説明

噴霧装置及び水銀除去システム

【課題】液体流路内の液体を煙道内に噴霧させつつ、噴霧ノズルの液体流路内で発生した液漏れの検出が可能な噴霧装置及び水銀除去システムを提供する。
【解決手段】本発明に係る噴霧装置23Aは、液漏れ検出装置40A、40Bを有し、液漏れ検出装置40A、40Bは、内管29及び外管30とノズルヘッドとの連結部において内管29からのNH4Cl溶液の液漏れを検知する。液漏れ検出装置40Aは、内管29の連結部近傍の外周を囲うように設けられ、外管30の外部に導通する第1の導電体42Aと、第1の導電体42Aを流れる電流を検知する検出部43−1と、電源44−1とを有する。液漏れ検出装置40Bは、外管30の連結部近傍の内壁30aの底部に設けられ、外管30の外部に導通する第2の導電体42Bと、第2の導電体42Bを流れる電流を検知する検出部43−2とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴霧ノズルの液体流路管で発生した液漏れの検出が可能な噴霧装置及び水銀除去システムに関する。
【背景技術】
【0002】
石炭焚き排ガスや重質油を燃焼した際に生じる排ガス中には、煤塵、硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)のほか、金属水銀(Hg0)が含まれることがある。近年、NOxを還元する脱硝装置、およびアルカリ吸収液をSOx吸収剤とする湿式脱硫装置と組み合わせて、金属水銀(Hg0)を処理する方法や装置について様々な考案がなされてきた。
【0003】
排ガス中の金属水銀(Hg0)を処理する方法として、煙道中、還元脱硝装置の前流工程でNH4Cl溶液を液状で噴霧して煙道内に供給する方法が提案されている(例えば、特許文献1、2参照。)。煙道内にNH4Cl溶液を液状で噴霧すると、NH4Clは解離して、アンモニウム(NH3)ガス、塩化水素(HCl)ガスを生成する。NH3ガスは還元剤として作用し、HClガスは水銀塩素化剤として作用する。即ち、還元脱硝装置に充填されている脱硝触媒上で、NH3は下記式(1)のように排ガス中のNOxと還元反応が進行し、HClは下記式(2)のように排ガス中のHg0と酸化反応が進行する。脱硝触媒上でNH3を還元脱硝すると共に、金属水銀(Hg0)を酸化し、水溶性の塩化水銀(HgCl2)とした後、後流側に設置した湿式の脱硫装置でHgCl2を水に溶解させて排ガス中に含まれる水銀を除去する。
4NO+4NH3+O2 → 4N2+6H2O・・・(1)
Hg0+1/2O2+2HCl → HgCl2+H2O・・・(2)
【0004】
NH4Cl溶液は、二重管である吹込み管を介して二流体ノズルから液状で煙道内に噴霧される。吹込み管の内管にはNH4Cl溶液を流通させ、内管と外管の間の空間には空気を流通させ、先端の二流体ノズルからNH4Cl溶液を噴霧すると共に、空気を噴射して、NH4Cl溶液を空気と混合させてNH4Cl溶液を煙道内に噴霧している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−142602号公報
【特許文献2】特開2009−202107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、二重管の内管の内側は低温(例えば、20℃程度)のNH4Cl溶液が流れ、二重管の外管の外側は高温(例えば、350℃程度)の排ガスが流れているため、内管と外管の間、二重管と二流体ノズルとの間には、温度差が発生し易い上、同時に熱応力が発生し易い。そのため、二重管と二流体ノズルとの間の溶接部に破損が生じやすく、内管を流れるNH4Cl溶液が液漏れする虞がある、という問題があった。
【0007】
二重管の内管内に流す水溶液としては、NH4Cl溶液単独の他に、NH4Cl溶液とHCl溶液、NH3水などを混合した混合物も使用される。これらの液体は金属と接触すると腐食を生じるため、内管を流れるNH4Cl溶液などの水溶液が液漏れして耐食性の十分でない外管に付着すると、外管表面を浸食する虞があった。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、二重管の内管内の水溶液を煙道内に噴霧させつつ、二重管の内管で発生した水溶液の液漏れを検出することが可能な噴霧装置及び水銀除去システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明者らは噴霧装置及び水銀除去システムについて鋭意研究をした。その結果、二重管の中でも、二重管の内管と二流体ノズルとの連結部で特に液漏れが生じやすいことから、二重管の内管と二流体ノズルとの連結部近傍の内管の外周に通電可能な部材を設けることにより、内管での液漏れを検知することができると共に、安定してNH4Cl溶液を噴霧することができることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものである。
【0010】
本発明の第1の発明は、ボイラから排出される排ガスが送給される煙道に設けられ、前記排ガス中に気化した際に塩化水素とアンモニアとを生成する還元酸化助剤を含む溶液を噴霧する噴霧装置であり、前記溶液を送給する内管と、該内管の外側に設けられ、前記内管との空間内に気体を送給する外管と、前記溶液及び前記気体を噴射するノズルヘッドと、前記内管及び前記外管と前記ノズルヘッドとの連結部において前記内管から前記溶液が液漏れしていることを検出する液漏れ検出手段とを有することを特徴とする噴霧装置である。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、前記液漏れ検出手段が、前記内管の前記連結部近傍の外周に設けられ、前記外管の外部に導通する第1の導電体と、前記外管の外側に設けられ、前記第1の導電体を流れる電流を検知する第1の検出部とを有し、前記第1の導電体が、裸線とその周囲を覆う絶縁体とで構成され、前記内管の外周を覆う部分を裸線とする噴霧装置である。
【0012】
第3の発明は、第1又は2の発明において、前記液漏れ検出手段が、前記外管の前記連結部近傍の内壁の底部に設けられ、前記外管の外部に導通する第2の導電体と、前記外管の外側に設けられ、前記第2の導電体を流れる電流を検知する第2の検出部とを有し、前記第2の導電体が、前記外管の連結部近傍の内壁の底部に設ける部分を裸線とする噴霧装置である。
【0013】
第4の発明は、第1乃至3の何れか1つの発明において、前記液漏れ検出手段が、前記内管の前記連結部近傍の外周に設けられ、前記外管の外部に導通する第3の導電体と、前記外管の外側に設けられ、前記第3の導電体を流れる電流を検知する第3の検出部とを有し、前記第3の導電体が、裸線とその周囲を覆う絶縁体とで構成され、前記内管の外周を覆う部分に裸線及び絶縁体が欠落した欠損部を有する噴霧装置である。
【0014】
第5の発明は、第1乃至4の何れか1つの発明において、前記液漏れ検出手段が、前記外管の前記連結部近傍の内壁の底部に設けられ、前記外管の外部に導通する第4の導電体と、前記外管の外側に設けられ、前記第4の導電体を流れる電流を検知する第4の検出部とを有し、前記第4の導電体が、前記外管の連結部近傍の内壁の底部に設ける部分に裸線及び絶縁体が欠落した欠損部を有する噴霧装置である。
【0015】
第6の発明は、第2又は3の発明において、前記第1の導電体、前記第2の導電体の何れか一方又は両方が、前記内管及び外管の鉛直方向に複数設けられる噴霧装置である。
【0016】
第7の発明は、第4又は5の発明において、前記第3の導電体、前記第4の導電体の何れか一方又は両方が、前記内管及び外管の鉛直方向に複数設けられる噴霧装置である。
【0017】
第8の発明は、第1乃至7の何れか一つの発明において、前記内管及び前記外管が、前記煙道の壁面に斜めに設けられる噴霧装置である。
【0018】
第9の発明は、第1乃至8の何れか一つの発明において、前記内管に前記溶液を供給する溶液供給管と、前記溶液供給管内を流れる前記溶液の流量を検知する流量測定部と、前記溶液供給管内を流れる前記溶液の圧力を検知する圧力測定部とを有し、前記流量測定部、前記圧力測定部の何れか一方又は両方で測定された前記溶液の流量、圧力の何れか一方又は両方の値に基づいて前記内管に供給される前記溶液の流量を制御する噴霧装置である。
【0019】
第10の発明は、第9の発明において、前記溶液供給管に水を供給する水供給手段を有することを特徴とする噴霧装置である。
【0020】
第11の発明は、ボイラからの排ガス中に含まれる水銀を除去する水銀除去システムであり、前記ボイラの煙道内に、気化した際に塩化水素とアンモニアとを生成する還元酸化助剤を含む溶液を噴霧する還元酸化助剤供給手段と、前記排ガス中の窒素酸化物をアンモニアで還元すると共に、塩化水素共存下で水銀を酸化する脱硝触媒を有する還元脱硝装置と、該還元脱硝装置において酸化された水銀をアルカリ吸収液を用いて除去する湿式脱硫装置とを有し、前記還元酸化助剤供給手段として、第1乃至10の何れかの一つの発明の噴霧装置を用いることを特徴とする水銀除去システムである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、二重管の内管内の水溶液を煙道内に噴霧させつつ、二重管の内管で発生した水溶液の液漏れを検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態に係る噴霧装置を適用した水銀除去システムを示す概略図である。
【図2】図2は、噴霧装置の構成を簡略に示す図である。
【図3】図3は、図2中A−A方向から見た時の噴霧装置の構成を簡略に示す図である。
【図4】図4は、第1の導電体及び第2の導電体の構成を簡略に示す図である。
【図5】図5は、NH4Cl溶液の漏洩がない場合とある場合の電流の流れを模式的に示す図である。
【図6】図6は、噴霧装置を煙道に対して傾けて配置した状態を示す図である。
【図7】図7は、噴霧装置を煙道に対して傾けて配置した状態を示す図である。
【図8】図8は、本発明の第2の実施形態に係る噴霧装置を図2のA−A方向から見た時の構成を示す図である。
【図9】図9は、NH4Cl溶液の漏洩がない場合とある場合の電流の流れを模式的に示す図である。
【図10】図10は、本発明の第3の実施形態に係る噴霧装置を図2のA−A方向から見た時の構成を示す図である。
【図11】図11は、内管からのNH4Cl溶液の漏出量が少ないときの外管内の状態を示す図である。
【図12】図12は、内管からのNH4Cl溶液の漏出量が多いときの外管内の状態を示す図である。
【図13】図13は、本発明の第4の実施形態に係る噴霧装置の構成を簡略に示す図である。
【図14】図14は、本発明の第5の実施形態に係る噴霧装置の構成を簡略に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を好適に実施するための形態(以下、実施形態という。)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に記載した内容により限定されるものではない。また、以下に記載した下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、以下に記載した下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0024】
[第1の実施形態]
本発明による第1の実施形態に係る噴霧装置を適用した水銀除去システムについて、図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る噴霧装置を適用した水銀除去システムを示す概略図である。図1に示すように、本実施形態に係る噴霧装置を適用した水銀(Hg)除去システム10は、ボイラ11からの排ガス12中に含まれるHgを除去するHg除去システムであり、ボイラ11の下流の煙道13内に、還元酸化助剤として塩化アンモニウム(NH4Cl)を含むNH4Cl溶液14を噴霧する塩化アンモニウム(NH4Cl)溶液供給手段(還元酸化助剤供給手段)16と、排ガス12中のNOxをNH3ガスで還元すると共に、HClガス共存下でHg0を酸化する脱硝触媒を有する還元脱硝装置(還元脱硝手段)17と、脱硝された排ガス12を熱交換する熱交換器(エアヒータ)18と、脱硝された排ガス12中の煤塵を除去する集塵器(ESP:Electrostatic Precipitator)19と、還元脱硝装置17において酸化されたHgを石灰石膏スラリー(アルカリ吸収液)20を用いて除去する湿式脱硫装置21とを有するものである。
【0025】
尚、本実施形態に係るHg除去システム10においては、還元酸化助剤としてNH4Clを用いているが、本実施形態はこれに限定されるものではなく、還元酸化助剤は気化した際に酸化性ガスと還元性ガスとを生成するものであれば用いることができる。また、本実施形態においては、還元酸化助剤とは、酸化性ガス共存下で水銀(Hg)を酸化するのに用いられる酸化助剤と、還元性ガスによりNOxを還元する還元剤として機能するものをいう。本実施形態では、酸化性ガスとしてHClガスが用いられ、還元性ガスとしてNH3ガスが用いられている。
【0026】
ボイラ11から排出される排ガス12には、NH4Cl溶液供給手段16からNH4Cl溶液14が供給される。NH4Cl溶液供給手段16は、排ガス12中に含まれるHg0を酸化するための噴霧装置23Aと、NH4Cl溶液14を液体状で噴霧装置23Aに供給する塩化アンモニウム(NH4Cl)溶液供給管24と、煙道13内にNH4Cl溶液14を圧縮して噴霧させる空気25を噴霧装置23Aに供給する空気供給管26とを有する。
【0027】
噴霧装置23Aは、煙道13に設けられ、NH4Cl溶液14と空気25とを煙道13内に同時に噴射する二流体ノズルである。噴霧装置23Aは、吹込み管27とノズルヘッド28とから構成されている。図2は、噴霧装置23Aの構成を簡略に示す図である。図2に示すように、吹込み管27は、煙道13内に挿入されており、内管29と外管30とからなる二重管構造に形成されている。内管29は、NH4Cl溶液14を送給するために用いる管である。外管30は、内管29の外周を覆うように設けられ、内管29との空間内に空気25を送給するために用いる管である。
【0028】
ノズルヘッド28は、図2に示すように、吹込み管27の先端部に設けられ、ノズルホルダ31とノズルチップ32とで構成されている。ノズルホルダ31は、吹込み管27と連結し、内管29内を流れるNH4Cl溶液14を送給するNH4Cl溶液供給口33aと、外管30内を流れる空気25を送給する空気供給口34aとを有する。空気供給口34aは、ノズルヘッド28のノズル孔28aから噴霧されるNH4Cl溶液14の噴霧方向に対してNH4Cl溶液供給口33aの周囲に円周状に形成されている。ノズルチップ32は、NH4Cl溶液供給口33a及び空気供給口34aに対応してNH4Cl溶液供給口33b及び空気供給口34bを有する。NH4Cl溶液供給口33bからNH4Cl溶液14を煙道13内に噴霧すると共に、空気供給口34bから空気25を煙道13内に噴射する。
【0029】
煙道13には、吹込み管27を挿脱するための固定筒35が設けられ、固定筒35に設けたフランジ35aと、吹込み管27に一体に設けたフランジ27aとは、ボルト36により締結され、フランジ35aとフランジ27aとが固定されている。ボルト36を外し、フランジ27a、35aを分離することで、噴霧装置23Aを煙道13から取り外して、新しい噴霧装置23Aに容易に交換することができる。
【0030】
NH4Cl溶液14は、NH4Cl溶液タンク38からNH4Cl溶液供給管24を介して吹込み管27に送給される。NH4Cl溶液供給管24から供給されるNH4Cl溶液14の流量は調節弁V1により調整される。NH4Cl溶液14はNH4Cl溶液タンク38内で所定濃度に調整される。NH4Cl溶液14は、塩化アンモニウム(NH4Cl)粉末を水に溶解させて生成することができる。NH4Cl粉末、水の各々の供給量を調整することで所定濃度のNH4Cl溶液14を調整することができる。NH4Cl溶液14は、HCl溶液とNH3溶液とを所定濃度の割合で混合させて生成するようにしてもよい。
【0031】
空気25は、空気供給部39から空気供給管26を介して吹込み管27に送給され、ノズルヘッド28からNH4Cl溶液14を噴霧する際の圧縮用の空気として用いられる。空気25の気流によりNH4Cl溶液14を微粒化することで、ノズルヘッド28から噴射されるNH4Cl溶液14を煙道13内に微細な液滴として噴霧することができる。空気供給管26から供給される空気25の流量は調節弁V2により調整される。空気供給管26から供給される空気25の流量により、ノズルヘッド28のノズル孔28aから噴霧されるNH4Cl溶液14の液滴の大きさを調整することができる。また、ノズルヘッド28から噴射される空気25の流量は、例えば気水比100以上10000以下(体積比)とするのが好ましい。これは、ノズルヘッド28から噴射されるNH4Cl溶液14を微細な液滴として煙道13内に噴霧させるようにするためである。
【0032】
空気25は内管29と外管30との間の空間を流れるため、空気25はNH4Cl溶液14の冷却用として働き、煙道13内の排ガス12の熱が空気25によりNH4Cl溶液14に伝達されるのを抑制することができる。NH4Cl溶液14が排ガス12の熱により加熱されるのを抑制することができるため、NH4Cl溶液14が噴射される直前まで液体状態を維持することができる。
【0033】
ノズルヘッド28から煙道13内に噴霧されたNH4Cl溶液14の液滴は、排ガス12の高温雰囲気温度により蒸発して気化され、微細なNH4Clの固体粒子を生成し、下記式(3)のように、HClとNH3とに分解し、昇華する。よって、噴霧装置23Aから噴霧されたNH4Cl溶液14は分解されて、HCl、NH3を生じ、NH3ガス、HClガスを煙道13内に供給することができる。
NH4Cl → NH3+HCl ・・・(3)
【0034】
ノズルヘッド28から噴霧されるNH4Cl溶液14の液滴径は、平均して1nm以上100μm以下の微細な液滴とするのが好ましい。平均して1nm以上100μm以下の微細な液滴を生成することで、噴霧されたNH4Cl溶液14の液滴から生じるNH4Clの固体粒子を排ガス12中に短い滞留時間でNH3、HClに分解し、昇華させることができる。これにより、NH4Cl溶液14を予め加熱しておく必要がないため、煙道13、ノズルヘッド28の低級化、腐食を防止することができる。
【0035】
NH4Cl溶液14の濃度は、例えば液滴の温度が20℃の場合、20wt%以上30wt%以下とするのが好ましい。表1は、NH4Cl溶液14の液滴の温度と、溶解度、濃度との関係を示す。表1に示すように、NH4Cl溶液14の溶解度は液滴の温度に応じておおよそ決まっているためである。
【0036】
【表1】

【0037】
煙道13内の排ガス12の温度は、ボイラ11の燃焼条件にもよるが、例えば320℃以上420℃以下が好ましく、320℃以上380℃以下がより好ましく、350℃以上380℃以下が更に好ましい。これはこれらの温度帯において脱硝触媒上でNOxの脱硝反応と、Hgの酸化反応とを同時に効率的に生じさせることができるためである。
【0038】
噴霧装置23Aは、内管29及び外管30とノズルヘッド28との連結部41において内管29からNH4Cl溶液14が液漏れしていることを検出するための液漏れ検出装置(液漏れ検出手段)を有している。図3は、図2中A−A方向から見た時の噴霧装置の構成を簡略に示す図である。図3に示すように、液漏れ検出装置40Aは、内管29の連結部41近傍の外周を囲うように設けられ、外管30の外部に導通する第1の導電体42Aと、外管30の外側に設けられ、第1の導電体42Aを流れる電流を検知する検出部43−1と、電源44−1とを有する。液漏れ検出装置40Bは、外管30の連結部41近傍の内壁30aの底部に設けられ、外管30の外部に導通する第2の導電体42Bと、外管30の外側に設けられ、第2の導電体42Bを流れる電流を検知する検出部43−2と、電源44−2とを有する。第1の導電体42A及び第2の導電体42Bは、煙道13の外部に延びており、検出部43−1、43−2と、電源44−1、44−2とは、煙道13の外側に設けられている。
【0039】
外管30には、内管29の周囲に第1の導電体42Aを保持するための図示しない保持部材が外管30の内壁の周方向に所定間隔を持って複数設けられている。前記保持部材としては、例えば、外管30の内壁から内管29に向かって延び、その先端部に第1の導電体42Aを通すためのリング状部材を有するものが用いられる。複数の保持部材の各々の前記リング状部材の穴に第1の導電体42Aを通すことで、前記保持部材は、第1の導電体42Aを内管29の外周を囲うように外管30内に保持することができる。また、前記保持部材の形状は、特に限定されるものではなく、第1の導電体42Aが内管29の周囲を囲うように外管30内で保持することができるものであればよい。
【0040】
図4は、第1の導電体42A及び第2の導電体42Bの構成を簡略に示す図である。図4に示すように、第1の導電体42A及び第2の導電体42Bは、裸線46a、46bとその周囲を覆う絶縁体47a、47bとで構成されている。第1の導電体42Aは、内管29の外周を覆う部分を裸線46aにしている。第2の導電体42Bは、外管30の連結部41近傍の内壁30aの底部に設けられている部分を裸線46bにしている。
【0041】
裸線46a、46bの材料は、NH4Cl溶液14のような腐食性の水溶液が付着して腐食することで、容易に切断されるような材料であれば特に限定されるものではなく、導線に一般に使用される材料が用いられる。裸線46a、46bの材料として、具体的には、例えば、Fe、Cu、Al及びこれらの合金等が挙げられる。裸線46a、46bは、腐食による断線をより早めるため、裸線46a、46bの径を細く(例えば0.1mmφ以下)した芯線を用いることが好ましい。また、腐食以外の耐久性を考慮して、裸線46a、46bは細線を束ねたヨリ線や網状、帯状などにした線としてもよい。絶縁体47a、47bの材料は、電気を通さない部材であれば特に限定されるものではない。
【0042】
図5は、NH4Cl溶液14の漏洩がない場合とある場合の電流の流れを模式的に示す図である。図5に示すように、NH4Cl溶液14のような腐食性の水溶液が、内管29から漏洩していない場合には、第1の導電体42A及び第2の導電体42Bには電流が正常に流れる(図5中、左図参照)。NH4Cl溶液14が内管29から漏出し、第1の導電体42Aの裸線46aや第2の導電体42Bの裸線46bに付着すると、裸線46a、46bがNH4Cl溶液14により腐食して切断されるため、第1の導電体42A及び第2の導電体42Bの電流の流れが切断される(図5中、右図参照)。
【0043】
よって、液漏れ検出装置40A、40Bは、第1の導電体42A及び第2の導電体42Bの電流の流れを、検出部43−1、43−2で監視することで、内管29と連結部41との間からNH4Cl溶液14が漏出した場合など、内管29からのNH4Cl溶液14の液漏れを検出することができる。これにより、外管30の腐食を防止することができるため、噴霧装置23Aを安定して用いることができる。
【0044】
噴霧装置23Aは、煙道13に対して水平に設ける場合に限定されるものではなく、図6に示すように、噴霧装置23Aを煙道13に対して任意の角度で斜めに設けるようにしてもよい。このとき、内管29から漏出したNH4Cl溶液14は、連結部41近傍の領域に液溜りAを生じやすくなる。このため、第1の導電体42A及び第2の導電体42Bを、連結部41近傍のように、液漏れし易い部位に設けることで、より効率良く内管29からのNH4Cl溶液14の漏出を検出することができる。
【0045】
また、図7に示すように、噴霧装置23Aは、煙道13に対してノズルヘッド28の先端側を任意の角度で上方向に斜めに設けるようにしてもよい。このとき、噴霧装置23Aは、ノズルホルダ31のNH4Cl溶液供給口33aと空気供給口34aとをノズルヘッド28から煙道13の中央部分に向けてNH4Cl溶液14を噴霧できるように形成する。また、外管30の内側には、内管29から漏出したNH4Cl溶液14を堰き止めるための堰部45を設けると共に、外管30の内壁30aの堰部45近傍に裸線46bを設けるようにしておく。外管30の内側に堰部30aを設け、その堰部45近傍に裸線46bを設けることで、噴霧装置23Aを煙道13に対してノズルヘッド28の先端側を任意の角度で上方向に斜めに設けた場合でも内管29から漏出したNH4Cl溶液14の液溜りAができ、内管29からのNH4Cl溶液14の漏出を検出することができる。
【0046】
液漏れ検出装置40A及び液漏れ検出装置40Bは、第1の導電体42A及び第2の導電体42Bの裸線46a、46bを連結部41近傍に設け、第1の導電体42A及び第2の導電体42Bにより連結部41近傍で、内管29から液漏れしたNH4Cl溶液14を検出するようにしているが、本実施形態は、これに限定されるものではなく、連結部41から所定間隔離れた位置など任意の位置に裸線46a、46bを設け、内管29から液漏れしたNH4Cl溶液14を検出するようにしてもよい。
【0047】
また、図1に示すように、排ガス12は、NH4Cl溶液供給手段16から煙道13内に噴霧されたNH4Cl溶液14の液滴から生じたHClガス、NH3ガスを含んだ後、還元脱硝装置17に送給される。還元脱硝装置17では、NH4Clが分解して生じたNH3ガスはNOxの還元脱硝用に用いられ、HClガスはHgの酸化用に用いられ、NOx及びHgを排ガス12から除去する。
【0048】
即ち、還元脱硝装置17に充填されている脱硝触媒層48に充填されている脱硝触媒上でNH3ガスは、下記式(4)のようにNOxを還元脱硝し、HClガスは、下記式(5)のようにHgを水銀酸化する。
4NO+4NH3+O2 → 4N2+6H2O ・・・(4)
Hg+1/2O2+2HCl → HgCl2+H2O ・・・(5)
【0049】
還元脱硝装置17は、脱硝触媒層48を1つ備えているが、本実施形態はこれに限定されるものではなく、還元脱硝装置17は、脱硝性能に応じて脱硝触媒層48の数を適宜変更することができる。
【0050】
排ガス12は、還元脱硝装置17において排ガス12中のNOxの還元とHgの酸化がされた後、エアヒータ18、集塵器(ESP)19を通過して湿式脱硫装置21に送給される。また、エアヒータ18と集塵器(ESP)19との間には熱回収器を設けるようにしてもよい。
【0051】
湿式脱硫装置21では、排ガス12を装置本体49内の底部の壁面側から送給し、アルカリ吸収液として用いられる石灰石膏スラリー20を吸収液送給ライン50により装置本体49内に供給し、ノズル51より塔頂部側に向かって噴流させる。装置本体49内の底部側から上昇してくる排ガス12と、ノズル51から噴流して流下する石灰石膏スラリー20とを対向して気液接触させ、排ガス12中のHgCl、硫黄酸化物(SOx)は石灰石膏スラリー20中に吸収され、排ガス12から分離、除去され、排ガス12は浄化される。石灰石膏スラリー20により浄化された排ガス12は、浄化ガス52として塔頂部側より排出され、煙突53から系外に排出される。
【0052】
排ガス12の脱硫に用いられる石灰石膏スラリー20は、水に石灰石粉末を溶解させた石灰スラリCaCO3と、石灰と排ガス12中のSOxが反応し更に酸化させた石膏スラリCaSO4と、水とを混合させて生成される。石灰石膏スラリー20は、例えば湿式脱硫装置21の装置本体49の塔底部54に貯留した液を揚水したものが用いられる。装置本体49内で排ガス12中のSOxは石灰石膏スラリー20と下記式(6)のような反応を生じる。
CaCO3+SO2+0.5H2O → CaSO3・0.5H2O+CO2 ・・・(6)
【0053】
一方、排ガス12中のSOxを吸収した石灰石膏スラリー20は、装置本体49内に供給される水55と混合され、装置本体49の塔底部54に供給される空気56により酸化処理される。このとき、装置本体49内を流下した石灰石膏スラリー20は、水55、空気56と下記式(7)のような反応を生じる。
CaSO3・0.5H2O+0.5O2+1.5H2O → CaSO4・2H2O ・・・(7)
【0054】
湿式脱硫装置21の塔底部54に貯留される脱硫に用いた石灰石膏スラリー20は酸化処理された後、塔底部54より抜き出され、脱水器57に送給された後、塩化水銀(HgCl)を含んだ脱水ケーキ(石膏)58として系外に排出される。脱水器57として、例えばベルトフィルターなどが用いられる。また、脱水したろ液(脱水ろ液)は、例えば脱水ろ液中の懸濁物、重金属の除去、脱水ろ液のpH調整などの排水処理が行われる。この排水処理された脱水ろ液の一部は湿式脱硫装置21に返送され、脱水ろ液の他の一部は排水として処理される。
【0055】
アルカリ吸収液として石灰石膏スラリー20を用いているが、排ガス12中のHgClを吸収できるものであれば他の溶液をアルカリ吸収液として用いることができる。
【0056】
石灰石膏スラリー20はノズル51より塔頂部側に向かって噴流させる方法に限定されるものではなく、例えばノズル51から排ガス12と対向するように流下させてもよい。
【0057】
噴霧装置23Aの上流側には、排ガス12の流量を計測する流量計61が設けられている。流量計61により排ガス12の流量が測定される。流量計61により測定された排ガス12の流量の値は制御装置62に送られ、排ガス12の流量の値に基づいてノズルヘッド28から噴射するNH4Cl溶液14の流量、角度、初速度などを調整することができる。
【0058】
還元脱硝装置17の出口側には、NOx濃度計63が設けられている。NOx濃度計63で測定された排ガス12中のNOx濃度の値は、制御装置62に伝達される。制御装置62はNOx濃度計63で測定された排ガス12中のNOx濃度の値から還元脱硝装置17におけるNOxの還元割合を確認することができる。よって、NOx濃度計63で測定された排ガス12中のNOx濃度の値から噴霧装置23Aから噴霧されるNH4Cl溶液14のNH4Cl濃度、供給量を調整すると共に、排ガス12中に別途供給されるNH3水の供給量を調整し、NH3の混合比率を調整することができる。これにより、還元脱硝装置17において排ガス12のNOxを還元し、還元脱硝装置17が所定の脱硝性能を満足するようにすることができる。
【0059】
煙道13には、ボイラ11から排出される排ガス12中のHg含有量を測定する水銀(Hg)濃度計64−1、64−2が設けられている。Hg濃度計64−1は、ボイラ11とノズルヘッド28との間の煙道13に設けられ、Hg濃度計64−2は、還元脱硝装置17と熱交換器18との間に設けられる。Hg濃度計64−1、64−2で測定された排ガス12中のHg濃度の値は、制御装置62に伝達される。制御装置62は、Hg濃度計64−1、64−2で測定された排ガス12中のHg濃度の値から排ガス12中に含まれるHgの含有量を確認することができる。具体的には、Hg濃度計64−1、64−2は、金属水銀Hg0と、酸化水銀Hg2+と、全水銀(金属水銀Hg0と酸化水銀Hg2+とを含む水銀量)とを各々任意に測定することができる。Hg濃度計64−2で全水銀に対する酸化水銀Hg2+の比率を把握することで、排ガス12中に含まれるHgの水銀酸化率を求めることができる。Hg濃度計64−1、64−2で測定された排ガス12中のHg濃度の値と水銀酸化率からNH4Cl溶液14のNH4Cl濃度、供給流量を制御することで、ノズルヘッド28から噴霧されるNH4Cl溶液14のNH4Cl濃度、供給流量を所定の脱硝性能を満足すると共に、Hgの酸化性能を維持するようにすることができる。
【0060】
湿式脱硫装置21の塔底部54には、石灰石膏スラリー20の酸化還元電位を測定する酸化還元電位測定制御装置(ORPコントローラ)66が設けられている。このORPコントローラ66により石灰石膏スラリー20の酸化還元電位の値を測定する。測定された酸化還元電位の値に基づいて湿式脱硫装置21の塔底部54に供給される空気56の供給量を調整する。塔底部54に供給される空気56の供給量を調整することで、湿式脱硫装置21の塔底部54に貯留する石灰石膏スラリー20内に捕集されている酸化されたHgが還元されるのを防止し、煙突53より放散されるのを防止することができる。
【0061】
湿式脱硫装置21内の石灰石膏スラリー20の酸化還元電位は、石灰石膏スラリー20からのHgの再飛散を防止するためには、例えば0mV以上+600mV以下の範囲内にあることが好ましい。これは酸化還元電位が上記範囲内であれば石灰石膏スラリー20中にHgCl2として捕集されたHgが安定な領域であり、大気中への再飛散を防ぐことができるためである。
【0062】
本実施形態に係るHg除去システム10においては、還元酸化助剤として、NH4Clを用いているが、NH4Cl以外の臭化アンモニウム(NH4Br)、ヨウ化アンモニウム(NH4I)などのハロゲン化アンモニウムを還元酸化助剤として用い、水に溶解した溶液を用いてもよい。
【0063】
このように、本実施形態に係る噴霧装置を適用したHg除去システム10によれば、噴霧装置23Aの内管29内のNH4Cl溶液14の液漏れを検出することができるため、煙道13内にはNH4Cl溶液14を適正な量で噴霧することができ、還元脱硝装置17においてHgの除去性能およびNOxの還元性能を安定して維持することができる。また、噴霧装置23Aの外管30など噴霧設備の腐食を防止することができるので、安定して運転することが可能となると共に、噴霧装置23Aなどの設備、メンテナンスに要する費用の低減を図ることが可能となる。
【0064】
[第2の実施形態]
本発明による第2の実施形態に係る噴霧装置を適用したHg除去システムについて、図面を参照して説明する。本実施形態に係る噴霧装置を適用したHg除去システム及び噴霧装置のNH4Cl溶液を噴霧する構成は、図1に示す本発明の第1の実施形態に係るHg除去システム及び図2に示す噴霧装置の構成と同様であるため、本実施形態においては、噴霧装置の液漏れ検出装置の構成を示す図のみを用いて説明する。図8は、本発明の第2の実施形態に係る噴霧装置を図2のA−A方向から見た時の構成を示す図である。なお、本発明の第1の実施形態に係る噴霧装置を適用したHg除去システムの構成と重複する部材については、同一符号を付してその説明は省略する。
【0065】
図8に示すように、本実施形態に係る噴霧装置23Bは、図3に示す液漏れ検出装置40A、40Bに代えて、液漏れ検出装置40C、40Dを有するものである。液漏れ検出装置40Cは、内管29の連結部41近傍の外周を囲うように設けられ、外管30の外部に導通する第3の導電体42Cと、外管30の外側に設けられ、第3の導電体42Cを流れる電流を検知する検出部43−3と、電源44−3とを有する。液漏れ検出装置40Dは、外管30の連結部41近傍の内壁30aの底部に設けられ、外管30の外部に導通する第4の導電体42Dと、外管30の外側に設けられ、第4の導電体42Dを流れる電流を検知する検出部43−4と、電源44−4とを有する。第3の導電体42C及び第4の導電体42Dは、煙道13の外部に延びており、検出部43−3、43−4と、電源44−3、44−4とは煙道13の外部に設けられている。
【0066】
第3の導電体42C及び第4の導電体42Dは、第1の導電体42A及び第2の導電体42Bと同様、裸線46a、46bとその周囲を覆う絶縁体47a、47bとで構成されている。第3の導電体42Cは、内管29の外周を覆う部分に裸線46a及び絶縁体47aが一部欠落した欠損部71aを有する。第4の導電体42Dは、外管30の連結部41近傍の内壁30aの底部に設けられている部分に裸線46b及び絶縁体47bが一部欠落した欠損部71bを有する。
【0067】
検出部43−3、43−4は、通電時のNH4Cl溶液14の電気抵抗、電気伝導率を測定する。NH4Cl溶液14の濃度が20%程度とした時、NH4Cl溶液14の電気抵抗、電気伝導率は、水の電気抵抗、電気伝導率よりも著しく高い。このため、NH4Cl溶液14の濃度が20%程度の時の電気抵抗又は電気伝導率と測定値との関係を事前に求めておき、測定された値と比較することで、検出部43−3、43−4は、NH4Cl溶液14の漏出を検出することができる。
【0068】
図9は、NH4Cl溶液14の漏洩がない場合とある場合の電流の流れを模式的に示す図である。図9に示すように、内管29と連結部41との間からNH4Cl溶液14の漏洩がない場合には、第3の導電体42C及び第4の導電体42Dの一部が欠損部71a、71bにより欠損しているため、第3の導電体42C及び第4の導電体42Dでの電流の流れは切断されている(図9中、左図参照)。内管29と連結部41との間からNH4Cl溶液14が漏洩して、第3の導電体42C及び第4の導電体42DにNH4Cl溶液14が付着すると、漏洩したNH4Cl溶液14により欠損部71a、71bでの通電が補われる。このため、第3の導電体42C及び第4の導電体42Dには各々電流が流れ、検出部43−3、43−4で電流を検出することができる(図9中、右図参照)。
【0069】
よって、検出部43−3、43−4で第3の導電体42C及び第4の導電体42Dに電流が流れたことを検出することで、内管29と連結部41との間からNH4Cl溶液14が漏洩したことを検出することができる。
【0070】
本実施形態では、液漏れ検出装置40C、40Dを用いて説明したが、本実施形態は、これに限定されるものではなく、図3に示すような液漏れ検出装置40A、40Bと併用してもよい。液漏れ検出装置40Aから40Dを同時に用いることで、NH4Cl溶液14の漏出を2通りの手段で検知することができるため、NH4Cl溶液14が漏出したことを誤って認識する負担を低減でき、更に高い精度でNH4Cl溶液14の漏出を検出することができる。
【0071】
[第3の実施形態]
本発明による第3の実施形態に係る噴霧装置を適用したHg除去システムについて、図面を参照して説明する。本実施形態に係る噴霧装置を適用したHg除去システム及び噴霧装置のNH4Cl溶液を噴霧する構成は、図1に示す本発明の第1の実施形態に係るHg除去システム及び図2に示す噴霧装置の構成と同様であるため、本実施形態においては、噴霧装置の液漏れ検出装置の構成を示す図のみを用いて説明する。図10は、本発明の第3の実施形態に係る噴霧装置を図2のA−A方向から見た時の構成を示す図である。なお、本発明の第1の実施形態に係る噴霧装置を適用したHg除去システムの構成と重複する部材については、同一符号を付してその説明は省略する。
【0072】
図10に示すように、本実施形態に係る噴霧装置23Cは、図8に示す第4の導電体42Dを、鉛直方向に2つ設けてなるものである。第4の導電体42D−1、42D−2を、内管29及び外管30の鉛直方向に設けることで、内管29からのNH4Cl溶液14の漏出量を把握することができる。
【0073】
図11は、内管29からのNH4Cl溶液14の漏出量が少ないときの外管30内の状態を示す図であり、図12は、内管29からのNH4Cl溶液14の漏出量が多いときの外管30内の状態を示す図である。図11に示すように、漏洩したNH4Cl溶液14により第4の導電体42D−2の欠損部71bでの通電が補われることで、第4の導電体42D−2で電流が流れたことを確認することができる。このとき、第4の導電体42D−1では、電流が流れたことは確認されない。よって、第4の導電体42D−2でのみ電流が流れたことを確認することで、NH4Cl溶液14の漏出量が少ないことを確認することができる。図12に示すように、漏洩したNH4Cl溶液14により第4の導電体42D−1の欠損部71aと第4の導電体42D−2の欠損部71bの両方の通電が補われることで、第4の導電体42D−1、42D−2で電流が流れたことを確認することができる。第4の導電体42D−1、42D−2の両方で電流が流れたことを確認することで、NH4Cl溶液14の漏出量が多いことを確認することができる。
【0074】
NH4Cl溶液14の漏出を検出した場合、図11に示すように、NH4Cl溶液14の漏出量が少ない場合には、新しい内管29の準備ができ次第、交換する。このとき、図2に示すように、吹込み管27は、ボルト36を外し、フランジ27a、35aを分離することで容易に分離して交換することができる。
【0075】
図12に示すように、NH4Cl溶液14の漏出量が多い場合には、内管29及び外管30へのNH4Cl溶液14の供給を直ちに停止し、上述と同様に、新しい内管29と交換する。
【0076】
よって、本実施形態に係る噴霧装置23Cによれば、第4の導電体42Dを、鉛直方向に複数設けているので、内管29から漏出したNH4Cl溶液14の漏出量を把握することができる。このため、NH4Cl溶液14の漏出量に応じて内管29の交換時期を適切に行うことができる。
【0077】
本実施形態では、第4の導電体42Dを2つ設けるようにしているが、本実施形態はこれに限定されるものではなく、内管29と外管30との大きさに応じて適宜任意の数を設けるようにしてもよい。
【0078】
本実施形態では、第4の導電体42Dを用いているが、本実施形態はこれに限定されるものではなく、第1の導電体42A、第2の導電体42B、第3の導電体42Cの少なくとも一つ以上を用いるようにしてもよい。
【0079】
[第4の実施形態]
本発明による第4の実施形態に係る噴霧装置を適用したHg除去システムについて、図面を参照して説明する。本実施形態に係る噴霧装置を適用したHg除去システムは、図1に示す本発明の第1の実施形態に係るHg除去システムの構成と同様であるため、本実施形態においては、噴霧装置の構成を示す図のみを用いて説明する。図13は、本発明の第4の実施形態に係る噴霧装置の構成を簡略に示す図である。なお、本発明の第1の実施形態に係る噴霧装置を適用したHg除去システムの構成と重複する部材については、同一符号を付してその説明は省略する。
【0080】
図13に示すように、本実施形態に係る噴霧装置を適用したHg除去システムは、煙道13に4つの噴霧装置23A−1〜23A−4を設け、内管29にNH4Cl溶液14を供給するNH4Cl溶液供給管24−1〜24−4と、NH4Cl溶液供給管24−1〜24−4内を流れるNH4Cl溶液14の流量を検知する流量測定部81−1〜81−4と、NH4Cl溶液供給管24−1〜24−4内を流れるNH4Cl溶液14の圧力を検知する圧力測定部82−1〜82−4とを有するものである。NH4Cl溶液供給管24−1〜24−4には、NH4Cl溶液14の流量を調整する調節弁V11〜V14が設けられている。
【0081】
NH4Cl溶液14は、NH4Cl溶液供給管24を介して集水管83に送給され、集水管83でNH4Cl溶液供給管24−1〜24−4に分岐されて4つの吹込み管27−1〜27−4に各々送給される。NH4Cl溶液14中のNH4Clの析出やNH4Cl溶液14中の不純物(砂、鉄粉等)により内管29−1〜29−4内が閉塞すると、NH4Cl溶液14の流量の低下や圧力の増加を生じる虞がある。これに対し、本実施形態では、流量測定部81−1〜81−4や圧力測定部82−1〜82−4で測定されたNH4Cl溶液14の流量の変化や圧力の変化を検出することで、内管29−1〜29−4の閉塞を検出することができる。
【0082】
本実施形態では、煙道13に噴霧装置23Aを4つ設けているが、本実施形態はこれに限定されるものではなく、煙道13には、必要に応じて噴霧装置23Aを適宜任意の数設けるようにしてもよい。
【0083】
本実施形態では、噴霧装置23Aを用いているが、本実施形態はこれに限定されるものではなく、噴霧装置23B又は噴霧装置23Cを用いてもよいし、噴霧装置23A〜23Cの二種類以上を併用してもよい。
【0084】
本実施形態では、流量測定部81−1〜81−4及び圧力測定部82−1〜82−4を用いているが、本実施形態はこれに限定されるものではなく、流量測定部81−1〜81−4又は圧力測定部82−1〜82−4の何れか一方のみを用いるようにしてもよい。
【0085】
[第5の実施形態]
本発明による第5の実施形態に係る噴霧装置を適用したHg除去システムについて、図面を参照して説明する。本実施形態に係る噴霧装置を適用したHg除去システムは、図1に示す本発明の第1の実施形態に係るHg除去システムの構成と同様であるため、本実施形態においては、噴霧装置の構成を示す図のみを用いて説明する。図14は、本発明の第5の実施形態に係る噴霧装置の構成を簡略に示す図である。なお、本発明の第1の実施形態に係る噴霧装置を適用したHg除去システムの構成と重複する部材については、同一符号を付してその説明は省略する。
【0086】
図14に示すように、本実施形態に係る噴霧装置を適用したHg除去システムは、図13に示す第4の実施形態に係る噴霧装置を適用したHg除去システムにおいて、NH4Cl溶液供給管24に水84を供給する水供給手段85を有するものである。NH4Cl溶液14の流量の低下や圧力の増加を生じた場合、水供給部86からNH4Cl溶液供給管24に水84を供給することで、内管29−1〜29−4内の析出物を溶解して排出することができ、NH4Cl溶液14の流量の低下や圧力の増加を低減することができる。これにより内管29−1〜29−4の閉塞を解消することができる。また、ノズルヘッド28−1〜28−4の各々の先端部分を水で洗浄することにより、先端部分への灰の付着を抑制することができる。
【0087】
本実施形態では、水供給手段85は、水84をNH4Cl溶液供給管24に供給するようにしているが、本実施形態はこれに限定されるものではなく、水84をNH4Cl溶液供給管24−1〜24−4に各々供給するようにしてよい。
【産業上の利用可能性】
【0088】
以上のように、本発明に係る噴霧装置は、二流体ノズルの内管を流れる液体の液漏れを検出することができるので、排ガス中のHgを除去する水銀除去システムの噴霧装置に用いるのに適している。
【符号の説明】
【0089】
10 Hg除去システム
11 ボイラ
12 排ガス
13 煙道
14 塩化アンモニウム(NH4Cl)溶液
16 塩化アンモニウム(NH4Cl)溶液供給手段(還元酸化助剤供給手段)
17 還元脱硝装置(還元脱硝手段)
18 熱交換器(エアヒータ)
19 集塵器
20 石灰石膏スラリー
21 湿式脱硫装置
23A〜23D、23A−1〜23A−4 噴霧装置
24、24−1〜24−4 塩化アンモニウム(NH4Cl)溶液供給管
25、56 空気
26 空気供給管
27 吹込み管
27a、35a フランジ
28、28−1〜28−4 ノズルヘッド
29 内管
30 外管
31 ノズルホルダ
32 ノズルチップ
33a、33b NH4Cl溶液供給口
34a、34b 空気供給口
35 固定筒
36 ボルト
38 塩化アンモニウム(NH4Cl)溶液タンク
39 空気供給部
40A、40B 液漏れ検出装置(液漏れ検出手段)
41 連結部
42A 第1の導電体
42B 第2の導電体
42C 第3の導電体
42D 第4の導電体
43−1〜43−4 検出部
44−1〜44−4 電源
45 堰部
46a、46b 裸線
47a、47b 絶縁体
48 脱硝触媒層
49 装置本体
50 吸収液送給ライン
51 ノズル
52 浄化ガス
53 煙突
54 塔底部
55、84 水
57 脱水器
58 石膏
61 流量計
62 制御装置
63 NOx濃度計
64−1、64−2 水銀(Hg)濃度計
66 酸化還元電位測定制御装置(ORPコントローラ)
71a、71b 欠損部
81−1〜81−4 流量測定部
82−1〜82−4 圧力測定部
83 集水管
85 水供給手段
V1、V2、V11〜V14 調節弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラから排出される排ガスが送給される煙道に設けられ、前記排ガス中に気化した際に塩化水素とアンモニアとを生成する還元酸化助剤を含む溶液を噴霧する噴霧装置であり、
前記溶液を送給する内管と、
該内管の外側に設けられ、前記内管との空間内に気体を送給する外管と、
前記溶液及び前記気体を噴射するノズルヘッドと、
前記内管及び前記外管と前記ノズルヘッドとの連結部において前記内管から前記溶液が液漏れしていることを検出する液漏れ検出手段と、
を有することを特徴とする噴霧装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記液漏れ検出手段が、前記内管の前記連結部近傍の外周に設けられ、前記外管の外部に導通する第1の導電体と、
前記外管の外側に設けられ、前記第1の導電体を流れる電流を検知する第1の検出部とを有し、
前記第1の導電体が、裸線とその周囲を覆う絶縁体とで構成され、前記内管の外周を覆う部分を裸線とする噴霧装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記液漏れ検出手段が、前記外管の前記連結部近傍の内壁の底部に設けられ、前記外管の外部に導通する第2の導電体と、
前記外管の外側に設けられ、前記第2の導電体を流れる電流を検知する第2の検出部とを有し、
前記第2の導電体が、前記外管の連結部近傍の内壁の底部に設ける部分を裸線とする噴霧装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1つにおいて、
前記液漏れ検出手段が、前記内管の前記連結部近傍の外周に設けられ、前記外管の外部に導通する第3の導電体と、
前記外管の外側に設けられ、前記第3の導電体を流れる電流を検知する第3の検出部とを有し、
前記第3の導電体が、裸線とその周囲を覆う絶縁体とで構成され、前記内管の外周を覆う部分に裸線及び絶縁体が欠落した欠損部を有する噴霧装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1つにおいて、
前記液漏れ検出手段が、前記外管の前記連結部近傍の内壁の底部に設けられ、前記外管の外部に導通する第4の導電体と、
前記外管の外側に設けられ、前記第4の導電体を流れる電流を検知する第4の検出部とを有し、
前記第4の導電体が、前記外管の連結部近傍の内壁の底部に設ける部分に裸線及び絶縁体が欠落した欠損部を有する噴霧装置。
【請求項6】
請求項2又は3において、
前記第1の導電体、前記第2の導電体の何れか一方又は両方が、前記内管及び外管の鉛直方向に複数設けられる噴霧装置。
【請求項7】
請求項4又は5において、
前記第3の導電体、前記第4の導電体の何れか一方又は両方が、前記内管及び外管の鉛直方向に複数設けられる噴霧装置。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1つにおいて、
前記内管及び前記外管が、前記煙道の壁面に斜めに設けられる噴霧装置。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか1つにおいて、
前記内管に前記溶液を供給する溶液供給管と、
前記溶液供給管内を流れる前記溶液の流量を検知する流量測定部と、
前記溶液供給管内を流れる前記溶液の圧力を検知する圧力測定部とを有し、
前記流量測定部、前記圧力測定部の何れか一方又は両方で測定された前記溶液の流量、圧力の何れか一方又は両方の値に基づいて前記内管に供給される前記溶液の流量を制御する噴霧装置。
【請求項10】
請求項9において、
前記溶液供給管に水を供給する水供給手段を有することを特徴とする噴霧装置。
【請求項11】
ボイラからの排ガス中に含まれる水銀を除去する水銀除去システムであり、
前記ボイラの煙道内に、気化した際に塩化水素とアンモニアとを生成する還元酸化助剤を含む溶液を噴霧する還元酸化助剤供給手段と、
前記排ガス中の窒素酸化物をアンモニアで還元すると共に、塩化水素共存下で水銀を酸化する脱硝触媒を有する還元脱硝装置と、
該還元脱硝装置において酸化された水銀をアルカリ吸収液を用いて除去する湿式脱硫装置とを有し、
前記還元酸化助剤供給手段として、請求項1乃至10の何れか一つの噴霧装置を用いることを特徴とする水銀除去システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−5978(P2012−5978A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−145298(P2010−145298)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】