説明

回収トナーカートリッジからの金属製トナー撹拌搬送部材の回収方法

【課題】筒状容器2の頂部に挿入された軸8を中心に回転が可能な回転部材7、及び筒状容器2の内部にて回転部材7の軸8中央に連結する金属製トナー撹拌搬送部材9を含む回収トナーカートリッジ1から金属製トナー撹拌搬送部材9を工業的に有利に回収することができる方法を提供する。
【解決手段】下記の工程からなる方法:
(1)上記筒状容器2の底部を開口させて開口部を形成する工程;
(2)上記開口部から筒状容器2の内部に残留しているトナーを回収する工程;
(3)上記回転部材7の軸中央を貫通するように棒状部材14を圧入することによって、該回転部材7と金属製トナー撹拌搬送部材9との連結を外して、金属製トナー撹拌搬送部材9を開口部から取り出す工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頂部に軸を中心に回転可能な回転部材を有し、内部に回転部材の軸中央に連結する金属製トナー撹拌搬送部材を有する回収トナーカートリッジから金属製トナー撹拌搬送部材を回収する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンターなどの画像形成装置では、トナーはトナーカートリッジに収容されていて、使用によってカートリッジ内のトナーが消費された場合には、トナーカートリッジ毎交換できるようにようになっているのが一般的である。このため使用済みのトナーカートリッジを回収して再利用することが必要となる。
【0003】
特許文献1には、回収トナーカートリッジのトナー容器を再利用可能な状態にするための洗浄方法が開示されている。なお、この特許文献1には、洗浄対象の回収トナーカートリッジとして、頂部に軸を中心に回転可能な回転部材(ギア部材と呼ばれている)を有し、内部に回転部材の軸中央に連結して、回転部材の回転に連動して回転することによってトナーを撹拌しながらトナー取出口に搬送するための金属製トナー撹拌搬送部材(スクリュウオーガと呼ばれている)を有するトナーカートリッジが開示されている。
【0004】
特許文献2には、回収プロセスカートリッジから金属材料を回収する方法として、破砕工程でプロセスカートリッジを分解処理した後、磁力分別手段、渦電流分別手段、比重分別手段により、金属材料を鉄系材料とアルミニウム材料とに分別して回収する方法が記載されている。
【特許文献1】特開2005−324167号公報
【特許文献2】特開2004−198799号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
資源の有効利用の観点から云えば、前記特許文献1に記載されている方法などにより回収トナーカートリッジを洗浄して再使用することは望ましい。しかし、破損や経時的な強度の低下により再使用には適さない回収トナーカートリッジについては、トナーカットリッジの構成部品毎に分離回収して再利用することが必要となる。一方、特許文献2に記載されている金属材料の回収方法では、破砕工程で金属材料が変形するため、回収した金属材料をそのままトナーカートリッジに利用することができない。そこで、前記特許文献1に記載されているような金属製トナー撹拌搬送部材を備えたトナーカートリッジでは、金属製トナー撹拌搬送部材をそのままの形状で容易に回収トナーカートリッジから回収することができれば好ましい。
従って、本発明の目的は、回収トナーカートリッジから金属製トナー撹拌搬送部材をそのままの形状で工業的に有利に回収することができる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、筒状容器、該筒状容器の頂部もしくは底部の近傍に備えられたトナー取出口、該筒状容器の頂部に挿入された軸を中心に回転が可能な回転部材、該筒状容器の内部にて該回転部材の軸中央に連結し、該回転部材の回転に連動して回転することによってトナーを撹拌しながらトナー取出口に搬送するための金属製トナー撹拌搬送部材を含む回収トナーカートリッジから該金属製トナー撹拌搬送部材を回収するための下記の工程からなる方法にある。
(1)上記筒状容器の底部を開口させて開口部を形成する工程。
(2)上記開口部から該筒状容器の内部に残留しているトナーを回収する工程。
(3)上記回転部材の軸中央を貫通するように棒状部材を圧入することによって、該回転部材と金属製トナー撹拌搬送部材との連結を外して、該金属製トナー撹拌搬送部材を開口部から取り出す工程。
【0007】
本発明の好ましい態様は、次の通りである。
(イ)(3)の工程において、棒状部材がドリル状の先端部を有し、該棒状部材の先端部を回転下にて回転部材に圧入する。
(ロ)(3)の工程において、棒状部材に熱もしくは振動を加えることにより回転部材を溶融させながら、該棒状部材を回転部材に圧入する。
【発明の効果】
【0008】
本発明を利用することによって、回収トナーカートリッジの内部に備えられた金属製トナー撹拌搬送部材をそのままの形状で工業的に有利に回収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明において金属製トナー撹拌搬送部材の回収対象となる回収トナーカートリッジの構成について説明する。
図1は、回収トナーカートリッジの一例の斜視図であり、図2は、図1に示した回収トナーカートリッジの部分断面図である。
【0010】
図1及び図2の回収トナーカートリッジ1において、トナーを収容する筒状容器2は、底部が開口した筒状部材3、筒状部材3の底部開口を閉塞するための底蓋4、そして筒状部材3と底蓋4とを接合するための粘着テープ5から構成されている。筒状容器2の底部の近傍にはトナー取出口6が備えられている。なお、トナー取出口6は、筒状容器2の頂部近傍に備えられているものもある。
【0011】
筒状容器2の頂部には、軸8を中心に回転が可能となっている回転部材7が挿入されている。回転部材7の軸8の中央には、螺旋状の金属線からなる金属製トナー撹拌搬送部材9が連結されている。なお、金属製トナー撹拌搬送部材9は、回転部材7の回転に連動して回転することによって、トナーを撹拌しながらトナー取出口6に搬送することができる形状であればよく、その形状には特に制限はない。筒状容器2は通常はABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂)により形成されており、回転部材7は、POM樹脂(ポリオキシメチレン樹脂)により形成されている。
【0012】
金属製トナー撹拌搬送部材9は、筒状容器2と回転部材7との間には、図2に示すように、筒状容器2の内部に収容されたトナーが外部に漏れ出さないようにするために、パッキング材10が配置されていている。なお、本明細書では、筒状容器2の頂部は回転部材7が挿入されている側の端部を意味し、底部は回転部材7が挿入されている側と反対側の端部を意味する。
【0013】
本発明の回収トナーカートリッジからの金属製トナー撹拌搬送部材の回収方法は、下記の工程からなる。
(1)上記筒状容器の底部を開口させて開口部を形成する工程。
(2)上記開口部から該筒状容器の内部に残留しているトナーを回収する工程。
(3)上記回転部材の軸中央を貫通するように棒状部材を圧入することによって、該回転部材と金属製トナー撹拌搬送部材との連結を外して、該金属製トナー撹拌搬送部材を開口部から取り出す工程。
【0014】
上記(3)の工程において、回収トナーカートリッジの回転部材に圧入する棒状部材は、回転部材の圧入時に破損したり折れたりしないものであれば、特に制限なく使用することができる。棒状部材の材質の例としては、チタン、鉄鋼、炭素鋼、ステンレス鋼などの金属、窒化ホウ素、炭化珪素、炭化ホウ素、炭化タングステンなどのセラミック及び炭素材料を挙げることができる。
【0015】
次に、本発明の回収トナーカートリッジからの金属製トナー撹拌搬送部材の回収方法について、図3〜7を参照しながら説明する。
【0016】
先ず、図3に示すように、回収トナーカートリッジ1の筒状容器2の底部を開口させて開口部11を形成する。図3では、筒状容器2の筒状部材3と底蓋4と分離させて開口部11を形成している。筒状部材3と底蓋4とは、筒状部材3と底蓋4とを接合するための粘着テープを引き剥がす、あるいはカッターで切断することによって分離することができる。なお、開口部11の形成場所に特には制限はない。筒状容器2の筒状部材3あるいは底蓋4を切断することによって開口部11を形成してもよい。
【0017】
次に、図4に示すように、上記の工程で形成した開口部11から筒状容器2の内部に残留しているトナーを回収する。図4では、開口部11にトナー吸引器12を取り付けて、筒状容器2の内部を吸気することによって、残留トナーを吸引除去している。残留トナーの回収の際には、筒状容器2の内壁面に付着している残留トナーの除去効率を上げるために、回収トナーカートリッジ1を振動させてもよい。
【0018】
回収トナーカートリッジの筒状容器内部の残留トナーを除去したら、次いで回転部材の中央に棒状部材を圧入して、回転部材と金属製トナー撹拌搬送部材との連結を外して、金属製トナー撹拌搬送部材を回収する。
【0019】
図5は、金属製トナー撹拌搬送部材の回収に有利に使用することができる回収装置の一例の正面図であり、図6は、図5に示した回収装置の側面図である。
図5及び図6において、金属製トナー撹拌搬送部材の回収装置は、回収トナーカートリッジ1を頂部が上方を向くように支持するための支持台13、ドリル状の先端部を有するドリル付き棒状部材14、ドリル付き棒状部材14にチャック15を介して接続する回転駆動装置16、回転駆動装置16に連結具17を介して接続する昇降装置18、そして昇降装置18を支持するレール19とそのレール19を支持する支柱20からなる。昇降装置18の昇降方式としては、ラックピニオン方式、空気圧方式、油圧方式、送りねじ方式などの公知の方式を用いることができる。
【0020】
回収装置の支持台13の上に回収トナーカートリッジ1を配置して、回転駆動装置16によりドリル付き棒状部材14を回転させながら、昇降装置18をレール19に沿って下方に移動させて、回収トナーカートリッジ1の回転部材7の軸8中央を貫通するようにドリル付き棒状部材14を回転下に圧入すると、図7に示すように、ドリル付き棒状部材14の先端により、金属製トナー撹拌搬送部材9が回転部材7から押し出されるようにして連結が外れる。回転部材7から外れた金属製トナー撹拌搬送部材9は、筒状容器2の底部に形成した開口部から取り出すことができる。なお、上記の回転装置を用いる代わりに小型の電動ドリルを用いてもよい。
【0021】
図5〜図7では、回収装置の棒状部材にドリル付き棒状部材を用い、ドリル付き棒状部材を回転させながら回転部材に圧入する例を示したが、棒状部材に熱もしくは振動を加えることにより回転部材を溶融させながら、棒状部材を回転部材に圧入してもよい。回転部材を溶融させながら、棒状部材を回転部材に圧入する場合の回収装置の好ましい例を、添付図面の図8に示す。
【0022】
図8は、棒状部材に加熱するための加熱装置を備えた回収装置の別の一例の正面図である。なお、図8に示す回収装置において、図5〜図7に示した回収装置と同一部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0023】
図8の回収装置では、昇降装置18に備えられた連結具17に、加熱装置22を備えた棒状部材21が固定されている。この回収装置では、棒状部材21に回収トナーカートリッジ1の回転部材7を形成する樹脂材料の融点以上の熱を加えながら、棒状部材21を回転部材7に圧入して、金属製トナー撹拌搬送部材を回収する。加熱装置22の例としては、コイルヒーター、赤外線ヒーター、テープヒーターを挙げることができる。
【0024】
加熱装置22の代わりに、超音波振動子を用いて棒状部材を超音波振動させて、棒状部材と回転部材との摩擦熱により回転部材を溶融させながら、棒状部材を回転部材に圧入してもよい。また、棒状部材に回転、熱、振動などのエネルギーを加えることなく、棒状部材を直に回転部材に圧入してもよい。
【0025】
本発明の方法により回収トナーカートリッジから回収した金属製トナー撹拌搬送部材は、洗浄により付着物を除去した後、再度、トナーカートリッジの金属製トナー撹拌搬送部材として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施に用いる回収トナーカートリッジの一例の斜視図である。
【図2】図1に示した回収トナーカートリッジの回転部材の周囲の断面図である。
【図3】本発明に従い、回収トナーカートリッジの筒状容器に開口部を形成した状態を説明する断面図である。
【図4】本発明に従い、回収トナーカートリッジの筒状容器の開口部から残留トナーを回収する工程を説明する断面図である。
【図5】本発明の実施に有利に使用することができる回収トナーカートリッジから金属製トナー撹拌搬送部材を回収するための回収装置の一例の正面図である。
【図6】図5に示した回収装置の側面図である。
【図7】本発明に従い、ドリル付き棒状部材を回収トナーカートリッジに挿入した状態を説明する部分断面図である。
【図8】本発明の実施に有利に使用することができる回収トナーカートリッジから金属製トナー撹拌搬送部材を回収するための回収装置の別の一例の正面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 回収トナーカートリッジ
2 筒状容器
3 筒状部材
4 底蓋
5 粘着テープ
6 トナー取出口
7 回転部材
8 軸
9 金属製トナー撹拌搬送部材
10 パッキング材
11 開口部
12 トナー吸引器
13 支持台
14 ドリル付き棒状部材
15 チャック
16 回転駆動装置
17 連結具
18 昇降装置
19 レール
20 支柱
21 棒状部材
22 加熱装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状容器、該筒状容器の頂部もしくは底部の近傍に備えられたトナー取出口、該筒状容器の頂部に挿入された軸を中心に回転が可能な回転部材、該筒状容器の内部にて該回転部材の軸中央に連結し、該回転部材の回転に連動して回転することによってトナーを撹拌しながらトナー取出口に搬送するための金属製トナー撹拌搬送部材を含む回収トナーカートリッジから該金属製トナー撹拌搬送部材を回収するための下記の工程からなる方法:
(1)上記筒状容器の底部を開口させて開口部を形成する工程;
(2)上記開口部から該筒状容器の内部に残留しているトナーを回収する工程;
(3)上記回転部材の軸中央を貫通するように棒状部材を圧入することによって、該回転部材と金属製トナー撹拌搬送部材との連結を外して、該金属製トナー撹拌搬送部材を開口部から取り出す工程。
【請求項2】
(3)の工程において、棒状部材がドリル状の先端部を有し、該棒状部材の先端部を回転下にて回転部材に圧入する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(3)の工程において、棒状部材に熱もしくは振動を加えることにより回転部材を溶融させながら、該棒状部材を回転部材に圧入する請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−282485(P2009−282485A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−244482(P2008−244482)
【出願日】平成20年9月24日(2008.9.24)
【出願人】(594159445)南開工業株式会社 (14)
【Fターム(参考)】