得ると認められる。このようにして、コーティングは、いくつかの地点において表面と不連続であってもよく、コーティングとしてのその特徴をなお保持し得る。コーティングはまた、単一層または複数の層から形成されてもよい。コーティングおよび層は、可変の厚さ、可変の組成、可変の化学的性質を有し得る。コーティングおよび層は、1つの表面のすべてまたは一部分をカバーし得る。層は例えば、コーティングを生じるように、ほかの層上に積み重ねられてもよい。
【0058】
物体、例えば医療デバイス上に層を形成するためのプロセスは、スプレーによって、またはポリマー層を形成するための組成物中にこのデバイスを浸漬することによって、組成物をデバイスに適用する工程を含んでもよい。これらの方法およびほかの方法は一般に、当業者に公知である。本明細書において教示されている誘導体化ポリペプチドは、医療デバイス上に層として形成されてもよく、これは、デバイスのすべてを覆う層、このデバイスの一部分を覆う層、およびほかの層上の層を包含する。互いに接触している層は、例えばこれらの層中のポリマー間の共有架橋によって互いに架橋されてもよい。
【0059】
層のいくつかの実施形態は、誘導体化ポリペプチドの組成物を調製し、これらを表面へ適用することによって形成される。ほかの実施形態は、官能基を有する反応性誘導体化ポリペプチドの組成物を、デバイスまたは層へ適用し、重合またはこれらの官能基のほかの反応を開始させて、層を形成することによって形成された層である。同様に、誘導体化ポリペプチドが、デバイスまたは層へ適用され、そこで反応して、層を形成してもよい。
【0060】
層はまた、互いに架橋されてもよい。1つの方法は、反応性官能基の第一の組を有する第一層を適用すること、および官能基の第一の組と共有架橋を形成する反応性官能基の第二の組を有する第二層を適用することである。第一層および第二層は、どんな順序で適用されてもよい。例えば第一層から始め、次に第二層、またはその逆であってもよい。さらなる層が同様に形成されて、用いられてもよい。
【0061】
層は、単一型の誘導体化ポリペプチド、複数の誘導体化ポリペプチド型から、別の化合物、例えばポリマーまたはこれらの組合わせと組合わせて作られてもよい。例えば単一型の誘導体化ポリペプチドが用いられてもよいし、または各々別々に調製された複数の誘導体化ポリペプチドが用いられてもよい。または、単一の反応性誘導体化ポリペプチドが、反応可能な、または反応不可能なポリマーと混合されてもよい。
【0062】
デバイスと接触し、その後に適用された層を固定するのに役立つベース層を提供するために有用な層もある。例えば反応性官能基を有する第一層が、デバイスに適用されてもよく、その後の層が、ベース層へ架橋されてもよい。
【0063】
例えば表面化学を用いて、ほかの層と化学的に反応させることによって形成される層もある。例えば層は、それへ反応させるための官能基を有するポリマーまたは非ポリマーの化学組成物に暴露された反応性官能基を有していてもよい。または例えば、層は、それへ反応可能な反応性官能基へ暴露されてもよい。例えば層は、光によって誘発されてその層と反応する、光活性化可能な分子の組成物へ暴露されてもよい。または求核基を有する層は、求核試薬と反応する求電子基を有する分子の組成物へ暴露されてもよい。
【0064】
これらの層のどれも、治療因子と組合わされてもよく、治療因子の存在をともなって、またはともなわずに、医療デバイス上に形成されてもよい。治療因子は、デバイスへのその適用前、その間、またはその後に、この層の成分と組合わされてもよい。このようにして、層および治療因子は、本質的に同時にデバイスに適用される。このような適用は、例えば製造の容易さのために、いくつかの利点を有する。例えば誘導体化ポリペプチドは、治療因子と組合わされてもよく、コポリマー−治療因子の組合わせが、デバイスに適用されてもよい。または例えば、治療因子は、その後活性化されて新たなコポリマーを形成する表面に適用される組成物の一部であってもよい。上に示されているように、特定のコポリマーは有利には、治療因子の送達を達成するためにこの治療因子と組合わされてもよい。
【0065】
治療因子は、誘導体化ポリペプチドがデバイスに適用される前に、誘導体化ポリペプチドと組合わされてもよい。誘導体化ポリペプチドが調製され、ついで、この因子用の溶媒を含有する溶液へ暴露されてもよい。この因子と誘導体化ポリペプチドとは相互作用させられ、この因子は、誘導体化ポリペプチドと組合わされることになる。
【0066】
またはこの治療因子は、この因子およびコポリマーが本質的に同時にデバイスに適用されるのと本質的に同じ時に、誘導体化ポリペプチドへ暴露されてもよい。この因子およびコポリマーは、同一または異なる溶媒中にあってもよい。非溶媒および溶媒は、多少広く用いられている用語であり、これらの厳密な意味を包含し、同様にほかの物質で希釈された混合物を包含する。これらの用語は、特定の用途を考慮して適用され、時には、比較的良好な溶解力、または比較的低い溶解力を示す意味が与えられる。
【0067】
治療因子はまた、この層がデバイスに適用された後で層と組合わされてもよい。例えば1つの適切な方法は、この層を、因子を含んでいる混合物へ暴露する工程を包含する。この混合物はさらに、この層が膨潤され、この因子はそこを通って移動するように、この因子およびこの層の両方のための比較的良好な溶媒を含んでいてもよい。この溶媒が除去される場合、この因子、またはこれの少なくとも一部分が、この層中に留まる。
【0068】
このコーティングをデバイスへ組合わせるための上記方法論の組合わせは、単一治療因子または治療因子の組合わせの組み込みのために用いることができる。
【0069】
コーティングの医療デバイスへの適用は、そのデバイスのための特定の環境へ適合させることができる。例えば厚さに関して、特定の適用は、適切なものを示しうる。例えばステントは、血管の曲がりくねった系を通り抜けて、患者の中のその送達点に達し得る。したがって、ステント上のコーティングは、適切な物理的性質および厚さを有すべきである。ポリマー層の厚さは、薬物の効果、および医療デバイスの性能を妨げることなく、治療用量が送達される範囲のものであり、例えばステントは、例えば約0.01μm〜約150μm、または約1μmと約300μmとの間の範囲内のポリマー層を有し得る。ほかの医療デバイスについてのほかの範囲は、広く異なっていてもよいが、約3mm未満、約1mm未満、約0.1mm未満、約0.01mm未満、約1μm〜約100μm、約10μm〜約1,000μm、約1μm〜約10,000μm、および約10μm〜約500μmの範囲でもある。当業者は、これらの明確な範囲内のすべての値および範囲が企図され、ほかの範囲を、デバイスおよび/または用途に応じて適合させることができることを認識する。
【0070】
膨張性層または可撓性層を必要とするデバイスおよび適用もある。実施例に示されているように、本明細書における実施形態は、可撓性および/または膨張性を与えることができる。ステントに関して、ステントの大部分の設計は、患者に配置した時に膨張工程を必要とする。ステントの配置に合わせるために膨張可能である層が有利である。医療用バルーンに関して、患者におけるその使用は、膨張工程を必要とし、したがってこのようなバルーン上のコーティングは、有利にはこの膨張に合わせるように作製されてもよい。
【0071】
このようなコーティングの1つの局面は、このコーティングの疎水性バランスであってもよい。疎水性コーティング中に混合された疎水性治療因子の場合、このコーティングを通る因子の拡散は、このコーティングからの因子の放出率を制御し得る。このコーティングの疎水性度は、放出率に影響を与えるように調節されてもよい。本明細書において上の式に示されているような組成物の場合、存在する疎水性基の数は、これらの式の1つによって記載された化学物質から作製されたコーティングの疎水性と相関関係があり、より疎水性の基は、疎水性の増加を引起こす。
【0072】
(医療デバイス)
ある所定の医療デバイス、例えばステントをコーティングすることができ;治療因子、例えば診断薬またはほかの材料を組み込むことができ;そして/または生物適合性であり、かつ非毒性である断片中に生物分解されうる誘導体化ポリペプチドを作製することができる。
【0073】
医療デバイスは例えば、埋め込み可能であり、局所的に用いられるか、さもなければ少なくともいくらかの時間の間、生きた組織と接触するあらゆるデバイスを包含する。これらのデバイスは、例えばポリマーから製造することができ、例えばカテーテルは金属から製造することができ、例えばガイドワイヤ、ステント、塞栓形成コイルはポリマー繊維から製造することができ、例えば代用血管、ステントグラフトはセラミックから製造することができ、例えば機械的心臓弁であるか、またはこれらの材料の組合わせからできていてもよい。ほかのデバイスは例えば、心臓弁、埋め込み可能な心臓血管除細動器、ペースメーカー、外科用パッチ、パッチ、傷閉鎖具、ミクロスフェア、バイオセンサー、センサー(埋め込み可能な、エキソビボのものおよび分析器)、眼内移植物、およびコンタクトレンズ;セラミック、ガラスからできている医療デバイス;組織工学的足場を包含する。少なくとも一部分解可能な医療デバイスも含まれる。少なくとも一部分解可能な医療デバイスの例としては、ステント、例えば尿道ステント、腹部大動脈瘤ステント、血管ステント、心臓ステント、冠状動脈ステントを包含する。少なくとも一部生分解性医療デバイスのほかの例は、塞栓形成コイル、外科用パッチ、傷閉鎖具、眼内移植物、包帯、移植片、およびバルブである。医療デバイスはまた、例えば米国特許出願第5,464,650号;同第5,900,246号;同第6,214,901号;同第6,517,858号;US2002/0002353、および特許出願WO01/87342 A2;WO03/024500号において考察されており、これらは参考として本明細書中に援用される。
【0074】
さらなる実施形態は、本明細書に記載され、かつ少なくとも一部分解性である材料から少なくとも一部製造された医療デバイスを包含する。例えば医療デバイスは、第一モノマー単位および第二モノマー単位を含んでいるコポリマーから少なくとも一部できていてもよく、第一モノマー単位はアミノ酸を含み、第二モノマー単位は誘導体化されて、約14〜約5,000の分子量を有する疎水性炭化水素側鎖を含むアミノ酸を含んでいる。そして例えば、医療デバイスは、式5〜9に示されているようなポリマーから少なくとも一部できていてもよい。この医療デバイスは必要に応じて、このデバイスの患者への埋め込み後、患者の中に放出可能な治療因子を含んでいてもよい。医療デバイスおよび少なくとも一部分解性の医療デバイスの例は、上に記載されている。
【0075】
(治療因子)
本明細書に示されている材料は、治療因子と組合わされてもよく、この治療因子としては例えば、薬物、造影剤、診断因子、予防因子、止血因子、組織工学因子、一酸化窒素放出因子、遺伝子治療因子、傷の治癒を向上させるための因子、および生物活性因子が挙げられる。治療因子は、溶液中にあるかまたは溶媒中に配置されたポリマー前駆物質と混合されてもよく、ポリマーが形成されてもよい。あるいはまた、治療因子は、このポリマーが形成された後、またはポリマー形成プロセスにおける中間時点で導入されてもよい。治療因子という用語は、例えば治療因子および/または診断因子、および/またはコーティングから放出される因子を包含するように用いられる。
【0076】
治療因子の多くの例は、優先権書類番号第60/574,250号に示されている。治療因子としては、例えば米国特許第6,214,901号に開示されたものが挙げられ;治療因子のさらなる実施形態、ならびにポリマーコーティング方法、反応性モノマー、溶媒などは、米国特許第5,464,650号、同第5,782,908号、同第5,900,246号、同第5,980,972号、同第6,231,600号、同第6,251,136号、同第6,387,379号、同第6,503,556号、および同第6,517,858号に示されており、これらの各々は、本明細書中に参考として援用される。
【0077】
(ガラス転移温度およびポリマーの用語)
本明細書に記載されているコポリマーの特定の実施形態は、ガラス転移温度Tgと呼ばれる特性に関する。Tgは、非晶質ポリマー(または一部結晶質ポリマー中の非晶質領域)が、硬質かつ比較的脆性の状態から粘性またはゴム状状態へ変化する温度である。ガラス転移温度は、例えば示差走査熱量測定法(DSC)または示差熱分析などの方法によって測定されてもよい。ほかの方法論は、容積膨張率、NMR分光法、および屈折率を包含する。Tgは、ポリマーの1つの特性である。
【0078】
ポリマーは、反復サブユニットから構成された分子である。各サブユニットは、本明細書において、モノマー単位と呼ばれている。2〜3個のみのモノマー単位のポリマーは、オリゴマーと呼ばれることがある。ポリマーという用語は例えば、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマー、ブロックコポリマー、ランダムコポリマー、オリゴマーなどの意味を包含する。
【0079】
本明細書におけるいくつかの実施形態は、特定のTg値または平均を有するコポリマーに関する。ほかに特定されていなければ、平均Tg値は、直接測定されるか、またはモノマー単位の重量を基準にして推定されることになる。代替方法は、モル重量による平均を計算する方法である。本明細書において、モノマー単位を有する組成物について、平均Tg重量を計算する場合、以下の式が用いられる:
平均Tg=(W1Tg1+W2Tg2+W3Tg3+...WnTgn)/(W1+W2+W3+...Wn)
ここで、W1、W2、W3、Wnは、それぞれ第一、第二、第三、および第nモノマー単位の重量(例えばグラム)を示し、Tg1、Tg2、Tg3、およびTgnは、それぞれ第一、第二、第三、および第nモノマー単位のホモポリマーについてのTgである。ホモポリマーについてのTgは、約20,000までMWとともに変わり、したがってホモポリマーについてのTgは、慣習的に約20,000MWまたはそれ以上においてそのTgが考慮される。この手順は、コポリマー中に配置されているモノマー単位の組成物について平均Tgを計算するために用いられてもよい。
【0080】
通常用いられている合成方法は、ポリマー重量の分布を与えると理解される。したがって一組のポリマーは、平均重量、およびこれらの重量の平均分布を有する。したがって、いくつかの実施形態は、特定の平均、または特性もしくは組成物の分布を有する一組のポリマーまたはポリペプチドに関し、平均ポリマー重量の計算に関するポリマーの他の局面に関する。このような1つの方法は、重量平均分子量であり、これは次のように計算される。すなわち、多数のポリマー分子の重量を測り、これらの重量の二乗を加算し、ついでこれらの分子の総重量で割る。数平均分子量は、ポリマーの分子量を決定する別の方法である。これは、nポリマー分子の分子量を測定し、これらの重量を合計し、nで割ることによって決定される。ポリマーの数平均分子量は、例えば浸透圧法、末端基滴定、および束一性によって測定することができ、ポリマーの数平均または重量平均を推定するための種々のほかの方法が存在する。
【0081】
ポリマーは、ブロックを含んでいてもよい。一緒に結合された一連の同一モノマー単位が、ブロックを形成する。ポリマーは、ブロックをまったく有していないか、または複数のブロックを有していてもよい。ポリマー群または1つのポリマーからのブロックは、互いに結合してドメインを形成し得る。熱力学的力は、これらのドメインの形成を駆動し得、これらのブロック間の化学的誘引力または反発力は、この駆動力に寄与する。例えば、いくつかのブロックは、イオン−イオン相互作用または疎水力−親水力に対して、結果として互いに組合わされる傾向がある。このようにして、いくつかの条件において、親水性ブロックおよび疎水性ブロックを有するポリマーの組成物は、疎水性ブロックを有するドメインおよび親水性ブロックを有するドメインを形成すると予想することができるであろう。コポリマーは、少なくとも2つの異なるモノマー単位を有するポリマーである。いくつかのコポリマーは、ブロックを有し、一方、他のものはランダム構造を有し、いくつかのコポリマーは、ブロック、およびランダムコポリマー結合の領域の両方を有する。コポリマーは、反応性モノマー、オリゴマー、ポリマー、またはほかのコポリマーから製造されてもよい。コポリマーは、少なくとも2つの異なるモノマー単位からできているオリゴマーを包含する用語である。
【0082】
(ポリマー、Tg、および予め決定された、選択されたTgの差を有するモノマー単位を有するコポリマー)
本明細書中の特定の実施形態は、モノマー単位の間に選択された差を有するTgを有する、ホモポリマーを形成するモノマー単位から形成されたコポリマーに関する。モノマー単位は、本明細書においてTgを有すると言われることがあり、これによって、このモノマー単位から形成された、約20,000分子量のホモポリマーのTgを意味する。特定の操作の理論には束縛されないが、本明細書に示された、予め決定された差は、ドメイン形成に寄与すると考えられ、したがって特定の望ましいポリマー特性が向上される。1つのこのような特性は、治療因子とこれらのドメインとの向上された関連である。これらのドメイン−ドメイン相互作用は、治療因子用の小さい微小空隙を生じ得るか、または治療因子との化学的関連を形成しうる。これらは、結合的関連または静電的相互作用であってもよい。
【0083】
モノマー単位間の適切な予め決定されたTg差としては、少なくとも約30℃、少なくとも約50℃、および少なくとも約70℃が挙げられる。モノマー単位Tgにおけるほかの適切な差は、約30℃〜約500℃、約50℃〜約300℃、約70℃〜約200℃の範囲内にある。当業者は、この開示を読んだ後、これらの明確に記載された範囲内のすべての範囲および値が企図されることを理解する。
【0084】
Tgは、コポリマーの組成物のブロックまたはドメインの移動度の間接的かつおよその指標である。因子との非共有化学的または物理的関連を有するコポリマーについて、より大きい移動度またはより低いTgは、この因子のより急速な放出を生じると予想される。放出に影響を与えるほかの要因は、この因子のサイズ、その化学的特徴、およびその周りでのポリマーとのその関連の程度である。いくつかの化学的特徴は例えば、親水性、形状/サイズ、電荷の存在、および極性である。しかし因子の最も望ましい放出率は、用途に依存する。迅速な放出を必要とする状況もあり、徐放性を必要とする状況もあり、迅速な破裂、ついで徐放性を必要とする状況もある。さらには複数の因子が、ポリマー、または層、またはコーティングと組合わされてもよく、したがってTgは、これらの因子の化学的性質を反映するように調節される。
【0085】
コポリマー中のモノマー単位についての予め決定されたTg差の選択に加えて、ほかの実施形態は、モノマー単位の組の選択に関しており、特定のTgは、この組の平均Tgに関している。いくつかの実施形態において、特定の平均Tgを選択することが有利である。例えば、治療因子が負荷されたポリマー移植物は、生理学的温度に近いTgを有するポリマーまたはコポリマーを用いて作製することができる。ポリマー中のモノマー単位のTgは、その結果として生じるポリマーのTgの概算を与える。このようにして、モノマー単位の組成物の重さが測られたTg平均は、所望の特性を有するコポリマーの製造のために選択され得る。あるいはまた、ほかの用途は、その用途のための温度における変化、例えば凍結保存から超加熱蒸気へ、CO保存からオーブンへ、フリーザーから沸騰へ、冷却器から温水浴へなどの移動を得るのに適した平均Tgを必要とする。本明細書に示されているようなコポリマーおよびポリマーについての重量が測られたTg平均は、約−200℃〜約500℃、約−80℃〜約250℃、約−20℃〜約100℃、約0℃〜約40℃を包含する。当業者は、この開示を読んだ後、これらの明確に記載された範囲内のすべての範囲および値が企図されることを理解する。
【実施例】
【0086】
材料:N−ヒドロキシスクシンイミド、ヘキサン酸、N,N’’ジシクロヘキシルカルボジイミド、トリエチルアミン、2,4,6,トリニトロベンゼンスルホン酸、L−グルタミン酸、L−アスパラギン酸、ポリL−リシンハイドロブロマイド(分子量70,000〜150,000)、ナトリウムテトラボレート、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(式量550)、1,1−カルボニルジイミダゾール、n−ブタノール、n−ドデカノール、n−テトラデカノール、n−ヘキサデカノール、n−オクタデカノール、ポリn−エチルL−グルタメート(分子量100,000)、p−トルエンスルホン酸、ポリL−グルタミン酸ナトリウム塩(分子量50,000〜100,000)、1−ブロモブタン、重炭酸ナトリウム、および用いられたすべての溶媒は、Sigma−Aldrich Chemical Companyから購入した。
【0087】
(実施例1)
(ポリ(L−リシン)グラフトn−ヘキシルコポリマーの合成)
(i.へキサン酸のN−ヒドロキシスクシンイミドエステル)
【0088】
【化12】

(反応スキーム4)
へキサン酸のN−ヒドロキシスクシンイミドエステルを、Y.Lapidot、S.Rappoport、およびY.Wolman、Journal of Lipid Research、(1967)142−145.3に記載されている手順を用いて合成した。
【0089】
へキサン酸(20g、0.172モル)を、無水酢酸エチル(750ml)中のN−ヒドロキシスクシンイミド(20g、0.172モル)の溶液へ添加した。無水酢酸エチル(35ml)中のジシクロヘキシルカルボジイミド(35.49g、0.172モル)の溶液を添加し、この反応混合物を、室温で16時間攪拌した。ジシクロヘキシルウレアを、濾過によって除去し、濾液を減圧下で濃縮すると、白色沈殿物を生じた。この沈殿物を、石油エーテルで数回洗浄して、ジシクロヘキシルカルボジイミド、微量の無水へキサン酸、およびへキサン酸を除去した。
【0090】
この生成物を、ジエチルエーテル(100ml)中に溶解し、15℃で16時間保存した。微量のアシルウレアが沈殿し、これを濾過によって除去した。ジエチルエーテルを、加圧下で除去すると、白色結晶を生じた(20g、収率50%)。薄層クロマトグラフィー(ジクロロメタンまたは石油エーテル(沸点40〜60℃)−ジエチルエーテル8:2)は、単一スポットを生じた。
【0091】
(ii.へキサン酸のN−ヒドロキシスクシンイミドエステルのポリ(L−リシン)のアミノ官能基への部分的カップリング)
【0092】
【化13】

(反応スキーム5)
有機溶媒中に可溶であるが、親水性部分も有するポリ(L−リシン)グラフトコポリマーを得るために、利用可能なアミノ基のいくつかのみを、へキサン酸へカップリングした。
【0093】
この合成は、(D.Derrieu、P.Midoux、C.Petit、E.Negre、R.Mayer、M.MonsignyおよびA−C Roche.Glycoconjugate Journal 6、(1989)241−255に)参照されているようにではあるが、修正をともなって実施した。ポリL−リシンハイドロブロマイド(分子量70,000〜150,000)(2g)を、無水ジメチルスルホキシド(DMSO)(50ml)中に溶解した。この溶液に、ヘキサン酸のN−ヒドロキシスクシンイミドエステル(1.33g、6.228×10−3モル)を、無水DMSO(10ml)中に溶解し、一滴ずつ添加した。ついでDMSO(8ml)とメタノール(2ml)との混合物中のトリエチルアミン(0.628g、6.213×10−3モル)を、上記のものに一滴ずつ添加し、1時間攪拌した。この溶液を、アセトン(600ml)中に注ぎ入れ、10分間攪拌した。沈殿物ポリ−L−リシン誘導体を濾過し、ついでアセトン中に再縣濁し、10分間攪拌し、再び濾過し、真空オーブン中で2時間、40℃で乾燥した。収量は、2gのポリ(L−リシン)グラフトn−ヘキシルコポリマーであった。
【0094】
この生成物は、アルコール(メタノール、エタノール、および2−プロパノール)、DMSO、DMF中に可溶であったが、水中に不溶であった。ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)は、80,000〜160,000の分子量範囲を生じた。
【0095】
ヘキサン酸のポリL−リシンへのカップリングの程度は、60%であることが見出された。これは、ポリL−リシン上の利用可能なアミノ基の60%であり、アミド結合を介して、ヘキサン酸へ化学的に連結した(この手順の詳細は、下に示される)。
【0096】
(iii.ヘキサン酸のN−ヒドロキシスクシンイミドエステルの、ポリL−リシンのアミノ官能基へのより高度のカップリング)
実施例1(ii)からの生成物(2g)を、メタノール(40ml)中に溶解した。メタノール(20ml)中の過剰のヘキサン酸のN−ヒドロキシスクシンイミドエステル(1g、4.69×10−3モル)を、メタノール溶液へ添加した。メタノール(10ml)中のトリエチルアミン(0.726g)を、15分間にわたって上記のものへ一滴ずつ添加した。その後、溶液を30分間攪拌した。ついでこの溶液を、アセトン(600ml)中に注ぎ入れ、生成物が沈殿した。この生成物を濾過し、ついでアセトン中に再縣濁し、再び濾過した。
【0097】
この生成物を水(2L)中に縣濁し、16時間攪拌し、ついで濾過してあらゆるトリエチルアミンハイドロブロマイドを除去した。この生成物を、減圧下(40℃)で6時間乾燥した。収量は2.1gであった。GPCは、90,000〜180,000の分子量範囲を生じた。ポリL−リシン中の遊離アミノ基の94%を、遊離アミノ基についてのTNBSアッセイを用いてアッセイした時に、アミノ結合を介して、ヘキサン酸へカップリングした(手順の詳細は、下に示される)。
【0098】
(iv.遊離アミノ基についてのTNBSアッセイ)
2,4,6−トリニトロベンゼンスルホン酸を、遊離アミンの決定のために用いる(S.SnyderおよびP.Sobocinski、Anal.Biochem、64、(1975)284−288)。このグラフト化ポリL−リシン中の遊離アミノ基の割合は、TNBSを用いて、非修飾および修飾の両方のポリL−リシンにおける遊離アミノ基の比較滴定によって、測定されてもよい。TNBSは、ポリL−リシングラフトn−ヘキシルコポリマー(5mg)をメタノール(10ml)中に溶解することによって実施した。この溶液5mlを、ナトリウムテトラボレート(0.1M)で10mlに希釈した。TNBS溶液(7.5μl、0.03M)を、このメタノールナトリウムテトラボレート溶液の5mlアリコートへ添加した。生じた溶液を完全に混合し、室温で30分間インキュベーションした。吸光度を、420nmで読み取り(lambda2、Perkin Elmer)、非修飾ポリマーの重量パーセントは、非修飾ポリL−リシンを用いて作成された標準曲線から補間した。
【0099】
したがって、実施例1(ii)において、このパーセンテージは40%であり、したがって60%のヘキサン酸の組み込み度であった。同様に、実施例1(iii)については、6%が非修飾ポリマーであり、したがってポリL−リシン上へのヘキサン酸の組み込みは94%であった。
【0100】
(実施例2)
(ポリ(L−リシン)グラフトn−ヘキシルグラフトポリエチレングリコールコポリマーの合成)
【0101】
【化14】

(反応スキーム6)
疎水性/親水性バランスはさらに、ポリL−リシン上へ親水性ポリエチレングリコールをグラフト化することによって達成することができる。
【0102】
実施例1(ii)から、部分的カップリング方法を用いて、TNBS手順を用いてアッセイした場合、ポリL−リシン上の遊離アミノ基の85%を、ヘキサン酸へカップリングした。
【0103】
ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(式量550)(10g)を、無水ジクロロメタン(50ml)中に溶解し、これへ、20mlジクロロメタン中に溶解されたカルボニルジイミダゾール(CDI)(2.95g)を一滴ずつ添加した。この溶液を、3時間攪拌させておき、ついでジクロロメタンを減圧下で蒸発させ、生成物を石油エーテル(沸点40〜60℃)中に縣濁し、濾過した。生成物を石油エーテル中に再縣濁し、沸点に到達させておき、まだ温かいうちにこの生成物を濾過し、減圧下(40℃)で2時間乾燥した。I.R.は、ヒドロキシル基吸収によって3,600でピークの消失を示した。
【0104】
ポリL−リシングラフトn−ヘキシルコポリマー(上記からのもの)(2g)を、メタノール(40ml)中に溶解した。これへ、メタノール(20ml)中のCDI−活性化ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(1.5g)を一滴ずつ添加した。トリエチルアミン(0.2ml;1.44×10−3モル)を、メタノール(5ml)中に溶解し、上記のこれへ一滴ずつ添加した。添加後、この溶液を4時間攪拌した。生成物を過剰ジエーテルエーテル中に沈殿させ、濾過し、ジエチルエーテル中に再縣濁し、濾過し、減圧下(40℃)で2時間乾燥した。
【0105】
この生成物を水(2L)中に縣濁して、16時間攪拌させておいた。この生成物を濾過し、水で洗浄し、減圧下(40℃)で6時間乾燥した。収量2.2g。
【0106】
TNBSアッセイは、遊離アミノ基の5%だけがポリマー上に存在することを示した。したがって、これらのアミノ基の85%が、アミド結合を介してヘキサン酸へカップリングされ、アミノ基の10%が、カルバメート結合を介して、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(550)へカップリングされた。
【0107】
(実施例3)
ヘキサン酸(1.5g)の94%組み込みを有するグラフトポリ(ヘキシル−L−リシン)(実施例2(iii))を、プロパン−2−オール(50ml)中に溶解した。このポリマー溶液の10mlアリコートへ、テトラヒドロフラン(THF)(10ml)中に溶解した活性剤パクリタキセル(0.06g)を添加した。ステンレス鋼冠状動脈ステント(18mm)を、回転マンドレル上に取り付け、ポリマー+パクリタキセルを含有するプロパン−2−オール/THFの上記溶液でエアスプレーした。コーティングされたステントを、70℃で1時間、減圧乾燥した。
【0108】
ステント上のパクリタキセル負荷は、アセトニトリル(3ml)中に、コーティングされたステントをインキュベーションし、ボルテックスし(30秒間)、ついで227nmの波長で吸光度を測定することによって測定した。薬物負荷は、標準曲線から補間した。1ステントあたりの代表的な薬物負荷は、100μg+/−10%であった。
【0109】
パクリタキセル放出プロフィールを、37℃でリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(0.5ml、pH7.4)中で実施した。読み取りは、1時間、24時間、または48時間の間隔で行なった。パクリタキセルの定量化を、Nucleosil TM100−5CISカラム(I.D.150mm×4.6mm)(Hichrom UK Ltd);移動相50%水:50%アセトニトリル;流速2.0ml/分;カラム温度55℃;227nmの検出吸光度を用いて、HPLC上で実施した。図1および2は、ヘキサン酸の94%組み込みを有するグラフトポリ(ヘキシル−L−リシン)からの、37℃でのパクリタキセル放出プロフィールを示している。
【0110】
(実施例4)
(ポリ(γn−テトラデシル−L−グルタメート)−(PTLG)の合成)
(γn−テトラデシル−L−グルタメート−(TLG)の合成)
TLGを、D.Wasserman,Springfield,J.D.Garber,F.M.Meigsの米国特許第3,285,953号に詳細に記載されている手順を用いて合成した。
【0111】
【化15】

(反応スキーム7)
攪拌器、温度計、および追加の漏斗が備えられた2リットルの3つ口フラスコに、L−グルタミン酸(22g、0.15モル)、t−ブチルアルコール(150ml)、およびn−テトラデカノール(128.4g、0.599モル)を装填した。この混合物を攪拌し、55℃に加熱し、ついで硫酸(97%)(12ml;0.225モル)を、漏斗を通してこれへ一滴ずつ添加した。ついで、この塊の温度を、この塊が透明溶液になるまで上昇させ、65℃に維持した。この溶液を、1時間65℃に維持した。加熱を停止し、トリエチルアミン(10.4ml;0.075モル)をこれへ一滴ずつ添加し、遊離硫酸を中和した。この後に、40mlの水、ついで95%エタノール550mlのこれへの添加を行なった。攪拌しつつ、トリエチルアミン(20.9ml;0.15モル)をこれへ添加した。
【0112】
室温まで冷却した時、粗遊離グルタメートが沈殿し、これを濾過した。回収された沈殿物を、水(500ml)で65℃で30分間スラリー化し、固体ケーキを回収した。このケーキを、メタノール(200ml)、ついでジエチルエーテル(200ml)で洗浄し、ついで減圧オーブンで2時間、50℃で乾燥した。
【0113】
粗沈殿物を、水/2−プロパノール(2.5:1)の混合物中に縣濁し、80℃に加熱し、ついで40℃で冷却および濾過した。回収した沈殿物を、冷水/2−プロパノール混合物で、ついでメタノール(100ml)で、最後にジエチルエーテル(100ml)で洗浄し、減圧オーブンで30℃で一定重量まで乾燥した。この乾燥純粋w−n−テトラデシル−L−グルタメートは、15gの重さであった(27%収率)。
【0114】
(ポリ(γn−テトラデシル−L−グルタメート)−(PTLG)の合成)
PTLGを、TLGから、TLGのカルボキシ無水物を介して合成した(W.D.Fuller、M.S.Verlander、M.Goodman、Biopolymers 15(1976)1869−1871)。TLG(15g、0.043モル)を無水THF(100ml)中に縣濁し、トルエン(2M、65ml)中で65℃で1時間ホスゲンと反応させた。溶液を過剰の石油エーテル(沸点40〜60℃)中に注ぎ入れ、−15℃で24時間保存した。沈殿物を濾過し、石油エーテルで数回洗浄すると、生成物γn−テトラデシル−L−グルタメートカルボキシ無水物(15g、90%収率)を生じた。I.R.,1762および1855におけるNCA結合。
【0115】
γn−テトラデシル−L−グルタメートカルボキシ無水物(15g)を、凝縮器および乾燥管が取り付けられたフラスコにおいて、無水ジクロロメタン(50ml)中に溶解した。この溶液に、トリブチルアミン(0.3g)を添加し、この混合物を、水浴中で加熱し、1時間還流下に保持し、その後、反応混合物を、攪拌しつつ48時間、室温に保持した。ジクロロメタンを減圧下で蒸発させ、ついでメタノール(100ml)を添加した。生成物が沈殿し、これを濾過した。生成物をメタノール(100ml)中に再縣濁し、沸騰に至るまで加熱し、ついで冷却し、ついで生成物を濾過し、メタノール(100ml)で洗浄し、ついで減圧オーブンにおいて30℃で一定重量まで乾燥した。収量は10gであった。GPCは、60,000〜90,000の分子量を生じた。
【0116】
(実施例5)
(ポリ(γn−テトラデシル−L−アスパルテート)−(PTLA)の合成)
PTLAを、正確に、PTLGの合成について実施例4に記載されているように合成した。中間体および生成物の収率は同様であったが、GPCによる分子量は、90,000〜110,000であった。
【0117】
(実施例6)
(ポリ(γn−ドデシル(PDLG)、ヘキサデシル(PHLG)、およびオクタデシル−L−グルタメート)−(POLG)の合成)
鎖長(ドデシルC12;ヘキサデシルC14;オクタデシルC18)を有する上記ポリマーの合成を、実施例4に概略が示された手順にしたがって合成した。これらのポリマーは同様な収率を有し、分子量は、75,000〜115,000の間であった。当該分野において訓練を受けた人も、同じポリマー主鎖上に3つの鎖長すべて、およびそれ以上を有するポリマーを生成しうる。
【0118】
(実施例7)
(ランダムコポリマー(γn−テトラデシル−L−アスパルテートおよびγn−テトラデシル−L−グルタメート)の合成)
L−アスパルテートおよびL−グルタメートと、疎水性鎖(n−テトラデシル)を有する両方のアミノ酸とのランダムコポリマーの合成を、実施例4に記載された手順を用いて達成した。GPCは、30,000〜70,000の分子量分布を明らかにした。
【0119】
(実施例8)
(ポリ(γn−エチル−L−グルタメート)−(PELG)からの、トランスエステル化を介したポリ(γn−ブチル−L−グルタメート)−(PBLG)の合成)
PELG(1g)を、加熱しつつ無水1,2,ジクロロエタン中に溶解した。この溶解されたPELGは、濁った溶液を生じた。1−ブタノール(4g)を、p−トルエンスルホン酸(0.3g)とともにこれへ添加した。この混合物を、80℃で24時間還流させた。この時点で、透明溶液が生じた。1,2,ジクロロエタンを、減圧下で蒸発させ、ついで生成物をメタノール(50ml)中に縣濁した。白色沈殿物が生じ、これを濾過し、メタノール(50ml)中に再縣濁し、再濾過し、メタノールで洗浄し、減圧オーブンにおいて30℃で一定重量まで乾燥した。収量(1g)。生成物PBLGは、塩素化溶媒およびTHF中に可溶であるが、一方で、PELGのみが、塩素化溶媒中に濁った溶液を生じた。HNMRは、エチルの代わりのブチルの置換度が96%であることを示した。GPCは、115,000〜130,000の分子量分布を生じた。
【0120】
(実施例9)
ポリ−n−アルキルグルタメートの親水性の増加の一例は、ポリグルタミン酸上へn−アルキル基を部分的にエステル化することである。ナトリウム塩を有するポリグルタミン酸(分子量50,000〜100,000)(1g)を、水(50ml)中に溶解し、この溶液のpHが1.5になるまで、これへ塩酸(0.1M)を一滴ずつ添加した。これを、Cellu Sep膜M.W.C.O.12,000〜14,000を用いて、24時間水(10L)に対して透析し、凍結乾燥した。収量0.7g。ポリ−n−アルキルグルタメートの部分合成を、T.Shimokuri、T.Kaneko、T.SerizawaおよびM.Akashi、Macromolecular Bioscience 4(2004)407−4116に記載されているように実施した。
【0121】
ポリグルタミン酸(0.7g、5ミリモル)を、N−メチルピロリドン(50ml)中に縣濁し、ついで重炭酸ナトリウム(0.84g、10ミリモル)をこれへ添加し、60℃で2時間攪拌した。1−ブロモブタン(1.03g、7.5ミリモル)を、ついで添加した。溶液を60℃で24時間攪拌した。沈殿した臭化ナトリウムを濾過により除去し、反応混合物をメタノール(400ml)中に注ぎ入れた。濾過された生成物を再びメタノール(200ml)中に縣濁し、濾過し、40℃で2時間減圧乾燥した。乾燥生成物を、水(2L)中に縣濁し、16時間攪拌した。生成物を濾過し、減圧オーブン(40℃)で6時間乾燥した。
【0122】
エステル化を、HNMRによって確認した。HNMR分光法によって測定されたエステル化度は、75%であった。このポリマーは、水中に不溶であったが、クロロホルム、ベンゼン、DMF、およびDMSO中に可溶であった。当業者はまた、ポリアルキル−Lアスパルテートの部分エステル、またはポリアルキル−L−グルタメートおよびポリアルキル−L−アスパルテートの部分エステルの混合物を生成し得る。この公知手順は、ポリ−n−アルキル−γグルタメートについても等しく良好に役立ち、この場合、用いられるブロモアルキルのモル比に応じて、部分エステル化または全エステル化を有し得る(T.Shimokuri、T.Kaneko、T.SerizawaおよびM.Akashi、Macromolecular Bioscience 4(2004)407−411)。
【0123】
(実施例10)
ポリ(γn−ブチル L−グルタメート)(0.15g)を、無水THF(20ml)中に溶解した。これへ、パクリタキセル(0.04g)を添加し、溶解するまで攪拌した。ステンレス鋼冠状動脈ステント(12mm)を、回転マンドレル上に取り付け、上記溶液でエアスプレーした。このコーティングされたステントを、ついで70℃で1時間減圧乾燥した。これを、ポリ(γn−テトラデシル−L−グルタメート)についても同様に実施した。しかしポリ(γn−エチル L−グルタメート)については、このポリマーを1,2ジクロロエタン中に溶解すると、濁った溶液を生じた。
【0124】
ステントへのパクリタキセル負荷を、アセトニトリル(3ml)中に、コーティングされたステントをインキュベーションし、ボルテックスし(30秒間)、ついで227nm波長において吸光度を測定することによって測定した。薬物負荷を、標準曲線から補間した。1ステントあたりの代表的な薬物負荷は、120μg+/−10%であった。
【0125】
パクリタキセル放出プロフィールを、PBS(0.5ml、pH7.4)中で37℃で実施した。読み取りを、1時間、24時間、または48時間の間隔で行なった。パクリタキセルの定量を、HPLC上で、nucleosilTM100−5CISカラム(I.D.150mm×4.6mm)(Hichrom UK Ltd);移動相50%水:50%アセトニトリル;流速2.0ml/分;カラム温度55℃;検出吸光度227nmを用いて実施した。
【0126】
薬物放出(パクリタキセル)および薬物放出の制御は、図3および4に例示されている。異なる鎖長を有する3つのポリγn アルキル L−グルタメートからのパクリタキセル放出が示されている。パクリタキセル放出の調節は、鎖長を変えることによって得られる。この例において、鎖長が長くなればなるほど、パクリタキセルの放出は大きくなる。
【0127】
(実施例11)
ポリ−L−リシン誘導体のインビトロ分解を、PTFEシート上へ位置づけされたポリマー薄膜上で実施した。これらのフィルムを乾燥し、ついで円形フィルムを、コルク穿孔器を用いて、規定直径(50mm)にカットした。これらのフィルムをさらに、一定重量(90〜100mg)まで乾燥した。
【0128】
この円形フィルムを、37℃でインキュベーションされたガラステスト管において、10mlの溶液とともにインキュベーションした。インキュベーション溶液は、次のとおりであった:
リン酸緩衝液(200mM)pH7.4
リン酸緩衝液+5mgのα−キモトリプシン。
【0129】
上記溶液を、24時間毎に交換した。これらのフィルムをインキュベーション溶液から除去し、脱イオン水で洗浄し、一定重量まで乾燥した。
【0130】
(表1:得られた結果の概要)
【0131】
【表1】

(実施例12)
ポリ−L−グルタメートまたはアスパルテート誘導体のインビトロ分解を、正確に実施例11に記載されているように実施した。下の表(表2)は、得られた結果を要約している。
【0132】
(表2)
【0133】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】図1は、誘導体化ポリアミノ酸の層からの治療因子の累積放出を示す。
【図2】図2は、治療因子の放出が1日あたりのベースで示されている、図1の実施形態を示す。
【図3】図3は、3つの異なるポリアミノ酸の構造が、異なる長さの疎水性側鎖を有するように調節されている、治療因子の制御放出のための層の特性の調節を示す。
【図4】図4は、治療因子の放出が1日あたりのベースで示されている、図3の実施形態を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療デバイスの表面上へ生分解性コーティングを作製する方法であって、以下:
該医療デバイスの表面の少なくとも一部分上に生分解性層を形成する工程であって、該層が、コポリマー、および患者への該デバイスの埋め込み後に患者の中に放出可能な治療因子を含んでいる、工程を包含し、
ここで、該コポリマーは、第一モノマー単位および第二モノマー単位を含み、該第一モノマー単位はアミノ酸を含み、該第二モノマー単位は、約14〜約5,000の分子量を有する疎水性炭化水素側鎖を有するように誘導体化されたアミノ酸を含んでいる、方法。
【請求項2】
前記医療デバイスは、患者への埋め込み後に分解可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記疎水性炭化水素側鎖は、アルキル鎖を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記コポリマーは、ポリマーの側鎖と疎水性炭化水素部分とを反応させて、該コポリマーの疎水性炭化水素側鎖を形成することによって作製される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリマーの側鎖の約3%〜約100%が、疎水性炭化水素で誘導体化されている、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリマーがホモポリマーである、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記コポリマーがさらに親水性側鎖を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記親水性側鎖は、ポリエチレン酸化物、糖残基、または多糖類を含んでいる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記親水性側鎖は、官能基を含んでいる、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記官能基は、ヒドロキシル、カルボキシル、双性イオン、スルホネート、ホスフェート、およびアミノからなる群より選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
さらに、前記コポリマー中の疎水性炭化水素側鎖の数または長さを調節することによって、該コポリマーのガラス転移温度を選択する工程を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
さらに、前記コポリマー中の疎水性炭化水素側鎖の数または長さを調節することによって、前記層からの治療因子の放出率を選択する工程を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
さらに、前記コポリマー中の疎水性炭化水素側鎖の数または長さを調節することによって、有機溶媒中の該コポリマーの溶解性を選択する工程も包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
アミノ酸側鎖と疎水性炭化水素とを連結する化学基は、アミド、エステル、カーボネート、カルバメート、オキシムエステル、アセタール、ケタール、ウレタン、ウレア、エノールエステル、オキサゾリンディーズ、無水物、またはオキシムエステルを含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記コポリマーは、誘導体化γポリアミノ酸を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記γポリアミノ酸は、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、またはポリリシンを含んでいる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記治療因子は、前記層中に取り込まれているか、または前記コポリマーへ共有結合されている、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記コポリマーは、有機溶媒中に可溶であり、水溶液中に不溶である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
第一アミノ酸は、誘導体化側鎖を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記コポリマー中のアミノ酸のすべての約5%〜約95%が、誘導体化側鎖を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
請求項1に記載の方法であって、前記コポリマーの少なくとも一部は、以下の式:
【化1】

を含み、
ここで、
pは、該ポリマーのモノマー単位を示す整数であり、pは、第一モノマー単位を示し、pは、第二モノマー単位を示し;
nは、約1と約500,000との間の整数であり;
...Tは独立して、Hまたは−(CH−X基の式を有するように選択され、
ここで、Xは、H、ハロゲン、ヒドロキシル基、チオール基、カルボキシル基、アミノ基、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルキニル基であり、−(CHは、mが1と約100との間の整数である基であり、1つ以上のメチレン基が必要に応じて、O、S、N、C、C=O、NR基、CR基、CR基、またはSiRで置換されており、ここで、R、R、R、R、R、およびRは、各々独立して、結合、pi結合、H、ヒドロキシル基、チオール基、カルボキシル基、カルバメート、オキソカーボン基、アミノ基、アミド(amido)基、アミド(amide)基、ホスフェート基、スルホネート基、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルキニル基、シロキサン、または官能基であり;
ここで、疎水性炭化水素側鎖は、約14〜約5,000の分子量を有し;
...Lは独立して、結合、または示されている炭素を、1または複数の共有結合によって連結する連結基であるように選択され;
...Zは独立して、結合、または約100原子未満の連結基であるように選択され;そして
YcおよびYnは各々独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシル基、チオール基、カルボキシル基、アミノ基、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルキニル基、シロキサン、または官能基であるように選択される、
方法。
【請求項22】
医療デバイスの表面上の生分解性コーティングであって、以下:
該医療デバイスの表面の少なくとも一部分上の生分解性層であって、該層はコポリマー、および患者への該デバイスの埋め込み後に該患者の中に放出可能な治療因子を含み、該コポリマーは、第一モノマー単位および第二モノマー単位を含み、該第一モノマー単位はアミノ酸を含み、該第二モノマー単位は、約14〜約5,000の分子量を有する疎水性炭化水素側鎖を含むように誘導体化されたアミノ酸を含んでいる、層
を含む生分解性コーティング。
【請求項23】
前記医療デバイスは、患者への埋め込み後に生物分解可能である、請求項22に記載のコーティング。
【請求項24】
前記疎水性炭化水素側鎖は、アルキル鎖を含んでいる、請求項22に記載のコーティング。
【請求項25】
前記第一モノマー単位および前記第二モノマー単位は、前記コポリマーの少なくとも一部分を形成するために誘導体化されたポリアミノ酸の一部である、請求項22に記載のコーティング。
【請求項26】
前記ポリアミノ酸は、ホモポリマーを含んでいる、請求項25に記載のコーティング。
【請求項27】
前記ポリアミノ酸のガラス転移温度は、前記ポリアミノ酸への疎水性炭化水素の添加によって、少なくとも約10℃だけ変更される、請求項25に記載のコーティング。
【請求項28】
前記ポリアミノ酸の治療因子の放出率が、前記ポリアミノ酸への疎水性炭化水素の添加によって変更される、請求項25に記載のコーティング。
【請求項29】
前記ポリアミノ酸上の疎水性炭化水素は、有機溶媒中の溶解性を該ポリアミノ酸へ付与し、該ポリアミノ酸は、疎水性炭化水素をともなわない有機溶媒中に効果的に不溶性である、請求項25に記載のコーティング。
【請求項30】
前記コポリマーの側鎖の約3〜約100%が、疎水性炭化水素で誘導体化されている、請求項22に記載のコーティング。
【請求項31】
前記コポリマーはさらに、親水性側鎖を含んでいる、請求項22に記載のコーティング。
【請求項32】
前記親水性側鎖は、ポリエチレン酸化物、糖残基、または多糖類を含んでいる、請求項31に記載のコーティング。
【請求項33】
前記親水性側鎖は、官能基を含んでいる、請求項31に記載のコーティング。
【請求項34】
前記官能基は、ヒドロキシル、カルボキシル、双性イオン、スルホネート、ホスフェート、およびアミノからなる群より選択される、請求項33に記載のコーティング。
【請求項35】
アミノ酸側鎖と疎水性炭化水素とを連結する化学基は、アミド、エステル、カーボネート、カルバメート、オキシムエステル、アセタール、ケタール、ウレタン、ウレア、エノールエステル、オキサゾリンディーズ、無水物、またはオキシムエステルを含んでいる、請求項22に記載のコーティング。
【請求項36】
前記コポリマーは、誘導体化γポリアミノ酸を含んでいる、請求項22に記載のコーティング。
【請求項37】
前記γポリアミノ酸は、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、またはポリリシンを含んでいる、請求項36に記載のコーティング。
【請求項38】
前記治療因子は、前記層中に取り込まれているか、または前記コポリマーへ共有結合されている、請求項22に記載のコーティング。
【請求項39】
前記コポリマーは有機溶媒中に可溶であり、水溶液中に不溶である、請求項22に記載のコーティング。
【請求項40】
第一アミノ酸は、誘導体化側鎖を含んでいる、請求項22に記載のコーティング。
【請求項41】
請求項22に記載のコーティングであって、前記コポリマーの少なくとも一部分は、以下の式:
【化2】

を含み、
ここで、
pは、該ポリマーのモノマー単位を示す整数であり、pは、第一モノマー単位を示し、pは、第二モノマー単位を示し;
nは、約1と約500,000との間の整数であり;
...Tは独立して、Hまたは−(CH−X基の式を有するように選択され、
ここで、Xは、H、ハロゲン、ヒドロキシル基、チオール基、カルボキシル基、アミノ基、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルキニル基であり、−(CHは、mが1と約100との間の整数である基であり、1つ以上のメチレン基が必要に応じて、O、S、N、C、C=O、NR基、CR基、CR基、またはSiRで置換されており、ここで、R、R、R、R、R、およびRは、各々独立して、結合、pi結合、H、ヒドロキシル基、チオール基、カルボキシル基、カルバメート、オキソカーボン基、アミノ基、アミド(amido)基、アミド(amide)基、ホスフェート基、スルホネート基、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルキニル基、シロキサン、または官能基であり;
ここで、疎水性炭化水素側鎖は、約14〜約5,000の分子量を有し;
...Lは独立して、結合、または示されている炭素を、1または複数の共有結合によって連結する連結基であるように選択され;
...Zは独立して、結合、または約100原子未満の連結基であるように選択され;そして、
YcおよびYnは各々独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシル基、チオール基、カルボキシル基、アミノ基、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルキニル基、シロキサン、または官能基であるように選択される、
コーティング。
【請求項42】
医療デバイスを用いた治療因子を送達する方法であって、該方法は、以下:該治療因子および水溶性ポリアミノ酸を含んでいる層を、該医療デバイスの表面の少なくとも一部分へ適用する工程、および該ポリアミノ酸を互いに架橋して、該層を安定させる工程を包含し、該治療因子は、該医療デバイスが患者に埋め込まれた時に放出可能である、方法。
【請求項43】
前記架橋工程は、熱、または紫外線エネルギーの適用により前記層を硬化する工程を包含する、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
請求項42に記載の方法によって調製された層を含んでいる医療デバイス上のコーティング。
【請求項45】
医療デバイスの表面上への生分解性コーティングの作製方法であって、以下:
該医療デバイスの表面の少なくとも一部分上に生分解性層を形成する工程であって、該層は、コポリマー、および患者への該デバイスの埋め込み後に該患者の中に放出可能な治療因子を含んでいる、工程、および該コポリマー中の疎水性炭化水素側鎖の数または長さを調節することによって、該層からの治療因子の放出率を選択する工程を包含し、
ここで、該コポリマーは、第一モノマー単位および第二モノマー単位を含み、該第一モノマー単位がアミノ酸を含み、該第二モノマー単位が、約14〜約5,000の分子量を有する疎水性炭化水素側鎖を有するように誘導体化されたアミノ酸を含んでいる、
方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−502376(P2008−502376A)
【公表日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−514098(P2007−514098)
【出願日】平成17年5月25日(2005.5.25)
【国際出願番号】PCT/GB2005/002081
【国際公開番号】WO2005/115492
【国際公開日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(506392827)バイオインターアクションズ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】