説明

回動体装置及び収納装置

【課題】蓋体の回動速度をきめ細かに調整可能な収納装置を提供する。
【解決手段】コンソール本体12の一側にダンパ装置43を備える。ダンパ装置43は、カム部材52と、ダンパ51とプレート53とを備える。ダンパ51は、コンソール本体12側に位置する。カム部材52は、カム溝52bを備え、蓋体13の開閉に連動して回動する。プレート53は、カム部材52に一端側を連結し、他端側をカム溝52bに摺動可能に連結する。カム部材52の回動によりプレート53の他端側のカム溝52bに対する摺動位置が変化してプレート53が適宜回動する。プレート53の回動に対して、ダンパ51により回動速度に応じた負荷を与える。設定したカム溝52bの形状に応じて蓋体13の回動速度をきめ細かに調整できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、車両のセンタコンソールの一部を構成する回動体装置及びこれを備えた収納装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、車両の運転席と助手席との間に位置するセンタコンソールに、小物入れ、あるいはカップホルダなどの収容部を備えた本体であるコンソール本体が配置されており、このコンソール本体に、肘掛部となる被開閉部としての蓋体が回動可能に取り付けられている。そして、この蓋体の回動により、収納部が開閉されるように構成されている。
【0003】
このような構成においては、蓋体の回動速度を調整するためのダンパ装置が備えられている。このダンパ装置は、蓋体の回動速度調整によって、蓋体の開閉の利便性の向上、あるいは高級感の向上を可能とするものである。このダンパ装置は、蓋体の回動軸と一体に回動するギヤと歯合されるギヤ部を備え蓋体の回動に対して負荷を与えるダンパであるロータリダンパと、一端がコンソール本体側に接続され他端が蓋体側に接続されたコイルスプリングとを有している。そして、コイルスプリングは、蓋体が所定の回動角度となった状態で全長が最短となるように配置されていることにより、この所定の回動角度よりも開き始め側の角度での蓋体の回動速度を相対的に大きくし、所定の回動角度よりも開き終わり側の角度での蓋体の回動速度を相対的に減少させる(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−56332号公報(第5−8頁、図2−4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のダンパ装置では、1つのコイルスプリングによって蓋体の回動速度を調整しているので、例えば蓋体の回動速度を、蓋体の開閉範囲中できめ細かに調整することができないという問題点を有している。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、回動体の回動速度をきめ細かに調整可能な回動体装置及びこれを備えた収納装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の回動体装置は、本体と、この本体に回動可能に軸支される回動体と、この回動体を制動するダンパ装置とを具備し、前記ダンパ装置は、前記本体側に一端側が回動可能に軸支された連結部と、この連結部の他端側が摺動可能に連結され、前記回動体の回動に伴って回動するカム溝と、前記本体側に位置し、前記連結部の回動に対して、この連結部の回動速度に応じた負荷を与えるダンパとを備えたものである。
【0008】
請求項2記載の回動体装置は、請求項1記載の回動体装置において、本体は、被開閉部を備え、回動体は、前記被開閉部を閉じる位置から開く位置まで前記本体に回動可能に軸支され、ダンパ装置は、前記回動体が前記被開閉部を閉じる位置と開く位置との近傍で残りの他の位置よりも前記回動体の回動速度が遅くなるように前記回動体の回動速度を調整するものである。
【0009】
請求項3記載の回動体装置は、請求項1記載の回動体装置において、ダンパ装置は、複数設けられ、それぞれのダンパにより連結部の回動速度に応じて与える負荷の特性が互いに異なっているものである。
【0010】
請求項4記載の回動体装置は、請求項3記載の回動体装置において、本体は、被開閉部を備え、回動体は、前記被開閉部を閉じる位置から開く位置まで前記本体に回動可能に軸支され、一のダンパ装置は、前記回動体が前記被開閉部を閉じる位置側でこの回動体を制動し、他のダンパ装置は、前記回動体が前記被開閉部を開く位置側でこの回動体を制動するものである。
【0011】
請求項5記載の収納装置は、請求項1ないし4いずれか一記載の回動体装置を備え、本体は、被開閉部としての開口部、及びこの開口部に連通する収容部を有するコンソール本体であり、回動体は、前記開口部を開閉する蓋体であるものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の回動体装置によれば、本体側に一端側が回動可能に軸支された連結部の他端側を回動体の回動に伴って回動するカム溝に摺動可能に連結することで、カム溝の回動により連結部の他端側のカム溝に対する摺動位置が変化して連結部が適宜回動し、この回動に対して、本体側に位置するダンパにより回動速度に応じた負荷を与えることで、設定されたカム溝の形状に応じて回動体の回動速度をきめ細かに調整できる。
【0013】
請求項2記載の回動体装置によれば、請求項1記載の回動体装置の効果に加えて、ダンパ装置により、回動体が被開閉部を閉じる位置と開く位置との近傍で残りの他の位置よりも回動体の回動速度が遅くなるように回動体の回動速度を調整することで、回動体の開き動作を、開始時及び終了時に相対的に遅くすることができ、高級感をより向上できる。
【0014】
請求項3記載の回動体装置によれば、請求項1記載の回動体装置の効果に加えて、複数のダンパ装置のそれぞれのダンパにより連結部の回動速度に応じて与える負荷の特性を互いに異ならせることで、回動体をよりきめ細かく制動できる。
【0015】
請求項4記載の回動体装置によれば、請求項3記載の回動体装置の効果に加えて、一のダンパ装置により回動体が被開閉部を閉じる位置側でこの回動体を制動し、他のダンパ装置により回動体が被開閉部を開く位置側でこの回動体を制動することで、開き始め及び開き終わりのそれぞれの位置で回動体を制動できる。
【0016】
請求項5記載の収納装置によれば、請求項1ないし4いずれか一記載の回動体装置を備えることで、収容部の開口部を開閉する蓋体の回動速度をきめ細かに調整可能な高品質の収納装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施の形態の収納装置の回動体及びダンパ装置の動作を示す説明図であり、(a)は回動体の全閉状態の一部を省略した縦断面図、(b)は回動体の開状態と閉状態との中間の状態の一部を省略した縦断面図、(c)は回動体の全開状態の一部を省略した縦断面図である。
【図2】同上収納装置の一部を省略した横断面図である。
【図3】同上収納装置の一部を省略した中央縦断面図である。
【図4】同上収納装置を模式的に示す分解斜視図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態の収納装置のダンパ装置の動作を示す説明図であり、(a)及び(b)は一のダンパ装置の有効区間での動作を示す説明図、(c)は各ダンパ装置の無効区間での動作を示す説明図、(d)及び(e)は他のダンパ装置の有効区間での動作を示す説明図である。
【図6】同上収納装置のダンパ装置の分解斜視図である。
【図7】同上収納装置の斜視図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態の収納装置のダンパ装置を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の第1の実施の形態の構成を図1ないし図4を参照して説明する。
【0019】
図1ないし図4において、10は回動体装置としての収納装置であるカップホルダで、このカップホルダ10は、例えば自動車の車両の運転席と助手席との間に位置するセンタコンソールに備えられる車両用収納ボックスを構成している。そして、このカップホルダ10は、自動車の車体側に取り付けられる本体としてのコンソール本体12と、このコンソール本体12に回動可能に軸支される回動体としての蓋体13とを備えている。なお、以下、前後方向、両側方向及び上下方向などの方向は、カップホルダ10を車体に取り付けた状態を基準として説明する。
【0020】
コンソール本体12は、図4に示すように、例えば合成樹脂により箱状に形成されたケーシング部21と、このケーシング部21内に形成された収容部22に位置する区画部としてのカップホルダ部23と、蓋体13により開閉される横長の四角形状の被開閉部としての開口部24を備えケーシング部21の上方に取り付けられる天板部としての化粧板25とを有している。
【0021】
ケーシング部21は、収容部22に連通する四角形状のケーシング開口部27が上部に開口形成されている。そして、このケーシング部21は、平板状の底部31と、この底部31の前端部から上方に立ち上げられた前板部32と、底部31の両側から上方に立ち上げられた側板部33,33と、底部31の後側から上方に立ち上げられた後板部34と、この後板部34よりも後方で底部31の後端部から上方に立ち上げられた支持板部35とを備えているとともに、ケーシング開口部27の前縁部、すなわち前板部32の上端部に、前側フランジ部36が形成され、支持板部35の上端部に、後側フランジ部37が形成されている。さらに、前板部32の左右幅方向の中心領域の上部には、前側フランジ部36に亘って、切欠部38が形成されている。また、底部31、前板部32、側板部33,33及び後板部34は、収容部22を囲んで連続している。さらに後板部34と支持板部35とは互いに前後方向に離間されており、これら後板部34と支持板部35との間には、蓋体13の一部が開口部24を開いた状態で挿入されて収納される回動体収納部としての蓋体収納部39が区画されている。
【0022】
側板部33,33には、図2に示すように、蓋体13を回動可能に軸支するためのボス状の軸支部41,41がそれぞれ後側寄りの位置で側方に突出して形成されている。また、一方の(左側)の側板部33には、軸支部41の下方の位置に、ダンパ装置43を取り付けるためのダンパ装置取付部であるボス状のカム部軸支部44が側方に突出して形成されている。さらに、他方の(右側)の側板部33には、軸支部41の下方の位置に、回動付勢手段(蓋体付勢手段)としてのトーションスプリング46を取り付けるための付勢手段取付部であるボス状のスプリング取付部47が側方に突出して形成されている。
【0023】
ダンパ装置43は、蓋体13を制動する、回動速度減速機構とも言うべきもので、図2及び図4に示すように、ダンパ51と、カム部軸支部44に回動可能に軸支されたカム部材52と、これらダンパ51とカム部材52とを連結する連結部としての連結体であるプレート53とを備えている。
【0024】
ダンパ51は、いわゆるロータリダンパ、あるいは揺動ダンパなどであり、略円柱状に形成され、ケーシング部21の一方の側板部33に形成された取付孔部55,55への取付用の取付片部51a,51aが上下に突出しているとともに、回動軸51bが側方に突出している。そして、このダンパ51は、回動軸51bの回動に対して、この回動軸51bの回動速度に応じた負荷(制動トルク)を与えるように構成されている。
【0025】
カム部材52は、略円形状に形成されており、中心部に、カム部軸支部44が挿入される取付用の孔部52aが形成されているとともに、この孔部52aの周囲に、制御溝であるカム溝52bとギヤ部52cとがそれぞれ形成されている。そして、このカム部材52は、孔部52aに挿入されたカム部軸支部44の先端にワッシャ57がねじ58により固定されることで、カム部軸支部44に対して抜け止めされている。
【0026】
カム溝52bは、カム部材52を一側面(左側面)から他側面(右側面)まで貫通して形成されている。また、このカム溝52bは、図1(a)ないし図1(c)に示すように、例えばカム部材52の中心軸に直交する仮想線L1に対して線対称に形成されており、一端部がカム部材52の外周近傍からカム部材52の周方向に沿って徐々にカム部材52の中心軸側へと傾斜する第1の有効区間としての一方の弱有効区間52b1と、この一方の弱有効区間52b1の他端側に連続し、カム部材52の中心軸方向へと径方向に沿って一方の弱有効区間52b1よりも大きく傾斜した第2の有効区間としての一方の強有効区間52b2と、この一方の強有効区間52b2に連続しカム部材52の孔部52aの周囲に、カム部材52の周方向に沿って円弧状に形成され仮想線L1と中心位置で交差する無効区間としての中間区間52b3と、この中間区間52b3に連続し一方の強有効区間52b2と仮想線L1に対して線対称な第3の有効区間としての他方の強有効区間52b4と、この他方の強有効区間52b4に連続し一方の弱有効区間52b1と仮想線L1に対して線対称な第4の有効区間としての他方の弱有効区間52b5とを有している。
【0027】
すなわち、各弱有効区間52b1,52b5では、カム溝52bはカム部材52の周方向、すなわちカム部材52の回動方向に沿う成分が多く、各強有効区間52b2,52b4では、カム溝52bはカム部材52の径方向、すなわちカム部材52の回動方向に対して直交(交差)する方向に沿う成分が多く形成されており、かつ、中間区間52b3では、カム溝52bはカム部材52の周方向に沿う成分が殆どとなっている。
【0028】
また、図2に示すように、ギヤ部52cは、カム部材52の他側面、すなわちケーシング部21側に、カム部材52と同軸状に一体に形成されており、周囲にギヤが形成されて、蓋体13側と歯合されている。このため、カム部材52は、蓋体13の回動に伴って回動するように構成されている。
【0029】
また、図1及び図4に示すように、プレート53は、長尺板状に形成されており、一端側に、ダンパ51の回動軸51bが挿入接続される接続孔部53aが形成され、他端側に、カム溝52bに挿入係合される円柱状の係合部であるピン部53bが突出して形成されている。このため、ピン部53bとカム溝52bとの嵌合位置に応じて、プレート53がダンパ51の回動軸51bと一体的に回動するように構成されている。さらに、このプレート53の接続孔部53aとピン部53bとの間の距離は、ダンパ51の回動軸51bからカム部材52の孔部52aの縁部までの距離よりも長く設定されている。したがって、プレート53は、カム部材52に形成された任意のカム溝52bに沿ってピン部53bが摺動可能となっている。
【0030】
また、図2に示すトーションスプリング46は、蓋体13を開く方向へと付勢するもので、一端側がスプリング取付部47にワッシャ61及びねじ62を介して固定され、他端側が蓋体13に対してワッシャ63及びねじ64を介して固定されている。
【0031】
図4に示すように、カップホルダ部23は、例えば合成樹脂などにより箱状に形成されており、飲料カップなどを収容するための平面視四角形状のホルダ部23a,23bを左右両側に有し、これらホルダ部23a,23bが、連通部23cを介して互いに連通するように形成されている。また、このカップホルダ部23は、収容部22に嵌合して収容されている。なお、このカップホルダ部23は、ケーシング部21と別体として成形しケーシング部21に一体的に接合してもよく、ケーシング部21に対して着脱可能としてもよく、また、ケーシング部21と一体成形してもよい。
【0032】
化粧板25は、カップホルダ10の意匠面を構成するもので、例えば合成樹脂などにより略板状に形成され、ケーシング部21の上方に取り付けられている。また、この化粧板25の開口部24の前方には、蓋体13の開閉操作用のラッチ機構67の一部を収容するための収容凹部68が形成されている。
【0033】
ラッチ機構67は、任意の構成とすることが可能であるが、ここでは、例えば収容凹部68から化粧板25の上方に露出する操作体71と、この操作体71の操作によって前後に進退するラッチ体72と、このラッチ体72を後方へと付勢するコイルスプリング73とを有している。
【0034】
操作体71は、図3及び図4に示すように、収容凹部68の前側に形成された切欠孔部68aに係合されて抜け止めされる爪部71aが前部に突出して形成されているとともに、ラッチ体72と接触する傾斜面部71bを有する突出部71cが下部に突出して形成されている。そして、傾斜面部71bは、下側へと後方に傾斜して形成されている。
【0035】
また、ラッチ体72は、側面視でL字状に屈曲したラッチ体本体72aと、このラッチ体本体72aのL字状に屈曲された後部の上端から後方へと突出する係止爪部72bとを一体に備えており、ラッチ体本体72aの前側に操作体71の突出部71cの下端側が挿入される四角形状のラッチ体開口72cが形成され、このラッチ体開口72cの前側の縁部が、操作体71の傾斜面部71bと面接触する傾斜状の接触面部72dとなっている。この接触面部72dは、後方へと下側に傾斜して形成されている。このため、操作体71を下方へと押し込んだ際に、傾斜面部71bと接触面部72dとの接触によって、ラッチ体72がコイルスプリング73の付勢に抗して前方へと移動するように構成されている。
【0036】
コイルスプリング73は、収容凹部68の後部と、この後部の後方に位置するラッチ体72の後部との間に配置されている。
【0037】
収容凹部68は、ケーシング部21の切欠部38に嵌合している。また、この収容凹部68の前部には、上記切欠孔部68aが形成され、収容凹部68の底部には、ラッチ体72のラッチ体開口72cに挿入された操作体71の突出部71cの下端側が突出可能な底孔部68bが形成され、かつ、収容凹部68の後部には、ラッチ体72のラッチ体本体72aの前側が後方から挿入された挿入孔部68cが形成されている。
【0038】
また、図1ないし図4に示すように、蓋体13は、リッドとも呼ばれるもので、全体としては平面視四角形状の板状をなす回動体本体としての蓋体本体76と、この蓋体本体76の両側から下方に向けて突出するアーム部である接続部77,77とを備えている。
【0039】
蓋体本体76は、合成樹脂により形成されたリッドアウタとも呼ばれる表板部81とリッドインナとも呼ばれる裏板部82とを接合して構成されている。また、この蓋体本体76は、開口部24を開閉可能な大きさに形成されている。また、蓋体本体76の左右幅方向の中央部の前端部には、図3に示すように、表板部81と裏板部82との間に、ラッチ機構67のラッチ体72の係止爪部72bが挿入係合される被係合部83が形成されている。
【0040】
図2に示す各接続部77は、蓋体本体76の後部寄りの位置に、表板部81と一体に形成されている。また、各接続部77には、ケーシング部21の各軸支部41に軸支される丸孔状の軸支孔85が形成されている。そして、蓋体13は、各軸支孔85に挿入された各軸支部41の先端にそれぞれワッシャ86がねじ87により固定されることで、軸支部41に対して抜け止めされている。さらに、一方の(左側の)接続部77の下端部には、円弧状の回動体接続部としての蓋体接続部である接続ギヤ部88が一体に形成されている。そして、接続ギヤ部88がカム部材52のギヤ部52cに歯合されていることにより、蓋体13とカム部材52との回動が互いに連動するように構成されている。また、他方の(右側の)接続部77の下端部の側部には、トーションスプリング46の他端側が上記ワッシャ63及びねじ64を介して固定されるボス状のスプリング固定部89が突出して形成されている。
【0041】
次に、蓋体13の開閉動作を説明する。
【0042】
コンソール本体12に回動可能に取り付けられた蓋体13は、図1(a)に示す閉じた状態、すなわち、蓋体13の蓋体本体76が開口部24を閉塞した第1の位置では、図3に示すように、ラッチ機構67のラッチ体72の係止爪部72bが蓋体13の被係合部83に挿入係合されて、蓋体13が閉じた状態で保持されている。この閉じた状態では、図1(a)に示すように、ダンパ装置43のプレート53のピン部53bが、カム部材52のカム溝52bの一方の弱有効区間52b1の端部に位置しているとともに、図2に示すトーションスプリング46が蓋体13を開く方向へと付勢した状態で保持される。
【0043】
この閉じた状態から、乗員が図3に示すラッチ機構67の操作体71を下方へと押圧操作すると、この操作体71の突出部71cの傾斜面部71bとラッチ体72のラッチ体開口72cの接触面部72dとの接触によって、ラッチ体72がコイルスプリング73の付勢に抗して前方へと移動し、ラッチ体72の係止爪部72bの蓋体13の被係合部83への係合が外れ、図2に示すトーションスプリング46の付勢により、蓋体13の前側が上方へと回動する。
【0044】
このとき、図1(a)から図1(b)に示すように、蓋体13の回動に伴い、蓋体13の接続ギヤ部88(図2)とカム部材52のギヤ部52c(図2)との歯合によって、カム部材52が、図中の反時計回り方向へと、接続ギヤ部88とギヤ部52cとのギヤ比に対応した角度、回動することにより、カム部材52のカム溝52bに係合したプレート53のピン部53bが一方の弱有効区間52b1から一方の強有効区間52b2へと相対的に摺動する。
【0045】
ここで、ピン部53bが一方の弱有効区間52b1を摺動している過程では、この一方の弱有効区間52b1がカム部材52の中心軸側へと徐々に傾斜していることにより、プレート53の他端側が徐々に上方へと傾斜するようにダンパ51の回動軸51bとともに徐々に回動するため、カム部材52の回動、すなわち蓋体13の回動がダンパ51により制動されて、言い換えるとダンパ51が比較的弱く作用して、蓋体13が自然状態よりも減速した状態でゆっくりと回動する。
【0046】
また、ピン部53bが一方の強有効区間52b2を摺動している過程では、この一方の強有効区間52b2がカム部材52の中心軸側へと、一方の弱有効区間52b1よりも急峻に傾斜していることにより、プレート53の他端側がダンパ51の回動軸51bとともに、一方の弱有効区間52b1をピン部53bが摺動しているときよりも急速に上方へと傾斜するように回動し、この回動がダンパ51により制動される。換言すれば、ダンパ51が比較的強く作用する。このため、カム部材52の回動速度、すなわち蓋体13の回動速度が、一方の弱有効区間52b1を摺動しているときよりも若干減速された状態で回動する。また、蓋体13は、回動に伴って後端側が徐々に蓋体収納部39へと挿入される。
【0047】
さらに、カム部材52が図中の反時計回り方向へと回動すると、プレート53のピン部53bが中間区間52b3を摺動する。この中間区間52b3は、カム部材52の周方向に沿って形成されているので、ピン部53bがこの中間区間52b3を摺動している過程では、プレート53は上方向へも下方向へも回動することがない。したがって、カム部材52の回動、すなわち蓋体13の回動は、ダンパ51により制動されることがなく、言い換えれば、ダンパ51が無効となり、蓋体13が自然状態でいわば速く開く。
【0048】
この後、カム部材52が図中の反時計回り方向へとさらに回動すると、プレート53のピン部53bが他方の強有効区間52b4を摺動し、プレート53がダンパ51の回動軸51bとともに下方へと急速に回動する。この過程では、ピン部53bが上記一方の強有効区間52b2を摺動する過程と同様に、ダンパ51が比較的強く作用してプレート53の回動を制動することで、カム部材52の回動速度、すなわち蓋体13の回動速度が、ピン部53bが一方の強有効区間52b2を摺動しているときと同様の状態で、すなわちピン部53bが中間区間52b3を摺動しているときよりも減速した状態で回動する。さらに、カム部材52が図中の反時計回り方向へとさらに回動すると、図1(c)に示すように、ピン部53bが他方の弱有効区間52b5を摺動し、プレート53がダンパ51の回動軸51bとともに下方へと徐々に回動する。この過程では、ピン部53bが一方の弱有効区間52b1を摺動する過程と同様に、ダンパ51が比較的弱く作用してプレート53の回動を制動することで、カム部材52の回動、すなわち蓋体13の回動がダンパ51により制動されて、蓋体13が、ピン部53bが他方の弱有効区間52b5を摺動する過程よりも若干加速した状態で、かつ自然状態よりも減速した状態でゆっくりと回動する。
【0049】
まとめると、蓋体13は、開き始めでは自然速度よりも若干遅く回動し、この後、回動速度がさらに遅くなり、開き始めと開き終わりとの中間付近では回動速度が自然状態となって相対的に速くなり、この後、回動速度が遅くなり、開き終わりでは若干加速するものの自然速度よりも若干遅く回動する。すなわち、蓋体13は、開き始めと開き終わりとにおいて、それらの中間の位置よりもゆっくりと回動する。
【0050】
そして、プレート53のピン部53bが他方の弱有効区間52b5の端部まで摺動した状態で、蓋体13が図1(c)に示す開いた状態、すなわち、蓋体13の蓋体本体76が開口部24を開いた第2の位置となり、この状態で蓋体13が保持される。このとき、蓋体13の後部は、蓋体収納部39に収納される。
【0051】
乗員は、開口部24から露出した収容部22内のホルダ部23a,23bなどに、飲料カップなどを収納する。
【0052】
また、図1(c)に示すように蓋体13が開いた状態から、乗員がトーションスプリング46(図2)の付勢に抗して蓋体13を前方へと倒すように押し下げると、図1(c)に示す状態から図1(a)に示す状態へと各部が動作し、かつ、図3に示すように、ラッチ機構67のラッチ体72の係止爪部72bが蓋体13の被係合部83に係合して、蓋体13を閉じた状態に保持する。
【0053】
そして、本実施の形態によれば、コンソール本体12側に一端側が回動可能に軸支されたプレート53の他端側を蓋体13の回動に伴って回動するカム溝52bに摺動可能に連結することで、カム溝52bを有するカム部材52の回動によりプレート53の他端側のカム溝52bに対する摺動位置が変化してプレート53が適宜回動し、この回動に対して、コンソール本体12側に位置するダンパ51により回動速度に応じた負荷を与えることで、設定されたカム溝52bの形状に応じて蓋体13の回動速度(作動スピード)をきめ細かに調整できる。
【0054】
すなわち、カム溝52bの形状を任意に設定することで、蓋体13の開き動作中の任意の位置でダンパ51の負荷をプレート53(カム部材52及び蓋体13)に作用させたり作用させなかったりすることができ、構成を複雑化することなく1つのダンパ51のみで容易に蓋体13の回動速度を部分的にコントロールでき、この蓋体13をきめ細かく制動できる。
【0055】
また、ダンパ装置43により、蓋体13が開口部24を閉じる位置と開く位置との近傍で残りの他の位置よりも蓋体13の回動速度が遅くなるように蓋体13の回動速度を調整することで、蓋体13の開き動作を、開始時及び終了時に相対的に遅くすることができ、高級感をより向上できる。
【0056】
具体的に、カム溝52bの形状にカム部材52の周方向に沿う成分を多くした場合には、プレート53が回動しにくくなってダンパ51の作用を弱めることができ、カム溝52bの形状にカム部材52の径方向に沿う成分を多くした場合には、プレート53が回動しやすくなってダンパ51の作用を強めることができる。したがって、カム溝52bに対して、所望する蓋体13の回動速度に対応して周方向成分及び径方向成分を設定することで、所望のタイミング及び強さでダンパ51を作用させることが容易に可能になる。
【0057】
そして、蓋体13の回動速度をきめ細かに調整可能となり、蓋体13の動作に高級感を与えることができ、高品質のカップホルダ10を提供できる。
【0058】
次に、第2の実施の形態を図5ないし図7を参照して説明する。なお、上記第1の実施の形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0059】
図7において、91は回動体装置としての収納装置であるカップホルダで、このカップホルダ91は、例えば自動車の車両の運転席と助手席との間に位置するセンタコンソールに備えられる車両用収納ボックスを構成している。そして、このカップホルダ91は、自動車の車体側に取り付けられる本体としてのコンソール本体93と、このコンソール本体93に回動可能に軸支される回動体としての蓋体94とを備えている。なお、以下、前後方向、両側方向及び上下方向などの方向は、カップホルダ91を車体に取り付けた状態を基準として説明する。
【0060】
コンソール本体93は、例えば合成樹脂により箱状に形成されており、内部に収容部96が区画されているとともに、上部に横長の四角形状の被開閉部としての開口部97が収容部96に連通して形成されている。そして、コンソール本体93は、平板状の底部101と、この底部101の前端部から上方に立ち上げられた前板部102と、底部101の両側から上方に立ち上げられた側板部103,103と、底部101の後側から上方に立ち上げられた後板部104と、この後板部104よりも後方で底部101の後端部から上方に立ち上げられた支持板部105とを備えている。また、底部101、前板部102、側板部103,103及び後板部104は、収容部96を囲んで連続している。さらに後板部104と支持板部105とは互いに前後方向に離間されており、これら後板部104と支持板部105との間には、蓋体94の一部が開口部97を開いた状態で挿入されて収納される回動体収納部としての蓋体収納部106が区画されている。
【0061】
収容部96には、左右幅方向に飲料カップなどが嵌合するホルダ部108a,108bが形成されている。これらホルダ部108a,108bは、互いに連通している。
【0062】
側板部103,103には、蓋体94の両側が回動可能に軸支されている。また、一方の側板部103の外側には、蓋体94の回動に伴って回動、本実施の形態では蓋体94と一体的に回動する回動ギヤ111が取り付けられているとともに、この回動ギヤ111の下方に一方及び他方のダンパ装置112,113が取り付けられている。
【0063】
これらダンパ装置112,113は、蓋体94を制動する、回動速度減速機構とも言うべきもので、図5及び図6に示すように、一方及び他方のダンパ115,116と、一方の側板部103に形成された図示しないカム部軸支部に回動可能に軸支された共通のカム部材117と、ダンパ115,116とカム部材117とを連結する一方及び他方の連結部としての連結体である一方及び他方のプレート118,119とを備えている。
【0064】
一方のダンパ115(他方のダンパ116)は、いわゆるロータリダンパ、あるいは揺動ダンパなどであり、略円柱状に形成され、一方の側板部103に形成された図示しない取付部への取付用の取付片部115a,115a(取付片部116a,116a)が突出しているとともに、回動軸115b(回動軸116b)が側方に突出している。そして、ダンパ115,116は、回動軸115b,116bの回動に対して、回動軸115b,116bの回動速度に応じた負荷(制動トルク)を与えるように構成されている。また、これらダンパ115,116は、プレート118,119の回動速度に応じて与える負荷の特性、すなわち速度特性が互いに異なっている。
【0065】
カム部材117は、略円形状に形成されており、中心部に、カム部軸支部が挿入される取付用の略円筒ボス状のカム部材取付部117aが一体に形成されているとともに、外周縁近傍に、一方及び他方の制御溝であるカム溝117b,117cが形成され、かつ、外周縁に、回動ギヤ111と歯合されるギヤ部117dが形成されている。すなわち、このカム部材117は、平歯車状に形成され、蓋体94の回動に伴って回動する。そして、このカム部材117は、カム部材取付部117aに挿入されたカム部軸支部の先端に図示しないワッシャがねじにより固定されることで、カム部軸支部に対して抜け止めされている。
【0066】
カム溝117b,117cは、カム部材117を一側面(左側面)から他側面(右側面)まで貫通してそれぞれ形成されている。一方のカム溝117bは、カム部材取付部117aの外方に一端部が位置しカム部材117の径方向に沿って直線状に形成された一方の有効区間117b1と、この一方の有効区間117b1の他端部に連続し、カム部材117の周方向に沿って円弧状に形成された一方の無効区間117b2とを有している。また、他方のカム溝117cは、カム部材取付部117aの外方に一端部が位置しカム部材117の径方向に沿って直線状に形成された他方の有効区間117c1と、この他方の有効区間117c1の他端部に連続し、カム部材117の周方向に沿って円弧状に形成された他方の無効区間117c2とを有している。そして、カム溝117b,117cは、例えばカム部材117の中心軸に直交する仮想線L2に対して線対称に配置されている。すなわち、有効区間117b1,117c1どうし、及び、無効区間117b2,117c2どうしは、互いに仮想線L2に対して線対称な位置となっている。
【0067】
すなわち、各有効区間117b1,117c1では、カム溝117b,117cはカム部材117の径方向、すなわちカム部材117の回動方向に対して直交(交差)する方向に沿う成分が殆どであり、各無効区間117b2,117c2では、カム溝117b,117cはカム部材117の周方向、すなわちカム部材117の回動方向に沿う成分が殆どとなっている。
【0068】
また、一方のプレート118(他方のプレート119)は、長尺板状に形成されており、一端側に、一方のダンパ115(他方のダンパ116)の回動軸115b(回動軸116b)が挿入接続される一方の接続孔部118a(他方の接続孔部119a)がそれぞれ形成されており、他端側に、一方のカム溝117b(他方のカム溝117c)に挿入係合される円柱状の一方の係合部である一方のピン部118b(他方の係合部である他方のピン部119b)が突出して形成されている。このため、ピン部118b,119bとカム溝117b,117cとの嵌合位置に応じて、プレート118,119がダンパ115,116の回動軸115b,116bと一体的に回動するように構成されている。
【0069】
さらに、プレート118,119の接続孔部118a,119aとピン部118b,119bとの間の距離は、ダンパ115,116の回動軸115b,116bからカム部材117のカム部材取付部117aの縁部までの距離よりもそれぞれ長く設定されている。したがって、プレート118,119は、カム部材117に形成された任意のカム溝117b,117cに沿ってピン部118b,119bが摺動可能となっている。
【0070】
そして、ダンパ115,116及びプレート118,119は、それぞれカム部材117と一方の側板部103との間で、かつ、カム部材117の下側の前後に線対称となるように配置されている。
【0071】
一方、図7に示す蓋体94は、リッドとも呼ばれるもので、全体としては平面視四角形状の板状をなし開口部97を閉塞可能な回動体本体としての蓋体本体121と、この蓋体本体121の両側から突出するアーム部である接続部122,122とを備えている。また、一方の接続部122は、回動ギヤ111と接続されている。そして、この蓋体94は、図示しない回動付勢手段としてのトーションスプリングにより、開口部97を開く方向へと付勢されているとともに、図示しないラッチ機構により、閉じた状態で保持されるように構成されている。
【0072】
次に、蓋体94の開閉動作を説明する。
【0073】
図7に示すコンソール本体93に回動可能に取り付けられた蓋体94を閉じた状態、すなわち、蓋体94の蓋体本体121が開口部97を閉塞した第1の位置では、ラッチ機構により蓋体94が閉じた状態で保持されている。この閉じた状態では、図5(a)に示すように、一方のダンパ装置112の一方のプレート118のピン部118bが、カム部材117の一方のカム溝117bの一方の有効区間117b1の端部に位置しているとともに、トーションスプリングが蓋体94(図7)を開く方向へと付勢した状態で保持される。
【0074】
この閉じた状態から、乗員がラッチ機構を操作して蓋体94(図7)の保持を解除すると、トーションスプリングの付勢により、蓋体94(図7)の前側が上方へと回動する。
【0075】
このとき、図5(a)及び図5(b)に示すように、蓋体94(図7)の回動に伴い、回動ギヤ111(図7)が回動し、この回動ギヤ111(図7)とカム部材117のギヤ部117dとの歯合によって、カム部材117が、図中の時計回り方向へと、回動ギヤ111(図7)とギヤ部117dとのギヤ比に対応した角度、回動することにより、カム部材117の一方のカム溝117bに係合した一方のプレート118のピン部118bが一方の有効区間117b1に沿って相対的に摺動するとともに、カム部材117の他方のカム溝117cに係合した他方のプレート119のピン部119bが他方の無効区間117c2に沿って相対的に摺動する。
【0076】
ここで、ピン部118bが一方の有効区間117b1を摺動している過程では、この一方の有効区間117b1がカム部材117の径方向に沿っていることにより、一方のプレート118の他端側が徐々に上方へと傾斜するように一方のダンパ115の回動軸115bとともに徐々に回動するため、カム部材117の回動、すなわち蓋体94(図7)の回動が一方のダンパ115により制動されて、言い換えると一方のダンパ115が有効に作用して、蓋体94(図7)が自然状態よりも減速した状態でゆっくりと回動する。換言すれば、蓋体94(図7)は、開き始めの回動が遅くなる。なお、この過程では、ピン部119bがカム部材117の周方向に沿った他方の無効区間117c2を摺動しているので、他方のプレート119は上方向へも下方向へも回動することがない。したがって、蓋体94(図7)の回動は、他方のダンパ116により制動されることがない。換言すれば、他方のダンパ116は無効となっている。この結果、この過程では、主として一方のダンパ115の速度特性に基づいてカム部材117、すなわち蓋体94(図7)が制動される。また、蓋体94(図7)は、回動に伴って後端側が徐々に蓋体収納部106(図7)へと挿入される。
【0077】
この後、蓋体94(図7)、すなわち回動ギヤ111(図7)がさらに回動すると、図5(c)に示すように、カム部材117が、図中の時計回り方向へとさらに回動することにより、カム部材117のカム溝117b,117cに係合したプレート118,119のピン部118b,119bが無効区間117b2,117c2に沿ってそれぞれ相対的に摺動する。これら無効区間117b2,117c2は、それぞれカム部材117の周方向に沿って形成されているので、ピン部118b,119bがこれら無効区間117b2,117c2を摺動している過程では、プレート118,119は上方向へも下方向へも回動することがない。したがって、カム部材117の回動、すなわち蓋体94(図7)の回動は、ダンパ115,116により制動されることがなく、言い換えれば、ダンパ115,116が無効となり、蓋体94(図7)が自然状態でいわば速く開く。
【0078】
さらに、図5(d)及び図5(e)に示すように、蓋体94(図7)、すなわち回動ギヤ111(図7)がさらに回動すると、カム部材117が、図中の時計回り方向へとさらに回動することにより、カム部材117の他方のカム溝117cに係合した他方のプレート119のピン部119bが他方の有効区間117c1に沿って相対的に摺動するとともに、カム部材117の一方のカム溝117bに係合した一方のプレート118のピン部118bが一方の無効区間117b2に沿って相対的に摺動する。
【0079】
ピン部119bが他方の有効区間117c1を摺動している過程では、この他方の有効区間117c1がカム部材117の径方向に沿っていることにより、他方のプレート119の他端側が徐々に下方へと傾斜するように他方のダンパ116の回動軸116bとともに徐々に回動するため、カム部材117の回動、すなわち蓋体94(図7)の回動が他方のダンパ116により制動されて、言い換えると他方のダンパ116が有効に作用して、蓋体94(図7)が自然状態よりも減速した状態でゆっくりと回動する。換言すれば、蓋体94(図7)は、開き終わりの回動が遅くなる。なお、この過程では、ピン部118bがカム部材117の周方向に沿った一方の無効区間117b2を摺動しているので、一方のプレート118は上方向へも下方向へも回動することがない。したがって、蓋体94(図7)の回動は、一方のダンパ115により制動されることがない。換言すれば、一方のダンパ115は無効となっている。この結果、この過程では、主として他方のダンパ116の速度特性に基づいてカム部材117、すなわち蓋体94(図7)が制動される。
【0080】
まとめると、蓋体94は、開き始めでは自然速度よりも遅く回動し、中間の位置では回動速度が自然状態となって相対的に速く回動し、開き終わりでは再度自然速度よりも遅く回動する。
【0081】
そして、一方のプレート118のピン部118bが一方の無効区間117b2の端部まで摺動し、かつ、他方のプレート119のピン部119bが他方の有効区間117c1の端部まで摺動した状態で、図7に示すように、蓋体94が開いた状態、すなわち、蓋体94の蓋体本体121が開口部97を開いた第2の位置となり、この状態で蓋体94が保持される。このとき、蓋体94の後部は、蓋体収納部106に収納される。
【0082】
乗員は、開口部97から露出した収容部96内のホルダ部108a,108bなどに、飲料カップなどを収納する。
【0083】
また、蓋体94が開いた状態から、乗員がトーションスプリングの付勢に抗して蓋体94を前方へと倒すように押し下げると、図5(e)に示す状態から図5(a)に示す状態へと各部が動作し、かつ、ラッチ機構が蓋体94に係合して、蓋体94を閉じた状態に保持する。
【0084】
そして、本実施の形態によれば、コンソール本体93側に一端側が回動可能に軸支されたプレート118,119の他端側を蓋体94の回動に伴って回動するカム溝117b,117cに摺動可能に連結することで、カム溝117b,117cを有するカム部材117の回動によりプレート118,119の他端側のカム溝117b,117cに対する摺動位置が変化してプレート118,119が適宜回動し、この回動に対して、コンソール本体93側に位置するダンパ115,116により回動速度に応じた負荷を与えることで、設定されたカム溝117b,117cの形状に応じて蓋体94の回動速度をきめ細かに調整できるなど、上記第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0085】
また、一方のダンパ装置112と他方のダンパ装置113とを備え、それぞれのダンパ115,116によりプレート118,119の速度特性を互いに異ならせることにより、一方のダンパ装置112が作用する位置と、他方のダンパ装置113が作用する位置とで蓋体94の制動を変化させることが可能になり、蓋体94をよりきめ細かく制動できる。
【0086】
特に、一方のダンパ装置112により蓋体94が開口部97を閉じる位置側でこの蓋体94を制動し、他方のダンパ装置113により蓋体94が開口部97を開く位置側でこの蓋体94を制動することで、開き始め及び開き終わりのそれぞれの位置で蓋体94を制動でき、例えば蓋体94がゆっくりと開き始め、かつ、ゆっくりと開き終わるように制御することなども可能となり、高級感をより向上することが可能になる。
【0087】
さらに、複数のダンパ装置112,113を用いるので、ダンパ115,116の特性及びカム溝117b,117cの形状などを適宜設定することにより、構成を複雑化することなく蓋体94の複雑な制動が容易に可能になる。具体的には、ダンパ115,116のいずれか一方のみを選択的に作用させる区間、双方がそれぞれ任意の強さで作用する区間、あるいは双方ともに作用しない区間などをカム溝117b,117cの形状によって任意に設定できる。
【0088】
なお、上記第2の実施の形態のように、プレート118,119を直接ダンパ115,116の回動軸115b,116bと接続する構成に代えて、例えば、図8に示す第3の実施の形態のように、プレート118,119の一端側と同軸に、これらプレート118,119と一体的に回動する一方及び他方のギヤ125,126を配置し、これらギヤ125,126を、ダンパ115,116の回動軸115b,116bと一体的に回動する一方及び他方の接続ギヤ128,129と歯合させても、同様の作用効果を奏することができる。
【0089】
また、上記各実施の形態において、カム溝52b,117b,117cの形状は、それぞれ所望する蓋体13,94の回動速度に対応して任意の形状に設定できる。
【0090】
さらに、上記各実施の形態では、車両の車室に備えられるカップホルダ10について説明したが、この構成に限られず、車両の他の位置に配置される車両用収納ボックスに適用できる。また、車両用に限られず、種々の場所に取り付けられる収納装置に適用することもできる。さらに、収納装置に限られず、すなわち、回動体は収納ボックスの開口部を開閉する蓋体に限られず、操作部などの部分を覆う蓋体を備えた蓋装置として適用することもできる。そして、回動体自体について、表示部や操作部を備えた回動装置として用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、車両の車室に備えられる小物入れ、あるいは蓋体を有するカップホルダなどに適用できる。
【符号の説明】
【0092】
10,91 回動体装置としての収納装置であるカップホルダ
12,93 本体としてのコンソール本体
13,94 回動体としての蓋体
22,96 収容部
24,97 被開閉部としての開口部
43,112,113 ダンパ装置
51,115,116 ダンパ
52b,117b,117c カム溝
53,118,119 連結部としてのプレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、
この本体に回動可能に軸支される回動体と、
この回動体を制動するダンパ装置とを具備し、
前記ダンパ装置は、
前記本体側に一端側が回動可能に軸支された連結部と、
この連結部の他端側が摺動可能に連結され、前記回動体の回動に伴って回動するカム溝と、
前記本体側に位置し、前記連結部の回動に対して、この連結部の回動速度に応じた負荷を与えるダンパとを備えた
ことを特徴とした回動体装置。
【請求項2】
本体は、被開閉部を備え、
回動体は、前記被開閉部を閉じる位置から開く位置まで前記本体に回動可能に軸支され、
ダンパ装置は、前記回動体が前記被開閉部を閉じる位置と開く位置との近傍で残りの他の位置よりも前記回動体の回動速度が遅くなるように前記回動体の回動速度を調整する
ことを特徴とした請求項1記載の回動体装置。
【請求項3】
ダンパ装置は、複数設けられ、それぞれのダンパにより連結部の回動速度に応じて与える負荷の特性が互いに異なっている
ことを特徴とした請求項1記載の回動体装置。
【請求項4】
本体は、被開閉部を備え、
回動体は、前記被開閉部を閉じる位置から開く位置まで前記本体に回動可能に軸支され、
一のダンパ装置は、前記回動体が前記被開閉部を閉じる位置側でこの回動体を制動し、
他のダンパ装置は、前記回動体が前記被開閉部を開く位置側でこの回動体を制動する
ことを特徴とした請求項3記載の回動体装置。
【請求項5】
請求項1ないし4いずれか一記載の回動体装置を備え、
本体は、被開閉部としての開口部、及びこの開口部に連通する収容部を有するコンソール本体であり、
回動体は、前記開口部を開閉する蓋体である
ことを特徴とした収納装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−221910(P2010−221910A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−72625(P2009−72625)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(000229955)日本プラスト株式会社 (740)
【Fターム(参考)】