説明

吸着熱及び熱伝導性による吸湿発熱性素材の測定装置及び測定方法

【課題】衣料技術の分野において、吸着熱と熱伝導性を同時に計測することによって、実着用と相関のとれている吸湿発熱性繊維の測定装置及び測定方法を提供することを目的とする。
【解決手段】以下に示す(A)〜(D)の各部で構成される測定装置。
(A)精密迅速熱物性測定部は精密迅速熱物性測定装置と熱源板で構成される。
(B)測定部は、定温を維持する定温台と温度測定センサーで構成される。
(C)水供給部はヒーター、ポンプ及び水用パイプで構成される。
(D)空気供給部は温湿度調節空気発生装置、流量調節コック及び空気用パイプで構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸湿発熱性素材における吸着熱及び熱伝導性の両方を同時に測定可能とした測定装置及び測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、吸湿発熱性に着目した繊維構造物及びそれを用いた衣料(一般衣料、防寒衣料、スポーツ衣料、低温倉庫用ユニホーム等)が報告されている。
吸湿発熱性に関して、吸着熱は吸湿性に比例することは知られており、綿などのセルロース系繊維は、ポリエステルなどの化学繊維に比べて吸湿性が高く、吸着熱が大きい傾向にあることが知られている。従って、吸着熱評価のみで吸湿発熱性の有無を判定した場合、綿などのセルロース系繊維も吸湿発熱性繊維に含まれることがあったが、吸着熱評価と実際の着用時の感覚とは異なる場合があった。従来の吸湿発熱性繊維の評価方法としては、例えば特許文献1が挙げられる。
【0003】
綿などのセルロース系繊維を用いた衣服は、吸着熱の発生はあるものの、繊維内部および繊維間に吸湿、吸水された水分が熱伝導性を高めてしまい、温かみを感じることはない。そのため、山登りなどのアウトドアの世界では、綿などのセルロース系繊維を用いた衣服は体温が奪われる等の理由で好まれていない。
また、ポリエステル繊維やアクリル繊維などの疎水性繊維を用いた衣服は、繊維を通過して水分は放出されやすいため、熱伝導性は低いが、吸着熱の発生がほとんどなく、人体から発生する水分が気化熱として奪われやすいので、肌寒さを感じる。そのため、山登りやアウトドアの用途としては問題点が残る。
非特許文献1には、吸湿発熱性繊維には吸湿発熱性と保温性(熱伝導性、輻射熱、衣服内の対流)を併せ持つことが必要であることが記されており、綿などのセルロース系繊維は冬物衣料には向いていないと記されている。
今まで、実着用と相関のとれている吸湿発熱性繊維の評価方法はなく、冬物衣料の「温かさ」に関する定量的測定がなされていない状況であった。
【特許文献1】特開2003−337111号
【非特許文献1】第3版 繊維便覧 455〜456頁 編者:社団法人 繊維学会 発行者:村田誠四郎 発行所:丸善株式会社
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1の測定方法では吸着熱に関する測定はできるものの、吸湿発熱性繊維に必要な吸着熱以外の要因(熱伝導性、輻射熱、衣服内の対流)に関しては考慮されていない。例えば、アンダーシャツやTシャツなどは肌に直接触れるため、輻射熱による影響は小さい。また、体型にそったシルエットであるため、衣服内の対流に対する影響も小さい。そのため、人体の温かさに影響を与える大きい要素である吸着熱と熱伝導性に注目した。本発明は衣料技術の分野において、吸着熱と熱伝導性を同時に計測することによって、実着用と相関のとれている吸湿発熱性繊維の評価方法、及び測定装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明の測定装置及びそれを用いた測定方法は、吸着熱による上昇温度と見かけの熱伝導性とを用いて吸湿発熱性素材を評価することを特徴とするものである。
測定装置としては、以下に示す(A)精密迅速熱物性測定部、(B)測定部、(C)水供給部、(D)空気供給部の各部で構成され、吸着熱による上昇温度と見かけの熱伝導性とを同時に測定可能とした測定装置である。
(A)精密迅速熱物性測定部は、精密迅速熱物性測定装置と熱源板で構成される。
(B)測定部は、定温を維持する定温台と温度測定センサーで構成され、前記定温台は上面部、中部及び下部で構成され、前記定温台の中央領域には上面部から下部の途中まで至る凹部を設け、前記凹部の底面に温度測定センサーを設け、
前記定温台の中部には前記水供給部から供給される定温の水を循環させるための給水口と排水口を設け、
前記定温台下部には前記空気供給部から供給される調温調湿された空気を凹部に届けるための空気供給口を設ける。
(C)水供給部はヒーター、ポンプ及び水用パイプで構成され、前記水用パイプによって前記ヒーターとポンプは給水口及び排水口に繋がれる。
(D)空気供給部は温湿度調節空気発生装置、流量調節コック及び空気用パイプで構成され、前記空気用パイプによって前記温湿度調節空気発生装置と前記空気供給口は繋がれ、前記空気用パイプに流量調節コックを設ける。
測定方法としては、前記の測定装置を用いて、以下(1)〜(6)に示す条件及び順番で測定することで、吸着熱による上昇温度と見かけの熱伝導性とを同時に測定可能とした吸湿発熱性素材の測定方法である。
(1)20℃65%に調温調湿された環境下で測定を行う。
(2)前記熱源板の温度は25〜45℃とし、安定するまで約1時間以上放置する。
(3)前記定温台中部にヒーターで温めた20℃の水を循環させ、定温台中部の温度を20℃に保つ。
(4)前記空気供給部から温度20〜35℃、湿度40〜100%の空気を凹部に流量1〜15mm/secとなるように流し込む。
(5)20℃65%の環境下で2時間以上、調温調湿した試料の生地を定温台に固定する。試料の生地の裏面に温度測定センサーが触れるように生地を垂らすと共に、熱源板と定温台上面部で生地を挟み込む。
(6)定温台上面部と熱源板の間に挟み込んだ部分で生地の熱伝導性を測定し、温度測定センサーに触れる部分で生地の吸着熱を測定する。
【発明の効果】
【0006】
本発明に記載の測定装置及びそれを用いた測定方法によれば吸湿発熱性繊維の吸着熱及び熱伝導性を同時に測定することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明に係る測定装置を示す模式図、図2(a)は図1中のX−X線断面図、図2(b)は図1中のY−Y線断面図、図2(c)は図1中のZ−Z線断面図、図3は図2(c)において試料をセットした状態を示す図である。
本発明の測定装置1は、図1に示すように精密迅速熱物性測定部2、測定部3、水供給部4、空気供給部5で構成される。
【0008】
精密迅速熱物性測定部2は、精密迅速熱物性測定装置2aと熱源板2bで構成される。熱源板2bは熱を発する金属板、ヒーター及び温度センサーで構成され、ヒーターによって金属板を加熱し、温度センサーによって精密迅速熱物性測定装置2aが金属板の温度を制御するようになっている。金属板の周囲(試料と接触する金属板の接触面以外の部分)にはガードヒーターが取り付けられている。ガードヒーターは環境温度による熱源板の温度変化を小さくするためのものであり、熱源板温度よりも若干高い温度に設定される。
【0009】
精密迅速熱物性測定装置2aによって金属板及びガードヒーターの温度設定及び熱源板の放熱による仕事量の計測ができる。精密迅速熱物性測定装置2aとしては、カトーテック株式会社製KES−F7(サーモラボII型)等が使用可能であり、熱源板2bとしてBT−Boxを使用する。
【0010】
測定部3は定温を維持する台(以下、定温台3a)と温度測定センサー3bからなる。定温台3aは上面部3aa、中部3ab及び下部3acで構成される。上面部3aaは熱を伝えやすく比較的入手が容易な銅板で構成される。上面部3aa以外の部分(中部3ab及び下部3ac)は任意の材料を用いることが可能である。例えば鉄などの金属を用いることができる。定温台3aの中央領域には上面部3aaから下部3acの途中まで至る凹部3cを設ける。
【0011】
定温台の中部3abには給水口3dと排水口3eを設け、後述する水供給部4から供給される定温の水を中部3ab内(凹部3cを除く部分)に循環させる。定温の水を循環するとにより定温台中部3abに供給される熱容は無限大と仮定する。
【0012】
定温台3aの下部3acには空気供給口3fと温度測定センサー3bを設ける。後述する空気供給部5で調温調湿された空気は空気供給口3fを経て凹部3cに供給される。温度測定センサー3bは試料の吸着熱による温度上昇を計測するためのものであり、凹部3cの底面に設ける。
【0013】
水供給部4は、ヒーター4a、ポンプ4b及び水用パイプ4cで構成される。定温台中部3abに供給する水の温度はヒーター4aによって一定に保たれ、ポンプ4bによって送り出され定温台中部内を循環する。ヒーター4a及びポンプ4bと給水口3d及び排水口3eとはそれぞれ水用パイプ4cで繋がれる。
【0014】
空気供給部5は温湿度調節空気発生装置5a、流量調節コック5b及び空気用パイプ5cで構成される。温湿度調節空気発生装置5aは設定した温度で湿度100%の湿潤空気と湿度0%の乾燥空気の混合する比率を変えることによって、任意の温度、湿度の空気を発生することができる。湿潤空気を発生させる方法としては、設定した温度の容器内において、設定した温度の水に空気を送り込んでバブリングをし、バブリングされた空気を採取する方法があげられる。乾燥空気を発生させる方法としては、設定した温度の空気をシリカゲルなどの吸湿剤に通すことで乾燥した空気を得る方法がある。
【0015】
温湿度調節空気発生装置5aで調温調湿された空気は空気用パイプ5cを経て定温台下部3acの凹部3c内に流し込まれる。空気用パイプ5cに取り付けられた流量調節コック5bによって、流量を任意に調整することができる。
【0016】
以上のように構成した測定装置1で試料の吸着熱と熱伝導性を同時に測定する。
(測定装置の準備)
試験は20℃65%に調温調湿された環境下で行う。精密迅速熱物性測定装置2aの電源を入れ、熱源板中の金属板の温度を25〜45℃、ガード板の温度を熱源板より0.3℃高く設定し、安定するまで約1時間以上放置する。
【0017】
水供給部4のポンプ4bを作動させ、定温台中部3abの中にヒーター4aで温めた20℃の水を循環させ、定温台中部3abの温度を20℃に保つ。
空気供給部5の温湿度調節空気発生装置5aの電源を入れ、流し込む空気の温度を20〜35℃、湿度を40〜100%に設定し、定温台下部3acに供給される空気の流量が1〜15mm/secになるように流量調節コック5bを調節する。
測定部の温度測定センサー3bの電源を入れる。
【0018】
(試料の設置)
20℃65%の環境下に2時間以上置き、調温調湿した試料7の生地を定温台3aにセットする。この時、凹部3cに試料7を弛ませて設置して、試料生地の裏面に温度測定センサー3bが触れるように試料7を垂らすと共に、熱源板2bと定温台上面部3aaの間に試料7を挟み込む。定温台上面部3aaと熱源板2bの間に挟み込んだ部分で試料の熱伝導性を測定し、温度測定センサー3bに触れる部分で生地の吸着熱を測定する。
【0019】
(熱伝導性測定)
熱伝導性測定法としては、平板比較法、平板直接法、熱流計法、非定常熱線法があるが、編み物(ニット)、織物、不織布等からなる衣料は、平板法が応用され、水平に置いた布の上下両側平板をそれぞれ高温側(熱源)、低温側とし、その温度を一定に保つのに必要な熱量を測定する定常法が一般的に用いられている。本発明は熱源板と定温台の間に試料を挟み込んだ時、試料が定温台に接する部位を利用して、定常法による計測が行われている。試料を銅板にセットし、熱源板を置いた時の定温台に吸収される熱量Wを測定する。熱量Wは熱源板を置いた時の定温台への吸収量が一定になった時の値を計測する。さらに、熱源板を置いたときの圧力に相当する時の厚みDを、圧縮弾性試験機を使用して測定した後、見掛けの熱伝導率k(W/mK)を以下の式1を用いて算出する。
k=(W*D)/(A*ΔT0)・・・(式1)
W:熱量(W)
D:生地厚み(m)
A:熱源板面積(m2
ΔT0:熱板温度と試験環境温度の差(K)
【0020】
(吸着熱測定)
吸着熱測定法として、空気供給口3fから調温調湿された空気を流し込み、試料が吸湿して発熱したときの試料の温度変化を温度測定センサー3bで計測する。流量調節コック5bを開く前から定温台に吸収される熱量Wが一定になるまでの間、試料裏面の温度履歴を記録する。試験中の試料裏面の最高温度と流量調節コックを開く前の試料裏面温度との差を最高上昇温度ΔTとする。
前記の熱伝導性と最高上昇温度から生地の温かさを判断する。
【0021】
(測定基準)
本発明者らが、冬季環境下(低温環境下)において、繊維構造物が吸湿する状態が得られる(汗をかく)着用試験を行い鋭意研究した結果から、前記の測定において最高上昇温度ΔTが1.5℃以上の場合に、着用時に優れた暖かさを得ることが出来る。しかし、最高上昇温度ΔTが1.5℃未満の場合は、着用時に優れた暖かさを得ることは出来ない。
【0022】
本発明者らが、冬季環境下において、鋭意研究した結果、前記の測定において、見かけの熱伝導率kが0.053(W/mK)以下の場合、着用時に触れたときに冷たくひんやり感じることがない。しかし、見かけの熱伝導率kが0.053(W/mK)より大きい場合、着用時に触れたときに、冷たくひんやり感じ、不快感を生じる。
【0023】
前記の二つの条件を満たす生地またはそのような生地を少なくとも一部に用いた衣料は実着においても温かみを感じることができる。これらの生地または衣料は寒冷時のスポーツウエア、下着(インナー)、Tシャツ等に適している。
【実施例】
【0024】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。以下の実施例の説明では前記の実施の形態の説明と重複する部分は省略する。また実施の形態と同じく図1〜図3を用いて説明する。
精密迅速熱物性測定装置2aとしてカトーテック株式会社製KES−F7(サーモラボII型)を、熱源板2bとしてKES−F7に接続されているBT−Boxを使用する。BT−Boxの縦横方向の大きさは、定温台3a上面をちょうど覆うことができる大きさである。次に定温台3aについて以下に示す。外観は縦(M1)80mm×横(L1)80mm×高さ(N1)60mmであり、上面部3aaは厚さ(N2)が2mmからなる銅板で構成される。中部3ab及び下部3acは鉄で構成され、中部3abの高さ(N3)は18mm、下部3acの高さ(N4)は40mmとする。定温台3aの中央領域には上面部3aaから下部3acの途中まで至る凹部3cを設ける。凹部3cは縦(M2)50mm×横(L2)10mmとし、上面部側から見た際に縦横方向に対称となるように中央領域に配置する。高さ方向は上面部からの距離(N5)が40mmとする。
【0025】
中部3abに設けた給水口3dと排水口3eは内径を5mmとし、給水口3dから流れ込んだ水はコの字状に中部内を循環し排水口3eから排出される。下部3acに設けた空気供給口3fは内径を10mmとする。
【0026】
試験は20℃65%に調温調湿された環境下で行い、試料を少なくとも2時間放置し、調温調湿する。KES−F7(サーモラボII型)の電源を入れ、BT−Boxの温度を35℃、ガード板の温度を35.3℃に設定をし、安定するまで約1時間放置する。
【0027】
水気供給部4のポンプを作動させ、ヒーター4aで温めた20℃の水を定温台中部3ab内に循環させる。温湿度調節空気発生装置5aの電源を入れ、流し込む空気の温度を32℃、湿度を70%に設定をする。温度測定センサーの電源を入れる。
【0028】
試料の大きさは縦45mm、横220mmとし、試料7の裏面が下になるように定温台3a上に置く。生地裏面に温度測定センサー3bが触れるように試料7を凹部3c内に垂らした後、熱源板2bを定温台上面部3aaに置き、試料7を熱源板2bと定温台上面部3aaで挟み込む。
【0029】
温湿度調節空気発生装置5aにて温度32℃、湿度70%に調整した空気を空気供給口から凹部に供給する。流量は6.2mm/secになるように流量調節コック5bで調節する。前記の条件とすることで、下着実着時の衣服内空間の温湿度状態を再現できる。
【0030】
熱源板2bを置いた時の定温台3aに吸収される熱量Wが一定になった時の値を記録する。その値から試料の見掛けの熱伝導率k(W/mK)を前記の式1を用いて計算する。
空気供給部5から空気が供給される前から、定温台3aに吸収される熱量Wが一定になるまでの間、試料裏面の温度履歴を計測し、最高上昇温度ΔTを出す。
本発明の測定装置では見掛けの熱伝導率と最高上昇温度(吸着熱)の両方を同時に測定することが可能である。
この熱伝導性と最高上昇温度ΔTから生地の温かさを判断する。見かけの熱伝導率kが0.053(W/mK)以下の場合、着用時に触れたときに冷たくひんやり感じることがなく、最高上昇温度ΔTが1.5℃以上の場合に、着用時に優れた暖かさを得ることが出来る。
【0031】
本発明の測定装置による値と実際の官能との整合性をみるために、熱伝導性及び吸湿発熱性について、測定装置による測定と官能テストを行った。
(熱伝導性の官能テスト)
冬季環境を想定した15℃50%RH環境下において、24歳以上50歳以下の被験者10名(内訳、男性5名、女性5名)の方に、試料を着用した後、冷たくひんやりするかを判定し、次の4段階(4点満点)で評価した。
4点: 極めて、冷たくひんやりしない。
3点: 冷たくひんやりしない。
2点: 冷たくひんやりする。
1点: 極めて、冷たくひんやりする。
【0032】
(吸湿発熱性の官能テスト)
トレッドミルを使用し、5km/hの速度で、20分間歩行して、暖かさ(吸湿発熱性)を4段階(4点満点)で評価した。
4点: 極めて、暖かい。
3点: 暖かい。
2点: 暖かくない。
1点: 極めて、暖かくない。
【0033】
測定用の試料においては、吸湿発熱性評価及び熱伝導性評価の物性の違いを評価しやすいことから、短繊維ポリエステルに架橋アクリル繊維を混紡する手段を用いた。(尚、編物の規格のインチは1インチ=2.54cmである。)
【0034】
(試料1)
短繊維ポリエステル(2.2dtex−38mm)70%/架橋アクリル(東洋紡績株式会社製モイスケア(登録商標)、2.2dtex―44mm)30%からなる40番手双糸の紡績糸を作成し、リブ組織(32インチ24ゲージ)の編み立てを実施した。さらに、通常のリラックス精錬、染色、乾燥後、繊維構造物を作成した。(目付=200g/m
【0035】
(試料2)
短繊維ポリエステル(2.2dtex−38mm)85重量%/架橋アクリル(東洋紡績株式会社製モイスケア(登録商標)、2.2dtex―44mm)15重量%からなる40番手双糸の紡績糸を作成し、リブ組織(32インチ24ゲージ)の編み立てを実施した。さらに、通常のリラックス精錬、染色、乾燥後、繊維構造物を作成した。(目付=210g/m
【0036】
(試料3)
短繊維ポリエステル(2.2dtex−38mm)90重量%/架橋アクリル(東洋紡績株式会社製モイスケア(登録商標)、2.2dtex―44mm)10重量%からなる40番手双糸の紡績糸を作成し、リブ組織(32インチ24ゲージ)の編み立てを実施した。さらに、通常のリラックス精錬、染色、乾燥後、繊維構造物を作成した。(目付=200g/m
【0037】
(試料4)
短繊維ポリエステル(2.2dtex−38mm)92重量%/架橋アクリル(東洋紡績株式会社製モイスケア(登録商標)、2.2dtex―44mm)8重量%からなる40番手双糸の紡績糸を作成し、リブ組織(32インチ24ゲージ)の編み立てを実施した。さらに、通常のリラックス精錬、染色、乾燥後、繊維構造物を作成した。(目付=200g/m
【0038】
(試料5)
綿100%からなる40番手単糸の紡績糸を作成し、リブ組織(14インチ12ゲージ)の編み立てを実施した。さらに、通常のリラックス精錬、染色、乾燥後、繊維構造物を作成した。(目付=180g/m
【0039】
(試料6)
短繊維ポリエステル100%(2.2dtex−38mm)からなる40番手単糸の紡績糸を作成し、リブ組織(14インチ12ゲージ)の編み立てを実施した。さらに、通常のリラックス精錬、染色、乾燥後、繊維構造物を作成した。(目付=180g/m
【0040】
前記の各試料の吸湿発熱性(最高温度上昇)の測定結果、熱伝導性の測定結果、及びそれぞれの官能テストの結果(被験者10人の合計点=40点満点)を表1に示す。
【0041】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明によれば、吸着熱と熱伝導性を同時に計測でき、冬季環境下において、優れた着用感を得られる生地または衣料を判別することができ、冬物衣料の分野に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1は本発明にかかる装置を示す模式図である。
【図2】図2(a)は図1中のX−X線断面図、図2(b)は図1中のY−Y線断面図、図2(c)は図1中のZ−Z線断面図である。
【図3】図3は図2(c)において試料をセットした状態を示す図である。
【符号の説明】
【0044】
1 測定装置
2 精密迅速熱物性測定部
2a 精密迅速熱物性測定装置
2b 熱源板
3 測定部
3a 定温台
3aa 上面部
3ab 中部
3ac 下部
3b 温度測定センサー
3c 凹部
3d 給水口
3e 排水口
3f 空気供給口
4 水供給部
4a ヒーター
4b ポンプ
4c 水用パイプ
5 空気供給部
5a 温湿度調節空気発生装置
5b 流量調節コック
5c 空気用パイプ
7 試料


【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着熱による上昇温度と見かけの熱伝導性とを用いて吸湿発熱性素材を評価することを特徴とする測定装置。
【請求項2】
吸着熱による上昇温度と見かけの熱伝導性とを用いて吸湿発熱性素材を評価することを特徴とする測定方法。
【請求項3】
以下に示す(A)精密迅速熱物性測定部、(B)測定部、(C)水供給部、(D)空気供給部の各部で構成され、吸着熱による上昇温度と見かけの熱伝導性とを同時に測定可能とした吸湿発熱性素材の測定装置。
(A)精密迅速熱物性測定部は、精密迅速熱物性測定装置と熱源板で構成される。
(B)測定部は、定温を維持する定温台と温度測定センサーで構成され、前記定温台は上面部、中部及び下部で構成され、前記定温台の中央領域には上面部から下部の途中まで至る凹部を設け、前記凹部の底面に温度測定センサーを設け、
前記定温台の中部には前記水供給部から供給される定温の水を循環させるための給水口と排水口を設け、
前記定温台下部には前記空気供給部から供給される調温調湿された空気を凹部に届けるための空気供給口を設ける。
(C)水供給部はヒーター、ポンプ及び水用パイプで構成され、前記水用パイプによって前記ヒーターとポンプは給水口及び排水口に繋がれる。
(D)空気供給部は温湿度調節空気発生装置、流量調節コック及び空気用パイプで構成され、前記空気用パイプによって前記温湿度調節空気発生装置と前記空気供給口は繋がれ、前記空気用パイプに流量調節コックを設ける。
【請求項4】
請求項3に記載の測定装置を用いて、以下(1)〜(6)に示す条件及び順番で測定することで、吸着熱による上昇温度と見かけの熱伝導性とを同時に測定可能とした吸湿発熱性素材の測定方法。
(1)20℃65%に調温調湿された環境下で測定を行う。
(2)前記熱源板の温度は25〜45℃とし、安定するまで約1時間以上放置する。
(3)前記定温台中部にヒーターで温めた20℃の水を循環させ、定温台中部の温度を20℃に保つ。
(4)前記空気供給部から温度20〜35℃、湿度40〜100%の空気を凹部に流量1〜15mm/secとなるように流し込む。
(5)20℃65%の環境下で2時間以上、調温調湿した試料の生地を定温台に固定する。試料の生地の裏面に温度測定センサーが触れるように生地を垂らすと共に、熱源板と定温台上面部で生地を挟み込む。
(6)定温台上面部と熱源板の間に挟み込んだ部分で生地の熱伝導性を測定し、温度測定センサーに触れる部分で生地の吸着熱を測定する。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−329746(P2006−329746A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−151989(P2005−151989)
【出願日】平成17年5月25日(2005.5.25)
【出願人】(000005935)美津濃株式会社 (239)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【上記1名の代理人】
【識別番号】000005935
【氏名又は名称】美津濃株式会社
【Fターム(参考)】