説明

喘息の処置および予防

本発明により、喘息症状を処置するための組成物および方法が提供される。このような組成物および方法では、肺サーファクタントポリペプチドを含む肺サーファクタント混合物が利用される。本発明は、有効量のリン脂質と単離された肺サーファクタントポリペプチドとを含む組成物を、該哺乳動物に投与する工程を包含する、哺乳動物において喘息を処置または予防する方法に関する。本発明はまた、薬学的に許容される担体、肺サーファクタントポリペプチド、および気管支拡張剤を含む組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、サーファクタントポリペプチドの投与を含む、喘息を予防するための薬学的組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
喘息は、多くの場合、気道の炎症および気道過敏性(AHR)を特徴とする慢性炎症性疾患である。これは、子供、成人、および高齢者において疾病および死亡の主な原因である。喘息についての現在の治療としては、気管支拡張剤、ステロイド剤の吸入、およびロイコトリエンモディファイヤーでの処置が挙げられる。抗原特異的免疫療法もまた、特定のアレルギー誘発物質に対して患者の感受性を低下させるために使用されている。しかし、このような減感作は、複数の抗原に対して敏感に反応する多くのアレルギー性喘息については効果が薄い可能性がある。同様に、コルチコステロイド剤の吸入には、Th1およびTh2サイトカイン応答の抑制に伴う深刻な副作用がある。さらに、現在利用することができる治療法を用いてもなお、最近20年間にわたって喘息の罹患率は増加し続けている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、より有効ではあるが副作用の少ない新しい喘息治療薬が現在も必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
(発明の要旨)
本発明は、一般的に、喘息症状を処置するための組成物および方法に関する。
【0005】
本発明の組成物には、少なくとも1種の肺サーファクタントポリペプチドが含まれる。肺サーファクタントポリペプチドは、式(Zによって示される疎水性アミノ酸残基と親水性アミノ酸残基が交互に存在している領域のアミノ酸配列を有している、約10個から約60個のアミノ酸残基を有し得る。ここでは、Zは親水性アミノ酸残基であり、Uは疎水性アミノ酸残基であり、「a」は約1から約5までの整数であり、「b」は約3から約20までの整数であり、「c」は約1から約10までの整数であり、そして「d」は約0から約3までの整数である。
【0006】
例示的な肺サーファクタントポリペプチドにおいては、Zは、ヒスチジン、リジン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、5−ヒドロキシリジン、4−ヒドロキシプロリン、および/または3−ヒドロキシプロリンであり、そしてUは、バリン、イソロイシン、ロイシン、システイン、チロシン、フェニルアラニン、および/またはα−アミノ脂肪族カルボン酸(例えば、α−アミノブタン酸、α−アミノペンタン酸、α−アミノ−2−メチルプロパン酸、またはα−アミノヘキサン酸)である。
【0007】
1つの実施形態においては、肺サーファクタントポリペプチドは、以下の構造のポリペプチドであり得る:
【0008】
【数3】

ここで、各Xaは、リジンまたはアルギニンから別々に選択され、そして各Xbは、アスパラギン酸またはグルタミン酸から別々に選択される。
【0009】
いくつかの実施形態においては、サーファクタントタンパク質は、以下の配列のいずれか1つ、またはそれらの組み合わせを有する:
【0010】
【数4−1】


【0011】
肺投与のための組成物には、(i)50〜95乾燥重量パーセントのリン脂質、(ii)肺の表面内層中へのリン脂質の取り込みおよび分配を促進するために有効である、2〜25乾燥重量パーセントの拡散剤、および(iii)0.1から10乾燥重量パーセントの肺サーファクタントポリペプチド、のサーファクタント混合物が含まれ得る。
【0012】
特定の例示的実施形態においては、サーファクタント混合物のリン脂質には、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)とパルミトイル・オレオイル・ホスファチジルグリセロール(POPG)が、4:1から2:1の間のモル比で含まれる。例示的な拡散剤は、脂肪酸、または少なくとも10個の炭素原子の脂肪酸アシル鎖長を有している脂肪族アルコールであり、例えば、パルミチン酸またはセチルアルコールである。
【0013】
本発明のサーファクタント組成物は吸入することができ、また、エアロゾルとして投与することもできる。エアロゾル粒子が液分散から形成される場合は、サーファクタント処方物を、エアロゾル水滴中に分散させることもできる。粒子が乾燥粉末の形態である場合は、粒子は脱水されるか、または実質的に脱水される。エアロゾル粒子は、1〜5μmの大きさの範囲の空気動力学的中央粒子径を有し得る。
【0014】
いくつかの実施形態においては、本発明の組成物は、液体として、例えば、液体のボーラス投与によって投与することもできる。
【0015】
本発明により、また、哺乳動物において喘息を処置するための方法も提供される。この方法には、本発明の肺サーファクタントポリペプチドを含む治療有効量の組成物を哺乳動物に投与することが含まれる。当業者は、多くの場合には、組成物を肺組織に直接投与する(例えば、吸入器によって、ネブライザーの使用を通じて、またはエアロゾルとして)ことを選択するであろう。本発明の方法によって処置される喘息の症状は、例えば、急性炎症性喘息、アレルギー性喘息、医原性喘息、および関連する喘息の症状であり得る。
【0016】
別の態様においては、本発明には、肺サーファクタントポリペプチドを患者に投与する方法が含まれる。投与は吸入によって行うことができる。この方法には、(i)50〜95乾燥重量パーセントのリン脂質、(ii)肺の表面内層中へのリン脂質の取り込みおよび分配を促進するために有効である、2〜25乾燥重量パーセントの拡散剤、および(iii)0.1から10乾燥重量パーセントの肺サーファクタントポリペプチドから構成されるサーファクタント混合物を作成することが含まれる。肺サーファクタントポリペプチドは、10〜60個の間のアミノ酸残基を有しているポリペプチドであり得、疎水性アミノ酸残基と親水性アミノ酸残基が交互に存在している領域のアミノ酸配列を有する。
【0017】
例えば、肺サーファクタントポリペプチドは、式(Zによって示すことができる。ここでは、Zは親水性アミノ酸残基であり、Uは疎水性アミノ酸残基であり、「a」は1〜5の平均値を有し、「b」は3〜20の平均値を有し、「c」は1〜10であり、そして「d」は0から3までである。得られる処方物には、1〜80、または2〜50乾燥重量パーセントの有効成分が含まれる。
【0018】
処方物は、粒子状組成物へと変えられ、これらの粒子は1〜5μmの大きさの範囲の空気動力学的中央粒子径を有する。これらの粒子は、患者の呼吸器に、エアロゾル組成物の形態で、治療有効量で投与される。
【0019】
いくつかの実施形態においては、処方物は、溶媒中に肺サーファクタントと処方物の他の成分を溶解させるかまたは分散させることによって調製される。溶媒は、水性溶媒であるか、有機溶媒であるか、または混合溶媒である場合もある。処方物は、所望される1〜5μmのMMADの大きさの範囲を有する乾燥粒子を生じるために効果的な条件下で、混合物を噴霧乾燥させることによって、エアロゾル投与用の粒子状組成物へと変えられる。他の実施形態においては、処方物は、液体組成物を凍結乾燥によって乾燥させ、乾燥させた混合物を所望される大きさの範囲の乾燥粒子を形成するように粉砕することによって、エアロゾル投与用の粒子状組成物に変えることができる。
【0020】
液体粒子または乾燥粒子は、吸入によりエアロゾル形態で投与することができる。処方物はまた、液体分散物の形態、例えば、その中に処方物粒子が分散させられている液滴を形成するようにエアロゾル化される、リポソーム分散物である場合もある。
【0021】
本発明のこれらおよび他の目的および特徴は、本発明の以下の記載を参照してさらに完全に明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(発明の詳細な説明)
本発明は、少なくとも1つの肺サーファクタントポリペプチドを含む、喘息を処置または予防するための組成物および方法に関する。肺の内部への組成物の送達および分散を助けるために、他の成分(例えば、リン脂質および拡散剤)を含めることができる。
【0023】
(定義)
以下の用語は、他の場所に明確に記載されていない限りは、以下の意味を有する。
【0024】
「アミノ酸」は、アミノ基とカルボキシル基との間での共有結合の形成によって互いに連結することができるアミノ酸残基を意味する。例えば、アミノ酸は、ポリペプチドまたはタンパク質を構成することができる。遺伝子によってコードされるアミノ酸および遺伝子によってはコードされないアミノ酸の両方が想定される。遺伝子によってコードされるアミノ酸は、一般的には自然界に存在しているL型である。しかし、Dアミノ酸、置換されたアミノ酸(例えば、修飾された側鎖基を有しているアミノ酸)、アミノ酸の異化代謝物および同化代謝物、「レトロ」骨格を有しているアミノ酸、アミノ酸模倣物、または類似体もまた、本発明での使用について想定され、そして本発明に含まれる。標準的なポリペプチドの命名法である、J.Biol.Chem.,243:3557−59,1969にしたがうと、より一般的に見られるアミノ酸残基についての略記は、以下の対応表に示すとおりである。
【0025】
【表A】

【0026】
注目すべきは、他の場所に明確に示されていない限りは、式によって本明細書中で示されるアミノ酸残基の配列は、通常はアミノ末端からカルボキシ末端に、左から右の方向を有することである。さらに、語句「アミノ酸残基」は、対応表に列挙されたアミノ酸、修飾されたアミノ酸、および珍しいアミノ酸(例えば、米国特許法規則(37C.F.R.)§1.822(b)(4)に列挙されているもの(これは引用により本明細書中に組み入れられる))を含むように広く定義される。語句「アミノ酸残基」はまた、遺伝子によってはコードされていないアミノ酸、D−アミノ酸、置換されたアミノ酸(例えば、修飾された側鎖基を有しているアミノ酸)、修飾されたアミノ酸(例えば、アミノ酸の異化代謝物、同化代謝物、および、「設計された」側鎖を有しているアミノ酸)、ならびにアミノ酸模倣物または類似体も含むように、広く定義される。
【0027】
さらに注目すべきは、アミノ酸残基の配列の初めと終わりのダッシュは、一般的に、それぞれ、アミノ末端とカルボキシ末端のラジカル(例えば、HおよびOH(水素およびヒドロキシル)への、あるいは、1つ以上のアミノ酸残基のさらなる配列への結合を示していることである。加えて、残基の配列の右側の末端にある斜線(/)は、配列が次の行に続くことを示していることに留意すべきである。
【0028】
「ヒト」は、物質がヒトにおいて実質的には免疫反応を生じないことを意味する。例えば、本発明の肺サーファクタントポリペプチドは、全てがヒトを供給源とするものではない場合があり、また、既知のヒトの肺タンパク質と同一のアミノ酸配列を有していない場合もあるが、このような肺サーファクタントポリペプチドも、これらがヒトにおいて実質的に免疫応答を引き起こさない限りは、「ヒト」と呼ばれる場合がある。
【0029】
「単離された」は、単離された物質がその自然界における環境から取り出されていることを意味する。いくつかの実施形態においては、「単離された」物質は、組成物中に、または自然界においては見ることができない別の環境に存在する場合がある。例えば、本発明の肺サーファクタントポリペプチドは、たとえそれが他の成分を含む組成物になるように混合されていても、また、ポリペプチドの組み換え生産のために使用される組み換え体である生物の中に存在していても、単離されていることになる場合がある。
【0030】
「薬学的に許容される」は、ヒトに投与された際に、アレルギー性の反応または同様の望ましくない反応を生じることのない、分子状物質および組成物を意味する用語である。
【0031】
「タンパク質」または「ポリペプチド」または「ペプチド」は、アミノ酸またはアミノ酸類似体のサブユニットから構成される生体高分子であり、通常は、酵素−基質相互作用または受容体結合リガンド相互作用と一致するペプチドサブユニット間結合または他のサブユニット間結合によって連結された、生物学的タンパク質中で見ることができる20個の一般的なL−アミノ酸のいくつかまたは全てから構成される。タンパク質は、そのサブユニット配列によって示される一次構造を有しており、二次ヘリックス構造またはプリーツ構造を、さらには、全体的な三次元構造を有している場合もある。「タンパク質」は、一般的には比較的大きなポリペプチド、例えば、30個以上のアミノ酸を含むポリペプチドを意味し、そして「ペプチド」または「ポリペプチド」はより小さいポリペプチドを意味するが、これらの用語は本明細書中では同義的にも使用される。すなわち、用語「タンパク質」は、より大きなポリペプチド、例えば、30個以上のアミノ酸を意味する場合があるが、それより小さいポリペプチドを必ずしも排除するわけではない。そして、用語「ポリペプチド」は、より小さいペプチド、例えば、30個未満のアミノ酸を意味する場合があるが、これにはより大きなタンパク質が含まれる場合もある。
【0032】
「精製された」は、その物質が、それが作成された環境から取り出されていることを意味する。物質は、部分的または実質的に精製することができ、完全に(100%)純粋である必要はない。例えば、本発明の肺サーファクタントポリペプチドは、それが、化学的に合成、または組み換えによって合成された後に、未反応の化合物、副生成物、細胞破片、および他の成分のいくつかまたは全てを除去することによって、精製することができる。
【0033】
「サーファクタント活性」は、脂質だけ混合された場合、または他の有機分子と組み合わせて脂質と混合された場合のいずれかに、気/液界面の表面張力を低下させる、任意の物質(例えば、有機分子、タンパク質、またはポリペプチド)の能力を意味する。測定は、ウィルヘルミー平衡または生体外アッセイによる拍動性泡サーファクトメーター(pulsating bubble surfactometer)を用いて行うことができる。例えば、King et al.,Am.J.Physiol.223:715−726(1972)に記載されているもの、または本明細書中で説明されるアッセイを参照のこと。これは、タンパク質またはポリペプチドをリン脂質と混合した際の、気−液界面の表面張力の測定を利用する。さらに、一定の肺への流入圧にしたがって、またはその気流での増加の生体内での測定は、Robertsonのアッセイ、Lung,158:57−68(1980)に記載されているように、容易に行うことができる。このアッセイにおいては、評価される試料が、帝王切開により早産させられたウサギの胎児または子羊に、気管内チューブを通じて投与される。(これらの「未熟児」は、その自身の肺サーファクタントを欠失しており、人工呼吸器でサポートされる)。肺コンプライアンス、血液ガス、および人工呼吸器の圧力の測定により、活性の指数が提供される。pulsating bubbleの表面張力を下げる能力として評価されるサーファクタント活性の生体外でのアッセイ、およびウサギの胎児を利用する生体内アッセイは、Revak et al.,Am.Rev.Respir.Dis.,134:1258−1265(1986)に詳細に記載されている。
【0034】
「サーファクタント分子」は、サーファクタント活性を有している有機分子を意味し、これは、薬学的に許容される脂質とともに投与された場合には、低いΔP値によって明らかにされるように、脂質のみの場合よりも高いサーファクタント活性を有するサーファクタントを形成する。
【0035】
「自然界に存在している肺サーファクタント」は、成熟した哺乳動物の肺の肺胞上皮の内側を覆う肺サーファクタント(PS)を意味する。自然界に存在しているPSまたは野生型のPSは、それが、肺気−液界面の表面張力を低下させるように相互作用するリン脂質とアポタンパク質の両方を含むので、「リポタンパク質複合体」と記載されている。自然界に存在しているサーファクタントには、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)がその主要な成分である、いくつかの脂質種が含まれている。通常は、少なくとも4種のタンパク質SP−A、SP−B、SP−CおよびSP−Dが、自然界に存在している肺サーファクタントの中に存在している。これらの4種のうちSP−BとSP−Cは、異なる低い分子量の、比較的疎水性の高いタンパク質であり、サーファクタントリン脂質混合物の界面活性特性を、おそらくは気−液界面に対してバルク相の層状構造からの脂質の移動を促進することによって、そして息を吐く間に脂質の単層を安定化させることによってもまた、高めることが示されている。SP−Bの構造は、荷電したアミノ酸(大部分は塩基性)が別な様式で疎水性である残基のストレッチの中に正確に一定の間隔で存在している点で珍しい。自然界に存在しているSP−B配列の残基59〜80から構成されるドメインについては、これらの荷電した基が生物学的活性に不可欠であることが示されている。さらに、DPPCおよびPGと組み合わせた場合にこの疎水性−親水性ドメインを真似る、自然界に存在しているペプチドと合成のペプチドは、良好なサーファクタント活性を示す。
【0036】
自然界に存在しているサーファクタントタンパク質は、層状体の形態で肺上皮細胞の中に蓄えられており、輸送された後、構造転移を受けて管状ミエリンを形成し、その後、気−液界面で単層を生じる。サーファクタントタンパク質SP−A、SP−B、およびSP−Cは、これらの構造転移を容易にし、肺胞の膨張および収縮の間に脂質の単層を安定化させることができると考えられている。しかし、分子レベルでの脂質−タンパク質相互作用の完全な理解は現在は十分ではない。
【0037】
「肺投与」は、肺の任意の表面に薬学的に活性な物質を送達する任意の投与の態様を意味する。送達の態様としては、液体懸濁液としての吸入に適している態様、乾燥粉末「塵」としての吸入に適している態様、または吸引に適している態様、あるいは、エアロゾルを挙げることができるが、これらに限定はされない。
【0038】
「リン脂質」は、非極性の疎水性末端、グリセロール、またはスフィンゴシン部分、および極性の頭部から構成される、両親媒性脂質を意味する。非極性の疎水性末端は、通常は、飽和脂肪酸基または不飽和脂肪酸基である。極性の頭部は、リン酸基を有しており、これは、多くの場合、窒素を含む塩基に対して結合させられている。
【0039】
「拡散剤(spreading agent)」は、肺の表面内層の中へのリン脂質(単数または複数)の取り込みおよび分配を促進する化合物であり、これは、肺の表面内層で、気−液界面でのリン脂質の拡散を促進する。
【0040】
「空気動力学的直径」は、特性決定された粒子と同じ沈殿速度を有している等しい単位密度の球形粒子の直径として定義される。すなわち、粒子の形状や大きさにはかかわらず、粒子は、単位密度の球形になるように変えられるとイメージされる。この球体の直径が空気動力学的直径である。したがって、1〜5ミクロンの大きさの空気動力学的直径を有している粒子は、1〜5ミクロンの大きさの範囲の直径を有している単位密度の球状粒子と同じ空気動力学的特性を有する。粒子の空気動力学的特性は、カスケードインパクション、水簸選別機、または細胞の沈降のような従来技術を使用して、実験によって測定することができる。多くの場合には、使用される測定技術は、エアロゾルが使用される状況と最もよく似ている技術である。
【0041】
粒子の集まりの「空気動力学的中央粒子径」は、粒子の塊の空気動力学的中央粒子径(MMAD)を意味する。すなわち、粒子の塊の半分は、MMADであるかまたはそれより小さく、そして半分はこれより大きい。エアロゾル粒子の分散度は、幾何学的標準偏差(GSD)によって定義することができる。全ての粒子が同じ大きさであり同じ形状である場合は、GSDは1である。3.5のGSDは、高度な分散の粒子の集まりを示す。好ましくは、本発明のエアロゾル粒子は、1から3の間、好ましくは1〜2の間のGSDを生じる条件下で形成される。
【0042】
「モデルサーファクタント混合物」または「Surfaxin(登録商標)」は、実施例1および2に示されるサーファクタント混合物成分を使用して、本発明にしたがって調製されるサーファクタント混合物を意味する。
【0043】
(肺サーファクタントポリペプチド)
本発明で使用される肺サーファクタントポリペプチドは、荷電したアミノ酸残基と電荷を有していないアミノ酸残基が交互に存在している領域を有しているアミノ酸残基配列を含むポリペプチドである。疎水性アミノ酸残基と親水性アミノ酸残基が交互に存在している領域を有しているアミノ酸残基配列を含むポリペプチドサーファクタントもまた、本発明の組成物および方法において使用される。肺サーファクタントポリペプチドは、少なくとも約4個、または少なくとも約8個、または少なくとも約10個のアミノ酸残基を有することができる。このような肺サーファクタントポリペプチドは、一般的には、約60個を超えないアミノ酸残基の長さであるが、さらに長い、そしてさらには全長の野生型の肺サーファクタントタンパク質もまた、想定される。本発明の組成物および方法において使用することができる肺サーファクタントポリペプチドの例は、米国特許第6,013,619号、米国特許第5,789,381号、米国特許第5,407,914号、米国特許第5,260,273号、および米国特許第5,164,369号に記載されている。これらは全て、引用により本明細書中に組み入れられる。
【0044】
本発明の肺サーファクタントポリペプチドは、式[(荷電した)(電荷を有していない)(荷電した)によって示される、荷電したアミノ酸残基と電荷を有していないアミノ酸残基が交互に存在しているグループを有し得る。ここでは、「a」は約1から約5の平均値を有し;「b」は約3から約20の平均値を有し;「c」は1〜10であり;そして「d」は0から3である。アミノ酸残基だけから構成されているのではない有機サーファクタント分子は、荷電した構成分子と電荷を有していない(または、親水性/疎水性)構成分子が交互に存在しているグループによって構成される類似の構造を有することが好ましい。
【0045】
当業者に公知であるように、アミノ酸は、主にアミノ酸側鎖の化学的および物理的特性に応じて、種々のクラスに分類することができる。例えば、いくつかのアミノ酸は荷電しているアミノ酸、親水性アミノ酸、または極性アミノ酸であり得、そして他のアミノ酸は、電荷を有していないアミノ酸、疎水性アミノ酸、または非極性アミノ酸であり得る。極性アミノ酸としては、酸性、塩基性、または親水性側鎖を有しているアミノ酸が挙げられ、そして非極性アミノ酸としては、芳香族、または疎水性側鎖を有しているアミノ酸が挙げられる。非極性アミノ酸は、中でも、脂肪族アミノ酸を含むようにさらに分類することもできる。本明細書中で使用されるアミノ酸のクラスの定義は以下の通りである。
【0046】
「非極性アミノ酸」は、生理学的pHにおいては電荷を有していない側鎖を有しているアミノ酸を意味する。これには極性はなく、一般的には、水溶液によってはじかれる。遺伝子によってコードされる疎水性アミノ酸の例としては、アラニン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、およびバリンが挙げられる。いくつかの実施形態においては、システインは非極性アミノ酸である。遺伝子によってはコードされない非極性アミノ酸の例としては、t−BuA、Cha、ノルロイシン、および/またはα−アミノ脂肪族カルボン酸(例えば、α−アミノブタン酸、α−アミノペンタン酸、α−アミノ−2−メチルプロパン酸、またはα−アミノヘキサン酸)が挙げられる。
【0047】
「芳香族アミノ酸」は、π電子系が結合させられている少なくとも1つの環(芳香族基)を含む側鎖を有している非極性アミノ酸を意味する。芳香族基は、さらに、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヒドロキシル、スルフォニル、ニトロ、およびアミノ基のような置換基で、さらには他の置換基で、置換することもできる。遺伝子によってコードされる芳香族アミノ酸の例としては、フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファンが挙げられる。一般的に見ることができる、遺伝子によってはコードされない芳香族アミノ酸としては、フェニルグリシン、2−ナフチルアラニン、β−2−チエニルアラニン、1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−3−カルボン酸、4−クロロフェニルアラニン、2−フルオロフェニルアラニン、3−フルオロフェニルアラニン、および4−フルオロフェニルアラニンが挙げられる。
【0048】
「脂肪族アミノ酸」は、飽和もしくは不飽和の直鎖の側鎖、分岐した側鎖、または環式炭化水素側鎖を有している非極性の電荷を有していないアミノ酸を意味する。遺伝子によってコードされる脂肪族アミノ酸の例としては、Ala、Leu、Val、およびIleが挙げられる。コードされない脂肪族アミノ酸の例としては、Nleが挙げられる。
【0049】
「極性アミノ酸」は、生理学的pHにおいて荷電しているかまたは電荷を有さず、そして2つの原子に共有される電子対が一方の原子のより近くに保持される結合を有している側鎖を有する、親水性アミノ酸を意味する。極性アミノ酸は、一般的には、親水性であり、このことは、これらが水溶液に結合される側鎖を有しているアミノ酸を有することを意味している。遺伝子によってコードされる極性アミノ酸の例としては、アスパラギン、グルタミン、リジン、およびセリンが挙げられる。いくつかの実施形態においては、システインは、極性アミノ酸である。遺伝子によってはコードされない極性アミノ酸の例としては、シトルリン、ホモシステイン、N−アセチルリジン、およびメチオニンスルフォキシドが挙げられる。
【0050】
「酸性アミノ酸」は、7未満のpK値の側鎖を有している親水性アミノ酸を意味する。酸性アミノ酸は、一般的には、水素イオンの欠失が原因で、生理学的pHにおいて負に荷電した側鎖を有する。遺伝子によってコードされるアミノ酸の例としては、アスパラギン酸(アスパラギン)およびグルタミン酸(グルタミン)が挙げられる。
【0051】
「塩基性アミノ酸」は、7以上のpK値の側鎖を有している親水性アミノ酸を意味する。塩基性アミノ酸は、一般的には、ヒドロニウムイオンとの会合が原因で、生理学的pHにおいて正に荷電した側鎖を有する。遺伝子によってコードされる塩基性アミノ酸の例としては、アルギニン、リジン、およびヒスチジンが挙げられる。遺伝子によってはコードされない塩基性アミノ酸の例としては、非環式アミノ酸であるオルニチン、2,3−ジアミノプロピオン酸、2,4−ジアミノ酪酸、およびホモアルギニンが挙げられる。
【0052】
「イオン性アミノ酸」または「荷電したアミノ酸」は、生理学的pHにおいて電荷を有することができるアミノ酸を意味する。このようなイオン性アミノ酸または荷電したアミノ酸としては、酸性アミノ酸および塩基性アミノ酸が挙げられ、例えば、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−ヒスチジン、D−アルギニン、D−リジン、D−ヒドロキシリジン、D−オルニチン、D−3−ヒドロキシプロリン、L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、L−ヒスチジン、L−アルギニン、L−リジン、L−ヒドロキシリジン、L−オルニチン、またはL−3−ヒドロキシプロリンが挙げられる。
【0053】
当業者に明らかであるように、上記分類は絶対的ではない。いくつかのアミノ酸は、1つ以上の特徴的な性質を示し、したがって、2つ以上のカテゴリーに含めることができる。例えば、チロシンは、非極性の芳香環と、極性のヒドロキシル基の両方を有している。したがって、チロシンは、非極性、芳香族、および極性と記載することができるいくつかの特徴を有している。しかし、非極性の環が支配的であり、その結果、チロシンは一般的には非極性と考えられている。同様に、ジスルフィド結合を形成できることに加えて、システインは非極性の特徴も有している。したがって、疎水性または非極性アミノ酸としては厳密には分類することはできないが、多くの場合において、システインはペプチドに疎水性または非極性を付与するために使用することができる。
【0054】
上記の遺伝子によってコードされるアミノ酸および遺伝子によってはコードされないアミノ酸の分類は、例示的な目的のためのものにすぎず、本明細書中に記載される肺サーファクタントポリペプチドに含めることができるアミノ酸残基の完全なリストを意味するものではない。本明細書中に記載される肺サーファクタントポリペプチドを作成することについて有用である他のアミノ酸残基は、例えば、Fasman,1989,CRC Practical Handbook of Biochemistry and Molecular Biology,CRC Press Inc.と、その中で引用されている参考文献の中に見ることができる。アミノ酸残基の別の供給源は、RSP Amino Acid Analogues,Inc.のウェブサイト(www.amino−acids.com)によって提供されている。本明細書中では具体的には記載されていないアミノ酸は、具体的に記載されているアミノ酸と比較した、既知の性質、ならびに/またはそれらの特徴的な化学的および/もしくは物理的特性に基づいて、上記のカテゴリーに簡単に分類することができる。
【0055】
いくつかの実施形態においては、サーファクタントポリペプチドには、式(Zによって示される、アミノ酸残基が交互に存在しているグループを有している配列が含まれる。ここでは、Zは荷電したアミノ酸であり、そしてUは電荷を有していないアミノ酸であり;「a」は約1から約5の平均値を有し;「b」は約3から約20の平均値を有し;「c」は1から10であり;そして「d」は0から3である。
【0056】
いくつかの実施形態においては、Zは、ヒスチジン、リジン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、5−ヒドロキシリジン、4−ヒドロキシプロリン、および/または3−ヒドロキシプロリンであり、そしてUは、バリン、イソロイシン、ロイシン、システイン、チロシン、フェニルアラニン、および/またはα−アミノ脂肪族カルボン酸(例えば、α−アミノブタン酸、α−アミノペンタン酸、α−アミノ−2−メチルプロパン酸、またはα−アミノヘキサン酸)である。
【0057】
別の実施形態においては、本発明のポリペプチドは、式(Bによって示される、アミノ酸残基が交互に存在しているグループの領域を有する。ここでは、Bは、ヒスチジン、リジン、5−ヒドロキシリジン、4−ヒドロキシプロリン、および3−ヒドロキシプロリンからなる群より別々に選択されるアミノ酸残基であり;そしてUは、バリン、イソロイシン、ロイシン、システイン、チロシン、およびフェニルアラニンからなる群より別々に選択されるアミノ酸残基である。1つのバリエーションにおいては、Bは、コラーゲンに由来するアミノ酸であり、そして5−ヒドロキシリジン、4−ヒドロキシプロリン、および3−ヒドロキシプロリンからなる群より選択される;「a」は約1から約5の平均値を有し;「b」は約3から約20の平均値を有し;「c」は1から10であり;そして「d」は0から3である。
【0058】
さらに別の実施形態においては、本発明のサーファクタントポリペプチドには、式(Bによって示されるアミノ酸残基が交互に存在しているグループを有する配列が含まれる。ここでは、Bは、ヒスチジン、5−ヒドロキシリジン、4−ヒドロキシプロリン、および3−ヒドロキシプロリンからなる群より別々に選択されるアミノ酸残基であり;そしてJは、α−アミノ脂肪族カルボン酸であり;「a」は約1から約5の平均値を有し;「b」は約3から約20の平均値を有し;「c」は1から10であり;そして「d」は0から3である。
【0059】
関連する式の中に「J」を含む種々の実施形態においては、Jは、4個から6個の炭素を有しているα−アミノ脂肪族カルボン酸である。他の実施形態においては、Jは、6個以上の炭素(6個を含む)を有しているα−アミノ脂肪族カルボン酸である。なお他のバリエーションにおいては、Jは、α−アミノブタン酸、α−アミノペンタン酸、α−アミノ−2−メチルプロパン酸、およびα−アミノヘキサン酸からなる群より選択されることが好ましい。
【0060】
別の実施形態には、式(Zによって示される、アミノ酸残基が交互に存在しているグループを有している配列を含むサーファクタントポリペプチドが含まれる。ここでは、Zは、R、D、E、およびKからなる群より別々に選択されるアミノ酸残基であり;そしてUは、V、I、L、C、Y、およびFからなる群より別々に選択されるアミノ酸残基である。いくつかの実施形態においては、Uは、V、I、L、C、およびFからなる群より選択されるか、またはLおよびCからなる群より選択される。整数「a」は、約1から約5の平均値を有し;「b」は約3から約20の平均値を有し;「c」は1から10であり;そして「d」は0から3である。
【0061】
上記の式中、ZとU、ZとJ、DとU、およびBとJは、個々の事象について別々に選択されるアミノ酸残基である。さらに、上記の式のそれぞれにおいて、「a」は、一般的には、約1から約5の平均値を有し;「b」は、一般的には、約3から約20の平均値を有し;「c」は1から10であり;そして「d」は0から3である。
【0062】
上記の実施形態の1つのバリエーションにおいては、ZとBは、荷電したアミノ酸残基である。他の実施形態においては、ZとBは、親水性のアミノ酸残基または正に荷電したアミノ酸残基である。1つのバリエーションにおいては、Zは、R、D、E、およびKからなる群より選択される。別の実施形態においては、Zは、RおよびKからなる群より選択されることが好ましい。なお別に、Bは、ヒスチジン、5−ヒドロキシリジン、4−ヒドロキシプロリン、および3−ヒドロキシプロリンからなる群より選択される。別の実施形態においては、Bは、コラーゲンを構成するアミノ酸残基であり、5−ヒドロキシリジン(δ−ヒドロキシリジン)、4−ヒドロキシプロリン、および3−ヒドロキシプロリンからなる群より選択される。別の実施形態においては、Bはヒスチジンである。
【0063】
種々の開示される実施形態においては、UとJは、電荷を有していないアミノ酸残基である。いくつかの実施形態においては、UとJは、疎水性アミノ酸残基である。例えば、いくつかの実施形態においては、Uは、V、I、L、C、Y、およびFからなる群より選択される。別の実施形態においては、Uは、V、I、L、C、およびFからなる群より選択される。なお別の実施形態においては、Uは、LおよびCからなる群より選択される。種々の実施形態においては、UはLである。
【0064】
同様に、種々の実施形態においては、Bは、ヒスチジン、5−ヒドロキシリジン、4−ヒドロキシプロリン、および3−ヒドロキシプロリンからなる群より選択されるアミノ酸である。あるいは、Bは、コラーゲンに由来するアミノ酸からなる群より選択される場合もある。これには、5−ヒドロキシリジン、4−ヒドロキシプロリン、および3−ヒドロキシプロリンが含まれる。
【0065】
本発明の別の実施形態においては、荷電したアミノ酸および電荷を有していないアミノ酸は、修飾されたアミノ酸の群より選択される。例えば、1つの実施形態においては、荷電したアミノ酸は、2〜3例を挙げると、シトルリン、ホモアルギニン、またはオルニチンからなる群より選択される。同様に、種々の好ましい実施形態においては、電荷を有していないアミノ酸は、α−アミノブタン酸、α−アミノペンタン酸、α−アミノ−2−メチルプロパン酸、およびα−アミノヘキサン酸からなる群より選択される。
【0066】
本発明の種々の実施形態においては、変数「a」、「b」、「c」、および「d」は、荷電した残基または電荷を有していない残基(あるいは、親水性残基または疎水性残基)の数を示す整数である。
【0067】
いくつかの実施形態においては、「a」は、約1から約5の平均値、または約1から約3、または約1から約2、あるいは約1の平均値を有する。
【0068】
種々の実施形態においては、「b」は、約3から約20の平均値、または約3から約12、または約3から約10、または約4から約8の平均値の整数である。1つの実施形態においては、「b」は約4である。
【0069】
種々の実施形態においては、「c」は、約1から約10の平均値、または約2から約10、または約3から約8、または約4から約8、あるいは約3から約6の平均値の整数である。1つの実施形態においては、「c」は約4である。
【0070】
種々の実施形態においては、「d」は、約0から約3、または約1から約3の平均値の整数である。1つの実施形態においては、「d」は、約0から約2、または1から2であり;別の実施形態においては、「d」は1である。
【0071】
アミノ酸残基−−例えば、ZまたはUによって示される残基−−が別々に選択されると主張することによって、それぞれの事象について、特定のグループから残基が選択されることが意味される。すなわち、「a」が2である場合は、例えば、Zによって示される親水性残基のそれぞれが別々に選択され、したがって、例えば、RR、RD、RE、RK、DR、DD、DE、DKなどが含まれ得る。
【0072】
「a」と「b」が平均値を有すると主張することによって、反復配列(例えば、Z)の中の残基の数は、ペプチド配列内でいくらか変化してもよいが、「a」と「b」の平均値は、それぞれ、約1から約5、および約3から約20であることが意味される。例えば、以下の表1に「KL8」と記載されるペプチドについて、式(Zを使用すると、式は、Kと書くことができる。ここでは、「b」の平均値は6[すなわち、(8+8+2)/3=6]であり、「c」は3であり、そして「d」は0である。
【0073】
本発明の組成物および方法において使用することができる肺サーファクタントポリペプチドの一例は、配列番号18である
【0074】
【数4−2】

ここで、各Xaは、リジンまたはアルギニンから別々に選択され、そして各Xbは、アスパラギン酸またはグルタミン酸から別々に選択される。
【0075】
本発明の他の例示的な好ましいポリペプチドが以下の表1に示される。
【0076】
【表1】

名称は、示したアミノ酸残基の配列についての略記である。
【0077】
肺胞とのその相互作用を最大にする立体構造を有している、約4個から約60個のアミノ酸残基の複合ポリペプチドもまた適している。複合ポリペプチドは、本質的には、アミノ酸末端配列とカルボキシ末端配列から構成される。アミノ酸末端配列は、本発明の疎水性領域ポリペプチドまたは疎水性ペプチドのアミノ酸配列を有しており、上記の式において定義された疎水性ポリペプチドを有していることが好ましい。カルボキシ末端配列は、本発明のカルボキシ末端ペプチドのアミノ酸残基配列を有している。
【0078】
これらの自然界に存在しているサーファクタントタンパク質(SP)に由来するか、またはこれらの自然界に存在しているSPと類似の特徴を有しているタンパク質およびポリペプチドは、本発明の方法において有用である。記載したように、任意の哺乳動物種から単離されたSPを利用することができるが、ウシ、ブタ、およびヒトのサーファクタントが特に好ましい。
【0079】
自然界に存在しているサーファクタントタンパク質には、SP−A、SP−B、SP−C、またはSP−D、あるいはそれらの断片が単独で、あるいは脂質と組み合わせて含まれている。好ましい断片は、SP−Bのアミノ末端残基1〜25である。
【0080】
このような自然界に存在しているサーファクタントタンパク質に関係している多くのアミノ酸配列は、NCBIデータベースにおいて見ることができる。例えば、ヒトの肺サーファクタント関連タンパク質A1の配列は、登録番号NP005402(gi:13346504)としてNCBIデータバースにおいて見ることができる。ウェブサイトncbi.nlm.nih.gov.を参照のこと。ヒトSP−A1についてのこの配列は以下に提供される(配列番号12)。
【0081】
【数5】

ヒトの肺サーファクタント関連タンパク質A2についてのアミノ酸配列は、登録番号NP008857(gi:13346506)として、NCBIデータベースにおいてみることができる。ウェブサイトncbi.nlm.nih.gov.を参照のこと。ヒトSP−A2についてのこの配列は、以下に提供される(配列番号13)。
【0082】
【数6】

ヒトの肺サーファクタント関連タンパク質Bについてのアミノ酸配列は、登録番号NP000533(gi:4506905)として、NCBIデータベースにおいてみることができる。ウェブサイトncbi.nlm.nih.gov.を参照のこと。ヒトSP−Bについてのこの配列は、以下に提供される(配列番号14)。
【0083】
【数7】

さらに、ヒトSP18(SP−B)サーファクタントタンパク質は、本明細書中に記載されるように利用できる。例えば、米国特許第5,407,914号;同第5,260,273号;および同第5,164,369号を参照のこと(これらの開示は、引用により本明細書中に組み入れられる)。
【0084】
ヒトの肺サーファクタント関連タンパク質Cについてのアミノ酸配列は、登録番号P11686(gi:131425)として、NCBIデータベースにおいてみることができる。ウェブサイトncbi.nlm.nih.gov.を参照のこと。ヒトSP−Cについてのこの配列は、以下に提供される(配列番号15)。
【0085】
【数8】

ヒトの肺サーファクタント関連タンパク質Dについてのアミノ酸配列は、登録番号P50405(gi:1709879)として、NCBIデータベースにおいてみることができる。ウェブサイトncbi.nlm.nih.gov.を参照のこと。ヒトSP−Dについてのこの配列は、以下に提供される(配列番号16)。
【0086】
【数9】

関連するペプチドは、配列スクシニル−Leu−Leu−Glu−Lys−Leu−Leu−Gln−Trp−Lys−アミド(配列番号17)を有しているWMAP−10ペプチド(Marion Merrell Dow Research Institute)である。別のペプチドは、リジン、アルギニン、またはヒスチジンのポリマーであり、これは、本明細書中に記載されるように、リン脂質の混合物において表面張力の低下を誘導する。
【0087】
なお別の実施形態においては、本発明のポリペプチドは、0未満の、好ましくは、−1未満もしくは−1に等しい、より好ましくは、−2未満もしくは−2に等しい複合疎水性を有する、アミノ酸残基の配列を有する。ペプチドの複合疎水性値の決定は、当該分野で公知であり、米国特許第6,013,619号(その開示は引用により本明細書中に組み入れられる)を参照されたい。これらの疎水性ポリペプチドは、SP18の疎水性領域の機能を実行する。したがって、1つの好ましい実施形態においては、アミノ酸配列は、SP18の荷電した残基および電荷を有していない残基、または疎水性残基および親水性残基のパターンを模倣する。
【0088】
しかし、本発明のポリペプチドおよび他のサーファクタント分子が、野生型SP−B(SP18)の配列と同様の配列を有している分子に限定されないことが理解されるべきである。見方を変えれば、最も好ましい本発明のサーファクタント分子のいくつかは、それらが類似したサーファクタント活性と、荷電した残基/電荷を有していない(または、疎水性/親水性)残基が交互に存在している配列を有していることを除いて、特異的なアミノ酸残基の配列に関してSP18とはほとんどにていない。
【0089】
本発明の1つの開示される実施形態には、ペプチドを含む調製物が含まれ、これは、塩基性の極性リジン(K)残基に結合した4個の疎水性ロイシン(L)残基の反復単位から構成されるヒトSP−Bの模倣物である、21−残基のペプチドである。この例示的なペプチドは、本明細書中では「KL」と略記され、以下のアミノ酸残基の配列を有している:
【0090】
【数10】


【0091】
1つの実施形態においては、KLは、リン脂質ジパルミトイルホスファチジルコリンおよびパルミトイル・オレオイルホスファチジルグリセロール(3:1)およびパルミチン酸と混合され、リン脂質−ペプチド水分散液は「KL−サーファクタント」と命名されており、通常、本明細書中でもそのように呼ばれる。KL−サーファクタントは、商品名Model surfactant mixtureとして市販されている。KL−サーファクタントの効力は、様々な実験および臨床試験において、これまでに報告されている。例えば、Cochrane et al.,Science,254:566−568(1991);Vincent et al.,Biochemistry,30:8395−8401(1991);Cochrane et al.,Am J Resp & Crit Care Med,152:404−410(1996);およびRevak et al.,Ped.Res.,39:715−724(1996)を参照のこと。
【0092】
本発明の種々の実施形態においては、ポリペプチド:リン脂質の重量比は、約1:5から約1:10,000の範囲であり、好ましくは、約1:7から約1:5,000、より好ましくは、約1:10から約1:1,000、そして最も好ましくは、約1:15から約1:100の範囲である。特に好ましい実施形態においては、ポリペプチド:リン脂質の重量比は、約1:37である。
【0093】
本発明の担体サーファクタント組成物を調製するために適している合成のポリペプチドは、ポリペプチドの分野の当業者に公知の技術によってアミノ酸から合成することができる。利用することができる多くの技術の素晴らしい概要は、固相ペプチド合成については、J.M.Steward and J.D.Young,SOLID PHASE PEPTIDE SYNTHESIS,W.H.Freeman Co.,San Francisco,1969,およびJ.Meienhofer,HORMONAL PROTEINS AND PEPTIDES,第2巻、p.46,Academic Press(New York),1983に、そして伝統的な溶液合成については、E.Schroder and K.Kubke,THE PEPTIDES,第1巻,Academic Press(New York),1965に見ることができる。
【0094】
一般的には、これらの方法には、1つ以上のアミノ酸残基または適切に保護されたアミノ酸残基を連続的に付加して、ペプチド鎖を成長させることが含まれる。通常は、第1のアミノ酸残基のアミノ基またはカルボキシル基のいずれかが、適切な、選択的に除去することが可能な保護基によって保護される。別の選択的に除去することが可能な保護基が、反応性側鎖基を含むアミノ酸(例えば、リジン)について利用される。
【0095】
実施例1は、サーファクタントペプチドの固相合成を説明する。簡単に説明すると、保護されたかまたは誘導されたアミノ酸が、その保護されていないカルボキシル基またはアミノ基を介して、不活性な固体支持体に結合させられる。その後、アミノ基またはカルボキシル基の保護基が選択的に除去され、適切に保護されている相補(アミノまたはカルボキシル)基を有している配列中に次のアミノ酸が混合され、固体支持体にすでに結合させられている残基とアミド結合を形成させるのに適している条件下で反応させられる。その後、アミノ基またはカルボキシル基の保護基が、この新しく付加されたアミノ酸残基から除去され、その後、次のアミノ酸(適切に保護されたもの)が添加される、などである。全ての所望されるアミノ酸が適正な順序で連結させられた後に、任意の残っている末端保護基および側鎖保護基(ならびに、任意の固体支持体)が、連続的または同時に除去されて、最終的なポリペプチドとされる。次いで、このポリペプチドは、低級脂肪族アルコール中に溶解させられることによって洗浄され、乾燥させられる。乾燥させられたサーファクタントポリペプチドは、所望される場合には、公知の技術によってさらに精製することができる。
【0096】
本発明のサーファクタントタンパク質およびポリペプチドはまた、組み換えDNA技術によって生産することもできる。植物または動物である宿主からタンパク質分子を導く手順は、当該分野で一般的に公知である。Jobe et al.,Am.Rev.Resp.Dis.,136:1032(1987);Glasser et al.,J.Biol.Chem.,263:10326,(1988)を参照のこと。一般的には、適切なプロモーターおよび/またはシグナルペプチドの制御下にタンパク質またはポリペプチドをコードする遺伝子配列は、宿主細胞のトランスフェクション用のプラスミドまたはベクターに挿入される。発現されるタンパク質/ポリペプチドは、細胞培養物から単離することができる。
【0097】
本明細書中に開示される多くの有用なポリペプチド、例えば、KLポリペプチド(配列番号4)が、ペプチド結合を介して連結されている「L」型の自然界に存在しているアミノ酸を含むことは明らかであるが、アミノ酸側鎖類似体、アミド結合以外の結合(例えば、異なる骨格)を含む分子もまた、有意なサーファクタント活性を呈する場合があり、さらに、他の利点を有する場合もあることも理解されるべきである。例えば、容易には分解しない(例えば、サーファクタント組成物において使用するための)分子を構築することが望まれる場合には、D−アミノ酸のシリーズを含むポリペプチド分子を合成することが望ましい場合がある。「レトロ」骨格を介して連結された一連のアミノ酸を含む分子、すなわち、カルボキシル末端からアミノ末端の逆方向で構築された内部アミド結合を有する分子もまた、分解させることはより難しく、したがって、本明細書中に記載される種々の適用において有用である場合がある。例えば、以下に、骨格中に「レトロ」結合を有している例示的な分子が示される。
【0098】
【化1】

別のバリエーションにおいては、より「固い」立体構造をとる分子を構築することが望ましい場合がある;これを達成するための1つの手段は、アミノ酸のα−炭素原子に対してメチル基または他の基を付加することである。
【0099】
上記のように、CH基以外の他の基を、α炭素原子に付加することができ、すなわち、本発明のサーファクタント分子は、α炭素にCHを取り込んでいるものだけには限定されない。例えば、上記の側鎖および分子のいずれかを、α炭素成分で示したCH基で置換することができる。
【0100】
本明細書中で使用される場合は、用語、ポリペプチドおよびアミノ酸残基の「類似体」および「誘導体」は、アミノ酸の異化代謝物および同化代謝物、さらには、「自然界に存在している」L型アミノ酸と呼ばれる、通常見られるものとは異なる結合、骨格、側鎖、または側鎖基を含む分子を含むように意図される。(用語「類似体」および「誘導体」は、本明細書中では同義的に使用することが便利である場合もある。)したがって、アミノ酸を模倣するD−アミノ酸分子、および「設計された」側鎖を有しているアミノ酸(すなわち、サーファクタント活性を有している分子中の1つ以上のアミノ酸を置換することができるもの)もまた、本明細書中では、用語「類似体」および「誘導体」に含まれる。
【0101】
1つ以上の伸張されたかまたは置換されたRまたはR’基を有しているアミノ酸を含む有用な広い種類のサーファクタント分子もまた、本発明に含まれる。再び、当業者は、得られる分子が本明細書中に記載されるサーファクタント活性を有する限りにおいては、修飾によって本発明の範囲に含まれる分子を生じる、個々のアミノ酸に対する、結合に対する、および/または鎖自体に対する種々の修飾を作成することもできることを、開示から理解するべきである。
【0102】
組成物には他の成分を含めることができる。例えば、本発明のサーファクタント混合物には、(i)50〜95乾燥重量パーセントのリン脂質、(ii)肺の表面内層中へのリン脂質の取り込みを促進するために有効である、2〜25乾燥重量パーセントの拡散剤、および(iii)0.1から10乾燥重量パーセントの肺サーファクタントポリペプチドが含まれ得る。上記のように、成分は、乾燥形態、溶液形態、または粒子懸濁液の形態で混合することができ、そして、治療薬の添加の前に予め処方することも、また治療薬と共に処方することもできる。
【0103】
本発明の組成物において有用なリン脂質には、自然界に存在しているリン脂質および/または合成のリン脂質が含まれる。使用することができるリン脂質としては、ホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、およびホスファチジルエタノールアミンが挙げられる。例示的なリン脂質としてはまた、ホスファチジルコリン(例えば、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジラウリルホスファチジルコリン(DLPC)C12:0、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)C14:0、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジフタノイルホスファチジルコリン、ノナデカノイルホスファチジルコリン、アラキドイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)(C18:1)、ジパルミトオレオイルホスファチジルコリン(C16:1)、リノレオイルホスファチジルコリン(C18:2))、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、パルミトイル・オレオイル・ホスファチイルグリセロール(POPG)、ジステアロイルホスファチジルセリン(DSPS)、ダイズレシチン、卵黄レシチン、スフィンゴミエリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ジホスファチジルグリセロール、ホスファチジルエタノールアミン、およびホスファチジン酸も挙げられる。
【0104】
具体的には、1,2−ジアシル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−rac−(1−グリセロール)]、1,2−ジアシル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン]、1,2−ジアシル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、1,2−ジアシル−sn−グリセロ−3−ホスフェート、1,2−ジアシル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミンであり、ここでは、ジアシル基が対称である場合も、非対称である場合もあり、3個から28個までの範囲の炭素原子の長さの、最大で6個の不飽和結合を含む、種々のタイプの飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸のいずれかが含まれている。
【0105】
1つの好ましいリン脂質は、DPPCである。DPPCは、今日までに試験された全ての哺乳動物種において主たるリン脂質である。DPPCは、空域の上皮細胞(肺胞の2型肺細胞、および今のところは同定されていない気道の細胞)によって合成される。DPPCは、細胞内層に分泌されて、拡散して肺胞全体を覆う単分子膜を形成する。空気−細胞内層界面のDPPC膜は、その正常な機能を説明する特定の特有の性質を有している:(1)表面全体を覆うように広がる膜は、圧縮、例えば、吐き出しの際に極端に低い表面張力を生じ、それによって、空域への脂質の移動に有利に働く真の力を減少させる;(2)気道または肺胞の大きさは小さくなり、表面張力が比例して小さくなり、それによって、崩壊を防ぐために複数の構造の間で圧平衡を確立する;(3)この両性構造が原因で、膜は疎水性部分と親水性部分の両方とゆるい化学的な会合を形成することができ、その高い圧縮率が原因で、これらの会合は膜の圧縮の際に崩壊させられ得て、それによって界面から上記部分が遊離させられる;そして(4)これらのゆるい化学的会合は、サーファクタントシステム(PG、例えば、)に見ることができる他の化合物の付加によって修飾することができ、これは、膜上の電荷の分布を変化させることができ、それによって、上記部分(上記(3)に記載されている)が膜から開放される速度を変化させることができる。
【0106】
本発明の種々の実施形態においては、脂質成分はDPPCであり、これには、約50から約90重量パーセントのサーファクタント担体組成物が含まれる。本発明の別の実施形態においては、DPPCには、約50から75重量パーセントのサーファクタント組成物が、不飽和ホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール(PG)、トリアシルグリセロール、パルミチン酸、スフィンゴミエリン、またはそれらの混合物を含む残りと共に含まれる。本発明のなお別の実施形態においては、脂質成分は、DPPCとPOPGの、約4:1から2:1の間の重量比の混合物である。1つの好ましい実施形態においては、脂質成分は、DPPCとパルミトイル−オレオイルホスファチジルグリセロール(POPG)の、約3:1の重量比の混合物である。
【0107】
DPPCと上記の脂質およびリン脂質は、市販によって入手することができるが、当該分野で一般的に公知である公開されている方法にしたがって調製することもできる。混合物のリン脂質成分には、1つ以上のリン脂質、例えば、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルグリセロール、(PG)、ホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルセリン(PS)、およびスフィンゴミエリン(SM)の1つ以上が含まれる。リン脂質中の脂肪族アシル鎖は、好ましくは、少なくとも約7個の炭素原子の長さであり、通常は、12〜20個の炭素原子の長さであり、完全に飽和である場合も、また、部分的に不飽和である場合もある。DPPCのようなリン脂質は、単独で投与された場合には比較的ゆっくりと空気−細胞内層界面に吸収され、一旦吸収されると、ゆっくりと拡散することが知られている。
【0108】
リン脂質(単数または複数)は、サーファクタント混合物の50〜95乾燥重量パーセントを構成し、混合物の80〜90乾燥重量パーセントを構成することが好ましい。
【0109】
特定の機構に限定されることは望まないが、拡散剤は、粒子形態から単層形態へのサーファクタント混合脂質の変化を促進し、肺表面に沿った、および肺の内部への拡散および分配を導くと考えられている。したがって、例えば、サーファクタント処方物がリポソーム形態で肺に投与される場合には、拡散剤は、リボソームの二重層から肺表面の平坦な単層形態へのリポソームリン脂質の変化を促進することにおいて有効である。同様に、サーファクタント処方物が無定形または結晶性の脂質粒子として肺に投与される場合は、拡散剤は、サーファクタント−混合リン脂質の、肺表面の平坦な単層形態への変化を促進することにおいて有効である。
【0110】
例示的な拡散剤としては、脂質二重層または脂質の単層の形態と適合性であるが、単独では脂質二重層の形態をサポートすることはできない、リン脂質ではない脂質が挙げられるが、これに限定はされない。例示的な拡散剤としては、リソホスホリピッド;脂肪酸、脂肪酸エステル、および脂肪族アルコール、ならびに、他の単長鎖脂肪族アシル化合物が挙げられる。好ましい拡散剤としては、脂肪酸、および少なくとも約12個の炭素原子、好ましくは、15〜20個の間の炭素原子の鎖の長さを有しているアルキル鎖長の脂肪族アルコールが挙げられる。1つの好ましい拡散剤は、パルミチン酸であり;別の好ましい拡散剤は、セチルアルコールである。
【0111】
拡散剤は、サーファクタント混合物の約2から約25乾燥重量パーセント、または混合物の約10から約15乾燥重量パーセントを構成する。84.5乾燥重量%のDPPC:POPG(3:1)をもまた含む1つの例示的な混合物には、12.75乾燥重量パーセントのパルミチン酸が含まれる。
【0112】
本発明で使用される拡散剤は、商業的な供給業者から購入することができる。例えば、パルミチン酸(PA)は、Avanti Polar Lipids,Inc.(Birmingham,Ala)から入手することができる。拡散剤はまた、当該分野で一般的に公知である公開されている方法にしたがって調製することもできる。
【0113】
いくつかの実施形態においては、組成物には、拡散剤としてチロキサポール(Tyloxapol)を含めることができる。これは、様々な会社から、例えば、Sterling−Winrhrop、およびRohm and Hassのようないくつかの商品名で購入することができる。チロキサポールは、ホルムアルデヒドおよびオキシランを含む4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール)のポリマーである。チロキサポールは、30年以上もの間、ヒトの薬理学的処方物において使用されている(Tainter ML et al.,New England Journal of Medicine(1995)253:764−767)。チロキサポールは比較的毒性がなく、他の界面活性剤が溶血性である濃度の何千倍もの濃度でも、赤血球細胞を溶血させることはない(Glassman HN.Science(1950)111:688−689)。
【0114】
他の化合物を、本発明の組成物に含めることができる。これには、喘息症状を処置することと適合する、または喘息症状を処置するために適している化合物が含まれる。同時に投与することができる薬としては、抗アレルギー薬、抗炎症薬、抗微生物薬(抗細菌剤、抗真菌剤、および抗ウイルス剤を含む)、抗生物質、免疫調節薬、増血剤、ロイコトリエンモディファイヤー、キサンチン、交感神経様作用アミン、粘液溶解薬、コルチコステロイド、抗ヒスタミン剤、およびビタミン剤が挙げられる。他の例としては、気管支拡張剤(例えば、アルブテロール、レバルブテロール(例えば、Xopenex(登録商標))、テルブタリン、サルメテロール、フォルモテロール、および薬学的に許容されるそれらの塩)、抗コリン作用薬(例えば、臭化イプラトロピウム)、いわゆる「肥満細胞安定化剤」(例えば、クロモリンナトリウムおよびネドクロミル)、コルチコステロイド(例えば、フルニソライド、フルチカゾン、ベクロメタゾン、ブデソニド、トリアムシノロン、およびそれらの塩)、インターフェロン(例えば、INF−α、β、およびγ)、粘膜溶解薬(例えば、N−アセチルシステイン、およびグアイフェネシン)、ロイコトリエンアンタゴニスト(例えば、ザファールカストおよびモンテルカスト)、ホスホジエステラーゼIV阻害因子、抗生物質(例えば、アミカシン、ゲンタマイシン、コリスチン、プロテグリン、デフェンシン、およびトブラマイシン)、抗ウイルス薬(例えば、リバビリン、RSVモノクローナル抗体、VP14637)、抗結核薬(例えば、イソナイアジド、リファンピン、およびエタンブトール)、ならびに抗真菌薬(例えば、アンホテリシンB)が挙げられる。
【0115】
(処置方法)
本発明により、喘息(例えば、急性炎症性喘息、アレルギー性喘息、医原性喘息を含む)および関連する喘息の症状を処置するための組成物および方法が提供される。
【0116】
喘息は、気道の過敏性の増大を特徴とする症状を改善させることが可能な閉塞性肺疾患(ROPD)であり、その結果、気道の閉塞が生じる。気道の閉塞は、強制呼気の間の通気に対する高い抵抗性として定義される。喘息においては気道の閉塞は、通常、気管支痙攣、気管支壁の浮腫、および細気管支の崩壊によって生じる。喘息を生じる根本的な機構は知られていないが、アドレナリン作動性でありコリン作動性である気道の直径の制御の遺伝性または急性の不安定さが関係している。このような不安定性を表す喘息は、過敏性の気管支を有しており、症状を示していなくとも、気管支収縮が存在している場合がある。さらに、サーファクタント内層気管支気道の障害は、気道の閉塞の誘導に関係しており、これによって、肺胞の過剰な膨張を導く。明らかな喘息の発作は、そのような個体が種々のストレス(例えば、ウイルスによる呼吸器の感染、運動、感情の乱れ、非特異的な要因(例えば、気圧または温度の変化)にさらされる、冷気もしくは刺激物質(例えば、ガソリンのにおい、新しい塗料、および有毒な臭気、またはタバコの煙)を吸入する、特定のアレルギー誘発物質にさらされる、および敏感な個体においてアスピリンまたは亜硫酸塩剤を摂取した際に、生じる場合がある。喘息がアレルギー誘発物質(ほぼ共通して、空中の花粉およびカビ、ハウスダスト、動物のふけ)によって突然生じ、その症状がIgEによって媒介されるヒトは、アレルギー性または「外因性」喘息を有すると言われる。これらは、成人の喘息患者の約10から20%を占める;別の30から50%は症候性の症状の発現が、非アレルギー性の要因(例えば、感染、刺激物質、情緒的要因)によって引き起こされるようであり、これらの患者は、非アレルギー性または「内因性」喘息を有していると言われる。多くのヒトにおいては、アレルギー性の要因と非アレルギー性の要因のいずれもが深刻である。
【0117】
本発明の処置方法では、本発明の肺サーファクタントポリペプチドの少なくとも1つを有しているサーファクタント混合物が使用される。この処方物は、液体処方物であり得るか、または乾燥処方物であり得る。処方物は、吸入用に、例えば、エアロゾルとして、またはネブライザーによる投与のために、処方することができる。あるいは、処方物は液体のボーラス投与用に処方することができる。患者に投与される処方物の量は、通常、約1〜100mg/用量、5〜20mg/用量であり、例えば、10mg/用量である。用量中の有効成分の量は治療有効量であり、例えば、約0.01mgから50mgの薬剤、または約0.01mgから5mgの薬剤である。治療の有効性を最適にし、副作用を最小にするための用量についての調整については、喘息、肺の炎症、および/または喘息の症状を有しているヒト患者についての臨床的研究の動物モデルが含まれ得る、既知の手順にしたがって決定することができる。
【0118】
したがって、1つの実施形態においては、本発明では、本発明の肺サーファクタントポリペプチドを含む治療有効量の組成物を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物の喘息を処置するための方法が想定される。
【0119】
上記のように、本発明は、炎症性成分が含まれていないものを含む、種々の喘息症状を処置するために使用されることが有利である。喘息および関連する気管支の収縮の症状もまた、気管支拡張剤(例えば、アルブテロール、テルブタリン、サルメテロール、フォルモテロール、およびそれらの薬学的に許容される塩)を含むサーファクタント処方物を投与することによって処置できる場合もある。したがって、本発明の組成物にはまた、他の有用な薬剤、例えば、上記の気管支拡張剤、コルチコステロイド、抗喘息薬、ロイコトリエンモディファイヤー、抗生物質、痛みの治療薬、またはポリペプチド(例えば、サイトカイン、およびペプチドホルモン)を含めることもできる。
【0120】
(組成物)
本発明のサーファクタント混合物は、種々の許容される組成物に処方することができる。このような薬学的組成物は、哺乳動物宿主(例えば、ヒト患者)に対して、選択された投与経路(すなわち、肺による、または吸入経路による)に適合させられた種々の形態で投与することができる。
【0121】
ポリペプチドサーファクタントまたは他の化合物が、安定な毒性のない酸または塩基塩を形成するために十分に塩基性または酸性である場合は、塩としてのこのような化合物の、リン脂質を伴う投与が適切である場合もある。薬学的に許容される塩の例は、生理学的に許容される陰イオン(例えば、トシレート、メタンスルホン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、マロン酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、安息香酸塩、アスコルビン酸塩、α−ケトグルタミン酸塩、およびα−グリセロリン酸塩)を形成する酸を用いて形成された、有機酸付加塩である。適切な無機塩もまた形成させることができ、これには、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、重炭酸塩、および炭酸塩が含まれる。薬学的に許容される塩は、当該分野で周知の標準的な手順を使用して、例えば、アミンのような十分に塩基性である化合物を適切な酸と反応させて生理学的に許容される陰イオンにすることによって、得られる。カルボン酸のアルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウム、またはリチウム)またはアルカリ土類金属(例えば、カルシウム)塩もまた作成される。
【0122】
ポリペプチドの薬学的に許容される塩としては、無機酸(例えば、塩酸もしくはリン酸)または有機酸(例えば、酢酸、酒石酸、マンデル酸など)を用いて形成される(ポリペプチドの遊離のアミノ基を用いて形成される)酸付加塩が挙げられる。遊離のカルボキシル基を用いて形成される塩はまた、無機塩基(例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、または水酸化第二鉄)および有機塩基(例えば、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなど)から誘導することもできる。
【0123】
一般的には、組成物中での本発明の肺サーファクタントポリペプチドの濃度は、約0.01から10重量パーセントのリン脂質である。
【0124】
しかし、一般的には、適切な用量は、1キログラムあたり約0.1から約300mgのリン脂質、または1キログラムあたり約0.1から約200mgのリン脂質、例えば、1日あたり体重1キログラムあたり約0.1から約150mgのリン脂質まで、例えば、1日あたり体重1キログラムあたり1から約50mgのリン脂質まで、または、1日あたり体重1キログラムあたり3から90mgまでのリン脂質の範囲、または、1日あたり体重1キログラムあたり5から60mgまでのリン脂質の範囲であり、上記の割合(%)で、肺サーファクタントポリペプチドが含まれる。
【0125】
理想的には、肺サーファクタントポリペプチドおよびリン脂質は、喘息症状の最適な処置を達成するように投与されるべきである。所望される用量は、便利に、1回の用量の中に提示される場合も、また、適切な間隔(例えば、1日に2回、3回、4回、またはそれ以上の回数)で分けて投与される場合もある。分けられた用量自体を、例えば、別々のおおまかに間隔を空けた多数の投与に;例えば、吸入器からの複数回の吸入に、さらに分けることもできる。
【0126】
例えば、いくつかの実施形態においては、1〜25mgのリン脂質と0.01から10重量パーセントの肺サーファクタントポリペプチドを含む、エアロゾル化させられたサーファクタント混合物を、2〜30分間にわたって肺の内部に堆積させることができる。必要であれば、気管支内の通気を増大させるために処置を繰り返すこともできる。
【0127】
本発明での使用が想定されるサーファクタントポリペプチドおよびリン脂質は、喘息または肺の炎症の症状の迅速な緩和が提供されるように、目的の部位(肺)に直接投与することができる。このような投与は、気管支肺胞洗浄、気管内投与、吸入、またはエアロゾル投与によって行うことができる。
【0128】
本発明の治療用組成物には、有効成分としてその中に溶解させられたかまたは分散させられた本明細書中に記載されるサーファクタント混合物と共に、生理学的に寛容である担体が含まれる場合もある。好ましい実施形態においては、治療用組成物は、治療目的のために哺乳動物またはヒト患者に投与された場合には、免疫原性ではない。
【0129】
その中に有効成分が溶解させられているか分散させられている薬学的組成物の調製は、当該分野において十分に理解されており、処方物に基づく制限は必要ではない。有効成分(肺サーファクタントポリペプチドおよびリン脂質)は、薬学的に許容される、有効成分と適合性である賦形剤と、本明細書中に記載される治療方法での使用に適している量で、混合することができる。適切な賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、緩衝溶液など、およびそれらの組み合わせである。さらに、所望される場合は、組成物には、有効成分の有効性を高める、少量の補助物質、例えば、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤などを含めることができる。
【0130】
液体の担体の例は、有効成分または水以外の物質を含まない滅菌の水溶液、または生理学的pH値のリン酸ナトリウム緩衝液またはトロメタミン緩衝液のような緩衝液、生理食塩水、またはこれらの両方を含む滅菌の水溶液(例えば、リン酸緩衝化生理食塩水または塩化ナトリウム強化トロメタミン緩衝液)である。なおさらに、水性の担体には、2つ以上の緩衝性の塩、さらには、塩化ナトリウムおよび塩化カリウムのような塩、デキストロース、ポリエチレングリコール、および他の溶質を含めることができる。
【0131】
いくつかの実施形態においては、液体の担体は、Tham緩衝化システムである。これは、本質的には以下のように調製することができる。酢酸(AR Select,ACS,Mallinckrodt,Paris,KY)を使用して7.2±0.5のpHになるようにpHを調節した0.37mlのTham溶液(トロメタミン注射液、NDC0074−1593−04、Abbott Laboratories,North Chicago,IL)が、0.33mlの生理食塩水(0.9%の塩化ナトリウム注射液、USP,Abbott Laboratories)および0.30mlの水(注射用滅菌水、USP,Abbott Laboratories)と混合される。溶液は、滅菌濾過によって滅菌することができる。
【0132】
1つの実施形態においては、リン脂質、拡散剤、および肺サーファクタントタンパク質の混合物を意味する「サーファクタント混合物」が調製される。サーファクタント混合物は、リポソーム懸濁液のような脂肪体処方物になるように処理することができる。サーファクタント処方物は、十分に定義されている脂肪体、例えば、サーファクタント混合物と有効な薬剤成分の両方を含む肺サーファクタントポリペプチド、脂質−結晶または無定形の脂肪体が配合されているリポソーム、有機溶媒または有機/水共溶媒、またはそのいくつが脂肪体形態であり、他の成分が溶質形態である分散物中の組成物の溶液を構成する場合がある。
【0133】
エアロゾル投与については、サーファクタント処方物の組成および構造要件は、それを、上記脂質および肺サーファクタントポリペプチド成分の全てを含む適切なエアロゾル粒子形態に変えることができるかまたはそのように処理することができることだけである。
【0134】
本発明によって想定される種々の処理工程をここで考慮すると、好ましくは脂肪体の水性懸濁液としてのサーファクタント処方物は、乾燥した塊を形成するように凍結乾燥させられ、これは次いで、1〜5μmの大きさの範囲の空気動力学的中央粒子径を有している乾燥粉末粒子を含む組成物を形成するように、例えば、研磨することによって粉砕される。乾燥粉末粒子は、その後、保存され、そして吸入による処置に、または適切な溶媒中への懸濁に、粒子懸濁液としてのエアロゾル化のために適している、乾燥−粒子エアロゾルを生じるように、適切なエアロゾル化装置において使用される。
【0135】
別の実施形態においては、本発明では、使用者が制御することができるネブライザーまたはエアゾライザー(aerosolizer)によって脂質サーファクタント形成させて、脂肪体形態のサーファクタント処方物を含む水滴エアロゾルとする処理が想定される。この実施形態のサーファクタント処方物の成分を、エアロゾル液滴中に懸濁させられている、規則構造、結晶状、または無定形の脂質粒子中に存在させることもできる。
【0136】
なお別の実施形態においては、サーファクタント処方物は、噴霧乾燥によって処理されて、1〜5μmの大きさの所望される空気動力学的中央粒子径を有している噴霧乾燥させられた粒子とされる。噴霧乾燥させられた粒子は、その後、保存され、そして吸入治療のための、上記のようなエアロゾル化装置において使用者によって使用される。示されているように、粉末状粒子は、乾燥粉末エアロゾルとして投与することができ、また、粒子を水滴の形態にエアロゾル化するための水性媒体中に懸濁させることもできる。あるいは、液体の形態である適切なサーファクタント処方物、例えば、揮発性の生体適合性の液体中に含められている処方物の溶液または懸濁液を、形成された粒子が有効成分の治療的投与のためにすぐに吸入されるエアロゾル化プロセスにおいて形成させることもできる。
【0137】
上記のように、本発明の処方物は、溶液処方物として、または粒子処方物として、調製することができる。脂質成分または治療薬、あるいは両方を、水性溶媒、有機溶媒、または混合溶媒中に懸濁させられたリポソーム、結晶、または無定形の脂肪体の中に取り込ませることもできる。
【0138】
リポソーム(脂質小胞)の分散物は、例えば、Szoka,F.Jr.et al.,Ann.Rev.Biophys.Bioeng.,9:467−508,1980に詳細に記載されている技術のような、種々の技術によって行うことができる。本発明のリポソーム様サーファクタント組成物は、一般的には、滅菌されたリポソーム懸濁液である。これらのリポソームは、多区画であるかまたは多層小胞であるか、あるいは、単区画小胞、マクロ小胞であるか、あるいは、他のコロイド状形態である場合もある。多層小胞は通常、最も一般的である。多層小胞(MLV)は、好ましくは滅菌条件下で、簡単な脂質膜水和技術によって形成させることができる。
【0139】
リポソーム様サーファクタント組成物を生産するための1つの方法には、選択されたリン脂質と共に有機溶媒中にサーファクタントポリペプチドを溶解させること、その後、得られた溶液を水性の緩衝溶液と混合することが含まれる。次いで、得られた分散液は透析されて、有機溶媒が除去される。あるいは、有機溶媒は蒸発および/または減圧することによって除去することもできる。このように作成された乾燥させられた脂質/ポリペプチド混合物は、水性緩衝システム中で再水和させられて、リポソームとされる(Olson,F.,et al.,Biochim.Biophys.Acta,557:9−23,1979)。
【0140】
適切な緩衝液としては、Tris緩衝液、Tham緩衝システムなどが挙げられ、使用される。Thamは、Tris、トロメタミン、およびトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンとしても知られている緩衝剤である。種々の好ましい実施形態においては、組成物は約6.5〜8.0のpH範囲を有する。
【0141】
リポソームは、選択された均一な孔の大きさを有しているポリカーボネート膜のシリーズを通じてリポソームの水性分散液を押し出すことによって大きさを等しくされる。膜の孔の大きさは、特に、調製物が同じ大きさの膜を通じて2回以上押し出される場合には、その膜を通じた押し出しによって生じさせられるリポソームの最も大きい大きさにほぼ対応する。このように生産されたリポソームは、0.03から5ミクロンの範囲であり得る。ホモジナイゼーションおよび超音波処理の方法もまた、100nm未満の平均の大きさになるようにリポソームの大きさを小さくするために有用である(Martin,F.J.,SPECIALIZED DRUG DELIVERY SYSTEMS−MANUFACTURING AND PRODUCTION TECHNOLOGY,P.Tyle編,Marcell Dekker,New York,267−316頁,1990)。
【0142】
リポソーム処方の前にリポソーム中に治療薬を取り込ませることが望ましい場合には、これは標準的な技術によって行われ得る。例えば、リポソームが脂質の水和によって形成される場合は、疎水性薬物は、水和させられる脂質混合物中に含めることができ、そして親水性薬物を水和溶液中に取り込ませることができる。親水性化合物、例えば、タンパク質の高いカプセル化効率は、逆蒸発相法を使用することによって得ることができる。ここでは、薬物を含む水性媒体が、部分的に蒸発させられた脂質構造に対して添加される。
【0143】
親水性薬物についての高いカプセル化効率を得るための別の方法は、溶媒の注入による方法であり、ここでは、揮発性有機溶媒(例えば、エーテル)中の脂質溶液が、薬物の水溶液中に注入される。高い脂質濃度になるように脂質溶液の持続的な注入を用いることにより、非常に高いカプセル化率(例えば、50%以上)を得ることができる。
【0144】
溶媒の注入には、親水性薬物の水溶液または疎水性薬物の有機溶液の、脂質の共溶媒分散液(サーファクタント混合物成分を含む)への添加が含まれ、これには、水での希釈(aqueous dilution)と有機溶媒の蒸発が同時に、またはその後に付随し、脂質粒子(例えば、薬物が取り込まれているかまたは薬物がカプセル化されているリポソーム)の塊が形成される。
【0145】
あるいは、さらに別の有効成分が、予め形成させられたリポソームに添加される場合もある。この場合には、サーファクタントポリペプチド−脂質混合物には、予め形成させられたリポソームが含まれる。化合物が疎水性化合物である場合は、化合物を、水相媒体の分配によって二重膜中に取り込ませるために、リポソームと単純に接触させることができる。イオン化可能な親水性および両親媒性化合物については、予め形成されたリポソームへの高い内部カプセル化を、利用することができる方法にしたがって、pHまたは他のイオン勾配(例えば、アンモニア勾配)に対して薬剤をロードすることによって行うことができる。
【0146】
リポソームの処方物は、水滴形態でのエアロゾル化のためには、脂質分散液として保存することができ、また、リポソーム処方物は、凍結乾燥させ、粉末状にして、乾燥粉末エアロゾルとして投与することもできる。あるいは、リポソーム分散液を噴霧乾燥させて、粉末状エアロゾルとしての投与のための、粉末形態の乾燥させた脂質粒子を形成させることもできる。
【0147】
フリーズ・ドライ(凍結乾燥)は、溶液または懸濁液から乾燥粉末を作成するための1つの標準的な方法である。例えば、Freide,M.,et al.,Anal.Biochem.,211(1):117−122,1993;Sarbolouki,M.N.and T.Toliat,PDA J.Pharm.Sci.Technol.,52(1):23−27,1998を参照のこと。凍結乾燥後、乾燥させられたサーファクタント処方物は、例えば、研磨すること、または他の便利な手段によって粉砕されて、所望される大きさの粒子が形成される。
【0148】
最近では、液化気体の超臨界特性を利用する技術が、治療用タンパク質を含む微粒子および粉末の作成において使用されている(Niven,R.W.,:MODULATED DRUG THERAPY WITH INHALATION AEROSOLS:REVISITED,A.J.,Hickey編、Marcel Dekker,New York)。好ましい結晶傾向と、吸入の目的に適している特徴を有している粒子は、これらの方法によって調製することが出来る。例示的な超臨界液体処理技術としては、超臨界流体急速膨張法(RESS)、粒子を調製するためのgas−antisolvent(GAS)沈降の使用、および超臨界流体の溶液によって促進される分散(Solution−enhanced dispersion of supercritical fluids)(SEDS)が挙げられる(米国特許第5,301,644号;同第5,707,634号;同第5,770,559号;同第5,981,474号;同第5,833,891号;同第5,874,029号、および同第6,063,138号を参照のこと)。
【0149】
噴霧乾燥もまた、所望される大きさの乾燥脂質粒子を得るために有利に使用することができる(Master,K.,SPRAY DRYING HANDBOOK,第5版、J.Wiley & Sons,New York,1991;Maa,Y.F.et al.,Pharm.Res.,15(8):768−775,1998;Maa,Y.F.,Pharm.Dev.Technol.,2(3):213−223,1997を参照のこと)。種々の噴霧乾燥方法が特許文献に記載されている。例えば、米国特許第6,174,496号;同第5,976,574号;同第5,985,284号;同第6,001,336号;同第6,015,256号;同第5,993,805号;同第6,223,455号;同第6,284,282号;および同第6,051,257号を参照のこと。
【0150】
使用することができる1つの噴霧乾燥装置は、乾燥タンクを有しているサイクロン乾燥機である。液体混合物が乾燥タンクに入れられ、温熱ガス(例えば、空気または窒素)、あるいは他の不活性ガスが、タンクの上部に入れられる。供給された液体は、タンクに入ると細分化され、それがタンクの底に移動するにつれて温熱ガスによって乾燥させられ、そこから回収ユニットへと移動させられる。既知の処理パラメーターにしたがい、溶媒、注入速度、および温熱ガスの流速を、所望される大きさの乾燥粒子を生じるように調節することができる。この場合には、例えば、1〜5μmの範囲の平均流体力学的直径を有している粒子を使用することができる。この手順では、乾燥温度は少なくとも約37℃であり、好ましくは、40℃以上であり、100℃をはるかに上回る場合もある。回収チャンバー内の温度は、加熱された空気の温度よりも実質的に低い。
【0151】
疎水性薬物または親水性薬物は、サーファクタント混合物成分をもまた含む適切な共溶媒溶液に添加することができる。得られる混合液は噴霧乾燥させられて、バルクの粉末処方物において所望される大きさの乾燥粒子を生じる。これらの粒子は、その後、パッケージされ、肺に乾燥粒子を投与するためにエアゾライザーにおいて使用されるまで、好ましくは、乾燥条件下で保存される。
【0152】
種々の形態を有している無定形粒子と、十分に規定された結晶状の形状を有している結晶状粉末粒子の両方を、粒子の大きさが大きすぎない限りは、利用することができる。いずれのタイプの粒子も本発明に適しているが、粒子は、一旦形成されると、最初の状体で維持されることが好ましい。なぜなら、2つの状体の間の移行は、有効な薬学的成分の化学的および物理的安定性に影響を及ぼす可能性があり、そして吸入装置から分散させられて脱凝集させられる粉末の能力に直接影響を与える可能性があるからである。これらの変化はまた、粒子の薬物動態特性にも影響を与える場合がある。一般的には、結晶形態に移行しやすい無定形粉末の傾向に影響を与える要因としては、湿度、親水性物質の存在、不純物、温度、および時間が挙げられる。結晶状態に移行しやすい無定形粒子の傾向を減少させることができる要因は、タンパク質およびポリマー、ならびに疎水性物質の存在である。移行に影響を与えるこれらのいくつかの要因のうち、最も重要なものは、温度と湿度であり、エアロゾル化の前に適度な保存温度下で乾燥状態で、粒子を保存する必要性が強調される。
【0153】
懸濁させられたまたは乾燥させられた粒子を形成する方法にかかわらず、粒子は、1〜5マイクロンの範囲の所望されるMMADを生じる条件下で形成される。粒子が肺サーファクタントポリペプチド(単数または複数)を肺の奥深くまで保有しておくことが意図される(例えば、肺の深部組織が罹患している喘息の肺症状の処置のために)場合は、粒子は、好ましくは、1〜3、または1〜2マイクロンの範囲のMMADの大きさの範囲であることが圧倒的に好ましい。肺サーファクタントポリペプチドの投与が気道を標的とする場合は、より大きい粒子の大きさ、例えば、3〜5のMMADの大きさの範囲がより適切である場合もある。
【0154】
処方物がリポソームまたは他の脂質粒子の水性懸濁液である場合は、種々の市販されているネブライザーを使用して、所望されるエアロゾル粒子を得ることができる。通常は、ネブライザーの操作は、約10〜50psigの圧力で行われ、形成される水性粒子は通常、約2〜6マイクロンの範囲である。装置を、既知の操作変数にしたがって、規則的な品質のエアロゾル化させられたリポソームまたは脂質をベースとするリポソームを生じるように制御することもできる。
【0155】
リポソームの水性分散液、好ましくは、約25%〜30%未満の容積のカプセル化された水を含む比較的うすい分散液のエアロゾル化に適している別の装置では、担体である流体を水性の粒子の細かい霧になるように細分化するために、超音波エネルギーが使用される。超音波ネブライザー装置は、その粒子の大きさが、圧縮空気ネブライザーによって形成される粒子の大きさ(すなわち、約2〜6マイクロン)とほぼ同じである、リポソームエアロゾルの霧を生じることが明らかにされている。
【0156】
水溶性の、リポソームを透過できる薬物の投与のために使用されるタイプの濃縮されたリポソーム分散液をエアロゾル化するためには、分散液は最初に担体溶媒と混合されて、エアロゾル化することができる希釈された分散液が形成される。担体溶媒は、水性媒体であり得、この場合、分散液は、例えば、圧縮空気型ネブライザーまたは超音波型ネブライザーによって、噴霧に適している形態になるように希釈されるかまたは適応させられる。添加される添加物の量は、噴霧に適している分散液とするために十分な量であり、例えば、カプセル化された全量の約30%未満を占める。分散液について、全分散物容量のうちの70〜75%が最初にカプセル化された容量であると仮定すると、所定の容量の分散液は、少なくとも1倍または2倍容量の希釈剤で希釈されなければならないことが理解され得る。
【0157】
あるいは、サーファクタント成分は、適切な揮発性の生体適合性溶媒(例えば、以下に記載されるもの)中に溶解または懸濁させることができ、そして(i)噴霧乾燥させられた粒子の最初の形成を生じ、そして(ii)形成されたばかりの粒子の肺への吸入を導く条件下で、適切なエアゾライザー装置から噴霧される。
【0158】
このセクションでは、乾燥させられた脂質粒子の空気中に浮遊する懸濁物を生じるように設計された種々の内蔵型投与装置が記載される。本明細書中で定義される場合は、「内蔵型」は、圧縮されたフルオロクロロカーボン高圧ガスの放出によるか、または使用者による装置を通じた、もしくは使用者により装置の内部に作られた吸い込まれる空気の流れによるかのいずれかで作成された、圧力差によって推進される内蔵型装置において粒子のエアロゾルが作られることを意味する。従来の乾燥粉末用の電気で動くエアゾライザーもまた適している。
【0159】
液体粒子/高圧ガス懸濁物もまた、高圧ガス中に懸濁させられる定量の乾燥させられた脂質粒子を投与するための、従来の加圧型高圧ガス噴霧装置とともに、本発明において利用することができる。このシステムには適切な高圧ガス中の脂質粒子(例えば、リポソーム)の持続性懸濁液が必要であるので、懸濁液の脂質粒子と高圧ガス成分は、保存の際の安定性について選択されなければならない。
【0160】
いくつかのフルオロクロロカーボン高圧ガス溶媒が、内蔵型吸入装置について使用、または提案されている。代表的な溶媒としては、「Freon 11」(CClF)、「Freon 12」(CCl)、「Freon 22」(CHClF)、「Freon 113」(CClFCClF)などが挙げられる。脂質−粒子/高圧ガス懸濁液を形成させるためには、乾燥させられた脂質粒子が選択された高圧ガスまたは高圧ガス混合物に、全高圧ガスに対して約1から30重量パーセント、好ましくは、約10〜25重量パーセントの最終脂質粒子濃度になるように添加される。薬物が高圧ガス懸濁液の乾燥脂質粒子中にカプセル化されたままである水溶性化合物である場合には、高圧ガス中の脂質粒子の最終濃度は、所定のエアロゾル懸濁液の容量において、選択された定量の薬物を生じるように調節される。したがって、例えば、リポソームが1mgの乾燥リポソーム調製物あたり0.05mgの肺サーファクタントポリペプチドを含むように処方され、投与される薬物の選択された用量が1mgである場合は、懸濁液は、1エアロゾル用量あたり20mgの乾燥リポソームを含むように処方される。
【0161】
脂質可溶性薬物が処方物中に含められる、すなわち、これが高圧ガス溶媒中に容易に溶解するものである場合は、2つの処方アプローチが可能である。第1のアプローチにおいては、薬物が最初に、乾燥脂質粒子を形成させることにおいて使用される脂質中に含められ、次いでこれらは、上記のように、高圧ガスの容量あたり選択された濃度の薬物を生じる量で高圧ガスに添加される。あるいは、薬物を最初に、選択された薬物濃度で溶媒に添加することもできる。この処方物中の脂質粒子は、「空」の乾燥粒子であり、これは、エアロゾルの形成および溶媒の蒸発の間に薬物についての脂質貯蔵庫としての役割を果たす。空の脂質粒子の最終濃度は、定量の薬物を保持するために適している便利な全脂質用量を生じるように調節される。
【0162】
高圧ガスへの脂質−粒子の取り込みもまた、本発明において利用することができる。このシステムでは、定量の肺サーファクタントポリペプチドを含む乾燥させられた脂質粒子が、脱水された形態で送達パケットの中に予めパッケージされる。パケットは、高圧ガス噴霧装置とともに使用されて、空気中に浮遊しているリポソーム粒子の懸濁物中にパケットのリポソーム内容物を噴出させる。
【0163】
空気中への脂質−粒子の取り込みもまた、本発明において利用することができる。第3のタイプの送達システムでは、乾燥させられた脂質粒子を取り込むための使用者による吸入によって生じる空気の流れが使用され、使用者の呼吸管の内部にこれらを引き込ませる。操作においては、パケットはノズルに、好ましくは、上記のパケットの「内部」末端のシールを破裂させる様式で、取り付けられ、パケットの他方の末端はシールされてはいない。ここで、使用者は彼または彼女の唇をマウスピースの上に載せ、力強く吸入して、吸入器の中に、および吸入器の中のパイプを通じて空気を迅速に吸い込む。パイプへ吸い込まれた空気はノズルで濃縮され、高速の気流が生じる。これによりパケットの外側、および対流領域に脂質粒子が移動する。気流および取り込まれたリポソームはパドル上にぶつかり、これによって循環、および上昇気流が生じる。したがって、脂質粒子はさらに均一に分布させられ、より広い断面積にまで広がり、直後に、吸入により使用者の呼吸菅に取り込まれる。
【0164】
あるいは、脂質粒子は、分散させるために必要な力を提供する装置の内部に保持され、そして患者の呼吸による吸入とは無関係に粉末をエアロゾル化することができる。吸入の操作における投与のタイミングもまた、投与システムに組み込まれているセンサーによって制御することができる場合がある。
【0165】
1つの実施形態においては、組成物は、脂質ボーラス投与によって投与することができる。例えば、気管チューブが、肺組織に組成物の液滴を投与するために挿入される場合もある。いくつかの実施形態においては、ボーラス投与は、肺の1箇所に対する投与であって、他の場所に対するものではない場合があり、また、肺の種々の部位を様々なタイミングでボーラス点滴投与によって処置することもできる。
【0166】
なお他の実施形態においては、組成物は、肺洗浄によって投与することができる。肺洗浄を行うための手順は、当該分野において利用することができる。例えば、米国特許第6,013,619号を参照のこと。これは、引用により本明細書中に組み入れられる。例えば、肺洗浄は以下のように行うことができる:
a)調節された圧力、好ましくは、約4から20cmの水で、哺乳動物の肺切開部に人工呼吸器を用いて呼気終末陽圧呼吸(PEEP)を行う工程;
b)1つ以上の肺葉または肺切片に薬学的に許容される水性媒体中に希釈されたサーファクタントポリペプチドを含む洗浄用組成物を染み込ませる工程;そして
c)好ましくは、約20から100mmの水銀柱の陰圧を使用して、気管−気管支の吸い込みの短い間隔を使用して、生じた肺の液体を肺から除去する工程。
【0167】
通常、染み込ませる工程(b)の前に予め選択される時間(好ましくは、約30分まで)のPEEPが行われ、さらに、PEEPは、通常、工程(b)と(c)の間、および除去工程(c)の後に予め選択された時間(好ましくは、約6時間まで)、継続して行われる。
【0168】
以下の実施例は、本発明を説明するために意図され、限定するようには意図されない。
【実施例】
【0169】
(実施例1)
(サーファクタントタンパク質/ポリペプチドの調製)
本発明のサーファクタントポリペプチド(例えば、KL)の合成は、種々の公知の合成方法にしたがって行うことができる。以下の手順を例として記載する。
【0170】
あるいは、以下の手順もまた、本明細書中に記載したように使用する。サーファクタントペプチドのバッチ(例えば、KLペプチドのバッチ)を合成することにおいて有用である化学物質および試薬としては、以下が挙げられる:
t−Boc−L−リジン(C1−Z)PAM−樹脂(t−Boc−L−Lys(C1−Z)(Applied Biosystems,Foster City,CA);
a−Boc−ε−(2−クロロ−CBZ)−L−リジン(Bachem,San Diego,CA);
N−Boc−L−ロイシン−HO(N−Boc−L−Leu;Bachem);
ジクロロメタン(DCM;EM Science,Gibbstown,NJ,またはFisher,Pittsburgh,PA);
トリフルオロ酢酸(TFA;Halocarbon);
ジイソプロピルエチルアミン(DIEA;Aldrich,Milwaukee,MI);
N,N−ジメチルホルムアミド(DMF;EM Science,Gibbstown,NJ);
ジメチルスルフォキシド(DMSO;Aldrich);
N−メチルピロリドン(NMP;Burdick Jackson,Muskegon,MI);
1−ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物(HOBt;Aldrich);
1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC;Aldrich);
酢酸無水物(AcO;Mallinckrodt,St.Louis,MO);および
フッ化水素(HF;Air Products,Allentown,PA)。
【0171】
KLペプチド(配列番号1)を合成する1つの手段は、Merrifield法を使用してCoupler 296 Peptide Synthesizer(Vega Biotechnologies,Tucson,AZ)上で行われる。「典型的な」合成を以下に記載する。鎖の伸張は、100gのリジン PAM−樹脂上で、以下の表2に記載する手順によって行った。工程7、10、および11を除く全ての工程を、自動で行った。
【0172】
【表2】

ペプチド樹脂が脱保護されたと同時に、適切なアミノ酸誘導体が生じた。適切なアミノ酸を1リットルのNMPに溶解させた。透明な溶液を得た後、HOBtを溶液に添加した。HOBtを溶解させる際に、DCCを溶液に添加した。この溶液を、室温で1時間攪拌しながら置いた。この1時間の攪拌の間に、副生成物であるジシクロヘキシル尿素(白色の沈殿)が形成された。この副生成物を、Whatmanの#1濾紙を使用してブフナー漏斗によって濾過し除去した。その後、濾液を、工程7において手作業でVega 296反応容器の内容物に添加した。
【0173】
次いで、合成装置を、工程No.9の完了後に停止するようにプログラムした。ペプチド樹脂のアリコートを、Sarin et al.,(Applied Biosystems 431A使用者マニュアル、Appendix A)の定量的ニンヒドリン試験に供した。カップリング効率は、全合成を通じて良好であった。未反応のペプチド樹脂を、ロイシン12(サイクル9)の後、およびロイシン5(サイクル16)の後でアセチル化した。それぞれのアセチル化の後、ペプチド樹脂をジクロロメタンで洗浄した(表2、工程11を参照のこと)。
【0174】
合成の最後に、完了したペプチド樹脂を、プログラムの工程1〜3を完了することによって脱保護(Boc基の除去)した(表2)。脱保護したペプチド樹脂を、その後、十分な容量の無水エタノールで洗浄し、P上で減圧下で乾燥させた。乾燥した脱保護されたペプチド樹脂の重量は256.48グラムであった。バッチを、0.64mmole/グラムの置き換えの100gのt−Boc−リジン(Cl−Z)OCHPAM樹脂を使用して開始したので、負荷は64mmolに相当した。最初の100グラムの樹脂を差し引くと、得られた重量は156.48グラムであった。新生の保護されたペプチドの分子量(樹脂上に繋がれたC末端リジンを除く)は3011.604g/molであった。
【0175】
HFの切断。ペプチド樹脂の256.48グラムのロットを、3つの大きなアリコートにおいてフッ化水素(HF)で処理した。Peninsula Laboratories(Belmont,CA)のV型HF−Reaction Apparatusを、液体フッ化水素を使用するペプチド樹脂の切断に使用した。アニソールを、使用する前に蒸留させた。HFは何ら処理することなく使用した。ドライアイス、イソプロパノール、および液体窒素が、冷却目的のために必要であった。
【0176】
最初のHFについては、およそ88gのKLペプチド樹脂を、磁気攪拌バーを入れた1リットルの反応容器に入れた。25mlの蒸留したアニソールをペプチド樹脂に添加した。システム全体を組立てて、漏れをチェックした後、HFを全体量が約300mlになるまで反応容器の中に凝縮させた。樹脂からのペプチドの切断を、−4℃で1時間行った。HFの部分的な除去は、1〜2時間、水流吸引機で行った。1〜2時間後、残りのHFを高真空(機械的減圧ポンプ)によって1〜2時間かけて除去した。反応容器の温度は、HFの除去プロセスの間を通じて、−4℃に保った。
【0177】
その後、HF装置を大気圧と平衡にし、油状のスラッジを、反応容器の底に見つけた。冷却した無水エーテル(700ml、−20℃にあらかじめ冷却しておいた)を反応容器の内容物に対して添加した。樹脂のクランプを、ガラス製のロッドを使用して、エーテルとともに挽いて粉末状にした。樹脂を沈ませた後、エーテルをデカントした。その後、樹脂を500mlの室温の無水エーテルで洗浄し、約5分間攪拌した。樹脂を沈ませた後、エーテルをデカントした。樹脂が自由に流動化するまで、樹脂を洗浄した(全部で4〜5回の洗浄)。樹脂をドラフトの中において一晩乾燥させた。
【0178】
次いで、得られた乾燥させたHF処理した樹脂の重さを測定し、冷凍庫で保存した。1.021グラムの乾燥させたHF処理した樹脂を取り出し、50mlの50%酢酸/水で抽出し、30分間攪拌した。樹脂を、粗い焼結ガラス漏斗を通じて濾過し、濾液を凍結乾燥ビンに回収した。濾液をおよそ200mlの水で希釈し、シェル凍結させ(shell frozen)、そして凍結乾燥機上に置いた。1グラムの抽出したHF処理した樹脂により、569mgの粗ペプチドが得られた。以下の表(表3)に、残っているKLペプチド樹脂の大規模なHF処理をまとめる。全てのHF処理した樹脂を冷凍庫で保存した。
【0179】
【表3】

精製。ペプチドを、Dorr−Oliver Model B分配HPLC(Dorr−Oliver,Inc.,Milford,CT)を使用して精製した。このユニットを、Linear Model 204分光光度計と、Kipp and Zonenデュアルチャンネル記録装置に接続した。この分配HPLCを、Vydac Cサポート、15〜20ミクロンが充填されている放射状に圧縮された10×60cmのカートリッジと、300Aの孔の大きさ(Vydac,Hesperia,CA)を含む、Waters KL250 Column Module(Waters Associates,Milford,MA)と繋いだ。溶媒「A」は、水中の0.1%のHOAcから構成され、溶媒「B」は、アセトニトリル中の0.1%のHOAcから構成される。流速を400ml/分に設定し、カートリッジを、150〜200psiに圧縮し、そして分配HPLCシステムの逆圧を550〜600psiとした。
【0180】
最初のDorr−Oliverの実行のために、HF#1より、20gのHF処理した樹脂を、500mlの氷酢酸中で5分間抽出した。水(500ml)を、樹脂/酢酸混合物に添加した。この50%の酢酸/水溶液をさらに25分間攪拌した。樹脂を、粗い焼結ガラス濾過器で濾過し除いた。ペプチドを含む濾液を取り、Dorr−Oliverにロードした。使用したHPLC勾配は、45分間において1〜40%の「B」であり、その後、7分間はそのまま(isocratically)維持した。この時点で、パーセント「B」は、1分間に1%上昇し、最終的なパーセントは44%になった(示さない)。
【0181】
画分を手作業で回収し、HPLCによって分析した。≧95%の純度を満たす全ての画分を一緒にプールし、大きなガラス製の容器の中で保存した。以後、この物質を、「BPS#1」と呼ぶ。所望される成分を含むが、95%以上の純度を満たさない全ての画分を回収し、その後リサイクルした。少なくとも10回のさらなる分配HPLCの実行を、Dorr−Oliverユニット上で行った(データは示さない)。
【0182】
逆浸透、凍結乾燥。全量のBPS#1はおよそ60リットルであった。逆浸透を使用して、2リットルの最終容量となるようにペプチド溶液を濃縮した。ペプチドを保持するためのR75A膜を含むMillipore Model 6015逆浸透ユニットを使用した。得られた2リットルのBPS#1を、2枚のWhatman#1濾紙を使用してブフナー漏斗を通じて濾過し、およそ11個の凍結乾燥ビンに分け、等量の水で希釈した。凍結乾燥ビンを、シェル凍結させ(shell frozen)、そして凍結乾燥させた。この手順の最後には、乾燥KLペプチドの全量は40.25gであった。
【0183】
再凍結乾燥。種々の凍結乾燥条件(例えば、ペプチド濃度、凍結乾燥させられる溶媒の組成、凍結乾燥工程の長さ、庫の温度など)により、種々の溶解特性を有している乾燥させられた調製物を得ることができることを見出した。乾燥KLペプチドは、1mg/mlのクロロホルム:メタノール(1:1)溶液中に可溶であり、10mg/mlで≧90%可溶であることが望ましい。これらの基準が、上記の凍結乾燥工程の最後で満たされていない場合は、ペプチドを再度凍結乾燥することができる。
【0184】
典型的な再凍結乾燥を以下に記載する。およそ5gのペプチドを、ガラスフラスコ中の2リットルのアセトニトリルに対して攪拌しながらゆっくりと添加する。およそ1分後、3リットルのMilli−Q水を添加し、その後、50mlの酢酸(最終酢酸濃度=1%)を添加する。これを、37℃で3日間攪拌し、ブフナー漏斗中でWhatman#1濾紙を通じて濾過し、凍結乾燥ビンに入れる。次いで、これをドライアイスとイソプロピルアルコールを使用してシェル凍結させ(shell frozen)、そして凍結乾燥装置上に置いた。凍結乾燥時間を、3日から7日までで変化させた。その後、最終的な乾燥産物の重さを測定し、パッケージし、可溶性の分析および化学的分析のために等量に分けた。
【0185】
(実施例2)
(モデルサーファクタント混合物の調製)
材料。1,2−ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、1−パルミトイル,2−オレオイルホスファチジルグリセロール(POPG),およびパルミチン酸(PA)は、Avanti Polar Lipids Inc.(Birmingham,AL)から入手した。アミノ酸配列KLLLLKLLLLKLLLLKLLLLK(配列番号1)を有するKLポリペプチドは、本明細書中に記載したように合成したか、またはDiscovery Laboratories,Inc.,(Doylestown,PA)から入手した。使用した全ての塩、緩衝液、および有機溶媒は、利用できる限り高品質のものであった。
【0186】
以下の式に基づく組成を有している、40mg/mLの全リン脂質を含むサーファクタント組成物のストック溶液を処方した:
PL=全リン脂質=DPPC+POPG
3 DPPC:1 POPG
1 PL:0.15 PA:0.027 KLペプチド。
【0187】
上記の式を使用して、全リン脂質1mLあたり2.5から30mgで、種々の量のパルミチン酸(PA)およびKLペプチドを含むサーファクタント組成物を作成した(表4)。
【0188】
【表4】

モデルサーファクタント混合物を以下のように作成した。KLペプチド(9mg)、DPPC(225mg)、POPG(75mg)、およびPA(45mg)を、2.5ミリリットル(ml)の95%エタノール中に45℃で溶解させた。次いで、この溶液を7.5mlの蒸留HOに45℃で、迅速にボルテックスしながら添加し、2mlの500mMのNaCl、250mMのTris−酢酸(pH7.2)を添加した。得られた乳状の懸濁液を37℃で15分間攪拌し、その後、存在するエタノールを、100倍量の130mMのNaCl、20mMのTris−酢酸(pH7.2)緩衝液に対して、37℃で、透析(Spectrapor 2;13,000mol.wt.カットオフ)によって除去した。透析を、透析溶液を2回交換して、48時間続けた。
【0189】
加えて、組成物にはさらに、最終産物1mLあたり以下の組成を有している緩衝システム/懸濁液を含めることができる(表5)。
【0190】
【表5】

このTham緩衝化システムを、本質的には以下のように調製した。7.2±0.5のpHとなるように酢酸(AR Select,ACS,Mallinckrodt,Paris,KY)を使用してpHを調節した0.37mlのTham溶液(トロメタミン注射液、NDC 0074−1593−04、Abbott Laboratories,North Chicago,IL)を、0.33mlの生理食塩水(0.9%の塩化ナトリウム注射液、USP,Abbott Laboratories)および0.30mlの水(注射用滅菌水、USP、Abbott,Laboratories)と混合した。溶液を滅菌濾過した。
【0191】
(参考文献)
【0192】
【化2】

【0193】
【化3】

本明細書中に引用されるか、または記載される全ての特許および刊行物は、本発明が属する分野の当業者のレベルの指標であり、各々のこのような引用される特許または刊行物は、あたかもそれらが個々にその全体を引用により本明細書中に組み入れられているか、またはその全体において本明細書中に示さているかのように、同じ程度に引用により本明細書中に組み入れられる。出願人らは、本明細書中に、任意のこのような記載されている特許または刊行物からの任意の、および全ての物質および情報を物理的に組み込む権利を有する。
【0194】
本明細書中に記載されている特定の方法および組成物は、好ましい実施形態の代表的例であり、本発明の範囲の制限とは意図されない。他の目的、態様、および実施形態は、本明細書を考慮すると当業者に明らかにされ、そして特許請求の範囲によって定義される本発明の精神に含まれるであろう。種々の置き換えおよび修飾を、本発明の範囲および精神から逸脱することなく本明細書中に開示された本発明に対して行うことができることは、当業者に容易に明らかであろう。本明細書中に適切に例示的に記載されている本発明は、本明細書中で必須であるとは具体的に開示されていない、任意のエレメント(単数または複数)、または制限(単数または複数)が存在しない条件下で行うことができる場合もある。本明細書中に例示的に記載されている方法およびプロセスは、異なる順序の工程で行うことができる場合もあり、そしてこれらは、本明細書または特許請求の範囲において示されている工程の順序に必ずしも限定されない。本明細書中、および添付の特許請求の範囲において使用されるように、単数形「a」、「an」、および「the」には、文脈によって他のものが明確に示されていない限りは、複数形についての言及も含まれる。したがって、例えば、「宿主細胞」との記載には、複数の(例えば、培養物または集団)そのような宿主細胞などが含まれる。いかなる状況でも、本特許は、本明細書中に具体的に開示されている特定の実施例または実施形態または方法に限定されるように解釈されることはない。いかなる状況でも、本特許は、たとえそのような記述が具体的であり、出願人による応答の記載において明確に採用される的確性および制限を伴わなくても、特許商標庁のいずれの審査官または任意の他の職員または従業員によってなされる何らかの記述によって限定されるように解釈されることはない。
【0195】
使用されている用語および表現は、限定ではなく記述として使用され、そして示され、記載されている特徴、あるいはその一部の全ての等価物を排除するためのそのような用語および表現の使用する意図はないが、請求される本発明の範囲内で種々の変更を行うことが可能であることは理解される。したがって、本発明は好ましい実施形態と最適な特徴によって具体的に開示されているが、開示される本明細書中の概念の変更およびバリエーションは、当業者によって行われることが出来、またそのような変更およびバリエーションが、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲に含まれると考えられる。
【0196】
本発明は、本明細書中で広く、そして一般的に記載されている。一般的な開示に含まれるより細かな種のそれぞれと、亜種のグループ分けもまた、本発明の一部を形成する。これには、削除された物質が本明細書中に具体的に記載されているかどうかにはかかわらず、その属に由来する任意の対象を除くか、またはそれを除くようにネガティブに制限される限りは、本発明の一般的に記載を含む。
【0197】
他の実施形態は以下の特許請求の範囲に含まれる。さらに、本発明の特徴または態様が、Markushグループに関して記載されている場合には、本発明は、Markushグループの任意の個々のメンバー、またはMarkushグループのメンバーのサブグループに関しても記載されることが、当業者に理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物において喘息を処置または予防するための医薬の製造のための、肺サーファクタントポリペプチドの使用。
【請求項2】
哺乳動物において喘息を処置または予防する方法であって、有効量のリン脂質と単離された肺サーファクタントポリペプチドとを含む組成物を、該哺乳動物に投与する工程を包含する、方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、前記肺サーファクタントポリペプチドが、10〜60個の間のアミノ酸残基、および式(Zによって表される、交互に存在する疎水性アミノ酸残基領域と親水性アミノ酸残基領域とのアミノ酸配列を有するポリペプチドを含み、
式中、Zは親水性アミノ酸残基であり、Uは疎水性アミノ酸残基であり、aは約1から約5までの平均値を有する整数であり、bは約3から約20までの平均値を有する整数であり、cは約1から約10までの整数であり、そしてdは約0から約3までの整数である、
方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、前記Zが、ヒスチジン、リジン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、5−ヒドロキシリジン、4−ヒドロキシプロリン、または3−ヒドロキシプロリンである、方法。
【請求項5】
請求項3に記載の方法であって、前記Uが、バリン、イソロイシン、ロイシン、システイン、チロシン、フェニルアラニン、および/または、α−アミノブタン酸、α−アミノペンタン酸、α−アミノ−2−メチルプロパン酸、もしくはα−アミノヘキサン酸のようなα−アミノ脂肪族カルボン酸である、方法。
【請求項6】
請求項3に記載の方法であって、前記Uが、α−アミノブタン酸、α−アミノペンタン酸、α−アミノ−2−メチルプロパン酸、またはα−アミノヘキサン酸である、方法。
【請求項7】
請求項2に記載の方法であって、前記肺サーファクタントポリペプチドが、以下のアミノ酸配列:
【数1】

を含み、
ここで、各Xaは、リジンまたはアルギニンから個別に選択され、そして各Xbは、アスパラギン酸またはグルタミン酸から個別に選択される、方法。
【請求項8】
請求項2に記載の方法であって、前記肺サーファクタントポリペプチドが、
【数2】

である、方法。
【請求項9】
請求項2に記載の方法であって、前記肺サーファクタントポリペプチドが、以下のアミノ酸配列:配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、または配列番号17、を含む、方法。
【請求項10】
請求項2に記載の方法であって、前記組成物が、前記リン脂質の量の約0.1から10パーセントである量の、肺サーファクタントポリペプチドを含む、方法。
【請求項11】
請求項2に記載の方法であって、前記組成物が、約50から約95乾燥重量パーセントのリン脂質を含む、方法。
【請求項12】
請求項2に記載の方法であって、前記リン脂質が、ホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、またはホスファチジルエタノールアミンを含む、方法。
【請求項13】
請求項2に記載の方法であって、前記リン脂質が、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジラウリルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、ジフタノイルホスファチジルコリン、ノナデカノイルホスファチジルコリン、アラキドイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジパルミトオレオイルホスファチジルコリン、リノレオイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン、ジオレオイルホスファチジルグリセロール、パルミトイルオレオイルホスファチイルグリセロール、ジステアロイルホスファチジルセリン、ダイズレシチン、卵黄レシチン、スフィンゴミエリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ジホスファチジルグリセロール、ホスファチジルエタノールアミン、またはホスファチジン酸を含む、方法。
【請求項14】
請求項2に記載の方法であって、前記リン脂質が、ジパルミトイルホスファチジルコリンとパルミトイル,オレオイルホスファチジルグリセロールとを、約4:1から約2:1のモル比で含む、方法。
【請求項15】
請求項2に記載の方法であって、前記組成物が、約2から約25乾燥重量パーセントの拡散剤をさらに含む、方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、前記拡散剤が、少なくとも10炭素原子の脂肪アシル鎖長を有する、脂肪酸または脂肪アルコールである、方法。
【請求項17】
請求項15に記載の方法であって、前記拡散剤が、チロキサポールをさらに含む、方法。
【請求項18】
前記組成物が吸入によって投与される、請求項2に記載の方法。
【請求項19】
前記組成物が、液体ボーラスとして肺組織に投与される、請求項2に記載の方法。
【請求項20】
前記組成物が液体組成物である、請求項2に記載の方法。
【請求項21】
前記組成物が乾燥組成物である、請求項2に記載の方法。
【請求項22】
前記組成物がエアロゾル粒子を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項23】
前記エアロゾル粒子が、約1μmから約5μmの空気動力学的中央粒子径を有する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
哺乳動物において喘息を処置または予防する方法であって、リン脂質と配列番号1〜18のアミノ酸配列のいずれか1つを有する肺サーファクタントポリペプチドとを含む組成物を、該哺乳動物に投与する工程を包含する、方法。
【請求項25】
請求項24に記載の方法であって、前記組成物が、前記リン脂質の約0.1から10パーセントを含む肺サーファクタントポリペプチドの量を含む、方法。
【請求項26】
請求項24に記載の方法であって、前記組成物が、約50から約95乾燥重量パーセントのリン脂質を含む、方法。
【請求項27】
請求項24に記載の方法であって、前記リン脂質が、ホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、またはホスファチジルエタノールアミンを含む、方法。
【請求項28】
請求項24に記載の方法であって、前記リン脂質が、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジラウリルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、ジフタノイルホスファチジルコリン、ノナデカノイルホスファチジルコリン、アラキドイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジパルミトオレオイルホスファチジルコリン、リノレオイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン、ジオレオイルホスファチジルグリセロール、パルミトイルオレオイルホスファチイルグリセロール、ジステアロイルホスファチジルセリン、ダイズレシチン、卵黄レシチン、スフィンゴミエリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ジホスファチジルグリセロール、ホスファチジルエタノールアミン、またはホスファチジン酸を含む、方法。
【請求項29】
請求項24に記載の方法であって、前記リン脂質が、ジパルミトイルホスファチジルコリンとパルミトイル,オレオイルホスファチジルグリセロールとを、約4:1から約2:1のモル比で含む、方法。
【請求項30】
請求項24に記載の方法であって、前記組成物が、約2から約25乾燥重量パーセントの拡散剤をさらに含む、方法。
【請求項31】
請求項30に記載の方法であって、前記拡散剤が、少なくとも10炭素原子の脂肪アシル鎖長を有する、脂肪酸または脂肪アルコールである、方法。
【請求項32】
前記拡散剤が、チロキサポールをさらに含む、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記組成物が吸入によって投与される、請求項24に記載の方法。
【請求項34】
前記組成物が、液体ボーラスとして肺組織に投与される、請求項24に記載の方法。
【請求項35】
前記組成物が液体組成物である、請求項24に記載の方法。
【請求項36】
前記組成物が乾燥組成物である、請求項24に記載の方法。
【請求項37】
前記組成物が、約1μmから約5μmの空気動力学的中央粒子径を有するエアロゾル粒子を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項38】
薬学的に許容される担体、肺サーファクタントポリペプチド、および気管支拡張剤を含む、組成物。
【請求項39】
前記気管支拡張剤が、アルブテロール、レバルブテロール、テルブタリン、サルメテロール、またはフォルモテロールである、請求項38に記載の組成物。
【請求項40】
前記組成物が肺送達のために処方される、請求項38に記載の組成物。
【請求項41】
哺乳動物において喘息を処置または予防する方法であって、該哺乳動物に、配列番号1のアミノ酸配列を有する単離されたKL肺サーファクタントポリペプチドと組み合わせて、有効量のリン脂質を投与する工程を包含する、方法。

【公表番号】特表2007−513180(P2007−513180A)
【公表日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−542824(P2006−542824)
【出願日】平成16年12月3日(2004.12.3)
【国際出願番号】PCT/US2004/040665
【国際公開番号】WO2005/055994
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(501244222)ザ スクリプス リサーチ インスティテュート (33)
【Fターム(参考)】