説明

吸着再生装置および空気調和機の室内機

【課題】本発明は、加湿機能と脱臭機能を1ユニット化することで省スペース化が得られ、通年の使用が可能となって無駄がなく、吸着剤の吸着作用と再生作用を繰り返して有効利用できる吸着再生装置と、この吸着再生装置を備えた空気調和機の室内機を提供する。
【解決手段】吸着再生装置Kは、室内に配置される装置本体30に、導いた室内空気を屋外へ排出する排気通風路bが接続される排気部32と、導いた室内空気を再び室内へ吹出す吹出し通風路15が接続される給気部33を備え、さらに、水分および臭気成分を吸着し、かつ放出可能な吸着剤を充填し、排気部と給気部に対向する位置に交互に移動自在な吸着体35を収容し、排気部に位置する吸着体から吸着体が吸着している臭気成分を分解または放出させる第1の再生器37を排気部に設け、給気部に位置する吸着体から吸着体が吸着している水分を放出させる第2の再生器38を給気部に設け、制御部23により排気部および給気部の切換え通風制御と吸着体の移動制御をなす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気に含まれる水分および臭気成分を吸着する吸着体を備え、その吸着体が吸着した水分および臭気成分を放出して再生する吸着再生装置と、この吸着再生装置を備えた空気調和機の室内機に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、気密性の高い住居が増えて室内に臭気が充満し易く、ユーザーの臭いに対するニーズが高まっている。そこで空気調和機には、脱臭機能として脱臭フィルタや脱臭ユニットが設置されている。また、冬季における風邪やインフルエンザ対策として、あるいは調湿を行うための付加機能として、加湿機能の搭載も求められている。
【0003】
しかしながら、近時用いられている空気調和機は、室内空気に含まれる塵埃等を捕捉するエアフィルタを自動で掃除するエアフィルタ掃除機能を搭載することや、電気集塵機による空気清浄機能の搭載が一般化しつつある。このような多機能化が進んでおり、さらに機能追加のためのスペースの確保が困難な状況である。
【0004】
従来の空気調和機の付加機能としての加湿器が、たとえば[特許文献1]や[特許文献2]に開示されている。これは、ゼオライトやシリカゲルなどの吸湿剤を担持させた吸湿体を円形状(ローター)に形成し、吸湿領域と再生領域を回転通過させることで、連続的に吸湿−再生を繰り返し、連続加湿を行うようになっている。
【特許文献1】特開2002−22246号公報
【特許文献2】特許第3120964号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、[特許文献1]や[特許文献2]の技術において、脱臭も同機構で行う場合は、再生させるのに時間がかかる。そのため、常に吸湿体が回転している状態では、吸湿剤が再生しきれない虞れがある。すなわち、連続加湿を円滑に行うことができ、かつ脱臭時には一定の再生時間を確保する機構が必要となる。
【0006】
また、上記脱臭機能として、脱臭フィルタを搭載することのみであれば、コストが安く抑えられるが、ユーザーにおいて水洗いなどのメンテナンスが必要となる。プラズマ脱臭のように、メンテナンスを不要とした再生機構を有すると、脱臭ユニット、加湿ユニットをそれぞれ単体ユニットとしなければならず、コストがかかる。さらに、加湿ユニットは、主に冬季における乾燥時期にのみ使われ、使用されない期間が長く無駄がある。
【0007】
本発明は上記事情にもとづきなされたものであり、その目的とするところは、加湿機能と脱臭機能を1ユニット化することで省スペース化が得られ、加湿機能を用いない期間は脱臭機能を用いることで通年の使用が可能となって無駄がなく、吸着剤の吸着作用と再生作用を繰り返すことで有効利用できる吸着再生装置と、この吸着再生装置を備えた空気調和機の室内機を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を満足するため本発明の吸着再生装置は、室内に配置される装置本体に、導いた室内空気を屋外へ排出する排気通風路が接続される排気部と、導いた室内空気を再び室内へ吹出す吹出し通風路が接続される給気部を備え、さらに、装置本体に、水分および臭気成分を吸着し、かつ放出可能な吸着剤を充填し、排気部と給気部に対向する位置に交互に移動自在な吸着体を収容し、排気部に位置する吸着体から吸着体が吸着している臭気成分を分解または放出させる第1の再生手段を排気部に設け、給気部に位置する吸着体から吸着体が吸着している水分を放出させる第2の再生手段を給気部に設け、制御手段により排気部および給気部の切換え通風制御と吸着体の移動制御をなす。
【0009】
上記目的を満足するため本発明の空気調和機の室内機は、吸込み口および吹出し口を備えた室内機本体に、上記吸着再生装置を備えた。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、加湿機能と脱臭機能とを1ユニット化できて省スペース化が得られ、加湿機能を用いない期間は脱臭機能を用いることで通年の使用が可能となって無駄がなく、吸着剤の吸着作用と再生作用を繰り返すことで長期に亘って有効利用できる吸着再生装置と、この吸着再生装置を備えた空気調和機の室内機を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を、図面にもとづいて説明する。
図1は空気調和機の室内機の概略斜視図、図2は同じ室内機の概略縦断面図、図3は室内機内部の正面である。(なお、説明中に符号を付していない部品は図示していない。以下同じ)
室内機本体1は、前側筐体を構成する前面パネル2と、後板筐体3とから構成され、上下方向に対し幅方向に横長状をなす。室内機本体1の前面側一部に前面吸込み口4が開口され、この前面吸込み口4に対向する前面パネル2には開閉駆動機構に支持される可動パネル2Aが嵌め込まれている。
【0012】
運転停止の状態では図2に実線で示すように、上記可動パネル2Aは前面パネル2表面に接合して同一面となり、前面吸込み口4を閉成する。空調運転時には、図1に示し、図2に二点鎖線で示すように可動パネル2Aが手前側に突出して、前面パネル2との隙間を介して前面吸込み口4が室内に対して開放するよう制御される。
【0013】
室内機本体1の上部には上面吸込み口5が設けられる。この上面吸込み口5には枠状の桟が嵌め込まれていて、複数の空間部に仕切られている。すなわち、上面吸込み口5は常時、全面的に開口された吸込み部となっている。これに対して先に説明した前面吸込み口4は、突出した可動パネル2Aと前面パネル2との隙間が、実質的な吸込み部となる。
【0014】
上面吸込み口5は、室内機本体1が壁面高所に取付けられることもあって、居住人から見ることができない。したがって、一般的に前面吸込み口4のように可動パネル2Aを取付けることなく、上面吸込み口5は常に開口した状態としている。
上記室内機本体1の前面下部には吹出し口6が開口され、この吹出し口6には2枚の吹出しルーバー7a,7bが並行して設けられる。各吹出しルーバー7a,7bは、それぞれの回動姿勢によって上記吹出し口6を開閉し、かつ運転条件に応じて熱交換空気の吹出し方向を設定できるようになっている。
【0015】
室内機本体1内には、前側熱交換器部8Aと後側熱交換器部8Bとで略逆V字状に形成される熱交換器8が配置される。前側熱交換器部8Aは前面パネル2と間隙を存してほぼ平行な湾曲状に形成され、前面吸込み口4と上面吸込み口5に対向する。後側熱交換器部8Bは直状に形成され、上面吸込み口5と斜めに傾斜して対向する。
【0016】
上記熱交換器8を構成する前側熱交換器部8Aと後側熱交換器部8Bとの相互間に、室内送風機10が配置される。上記室内送風機10は、室内機本体1の一側端のスペースに配置されたファンモータと、このファンモータの回転軸に一方の支軸が連結される横流ファンとから構成される。
【0017】
上記前側熱交換器部8Aの下端部は前ドレンパン12a上に載り、上記後側熱交換器部8Bの下端部は後ドレンパン12b上に載る。前、後ドレンパン12a,12bは、それぞれの熱交換器部8A,8Bから滴下するドレン水を受け、図示しない排水ホースを介して外部に排水できるようになっている。
【0018】
前、後ドレンパン12a,12bの一部側壁外面は室内送風機10に近接して設けられ、室内送風機10の横流ファンに対するノーズを構成している。前後ドレンパン12a,12bの側壁部分と吹出し口6の各辺部との間は隔壁部材14によって連結され、この空間がノーズと吹出し口9とを連通する吹出し通風路15となっている。
【0019】
一方、前面吸込み口4および上面吸込み口5と、熱交換器8を構成する前側熱交換器部8Aと後側熱交換器部8Bとの間には、図3のみ示す、前面エアフィルタ17と、上面エアフィルタ18が取付けられている。前面エアフィルタ17の上端部と、上面エアフィルタ18の前端部との間に沿って、自動エアフィルタ清掃装置20が設けらている。
【0020】
この自動エアフィルタ清掃装置20は、前面エアフィルタ17を上面側へ往復移動し、かつ上面エアフィルタ18を前面側へ往復移動して、通過させる。この通過時に、それぞれのエアフィルタ17,18が捕捉している塵埃を除去し、さらに室外へ排出するよう自動で作用する。したがって、ユーザーはエアフィルタ17,18に対する塵埃除去のメンテナンスを必要とせず、目詰まりを心配しないですむ。
【0021】
再び図3に示すように、上記熱交換器8、前面エアフィルタ17、上面エアフィルタ18および自動エアフィルタ清掃装置20の右側部には電気部品箱21が設けられ、かつこれらの左側部には排気ユニット22が設けられる。
【0022】
上記電気部品箱21内には、図2に概略的に示すように、制御部(制御手段)23が収容されている。この制御部23は、前面パネル2の一部に設けられリモコン(遠隔操作盤)からの送信信号を受ける受信部と、前面吸込み口4に設けられる温度センサと、熱交換器8に取付けられる温度センサ他と電気的に接続され、これらからの信号を受ける。
【0023】
さらに上記制御部23は、可動パネル2Aの駆動機構と、吹出しルーバー7a,7bの駆動機構と、室内送風機10のファンモータと、後述する吸着再生装置Kおよび、排気ユニット22他に電気的に接続され、これらへ制御信号を送るように構成される。
【0024】
上記排気ユニット22は、吸込み部aが上記自動エアフィルタ清掃装置20と接続され、この装置20が集めた塵埃を、排気口体bを介して屋外へ排出する排気ファン25を備えている。さらに、排気ファン25の吸込み部aには、自動エアフィルタ清掃装置20から室内機本体1内の空気を吸込むよう切換える、ダンパ機構を備えている。
【0025】
これら排気ファン25およびダンパ機構は、上記制御部23からの制御信号を受ける。排気ファン25の排気口体bは、室内機本体1の後板筐体3と、室内機本体1を取付けた壁面を貫通して屋外へ突出している。したがって、排気ファン25の作用により、吸込み部aから吸込んだ空気を屋外へ排出できる。
【0026】
前側熱交換器部8Aと前面エアフィルタ17との間には、図1および図3に示すように、空気清浄機ユニット27と、上記吸着再生装置Kとが左右に並んで設けられる。図2においては、空気清浄機ユニット27の下部側に吸着再生装置Kを示しているが、実際には上記したように左右に並んで取付けられる。
【0027】
上記空気清浄機ユニット27は、左右に並設される電気集塵機28と集塵機電源部29からなる。電気集塵機28は、流通する空気中の塵埃に電荷を与える荷電側電極と、電荷を与えられた塵埃を捕捉する集塵側電極を備えている。すなわち、上記前面エアフィルタ17で捕捉されずに通過してくる細かい塵埃を確実に捕捉できる。
【0028】
つぎに、上記吸着再生装置Kについて説明する。
図4は、吸着再生装置Kの基本構成を示している。
図中30は装置本体であって、この装置本体30は、中央の仕切り31を介して排気部32と、給気部33とに区画される。上記仕切り31には孔部34が設けられていて、この孔部34を介して、排気部32と給気部33とに亘って移動自在に吸着体35が収容される。
【0029】
上記吸着体35は、スライド機構に支持され、上記制御部23からの制御信号にもとづいて、排気部32と給気部33とのいずれかに移動する。吸着体35は、上記孔部34に嵌め込まれる枠部を備えていて、排気部32と給気部33とのいずれに位置しても、枠部が孔部34に嵌め込まれ、実質的に孔部34は常に閉塞されている。
【0030】
吸着体35の枠部内には水分および臭気成分を吸着し、かつ放出可能な吸着剤が充填される。吸着剤として、たとえばゼオライトやシリカゲルのように吸湿効果に優れたもの、二酸化チタンなどのように光触媒が用いられる。
【0031】
上記排気部32に排気ファンが備えられるが、これは図2に示す、排気ユニット22の排気ファン25が兼用している。上記排気ファン25の吸込み部aにはダンパ機構が設けられ、自動エアフィルタ清掃装置20と、室内機本体1内に対して吸込み方向を切換えられる。また、排気ファン25に形成される排気口体bが排気通風路を構成する。
【0032】
上記排気部32には第1の再生器(第1の再生手段)37が設けられる。この第1の再生器37は、吸着体35に対し集中してUV光を投光するUVランプや、UV−LEDである。もしくは吸着体35に対し集中してオゾンを発生する、オゾン発生装置あるいは上記電気集塵機28であってもよい。
【0033】
上記給気部33には、給気ファンが備えられているが、これは上記熱交換器8に覆われるように配置される上記室内送風機10が兼用する。したがって、室内送風機10の駆動により、室内空気が給気部33に導かれ、さらに室内機本体1内に形成される上記吹出し通風路15を介して室内へ吹出されるようになっている。
【0034】
上記給気部33には、第2の再生器(第2の再生手段)38が設けられる。第2の再生器38は加熱ヒータであり、吸着体35に対し集中して放熱する。あるいは、暖房運転時に、可動パネル2Aを若干開放し、吹出しルーバー7a,7bを上向きにして、可動パネル2A面に沿って暖気をショートサーキットさせ、吸着体35に導くようにしてもよい。
【0035】
つぎに、このようにして構成される空気調和機の室内機における作用について説明する。
使用者がリモコン(遠隔操作盤)の運転ボタンを押圧操作すると、可動パネル2Aが前面吸込み口4を開放するとともに、室内送風機10が駆動し、空気清浄機ユニット27が作用する。同時に、室内機と冷媒管およびケーブルを介して連通する室外機において圧縮機が駆動し、冷凍サイクル運転が開始される。
【0036】
室内空気は、前面吸込み口4と上面吸込み口5から室内機本体1内に導かれ、さらに前面エアフィルタ17および上面エアフィルタ18を通過する。このとき、室内空気中に含まれる塵埃が前面エアフィルタ17および上面エアフィルタ18に捕捉される。前面エアフィルタ17で塵埃が除去された室内空気は空気清浄機ユニット27を通過し、より微細な塵埃が電気的に集塵される。
【0037】
清浄化した室内空気は熱交換器8を流通し、ここに導かれる冷媒と熱交換作用が行われる。そのあと、熱交換空気は吹出し通風路15に沿って導かれ、吹出し口6から吹出しルーバー7a,7bに案内されて室内へ吹出される。したがって、室内に対する効率のよい冷房作用、もしくは暖房作用が継続される。
【0038】
つぎに、使用者がリモコンの「加湿モード」を選択した場合について説明する。
図5(A)に示すように、制御部23は吸着体35を排気部32に移動するとともに、ダンパ機構を室内機本体1内側に切換え、かつ排気ファン25を駆動して室内空気を排気部32に導びくよう制御する。室内空気は排気部32と、ここに位置する吸着体35を通過する。室内空気に含まれる水分は吸着体35に吸着され、漸次、蓄積する。
【0039】
水分が吸着体35に吸着され乾燥化した室内空気は、ダンパ機構に案内されて、排気通風路bから屋外へ排出される。このような作用を所定時間継続することで、吸着体35には充分な量の水分が吸着保持される。
【0040】
つぎに制御部23は、排気ファン25を駆動停止し、図5(B)に示すように、吸着体35を給気部33に移動するとともに、室内送風機10を駆動して室内空気を給気部33に導びくよう制御する。さらに制御部23は、給気部33に配置される第2の再生器38の発熱作用を開始する。
【0041】
特に、前面吸込み口4から室内機本体1内に吸込まれた室内空気は、給気部33を円滑に流通する。この給気部33では、第2の再生器38が吸着体35を集中加熱しているので、吸着体35が含有する水分が蒸発し、放出して給気部33を流通する室内空気に混合する。
【0042】
したがって、吹出し通風路15を介して室内に吹出される空気は、高湿度化した状態になっており、室内を加湿する。室内の湿度が上昇して、乾燥化を防止する一方で、水分を放出した吸着体35を構成する吸着剤は第2の再生器38により再生され、再度の使用に供される。
【0043】
室内機本体1の吹出し口6に湿度センサを設けて、吹出される空気の湿度を検知すれば、吸着体35の水分含有量が分る。吹出される空気の湿度が所定値以下になれば、吸着体35が含有する水分の放出が略終了したこととなる。このときは、再び図5(A)で説明した作用に戻り、さらに、図5(B)で説明した運転になる。
【0044】
このように加湿運転は、排気部32に位置する吸着体35が室内空気から水分を吸着し、乾燥した室内空気は屋外へ排出する。そして、給気部33に吸着体35を移動して室内空気を給気部33に導き、第2の再生器38を作用する。吸着体35が吸着した水分は室内に放出され、室内を加湿する。吸着体35は再生され、つぎの水分吸着をなす。
【0045】
なお、この加湿運転は、室内が乾燥化する冬季に行われることがほとんどであるので、第2の再生器38として加熱ヒータを用いて吸着体35を加熱する。温度上昇し、高湿度化した熱交換空気を室内に吹出すようにしても何ら支障がない。あるいは、暖房運転時に、暖気をショートサーキットさせて吸着体35を加熱するようにしてもよい。
【0046】
つぎに、使用者がリモコンの「脱臭モード」を選択した場合について説明する。
図6(A)に示すように、制御部23は吸着体35を給気部33に移動するとともに、室内送風機10を駆動して室内空気を給気部33に導く。室内空気は給気部33と、ここに位置する吸着体35を流通する。室内空気に含まれる臭気成分は吸着体35に吸着され、漸次、吸着体35に蓄積する。
【0047】
このような作用を所定時間継続することで、吸着体35には充分な量の臭気成分が吸着保持される。その一方で、室内に存在する臭気濃度が低下し、清浄化されて無臭状態になる。すなわち、室内の脱臭作用が早急になされる。
【0048】
室内機本体1の前面吸込み口4に臭気センサを設けて、室内機本体1内に吸込まれる空気の臭気を検知していれば、室内の臭気濃度が分る。吸込まれる室内空気の臭気濃度が所定値以下になれば、室内の臭気成分を全て吸着したこととなる。このとき制御部23は、図6(A)で説明した、以上の作用を停止する。
【0049】
つぎに制御部23は、図6(B)に示すように、吸着体35を排気部32に移動するとともに、排気ファン25を駆動して室内空気を排気部32に導くよう制御する。さらに制御部23は、排気部32に配置される第1の再生器37を作用させ、吸着体35に対し集中してUV光を照射し、もしくはオゾンを放出する。
【0050】
吸着体35に含有する臭気成分が分解し、かつ放出される。室内機本体1内に吸込まれた室内空気は、排気部32に導かれて吸着体35を流通する。このとき、室内空気に吸着体35から分解し放出された臭気成分が混合し、汚れた室内空気は排気通風路bを介して屋外へ排出される。吸着体35は再生され、再度の使用に供される。
【0051】
以上述べたように脱臭運転は、給気部33に位置する吸着体35が室内空気から臭気成分を吸着し、清浄な室内空気が室内に循環する。しかる後、排気部32に吸着体35を位置して、室内空気を排気部32から屋外へ排出し、さらに第1の再生器37を作用する。臭気成分は吸着体35から放出され、吸着体35は再生されて、つぎの脱臭作用をなす。
【0052】
なお、吸着体35を構成する吸着剤としてゼオライトを用いた場合は、第1の再生器37としてUVランプや、UV−LEDを用いるとよい。あるいは、吸着剤に二酸化チタン等の光触媒を含有することで、光触媒反応により臭気成分が効率よく分解される。これに対応して、オゾン発生装置や、電気集塵機28が用いられる。
【0053】
このように、吸着再生装置Kとして、加湿機能と脱臭機能を1ユニット化することで省スペース化が得られる。加湿機能を用いない期間は、脱臭機能を用いることで通年の使用が可能となって無駄がない。吸着体35を構成する吸着剤の吸着作用と再生作用を繰り返すことで、吸着体35の有効利用を図れる等の利点がある。
【0054】
なお、上記実施の形態では吸着再生装置Kとして、排気部32と給気部33とを、仕切り31を介して並設し、1つの吸着体35を排気部32と給気部33のいずれか一方に移動制御するようにしたが、これに限定されるものではなく、以下に述べるように構成してもよい。
【0055】
図7および図8は、第2の実施の形態における吸着再生装置Kaを概略的に示している。
装置本体30A内に収容される吸着体35は、第1の吸着体35Aと第2の吸着体35Bとに、2個に分割した状態で移動自在に収容される。すなわち、第1の吸着体35Aと第2の吸着体35Bは、互いに厚み分だけずれて位置し、スライド機構に移動自在に連結される。
【0056】
上記制御部23は、これら第1の吸着体35Aと第2の吸着体35Bを、同時に、かつ逆方向に移動制御する。上記排気部32には排気通風路bが接続され、給気部33には吹出し通風路15が接続される。排気部32には第1の再生器37が設けられ、給気部33には第2の再生器38が設けられることも変りがない。
【0057】
図7は、加湿モードが選択された状態を示している。室内空気が排気部32に導かれ、第2の吸着体35Bを流通して、室内空気に含まれる水分が第2の吸着体35Bに吸着される。乾燥化した室内空気は排気通風路を介して屋外へ排出される。
【0058】
その一方で、室内空気が給気部33に導かれ、給気部33に位置する第1の吸着体35Aを流通して再び室内へ吹出される。給気部33に位置する第2の再生器38が作用して、第1の吸着体35Aを加熱する。
【0059】
図7の以前の状態では、第1の吸着体35Aは排気部32に位置しており、ここに導かれる室内空気から、室内空気に含まれる水分を吸着している。図のように、第1の吸着体35Aが給気部33に位置して、第2の再生器38により加熱されることで、吸着していた水分が放出され、室内を加湿するとともに、吸着剤の再生がなされる。
【0060】
また、図7の以前の状態では、第2の吸着体35Bは給気部33に位置しており、第2の再生器38が作用するところから、吸着していた水分が放出され、吸着剤が再生している。そして、図のように第2の吸着体35Bが排気部32に位置することで、再び水分吸着をなす。
【0061】
このように、第1の吸着体35Aと第2の吸着体35Bは、同時に給気部33と排気部32を交互に移動する。したがって、常に、給気部33において室内空気にいずれかの吸着体35A,35Bから水分が放出される。室内へ高湿度の空気が吹出され、加湿運転が中断することなく継続する。
【0062】
図8は、脱臭モードが選択された状態を示している。室内空気が給気部33に導かれ、第2の吸着体35Bを通過して、室内空気に含まれる臭気成分が第2の吸着体35Bに吸着される。臭気成分が除去され清浄化した室内空気は、吹出し通風路15を介して室内へ吹出される。
【0063】
その一方で、室内空気が排気部32に導かれ、第1の吸着体35Aを流通して屋外へ排出される。排気部32に位置する第1の再生器37が作用して、第1の吸着体35Aに対し集中してUV光を照射し、もしくはオゾンを発生する。
【0064】
図8の以前の状態では、第1の吸着体35Aは給気部33に位置しており、ここに導かれる室内空気から、室内空気に含まれる臭気成分を吸着している。図のように、第1の吸着体35Aが排気部32に移動し、第1の再生器37から照射されるUV光もしくはオゾンにより、吸着していた臭気成分が放出され、吸着剤の再生がなされる。
【0065】
また、図8の以前の状態では、第2の吸着体35Bは排気部32に位置しており、第1の再生器37が作用するところから、吸着していた臭気成分が放出され、吸着剤が再生している。図のように、第1の吸着体35Aが給気部33に位置することで、再び臭気成分の吸着をなす。
【0066】
このように、第1の吸着体35Aと第2の吸着体35Bは、同時に給気部33と排気部32を交互に移動する。したがって、常に、排気部32において室内空気に含まれる臭気成分が、いずれかの吸着体35A,35Bに吸着される。室内空気から臭気成分が除去され、脱臭運転が中断することなく継続する。
【0067】
第1の実施の形態および、第2の実施の形態において、加湿モードが選択された場合は、吸着体35と、第1の吸着体35Aおよび第2の吸着体35Bにおけるスライド時間を速くして、吸着・再生の両作用を切換えて連続加湿を行う。
【0068】
また、脱臭モードが選択された場合は、光触媒やオゾンによるガス分解には時間がかかるため、スライド時間を長くし、一定時間または一定日数をかけて定期的に再生を行う。このことで、常に吸着体をメンテナンスフリーの状態にして、初期脱臭性能を維持できる。
【0069】
先に説明したような[特許文献1]あるいは[特許文献2]のように、円板状の吸湿体を常に回転駆動する構成とは相違して、加湿作用と脱臭作用でそれぞれに最適なスパンとなるように制御し、吸着体35と、第1の吸着体35Aおよび第2の吸着体35Bによる吸着と、再生を行うことができる。
【0070】
吸着体35と、第1の吸着体35Aおよび第2の吸着体35Bを構成する吸着剤として、水分と臭気の両方を吸着し、なお水の脱着時に臭気物質が脱着しない特殊機能性をもった材料であることが必要である。
たとえばシリカゲルを吸着剤として使用した場合、シリカゲルは細孔が大きいため、大きな分子をもつ臭気分子を吸着し易いが、表面が親水性のため、水分の方が臭気物質より吸着力が大きい。
【0071】
よって、加湿モードでの再生の際に、臭気移行が生じてしまう。そこで、臭気分子を吸着し易く、水分の脱着時には臭気物質が脱着しない、つまり表面疎水性を持つことで水分よりも臭気物質を強く吸着する特殊機能性を持つことが必要である。
【0072】
吸着剤として、加熱温度が所定温度以下では水分のみ放出し、所定温度以上で臭気物質を放出する、温度に依存する特性をもつものであると、より有効である。このとき、排気部32と給気部33の両方に再生器として加熱ヒータを設置し、加熱温度をコントロールすることで、水分と臭気成分の放出を制御し、加湿と脱臭の両機能を切換えられる。
【0073】
なお、第2の実施の形態では、排気部32と、給気部33のそれぞれに、第1の吸着体35Aもしくは第2の吸着体35Bのいずれかを備えるよう分割したが、これに限定されるものではない。
たとえば、排気部32と、給気部33を交互に、n室ずつ配置し、隣接するn−1通風路を占有する大きさの吸着体35をスライド移動し、往復させるようにしてもよい。
【0074】
具体的には、第3の実施の形態として、たとえば図9に示すように構成される吸着再生装置Kbとなる。
この装置本体30Bには、2つの排気部32A,32Bと、2つの給気部33A,33Bとが交互に配置される。それぞれの排気部32A,32Bには、室内空気を導いて屋外へ排出する排気通風路bが接続されるとともに、図示しない第1の再生器が備えられる。それぞれの給気部33A,33Bには、室内空気を導いて室内へ吹出す吹出し通風路15が接続されるとともに、図示しない第2の再生器が備えられる。
【0075】
吸着体35は、第1の吸着体35Dと第2の吸着体35Eとから構成される。それぞれの吸着体35D,35Eは、排気部32A,32Bと、給気部33A,33Bのいずれか1つを残し、他の排気部と給気部を占有する大きさに形成される。
【0076】
たとえば、図の状態では、第1の吸着体35Dは図の右側の排気部32Aには位置しないが、両方の給気部33A,33Bおよび他の排気部32Bを占有する。第2の吸着体35Eは、図の左側の給気部33Bには位置しないが、両方の排気部32A,32Bおよび他の給気部33Aを占有する。
【0077】
すなわち、上記装置本体30Bには、排気部32A,32Bと給気部33A,33Bが合計4室(n)あり、それぞれの吸着体35D,35Eは、そのうちの3室(n−1)を占有する大きさに形成され、かつ移動自在に支持される。
【0078】
各排気部32A,32Bには室内空気が導かれ、第1の吸着体35Dおよび第2の吸着体35Eの両方、もしくは第1の吸着体35Dもしくは第2の吸着体35Eのいずれか一方を流通し、排気通風路bを介して屋外へ排出されるようになっている。
【0079】
各給気部33A,33Bには室内空気が導かれ、第1の吸着体35Dおよび第2の吸着体35Eの両方、もしくは第1の吸着体35Dと第2の吸着体35Eのいずれか一方を流通し、吹出し通風路15を介して再び室内へ吹出されるようになっている。
【0080】
加湿運転時は、排気部32A,32Bにおいて、第1の吸着体35Dと第2の吸着体35Eが室内空気に含まれる水分を吸着する。その一方で、給気部33A,33Bにおいて第2の再生器を作用させて、導いた室内空気に、それぞれの吸着体35D,35Eに吸着した水分を放出し、室内を加湿するとともに、吸着剤の再生をなす。
【0081】
脱臭運転時は、給気部33A,33Bにおいて、第1の吸着体35Dと第2の吸着体35Eが室内空気に含まれる臭気成分を吸着する。その一方で、排気部32A,32Bにおいて第1の再生器を作用させ、導いた室内空気に、それぞれの吸着体35D,35Eに吸着した臭気成分を放出し、屋外へ排出するとともに、吸着剤の再生をなす。
【0082】
加湿運転と脱臭運転のいずれにおいても、両外側の排気部32Aもしくは給気部33Bには、第1の吸着体35Dと第2の吸着体35Eのいずれか一方しか位置しないが、内側の排気部32Bおよび給気部33Aには、常に第1の吸着体35Dと第2の吸着体35Eの両方が位置し、二重の状態になって室内空気が流通する。
【0083】
したがって、加湿運転時には室内空気に含まれる水分を充分に吸着して、より高湿度の空気を室内へ吹出すことができ、加湿効率の向上を得られる。脱臭運転時には室内空気に含まれる臭気成分を充分に吸着して、より清浄化した空気を室内へ吹出すことができ、脱臭効率の向上を得られる。
なお、本発明は上述した実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。そして、上述した実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組合せにより種々の発明を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明における一実施の形態に係る、吸着再生装置を備えた空気調和機室内機の外観斜視図。
【図2】同実施の形態に係る、空気調和機室内機の概略の構成を示す縦断面図。
【図3】同実施の形態に係る、空気調和機室内機内部の概略の正面図。
【図4】同実施の形態に係る、吸着再生装置の基本構成図。
【図5】第1の実施の形態に係る、吸着再生装置の加湿作用を説明する図。
【図6】同実施の形態に係る、吸着再生装置の脱臭作用を説明する図。
【図7】第2の実施の形態に係る、吸着再生装置の加湿作用を説明する図。
【図8】同実施の形態に係る、吸着再生装置の脱臭作用を説明する図。
【図9】第3の実施の形態に係る、吸着再生装置の概略構成と作用を説明する図。
【符号の説明】
【0085】
b…排気通風路、32…排気部、15…吹出し通風路、33…給気部、30…装置本体、35…吸着体、37…第1の再生器(第1の再生手段)、38…第2の再生器(第2の再生手段)、23…制御部(制御手段)、4…前面吸込み口、5…上面吸込み口、1…室内機本体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内に配置され、導いた室内空気を屋外へ排出する排気通風路が接続される排気部および、導いた室内空気を再び室内へ吹出す吹出し通風路が接続される給気部を備えた装置本体と、
この装置本体に収容され、水分および臭気成分を吸着し、かつ放出可能な吸着剤が充填され、上記排気部と給気部に対向する位置に交互に移動自在な吸着体と、
上記排気部に位置する吸着体から、吸着体が吸着している臭気成分を分解または放出させる第1の再生手段と、
上記給気部に位置する吸着体から、吸着体が吸着している水分を放出させる第2の再生手段と、
上記排気部および上記給気部の切換え通風制御と、上記吸着体の移動制御をなす制御手段と
を備えたことを特徴とする吸着再生装置。
【請求項2】
上記制御手段は、
上記排気部に吸着体を移動し室内空気を導くことで、室内空気に含まれる水分を吸着体に吸着させ、さらに、この吸着体を給気部に移動し室内空気を導くとともに、上記第2の再生手段を作用することで、吸着体が吸着した水分を室内空気に放出させ、かつ吸着体を再生する加湿運転と、
上記給気部に吸着体を移動し室内空気を導くことで、室内空気に含まれる臭気成分を吸着体に吸着させ、さらに、この吸着体を排気部に移動し室内空気を導くとともに、上記第1の再生手段を作用することで、吸着体が吸着した臭気成分を屋外へ排出し、かつ吸着体を再生する脱臭運転と
の切換え制御をなすことを特徴とする請求項1記載の吸着再生装置。
【請求項3】
上記吸着体は、移動方向と直交する方向に位置をずらして2個設けられるとともに、一方の吸着体が上記給気部に位置するときに、他方の吸着体が上記排気部に位置するように、上記制御部によって制御されることを特徴とする請求項1記載の吸着再生装置。
【請求項4】
吸込み口および吹出し口を備えた室内機本体に、
上記請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の吸着再生装置を備えたことを特徴とする空気調和機の室内機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−154092(P2009−154092A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−335332(P2007−335332)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(505461072)東芝キヤリア株式会社 (477)
【Fターム(参考)】