説明

噴霧器用の操業方法および対応する塗装器具

本発明は、部材塗装用噴霧器のための操業方法、具体的には、車体部品の部材塗装用の噴霧器(1)のための操業方法であり、以下の工程を含むものに関する。噴霧器(1)を介した塗装剤噴霧流の塗布工程、噴霧流形成のための第1導風空気流(11)を放出する工程、塗布される塗装剤の特性値(η、γ、T、BC/CC)もしくは噴霧器(1)の操作変数(QLACK、n、U)を表す少なくとも1つの塗布パラメーター(η、γ、T、CC/BC、QLACK、n、U)の決定工程と塗布パラメーター(η、γ、T、BC/CC、QLACK、n、U)を関数とした第1導風空気流(11)の作用の決定工程。代替的に、本発明の範囲において、塗布パラメーターの変動と噴霧流幅の付随する変動とが、隣接する塗装剤塗布経路間の塗布経路間隔(d)の調節によって塗布経路重複を一定に保つために、考慮に入れられる。さらに、本発明は対応する塗装器具を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部材、特に車体部品の部材塗装用の噴霧器のための操業方法に関する。さらに、本発明は対応する塗装器具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、回転式ベルを利用して塗装剤の噴霧流を放出する回転式噴霧器を開示する。ベルから放出される噴霧流を整形する目的で、この回転式噴霧器は複数の導風空気噴出口を有する。これら導風空気噴出口は、ベルを取り囲む同軸円状の2つのリング上に位置し、また、(空気を整形する)導風空気強流を実質的軸方向に後部から噴霧流に向けて放出する。そして、これら導風空気噴出口を介して噴霧流幅を調節することができる。
【0003】
内部のニス塗装の際は、この制限された空間条件に合わせるため、噴霧流幅は狭く調節される。このとき、噴霧流を外側から同時に圧迫する大きな導風空気流が導風空気噴出口を介して放出される。
【0004】
しかし、外部のニス塗装の際は、素早く効果的に広い部材表面をニス塗装するため、噴霧流は幅広く調節されることが好ましい。この目的のため、ごく小さな導風空気流が放出されて、狭い範囲のみに限局するように噴霧流は同時に圧迫される。
【0005】
そこで、噴霧流を選択的に狭くしたり広くしたりするために、既知の回転式噴霧器のさまざまな値は導風空気流に合わせて調節されている。
【0006】
上記導風空気流調節法の欠点は、回転式噴霧器作動中のある導風空気流とそれに付随する噴霧流幅との相関関係がばらつきやすく、これが噴霧流幅の精密な調節を困難にするという点である。
【0007】
特許文献2は、放出される導風空気の温度と湿度とが制御される導風空気制御装置を開示する。しかし、この場合、導風空気体積流量と付随する噴霧流幅の相関関係が現在の作動状況に依存して変動するため、噴霧流幅もまた回転式噴霧器の現在の作動状況に依存する。
【0008】
特許文献3は、いわゆる制御比率を一定に保つため導風空気流の速度が変動する導風空気制御装置を開示する。このとき、一方の回転速度と導風空気体積との積と、他方の塗装剤体積流量との間の比率が懸案となる。そこで、この場合、制御機器は、異なる制御目標に従い、現在の作動状況に依存する噴霧流幅の変動を阻害しない。
【0009】
最後に、特許文献4は、導風空気体積流量を制御変数として所定の設定値に制御する制御システムを開示する。ここで、設定値は望まれる噴霧流幅に従って変動してもよい。しかし、この場合、導風空気体積流量と付随する噴霧流幅の相関関係が回転式噴霧器の現在の作動状況に依存して変動することが問題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1331037号明細書
【特許文献2】米国特許第6534127号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2002/0122892号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第19938093明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明は、上記既知の回転式噴霧器とそれに関連する操業方法とを改良することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、独立請求項に記載の塗装器具と操業方法とのそれぞれによって達成される。
【0013】
本発明は、噴霧流幅が導風空気流に依存するのみならず、塗布される噴霧流中の個別のニス滴の運動エネルギーにも依存するという技術的知識に基づく。例えば、最適のニス塗装のために個別に要求される滴のスペクトルを得るため、個別の塗装剤パラメーター(例えば、ニス粘度、ニス表面張力)は、個別に調節された噴霧器パラメーター(例えば、ベルの回転速度)を必要とする。しかし、このように噴霧器パラメーター(例えば、ベルの回転速度)を現在の塗装剤パラメーター(例えば、ニス粘度)に対して調節することは、付随して個別に塗装剤滴の運動エネルギーの分散を招くので、結果として、望ましい噴霧流幅を獲得するためには、導風空気流の対応する調節が必要となる。
【0014】
そこで、本発明は、少なくとも1つの塗布パラメーターが噴霧器作動中に決定されることを提供する。このとき前記塗布パラメーターは、塗布される塗装剤の特性値(例えば、粘度、表面張力)もしくは噴霧器の操作変数(例えば、回転速度)を表し、塗布される噴霧流に対する、具体的には、噴霧された塗装剤滴の運動エネルギーに対する効果を有する。
【0015】
本発明の第1の変形例では、塗布される噴霧流を望ましい形状と幅との両方もしくは一方に調節するために、この塗布パラメーターに依存して導風空気流が変動する。導風空気流の変動と共に塗布パラメーターを考慮することは、塗布されるニス滴の運動エネルギーの分散を考慮に入れることができる点で有利であり、これによって上記従来の回転式噴霧器の場合よりも正確に望ましい噴霧流幅に調節することができる。
【0016】
そこで本発明は、好ましくは、噴霧流幅のオープンループ制御、すなわち、変数を制御する際に噴霧流幅の計測とフィードバックが必要ではない制御を提供する。この場合、噴霧流幅は制御されるべき変数(制御変数)であり、それは、外乱変数としての可変塗布パラメーター(例えば、ニス粘度、ニス温度、噴霧器回転速度、など)に依存し制御される。噴霧流幅を所定の設定値に制御するため、導風空気流は可変塗布パラメーターに依存する設定変数として調節される。この場合の制御の目的は塗布パラメーターの変動に非依存的な噴霧流幅を所定の設定値に調節することである。
【0017】
対照的に、本発明の別の変形例では、噴霧流幅はオープンループ制御されない。代わりに、噴霧流幅の変動は補正され、隣接する塗装剤塗布経路間の塗布経路間隔とニス塗装速度(描画速度)との両方もしくは一方が付随して調整される。本発明の範囲において採用されるニス塗装速度という用語は、好ましくは、ニス塗装工程の間の塗布装置の前送り速度のことである。
【0018】
例えば、塗布パラメーター(例えば、ニス粘度、ニス温度、噴霧器回転速度、等)の変動の結果、噴霧流幅が減少する場合、塗布経路間隔が付随して減少するので、望ましい塗布経路重複が維持される。
【0019】
対照的に、塗布パラメーター(例えば、ニス粘度、ニス温度、噴霧器回転速度、等)の変動の結果、噴霧流幅が増加する場合、望ましい塗布経路重複を維持するために、塗布経路間隔が付随して拡大する。
【0020】
そこで、この変形例では、隣接する塗装剤塗布経路間の塗布経路重複が所定かつ望ましい塗布経路重複に制御されることを本発明は提供する。このとき、塗布経路間隔は、可変塗布パラメーター(例えば、ニス粘度、ニス温度、噴霧器回転速度、等)に依存しながら対応して調節される。
【0021】
本発明の範囲において、本発明の上記2つの変形例(噴霧流幅の制御と塗布経路重複の制御とのそれぞれ)は互いに組み合わせることも可能である。
【0022】
本発明の両方の変形例は共通して、噴霧流幅の調節もしくは塗布経路間隔の調節によって塗布パラメーターの変動が補正されるという技術的教示を含む。
【0023】
さらに、塗布経路重複の制御では、ニス塗装速度(例えば、塗布経路方向における噴霧器の前送り速度)を調節することによって層の厚さは制御される。本発明の範囲において、可変塗布パラメーターに依存して、層の厚さの制御もまた行われる。
【0024】
そして、本発明の範囲において、塗布パラメーターという用語は塗装作業中の噴霧流への、具体的には、噴霧された塗装剤滴の運動エネルギーもしくは噴霧流の形状への効果を有する変数の全てを包含する。さらに、この用語は個別の変数に制限されず、いくつかの異なる変数も包含する。このような方法で、いくつかの可変塗布パラメーターに依存して、噴霧流幅と塗布経路重複との両方もしくは一方の制御もまた実行可能である。
【0025】
さらに、本発明の範囲において、導風空気流は、単位時間当たりに放出される導風空気量、つまり物理的意味においては、放出される導風空気の体積流量もしくは質量流量という意味に理解される。
【0026】
本発明は、好ましくは、単一の導風空気流が放出されるだけではなく、上記の特許文献1にあるように、少なくとも1つの追加の導風空気流が放出されることを提供する。塗布パラメーター(例えば、ニス粘度、ベル回転速度)は、好ましくは、全ての導風空気流の変動に対して採用される。
【0027】
この場合、すでに上記の特許文献1により開示されているが、個別の導風空気流は様々な方向に放出される。ここで、個別の導風空気流は、好ましくは、重なり合い、合成された導風空気強流になる。このときその方向は個別の導風空気流に依存する。そこで、本発明の範囲において、個別に重なり合った導風空気強流を個別に調節することにより、合成された導風空気流の方向を変動させることができる。ここで、好ましくは、合成された導風空気強流の方向の変動は、上記の塗布パラメーター(例えば、塗装剤の粘度、噴霧器の回転速度)に依存して生じる。そこで、最適な層の厚さ(塗布効率)と層の配置と質とを含む様々な要求を満たす経済的なニス塗装を実表するための噴霧器の拡張された柔軟なパラメタライズのために、本発明は、合成された導風空気強流を様々な方向に向けることを可能にする。
【0028】
すでに上述のことだが、導風空気流の変動のために採用される塗布パラメーターは、塗布される塗装剤の粘度もしくは噴霧器の回転速度であってもよい。しかし、本発明は、興味のある塗布パラメーターに関して、これら2つのパラメーターに制限されず、他のパラメーターでも実現し得る。塗布パラメーターは、例えば、塗布される塗装剤の表面張力、塗装剤の静電帯電の電圧、塗布される塗装剤の温度、環境温度、塗装剤流、または/および、塗布される塗装剤の種類であってもよい。さらに、本発明の範囲において、上記塗布パラメーターのいくつかが、共に値を決定され、共に導風空気流を変動させる可能性もある。
【0029】
本発明の範囲において、個別の導風空気流は、共通空気供給から、もしくは、個別の付属空気供給からのどちらかの一方から導風空気を選択的に供給され得る。しかし、それぞれの付属空気供給を介した単一の導風空気流の供給の利点は、単一の導風空気流は柔軟かつ相互に非依存的に調節できるという点である。
【0030】
さらに言及すれば、本発明の範囲において、導風空気流の変動は自動的に実行されるので、噴霧流幅調節の間に変動する塗布パラメーターの変動を補正するために使用者が介入する必要はない。
【0031】
さらに言及すると、本発明の範囲において、塗装剤は、粉末ニスもしくは湿潤ニス(溶媒性ニスもしくは水性ニス)のどちらか一方であってもよい。そこで本発明は、塗布すべき塗装剤に関して、特定の塗装剤の種類に制限されない。
【0032】
さらに、言及すると、本発明は上記の操業方法に制限されず、上記から明らかなように対応する塗装器具も含む。導風空気流の変動の間の塗布パラメーター(例えば、ニス粘度、ベル回転速度)を考慮に入れるために、ここでは例えば、導風空気弁を起動する制御機器を介して、導風空気流の変動が発生する。
【0033】
2つの独立した導風空気流を有する制御機器は、好ましくは、両方の導風空気流を変動させる。個別の導風空気流の変動は相互に非依存的に実行される。
【0034】
本発明の実施形態の1つでは、導風空気流配置は、それぞれに同軸円上に配置されたいくつかの噴出し開口部を有することを想定される。このときその配置構成は最先端の技術から既知である。個別の導風空気流はここで、導風空気噴出口自身の輪を介して放出される。このとき個別の導風空気噴出口輪は、好ましくは、互いに同軸円をなすように配置される。
【0035】
この場合、個別の導風空気噴出口輪が異なる直径を有していてもよい。そして、他方の導風空気流が内部に配置された導風空気噴出口から放出されるのに対して、一方の導風空気流は外部に配置された導風空気噴出口から放出されてもよい。
【0036】
しかし、個別の導風空気噴出口輪が実質的に同じ直径を有するので、第1導風空気噴出口配置と第2導風空気噴出口配置との噴出し開口部が周囲に沿って交互に分散して配置されるという代替的選択肢もある。両方の導風空気噴出口配置の噴出し開口部はここでそれぞれ対にまとめられるため、導風空気噴出口の対の多くは周囲に沿って配置される。このときこれら各対はそれぞれの導風空気流用の導風空気噴出口をそれぞれ含む。
【0037】
さらに、個別の噴出し開口部が、周方向へのねじれ、選択的には、ベルの回転方向あるいは回転方向の反対のどちらかの方向へのねじれを有していてもよい。例えば、一方の導風空気噴出口配置の噴出し開口部は周方向へのねじれを有するのに対して、他方の導風空気噴出口配置の噴出し開口部は周方向へのねじれを有しなくてもよい。この場合、外周方向へのねじれを備える噴出し開口部は30°から75°の間のねじれ角を有し得る。このとき、45°のねじれ角が有利であることが証明されている。
【0038】
最後に言及するが、本発明の範囲において、3つ以上の導風空気流が噴霧流を整形するために放出されてもよい。この場合、追加の3つめの導風空気流は既述の2つの導風空気流と同じように変動してもよい。これに加えて、個別の導風空気流はベルに付着物が付かないように保つための洗浄空気として適用されてもよい。さらに、個別の導風空気流が他の方法で、最先端の技術から既知のモードで、加熱あるいはさもなくば空調され得る。
【0039】
本発明の他の更なる有利な展開は、従属請求項で特徴付けられ、あるいは本発明の好ましい実施例の記述とあわせて図に基づき以下で詳細に描写される。図は以下に示される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】2つの導風空気を有する回転式噴霧器の斜視断面図を示している。
【図2】2つの導風空気を有する回転式噴霧器の更なる実施形態例を示している。
【図3A】2つの導風空気噴出口輪を有する導風空気リングの正面図を示している。
【図3B】図3Aに示した導風空気リングの断面図を示している。
【図4】本発明の範囲における使用のための導風空気リングの代替実施形態例の正面図を示している。
【図5】2つの導風空気を有する回転式噴霧器の概略を示す側面図を示している。
【図6】本発明に係る塗装器具の略図を示している。
【図7A】部材のニス塗装塗布経路の略図を示している。
【図7B】部材のニス塗装塗布経路の略図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1の断面図は湿潤ニス、例えば溶媒性ニスあるいは水性ニスの塗布のための回転式噴霧器1を示す。
【0042】
塗布部として、作動中に高速で回転して、噴霧流4をリング状の輪をなす噴霧縁3へ放出するベル2を回転式噴霧器1は有する。
【0043】
この場合、塗布すべき湿潤ニスは色管5を介して供給され、そして最初にベル2において、ベル2と共に回転する通気孔7を有する偏向板6と接触する。このとき偏向板6は軸方向に衝突するニス流を2つの部分流8、9に分断する。
【0044】
部分流8は偏向板6によって半径方向の側方に分岐し、作動中に発生する遠心力の結果、内部にあるオーバーフロー表面に沿って外側の噴霧縁3へ流れ、そしてここからニスが噴霧流4の形態で放出される。
【0045】
しかし、部分流9は偏向板6の通気孔7を介して最後まで軸方向に移動し、そして半径方向への遠心力の結果、偏向板6の表面上を外側へ流れるので、作動中には偏向板6の表面上の恒常的な流れも存在する。
【0046】
さらに、回転式噴霧器1は導風空気リング10を有し、これを介して2つの導風空気流11、12は噴霧流4を整形するため正面に放出される。
【0047】
外側の導風空気流12の放出用に、導風空気リング10は、ベル2の回転軸を中心とした所定の半径で導風空気リング10の周上に分散配置されている導風空気噴出口13の輪を有する。
【0048】
内側の導風空気流11の放出もまた、ベル2の回転軸を中心とした所定の半径で導風空気リング11に配置された導風空気噴出口14の輪を介して影響を受ける。
【0049】
導風空気噴出口13は、かすかに外側に傾斜して導風空気流12を放出し、このとき導風空気流12はベル2の回転軸と約15°の角度を有する。
【0050】
しかし、導風空気流11は導風空気噴出口14からベル2の回転軸とほぼ同軸方向に放出される。
【0051】
導風空気流11、12の両方は重なり合い、回転式噴霧器1の作動中に、ある流速とある流向を有する合成された導風空気強流となる。回転式噴霧器1の作動中、合成された導風空気強流の流向と流速は変動し得、このとき導風空気流は互いに独立した導風空気噴出口13、14によって調節される。そして、2つの導風空気流11、12は、塗布されるニスによることなしに、かつ、回転式噴霧器1の作動パラメーター(例えば、ベル回転速度)によることなしに噴霧流4が望ましい形状と幅に常に調節されるように、調節される。最適なニス塗布のために個別に要求される滴のスペクトルを獲得するためには、例えば、ニス粘度やニス表面張力のような個別のニスパラメーターが、対応して適応される回転式噴霧器1の作動パラメーター(例えば、速度)を必要とすることを、この調節は考慮に入れているので、滴のスペクトルは対応する運動エネルギーの分散を含む。
【0052】
加えて、回転式噴霧器1は、ベル2外側の表面上を辿る洗浄剤流15を用いた別の更なる外部洗浄を可能にする。そして、このようにして、固着する可能性のある余剰ニスをベル2から拭い去る。しかし、こうした外部洗浄は、最先端の技術から既知であるので更なる詳細な記述は省略する。
【0053】
図2は、ベル2と、ニス塗装ロボットのロボット腕軸において回転式噴霧器1を固定部する固定ピン16とを有する完全な回転式噴霧器1の断面図を示している。また、こうした噴霧器は、最先端の技術から既知であるので更なる詳細な記述は省略する。こうした理由で回転式噴霧器1の記述に関して繰り返しを避けるため、特許文献1を参照し、その内容は全面に渡って本件記載に組み込まれる。
【0054】
図3Aと3Bは可能な代替実施形態における、導風空気リング10の正面図と断面図をそれぞれ示している。こうした理由で繰り返しを避けるため、重要な点についてここでの記述を参照し、以下の同じ参照番号が対応する詳細に対して採用される。
【0055】
この実施形態例での導風空気リング10の具体的な特徴は、内側の導風空気噴出口14と外側の導風空気噴出口13がそれぞれ対応する導風空気流をベル2の回転軸との並行軸に流入することである。
【0056】
図4は導風空気リング10の更なる実施形態例を示している。これは上記の実施形態例と大部分が一致するので、繰り返しを避けるために、上記の記述を再び参照し、対応する詳細に対して同じ参照番号を上記と同様に採用する。
【0057】
この実施形態の具体的な特徴は、所定の直径17の導風空気リング10において、一方の導風空気流のための導風空気噴出口13と他方の導風空気流のための導風空気噴出口14とがそれぞれ対となって配置される点である。この場合、こうした導風空気噴出口13、14の多数の対が周囲に沿って分散して配置される。導風空気噴出口13、14から吹き付ける2つの導風空気流はここで相互に非依存的に制御されて重なり合い、特定の流速と特定の流向を有する合成された導風空気強流となる。
【0058】
図5は本発明に記載のごく簡略化したさらなる回転式噴霧器1の実施形態例を示している。これは上記の実施形態例と大部分が一致するので、繰り返しを避けるために、上記の記述を参照し、対応する詳細に対して同じ参照番号を以下と同様に採用する。
【0059】
この実施形態例では、内側の導風空気流11はベル2の回転軸と軸並行に流入する一方、対照的に、導風空気流12は鋭角に傾斜して外側に流入する。そして、2つの導風空気流11、12は重なり合い特定の合成された流向と対応する流速を有する合成された導風空気強流18となる。この場合、現在の条件に対応するよう合成された導風空気強流18の流向と流速を調節するために、2つの導風空気流11、12は互いに独立して調節される。
【0060】
図6は、本発明に記載の導風空気流11、12の調節を可能にする塗装器具の実施形態例をごく簡略な図式で示している。
【0061】
まず最初に、塗装器具は、回転式噴霧器1に導風空気流11を供給する導風空気供給19を有しており、このとき導風空気供給19は制御装置20によって導風空気供給19が所定の導風空気流QLL1を放出するように制御される。
【0062】
さらに、塗装器具は、回転式噴霧器1に導風空気流12を供給する導風空気供給21を有しており、このとき導風空気供給21は制御装置20によって回転式噴霧器1が所定の導風空気流QLL2を放出するように制御される。
【0063】
さらに、塗装器具は従来同様に回転式噴霧器1に所定のニス流QLACKを供給するニス供給22を有しており、このとき望ましいニス流QLACKは制御装置23によって既定状態にされる。
【0064】
さらに、塗装器具は高電圧源24を有しており、これはベル2から放出される噴霧流4を静電帯電させるための静電帯電電圧Uを回転式噴霧器1に供給する。噴霧流4の静電帯電は、最先端の技術から既知であるので更なる詳細な記述は省略する。
【0065】
さらに、制御装置23は回転速度値nをタービン制御25に送信する。このときタービン制御25は、ベル2が望ましい回転速度nで回転するように、対応するタービン空気流を回転式噴霧器1に放出する。タービン制御25は実際の回転速度が決定される際のフィードバックを用いた制御を備えており、それは制御のために、また必要であれば、回転速度の調節のために使用される。
【0066】
一部が回転式噴霧器1の操作変数であり、かつ、一部が塗布されるニスの性質を表すいくつかの塗布パラメーターによって、制御装置20は導風空気流QLL1、 QLL2の両方を算出する。このような方法で、制御装置は、塗布されるニス流と、静電帯電電圧Uと、ベル2の回転速度nとを回転式噴霧器1の操作変数として考慮に入れる。
【0067】
さらにまた、制御装置20は粘度ηと、表面張力γと、塗布されるニスの温度Tとを導風空気流QLL1、QLL2の算出の考慮に入れる。最後に、制御装置20は塗布されるニスの種類(BC:下地塗装剤、もしくは、CC:仕上げ塗装剤)も考慮に入れる。
【0068】
2つの導風空気流QLL1、QLL2の算出の際、2つの導風空気流11、12はそれぞれ付随して調節・配置され、かつ/または、計測される必要があるので、制御装置は、個別の塗布パラメーターに依存して、対応する運動エネルギーの分散を有する塗布される噴霧流4において異なる滴スペクトルが形成されることを考慮に入れる。
【0069】
さらに、塗装器具は、回転式噴霧器1が塗装剤塗布経路28を塗装されるべき部材上に載置するように、ロボット制御27によって制御され回転式噴霧器1を案内する多軸的ニス塗装ロボット26を有する。このとき前記塗布経路は図7Aと図7Bに示すように互いに平行に配置される。
【0070】
隣接する塗装剤塗布経路28は中心軸の間にそれぞれ、特定の塗布経路間隔dと特定の塗布経路幅bとを有し、これにより特定の塗布経路重複bUe(訳注:原文のウムラウトを代用表記した。以下同様)が結果として生じる。
【0071】
図7Aと図7Bの比較から、塗布経路幅bが変動し、これが噴霧流幅の変動に起因する一方で、噴霧流幅の変動は塗布パラメーターの変化に起因することは明らかである。
【0072】
しかし、塗布経路間隔dが一定である場合、塗布経路幅bの変動は望ましからざる塗布経路重複bUeの変動を惹き起こす。極端な場合、塗布経路幅bの減少は、塗布経路重複bUeが負の値をとり、隣接する塗装剤塗布経路28がもはや相互に連なって隣接することがないような事態を惹き起こしかねない。
【0073】
そこでまた、塗装器具は塗布パラメーターの変動を考慮に入れるための別の変形例を可能にする。本発明のこの変形例では、噴霧流幅は一定の所定の値に制御されず、制御機器は塗布パラメーターの変動を考慮に入れる。代わりに、この変形例では、塗布経路間隔dが付随して調節され、噴霧流幅の変動が許容され補正されることを想定する。
【0074】
こうした理由から、塗装器具は、注入口側にあり、塗布パラメーターη、γ、T、BC/CC、QLACK、n、Uを扱う制御装置29を有する。このとき、塗布経路間隔dが一定のとき、塗布パラメーターη、γ、T、BC/CC、QLACK、n、Uの変動が塗布経路重複bUeを変動させるので、塗布パラメーターη、γ、T、BC/CC、QLACK、n、Uは制御技術的意味において外乱変数である。
【0075】
こうした理由から、制御装置29は塗布経路重複bUeをある所定の定数値に制御し、このとき制御装置29は塗布経路間隔dを付随して調節し、これにより、ロボット制御27を付随して作動させる。
【0076】
例えば、塗布パラメーター(例えば、ニス粘度、ニス温度、噴霧器回転速度、等)の変動の結果、噴霧流幅が減少する場合、塗布経路間隔dが付随して減少するので、望ましい塗布経路重複bUeが維持される。
【0077】
例えば、塗布パラメーター(例えば、ニス粘度、ニス温度、噴霧器回転速度、等)の変動の結果、噴霧流幅が増加する場合、望ましい塗布経路重複bUeを維持するために、塗布経路間隔dが付随して拡大する。
【0078】
これに加えて、制御装置29は層の厚さを所定の値に制御する。このときニス塗装速度vは塗布パラメーターη、γ、T、BC/CC、QLACK、n、Uに依存して調節される。ニス塗装速度vはこの場合、塗装剤塗布経路28に沿った回転式噴霧器1の前送り速度である。このような方法で、層の厚さは、塗布パラメーターη、γ、T、BC/CC、QLACK、n、Uの変動に非依存的に一定の値に維持され、これが良好な塗装品質に寄与する。
【0079】
この場合、噴霧流幅のための望ましい設定値はニス塗装の種類に依存する。外部表面をニス塗装する際は、広い噴霧流幅が通常目的に適うので、ニス塗装は大表面モードで実行される一方、内部のニス塗装の際や小さな細部のニス塗装の際には、狭い噴霧流幅が目的に適う。
【0080】
本発明は上述の好ましい実施形態例に制限されない。さらに、本発明の概念を用いた様々な変形例と修正形態が有り得、これらも保護の範囲内にある。
【符号の説明】
【0081】
1 回転式噴霧器
2 ベル
3 噴霧縁
4 噴霧流
5 色管
6 偏向板
7 通気孔
8、9 部分流
10 導風空気リング
11 導風空気流
12 導風空気流
13 導風空気噴出口
14 導風空気噴出口
15 洗浄剤流
16 固定ピン
17 直径
18 導風空気強流
19 導風空気供給
20 制御装置
21 導風空気供給
22 ニス供給
23 制御装置
24 高電圧源
25 タービン制御
26 ニス塗装ロボット
27 ロボット制御
28 塗装剤塗布経路
29 制御装置
塗布経路幅
Ue 塗布経路重複
BC/CC 下地塗装剤/仕上げ塗装剤
d 塗布経路間隔
n 回転式噴霧器の回転速度
LACK ニス流
LL1 第1導風空気流
LL2 第2導風空気流
T ニス温度
U 回転式噴霧器の充電電圧
v ニス塗装速度
η 粘度
γ 表面張力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部材、特に車体部品の塗装用噴霧器(1)のための操業方法であって、
a)隣接する塗装剤塗布経路(28)間の、望ましい噴霧流幅と、望ましい塗布経路重複(bUe)との両方あるいは一方を既定値にする工程、
b)前記噴霧器(1)を介して塗装剤の噴霧流(4)を塗布する工程、
c)前記塗布する塗装剤の特性値(η、γ、T、BC/CC)あるいは前記噴霧器(1)の操作変数(QLACK、n、U)を表す少なくとも1つの塗布パラメーター(η、γ、T、BC/CC、QLACK、n、U)を決定する工程、
d)前記噴霧流(4)形成のための第1導風空気流(11)を放出する工程、かつ/あるいは、
e)前記隣接する塗装剤塗布経路(28)の中心軸間がある塗布経路間隔(d)を有し、かつ、互いに隣り合う塗装剤塗布経路(28)を部材に積層する工程、
を有する操業方法であって、
f)決定された塗布パラメーター(η、γ、T、BC/CC、QLACK、n、U)に依存して、第1導風空気流を調節することで、実際の噴霧流幅を前記既定値の望ましい噴霧流幅に制御する工程、かつ/あるいは
g)前記塗布パラメーター(η、γ、T、BC/CC、QLACK、n、U)に依存して、前記塗布経路間隔(d)を調節することと、ニス塗装速度を調節することとの両方どちらか一方で、実際の塗布経路重複を前記既定値の望ましい塗布経路重複(bUe)に制御する工程、
を特徴とする操業方法。
【請求項2】
a)塗布経路方向における前記噴霧器(1)の前送り速度を表す所定のニス速度(v)を有する前記塗装剤塗布経路(28)を積層する工程、と
b)前記決定された塗布パラメーター(η、γ、T、BC/CC、QLACK、n、U)に依存して、前記ニス速度(v)を変動させる工程、
を特徴とする、請求項1に記載の塗装方法。
【請求項3】
a)前記塗装剤塗布経路(28)のための望ましい層の厚さを既定値にする工程、
b)前記塗布パラメーター(η、γ、T、BC/CC、QLACK、n、U)に依存して、前記ニス速度(v)を調節することで、実際の層の厚さを前記既定値または望ましい層の厚さに制御する工程、
を特徴とする、請求項2に記載の塗装方法。
【請求項4】
a)前記噴霧流(4)の形成のための追加の第2導風空気流(12)を放出する工程、と
b)前記噴霧流幅の制御のために前記塗布パラメーター(η、γ、T、BC/CC、QLACK、n、U)に依存して、前記第2導風空気流(12)も変動させる工程、
を特徴とする、前記請求項のいずれか1項に記載の塗装方法。
【請求項5】
前記第1導風空気流(11)が前記第2導風空気流(12)とは別の方向に流入することを特徴とする、請求項4に記載の塗装方法。
【請求項6】
a)前記第1導風空気流(11)が前記第2導風空気流(12)と重なり合い、合成された導風空気強流(18)となること、
b)前記塗布パラメーター(η、γ、T、BC/CC、QLACK、n、U)に依存して、前記導風空気強流(18)の方向を変化させるように、前記第1導風空気流(11)と前記第2導風空気流(12)とが変動すること、
を特徴とする、請求項5に記載の塗装方法。
【請求項7】
a)前記塗布される塗装剤の粘度(η)、
b)前記塗布される塗装剤の表面張力(γ)、
c)前記噴霧器(1)の回転速度(n)、
d)前記塗装剤の静電帯電の電圧(U)、
e)前記塗布される塗装剤の温度(T)、
f)環境温度、
g)空気湿度、
h)塗装剤流(QLACK)、
i)前記塗布される塗装剤の種類(BC/CC)、
の変数うち1つが前記塗布パラメーター(η、γ、T、BC/CC、QLACK、n、U)であることを特徴とする、前記請求項のいずれか1項に記載の操業方法。
【請求項8】
前記第1導風空気流(11)と前記第2導風空気流(12)が、
a)共通空気供給から導風空気が供給されること、もしくは
b)それぞれの付属空気供給(19、21)から供給されること、
を特徴とする、前記請求項のいずれか1項に記載の操業方法。
【請求項9】
前記塗布パラメーター(η、γ、T、BC/CC、QLACK、n、U)に依存して、前記第1導風空気流(11)および/または前記第2導風空気流(12)および/または前記塗布経路間隔(d)の変動が自動的に実行されることを特徴とする、前記請求項のいずれか1項に記載の操業方法。
【請求項10】
塗装材料を使用した部材塗装、特に車体部品のニス塗装のための塗装器具であって、
a)塗装予定の前記部材に塗装剤の噴霧流(4)を塗布するための噴霧器(1)、
b)前記噴霧器(1)の起動のための制御機器(20、23、29)、
c)前記噴霧流(4)の形成のための第1導風空気流(11)の流入用の第1導風空気噴出口配置(14)、かつ/または、
d)前記噴霧器(1)が、隣接する塗装剤塗布経路(28)間で、ある塗布経路間隔(d)とある塗布経路重複(bUe)とにある塗装剤塗布経路(28)を前記部材に載置する、前記噴霧器(1)の移動実施のためのニス塗装ロボット(26)、
を有する塗装器具であり、
e)塗布パラメーター(η、γ、T、BC/CC、QLACK、n、U)に依存して前記第1導風空気流を調節することで、前記制御機器(20;23)が実際の噴霧流幅を規定の噴霧流幅に制御する、かつ/または、
f)前記塗布パラメーター(η、γ、T、BC/CC、QLACK、n、U)に依存して、前記塗布経路間隔(d)を調節することで前記制御機器(29)が実際の塗布経路重複(bUe)を既定の塗布経路重複(bUe)に制御すること、
を特徴とする塗装器具。
【請求項11】
前記噴霧気流幅を制御するために、前記塗布パラメーター(η、γ、T、BC/CC、QLACK、n、U)に依存して、前記制御機器(20)が第2導風空気流(12)も変動させる、噴霧流(4)の形成用の前記第2導風空気流(12)を流入するための第2導風空気噴出口配置(13)、 を特徴とする、請求項10に記載の塗装器具。
【請求項12】
一方の前記第1導風空気噴出口配置(14)と他方の前記第2導風空気噴出口配置(13)とが前記導風空気流(11、12)に異なる方向で流入することを特徴とする、請求項11に記載の塗装器具。
【請求項13】
a)前記第1導風空気流(11)が前記第2導風空気流(12)と重なり合い、合成された導風空気強流(18)となること、と
b)前記塗布パラメーター(η、γ、T、BC/CC、QLACK、n、U)に関連して前記導風空気強流(18)の方向が変化するように前記塗布パラメーター(η、γ、T、BC/CC、QLACK、n、U)に依存して、前記制御機器(20)が前記第1導風空気流(11)と前記第2導風空気流(12)を変動させること、
を特徴とする、請求項11または12に記載の塗装器具。
【請求項14】
a)前記2つの導風空気流の供給のための共通空気供給、もしくは
b)前記2つの導風空気流(11、12)を供給するためのそれぞれの付属空気供給(19、21)、
を特徴とする、請求項11から13のいずれか1項に記載の塗装器具。
【請求項15】
前記第1導風空気噴出口配置(14)と前記第2導風空気噴出口配置(13)との両方もしくは一方が、それぞれ、同心円状に配置されたいくつかの噴出し開口部を有することを特徴とする、請求項10から14のいずれか1項に記載の塗装器具。
【請求項16】
前記2つの導風空気噴出口配置(13、14)が、
a)異なる直径を有すること、もしくは
b)実質的に同じ直径を有すること、
を特徴とする、請求項15に記載の塗装器具。
【請求項17】
前記第1導風空気噴出口配置(14)と前記第2導風空気噴出口配置(13)の交互をなす噴出し開口部が外周上に分散して配置されることを特徴とする、請求項15または16に記載の塗装器具。
【請求項18】
a)前記第1導風空気噴出口配置(14)の前記噴出し開口部が外周方向へのねじれを有している、一方、
b)前記第2導風空気噴出口配置(13)の前記噴出し開口部が外周方向へのねじれを有していない、
ことを特徴とする、請求項10から17のいずれか1項に記載の塗装器具。
【請求項19】
外周方向へのねじれを有する前記噴出し開口部が、30°から75°の間のねじれ角を有することを特徴とする、請求項18に記載の塗装器具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate


【公表番号】特表2010−510055(P2010−510055A)
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−537493(P2009−537493)
【出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【国際出願番号】PCT/EP2007/008165
【国際公開番号】WO2008/061584
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(504389784)デュール システムズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (54)
【Fターム(参考)】