説明

回折光学素子及び計測装置

【課題】分散型の光スポットを生成することのできる回折光学素子および計測装置を提供する。
【解決手段】凹凸を有し、入射した光を2次元的に回折して、回折光を発生させる回折光学素子であって、前記回折光により形成される一部または全部の光スポットの個数をnとした場合、前記光スポットが照射される領域の面積により規格化された前記光スポットにおける平均最近隣距離Wは、1/(2×n1/2)<W<1/(n1/2)の範囲内であることを特徴とする回折光学素子を提供することにより上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回折光学素子及び回折光学素子を用いた計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
入射光の少なくとも一部を回折する回折光学素子は、様々な光学機器及び光学装置等に用いられている。光学機器として、例えば、光学的な3次元計測装置は、所定の光の投影パターンを測定対象物に照射し、所定の光の投影パターンの照射されている測定対象物の画像を取得することにより、3次元計測を行う装置がある。このような3次元計測装置において、回折光学素子は、所定の光の投影パターンを生成するために用いられている。
【0003】
特許文献1及び特許文献2には、3次元計測を行う際に、測定対象物に照射される光の投影パターンとして、回折光学素子により生成されたスペックルパターンを照射する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6101269号明細書
【特許文献2】特表2009−531655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、スペックルパターンは、投影面内においてランダムな位置に強度の強い光スポットが発生するため、光スポットの投影面における面内分布に粗密が生じてしまう。このため、スペックルパターンにおける光スポットが照射されない領域では、3次元情報を取得することができず、正確な3次元計測を行うことができない。よって、3次元計測装置における解像度が低下してしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、上記点に鑑みたものであり、光スポットが照射されない領域が広くなりすぎることなく、光スポットの粗密があまりない回折光学素子を提供することを目的とするものであり、更には、精密な計測を行うことができる計測装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、凹凸を有し、入射した光を2次元的に回折して、回折光を発生させる回折光学素子であって、前記回折光により形成される一部または全部の光スポットの個数をnとした場合、前記光スポットが照射される領域の面積により規格化された前記光スポットにおける平均最近隣距離Wは、1/(2×n1/2)<W<1/(n1/2)の範囲内であることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の回折光学素子は、前記光スポットが照射される領域は、平面領域または球面領域であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の回折光学素子は、前記凹凸は、2段または3段以上の凹凸により形成されているものであることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の回折光学素子は、前記回折光は、前記回折光学素子に入射した光の透過回折光であること、または、前記回折光学素子が光を反射する材料からなる反射層を有し、前記反射層において反射された反射光であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の回折光学素子は、光源と、光が照射された測定対象物の画像を撮像する撮像部と、を有し、前記光源からの光を分岐し、前記分岐された光により形成される一部または全部の光スポットの個数をnとした場合、前記光スポットが照射される領域の面積により規格化された前記光スポットにおける平均最近隣距離Wは、1/(2×n1/2)<W<1/(n1/2)の範囲内であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の計測装置は、光源と、光が照射された測定対象物の画像を撮像する撮像部と、を有し、前記光源からの光を分岐し、前記分岐された光により形成される一部または全部の光スポットの個数をnとした場合、前記光スポットが照射される領域の面積により規格化された前記光スポットにおける平均最近隣距離Wは、1/(2×n1/2)<W<1/(n1/2)の範囲内であって、前記光源からの光を回折することにより、前記光スポットを形成する前記記載の回折光学素子を有することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の計測装置は、前記平均最近隣距離Wは、前記撮像部によって得られる像により求めたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の計測装置は、前記光スポットの数は、100以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、光スポットが照射されない領域が広くなりすぎることなく、光スポットの粗密があまりない回折光学素子を提供することができる。また、精密な計測を行うことができる計測装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施の形態における計測装置の構造図
【図2】本実施の形態における回折光学素子の説明図
【図3】本実施の形態における回折光学素子の構造図(1)
【図4】本実施の形態における回折光学素子の構造図(2)
【図5】本実施の形態における回折光学素子により生じる回折光の光スポットの説明図
【図6】最近隣距離法の説明図
【図7】光スポットの分布の説明図
【図8】距離とK関数との相関図
【図9】実際の回折光の分布を説明する模式図
【図10】本実施の形態における他の回折光学素子の構造図
【図11】実施例1における回折光学素子の説明図(1)
【図12】実施例1における回折光学素子の説明図(2)
【図13】実施例2における回折光学素子の説明図(1)
【図14】実施例2における回折光学素子の説明図(2)
【図15】実施例3における回折光学素子の説明図(1)
【図16】実施例3における回折光学素子の説明図(2)
【図17】比較例1における回折光学素子の説明図
【図18】比較例2における回折光学素子の説明図
【図19】比較例3における回折光学素子の説明図
【図20】比較例4における回折光学素子の説明図
【図21】回折光の分布において分割する領域の説明図
【図22】実施例1から3及び、比較例1から4において、分割した各領域に与えられる光スポットの個数とその頻度
【発明を実施するための形態】
【0017】
発明を実施するための形態について、以下に説明する。尚、同じ部材等については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0018】
(計測装置)
本実施の形態における計測装置について説明する。図1に、本実施の形態における計測装置の構成例を示す。本実施の形態における計測装置10は、光源20と、回折光学素子30と、撮像素子50を有している。回折光学素子30は、光源20から出射された光束(入射光)11を入射させることにより、回折光12を発生させるものである。また、撮像素子50は、回折光12により生じた光スポットの投影パターンが照射されている測定対象物40a及び40bを撮像するためのものである。尚、撮像素子50は、撮像部と表現する場合もある。
【0019】
上記のように、回折光学素子30は、複数の回折光12を発生させ、この回折光12により生じた光スポットにより所望の投影パターンが形成される。そして、この投影パターンを測定対象物40a及び40bに照射し、その画像を撮像素子50により撮像することにより、測定対象物40a及び40bの3次元形状等の情報を取得することができる。尚、3次元計測を行うためには、光スポットの数は100以上必要であることが好ましい。また、図1に示される計測装置10において、回折光学素子30の位置に、回折光学素子30に代えて液晶表示パネルのようなパターン発生源とそれを投影する投影レンズを組み合わせることで所定のパターンを発生させてもよい。
【0020】
また、回折光学素子30を用いる計測装置10は、計測装置と測定対象との間の距離が短い場合でも所定の計測ができると、測定光学系を小型化できるとともに、受光系までの光路長を短くすることができるので、高い計測感度を得ることができる。そのため、このような計測装置に回折光学素子を用いる場合、後述する、回折光学素子30の角度範囲が大きい方が好ましい。
【0021】
(回折光学素子)
次に、回折光学素子30について説明する。回折光学素子30は、入射する光束11に対して出射される回折光12は、2次元的な分布を有するように設計されている。回折光学素子30に入射する光束11の光軸方向をZ軸とし、Z軸に垂直な軸をX軸及びY軸とした場合に、X軸方向における最小角度θxminから最大角度θxmax及び不図示のY軸方向における最小角度θyminから最大角度θymaxの角度範囲内に光束群が分布している。尚、X軸方向における最小角度θxminから最大角度θxmax、Y軸方向における最小角度θyminから最大角度θymaxにより形成される回折光12の照射される範囲は、撮像素子50における撮像範囲と略一致した範囲となっている。また、角度範囲としては15°以上であれば、上記の理由で光学系を小型化でき好ましい。なお、ここでいう角度範囲15°以上とは、|θxmax−θxmin|および|θymax−θymin|の値を意味する。
【0022】
また、回折光学素子30の断面が連続的なブレーズ形状以外の形状で作製される場合や、断面が、例えばブレーズ形状であっても製造上のばらつきが生じる場合には、所望の回折光の他に迷光が生じる場合がある。しかし、このような迷光は、所望の回折光ではないため、上記角度範囲内に分布している光には含まないものとする。この際、迷光の強度は、所望の回折光における光量の平均強度に対して、70%以下の光量となるように形成されていることが好ましい。また、所望の回折光の光量を積算した値は、回折光学素子30に入射する光量の50%以上となるように形成されていることが好ましい。これにより、高い光利用効率で投影パターンを生成することができる。
【0023】
図2に、回折光学素子30によって回折される回折光12と生成される光スポット13の関係について説明するための模式図を示す。入射光となる光束11を回折光学素子30に入射させた場合、回折光12は、数1に示される式において、Z軸方向を基準として、X軸方向における角度範囲θxi−1〜θx、Y軸方向における角度範囲θyj−1〜θyにおいて一つの光束を有する光となる。この回折光12は、スクリーンまたは測定対象物等に照射されることにより、照射された部分に光スポット13が形成される。
【0024】
【数1】

上記角度範囲θxi−1〜θx、θyj−1〜θyは、X軸方向における最小角度θxminから最大角度θxmaxまでの角度範囲をN分割し、Y軸方向における最小角度θyminから最大角度θymaxまでの角度範囲をM分割するものであり、下記の数2に示す関係式を満たすものである。
【0025】
【数2】

ここで、θx、θyを等角度間隔の角度としているが、X軸方向の角度をθx、Y軸方向の角度をθyとし、例えば、θx=0では回折光が発生しない構成とすると、上記の角度間隔が所定の間隔からずれる場合、つまり、不均一となる場合、が生じる。この場合、θx<0の範囲でθxmin1及びθxmax1を定義し、θx>0の範囲でθxmin2及びθxmax2を定義し、θxmin1〜θxmax1、θxmin2〜θxmax2の角度範囲において、数1に示す式を満たすようにすればよい。このような不均一に対する考え方は、θyの場合も同様であって、θx、θyの符号に関せず、θxminからθxmaxまで、θyminからθymaxまでの角度範囲において、所定の間隔からずれる個数が10個以下の角度に対して適応されることが好ましい。これは、不均一となる場合が多いと、スポット光が粗になる領域が増え、計測装置における解像度が低下してしまうからである。
【0026】
このような回折光12を出射する回折光学素子30としては、反復フーリエ変換法等により設計された回折光学素子を用いることができる。ここで回折光学素子とは、ある位相分布を生じさせる基本ユニットを周期的に、例えば、2次元的に配列させたものである。このような回折光学素子においては、遠方における回折光の回折次数の分布は基本ユニットにおけるフーリエ変換により得ることができる。このことはスカラー回折理論によって説明されている。電磁場はベクトル量であるが、等方的な媒質中ではスカラー量により表すことができ、時間t、点Pにおけるスカラー関数u(P、t)は、数3に示す式で表される。
【0027】
【数3】

ここで、数3に示す式では、入射する光が単色光の場合を示しており、U(P)は点Pにおける複素振幅であり、ωは周波数である。数3に示すスカラー関数は、全空間で数4に示す波動方程式を満たす。
【0028】
【数4】

数3に示す式を数4に示す式に代入すると、数5に示すヘルムホルツ方程式を得ることができる。
【0029】
【数5】

ここで、kは波数であり、k=2π/λである。そして、数5に示される式を解くことにより、空間におけるスカラー関数の分布が計算される。また、ある位相分布を与える十分に薄い、二次元平面スクリーンをΣで示し、Σ上における点をPとし、平面波がΣを透過した場合の点Pにおけるスカラー関数をキルヒホッフの境界条件を用いて、数5に示す式から計算すると、r01を点Pと点Pの距離とした場合、数6に示す式が得られる。
【0030】
【数6】

更に、点Pにおける座標(x、y、z)、点Pにおける座標(x、y、z)とし、zが|x−x|、|y−y|よりも十分大きな値であるものとすると、r01を展開することにより、数7に示されるフラウンホーファー近似式を得ることができる。
【0031】
【数7】

これは、スクリーンによって与えられる位相分布をフーリエ変換することに相当する。特に、スクリーン後における位相分布u(P)がX軸方向にピッチP、Y軸方向にピッチPの周期性を有する場合、u(P)は、下記数8に示すように、(m、n)次の回折光が発生する。
【0032】
【数8】

この際、(m、n)次の回折光の回折効率ηmnは、周期性の基本単位が有する位相分布u'(x、y)を用いて、下記数9に示す式で表される。尚、m、nは整数、θxin及びθyinは入射光におけるX方向及びY方向におけるZ軸となす角度、θxout及びθyoutは出射光におけるX方向及びY方向におけるZ軸となす角度である。
【0033】
【数9】

従って、基本ユニットの位相分布が得られれば、そのフーリエ変換によって回折光における強度分布を計算することができるため、基本ユニットの位相分布を最適化することにより、所望の分布の回折光を発生させることのできる回折光学素子が得られる。
【0034】
次に、図3に基づき、本実施の形態における回折光学素子30について説明する。回折光学素子30は、図3(a)に示されるように、X軸方向にピッチP、Y軸方向にピッチPの基本ユニット31が2次元状に周期的に配列されているものである。そして、基本ユニット31は、例えば、図3(b)に示されるように位相分布を有している。即ち、この基本ユニット31には、図3(b)に示されるように黒く塗りつぶされた部分が凸部、白抜きの部分が凹部となるような凹凸パターンが表面に形成されている。本実施の形態における回折光学素子では、位相分布を発生させることができるものであればよく、ガラスや樹脂材料等の光を透過するものの表面に凹凸パターンを形成した構造のものや、複数の屈折率の異なる材料を貼り合わせて表面の物理的な凹凸を平坦化したものや、屈折率を変調させた構造のものであってもよい。つまり、ここでいう凹凸とは、入射する光束に対して位相差を与えられればよく、表面形状が凹凸であることだけに限らない。
【0035】
図4には、本実施の形態における回折光学素子の一例として、ガラス等からなる基板32の表面に凸部33を形成した構造の回折光学素子30の断面模式図を示す。この回折光学素子30では、基板32の表面において、凸部33の形成されていない領域が凹部34となる。
【0036】
透明基板32は、入射する光に対して透明であれば、樹脂板、樹脂フィルムなど種々の材料を用いることができるが、ガラスや石英等の光学的等方性材料を用いると、透過光に複屈折性の影響を与えないため好ましい。また、透明基板32は、例えば、空気との界面に、多層膜による反射防止膜を備えると、フレネル反射による光反射損失を低減できる。
【0037】
図5に示すように、この回折光学素子30は、角度範囲θxi−1〜θx、θyj−1〜θyを与え、この2次元の角度範囲内において、一つの回折光により生じた光スポット13が照射されるように形成されている。即ち、図5は、一つの回折光について、この回折光の進行方向に対して略直交する面を想定したものである。そして、この面について、角度範囲θxi−1〜θx、θyj−1〜θyで囲まれた領域をグリッドとし、このグリッド内において、X、Yの角度方向にさらに分割されたサブグリッドを想定し、更に、このサブグリッド上に1つの回折光の光スポット13が位置するように形成されている。分割数がそれぞれ、Xの角度方向にN'、Yの角度方向にM'であるとした場合、回折光のX方向、Y方向の角度θx'、θy'は下記の数10に示される式を満たす。ここで数1、数2、数8、数10に示される式より、α(λ)=N'×λ/P、β(λ)=M'×λ/Pとなる。
【0038】
【数10】

このように、一つのグリッドに一つの回折光を与えるようにすることで、全体的に一定の面積の領域において、一定の個数の回折光により生じた光スポットが照射されるように形成することができる。これにより、投影パターン内における光スポットの分布をある程度均一にすることができ、分散型となるパターンを得ることができる。
【0039】
また、一つのグリッドに与える回折光の数は、一つに限らず複数であってもよい。上記と同様に、一つのグリッドについて、分割数がそれぞれ、Xの角度方向にN'、Yの角度方向にM'であるとした場合、一つのグリッドに与えられる光スポットの個数をp(pは自然数)、とすると、0<p≦N'×M'/2を満足すればよく、0<p≦N'×M'/4を満足するとより好ましい。また、N'≧3、M'≧3であるとき、0<p≦N'×M'/9を満足するとよい。
【0040】
ここで、グリッド内に与えられる光スポット数は各グリッドにおける光スポット数のばらつきが大きくならない範囲で異なっていてもよい。各グリッドにおける光スポット数のばらつきが大きくならないために、全グリッドにおける光スポット数の平均値をp_avgとした場合、各グリッドにおける光スポット数をpとするとき、pは、
1/2×p_avg≦p≦3/2×p_avg
の範囲であれば好ましく、
3/4×p_avg≦p≦5/4×p_avg
の範囲であればより好ましい。また、上記では投影される範囲をグリッドに分け、各グリッドに光スポットを割り当てることで投影された光スポットの均一性を得ているが、投影された光スポットの設計方法はこれに限らない。例えば、投影された光スポットを設計する際に、後述する最近隣距離の目標値を与え、各光スポットの間隔が最近隣距離の目標値の近傍で所定の量の範囲でばらつくようにスポット分布を計算することができる。このようにすることで、最近隣距離の平均値が前述の目標値となり、その最近隣距離に対応した光スポット密度の均一性を有する光スポット分布を得ることができる。
【0041】
以上のように、本実施の形態における回折光学素子は、反復フーリエ変換法等の手法を用いて設計し、作製することができる。具体的には、回折光学素子における基本ユニットの位相分布と回折光の電場分布はフーリエ変換の関係にあるため、回折光の電場分布を逆フーリエ変換することにより、基本ユニットにおける位相分布を計算することができる。
【0042】
また、回折光学素子を作製する際には、回折光の強度分布のみ制限条件となり、位相の条件が含まれないため、基本単位の位相分布は任意なものとなる。反復フーリエ変換法では回折光の強度分布の逆フーリエ変換から基本単位の位相分布の情報を抽出し、得られた位相分布を基本単位の位相分布としさらにフーリエ変換を行う。これによりフーリエ変換の結果と、所望の回折光の強度分布と、の差分が評価値となり、上記の計算を繰り返し行うことによって評価値が極小値となる回折光学素子の位相分布を、最適設計として得ることができる。
【0043】
回折光学素子の設計アルゴリズムは、これに限らず各種あり、例えばBernard Kress,Patrick Meyrueis著、「デジタル回折光学」(丸善)等に、その方法が記載されている。尚、フーリエ変換の方法としては高速フーリエ変換アルゴリズムを用いることができる。
【0044】
ところで、本実施の形態における回折光学素子では、得られる光スポットの分布に基づき、最近隣距離法やK関数またはL関数などの空間解析の手法を用いることによって特徴づけられる。以下に、これらの詳細について説明する。
【0045】
(最近隣距離法)
まず、最近隣距離法に関して説明する。最近隣距離とは、ある特定の面における各光スポットから、最も近接した光スポットまでの距離であり、図6にその概念図を示している。平均最近隣距離Wとは最近隣距離の平均値であり、最近隣距離dは光スポットiからの最も近い距離に位置する光スポット13までの距離であり、nを光スポットの個数とすると、以下の数11に示される式により計算することができる。
【0046】
【数11】

ここで、図7(a)に示すように、光スポットが、任意の面における面積S内でランダム(一様ポアソン分布)にしたがって分布しているとすると、この場合における平均最近隣距離Wの期待値E[W]は以下の数12に示す式となる。尚、光スポットが等間隔で規則的に配列されている場合には、距離Wは、数13に示す式となる。
【0047】
【数12】

【0048】
【数13】

また、図7(b)に示すように、光スポットが、面積Sの面内で分散的に分布している場合は、W>E[W]となり、図7(c)に示すように、面積Sの面内で集中的な分布となっている場合は、W<E[W]となる。つまり、最近隣距離法を用いることにより、与えられた光スポットの分布の平均最近隣距離Wを計算し、分布がランダムである場合の平均最近隣距離の期待値E[W]と比較し、光スポットの分布の性質を知ることができる。具体的には、図7(b)に示されるように光スポットは分散型に分布していることが好ましく、また、光スポットが等間隔で規則的に配列されていない状態であることが好ましい。
【0049】
従って、本実施の形態における回折光学素子は、光スポットにおける数11に示される平均最近隣距離Wが、数14に示される式の範囲内となるものであり、面積Sで規格化した場合には、平均最近隣距離Wは、数15に示される式の範囲内となるものである。尚、数15に示される本実施の形態における回折光学素子における平均最近隣距離Wの範囲は、1/(2×n1/2)<W<1/(n1/2)とも表現される。
【0050】
【数14】

【0051】
【数15】

(K関数、L関数)
次に、K関数、L関数に関して説明する。最近隣距離法では、ある特定の面における各光スポット間の距離によって分布を評価するものであるが、K関数、L関数では、所定の面積を考慮して、その中に入る光スポットの数を計算することによって分布の評価をするものである。尚、K関数の値は数16に示される式により計算される。ここで、dijは光スポットiから光スポットjまでの距離であり、I(dij<t)は距離t内に含まれる光スポットの個数を示している。
【0052】
【数16】

L関数は、K関数を点の個数や密度の影響を取り除くために基準化したものであり、数17に示される式により計算される。
【0053】
【数17】

K関数は最近隣距離法よりも広い範囲で評価を行えるため、分布の集中、分散具合をあるスケールで判断する場合に有用である。例えば3次元計測装置において、投影されるパターンが撮影面上のある範囲でのみに存在するような場合に、このような関数を用いて光スポットの分布を評価することができる。光スポットの分布がランダムである場合には、K関数の期待値E[K(t)]は、数18に示される式となる。
【0054】
【数18】

従って、半径tの円スケールにおいて計算されたK関数の値が、K(t)>πtの場合には、光スポットの分布は集中しており、K(t)<πtの場合には、光スポットの分布は分散している傾向にある。これを模式的に示すと図8のようになる。同様に、L関数を用いて評価を行う場合、ランダムパターンであればE[L(t)]=0となり、L(t)>0の場合、光スポットの分布は集中しており、L(t)<0の場合、光スポットの分布は分散している傾向にある、と考えることができる。
【0055】
以上のように、最近隣距離法やK関数によって光スポットの分布を評価することができるが、投影面の大きさに依存せず評価するために、投影面における光スポットが存在する領域の面積を1として規格化した距離を用いて前述の値を評価する方法がよい。また、回折光学素子から一定の距離離れた投影面に光スポットのパターンを投影すると、回折角θを有する光スポットは投影面と光軸の交わる点からz×tanθの距離の位置に投影される。従って、光スポットが投影される点は回折角θに比例せず、模式的に図9に示されるように、ピンクッション型の回折光分布を有することになる。このような場合、回折光学素子を中心とした球面上のスクリーンなどに投影した光スポットのパターンを解析することにより、投影パターンのゆがみの影響を除去した分布の評価が可能になる。
【0056】
図9に示すように、ピンクッション型のゆがみを有する光スポットを発生させる回折光学素子30を計測装置10に用いる場合、計測装置10における撮像素子50の撮像範囲と、回折光学素子30によって光スポットが生成される範囲が異なる場合がある。また、これに限らず、撮像素子50の撮像範囲と回折光学素子30によって光スポットが生成される範囲が異なる場合がある。したがって、回折光学素子30は、回折光が発生される範囲の少なくとも一部の範囲に含まれる光スポットの数をnとして、数14を満たすように設計されてもよい。このとき、n個の光スポットが発生する範囲が、光スポットの生成する範囲の50%以上の範囲であると好ましく、75%以上であるとより好ましい。このようにすることで、効率よく光スポットを利用できる。
【0057】
また、回折光学素子30を計測装置10に用いる場合、計測装置10における撮像素子50の撮像範囲の半分以上の面積となる領域で数14を満たしていることが好ましく、撮像範囲の全面で数14を満たしているとより好ましい。また、計測装置10の撮像素子50が魚眼レンズを用いる場合や投影面が回折光学素子30に対して大きく傾いている場合などは、撮像素子50上の像がゆがむ場合がある。この場合、実空間の投影面ではなく、撮像素子50で検出される像で、数14を満たしてもよい。
【0058】
これは、例えば、撮像素子50として、たる型のひずみを有する魚眼レンズを用いる場合、回折光学素子30によって発生する光スポットの分布に、ピンクッション型のひずみを持たせることで可能となる。実空間でピンクッション型のひずみを有するスポット分布をこのようなレンズで撮影すると、たる型のひずみが付加される。たる型のひずみを付加された光スポットの分布は、実空間で光スポットの分布が有するピンクッション型のひずみと相殺され、撮像画像上では、数14を満たすような光スポットの分布となる。
【0059】
以上により、本発明に係る回折光学素子は、光スポットの分布を所望の位置に配置されるように形成することができるため、光スポットの密度の偏りが少な分布の投影パターンを生成することができる。また、このような回折光学素子を用いることにより、光スポットの密度の偏りが調整され、精密な計測を行うことのできる計測装置を得ることができる。
【0060】
尚、上記説明においては、光を透過する透過型の回折光学素子について説明したが、図10に示すような反射型の回折光学素子70であってもよい。具体的には、表面に凹凸が形成された基板71の凹凸の形成された面に、Al等の反射率の高い金属膜72をスパッタリング又は真空蒸着により形成したもの等が挙げられる。これにより、回折光学素子70に、入射光81を入射させることにより、反射光により回折光82を発生させることができる。また、光を反射させるための部材としては、金属膜72以外を用いて形成したものでもよく、例えば、誘電体多層膜により形成してもよい。更には、回折光学素子70は、入射光81に対し、反射光により回折光82が生じる構造のものであれば、平坦な面に金属や多層膜からなる反射膜を形成し、その上に、凹凸が形成される構造なども含め、どのような構造のものであってもよい。
【実施例】
【0061】
(実施例1)
実施例1について、図11及び図12に基づき説明する。図11(a)は、本実施の形態における回折光学素子に基づき、分散型となるパターンを2500個発生させた場合を示したものである。図11(a)は、実施例1における回折光学素子について、所定の回折範囲内を50×50分割し、そのグリッド内に1つの光スポットが入るように形成するものである。特に、グリッド内を5×5のサブグリッドに分割し、そのサブグリッド上にランダムに1つの光スポットが位置するように形成する。
【0062】
そして、上記のパターンをX方向に−125次〜124次、Y方向に−125次〜124次の回折光に割り当て、反復フーリエ変換法によって回折光学素子面における基本単位の位相分布を計算したものが図12となる。位相分布は8つの位相値が分布してなり、これに基づき、基本単位のX、Y方向のピッチを400μmとして4mm×4mm内の領域に配置し、1段の高さが230nmとなるようにフォトリソグラフィ、エッチングによって石英基板を8段に加工する。これにより、波長が830nmの光において、X方向の最大回折角度が±15°となる回折光学素子を得ることができる。尚、石英は830nmの光に対する屈折率が1.46として計算し、以下の実施例でも同じである。
【0063】
次に、図11(a)に示す投影パターンの面積を1と規格化して、平均最近隣距離を計算すると0.013であった。尚、本実施例において、1/(n1/2)の値は、0.02であり、本実施例における回折光学素子の平均最近隣距離は、0.01から0.02の範囲内にある。また、図11(b)は、実施例1における回折光学素子において、L関数を計算したものを示す。L関数における値は0より小さくなっており、分散型の分布となっている。
【0064】
以上のような実施例1における回折光学素子を計測装置に搭載することにより、解像度の高い計測装置を得ることができる。
【0065】
(実施例2)
次に、実施例2について図13及び図14に基づき説明する。図13(a)は、本実施の形態における回折光学素子に基づき、分散型となるパターンを30000個発生させた場合を示したものである。図13(a)は、実施例2における回折光学素子について、所定の回折範囲内を200×150分割し、そのグリッド内に1つの光スポットが入るように形成するものである。特に、グリッド内を3×3のサブグリッドに分割し、そのサブグリッド上にランダムに1つの光スポットが位置するように形成する。
【0066】
そして、上記のパターンをX方向に−300次〜299次、Y方向に−225次〜224次の回折光に割り当て、反復フーリエ変換法によって回折光学素子面における基本単位の位相分布を計算したものが図14となる。位相分布は8つの位相値が分布してなり、これに基づき、基本単位のX、Y方向のピッチを498μmとして4mm×4mm内の領域に配置し、1段の高さが230nmとなるようにフォトリソグラフィ、エッチングによって石英基板を8段に加工する。これにより、波長が830nmの光においてX方向の最大回折角度が±30°となる回折光学素子が得られる。
【0067】
次に、図13(a)に示す投影パターンの面積を1と規格化して、平均最近隣距離を計算すると0.0038であった。尚、本実施例において、1/(n1/2)の値は、0.0058であり、本実施例における回折光学素子の平均最近隣距離は、0.0029から0.0058の範囲内にある。また、図13(b)は、実施例2に示す回折光学素子において、L関数を計算したものを示す。L関数の値が0より小さくなっており、分散型の分布となっている。
【0068】
以上のような実施例2における回折光学素子を計測装置に搭載することにより、解像度の高い計測装置を得ることができる。
【0069】
(実施例3)
次に、実施例3について図15及び図16に基づき説明する。図15(a)は、本実施の形態における回折光学素子に基づき、分散型となるパターンを30000個発生させた場合を示す。図15(a)は、実施例3に示す回折光学素子について、所定の回折範囲内を100×75分割し、そのグリッド内に4つの光スポットが入るように形成したものである。特に、グリッド内を6×6のサブグリッドに分割し、そのサブグリッド上にランダムに4つの光スポットが位置するように形成した。
【0070】
そして、上記のパターンをX方向に−300次〜299次、Y方向に−225次〜224次の回折光に割り当て、反復フーリエ変換法によって回折光学素子面における基本単位の位相分布を計算したものが図16となる。位相分布は8つの位相値が分布してなり、これに基づき、基本単位のX、Y方向のピッチを498μmとして4mm×4mm内の領域に配置し、1段の高さが350nmとなるようにフォトリソグラフィ、エッチングによって石英基板を8段に加工する。これにより、波長が830nmの光においてX方向の最大回折角度が±30°となる回折光学素子が得られた。
【0071】
次に、図15(a)に示す投影パターンの面積を1と規格化して、平均最近隣距離を計算すると0.0032であった。尚、本実施例において、1/(n1/2)の値は、0.0058であり、本実施例における回折光学素子の平均最近隣距離は、0.0029から0.0058の範囲内にある。また、図15(b)は、実施例3に示す回折光学素子において、L関数を計算したものを示す。L関数の値が0より小さくなっており、分散型の分布となっている。
【0072】
以上のような実施例3における回折光学素子を計測装置に搭載することにより、解像度の高い計測装置を得ることができる。
【0073】
(比較例1)
次に、比較例1について図17に基づき説明する。図17(a)は、比較例1における回折光学素子において、格子点上に規則的な光スポットを2500個発生させた場合を示す。図17(a)に示されるように、比較例1における回折光学素子は、所定の回折範囲内を50×50分割し、そのグリッド内の所定の位置に1つの光スポットが位置するように形成されている。
【0074】
図17(a)に示す投影パターンの面積を1と規格化して、平均最近隣距離を計算すると0.02であった。尚、本比較例において、1/(n1/2)の値は、0.02であり、本比較例における回折光学素子の平均最近隣距離と一致した値となる。また、図17(b)は、比較例1における回折光学素子において、L関数を計算したものを示す。L関数の値がt<0.02の範囲で0より小さくなっており、前述の範囲で分散型の分布となっている。
【0075】
(比較例2)
次に、比較例2について図18に基づき説明する。図18(a)は、比較例2における回折光学素子において、ランダムな光スポットを2500個発生させた場合を示す。図18(a)に示されるように、比較例2における回折光学素子は、所定の回折範囲内を250×250分割し、各分割点にランダムに光スポットが発生するように形成されている。
【0076】
図18(a)に示す投影パターンの面積を1と規格化して、平均最近隣距離を計算すると約0.01であり、統計的な平均最近隣距離の期待値である0.01と、一致した値となる。また、図18(b)は、比較例2における回折光学素子において、L関数を計算したものを示す。L関数の値が0.005<t<0.03の範囲で0に近い値となっており、前述の範囲でランダム分布となっている。
【0077】
(比較例3)
次に、比較例3について図19に基づき説明する。図19(a)は、比較例3における回折光学素子において、ランダムな光スポットを30000個発生させた場合を示す。図19(a)に示されるように、比較例3における回折光学素子は、所定の回折範囲内を2000×1500分割し、各分割点にランダムに光スポットが発生するように形成されている。
【0078】
図19(a)に示す投影パターンの面積を1と規格化して、平均最近隣距離を計算すると0.0029であり、統計的な平均最近隣距離の期待値である0.0029と一致した値となる。また、図19(b)は、比較例3における回折光学素子において、L関数を計算したものを示す。L関数の値が0.0015<t<0.01の範囲で0に近い値となっており、前述の範囲でランダム分布となっている。
【0079】
(比較例4)
次に、比較例4について図20に基づき説明する。図20(a)は、比較例4における回折光学素子において、格子点上に規則的な光スポットを30000個発生させた場合を示す。図20(a)に示されるように、比較例4における回折光学素子は、所定の回折範囲内を200×150分割し、各分割点に規則的に光スポットが発生するように形成されている。
【0080】
図20(a)に示す投影パターンの面積を1と規格化して、平均最近隣距離を計算すると0.0058であった。尚、本比較例において、1/(n1/2)の値は、0.0058であり、本比較例における平均最近隣距離と一致した値となる。また、図20(b)は、比較例4における回折光学素子において、L関数を計算したものを示す。L関数の値が0.0007<t<0.005の範囲で0以下となっており、前述の範囲で分散型の分布となっている。
【0081】
次に、実施例1から3及び、比較例1から4の結果について考察する。まず、各実施例、各比較例において、光スポットが存在する範囲としてX−Y平面を考え、X方向にN個、Y方向のN個の領域にそれぞれ、等間隔に分割された領域を与える。図21は、具体的にX−Y平面に光スポットが与えられ、X方向にN個、Y方向にN個、それぞれ均等に分割してできる領域を示すための例である。そして、実施例1から3及び、比較例1から4の結果に基づき、各領域に入る光スポットの個数の頻度を調べた。
【0082】
まず、光スポットの個数が2500点となる、実施例1、比較例1及び比較例2において、N=25、N=25を与えて625個の領域に分割し、各領域に入る光スポットの個数を調査した。そして、その個数の頻度を、表1にまとめ、図22(a)にそのヒストグラムを示す。
【0083】
【表1】

このとき、実施例1の回折光学素子が発生する光スポットのパターンの場合、各領域に4個の光スポットが与えられる。これに対し、比較例2の回折光学素子が発生する光スポットのパターンの場合、分割された領域のうち、光スポットの個数が0となる領域が発生してしまう。そのため、比較例2のような回折光学素子を計測装置に適用する場合、特定の領域において光スポットが得られず、この領域に存在する対象物を計測できない、という問題が生じ、実施例1の回折光学素子の場合において満足する解像度を得ることができない。
【0084】
また、比較例1の回折光学素子が発生する光スポットのパターンの場合、分割した特定の領域における光スポットの個数が0となることはない。しかし、光スポットの分布に規則性を有するパターンであるため、X方向でのパターンと、Y方向でのパターンとの区別ができなくなるという問題が発生する。特に、計測装置として、対象物の3次元形状等を計測する3次元計測装置に、比較例1のような回折光学素子を適用すると、測定対象物が奥行方向に変化するような場合、X方向と、Y方向の位置を認識できなくなるという、計測エラーが発生し得る。
【0085】
次に、光スポットの個数が30000点となる、実施例2、実施例3、比較例3及び比較例4において、N=75、N=50を与えて3750個の領域に分割し、各領域に入る光スポットの個数を調査した。そして、その個数の頻度を、表2にまとめ、図22(b)にそのヒストグラムを示す。
【0086】
【表2】

このとき、実施例2の回折光学素子が発生する光スポットのパターンの場合、各領域に少なくとも6個の光スポットが与えられ、また、実施例3の回折光学素子が発生する光スポットのパターンの場合、各領域に少なくとも3個の光スポットが与えられる。これに対し、比較例3の回折光学素子が発生する光スポットのパターンの場合、分割された領域のうち、光スポットの個数が1となる領域が発生してしまう。特に、光スポットの個数を30000点発生させるような回折光学素子の場合、各光スポットの光量は非常に弱いものとなるため、スポット個数が1個のみである場合、測定対象物の表面状態などにより、これを計測できない場合も生じ得る。そのため、比較例3のような回折光学素子を計測装置に適用する場合、特定の領域において光スポットにより計測するための解像度が低下し、S/N比も所望のレベルを得ることができず、実施例2または実施例3の回折光学素子を適用する場合に比べ、高い精度で対象物を計測することができない。
【0087】
また、比較例4の回折光学素子が発生する光スポットのパターンの場合、分割した特定の領域における光スポットの個数が0や1となることはない。しかし、比較例1と同様に、光スポットの分布に規則性を有するパターンであるため、X方向でのパターンと、Y方向でのパターンとの区別ができなくなるという問題が発生する。特に、計測装置として、対象物の3次元形状等を計測する3次元計測装置に、比較例4のような回折光学素子を適用すると、測定対象物が奥行方向に変化するような場合、X方向と、Y方向の位置を認識できなくなるという、計測エラーが発生し得る。
【0088】
尚、本発明の実施に係る形態について説明したが、上記内容は、発明の内容を限定するものではない。
【符号の説明】
【0089】
10 計測装置
11 光束(回折光学素子への入射光)
12 回折光
13 光スポット
20 光源
30 回折光学素子
31 基本ユニット
32 基板
33 凸部
34 凹部
40a 測定対象物
40b 測定対象物
50 撮像素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹凸を有し、入射した光を2次元的に回折して、回折光を発生させる回折光学素子であって、
前記回折光により形成される一部または全部の光スポットの個数をnとした場合、前記光スポットが照射される領域の面積により規格化された前記光スポットにおける平均最近隣距離Wは、1/(2×n1/2)<W<1/(n1/2)の範囲内であることを特徴とする回折光学素子。
【請求項2】
前記光スポットが照射される領域は、平面領域または球面領域であることを特徴とする請求項1に記載の回折光学素子。
【請求項3】
前記凹凸は、2段または3段以上の凹凸により形成されているものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の回折光学素子。
【請求項4】
前記回折光は、前記回折光学素子に入射した光の透過回折光であること、または、前記回折光学素子が光を反射する材料からなる反射層を有し、前記反射層において反射された反射光であることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載の回折光学素子。
【請求項5】
光源と、
光が照射された測定対象物の画像を撮像する撮像部と、
を有し、
前記光源からの光を分岐し、前記分岐された光により形成される一部または全部の光スポットの個数をnとした場合、前記光スポットが照射される領域の面積により規格化された前記光スポットにおける平均最近隣距離Wは、1/(2×n1/2)<W<1/(n1/2)の範囲内であることを特徴とする計測装置。
【請求項6】
光源と、
光が照射された測定対象物の画像を撮像する撮像部と、
を有し、
前記光源からの光を分岐し、前記分岐された光により形成される一部または全部の光スポットの個数をnとした場合、前記光スポットが照射される領域の面積により規格化された前記光スポットにおける平均最近隣距離Wは、1/(2×n1/2)<W<1/(n1/2)の範囲内であって、
前記光源からの光を回折することにより、前記光スポットを形成する請求項1〜4いずれか1項に記載の回折光学素子を有することを特徴とする計測装置。
【請求項7】
前記平均最近隣距離Wは、前記撮像部によって得られる像により求めたことを特徴とする請求項5または請求項6に記載の計測装置。
【請求項8】
前記光スポットの数は、100以上であることを特徴とする請求項5〜7いずれか1項に記載の計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−58729(P2012−58729A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169582(P2011−169582)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】