説明

吸音カーペット

【課題】優れた吸音性能を有する防音カーペットを提供すること。
【解決手段】表側繊維基材裏面11に多数の貫通孔16を有する内側繊維基材13およびバッキング層15を設けた防音カーペット10において、前記貫通孔16が傾斜角度が異なる複数の錘台部16a、16cと直径の異なる複数の柱体部16b、16dとからなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車や列車、航空機などの乗り物の床面に敷設されるカーペットやマット、建物の室内や廊下の床面に敷設されるカーペットやマット、コンピュータのオペレーション用チェアマット、部屋の出入口に敷設される床面用マット、エレベータ内やエレベータホールの開閉扉前に敷設される床面用マット、玄関マットなどに適用される防音カーペットに関し、詳細には優れた吸音効果を有する吸音カーペットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自動車床面上には、フェルト層や不織布層を有して吸音性能に優れる床カーペットが敷かれている。
【0003】
一方、この床カーペット上に載置される自動車用マットは、一般に不織基布にパイルを打ち込んだ繊維基材と、この繊維基材裏面に形成したバッキング層とから構成されていた。
【0004】
ところが、自動車用マットにおけるバッキング層は、塩化ビニル樹脂などの合成樹脂からなり、遮音層として機能するようになっていたので、この自動車用マットを床カーペット上に載置した場合、風切り音などの車外からの騒音は、自動車用マットのバッキング層によって跳ね返されてしまい、車外からの騒音についての十分な対策がなされていなかった。
【0005】
また、建物の室内や廊下の床面に敷設されるカーペットやマットについても同様に、繊維基材裏面のバッキング層が遮音層となっていて、カーペット上面から伝播する騒音については、これを跳ね返してしまい、十分な吸音対策がなされていなかった。
【0006】
本発明者は、このような事情に鑑み鋭意研究の結果、さらに優れた吸音性能を有する防音カーペットを提供している。この防音カーペットは、「繊維基材の裏面側にバッキング層を形成した防音カーペットであって、当該防音カーペットに、その表裏を貫通する多数の貫通孔を形成したことを特徴とする防音カーペット」を要旨とするものである(特許文献1の第1〜3頁、図1〜3参照)。
【特許文献1】特開2002−238730号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者は、上記カーペットの表裏を貫通する多数の貫通孔を形成した吸音効果を有する防音カーペットに関し、さらに防音性能に優れたカーペットについて、鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成させるに至ったのである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明は、例えば自動車や列車、航空機などの乗り物の床面に敷設されるカーペットやマット、建物の室内や廊下の床面に敷設されるカーペットやマット、コンピュータのオペレーション用チェアマット、部屋の出入口に敷設される床面用マット、エレベータ内やエレベータホールの開閉扉前に敷設される床面用マット、玄関マットなどに適用される防音カーペットに関し、詳細には優れた吸音効果を有する吸音カーペットを提供することを第1の目的とするものである。
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、表側繊維基材裏面に、多数の貫通孔を有する内側繊維基材およびまたはバッキング層を設けた防音カーペットにおいて、前記貫通孔が錘台部と柱体部とからなることを特徴とする防音カーペットをその要旨とした。
【0010】
本発明の貫通孔の錘台部の範疇には錘体状のものも含まれる。また、本発明の貫通孔の範疇には、傾斜角度が異なる複数の錘台部と直径の異なる複数の柱体部とからなるものも含まれる。
【発明の効果】
【0011】
以上述べたとおり、本発明の防音カーペットは、表側繊維基材、内側繊維基材及び又はバッキング層の各層をカーペット上面からの音が通過する過程で効果的な吸音がなされるようになっており、さらに内側繊維基材及び又はバッキング層に到達した音が貫通孔を通して該防音カーペット裏側へと抜け出るときに、貫通孔の錘台部と柱体部を構成する各孔壁面に衝突を繰り返すようになっており、この度重なる衝突の過程で音のさらなる減衰がなされ、従来にない優れた吸音効果がもたらされるようになっている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の防音カーペットを図面に示した一実施の形態に従って詳しく説明する。本発明の防音カーペットは、表側繊維基材裏面に多数の貫通孔を有する内側繊維基材およびまたはバッキング層を設けたものである。本発明の防音カーペットにおける表側繊維基材としては、例えば不織布、織物、編物、紙、あるいはこれらの1種若しくは2種以上を組み合わせた複合体を挙げることができる。この表側繊維基材には、図1及び図6に示すように表側繊維基材11にパイル糸12を所定のボリュームとなるように打ち込んで意匠性を高めることができる。この表側繊維基材11は、上記のごとき多孔質な素材を使用しているので、当該表側繊維基材11の中を音が通過する過程で摩擦熱として減衰し、吸音されるようになっている。
【0013】
また、図1及び図6に示す例では、パイル糸12を打ち込んだ表側繊維基材11裏面に透孔性接着シート14を介して、不織布、織物、編物、紙、あるいはこれらの1種若しくは2種以上を組み合わせた複合体からなる内側繊維基材13が接着されている。この内側繊維基材13についても、前記表側繊維基材11と同じく多孔質な素材を使用しているので、この内側繊維基材13の中を音が通過する過程で摩擦熱として減衰し、吸音されるようになっている。
【0014】
前記透孔性接着シート14には、蜘蛛の巣状接着剤からなり、接着時の熱およびまたは圧力で薄膜化されて成るもの、ホットメルト樹脂などの接着樹脂中に発泡剤を入れて混練、シート化したものなどを用いることができる。図1及び図6に示す例では、パイル糸12を打ち込んだ表側繊維基材11と、内側繊維基材13との間に蜘蛛の巣状接着剤14を挟み込んで熱プレスすることで、表側繊維基材11と内側繊維基材13とを接着すると共に、その接着時の熱およびまたは圧力で蜘蛛の巣状接着剤14は薄膜(フィルム)状となっている。
【0015】
透孔性接着シート13は、多孔質な表側繊維基材、または表側繊維基材と内側繊維基材とに支持されて自由振動可能な状態に置かれる。このため、表側繊維基材を透過した音が、この透孔性接着シートに当たり、透孔を通して通過する過程で、該透孔性接着シートが自由振動し、音の減衰、吸音がなされるようになっている。またこの透孔性接着シートは、上述の接着、吸音という機能の他に、パイルを打ち込んだ表側繊維基材を使用する場合には、パイルの抜け止め材としても機能するようになっている。
【0016】
バッキング層は、該カーペットの補強および保形、すべり止めを行う目的で、表側繊維基材または内側繊維基材裏面に形成されるものである。図1及び図6に示す例において、バッキング層15は発泡樹脂からなり、その構造は、微細孔を通して音および振動が通過する過程で、音および振動の減衰がなされる連続気泡構造となっている。また、バッキング層15裏面にはズレ止め用の多数のスパイク17が形成されている。
【0017】
バッキング層を構成する樹脂としては、例えばスチレンーブタンジエンースチレン共重合体、アクリルニトリルーブタジエン系共重合体、ウレタン樹脂等の高分子、スチレンーブタンジエンゴム、アクリルニトリルーブタンジエンゴム、ブタンジエンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム等のゴム高分子、またはこれらを複数種混合したものなどを例示することができる。また、上記樹脂には必要に応じて充填剤、発泡剤、増粘剤、分散剤を加えてもよい。
【0018】
充填剤としては、例えば、ポリアクリル酸ソーダ、カルボキシメチルセルローズ、タルク、水酸化アルミニウム、酸化アンチモンなどが例示できる。発泡剤としては、例えば脂肪酸石けん、アルキルアリルスルホン酸ナトリウム、高級アルコール硫酸エステルナトリウム、Nーオクタデシルスルホコハク酸モノアミドジナトリウムなどが挙げられる。増粘剤としては、例えばポリアクリル酸ソーダ、カルボキシメチルセルローズ、ポリビニルアルコール、カゼイン、発酵多糖類などが挙げられるが、好ましくは低分子量のポリアクリル酸ソーダである。分散剤としては、例えばトリポリリン酸ソーダ、ヘキサメタリン酸ソーダなどが例示できる。
【0019】
表側繊維基材裏面に設けた内側繊維基材およびまたはバッキング層は、多数の貫通孔を有している。図1及び図6に示す例では、内側繊維基材13およびバッキング層15には、これらを貫通する多数の貫通孔16が形成されている。
【0020】
表側繊維基材又は内側繊維基材を通過した音は、内側繊維基材及び又はバッキング層に至り、この内側繊維基材及び又はバッキング層を通過する過程でさらに減衰され吸音されることになる。
【0021】
内側繊維基材およびまたはバッキング層に形成されている貫通孔は、錘台部と柱体部とからなる。このため、内側繊維基材及び又はバッキング層に到達した音が貫通孔内に入り込むと、貫通孔の錘台部と柱体部を構成する各孔壁面に衝突を繰り返すようになっており、この度重なる衝突の過程で音のさらなる減衰がなされ、従来にない優れた吸音効果がもたらされることになる。
【0022】
貫通孔は、傾斜角度が異なる複数の錘台部と直径の異なる複数の柱体部とからなる形態を採ることができる。
【0023】
貫通孔は、例えば図2に示すようなピン22をロール表面に突設したピン付きロール21を内側繊維基材及び又はバッキング層に押圧し、前記ピン22を内側繊維基材及び又はバッキング層に貫通させることにより穿孔される。
【0024】
図2及び図3に示すピン付きロール21におけるピン22は、図6に示す貫通孔16の孔形状に対応する形状を有するものである。図3(a)(b)に示すピン22は、円錐状をなし、鋭角な傾斜面を有する錘台部22aをピン頂部として、これに続き錘台部22a下部から垂直に下がる鉛直面を形成する柱体部22bと、これに続き柱体部22b下部から緩やかに広がる傾斜面を有する錘台部22cと、これに続き錘状部分22c下部から垂直に下がる鉛直面を形成する柱体部22dとからなる。
【0025】
このピン22を、例えば図1及び図6に示すように、バッキング層15側から内側繊維基材13及びバッキング層15に貫通させることで、内側繊維基材13及びバッキング層15には、開口方向に向かって径大となる円錐状をなしており、孔上部に鋭角な傾斜面を有する錘台部16aと、これに続き錘台部16a下部から垂直に下がる鉛直面を形成する柱体部16bと、これに続き柱体部16b下部から緩やかに広がる傾斜面を有する錘台部16cと、これに続き錘台部16c下部から垂直に下がる鉛直面を形成する柱体部16dとからなる貫通孔16が穿孔されるようになっている。
【0026】
こうして貫通孔16が穿孔されたカーペット10にあっては、内側繊維基材13及びバッキング層15に到達した音が、貫通孔16内の傾斜角度が異なる複数の錘台部16a、16cと直径の異なる複数の柱体部16b、16dを構成する各孔壁面に衝突を繰り返し、やがて孔の開口から飛び出していく。この度重なる衝突の過程で音の減衰がなされるようになっている。
【0027】
内側繊維基材及び又はバッキング層の貫通孔の形態としては、円錐状のものの他に開口方向に向かって径大となる多角錐状や星形錐状の形態を採ることもできる。図4(a)(b)に示すピン22は、六角錐状をなし、鋭角な傾斜面を有する錘台部22aをピン頂部として、これに続き錘台部22a下部から垂直に下がる鉛直面を形成する柱体部22bと、これに続き柱体部22b下部から緩やかに広がる傾斜面を有する錘台部22cと、これに続き錘台部22c下部から垂直に下がる鉛直面を形成する柱体部22dとからなる。
【0028】
このピン22を、例えば図1及び図6に示すように、バッキング層15側から内側繊維基材13及びバッキング層15に貫通させることで、内側繊維基材13及びバッキング層15には、開口方向に向かって径大となる六角錐状をなしており、孔上部に鋭角な傾斜面を有する錘台部16aと、これに続き錘台部16a下部から垂直に下がる鉛直面を形成する柱体部16bと、これに続き柱体部16b下部から緩やかに広がる傾斜面を有する錘台部16cと、これに続き錘台部16c下部から垂直に下がる鉛直面を形成する柱体部16dとからなる貫通孔16が穿孔されるようになっている。
【0029】
図5(a)(b)に示すピン22は、星形錐状をなし、鋭角な傾斜面を有する錘台部22aをピン頂部とし、これに続き錘台部22a下部から垂直に下がる鉛直面を形成する柱体部22bと、これに続き柱体部22b下部から緩やかに広がる傾斜面を有する錘台部22cと、これに続き錘台部22c下部から垂直に下がる鉛直面を形成する柱体部22dとからなる。
【0030】
このピン22を、例えば図1及び図6に示すように、バッキング層15側から内側繊維基材13及びバッキング層15に貫通させることで、内側繊維基材13及びバッキング層15には、開口方向に向かって径大となる星形錐状をなしており、孔上部に鋭角な傾斜面を有する錘台部16aと、これに続き錘台部16a下部から垂直に下がる鉛直面を形成する柱体部16bと、これに続き柱体部16b下部から緩やかに広がる傾斜面を有する錘台部16cと、これに続き錘台部16c下部から垂直に下がる鉛直面を形成する柱体部16dとからなる貫通孔16が穿孔されるようになっている。
【0031】
尚、本発明の範囲は、「特許請求の範囲」に定義されたとおりのものであり、例えば孔上部から鋭角な傾斜面を有する錘台部、次いで、緩やかな傾斜面を有する錘台部、次いで、緩やかな傾斜面を有する錘台部下部から垂直に下がる鉛直面を形成する柱体部、次いで、柱体部分下部からさらに径大な柱体部が連なるように設けた貫通孔とするなど、特許請求の範囲に含まれる全ての変更、形態を採ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、本発明の防音カーペットの要部拡大組み立て斜視図である。
【図2】図2は、ピン付きロールを示す斜視図である。
【図3】図3は、ピン付きロールのピン又はピンにより穿孔される貫通孔を示す斜視図である。
【図4】図4は、ピン付きロールのピン又はピンにより穿孔される貫通孔の別例を示す斜視図である。
【図5】図5は、ピン付きロールのピン又はピンにより穿孔される貫通孔の別例を示す斜視図である。
【図6】図6は、本発明の防音カーペットの要部拡大断面図である。
【符号の説明】
【0033】
11・・・ 表側繊維基材
13・・・ 内側繊維基材
15・・・ バッキング層
16・・・ 貫通孔
16a・・・錘台部
16b・・・柱体部
16c・・・錘台部
16d・・・柱体部
22・・・ ピン
22a・・・錘台部
22b・・・柱体部
22c・・・錘台部
22d・・・柱体部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表側繊維基材裏面に、多数の貫通孔を有する内側繊維基材およびまたはバッキング層を設けた防音カーペットにおいて、前記貫通孔が錘台部と柱体部とからなることを特徴とする防音カーペット。
【請求項2】
貫通孔が傾斜角度が異なる複数の錘台部と直径の異なる複数の柱体部とからなることを特徴とする請求項1記載の防音カーペット。
【請求項3】
貫通孔が開口方向に向かって径大となる円錐状をなしていることを特徴とする請求項1又は2記載の防音カーペット。
【請求項4】
貫通孔が開口方向に向かって径大となる多角錐状をなしていることを特徴とする請求項1又は2記載の防音カーペット。
【請求項5】
貫通孔が開口方向に向かって径大となる星形錐状をなしていることを特徴とする請求項1又は2記載の防音カーペット。
【請求項6】
バッキング層が連続気泡構造の発泡樹脂からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の防音カーペット。
【請求項7】
バッキング層が多数のスパイクを有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の防音カーペット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−223433(P2006−223433A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−38845(P2005−38845)
【出願日】平成17年2月16日(2005.2.16)
【出願人】(000149664)株式会社大和 (35)
【出願人】(592083993)有限会社八千代商事 (34)
【出願人】(592084004)有限会社祥永物産 (34)
【Fターム(参考)】