説明

吸音材

【課題】 例えば自動車などに適用され、自動車内外からの騒音を低減できる吸音材、及び、吸音させたい周波数帯を調整する調整方法を提供する。
【解決手段】 この吸音材は、マトリックス材4中に、粒状体2を内包しているカプセル体3が分散されており、粒状体2の周囲に空間が形成されている。空間の容積、粒状体2の材質、粒状体2が存在しない場合の空間の容積と粒状体2の容積の比率などを調整することにより、吸音させたい周波数帯を調整することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車のボディーの内側や、ドアの内側などに適用される吸音材に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のボディーやドアなどの構造部材の内側には、自動車内外からの騒音を低減するために、吸音材を設けることが検討されている。図8、9には、従来の自動車のドア付近における吸音部材の構造の一例が示されている。図8は自動車全体の斜視図、図9は図8におけるドアパネル(図中点線部分)を内側から見たときの拡大分解斜視図である。
【0003】
図8、9に示すように、この吸音材は、自動車100のドアパネル101の内側に、ウレタン性のシーラー102をドアホールの周りに沿って一周塗布し、その上にドアホールシール103(ポリエチレン製のフィルム)を吸音材として貼り付ける構造となっている。この場合、ウレタンシーラーは経時劣化後も硬化せずに粘着性を維持している為、メンテナンス時等は、ドアホールシール103を剥がしても、再度貼り付けることが可能である。
【0004】
上記のように、ドアに内蔵する吸音材としては様々な種類のものが検討されており、例えば、ゴム/ウレタンスポンジ、金属プレート、樹脂プレート等が検討されている。また、ポリエチレンフィルムとフェルト等の繊維とを併用して、防水と防音効果を付与することも検討されている。
【0005】
また、例えば、下記の特許文献1には、吸音材として使用するのに適した成形材として、多孔質の吸音材によって芯材を形成し、芯材の両側縁をポリウレタンフィルムにより被覆した成形材が開示されている。
【0006】
更に、特許文献2には、車両ドア内蔵用吸音材で発泡体からなる吸音層と、その長手方向に中空部が設けられ、中空部には、微粒子粉体または繊維質材料が充填されている吸音材が開示されている。これによれば、車外側から車内側、あるいはその逆に伝わる騒音を効果的に抑制することができる。
【特許文献1】特表平8−505581号公報
【特許文献2】特開2003−118364号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、使用者からは、自動車の静粛性の更なる向上が要望されている。この点、特許文献1及び2に記載されている吸音材においては、その吸音効果が充分でない。また、吸音性と同時に、防水性、耐熱性、耐久性、リサイクル性、組付性などは、従来と同等以上の特性を維持することが望まれている。
【0008】
本発明は、以上のような課題に鑑みてなされたものであり、例えば、自動車のドア内部や、ボディーの内側などに設置することにより、車内外からの騒音を低減できる吸音材、及び、吸音させたい周波数帯を調整する調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
より具体的には本発明は以下のようなものを提供する。
【0010】
(1) マトリックス材と、当該マトリックス材中に分散されている粒状体と、を備え、前記粒状体の周囲に空間を有している吸音材。
【0011】
本発明の吸音材によれば、マトリックス材中に分散される粒状体の周囲に空間を有しているため、空間と粒状体の振動が、音の振動と逆位相となる。したがって、材料に伝わった音の振動が打ち消され、音の振動の低減効果が得られるものと考えられる。また、粒状体の周囲に空間を有しているため、吸音材の軽減化を行うことができる。
【0012】
「粒状体の周囲に空間を有して」とは、粒状体が、空間内で移動又は振動可能になっている状態であってもよい。また、粒状体が、空間を形成する内周面の一点に固定されている状態であってもよい。また、空間内における粒状体は1つでも複数でもよいが、1つの空間に1つ含まれていることが好ましい。
【0013】
(2) 前記粒状体及び前記空間を内包しているカプセル体を備え、当該カプセル体が、前記マトリックス材中に分散されている(1)記載の吸音材。
【0014】
この態様によれば、カプセル体を形成した後、マトリックス材に分散、混合するだけで、粒状体の周囲に空間を有する吸音材を簡単に成形することができる。また、カプセル体の大きさ、粒状体の大きさの調整が容易にできるため、吸音させたい周波数帯の調整も容易になり、より効果的に吸音を行うことができる。
【0015】
「カプセル体」とは、粒状体とそれを覆う中空体とからなり、粒状体の周囲に空間を形成している粒子であればよい。したがって、中空体は完全な密封体であってもよく、例えば網目状などであってもよい。具体的には、従来公知のいわゆるマイクロカプセルなどが適宜使用できる。
【0016】
(3) 前記粒状体が存在しない場合の前記空間の体積を球換算したときの直径と、前記粒状体の体積を球換算したときの直径との比が、10:2から10:9.9である(1)又は(2)記載の吸音材。
【0017】
この態様によれば、空間の体積を球換算したときの直径と、粒状体の体積を球換算したときの直径との比を上記の範囲とすることで、特に吸音効果を向上できる。空間の体積を球換算したときの直径を10としたときの、粒状体の体積を球換算したときの直径が、9.9より大きいと、粒状体のスライド量が小さくなり、逆位相の入力が小さくなるため好ましくない。また、2より小さいと粒状体の体積が小さくなってしまい、マトリックスに与えるエネルギーが小さくなる。更に、中空体内で跳ね易くなり、マトリックスの振動方向に対して垂直方向へのエネルギーロスが大きくなるので好ましくない。
【0018】
(4) 前記粒状体は耐熱性を有し、更に、ゴム、樹脂、金属、及び、セラミック多孔質材料より選択される少なくとも1種以上である(1)から(3)いずれか記載の吸音材。
【0019】
この態様によれば、粒状体を、耐熱性を有し、かつ、ゴム、樹脂、金属、セラミック多孔質材料より選択される少なくとも1種とすることで、充分な吸音効果が得られ、かつ、マトリックス材を成形する際の熱で粒状体が溶解することを防止できる。また、後述するようにカプル体を使用しない場合には、粒状体をセラミック多孔質材料とすることで、水や発泡剤を多く含ませることができるため、水、発泡剤の調整により、空間の容積と粒状体の容積の比率の調整を行うことができる。
【0020】
(5) 前記マトリックス材は熱可塑性樹脂である(1)から(4)いずれか記載の吸音材。
【0021】
(6) 前記マトリックス材は熱可塑性エラストマーである(1)から(5)いずれか記載の吸音材。
【0022】
(5)の態様によれば、マトリックス材が熱可塑性樹脂であるため、リサイクル性に優れた吸音材を形成することができる。なかでも(6)の態様のように、マトリックス材が熱可塑性エラストマーである場合には、通常の熱可塑性樹脂に比べ、熱可塑性エラストマーは、材料硬度が軟らかく比重が高い。これにより粒状体がマトリックスに当たる際、衝撃エネルギーが音に変換されるのを防ぐことができる。また、比重が高いため、マトリックス自体のマス効果も期待することができる。
【0023】
(7) (1)から(6)いずれか記載の吸音材をシート状に成形してなり、自動車の構成部材の内面に適用される自動車用吸音材。
【0024】
この態様によれば、例えば、自動車のボディーの内側や、ドアの内側などの構造部材に適用することで、エンジン音、車外、車内からの騒音を特に効果的に抑制することができる。
【0025】
(8) マトリックス材中に粒状体を分散させる際に、前記粒状体の周囲に空間を形成することによって、吸音させたい周波数帯を調整する吸音性調整方法であって、前記空間の容積、前記空間の数、前記空間の分散性、前記粒状体が存在しない場合の前記空間の容積と前記粒状体の容積との比率、前記粒状体の材質、より選択される1以上を調整することによって吸音性を調整する吸音性調整方法。
【0026】
本発明の吸音性調整方法によれば、上記のように、空間と粒状物との構成条件を調整することで、吸音させたい周波数帯を選択的に調整可能である。したがって、より効果的に吸音性を調整することができ、特定の周波数のみをより効果的に吸収できる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、防水性、耐熱性、耐久性、リサイクル性、組付性などは、従来と同等以上の特性を維持しつつ、従来より大幅に吸音性を向上させた吸音材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、第1実施形態以外の各実施形態の説明において、第1実施形態と共通するものについては、その説明を省略若しくは簡略化する。
【0029】
<第1実施形態の全体構成>
図1に、本発明の一実施形態である吸音材10の断面図を示す。図1に示すように、この吸音材10は、マトリックス材4とカプセル体3とからなり、カプセル体3はマトリックス材4中に分散されている。更に、カプセル体3は、中空体1内に粒状体2を内包している。以下、それぞれの構成要素について説明する。
【0030】
<カプセル体>
図2には、カプセル体3の拡大図を示す。粒状体2の周囲には空間を有しており、その空間を中空体1により覆うように構成されている。
【0031】
中空体1は、粒状体2と密着しない材料が好ましく用いられ、例えば、樹脂、熱可塑性エラストマーが挙げられる。また、中空体1の外径は、球に換算して1μm以上2mm以下であることが好ましい。このような中空体1としては、例えば、公知のマイクロカプセルが好ましく用いられる。
【0032】
粒状体2は、成形時の熱で溶解しない材質が好ましく用いられ、例えば、加硫ゴム、耐熱樹脂、金属、セラミック等が挙げられる。粒状体2の外径は、中空体1の外径より小さければよく、好ましくは、球に換算して1μm以上2mm以下である。
【0033】
それぞれのカプセル体3において、粒状体2は、1つの中空体1の中に1つ含まれていることが好ましい。また、粒状体2が存在しない場合の空間の体積を球換算したときの直径と、粒状体の体積を球換算したときの比が、10:2から10:9.9であることが好ましい。
【0034】
<マトリックス材>
マトリックス材4は、特に限定されないが、成形性、リサイクル性の良い熱可塑性樹脂が好ましい。このような熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリアミド(PA)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリオキシメチレン(POM)等が挙げられる。なかでも、材料硬度、比重の観点から、熱可塑性エラストマー(TPE)であることが好ましい。熱可塑性エラストマーとしては、具体的には、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑成エラストマー等が用いられる。また、マトリックス材4は未発泡であってもよく、発泡体していてもよい。発泡体は連続気泡であっても独立気泡であってもよい。
【0035】
<製造方法>
上記の吸音材10の製造方法の一例は、次の通りである。
まず、粒状体2を内包しているカプセル体3を準備する。カプセル体3は、例えば炭化水素などで膨潤させた粒状体2にフッ素やシリコン等、離型効果のあるコーティングを施し熱硬化樹脂でコーティングする。それを乾燥させると、膨潤していた粒状体2が収縮するため、粒状体2と中空体1の間に隙間が出来たカプセル体3が形成される。粒状体2の膨潤量を調整することにより、粒状体2と中空体1の隙間の調整が可能になる。このカプセル体3をマトリックス材4に混合、分散し、例えば180から200℃で所望の形状に成形し、吸音材10を形成する。
【0036】
吸音材10に対して、カプセル体3の含有割合は、30%以上90%以下であることが好ましい。カプセル体3が30%より少ないと、マトリックス全体の振動を打ち消すだけの逆位相のエネルギーを発揮し難いので好ましくない。また、90%を超えると、マトリックスの材料物性が極端に低下するので好ましくない。
【0037】
<作用>
上記のようにして得られた吸音材10は、図1に示すように、吸音材10に音が入射すると、マトリックス材が振動するとともに、カプセル体3の内部の粒状体2が振動することになる。この粒状体2の振動には、マトリックス材の振動を打ち消す効果があるため、吸音効果が得られる。
【0038】
また、マトリックス材4の表層は樹脂層であるため、吸音性に加えて防水性にも優れている。なお、マトリックス材4の表面形状を波状等として凹凸部7を形成することにより、吸音面積が広くなり、吸音効果を更に向上することができる。
【0039】
<変形例1>
図4は、上記のカプセル体3を用いた吸音材10を、他の第2吸音材10cと組み合わせて積層した吸音材10dを示す。第2吸音材10cとしては、例えば、吸音材10のマトリックス材4と同種の発泡材料を積層することが好ましく、例えば、連続発泡した熱可塑性エラストマーが好ましく用いられる。このように、更に他の第2吸音材10cと組み合わせることにより、より吸音効果を向上させることができる。
【0040】
<変形例2>
図5は、上記のカプセル体3を、他のマトリックス材4aと組み合わせた例である。この実施形態においては、マトリックス材4aとして、連続発泡した熱可塑性エラストマーを用いている。図中、6は発泡によって得られた気泡である。このように、マトリックス材4aとして気泡6を有する材料を用いることにより、軽量、かつ、吸音効果を向上させた吸音材10aを得ることができる。このような吸音材10aは、カプセル体3を混合したマトリックス材原料に、発泡剤を混合した状態で、成形することにより容易に得ることができる。
【0041】
<第2実施形態>
図3には、本発明の第2実施形態が示されている。この実施形態における吸音材10bは、カプセル体を用いていない点が上記の第1実施形態と異なっている。したがって、マトリックス材4に分散形成された空間内に、粒状体2が配置されている。この場合、粒状体2は、水及び発泡剤を多く含ませることができるため、多孔質材料が好ましく用いられ、なかでもセラミック多孔質材料が特に好ましい。このように、本発明の吸音材においては、マトリックス材4中に分散した粒状体2の周囲に空間を有していればよく、必ずしもカプセル体は必要ではない。
【0042】
なお、上記の吸音材10bは、水、又は、発泡剤を粒状体2に含浸させて、マトリックス材4に混合する。次に、この混合した液を所定の温度で発泡し、吸音材10bを成形する。これにより、水、又は、発泡剤が発泡するとともに粒状体が残差として残り、周囲に空間を有する吸音材10bを得ることができる。発泡剤の具体例としては、特に限定されないが、アゾジカルボンアミド(ADCA)、N、N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)、重曹、炭酸水等が挙げられる。
【実施例】
【0043】
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0044】
<実施例1>
まず、ゴム粒(0.5mm径)を炭化水素で膨潤させ、膨潤ゴム粒(1mm径)を準備した。この膨潤ゴム粒(1mm径)に熱硬化樹脂をコーティング後、乾燥させて、ゴム粒(0.5mm径)を内包した熱硬化樹脂のカプセル体(カプセルサイズ:約1mm)を製造した。次いで、このカプセル体を熱可塑性エラストマー(リケンテクノス社製、アクティマーゲル)中に1:1の割合で分散させ、180℃で成形し、吸音材を得た。
【0045】
<実施例2>
まず、ゴム粒(0.5mm径)を炭化水素で膨潤させ、膨潤ゴム粒(2mm径)を準備した。この膨潤ゴム粒(2mm径)に熱硬化樹脂をコーティング後、乾燥させて、ゴム粒(0.5mm径)を内包した熱硬化樹脂のカプセル体(カプセルサイズ:約2mm)を製造した。次いで、このカプセル体を熱可塑性エラストマー(リケンテクノス社製、アクティマーゲル)中に1:1の割合で分散させ、180℃で成形し、吸音材を得た。
【0046】
<実施例3>
実施例2の粒状体をゴム粒(1mm径)とした以外は実施例2と同様の方法で吸音材を製造した。
【0047】
<実施例4>
実施例2の粒状体をゴム粒(1.5mm径)とした以外は実施例2と同様の方法で吸音材を製造した。
【0048】
<実施例5>
実施例2の粒状体をゴム粒(1.75mm径)とした以外は実施例2と同様の方法で吸音材を製造した。
【0049】
<実施例6>
まず、ゴム粒(3.5mm径)を炭化水素で膨潤させ、膨潤ゴム粒(4mm径)を準備した。この膨潤ゴム粒(4mm径)に熱硬化樹脂をコーティング後、乾燥させて、ゴム粒(3.5mm径)を内包した熱硬化樹脂のカプセル体(カプセルサイズ:約4mm)を製造した。次いで、このカプセル体を熱可塑性エラストマー(リケンテクノス社製、アクティマーゲル)中に1:1の割合で分散させ、180℃で成形し、吸音材を得た。
【0050】
<実施例7>
実施例6の粒状体をアルミ粒(3.5mm径)とした以外は実施例6と同様の方法で吸音材を製造した。
【0051】
<比較例1>
エチレンプロピレンゴム(EPDM)に発泡剤を加えて混合した後、成形し、独立気泡を有する吸音材を得た(比重:0.6)。
【0052】
<比較例2>
エチレンプロピレンゴム(EPDM)に発泡剤を加えて混合した後、成形し、連続気泡を有する吸音材を得た(比重:0.3)。
【0053】
<比較例3>
ウレタンに発泡剤を混合した後、成形し、連続気泡を有する吸音材を得た(比重:0.4)。
【0054】
<比較例4>
吸音断熱素材(不織布)(住友スリーエム社製、商品名:シンサレート)を吸音材として用いた。
【0055】
<比較例5>
樹脂プレート(ナイロン66)を吸音材として用いた。
【0056】
<比較例6>
アルミプレス材を吸音材として用いた。
【0057】
<比較例7>
熱可塑性エラストマー(リケンテクノス社製、商品名:アクティマーゲル)を吸音材として用いた。
【0058】
<比較例8>
熱可塑性エラストマー(三井化学社製、商品名:ミラストマー)に発泡剤を加えて混合した後、成形し、吸音材を得た(比重:0.6)。
【0059】
<比較例9>
オレフィン系エラストマー(AESジャパン社製、商品名:サントプレーン)に水を加えて混合した後、成形し、吸音材を得た(比重:0.4)。
【0060】
<比較例10>
熱可塑性エラストマー(三井化学社製、商品名:ミラストマー)に熱膨張性カプセル(クレハ化学製、商品名:マイクロスフェアー)を加えて混合し、成形し、吸音材を得た(比重:0.4)。
【0061】
<評価>
実施例1、比較例1から10の吸音材について下記の項目につき検討を行った。
【0062】
<吸水性>
試験方法は、サンプルシート(10mm厚)の片面に、直接ホースで水道水をかけてサンプルに吸水されるかを確認した。ホースの内径は15mmで、水の量は10L/minとし5分間放水を行った。判定基準は、サンプルに著しい吸水がなければ「○」、サンプルに著しい吸水が認められたら「×」とした。
【0063】
<吸音性>
試験方法は、JIS A 1405に準じ、B管(細管)を用いて、垂直入射吸音率を測定した。判定基準は、吸音効果が得られなければ「×」、若干の吸音効果が認められれば「△」、著しい吸音効果が認められれば「○」とした。
【0064】
<周波数コントロール>
吸音させたい周波数ピークを任意の周波数帯への調整の可否についての指標である。材料自体で調整が出来ない場合は「×」、材料自体で調整が出来る場合は「○」とした。
【0065】
<質量>
製品化した場合の質量の指標である。材料自体の比重も高く、製品にしても重い物は「×」、材料自体の比重は従来の吸音材と差は見られないが、製品にすると重い物は「△」、材料自体の比重も低く、製品化した場合の質量も著しく軽いものは「○」とした。
【0066】
<リサイクル性>
材料・製品のリサイクルのし易さの指標である。リサイクルが出来ない材料・製品を「×」、リサイクルは可能だがリサイクルさせる為に高額な費用がかかる材料・製品を「△」、リサイクルが容易に出来る材料・製品を「○」とした。
【0067】
上記の評価結果をまとめて表1に示す。実施例1の吸音材においては、すべての項目について効果が得られた。比較例1から10の吸音材においては、いずれかの項目において、従来の吸音材より劣る点があった。
【0068】
【表1】

【0069】
次に、表2に実施例2から7の空間サイズと粒状体のサイズ、及び、空間の容積と粒状体の比率を示す。また、図6に、実施例2から6、比較例8の周波数に対する垂直入射吸音率を示す。空間の容積に対する、粒状体の比率が大きくなる程、吸音性能が向上することがわかる。また、実施例5と6の結果より、空間の容積と粒状体の比率が同じであっても、空間の容積が大きくなると、若干、吸音率の低下が見られ、低周波数において吸音効果が得られることがわかる。
【0070】
【表2】

【0071】
図7に実施例6及び7、比較例8の周波数に対する垂直入射吸音率を示す。空間の容積、及び、空間の容積と粒状体の比率が同じであっても、粒状体の材質を調整することで、吸収率、吸音効果が得られる周波数ピークが異なることがわかる。実施例7においては、粒状物の比重が重いため、材質自体のマス効果も得られるため、全周波数帯で比較的高い吸音率を示している。
【0072】
以上より、本発明によれば、空間の容積、空間の容積と粒状体の比率、粒状体の材料を調整することにより吸音させたい周波数帯を調整することができることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の第1実施形態に係る吸音材の斜視断面図である。
【図2】図1におけるカプセル体付近の拡大断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る吸音材のカプセル体付近の拡大断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る吸音材の変形例1を示す斜視断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る吸音材の変形例2を示す斜視断面図である。
【図6】実施例における、周波数と垂直入射吸音率との関係を示す図である。
【図7】実施例における、周波数と垂直入射吸音率との関係を示す図である。
【図8】自動車全体の斜視図である。
【図9】図8におけるドアパネルを内側から見たときの拡大分解斜視図である。
【符号の説明】
【0074】
1 中空体
2 粒状体
3 カプセル体
4、4a マトリックス材
6 気泡
7 凹凸部
10、10a、10b、10d 吸音材
10c 第2吸音材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリックス材と、当該マトリックス材中に分散されている粒状体と、を備え、
前記粒状体の周囲に空間を有している吸音材。
【請求項2】
前記粒状体及び前記空間を内包しているカプセル体を備え、当該カプセル体が、前記マトリックス材中に分散されている請求項1記載の吸音材。
【請求項3】
前記粒状体が存在しない場合の前記空間の体積を球換算したときの直径と、前記粒状体の体積を球換算したときの直径との比が、10:2から10:9.9である請求項1又は2記載の吸音材。
【請求項4】
前記粒状体は耐熱性を有し、更に、ゴム、樹脂、金属、及び、セラミック多孔質材料より選択される少なくとも1種以上である請求項1から3いずれか記載の吸音材。
【請求項5】
前記マトリックス材は熱可塑性樹脂である請求項1から4いずれか記載の吸音材。
【請求項6】
前記マトリックス材は熱可塑性エラストマーである請求項1から5いずれか記載の吸音材。
【請求項7】
請求項1から6いずれか記載の吸音材をシート状に成形してなり、自動車の構成部材の内面に適用される自動車用吸音材。
【請求項8】
マトリックス材中に粒状体を分散させる際に、前記粒状体の周囲に空間を形成することによって、吸音させたい周波数帯を調整する吸音性調整方法であって、
前記空間の容積、前記空間の数、前記空間の分散性、前記粒状体が存在しない場合の前記空間の容積と前記粒状体の容積との比率、前記粒状体の材質、より選択される1以上を調整することによって吸音性を調整する吸音性調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−145637(P2006−145637A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−332470(P2004−332470)
【出願日】平成16年11月16日(2004.11.16)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】