説明

吸着素子および空調装置

【課題】空気中の湿気や有機ガスの吸着、濃縮回収に使用される空調装置内に搭載された吸着素子において、その吸着素子内に赤外線吸収材を担持し、吸着素子を再生する加熱装置に赤外線を発生する加熱手段を用いることで、加熱手段の赤外線を赤外線吸収材が吸収し、より効果的に吸着剤を温めることができる。これによって、従来よりも効率よく吸着素子が再生でき、省エネルギー化をすることもしくは従来と同じエネルギーを用いて、吸着量を上げる空調装置を得ることを目的とする。
【解決手段】波型と平型のシートを交互に積層して巻き上げ、円形に加工したハニカム構造体基材1に吸着剤としてゼオライト2をバインダ3を介して担持した吸着素子に界面活性剤と赤外線吸収材として二酸化マンガン5と水を混合した分散液に含浸する。これを乾燥することで赤外線を吸収する吸着素子7を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿分ならびに有機ガスを吸着する吸着素子とまた、前記吸着素子を搭載した空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の吸着素子は、無機のシートをハニカム構造体状に加工し、前記ハニカム構造体にゼオライトなどの吸着剤を担持することによってえられる吸着素子が知られている。なお、その脱着手段としてはヒーターによって温めた温風による加熱やヒーターの輻射による加熱、燃料電池の排熱による加熱等が知られており、特に空気中の湿分を取るための除湿機や空気中の有機ガス等を吸着する脱臭機などに用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
以下、その除湿機と吸着素子について図5および図6を参照しながら説明する。図に示すように、吸着素子101は素子基材102と吸着剤103からなり、空気の流れ104を作る通気ファン105を備えることにより空気中の水分を吸着し、乾燥した処理空気106を提供する。また、回転手段107によって吸着素子は回転し、加熱手段108より吹き出る再生空気109によって吸着剤103に吸着した水分を脱着する。脱着した水は熱交換器110中に入り、そこで吹き入れ空気111によって冷やされ結露し水滴112ができる。これをタンク113に回収する。こうして吸着と脱着を連続に繰り返す吸脱着サイクルにより、連続で空気を除湿することができる。
【特許文献1】特開2000−117042号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような従来の吸着素子では、脱着にかかはる加熱手段の消費エネルギーが大きいという課題がある。
【0005】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、加熱装置の熱を効率的に利用し、脱着にかかはるエネルギー消費を抑えるもしくは、同様のエネルギーでより大きな吸着脱着効果が得られる加熱効率、再生効率の良い吸着素子を提供することを目的としている。そして、この加熱装置の熱を有効に利用できる吸着素子を空調装置に搭載することによって、少ないエネルギーでより効率よく吸着素子がから脱着することができ、これによって、現在の入力と同じエネルギーの入力でより多くの水分や有機ガスを吸着することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の吸着素子は上記目的を達成するために、吸着剤を構造中に含む通気体である吸着素子の内部もしくは表面に赤外線を吸収する材料を担持した吸着素子でありものである。
【0007】
この手段により、水分や有機ガスなど吸着剤が吸着したものを脱着する際に吸着する場合において加熱装置からの赤外線を有効に吸着することで、赤外線吸収材と接する吸着剤を効率的に加熱することができ、また、温められた吸着剤から伝番して他の吸着剤も温められる。つまり加熱装置からの熱を効率よく脱着に使用することができる吸着素子が得られる。そのために、従来の加熱手段での入力エネルギーでえられたよりもより多くの脱着量が得られることになり、つまりはより多くの吸着が可能になるため、エネルギー量が同じであれば吸着の能力は向上する。吸着量を従来と同様にする場合は、加熱エネルギーにかかる消費エネルギーを少なくすることが可能である。
【0008】
また、本発明の空調装置においては、上記の赤外線吸収材を担持した吸着素子を搭載し、素子から吸着したものを脱着して再生する加熱手段として、ニクロム線ヒーター、ハロゲンヒーター、赤外線ヒーターを用いる。これらのヒーターは赤外線を多く出すため、赤外線吸収材を効果的に温めることができる。そのため、同様の加熱エネルギーで吸着の能力が向上する。吸着量を従来と同様にする場合は、脱着して再生するための加熱エネルギーにかかる消費エネルギーを少なくすることが可能である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、吸着剤の加熱効率、再生効率が良くなり、従来の吸着素子よりも再生に必要なエネルギーを削減して吸着脱着が可能な吸着素子もしくは再生エネルギーを従来と同じにした場合に、従来の吸着素子よりもより多くの水分や有機ガスを吸着脱着できる吸着素子を提供できる。また、この吸着素子を搭載した空調装置において従来の吸着素子を搭載したものよりも省エネルギーな、もしくは従来と同エネルギーであっても吸着脱着能力が高く、現在の入力と同じエネルギーの入力でより多くの水分や有機ガスを吸着できる空調装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の請求項1記載の発明は、吸着剤をふくむ材料で構成される通気性をもつ吸着素子に、吸着剤より高い赤外線吸収率を有する赤外線吸収材を担持したことにより、吸着剤の加熱効率、再生効率を向上させるものである。吸着剤から構成される吸着素子は、空気中の水分や有機ガスを吸着するがこれを脱着させて吸着力を再生するために加熱装置などによって熱を与える。その際、前述の吸着剤と接触するかもしくはその近傍に、吸着剤よりも赤外線吸収率が高い材料を担持することによって、加熱装置からの赤外線を赤外線吸収材が吸収しその熱を接触するもしくは近傍に存在する前述の水分もしくは有機ガスを吸着した吸着剤に与え、吸着剤は加熱装置からの熱だけでなく、赤外線吸収材からも熱をえられるために、加熱効率および再生効率がよくなり、加熱装置からの熱だけでの再生時よりもより少ないエネルギーで再生をすることが可能である。そのため、再生にかかるエネルギーを少なくすることができる。もしくは、同じエネルギーであっても加熱によって再生する際の脱着量が増えるため、吸着できる量が増え、吸着素子の吸着量をふやすことが可能である。
【0011】
また、赤外線吸収材には可視光を透過する材料もあるが、可視光波長でも吸収を持ち、かつ吸着剤また吸着剤で構成される吸着素子とは異なる色の材料が望ましい。これは、吸着素子に担持した際に、赤外線吸収材が担持しているかどうか、どの程度担持しているか、担持ムラが生じていないかを目視で確認することができるためであり、またミクロ的に光学顕微鏡などでも、担持の状態が観察しやすいため、大量生産を考慮した場合有利であるからである。
【0012】
本発明の請求項2記載の発明は、前述の赤外線吸収材を担持した吸着素子が通気構造をもつハニカム構造であることを特徴とする吸着素子であり、ハニカム構造体は通気において圧力損失が低いことが知られており、吸着剤を担持する基材の構造とするのが望ましい。
【0013】
本発明の請求項3記載の発明は、前述の赤外線吸収材を担持した吸着素子において吸着剤が特にゼオライトであることを特徴とする吸着素子である。ゼオライトは水分や有機ガスの吸着にすぐれまた、加熱による再生においても耐熱性が高いため連続して吸着再生するシステムに使用しやすいので望ましい。しかしながら、熱線の吸収では、3μm程度より長波長側で吸収率が増加するが、それより短い近から中赤外線の領域での吸収率が悪いため、特に近から中赤外線を吸収しやすい赤外線吸収材を用いるのが望ましい。
【0014】
本発明の請求項4記載の発明は赤外線吸収材がポリカーボネート樹脂であることを特徴吸着素子であり、ポリカーボネート樹脂は赤外線吸収率が非常に高いため、加熱装置の赤外線を吸収しやすく、吸着剤を温めるための熱を受けることが可能であるため、望ましい。しかしながら、熱的に不安定となる温度での再生には不向きであるため注意が必要である。
【0015】
本発明の請求項5記載の発明は、前述の赤外線吸収材が金属酸化物であることを特徴とする吸着素子であり、前述のような赤外線を吸収することの効果だけでなく、金属酸化物が熱触媒としても働くために、吸着剤が吸着した有機ガスを脱着する際に触媒反応で分解することもできる効果がある。
【0016】
本発明の請求項6記載の発明は、前述の赤外線吸収材が少なくともマンガンを含むマンガン系酸化物であることを特徴とする吸着素子であり、マンガン系酸化物は金属酸化物の中でも安価であり、かつ例えば二酸化マンガンなど茶褐色から黒色の材料であり、担持状態が把握しやすくまた、赤外線を吸収できる材料であるため、吸着材を温める前述の効果もある。また、酸化マンガンが熱触媒としても働くために、吸着剤が吸着した有機ガスを脱着する際に触媒反応で分解することもできる効果もえられる。
【0017】
本発明の請求項7記載の発明は、前述の赤外線吸収材が少なくとも酸化鉄であることを特徴とする吸着素子であり、例えば四酸化三鉄などの酸化鉄は金属酸化物の中でも安価であり、かつ黒色の材料であり、担持状態が把握しやすくまた、赤外線を吸収できる材料であるため、吸着材を温める前述の効果もえられる。
【0018】
本発明の請求項8記載の発明は、前述の赤外線吸収材をとくに吸着素子の通気端面に塗付することを特徴とした吸着素子である。吸着剤を担持した吸着素子において、吸着剤上に赤外線吸収材が存在すると、吸着剤の吸着サイトを阻害する場合がある。しかしながら通気端面だけであれば、その阻害が小さくてすむその一方で、加熱装置の近傍にあたる通気端面に塗付面を配置することで、有効に熱を吸収し、かつ伝播によって加熱装置の熱を吸着素子全体に伝えることが可能になる。そのため、吸着剤の吸着サイトを阻害せず、赤外線吸収材の効果が得られる。これによって吸着素子は加熱装置からの熱だけでなく、赤外線吸収材からも熱をえられるために、加熱装置からの熱だけでの再生時よりもより少ないエネルギーで吸着剤を再生をすることが可能である。そのため、再生にかかるエネルギーを少なくすることができる。もしくは、同じエネルギーであっても再生量が増えるため、吸着できる量が増え、吸着素子の吸着量をふやすことが可能である。
【0019】
本発明の請求項9記載の発明は、前述の赤外線吸収材の平均粒子径が0.5μm以上3μm以下である大きさであることを特徴とした吸着素子であり、可視光から近赤外光を吸収するためにとくに0.5μm以上であり、また、吸着剤と接触した状態で担持するために3μm以下にした赤外線吸収材の平均粒径が望ましい。平均粒径が大きくなりすぎると、吸着剤との接触が悪くなるのに加え、大きいために、赤外線吸収材のはがれによる粉落ちがおこる。そのため粉落ちを防ぐために接着剤を用いる必要がある。しかしながら接着剤のために吸着剤の吸着サイトが阻害される。そのため、接着剤を用いずに吸着素子に担持するために平均粒径が3μm以下で、吸着を阻害せず赤外線吸収材の効果が得られる。
【0020】
本発明の請求項10記載の発明は、前述の赤外線吸収材の重量が吸着剤の重量の0.01%以上から15%以下で含有することを特徴とした吸着素子であり、吸着剤上に赤外線吸収材が明らかに存在することで、その部分に赤外線があたり、熱を吸収し放出して接する吸着材を加熱することができる。一方で15%以上の多量に存在すると赤外線の熱を受けることは可能であるが、逆に吸着剤の吸着サイトを阻害する結果になってしまうため、赤外線吸収材の存在量は、吸着剤の重量に対して適量が存在する。そして望ましくは吸着を阻害せず、吸着量が向上するように6%以下が望ましい。
【0021】
本発明の請求項11記載の発明は、赤外線吸収材を吸着素子に担持する方法として赤外線吸収材を界面活性剤と共に分散させた液をボールミルし、赤外線吸収剤分散液を作成し、これに吸着剤を添着した吸着素子を含浸し、赤外線吸収材を担持したことを特徴とする吸着素子であり、赤外線吸収材をボールミルして、粒子径を細かくすることができ、かつその分散液に界面活性剤を混ぜることで赤外線吸収材の再凝集をふせぎ、粒子径を細かいままにできる。粒子か細かく保てることによって赤外線吸収材の接着に接着剤を用いずに吸着素子に担持することができ、接着剤で吸着を阻害されることなく赤外線吸収材の効果が得られる。
【0022】
なお、界面活性剤は、赤外線吸収材の特長によってカチオン性、アニオン性、ノニオン性のものを適量使い分けることが望ましい。
【0023】
本発明の請求項12記載の発明は、前述の赤外線吸収材を担持した吸着素子と、この吸着素子に通気する通気手段と、前記の吸着素子を加熱するための加熱手段とを筐体内に配し、その加熱手段としてニクロム線ヒーターを用いたことを特徴とする空調装置であり、ニクロム線から発せられる近から中赤外線を赤外線吸収材がとくに吸収し、熱を接触するもしくは近傍に存在する、前述の水分もしくは有機ガスを吸着した吸着剤に与え、吸着剤は加熱装置からの熱だけでなく、赤外線吸収材からも熱をえられるために、加熱装置からの熱だけでの再生時よりもより少ないエネルギーで再生をすることが可能である。そのため、再生にかかるエネルギーを少なくすることができる。もしくは、同じエネルギーであっても加熱による脱着量が増えるため、吸着できる量が増え、吸着素子の吸着量をふやすことが可能である。
【0024】
本発明の請求項13記載の発明は、前述の赤外線吸収材を担持した吸着素子と、この吸着素子に通気する通気手段と、前記の吸着素子を加熱するための加熱手段とを筐体内に配し、その加熱手段としてハロゲンランプを用いたことを特徴とする空調装置であり、ハロゲンランプから発せられる特に波長1μm前後の赤外線を赤外線吸収材がとくに吸収し、熱を接触するもしくは近傍に存在する、前述の水分もしくは有機ガスを吸着した吸着剤に与え、吸着剤は加熱装置からの熱だけでなく、赤外線吸収材からも熱をえられるために、加熱装置からの熱だけでの再生時よりもより少ないエネルギーで再生をすることが可能である。そのため、再生にかかるエネルギーを少なくすることができる。もしくは、同じエネルギーであっても加熱による脱着量が増えるため、吸着できる量が増え、吸着素子の吸着量をふやすことが可能である。
【0025】
本発明の請求項14記載の発明は、前述の赤外線吸収材を担持した吸着素子と、この吸着素子に通気する通気手段と、前記の吸着素子を加熱するための加熱手段とを筐体内に配し、その加熱手段として赤外線ヒーターを用いたことを特徴とする空調装置であり、赤外線ヒーターから発せられる赤外線を赤外線吸収材がとくに吸収し、熱を接触するもしくは近傍に存在する、前述の水分もしくは有機ガスを吸着した吸着剤に与え、吸着剤は加熱装置からの熱だけでなく、赤外線吸収材からも熱をえられるために、加熱装置からの熱だけでの再生時よりもより少ないエネルギーで再生をすることが可能である。そのため、再生にかかるエネルギーを少なくすることができる。もしくは、同じエネルギーであっても加熱による脱着量が増えるため、吸着できる量が増え、吸着素子の吸着量をふやすことが可能である。
【0026】
本発明の請求項15記載の発明は、前述の空調装置に加熱装置から発せられる赤外線を反射させて、吸着素子に反射した赤外線を当てるように反射板を配置したことを特徴とする空調装置であり、前記の加熱装置から発せられた赤外線をさらに有効に吸着素子に照射することによって、より効率的に吸着素子の再生熱を得ることができる。
【0027】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0028】
(実施の形態1)
図1に示すように、例えば波型のシートと平型のシートを交互に積層して巻き上げ、円形に加工したハニカム構造体基材1に吸着剤としてゼオライト2をコロイダルシリカなどのバインダ3を介して担持した吸着素子を図2に示すようにアニオン性界面活性剤4と赤外線吸収材として二酸化マンガン5と水6を混合した、二酸化マンガン5の分散溶液に含浸する。なお、この分散液を得るために、二酸化マンガン5とアニオン性界面活性剤4の混合液を例えばボールミルなどの粒子を微粒化する方法で微粒化し、平均粒径が0.5μm以上で3μm以下にする。これによってゼオライト2から二酸化マンガン5がほとんど落ちずに接着し、かつ赤外線を吸収するのに十分な大きさであるので望ましい。
【0029】
そして含浸して得られた吸着素子を引上げ、吸着素子につかなかった余剰液を吹き落し、乾燥させて、二酸化マンガンを吸着素子上に担持する。こうして二酸化マンガンを担持した吸着素子7がえられる。
【0030】
なお、赤外線吸収材としての二酸化マンガン5は、吸着剤のゼオライト2の重量に対して、0.01%以上から15%以下程度担持されるのが望ましく、さらにゼオライト2の吸着サイトを阻害せず、かつ吸着素子7に赤外線吸収材としての二酸化マンガン5を担持させ吸着素子7を再生させるための加熱装置から効率的に熱を受け取るために二酸化マンガン5の担持重量はゼオライト2重量に対して0.01%以上から6%以下とするのが望ましい。
【0031】
なお、アニオン性界面活性剤4は二酸化マンガン5を微粒化し、再凝集を防いで分散させておくために分散液中に混合するのが望ましい。
【0032】
また、図3に示すように筐体8内に前記のように作成した二酸化マンガンを担持した吸着素子7と、これを回転させるギアモーターなどの回転手段9と、前記吸着素子7を加熱するためのヒーターなどの加熱手段10と、加熱されて放出した水分を結露回収するための結露用熱交換器11と水タンク12と、前記吸着素子7に通気するためのファン13を配した除湿空調装置を得る。
【0033】
ファン13によって空気を吸着素子7に送り、湿気が吸着され、乾燥した空気が筐体8外に供給される。吸着素子7は回転手段9によって回転して、加熱手段10によって温められる。ゼオライト2から水分が脱着し、結露用熱交換器11で、冷却され水となり、水タンク12に回収される。また、加熱手段10のヒーターから赤外線が反射し、吸着素子7に反射した赤外線があたるように反射板14a、反射板14bの両方もしくは片方に貼り付けるのが望ましい。このときの反射板としては、金属材料がのぞましく、とく赤外線反射率の優れるアルミニウムや銅をもちい、とくにコストの面でも有利なアルミニウムを用いるのが望ましい。
【0034】
なお、加熱装置のヒーターとしては、赤外線吸収材の吸収波長にあったものを選ぶのが望ましいが、とくにニクロム線ヒーター、ハロゲンヒーター、赤外線ヒーターが赤外線、特にゼオライトの吸収率がやや低く、赤外線吸収材では吸収できる0.8μmから3μm程度までの近中赤外線の発生が強いため望ましい。
【0035】
(実施の形態2)
実施の形態1では赤外線吸収材として二酸化マンガンを用いたが、他の金属酸化物でも赤外線吸収特性をもつものであればよい。例えば酸化鉄であり、例えば四酸化三鉄であれば、安価であり、かつ黒色の材料であり、担持状態が把握しやすいため製造しやすく望ましい。
【0036】
(実施の形態3)
実施の形態1では赤外線吸収材として二酸化マンガンを用いたが、ポリカーボネート樹脂でも良い。ただし、分散には界面活性剤は必要ないが溶媒をポリカーボネート樹脂を分散する溶剤にする必要がある。また、加熱装置での加熱温度も、ポリカーボネートの燃焼が起こらない範囲でユーザーが設定する必要がある。しかしポリカーボネート樹脂は赤外線吸収効率が高いので、熱の利用効率を向上させることができる。
【0037】
(実施の形態4)
実施の形態1では、二酸化マンガンの分散液に吸着素子を含浸したが、ハニカム構造体の吸着素子の通気端面に二酸化マンガンの分散液をローラ塗りやスプレーを用いて塗付しても良い。熱を有効に使う点では効果が実施の形態1より落ちるが、簡単に製造ができ、分散液の乾燥にかかるコストおよび乾燥設備にかかるコストを大幅に低減することができる。また、加熱装置の近傍にあたる通気端面に塗付面を配置するのが、有効に熱を吸収し、かつ伝播によって加熱装置の熱を吸着素子全体に伝えることが可能になるため望ましい。
【実施例1】
【0038】
実施の形態1のようにセラミックの波型のシートと平型のシートを交互に積層して巻き上げ、円形に加工したハニカム構造体に吸着剤としてゼオライトを担持した吸着素子を作成した。この吸着素子を、アニオン性界面活性剤と二酸化マンガンと水を混合した、二酸化マンガンの分散溶液に含浸する。なお、この分散液を得るために、二酸化マンガンと界面活性剤の混合液を12時間ボールミルすることによって微粒化し、平均粒径が1.2μmとなるようにした。(この評価には堀場製作所製レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置LA−300を用い、相対屈折率1.70−0.00iで計算を行なった。)なお、アニオン性界面活性剤は固形分で二酸化マンガンの重量比1%の割合になるように分散させた。
【0039】
なお、このとき二酸化マンガンの吸着素子への担持量による違いを検討するために分散液の濃度を1.5、2.0、7.0、14.0重量%と変えて含浸をおこない、計4個の二酸化マンガン添着吸着素子を作成した。
【0040】
そして含浸して得られた吸着素子を引上げ、吸着素子につかなかった余剰液を吹き落し、乾燥させて、二酸化マンガンを吸着素子上に担持する。こうして二酸化マンガンを担持した吸着素子を得た。
【0041】
このときのゼオライトの重量は約60gで、二酸化マンガンの担持量はゼオライトの重量に対してそれぞれ0.1、1.2、5.5、17.8%であった。
【実施例2】
【0042】
実施例1と同様の方法で四酸化三鉄でも同様に吸着素子に含浸を行なった。このときの四酸化三鉄の担持量は、ゼオライトの重量に対して6.4%であった。
【0043】
実施例1および2の吸着素子を実施の形態1で示した除湿空調装置に搭載し、二酸化マンガン担持の前後での吸湿能力の変化を測定した。なお、測定条件は23m3の室内を常時20℃60%R.H.となるように設定し、このとき一定時間に除湿空調装置のタンクにたまった水の量を除湿量として測定した。加熱装置のヒーターはニクロム線ヒーターを用いた。その結果を表1および表2に示す。表1は、本発明の実施例1の二酸化マンガンの担持量と担持による除湿量変化を示す表である。
【0044】
【表1】

【0045】
表2は、本発明の実施例2の四酸化三鉄の担持量と担持による除湿量変化を示す表である。
【0046】
【表2】

【0047】
また、実施例1の二酸化マンガン担持量の違いによる除湿量の担持前後の差を図4に示す。
【0048】
以上の結果から、赤外線吸収材の担持が除湿量の向上させることが確認された。また、その担持量は吸着剤に対して15%以下、望ましくは二酸化マンガンの場合に6%以下が望ましいことが確認できた。加熱効率および再生効率の良い吸着剤が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0049】
吸着剤を担持した吸着素子と吸着させた水分や有機ガスを脱着するための加熱手段を備えた空調装置において、吸脱着効率の向上により、従来より省エネルギー化を実現したもしくは従来と同等のエネルギーでより吸着量の多い空調装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施の形態1の吸着素子の概略図
【図2】本発明の実施の形態1の吸着素子の製造方法の概略図
【図3】本発明の実施の形態1の除湿装置の概略図
【図4】本発明の実施例の二酸化マンガンの担持量と担持による除湿量変化を示す図
【図5】従来例の除湿機を示す図
【図6】従来例の吸着素子の詳細図
【符号の説明】
【0051】
1 ハニカム構造体基材
2 ゼオライト
3 バインダ
4 アニオン性界面活性剤
5 二酸化マンガン
6 水
7 吸着素子
8 筐体
9 回転手段
10 加熱手段
11 結露用熱交換器
12 水タンク
13 ファン
14a 反射板
14b 反射板
101 吸着素子
102 素子基材
103 吸着剤
104 空気の流れ
105 通気ファン
106 乾燥した処理空気
107 回転手段
108 加熱手段
109 再生空気
110 熱交換器
111 吹き入れ空気
112 結露し水滴
113 タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着剤をふくむ材料で構成される通気性をもつ吸着素子に、吸着剤より高い赤外線吸収率を有する赤外線吸収材を担持したことを特徴とする吸着素子。
【請求項2】
吸着素子が通気構造をもつハニカム構造であることを特徴とする請求項1記載の吸着素子。
【請求項3】
吸着剤がゼオライトであることを特徴とする請求項1もしくは2のいずれかに記載の吸着素子。
【請求項4】
赤外線吸収材がポリカーボネート樹脂であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の吸着素子。
【請求項5】
赤外線吸収材が金属酸化物であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の吸着素子。
【請求項6】
赤外線吸収材が少なくともマンガンを含むマンガン系酸化物であることを特徴とする請求項5記載の吸着素子。
【請求項7】
赤外線吸収材が少なくとも酸化鉄であることを特徴とする請求項5記載の吸着素子。
【請求項8】
赤外線吸収材を吸着素子の通気端面に塗付したことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の吸着素子。
【請求項9】
赤外線吸収材の平均粒子径が0.5μm以上3μm以下である大きさであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の吸着素子。
【請求項10】
赤外線吸収材の重量が吸着剤の重量の0.01%以上から15%以下で含有することを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の吸着素子。
【請求項11】
赤外線吸収材を界面活性剤と共に分散させた液をボールミルし、赤外線吸収剤分散液を作成し、これに吸着剤を添着した吸着素子を含浸し、吸着素子内に赤外線吸収材を担持したことを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の吸着素子。
【請求項12】
前記請求項1乃至11記載の吸着素子と、前記吸着素子に通気する通気手段と、前記吸着素子を加熱するための加熱手段とを筐体内に配し、その加熱手段としてニクロム線ヒーターを用いたことを特徴とする空調装置。
【請求項13】
前記請求項1乃至11記載の吸着素子と、前記吸着素子に通気する通気手段と、前記吸着素子を加熱するための加熱手段とを筐体内に配し、その加熱手段としてハロゲンランプを用いたことを特徴とする空調装置。
【請求項14】
前記請求項1乃至11記載の吸着素子と、前記吸着素子に通気する通気手段と、前記吸着素子を加熱するための加熱手段とを筐体内に配し、その加熱手段として赤外線ランプを用いたことを特徴とする空調装置。
【請求項15】
赤外線を反射して請求項1乃至11のいずれかに記載の吸着素子に赤外線をあてるように赤外線反射材を配置したことを特徴とする空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−82888(P2009−82888A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−259612(P2007−259612)
【出願日】平成19年10月3日(2007.10.3)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】