説明

吸着型沈降分離材および該吸着型沈降分離材による泥水処理方法

【課題】 泥水の処理を効率的に行うことができる吸着型沈降分離材を提供することである。
【解決手段】 58重量%〜62重量%のホタテ貝殻粒子と、15重量%〜18重量%のゼオライト粒子と、0.1重量%〜0.2重量%の二酸化鉄とを含むことを特徴とする吸着型沈降分離材が提供される。ホタテ貝殻粒子は直径1mm以下、ゼオライト粒子は直径0.5mm以下に粉砕されたものであるのが好ましい。また、好ましくは、吸着型沈降分離材に、22重量%〜25重量%の炭酸カルシウムと、1.5重量%〜2重量%の炭酸ナトリウムとが含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、吸着型沈降分離材および該吸着型沈降分離材を使用した泥水処理方法に関する。より詳細には、本発明は、効率的な泥水の処理を可能とする吸着型沈降分離材および該吸着型沈降分離材を使用した泥水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、港湾、河川、湖沼などに沈積する汚泥や、建設現場などで発生する汚泥を処理するには、汚泥をそのままの状態で廃棄するか、汚泥にセメントを混入して固化してから廃棄する方法が採られていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述のいずれの方法を採用しても、処理量が膨大なものとなり、また、かなりのコストがかかるうえ、処理場の周囲環境に悪影響を及ぼすという課題を有している。このように、泥水の処理には、有効な方法が見当たらないのが現状である。
【0004】
本発明は、このような状況に鑑みて案出されたものであって、泥水の処理を効率的に行うことができる吸着型沈降分離材および該吸着型沈降分離材を使用した泥水処理方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願請求項1に記載の吸着型沈降分離材は、58重量%〜62重量%のホタテ貝殻粒子と、15重量%〜18重量%のゼオライト粒子と、0.1重量%〜0.2重量%の二酸化鉄とを含むことを特徴とするものである。
【0006】
本願請求項2に記載の吸着型沈降分離材は、前記請求項1の吸着型沈降分離材において、前記ホタテ貝殻粒子が、直径1mm以下に粉砕されたものであり、前記ゼオライト粒子が、直径0.5mm以下に粉砕されたものであることを特徴とするものである。
【0007】
本願請求項3に記載の吸着型沈降分離材は、前記請求項1又は2の吸着型沈降分離材において、22重量%〜25重量%の炭酸カルシウムと、1.5重量%〜2重量%の炭酸ナトリウムとを更に含むことを特徴とするものである。
【0008】
本願請求項4に記載の泥水処理方法は、処理しようとする泥水に、前記請求項1から3までのいずれか1項に記載の吸着型沈降分離材を添加し、5m/s以上の速度で攪拌する工程を含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の吸着型沈降分離材によれば、汚泥粒子の吸着と分離がほぼ同時に行われるため、分離した固形物が再汚泥化しにくい。また、本発明の吸着型沈降分離材では、ゼオライト粒子を含んでいるため、固形物および上澄み水の臭いが抑えられる。また、本発明の吸着型沈降分離材では、汚泥粒子の内部に含まれる水分が或る程度排出されるので、脱水化が容易である。また、本発明の吸着型沈降分離材では、主成分としてホタテ貝殻を使用しているため、実質的に無害であり、周囲環境に悪影響を及ぼすこともない。さらに、本発明の吸着型沈降分離材では、沈降速度が速く、上述のように脱水性にも優れているため、処理プラントを小規模にすることができ、設備費や運転費を廉価に抑えることができる。本発明の吸着型沈降分離材は、河川や港湾の浚渫軟泥土処理、建設工事現場で発生する汚濁水処理、河川・池・湖沼等の水質浄化、砕石場等の無機系汚水処理、工場廃水処理などの多くの分野において使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態に係る吸着型沈降分離材について詳細に説明する。本発明の好ましい実施の形態に係る吸着型沈降分離材は、所定量のホタテ貝殻粒子と、所定量のゼオライト粒子と、所定量の二酸化鉄とを含んでいる。
【0011】
ホタテ貝殻粒子は、直径1mm以下に粉砕したものを用いる。また、ゼオライト粒子は、直径0.5mm以下に粉砕したものを用いる。なお、粉砕方法は、公知の任意の方法を用いてよい。
【0012】
吸着型沈降分離材中の各成分の割合は、本発明者が行った種々の実験の結果、ホタテ貝殻粒子が58重量%〜62重量%、ゼオライト粒子が15重量%〜18重量%、二酸化鉄が0.1重量%〜0.2重量%であるのが最も好ましいことを見い出した。
【0013】
次に、以上のように構成された吸着型沈降分離材が、どのような過程を経て泥水を処理するのかについて説明する。図1は、泥水の一連の処理工程を模式的に示した図である。図1(a)は、処理しようとする泥水を示した模式図である。泥水は、遊離水中に多数の汚泥粒子が浮遊している状態で示されている。
【0014】
いま、泥水中に、本発明の吸着型沈降分離材を添加して攪拌する(図1(b)参照)。図1では、本発明の吸着型沈降分離材が、ホタテ貝殻粒子とゼオライト粒子を含むものとして模式的に示されている。すると、まず汚泥粒子がゼオライト粒子に吸着される(図1(c)参照)。
【0015】
次いで、ゼオライト粒子に吸着された汚泥粒子が、ホタテ貝殻粒子に衝突する(図1(d)参照)。ホタテ貝殻の内面には、周知のように、一方向に延びた多数の溝があり、従って、ホタテ貝殻を粉砕したホタテ貝殻粒子にも、一方向に延びた多数の溝がある。図2は、これらの溝と直交する面における断面を示した拡大図である。ゼオライト粒子に吸着された汚泥粒子は、ホタテ貝殻粒子の各溝に隣接する突起に衝突し、これにより汚泥粒子の内部に含有された水分が汚泥粒子の外部に排出されるとともに、汚泥粒子は、ホタテ貝殻粒子の突起に食い込み、さらに、汚泥粒子がゼオライト粒子に吸着されているため、汚泥粒子がゼオライト粒子に、いわば“蓋”をされた状態で、ホタテ貝殻粒子に固着することとなる。
【0016】
本発明者の行った実験によれば、上述の攪拌速度は、5m/s以上であるのが好ましく、10m/s以上であるのが最も好ましいことが分かった。攪拌速度を一定速度以上にするのは、攪拌速度が遅すぎると、ホタテ貝殻粒子に衝突する際の衝撃力が小さすぎ、汚泥粒子の内部に含有された水分が十分に排出されないからである。
【0017】
次いで、遠心分離機等を用いて泥水を加圧すると、ゼオライト粒子に吸着されている汚泥粒子に圧力が加えられ、汚泥粒子の内部の水分が更に排出される(図1(e)参照)。
【0018】
このようにして内部の水分が排出された汚泥粒子は、ゼオライト粒子およびホタテ貝殻粒子の重量により沈降することにより、泥水が汚泥粒子と上澄み水とに分離されることとなる。
【0019】
なお、本発明の吸着型沈降分離材がゼオライト粒子を含んでいるのは、汚泥粒子の臭いを消すためである。
【0020】
好ましくは、本発明の吸着型沈降分離材は、所定量の炭酸カルシウムと、所定量の炭酸ナトリウムとを含んでいる。炭酸カルシウムの量は22重量%〜25重量%であるのが好ましく、炭酸ナトリウムの量は1.5重量%〜2重量%であるのが好ましい。炭酸カルシウムおよび炭酸ナトリウムを含めるのは、泥水から分離された上澄み水を浄化するためである。
【0021】
次に、本発明の吸着型沈降分離材の効果を検証するために行った実験の結果について説明する。図3は、本発明の吸着型沈降分離材を用いて、泥水濃度10重量%(砂5重量%、シルト質他5重量%)の河川浚渫軟泥土を処理した実験の結果を示した表である。図3を見ると、処理後において各項目の測定値が大きく減少しているのが分かる。
【0022】
本発明は、以上の発明の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】泥水の一連の処理工程を模式的に示した図である。
【図2】ゼオライト粒子に吸着された汚泥粒子が、ホタテ貝殻粒子に衝突した状態を模式的に示した拡大図である。
【図3】本発明の吸着型沈降分離材を使用して河川浚渫土を処理した場合の効果を示す表である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
58重量%〜62重量%のホタテ貝殻粒子と、15重量%〜18重量%のゼオライト粒子と、0.1重量%〜0.2重量%の二酸化鉄とを含むことを特徴とする吸着型沈降分離材。
【請求項2】
前記ホタテ貝殻粒子が、直径1mm以下に粉砕されたものであり、前記ゼオライト粒子が、直径0.5mm以下に粉砕されたものであることを特徴とする請求項1に記載の吸着型沈降分離材。
【請求項3】
22重量%〜25重量%の炭酸カルシウムと、1.5重量%〜2重量%の炭酸ナトリウムとを更に含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の吸着型沈降分離材。
【請求項4】
前記請求項1から3までのいずれか1項に記載の吸着型沈降分離材を使用する泥水処理方法であって、
処理しようとする泥水に前記吸着型沈降分離材を添加し、5m/s以上の速度で攪拌する工程を含むことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−18339(P2008−18339A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−192266(P2006−192266)
【出願日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(506240676)有限会社クリステック (1)
【Fターム(参考)】