説明

回路パターン形成方法及びそれによって形成された配線基板

【課題】 電子写真法によって形成された回路パターンの電気抵抗の増大を防ぐことができる回路パターン形成方法及びそれによって形成された配線基板を提供する。
【解決手段】 セラミックグリーンシート上の回路パターン形成方法は、帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程、定着工程からなり、現像工程では、供給手段14に充填された二成分現像剤15から回路形成用荷電性粉末16のみを取り出し、回路形成用荷電性粉末16を感光体12の表面の潜像パターンに静電吸着させる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、回路パターン形成方法及びそれによって形成された配線基板に関し、特にセラミックグリーンシート上に回路パターンを形成するにあたって電子写真法により印刷を行なう回路パターン形成方法及びそれによって形成された配線基板に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、セラミックグリーンシート上への回路パターンの形成方法としては、金属粉末を含む印刷ペーストを使用したスクリーン印刷法があった。しかしながら、スクリーン印刷法は、回路パターン毎にスクリーンを製版しなければならず、少量多品種生産になることの多い配線基板の場合にはスクリーンの種類が増えて製造効率及びコストの面で不利になったり、回路パターンの部分的変更でもスクリーンを再製版しなければならずフレキシブルな対応ができなかったりする欠点があった。そこで近年では、回路形成用荷電性粉末を静電力によってセラミックグリーンシート上に印刷する電子写真法が実用化されつつある。
【0003】回路形成用荷電性粉末は、導電性金属粉末と熱可塑性樹脂とを主体材料としており、これらを所定の重量比で混合し、この混合物をニーダで熱溶融混練してから、カッターミルによる粗粉砕、ジェットミルによる微粉砕を経て例えば平均粒径20μm以下の回路形成用荷電性粉末に調整し、分級する工程により製造されている。そして、このようにして製造された回路形成用荷電性粉末を電子写真法によりセラミックグリーンシート上に印刷し、このセラミックグリーンシートを還元雰囲気中で1000℃の加熱をし、セラミックグリーンシートおよび回路パターンを焼結することにより、セラミック基板上に形成された回路パターンが得られる。
【0004】特開平11−193402号公報や特開平11−233365号公報は、銅やニッケルなどの導電性金属粉末(金属粒)の表面を熱可塑性樹脂(熱可塑性絶縁物)で被覆して絶縁した回路形成用荷電性粉末(絶縁化表面処理金属粒子)、及び鉄粉系またはフェライト系のキャリア粉末(キャリア粒子)からなる二成分現像剤(電子写真用現像剤)を用いる技術が開示されている。この技術によれば、現像工程において、キャリア粉末の表面に回路形成用荷電性粉末が静電吸着された状態の二成分現像剤は現像スリーブに磁力によって保持され、二成分現像剤のうち回路形成用荷電性粉末のみが感光体に形成された静電的な潜像パターンに向けて移動する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、電子写真法によってセラミックグリーンシート上に回路パターンを印刷する場合に従来の二成分現像剤を使用すると、現像工程で静電気的バランスや磁気的バランスが崩れた際に、回路形成用荷電性粉末とともキャリア粉末も感光体に形成された静電的な潜像パターンに移動してしまうキャリア現像と呼ばれる現象が生じる。このように、キャリア粉末が感光体上の潜像パターンに移動し、転写工程においてキャリア粉末がセラミックグリーンシート上へ転写され、回路パターン上に付着すると、回路パターンの電気抵抗が増大するという問題がある。すなわち、鉄粉系のキャリア粉末は表面が酸化鉄で被われ、フェライト系のキャリア粉末は酸化鉄との化合物であるため、還元雰囲気中において約1000℃で行われる焼成では、酸化鉄成分は還元されることなくそのまま回路パターンに残り、その結果、その部分の電気抵抗がかなり増大し、場合によってはほとんど断線したような状態になる。
【0006】本発明は、このような問題点を解消するためになされたものであり、電子写真法によって形成された回路パターンの電気抵抗の増大を防ぐことができる回路パターン形成方法及びそれによって形成された配線基板を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上述する問題点を解決するため、本発明の回路パターン形成方法は、感光体の表面を帯電する帯電工程と、前記感光体に静電的な潜像パターンを形成する露光工程と、キャリア粉末及び回路形成用荷電性粉末からなる二成分現像剤から前記回路形成用荷電性粉末のみを取り出し、前記回路形成用荷電性粉末を前記潜像パターン上へ静電力により付着させる現像工程と、前記潜像パターン上の前記回路形成用荷電性粉末を前記セラミックグリーンシート上へ転写する転写工程と、前記セラミックグリーンシート上へ転写された前記回路形成用荷電性粉末を定着させる定着工程とを含む回路パターン形成方法であって、前記二成分現像剤をなすキャリア粉末が、回路形成用金属、並びに該回路形成用金属の合金及び化合物のうち1種または2種以上を合計で50重量%以上含有し、表面が絶縁性被膜で覆われたものであることを特徴とする。
【0008】本発明の配線基板は、上記の回路パターン形成方法によって、前記回路パターンが印刷された前記セラミックグリーンシートを焼成してなることを特徴とする。
【0009】また、本発明の配線基板は、上記の回路パターン形成方法によって、前記回路パターンが印刷された前記セラミックグリーンシートを積層し、焼成してなることを特徴とする。
【0010】本発明の回路パターン形成方法によれば、回路形成用金属、並びに該回路形成用金属の合金及び化合物のうち1種または2種以上を合計で50重量%以上含有し、表面を絶縁性被膜で被われたキャリア粉末を含む二成分現像剤を用いているため、キャリア粉末が回路パターン上に付着しても、回路パターンの電気抵抗の増大を防ぐことができる。
【0011】本発明の配線基板によれば、回路形成用金属、並びに回路形成用金属の合金及び化合物のうち1種または2種以上を合計で50重量%以上含有し、表面を絶縁性被膜で被われたキャリア粉末を含む二成分現像剤を用いて、電子写真法によって回路パターンをセラミックグリーンシートに印刷し、その後、それらのセラミックグリーンシートを焼成して配線基板を形成するため、電気抵抗の低い回路パターンを備えた配線基板を容易に作製することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。図1は、本発明の回路パターン形成方法に係る一実施例に用いる電子写真システムの構成図である。セラミックグリーンシート上の回路パターン形成方法は、コロナ帯電器11により感光体12の表面を帯電する帯電工程、感光体12の表面にレーザ光13を照射して所望の潜像パターン(図示せず)を形成する露光工程、供給手段14に充填された二成分現像剤15から回路形成用荷電性粉末16のみを取り出し、回路形成用荷電性粉末16を感光体12の表面の潜像パターンに静電吸着させる現像工程、セラミックグリーンシート17の背面から転写器18により、セラミックグリーンシート17に回路形成用荷電性粉末16と逆極性の電荷を与え、潜像パターン上に現像された回路形成用荷電性粉末16をセラミックグリーンシート17上へ転写する転写工程、フラッシュランプ19の照射によりセラミックグリーンシート17上に転写された回路形成用荷電性粉末16を定着させ、セラミックグリーンシート17上に回路パターン(図示せず)を形成する定着工程で構成される。
【0013】図2は、図1の回路パターン形成方法に用いられる二成分現像剤の断面図である。二成分現像剤15は、回路形成用荷電性粉末16とキャリア粉末21とからなり、回路形成用荷電性粉末16はキャリア粉末21の表面に静電吸着されている。この場合、回路形成用荷電性粉末16とキャリア粉末21との混合重量比は、10:90〜30:70とすることが望ましい。
【0014】なお、キャリア粉末21の混合重量比が90%を超えると、回路形成用荷電性粉末16とともキャリア粉末21も感光体12に形成された潜像パターンに移動してしまうキャリア現像が著しくなって精密な回路パターンを形成することが困難となる。
【0015】一方、キャリア粉末21の混合重量比が70%を下回ると、回路形成用荷電性粉末16による地カブリが発生しやすくなる。
【0016】キャリア粉末21は、銅、ニッケル、クロムなどからなる回路形成用金属22を含み、その回路形成用金属22の表面がポリスチレン、ポリ−p−クロルスチレン、ポリビニルトルエンなどからなる絶縁性被膜23で被われたものである。
【0017】絶縁性被膜23の形成方法としては、回路形成用金属22の表面に絶縁性被膜23を衝突させて機械的に固着させるハイブリダイゼーションやメカフュージョンといった方法、あるいは回路形成用金属22の表面に絶縁性被膜23を重合させる方法などがある。
【0018】なお、絶縁性被膜23の厚さは、回路形成用荷電性粉末16を現像する際の現像特性に合わせて調整される。回路形成用荷電性粉末16がキャリア粉末21から離脱して感光体12(図1)側へ移動する際の抵抗(キャリア抵抗)を大きくしたい場合には厚くし、小さくしたい場合には薄くする。
[実施例1]
1−1.キャリア粉末の作製まず、平均粒径が43μmの球状のニッケル粉末と、スチレンアクリル樹脂とを重量比で60:40で混合し、奈良機械製作所製のハイブリダイゼーションシステムに投入し、4000rpmで3分間処理する。これによって、回路形成用金属22であるニッケル粉末の表面に絶縁性被膜23であるスチレンアクリル樹脂が固着したキャリア粉末21を得る。
1−2.二成分現像剤の作製回路形成用荷電性粉末16と1−1の方法で得られたキャリア粉末21とを重量比15:85で混合し、二成分現像剤15とした。回路形成用荷電性粉末16は、銅粉末と絶縁性樹脂との重量比を90:10とし、球状の銅粉末の表面を絶縁性樹脂で被った平均粒径が7.3μmのものを用いた。
1−3.回路パターンの作製1−2の方法で得られた二成分現像剤15を用いて、図1R>1に示した電子写真法により回路パターンを印刷したセラミックグリーンシートを還元雰囲気中で1000℃の加熱をし、セラミックグリーンシートおよび回路パターンを焼結してセラミック基板上に回路パターンを形成した。
【0019】このような回路パターンの印刷を1000回行った後の回路パターンを観察したところ、幅75μmのラインにキャリア粉末が付着しているのを確認した。キャリア粉末が付着していない正常なラインとキャリア粉末が付着しているラインとの電気抵抗を測定したところ、それぞれ2.3mΩ/□であった。
[比較例]キャリア粉末として平均粒径40μmのフェライトを用いた以外は実施例1と同じ条件で二成分現像剤を作製し、実施例1と同じ条件で1000回の印刷を行った。次いで、キャリア粉末が付着しているラインの電気抵抗を測定したところ、3.8mΩ/□であった。
【0020】以上のように、キャリア粉末が付着した際、フェライトのキャリア粉末を用いた場合には電気抵抗がかなり悪化するが、本発明のキャリア粉末を用いた場合には電気抵抗はほとんど変化しない。
[実施例2]キャリア粉末のニッケル粒子を鉄−ニッケル合金とし、ニッケル含有量を30〜70重量%の間で段階的に変化させた以外は実施例1と同じ条件で二成分現像剤を作製した。
【0021】次いで、実施例1と同じ条件で1000回の印刷を行い、キャリア粉末が付着していない正常なラインとキャリア粉末が付着しているラインとの電気抵抗を測定した。その結果を表1に示す。
【0022】
【表1】


【0023】表1から、キャリア粉末におけるニッケルの含有量が50重量%未満ではラインの電気抵抗が高く、しかも導通しない場合もあったが、50重量%以上の場合には、ラインの電気抵抗が低く良好な値を示すことがわかる。
【0024】上述の実施例の回路パターン形成方法によれば、回路形成用金属であるニッケル粉末や回路形成用金属の合金である鉄−ニッケル合金を50重量%以上含有し、表面を絶縁性被膜で被われたキャリア粉末を含む二成分現像剤を用いているため、キャリア粉末が回路パターン上に付着しても、回路パターンの電気抵抗の増大を防ぐことができる。すなわち、電気抵抗の低い回路パターンを容易に形成できる。
【0025】図3は、本発明の配線基板に係る第1の実施例の断面図である。配線基板30は、セラミックグリーンシート31を備える。そして、セラミックグリーンシート31上に、上述の実施例1及び実施例2の回路形成用荷電性粉末を使用して、電子写真法によって回路パターン32を印刷した後、還元雰囲気中において約1000℃で焼成する。
【0026】図4は、本発明の配線基板に係る第2の実施例の断面図である。配線基板40は、第1〜第3のセラミックグリーンシート41a〜41cを備える。そして、第2及び第3のセラミックグリーンシート41b,41c上に、上述の実施例1及び実施例2の回路形成用荷電性粉末を使用して、電子写真法によって回路パターン42a,42bを印刷する。次いで、第1〜第3のセラミックグリーンシート41a〜41cを積層して圧力をかけ、一体成形した後、還元雰囲気中において約1000℃で焼成する。
【0027】なお、第2及び第3のセラミックグリーンシート41b,41c上の回路パターン42a,42bは、ビアホール43により接続されるが、このビアホール43は既存の技術で形成される。例えば、導体描画装置を用いてビアホールごとに導体を圧入していく方法などがある。この場合には、回路パターンを42a,42bを電子写真法で形成した後、ビアホール43を形成すると粉体が描画機のノズルを傷める可能性があるため、回路パターン42a,42bを形成する前にビアホール43を形成しておくことが好ましい。
【0028】上述の実施例の配線基板によれば、回路形成用金属であるニッケル粉末や回路形成用金属の合金である鉄−ニッケル合金を50重量%以上含有し、表面を絶縁性被膜で被われたキャリア粉末を含む二成分現像剤を用いて、電子写真法によって回路パターンをセラミックグリーンシートに印刷し、その後、それらのセラミックグリーンシートを焼成して配線基板を形成するため、電気抵抗の低い回路パターンを備えた配線基板を容易に作製することができる。
【0029】
【発明の効果】本発明の回路パターン形成方法によれば、回路形成用金属、並びに該回路形成用金属の合金及び化合物のうち1種または2種以上を合計で50重量%以上含有し、表面を絶縁性被膜で被われたキャリア粉末を含む二成分現像剤を用いているため、キャリア粉末が回路パターン上に付着しても、回路パターンの電気抵抗の増大を防ぐことができる。すなわち、電気抵抗の低い回路パターンを容易に形成できる。
【0030】本発明の配線基板によれば、回路形成用金属、並びに回路形成用金属の合金及び化合物のうち1種または2種以上を合計で50重量%以上含有し、表面を絶縁性被膜で被われたキャリア粉末を含む二成分現像剤を用いて、電子写真法によって回路パターンをセラミックグリーンシートに印刷し、その後、それらのセラミックグリーンシートを焼成して配線基板を形成するため、電気抵抗の低い回路パターンを備えた配線基板を容易に作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の回路パターン形成方法に係る一実施例に用いる電子写真システムの構成図である。
【図2】図1の回路パターン形成方法に用いられる二成分現像剤の断面図である。
【図3】本発明の配線基板に係る第1の実施例の断面図である。
【図4】本発明の配線基板に係る第2の実施例の断面図である。
【符号の説明】
12 感光体
15 二成分現像剤
16 回路形成用荷電性粉末
17,31,41a〜41c セラミックグリーンシート
21 キャリア粉末
22 回路形成用金属
23 絶縁性被膜
30,40 配線基板
32,42a,42b 回路パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】 感光体の表面を帯電する帯電工程と、前記感光体に静電的な潜像パターンを形成する露光工程と、キャリア粉末及び回路形成用荷電性粉末からなる二成分現像剤から前記回路形成用荷電性粉末のみを取り出し、前記回路形成用荷電性粉末を前記潜像パターン上へ静電力により付着させる現像工程と、前記潜像パターン上の前記回路形成用荷電性粉末を前記セラミックグリーンシート上へ転写する転写工程と、前記セラミックグリーンシート上へ転写された前記回路形成用荷電性粉末を定着させる定着工程とを含む回路パターン形成方法であって、前記二成分現像剤をなすキャリア粉末が、回路形成用金属、並びに該回路形成用金属の合金及び化合物のうち1種または2種以上を合計で50重量%以上含有し、表面が絶縁性被膜で覆われたものであることを特徴とする回路パターン形成方法。
【請求項2】 請求項1に記載の回路パターン形成方法によって、前記回路パターンが印刷された前記セラミックグリーンシートを焼成してなることを特徴とする配線基板。
【請求項3】 請求項1に記載の回路パターン形成方法によって、前記回路パターンが印刷された前記セラミックグリーンシートを積層し、焼成してなることを特徴とする配線基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2001−284770(P2001−284770A)
【公開日】平成13年10月12日(2001.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−91729(P2000−91729)
【出願日】平成12年3月29日(2000.3.29)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】