説明

噴射装置

【課題】燃焼室内にてアンモニアの燃焼を容易に生じさせる。
【解決手段】噴射装置6は、容器62、容器62内に所定量の液状アンモニアを供給する液状アンモニア供給部69、容器62に接続されるとともに、圧縮用の空間内に充填されたガスを圧縮して圧縮ガスを容器62内に導入する圧縮部65、並びに、容器62に接続され、容器62内への圧縮ガスの導入により容器62から押し出されるアンモニアを燃焼室内へと導くノズル66を備える。噴射装置6では、圧縮により高温となるガスを利用して燃焼室内にアンモニアを噴射することにより、燃焼室内にてアンモニアの燃焼を容易に生じさせることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの燃焼室内にアンモニアを噴射して、燃焼室内にて燃焼を生じさせる噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、アンモニアガスを燃焼させるエンジンが提案されており、例えば、特許文献1では、燃焼室からの排気の熱によりアンモニアガスを水素と窒素とに分解するとともに、上記水素ガスを初期に燃焼させて燃焼室内に別途供給されたアンモニアガスを燃焼させる手法が開示されている。特許文献1の手法では、自着火が容易ではないアンモニアガス(常圧下での自着火温度は651℃である。)を効果的に燃焼させることが実現される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−332152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1の手法では、アンモニアガスを水素と窒素とに分解するアンモニア分解反応器や水素吸蔵手段等が必要となり、エンジンの構成が複雑となる。したがって、アンモニアを燃料とするエンジンにおいて燃焼室内にて燃焼を容易に生じさせる新規な手法が求められている。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、燃焼室内にてアンモニアの燃焼を容易に生じさせることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、エンジンの燃焼室内にアンモニアを噴射して、前記燃焼室内にて燃焼を生じさせる噴射装置であって、容器と、前記容器内に所定量の液状アンモニアを供給する液状アンモニア供給部と、前記容器に接続されるとともに、圧縮用の空間内に充填されたガスを圧縮して圧縮ガスを前記容器内に導入する圧縮部と、前記容器に接続され、前記容器内への前記圧縮ガスの導入により前記容器から押し出されるアンモニアを前記燃焼室内へと導くノズルとを備える。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の噴射装置であって、前記ガスが酸素を含む。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の噴射装置であって、前記ガスが酸素ガスである。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の噴射装置であって、前記ガスが前記燃焼室から排出される排気である。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の噴射装置であって、前記ガスを加熱する加熱部をさらに備える。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の噴射装置であって、前記加熱部において前記燃焼室から排出される排気を用いて前記ガスが加熱される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、圧縮により高温となるガスを利用して燃焼室内にアンモニアを噴射することにより、燃焼室内にてアンモニアの燃焼を容易に生じさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】2ストロークエンジンの構成を示す図である。
【図2】噴射装置の構成を示す図である。
【図3】2ストロークエンジンの他の例を示す図である。
【図4】2ストロークエンジンのさらに他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の一の実施の形態に係る2ストロークエンジン1の構成を示す図である。2ストロークエンジン1は、船舶用の内燃機関であり、アンモニア(NH)を燃料とする。2ストロークエンジン1は、シリンダ2、および、シリンダ2内に設けられるピストン3を備え、ピストン3は、図1中の上下方向に移動可能である。なお、図1の上下方向は重力方向であるとは限らない。
【0015】
シリンダ2は、円筒状のシリンダライナ21、および、シリンダライナ21の上部に取り付けられるシリンダカバー22を有する。ピストン3は、シリンダライナ21に挿入された厚い円板状のピストンクラウン31、および、一端がピストンクラウン31の下面に接続されるピストンロッド32を有する。ピストンロッド32の他端は、図示省略のクランク機構に接続される。
【0016】
2ストロークエンジン1では、シリンダライナ21、シリンダカバー22、排気弁25(後述)、および、ピストンクラウン31の上面(すなわち、ピストン3の上面)にて囲まれる空間が、アンモニアおよび空気を燃焼するための燃焼室20である。シリンダカバー22には、燃焼室20に燃料を供給する噴射装置6が設けられる。本実施の形態では、燃料として液状アンモニアが使用される。噴射装置6の構成については後述する。
【0017】
シリンダライナ21の下端部近傍には、多数の貫通孔が周状に配列して形成され、これらの貫通孔の集合が、燃焼室20内に後述の掃気を供給する掃気ポート23である。掃気ポート23の周囲には、掃気室231が設けられており、掃気ポート23は掃気室231を介して掃気管41に連通する。
【0018】
シリンダカバー22には、燃焼室20内のガスを燃焼室20外に排出する排気ポート24が形成され、排気ポート24には、排気ポート24を開閉する排気弁25が設けられる。排気ポート24を介して燃焼室20から排出されたガス(以下、「排気」という。)は、第1排気路241を介して排気管42へと導かれる。実際の2ストロークエンジン1では、複数のシリンダ2が併設されており、複数のシリンダ2が1つの掃気管41および1つの排気管42に接続される。
【0019】
2ストロークエンジン1は、ターボチャージャである過給機5、および、海水等の冷媒により過給機5からの空気の冷却を行う空気冷却器43をさらに備える。過給機5は、タービン51およびコンプレッサ52を備え、タービン51は、第2排気路811を介して排気管42から送り込まれた排気により回転する。コンプレッサ52は、タービン51にて発生する回転力を利用して(すなわち、タービン51の回転を動力として)、2ストロークエンジン1の外部から吸気路82を介して取り込んだ吸気(空気)を加圧して圧縮する。加圧された空気(以下、「掃気」という。)は、空気冷却器43にて冷却された後、掃気管41内に供給される。このように、過給機5では、排気を利用して吸気を加圧し、掃気が生成される。
【0020】
タービン51の回転に利用された排気は、第3排気路812を通過し、窒素酸化物(NO)を還元するための還元触媒7を介して2ストロークエンジン1の外部に排出される。上述のように、2ストロークエンジン1の燃料はアンモニアであり、硫黄分は燃料に含まれていない。このため、排気は、スクラバによる硫黄分除去なしで外気へと排出される。これにより、2ストロークエンジン1を備える船舶の構造を簡素化することができる。
【0021】
図2は、噴射装置6の構成を示す図である。噴射装置6は、装置本体61、および、液状アンモニア供給部69を備える。2ストロークエンジン1において、装置本体61は複数のシリンダ2のそれぞれに対して設けられ、1つの液状アンモニア供給部69が複数の装置本体61に接続される。したがって、複数のシリンダ2にそれぞれ設けられる複数の噴射装置6において、1つの液状アンモニア供給部69が共有される。
【0022】
装置本体61は容器62を有し、容器62にはアンモニア供給路692の一端が接続される。アンモニア供給路692の他端は液状アンモニア供給部69の液状アンモニアタンク691に接続される。アンモニア供給路692には、供給ポンプ693および供給弁694が設けられ、供給弁694を開放することにより、液状アンモニアタンク691から容器62内に所定量の液状アンモニアが供給される。既述のように、1つの液状アンモニア供給部69が複数の噴射装置6にて共有されるため、実際には、液状アンモニアタンク691から伸びるアンモニア供給路692は複数の分岐流路に分岐して複数の装置本体61の容器62にそれぞれ接続される。なお、供給ポンプ693は液状アンモニアタンク691と分岐点との間に設けられ、供給弁694は各分岐流路に設けられる。これにより、1つの供給ポンプ693のみにより複数の装置本体61への液状アンモニアの供給が可能になるとともに、供給弁694を制御することにより複数の装置本体61において個別のタイミングにて液状アンモニアの供給を行うことができる。
【0023】
噴射装置6は、2ストロークエンジン1の外部から空気を取り入れるとともに、当該空気(後述するように、燃料を燃焼室20へと案内するガスであり、以下、「補助ガス」という。)を加熱する加熱部68をさらに備える。加熱部68は、図1の第3排気路812の一部を内部に含む構成であり、タービン51から排出された排気の熱を利用して補助ガスを加熱する。なお、加熱部68も複数の噴射装置6にて共有される。
【0024】
各装置本体61は、プランジャポンプ(またはピストンポンプ)である圧縮部本体63を備え、圧縮部本体63はポンプシリンダ632およびポンプピストン631を有する。ポンプピストン631は、図示省略のカム機構により、クランク機構におけるクランク角に応じてポンプシリンダ632の軸方向に移動する。また、ポンプシリンダ632の先端(図2中の下側の先端)には、排出路633が設けられる。
【0025】
ポンプシリンダ632では、加熱部68から伸びる補助ガス供給路681の一端が排出路633の近傍に接続され、ポンプシリンダ632内の補助ガスが加熱部68に戻ることを防止する逆止弁(図示省略)が補助ガス供給路681に設けられる。また、排出路633の先端は後述の噴射圧制御弁64に接続され、噴射圧制御弁64では、排出路633から排出された補助ガスがポンプシリンダ632内に戻ることが防止される。したがって、圧縮部本体63では、ポンプピストン631が排出路633から離れる方向(図2中の上側)に移動することにより、加熱部68内の補助ガスがポンプシリンダ632内に充填される。また、ポンプピストン631が排出路633に向かって移動することにより、後述するようにポンプシリンダ632内の補助ガスが排出路633から排出される。なお、ポンプシリンダ632の容積は、排出路633から容器62を経由して後述のノズル66へと至る流路の容積よりも十分に大きい。
【0026】
噴射圧制御弁64はケーシング641を有し、排出路633の先端はケーシング641内に配置される。ケーシング641内において、排出路633の開口には弁体642が設けられ、付勢部643により弁体642が排出路633の開口に押し当てられることにより当該開口が閉塞される。
【0027】
装置本体61において、ポンプピストン631が図2中に実線にて示す位置から排出路633に向かって移動を開始した直後は、排出路633の開口が閉塞されているため、ポンプシリンダ632内の補助ガスの圧力および温度が次第に増大する。そして、補助ガスが弁体642を押す力が、付勢部643により弁体642が当該開口を閉塞する力よりも大きくなると、排出路633の開口が開放される。これにより、圧縮された補助ガス(以下、単に「圧縮ガス」という。)が当該開口から排出される。ケーシング641には容器62に接続される連通路645が設けられており、圧縮ガスは連通路645を介して容器62内へと導入される。このように、噴射装置6では、圧縮部本体63および噴射圧制御弁64が、圧縮用の空間であるポンプシリンダ632内に充填された補助ガスを圧縮して圧縮ガスを容器62内に導入する圧縮部65となる。なお、付勢部643による付勢力は調節部644により調節可能であり、これにより、容器62内に導入される圧縮ガスの圧力も変更可能である。
【0028】
既述のように、容器62内には液状アンモニアタンク691から液状アンモニアが供給される。また、容器62の上部(液状アンモニアの液面よりも上方)にはノズル66が接続される。圧縮ガスが容器62内に導入される際には、アンモニア供給路692の供給弁694は閉じられており、ノズル66および連通路645が接続される部位を除き、容器62は密閉状態となる。したがって、容器62内への圧縮ガスの導入により容器62内の液状アンモニアが押し出され、ノズル66を介して圧縮ガスと共に燃焼室20内に噴射される。なお、ノズル66から噴射されるアンモニアは、液状(液滴を含む。)やガス状のアンモニアを含む状態(気液混合状態)となっている。
【0029】
次に、2ストロークエンジン1の動作について説明する。2ストロークエンジン1では、図1中において二点鎖線にて示すピストン3の位置が上死点であり、実線にて示すピストン3の位置が下死点である。ピストン3が上死点近傍に位置する際には、図1中において二点鎖線にて示すように排気弁25が上昇して排気ポート24が閉じられており、燃焼室20内の掃気が圧縮される。
【0030】
図2の噴射装置6では、ピストン3の動作に同期してポンプピストン631が排出路633に向かって移動することにより、高温かつ高圧の圧縮ガスが容器62内に導入され、容器62内のアンモニアが圧縮ガスと共に、ノズル66を介して図1の燃焼室20内に噴射される。燃焼室20内において気化したアンモニアの自着火が高温の圧縮ガスにより促進され、燃焼室20内のガス(すなわち、アンモニアガス、圧縮ガスおよび掃気)の燃焼(爆発)が生じる。これにより、ピストン3が押し下げられ、下死点に向かって移動する。なお、着火した状態のアンモニアがノズル66から燃焼室20内に噴射されてもよい。
【0031】
図2の噴射装置6では、アンモニアの噴射後、ピストン3が次に上死点近傍へと到達するまでに、液状アンモニア供給部69により容器62内に所定量(本実施の形態では、1回の噴射に必要な量であり、2ストロークエンジン1の出力に対応する量として可変である。)の液状アンモニアが供給される。また、ポンプピストン631が排出路633から離れる方向に移動することにより、加熱部68内の補助ガスがポンプシリンダ632内に充填される。
【0032】
図1の2ストロークエンジン1では、燃焼室20内のガスの燃焼後、ピストン3が下死点に到達する前に、排気弁25が下降して排気ポート24が開かれる。これにより、燃焼室20内の燃焼済みガスの排出が開始される。燃焼室20から排出されたガス(すなわち、排気)は、既述のように、第1排気路241、排気管42および第2排気路811を介して過給機5のタービン51に送り込まれる。タービン51通過後の排気は、加熱部68における補助ガスの加熱に利用される。加熱部68を通過した排気は、還元触媒7を通過して2ストロークエンジン1の外部に排出される。なお、2ストロークエンジン1では、クランク機構のクランクシャフトに接続されたカム機構により、排気弁25の上昇および下降(排気ポート24の開閉)が行われる。
【0033】
ピストン3が下死点近傍まで移動し、ピストンクラウン31の上面が掃気ポート23の下方に位置すると、燃焼室20と掃気室231とが連通し(すなわち、掃気ポート23が開かれ)、掃気室231内の掃気の燃焼室20内への供給が開始される。ピストン3は下死点を通過した後、上昇に転じ、ピストンクラウン31の上面が掃気ポート23の上方に到達することにより、掃気ポート23が閉じられ、燃焼室20内への掃気の供給が停止される。続いて、排気ポート24が排気弁25により閉じられ、燃焼室20が密閉される。
【0034】
ピストン3はさらに上昇して、燃焼室20内の掃気が圧縮され、ピストン3が上死点近傍に到達すると、噴射装置6から燃焼室20内にアンモニアが圧縮ガスと共に噴射され、燃焼室20内にて燃焼が生じる。2ストロークエンジン1では、上記動作が繰り返される。
【0035】
ところで、点火プラグ等を用いて、燃焼室20内においてアンモニアの燃焼を行うことも考えられるが、点火プラグは消耗品であり、港以外ではエンジンを原則停止しない船舶用の内燃機関では、点火プラグを用いることは好ましくない。また、水素ガス等のパイロット燃料を用いて、燃焼室20内においてアンモニアの燃焼を行うことも考えられるが、液状アンモニアおよびパイロット燃料のそれぞれに対してタンクや噴射機構を設ける必要があり、エンジンの構成が複雑になる。
【0036】
これに対し、図2の噴射装置6では、圧縮部65において、圧縮用の空間内に充填されたガスが圧縮され、液状アンモニアを保持する容器62内に圧縮ガスが導入される。そして、圧縮ガスの導入により容器62から押し出されるアンモニアが、圧縮ガスと共にノズル66を介して燃焼室20内へと導かれる。このように、噴射装置6では、圧縮により高温となるガスを利用して燃焼室20内にアンモニアを噴射することにより、燃焼室20内にてアンモニアの燃焼を容易に生じさせることができる。なお、噴射装置6では、1つの圧縮部65によりアンモニアおよび補助ガスを燃焼室20内に噴射するため、エンジンの構造が複雑化することはない。
【0037】
また、噴射装置6が補助ガスを加熱する加熱部68を備えることにより、圧縮ガスをさらに高温にすることができ、燃焼室20内のアンモニアを含むガスをより確実に燃焼させることができる。さらに、加熱部68が、燃焼室20から排出される排気を用いて補助ガスを加熱することにより、2ストロークエンジン1のエネルギー効率を向上することができる。
【0038】
ここで、仮に、プランジャポンプにより液状アンモニアを直接、燃焼室20内に噴射する場合、すなわち、図2の圧縮部本体63のポンプシリンダ632内に液状アンモニアを充填して、排出路633から直接、燃焼室20内にアンモニアを噴射する場合、ポンプシリンダ632内にガスが混入すると、ポンプピストン631を押し込んだ際に、当該ガスの圧縮によりポンプシリンダ632内の液状アンモニアの加圧が不十分となり、アンモニアが燃焼室20内に適切に噴射されない現象(ベーパーロック現象)が生じることがある。特に、液状アンモニアを燃料とする場合、ポンプシリンダ632内への液状アンモニアの充填時に、液状アンモニアが気化してポンプシリンダ632内にガスが混入する可能性が高くなる。
【0039】
これに対し、圧縮部65において補助ガスを圧縮する噴射装置6では、圧縮対象がガスであるため、ベーパーロック現象は生じず、燃焼室20内へのアンモニアの噴射を確実に行うことができる。
【0040】
図3は、2ストロークエンジン1の他の例を示す図である。図3の噴射装置6aでは、図1の噴射装置6における加熱部68が省略され、第3排気路812内の排気の一部を装置本体61へと導く補助流路682が新たに設けられる。他の構成は図1の2ストロークエンジン1と同様であり、同様の構成に同符号を付している。
【0041】
噴射装置6aでは、タービン51内を通過した高温の排気が、補助流路682を介して図2のポンプシリンダ632内に補助ガスとして充填される。そして、圧縮部65が、ポンプシリンダ632内の補助ガスを圧縮して圧縮ガスを容器62内に導入することにより、容器62から押し出されるアンモニアが圧縮ガスと共に燃焼室20内に噴射される。このように、燃焼室20から排出される排気を補助ガスとして利用する噴射装置6aでは、圧縮ガスをさらに高温かつ高圧にすることができ、燃焼室20内のアンモニアを含むガスを容易に、かつ、より確実に燃焼させることができる。
【0042】
図4は、2ストロークエンジン1のさらに他の例を示す図である。図4の噴射装置6bでは、図1の噴射装置6における加熱部68が省略され、装置本体61に接続される酸素タンク67が新たに設けられる。他の構成は図1の2ストロークエンジン1と同様であり、同様の構成に同符号を付している。
【0043】
噴射装置6bでは、酸素タンク67から供給される酸素ガスが、図2のポンプシリンダ632内に補助ガスとして充填される。そして、圧縮部65が、ポンプシリンダ632内の補助ガスを圧縮して圧縮ガスを容器62内に導入することにより、容器62から押し出されるアンモニアが圧縮ガスと共に燃焼室20内に噴射される。このように、酸素ガスを補助ガスとして利用する噴射装置6aでは、高温かつ高圧の酸素ガスによりアンモニアの自着火を促進することができ、燃焼室20内のアンモニアを含むガスを容易に、かつ、より確実に燃焼させることができる。なお、図4の噴射装置6bにおいて加熱部68を設け、加熱した酸素ガスを圧縮した圧縮ガスを利用してアンモニアが噴射されてもよい。
【0044】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0045】
上記噴射装置6,6a,6bでは、酸素を含む補助ガスを圧縮した圧縮ガスを利用してアンモニアを燃焼室20内に噴射することにより、燃焼室20内のアンモニアガスの燃焼が容易に行われるが、2ストロークエンジン1の設計によっては、酸素を含まない補助ガス(例えば、アンモニアガス)が用いられてもよい。この場合でも、圧縮により高温となった圧縮ガスを利用してアンモニアを燃焼室20内に噴射することにより、燃焼室20内にて燃焼を容易に生じさせることができる。また、液状アンモニアに石油燃料等を混合したものが容器62内に供給され、燃焼室20内に噴射されてもよい。
【0046】
噴射装置6,6a,6bにおいて、圧縮部65は他の往復ポンプ(例えば、ダイヤフラムポンプやベローズポンプ)等を有するものであってもよい。すなわち、圧縮用の空間内に充填されたガスを圧縮して圧縮ガスを容器62内に導入する圧縮部65は、様々な態様にて実現することができる。また、加熱部68においてヒータが設けられることにより、排気を用いることなく、補助ガスの加熱が行われてもよい。
【0047】
上記実施の形態における噴射装置6,6a,6bは、4ストロークエンジンにおいて用いられてもよい。また、噴射装置6,6a,6bを有するエンジンは、船舶以外に、自動車や発電用の原動機等、様々な用途に用いられてよい。
【0048】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせられてよい。
【符号の説明】
【0049】
1 2ストロークエンジン
6,6a,6b 噴射装置
20 燃焼室
62 容器
65 圧縮部
66 ノズル
68 加熱部
69 液状アンモニア供給部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの燃焼室内にアンモニアを噴射して、前記燃焼室内にて燃焼を生じさせる噴射装置であって、
容器と、
前記容器内に所定量の液状アンモニアを供給する液状アンモニア供給部と、
前記容器に接続されるとともに、圧縮用の空間内に充填されたガスを圧縮して圧縮ガスを前記容器内に導入する圧縮部と、
前記容器に接続され、前記容器内への前記圧縮ガスの導入により前記容器から押し出されるアンモニアを前記燃焼室内へと導くノズルと、
を備えることを特徴とする噴射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の噴射装置であって、
前記ガスが酸素を含むことを特徴とする噴射装置。
【請求項3】
請求項2に記載の噴射装置であって、
前記ガスが酸素ガスであることを特徴とする噴射装置。
【請求項4】
請求項2に記載の噴射装置であって、
前記ガスが前記燃焼室から排出される排気であることを特徴とする噴射装置。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれかに記載の噴射装置であって、
前記ガスを加熱する加熱部をさらに備えることを特徴とする噴射装置。
【請求項6】
請求項5に記載の噴射装置であって、
前記加熱部において前記燃焼室から排出される排気を用いて前記ガスが加熱されることを特徴とする噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−202259(P2012−202259A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65813(P2011−65813)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000005119)日立造船株式会社 (764)
【Fターム(参考)】