説明

回路パターン検査装置,回路パターン検査装置を含む管理システム、および回路パターンの検査方法

【課題】
回路パターン検査装置の画像ノイズを計測し、装置状態が異常となる兆候を察知することで、回路パターン検査装置の稼動率の低下を防止する。
【解決手段】
回路パターンが形成された基板に電子線を照射して発生する二次電子または反射電子を検出し、回路パターンの異常を検出する回路パターンの検査装置において、検出された二次電子または反射電子の信号強度に基づいて画像を生成し、該画像をインターフェースの表示装置へ表示する画像処理部と、画像に含まれるノイズの周波数解析を行う制御部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置や液晶等微細な回路パターンを有する基板に電子線を照射して得られる画像信号に基づいて、基板の欠陥を検出する回路パターン検査装置,回路パターン検査装置を含む管理システム、および回路パターンの検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハの検査を一例として説明する。半導体装置は、半導体ウエハ上にフォトマスクに形成されたパターンをリソグラフィー処理及びエッチング処理により転写する工程を繰り返すことにより製造される。半導体装置の製造過程において、リソグラフィー処理やエッチング処理その他の良否,異物発生等は、半導体装置の歩留まりに大きく影響を及ぼす。したがって、このような製造過程における異常や不良発生を早期にあるいは事前に検知するために、製造過程の半導体ウエハ上のパターンを検査する各種装置が用いられている。
【0003】
半導体ウエハ上のパターンに存在する欠陥を検出する方法としては、半導体ウエハに光を照射し、光学画像を用いて欠陥を検出する光学式欠陥検査装置や、半導体ウエハに電子線を照射し、発生する二次電子や反射電子などの二次信号を検出し、その信号を画像化して比較画像との差を欠陥として検出する電子線式検査装置が実用化されている。
【0004】
上述した電子線式検査装置は、電子線を照射して得られた画像をもとに検査を行う。したがって、取得した画像にノイズが混入した場合には、誤った検査結果を出力してしまう。そのため、画像ノイズを低減して、検査精度を高める技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。しかし、低減したノイズの発生原因を究明する技術は開発されていない。画像ノイズが生じる原因としては、機械的,電気的,外乱などのノイズの混入,装置の故障などさまざまな理由が挙げられる。そのため、画像ノイズの原因を特定することは非常に困難であり、長い時間が必要である。
【0005】
【特許文献1】特開2003−197141号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した電子線式検査装置は、電子線を照射して得られた画像をもとに検査を行う。したがって、取得した画像にノイズが混入した場合には、誤った検査結果を出力してしまう。画像ノイズが生じる原因としては、機械的,電気的,外乱などのノイズの混入,装置の故障などさまざまな理由が挙げられる。そのため、画像ノイズの原因を特定することは非常に困難であり、長い時間が必要である。
【0007】
本発明は、回路パターン検査装置の画像ノイズを計測し、装置状態が異常となる兆候を察知することで、回路パターン検査装置の稼動率の低下を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を解決するために、本発明の実施態様は、回路パターンが形成された基板に電子線を照射して発生する二次電子または反射電子を検出し、回路パターンの異常を検出する回路パターンの検査装置において、検出された二次電子または反射電子の信号強度に基づいて画像を生成し、該画像をインターフェースの表示装置へ表示する画像処理部と、画像に含まれるノイズの周波数解析を行う制御部とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、回路パターン検査装置の画像ノイズを計測し、装置状態が異常となる兆候を察知することにより、メンテナンスの要否およびその内容を判断することが可能となり、回路パターン検査装置の稼動率の低下を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
図1は、電子線を用いた回路パターン検査装置の構成図であり、主要な構成を略縦断面図と機能図とで表している。回路パターン検査装置1は、室内が真空排気される検査室2と、検査室2内に被検査基板9を搬送するための予備室(図示せず)を備えており、この予備室は検査室2とは独立して真空排気できるように構成されている。また、回路パターン検査装置1は検査室2と予備室の他に画像処理部5から構成されている。
【0012】
検査室2内は大別して、電子光学系カラム3,試料室8,光学顕微鏡室4から構成されている。電子光学系カラム3は、電子銃10,引き出し電極11,コンデンサレンズ12,ブランキング偏向器13,絞り14,走査偏向器15,対物レンズ16,反射板17,E×B偏向器18,二次電子検出器20から構成され、一次電子線19を被検査基板9へ照射するとともに、被検査基板から発生した二次電子を検出する。
【0013】
試料室8は、試料台30,Xステージ31,Yステージ32,回転ステージ33,位置モニタ測長器34,被検査基板高さ測定器35から構成されている。
【0014】
光学顕微鏡室4は、検査室2の室内における電子光学系カラム3の近傍であって、互いに影響を及ぼさない程度離れた位置に配置されている。光学顕微鏡室4は、光源40,光学レンズ41,CCDカメラ42により構成されている。電子光学系カラム3と光学顕微鏡室4の間の距離は既知であり、Xステージ31、又はYステージ32が、電子光学系カラム3と光学顕微鏡室4の間の既知の距離を往復移動するようになっている。
【0015】
二次電子検出部7は、二次電子検出器20からの出力信号を増幅するプリアンプ21,増幅信号をアナログからデジタルへ変換するAD変換器22を備え、それぞれを駆動するためのプリアンプ駆動電源27,AD変換器駆動電源28,逆バイアス電源29と、これらに電気を供給する高圧電源26を備える。増幅されたデジタル信号は、光変換手段23で光信号に変換され、光伝送手段24を通って電気変換手段25で電気信号に変換され、画像処理部5の記憶部45へ送られる。なお、図示していないが、CCDカメラ42で取得した光学画像も同様にして、画像処理部5へ送られる。
【0016】
画像処理部5は、記憶部45,画像処理回路46,欠陥データバッファ47,演算部48,全体制御部49から構成されている。記憶部45に記憶された信号は、画像処理回路46で画像化されるとともに、特定位置だけ離れた画像同士の位置合わせ,信号レベルの規格化,ノイズ信号を除去するための各種画像処理を施し、画像信号を比較演算する。演算部48は比較演算された差画像信号の絶対値を所定のしきい値と比較し、所定のしきい値よりも差画像信号レベルが大きい場合に欠陥候補と判定し、インターフェース6にその位置や欠陥数等を送る。全体制御部49はこれらの画像処理や演算を制御し、状況を補正制御回路61へ送信する。電子線画像あるいは光学画像は、インターフェース6の画像表示部56に表示される。
【0017】
回路パターン検査装置1の各部の動作命令及び動作条件は、インターフェース6から指示命令が入力され、画像処理部5の全体制御部49から補正制御回路61へ送られる。インターフェース6では、一次電子線19の発生時の加速電圧,偏向幅,偏向速度,二次電子検出部7の信号取り込みタイミング,Xステージ31やYステージ32の移動速度等の条件が、目的に応じて任意にあるいは選択して設定できる。インターフェース6は、例えば、ディスプレイの機能を有し、マップ表示部55には、検出された複数の欠陥の分布が、ウエハを模式的に表したマップの上に記号化されて表示される。画像取得指示領域57は、検出された欠陥ごと、あるいは領域ごとに電子線画像あるいは光学画像を取得する指示を出す部分である。画像処理指示領域58は、取得した画像の明るさ調整やコントラスト調整を指示する部分である。処理条件設定指示部59は、一次電子線19を被検査基板9に照射するときの偏向幅,偏向速度,対物レンズの焦点距離,焦点深度などの各種条件を設定する部分である。
【0018】
補正制御回路61は、一次電子線19の発生時の加速電圧,偏向幅,偏向速度,二次電子検出部7の信号取り込みタイミング,Xステージ31やYステージ32の移動速度等が、画像処理部5の全体制御部49から送られた指示命令に従うように制御する。また、位置モニタ測長器34,被検査基板高さ測定器35の信号から被検査基板9の位置や高さをモニタし、その結果から補正信号を生成し、走査信号発生器43や対物レンズ電源44に補正信号を送り、一次電子線19が常に正しい位置に照射されるように偏向幅,偏向速度,対物レンズの焦点距離を変える。
【0019】
電子銃10には、拡散補給型の熱電界放出電子源が使用されている。この電子銃10を用いることにより、従来の例えばタングステン・フィラメント電子源や、冷電界放出型電子源に比べて安定した電子線電流を確保することができるため、明るさ変動の少ない電子線画像が得られる。また、この電子銃10により電子線電流を大きく設定することができるため、後述するような高速検査を実現できる。
【0020】
一次電子線19は、電子銃10と引き出し電極11との間に電圧を印加することで電子銃10から引き出される。一次電子線19の加速は、電子銃10に高電圧の負の電位を印加することで決まる。これにより、一次電子線19はその電位に相当するエネルギーで試料台30の方向に進み、コンデンサレンズ12で収束され、さらに対物レンズ16により細く絞られて試料台30に搭載された被検査基板9に照射される。
【0021】
ブランキング偏向器13,走査偏向器15は、ブランキング信号及び走査信号を発生する走査信号発生器43により制御される。ブランキング偏向器13は、一次電子線19が絞り14の開口部を通過しないように一次電子線19を偏向し、一次電子線19の被検査基板9への照射を防ぐことができる。一次電子線19は対物レンズ16により細く絞られているので、走査偏向器15により、被検査基板9上で走査される。
【0022】
自動検査装置では検査速度が速いことが必須となる。従って、通常のSEMのようにpAオーダーの電子線電流の電子線を低速で走査したり、多数回の走査及び各々の画像の重ね合せは行わない。また、絶縁材料への帯電を抑制するためにも、電子線走査は高速で一回あるいは数回程度にする必要がある。そこで本実施例では、通常のSEMに比べ約100倍以上の、例えば100nAの大電流電子線を一回のみ走査することにより画像を形成する構成とした。また、走査幅は例えば100μmとし、1画素は0.1μmとし、1回の走査を1μsの走査時間で行うようにした。
【0023】
対物レンズ16には、対物レンズ電源44が接続されている。コンデンサレンズ12にも図示しないレンズ電源が接続されている。そして、これらのレンズ強度は、レンズ電源の電圧を変えることによって、補正制御回路61で調整される。
【0024】
被検査基板9には、リターディング電源36により負の電圧を印加できるようになっている。リターディング電源36の電圧を調節することにより、一次電子線19を減速させ、電子銃10の電位を変えずに被検査基板9への電子線照射エネルギーを調節することができる。
【0025】
Xステージ31,Yステージ32の上には被検査基板9が搭載されている。検査実行時には、Xステージ31,Yステージ32を静止させ、一次電子線19を二次元で走査する方法と、Xステージ31を静止させ、Yステージ32をY方向に連続して一定速度で移動させながら一次電子線19をX方向に走査する方法とがある。ある特定の比較的小さい領域を検査する場合には、前者のステージを静止させて検査する方法が、比較的広い領域を検査するときは、後者のステージを連続的に一定速度で移動して検査する方法が有効である。
【0026】
Xステージ31またはYステージ32の一方を連続的に移動させながら、被検査基板9の画像を取得する場合、ステージの移動方向に対して略直角方向に一次電子線19を走査し、一次電子線19の走査、及びステージの移動と同期して、被検査基板9から発生した二次電子を二次電子検出器20で検出する。被検査基板9上に一次電子線19を照射することによって発生した二次電子は、被検査基板9に印加された電圧により加速される。被検査基板9の上方に、E×B偏向器18が配置され、これにより加速された二次電子は所定の方向へ偏向される。E×B偏向器18に印加する電圧で磁界の強度を変え、偏向量を調整することができる。また、E×B偏向器18の電磁界は、被検査基板9に印加した電圧に連動させて可変させることができる。E×B偏向器18により偏向された二次電子は、所定の条件で反射板17に衝突する。この反射板17は、被検査基板9に照射する一次電子線19の走査偏向器15による高精度な偏向を維持するためのシールドパイプを兼ね、円錐形状をしている。この反射板17に加速された二次電子が衝突すると、反射板17からは、数Vから50eVのエネルギーを持つ第二の二次電子が発生する。
【0027】
位置モニタ測長器34として、本実施例ではレーザ干渉を原理とした測長計をX方向とY方向の両方に用い、Xステージ31、及びYステージ32の位置を一次電子線19の照射中でも測定可能とし、その測定値を補正制御回路61に送信されるように構成されている。また、Xステージ31,Yステージ32,回転ステージ33の各駆動モータの回転数も、駆動モータのドライバ回路から補正制御回路61に送信されるように構成されている。補正制御回路61は、これらのデータに基づいて一次電子線19が照射されている領域や位置が正確に把握できるようになっており、測定値と制御値のずれを演算して、一次電子線19の照射位置の位置ずれを補正する。また、一次電子線19を照射した領域の座標を記憶できるようになっている。
【0028】
被検査基板高さ測定器35には、光学式測定器、例えばレーザ干渉測定器や反射光の位置で変化を測定する反射光式測定器が使用される。例えば、スリットを通過した細長い白色光を透明な窓越しに被検査基板9に照射し、反射光の位置を位置検出モニタにて検出し、位置の変動から高さの変化量を算出する方式が知られている。被検査基板高さ測定器35は、Xステージ31,Yステージ32に搭載され、被検査基板9の高さを測定する。被検査基板高さ測定器35の測定データに基づいて、一次電子線19を細く絞るための対物レンズ16の焦点距離がダイナミックに補正され、一次電子線19の焦点を被検査領域に合わせるようになっている。また、被検査基板9の反りや高さ歪みを一次電子線19の照射前に予め測定し、そのデータに基づいて対物レンズ16の検査領域毎の補正条件を設定するように構成することも可能である。
【0029】
以上説明した電子線を用いた回路パターン検査装置において、取得した検査画像にノイズが混入した場合、取得画像同士の差画像に被検査対象には存在しない異常信号が生じる。この異常信号が検査しきい値を超えた場合、欠陥ではないのに欠陥と判定されて虚報となる。したがって、取得画像のノイズを抑えることは、高精度の検査を行うために非常に重要な課題である。
【0030】
ここで、取得画像に混入するノイズの原因に関して検討する。ノイズの要因は、一次電子線偏向信号や二次電子信号に混入する電気的ノイズと、機械的な振動による機械的ノイズに大別される。電気的ノイズのノイズ発生源には、走査信号発生器43や対物レンズ電源44などの一次電子線の被検査基板上の照射位置に影響を与える部位と、二次電子検出器20やプリアンプ21などの二次電子信号の信号強度に影響を与える部位とが挙げられる。電気的ノイズの要因は、電源ノイズと、検出器や制御基板など装置を構成するユニットが出力するノイズとが大半を占め、また、これらのノイズの経時変化は小さい。よって、装置固有のノイズ量であるため、その大きさをほぼ正確に把握することができる。
【0031】
一方、機械的ノイズの要因は機械的振動である。電子線を用いた回路パターン検査装置では、実効的なスループットを確保するためにステージを連続的に移動させながら画像を取得する方法が必要不可欠である。そのため、ステージの加減速が振動源となり、電子光学系カラム3や試料室8に機械振動が発生することが問題となる。試料台の加減速に伴う機械振動が検査画像に影響しないように考慮して、ステージは設計されているが、可動部の磨耗や機械的な劣化により、経時変化が生じることは避けられない。
【0032】
機械的ノイズの周波数は、振動している部位が持つ固有振動数およびその高調波と等しくなるという特徴がある。したがって、検査画像に混入したノイズの周波数およびその振動方向を把握することで、振動部位を把握することが可能になる。一般的に、機械的ノイズの周波数は数kHz以下である。さらに、振動する部位によっては、振動方向が決まる場合が多いので、画像ノイズの振動方向を把握することはノイズ源の特定に有効である。したがって、検査画像に混入するノイズを解析することにより、その原因を特定し、適切なメンテナンスを行うことにより、装置の稼働率を向上させることが可能である。また、機械的ノイズには、装置周辺の環境に起因する電磁ノイズや床振動などの外乱ノイズもあるので、これらの振動と分離する必要がある。
【0033】
図2,図4は、回路パターン検査装置のディスプレイに表示された画像の一例を示す画面図である。また、図3は、一次電子線の走査方向を示す平面図である。図2に示す取得画像は、長手方向がY方向であるラインアンドスペースパターンの画像であるが、一定周期Fのノイズが混入している状況を示している。なお、図3に示すX方向の走査周期を、ライン周期TLとする。
【0034】
つぎに、取得した画像に対して画像処理部5の画像処理回路46で画像処理を行い、参照画像を算出する。参照画像は、ノイズ解析を行う方向のノイズを除去した画像とする。本実施例では、X方向のノイズ解析を行うため、図2に示す取得画像をY方向に加算し、X方向のノイズを除去し、図4に示すような参照画像を作成する。
【0035】
つぎに、画像処理部5の全体制御部49は、図2に示す取得画像と、図4に示す参照画像の相関演算を行い、取得画像と参照画像の間のX方向の位置ずれ量を算出する。位置ずれ量は、取得画像をX方向で分割し、分割した各領域について、走査ライン毎の位置ずれ量を算出するようにする。
【0036】
図5は、算出した位置ずれ量について、横軸を位置ずれ量ΔX、縦軸をY座標としてプロットしたグラフである。このグラフの軌跡が画像に含まれているノイズである。また、図4に示す参照画像の作成を、Y方向の走査と同時に行っているため、図5の横軸はY座標と同時に時刻を表している。したがって、図5に示すグラフは、ライン周期TL毎のノイズ量を表すことになる。言い換えれば、画像ノイズを周期TLにてサンプリングした時系列データである。
【0037】
つぎに、図5に示すグラフに示されたノイズ量の時系列データの周波数解析を行う。図6は、高速フーリエ変換(FFT)を用いて周波数解析を行ったグラフである。横軸は周波数f、縦軸は信号の大きさPである。図6に示されるように、周波数解析を行った結果、特定の周波数Fにピーク601を持っている。なお、本実施例では高速フーリエ変換を用いて周波数解析を行ったが、他の手法を用いてもかまわない。以上の手順で、X方向のノイズの周波数解析が可能であるが、Y方向のノイズの周波数解析も同様の方法で実施できる。
【0038】
以上のノイズの周波数解析を、回路パターン検査装置に自動的に実行させるようにすると有益である。図7は、回路パターン検査装置が周波数解析を実行する手順を示すフローチャートである。画像処理部5の各プロセッサに図7に示す手順を実行させる。図7において、画像を取得し(ステップ701)、画像処理回路46のプロセッサは、この取得画像からノイズを除去した参照画像を算出する(ステップ702)。つぎに、演算部48のプロセッサは、参照画像と取得画像との相関演算を行って、位置ずれ量を算出する(ステップ703)。つぎに、全体制御部49のプロセッサは、算出した位置ずれ量から周波数解析を行う(ステップ704)。最後に、周波数解析結果をインターフェース6に表示する。
【0039】
図8は、周波数解析の一例を示す画面図である。画面の全体は、回路パターン検査装置のインターフェース6に表示される画面の一例であり、画面の左側には、被検査基板9である半導体ウエハの模式図が表示されている。インターフェース6の画面の右側の領域には、図5、および図6に示す周波数解析結果が表示され、オペレータが画像のノイズの発生原因を究明するための有益なデータを提供している。
【0040】
上記のような方法を用いることで、画像に含まれるノイズ成分の周波数およびノイズの方向を把握することが可能となる。ここで把握できた画像ノイズの周波数およびその方向から、回路パターン検査装置の性能を劣化させているノイズ源を特定するための手がかりを得ることができる。
【0041】
なお、上述の手法を用いる場合、参照画像は取得画像からノイズを除去するため画像加算を行う。そのため、ピッチが均一なドットパターンや、加算する方向に周期性を持つパターン、あるいはラインアンドスペースパターンのように、加算する方向が常に同じパターンであることが必要である。
【0042】
また、本実施例では、画像の位置ずれ量を算出する方法として、参照画像を取得画像から算出する方法としたが、取得画像のパターンについて理想的な画像を、辞書画像としてあらかじめ準備しておき、辞書画像と実際に取得した取得画像とから位置ずれ量を算出する方法や取得画像の特定の部分を基準としてそこからの位置ずれ量を算出する方法など別の方法を採用してもよい。
【0043】
次に、回路パターン検査装置の管理方法について記述する。検査装置の検査画像に含まれるノイズ成分には、機械的ノイズのように経時変化を持つノイズと、外乱ノイズのように装置の設置環境に依存するノイズとがある。これらのノイズ量が増加した場合、検査画像に含まれるノイズも増加する。そのため、回路パターン検査装置の性能を安定して維持するためには、正常時の画像ノイズ量およびその周波数をあらかじめ把握しておくことが必要である。また、機械的ノイズに関しては、ステージの移動が振動源となることが考えられるので、ステージの移動の有無、それぞれの条件でノイズ量およびその周波数を、予め取得しておく。さらに、機械的ノイズに関しては、回路パターン検査装置を構成する機械部品の固有振動数を事前に把握しておくことが必要である。
【0044】
図9は、回路パターン検査装置が周波数解析を実行する手順を示すフローチャートである。はじめに、ステージを連続移動させながら1次元画像を取得し、1次元画像の周波数解析を行う(ステップ901)。つぎに、ステージを停止させた状態にて2次元画像を取得し、2次元画像の周波数解析を行う(ステップ902)。1次元画像,2次元画像それぞれの周波数解析結果を比較し、ピーク周波数を比較する(ステップ903)。比較の結果、1次元画像のみに特徴的なピークが発生している場合は、ステージ移動を加震源とする機械的ノイズが発生していることが考えられる。この場合は、1次元画像に含まれるピーク周波数と一致する固有振動数を持つ部位が振動している可能性が高い。したがって、ピーク周波数と、機械的ノイズ源と思われる部位の固有振動数とを比較する(ステップ904)。その結果、この周波数解析結果をもとに振動していると考えられる部位の特定および対策を実施する(ステップ905)。
【0045】
一方、1次元画像,2次元画像の周波数解析結果に共通するピークが生じている場合は、電気的ノイズまたは真空ポンプや床の振動を加震源とする機械的ノイズが画像ノイズの原因である可能性が高い。したがって、ピーク周波数と、電気的ノイズ源と思われる電気的ノイズの周波数、または機械的ノイズ源と思われる部位の固有振動数とを比較する(ステップ906)。その結果、周波数解析結果を手掛かりにノイズ源を調査し、対策を実施する(ステップ907)。ノイズ源の調査、対策を実施後に再度、1次元画像,2次元画像を取得し、周波数解析を行い(ステップ901,902)、ステップ903で1次元画像,2次元画像の周波数解析結果のピークを確認し、ノイズ源の対策の効果を確認する。以上の手順を用いることにより、画像に含まれるノイズを定量的に把握することが可能となる。さらに効率よく画像ノイズのノイズ源の特定をすることが可能となる。
【0046】
図9に述べた画像ノイズの解析を定期的に行い、結果を図8に示したインターフェース6へ表示させて、オペレータが確認できるようにすると、時間が経過するにつれて発生するノイズの早期発見ができ、はやい対策を講じることができる。
【0047】
画像にノイズがある場合、検査結果に対する影響度を検討し、即時対応が必要であるかを判断する。即時対応が必要な場合は、ノイズの周波数および振動方向を手がかりに対策を行う。対策が十分か否かは、対策後のノイズ量を調べることにより判断することが可能である。
【0048】
一方、オペレータが即時対応が必要でないと判断した場合は、定期的なノイズ量の取得を継続して回路パターン検査装置を運用する。機械的ノイズには、使用時間経過に従って、可動部の磨耗によって増加するものがある。この場合、磨耗している部品の固有振動数のノイズが徐々に増加していることが予想される。したがって、磨耗する部品の固有振動数に相当するノイズ量から、対象部品の磨耗を推測することが可能である。そこで、画像ノイズを定期的に取得し、統計的に解析することで、磨耗部品の交換時期を事前に把握することが可能となり、適切なメンテナンスを行い、回路パターン検査装置を長時間安定して稼働させることが可能となる。
【0049】
上記手順を自動化し、定期的に画像ノイズを把握する機能を持たせることにより、画像ノイズの経時変化を把握することが可能となる。さらに、装置構成部品の固有振動数、電気的ノイズ源となる周波数をノイズ源データベースとして用意し、ピーク周波数とノイズ源データベースと照合することにより、オペレータが行っていた判断を自動で行うことが可能となる。
【0050】
図10は、複数の回路パターン検査装置を管理するシステム図である。管理装置1001が、複数の回路パターン検査装置1002,1003,1004と、ローカルエリアネットワーク等の通信網1005で接続されている。
【0051】
複数の回路パターン検査装置1002,1003,1004は、それぞれが自動的に画像ノイズの周波数解析を定期的に実行する。また、その解析結果と装置状態とが、通信網1005を介して管理装置1001へ送信され、時系列的に記憶される。
【0052】
管理装置1001は、複数の回路パターン検査装置の周波数解析結果を統計的に処理し、表示する機能を備えているので、オペレータは、ノイズ量の時間的変化の有無を確認し、装置状態の管理を行うことができる。例えば、管理装置1001に設けられたディスプレイに、複数の回路パターン検査装置の周波数解析結果を時系列的に並べて表示する。さらに、管理装置1001が自動的に、指定されたノイズの周波数の時間的変化を色分けなどで他と区別して強調表示すると、オペレータは直ちに変化を認識することができる。また、管理装置1001は、装置毎の周波数解析結果の時間的変化と装置毎の稼動状態とから、装置に必要なメンテナンスの内容および時期を算出して、ディスプレイへ表示させることで、装置の不具合を早期に発見して対策することができる。
【0053】
複数の回路パターン検査装置を集中管理することによって、原因の特定ができる場合がある。電気的ノイズ、および機械的ノイズは装置固有のノイズであるため複数の装置が同時に増加することは考えにくい。したがって、複数の回路パターン検査装置に共通して、ある特定の周波数を持つ画像ノイズが突発的に増加した場合、この画像ノイズ量が変化した原因は、床振動や装置周辺の電磁波ノイズなどを原因とする外乱ノイズに起因していると想定できる。管理装置1001は、この突発的なノイズを、他のノイズと区別して強調表示することにより、オペレータは容易に突発的なノイズを認識することができる。このように、複数の回路パターン検査装置を集中管理することにより、個別の装置の異常のみならず、原因が外乱かどうかまで含めて管理を行うことが可能となる。
【0054】
本発明によれば、検査装置の画像ノイズを計測し、装置状態が異常となる兆候を察知することにより、メンテナンスの要否およびその内容を判断することが可能となり、検査装置の稼動率の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】回路パターン検査装置の構成を示す縦断面図。
【図2】回路パターン検査装置のディスプレイに表示された画像の一例を示す画面図。
【図3】一次電子線の走査方向を示す平面図。
【図4】回路パターン検査装置のディスプレイに表示された画像の一例を示す画面図。
【図5】算出した位置ずれ量について、横軸を位置ずれ量ΔX、縦軸をY座標としてプロットしたグラフ。
【図6】高速フーリエ変換(FFT)を用いて周波数解析を行ったグラフ。
【図7】回路パターン検査装置が周波数解析を実行する手順を示すフローチャート。
【図8】周波数解析の一例を示す画面図。
【図9】回路パターン検査装置が周波数解析を実行する手順を示すフローチャート。
【図10】複数の回路パターン検査装置を管理するシステム図。
【符号の説明】
【0056】
1 回路パターン検査装置
5 画像処理部
6 インターフェース
9 被検査基板
19 一次電子線
34 位置モニタ測長器
46 画像処理回路
47 欠陥データバッファ
49 全体制御部
55 マップ表示部
56 画像表示部
61 補正制御回路
1001 管理装置
1005 通信網

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路パターンが形成された基板に電子線を照射して発生する二次電子または反射電子を検出し、前記回路パターンの異常を検出する回路パターンの検査装置において、
検出された前記二次電子または反射電子の信号強度に基づいて画像を生成し、該画像をインターフェースの表示装置へ表示する画像処理部と、
前記画像に含まれるノイズの周波数解析を行う制御部とを備えたことを特徴とする回路パターンの検査装置。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記画像処理部は、前記画像を複数加算して参照画像を生成し、前記制御部は、前記参照画像と前記画像とを比較し位置ずれ量を求め、該位置ずれ量の周波数解析を行うことを特徴とする回路パターンの検査装置。
【請求項3】
請求項1の記載において、前記画像処理部は、予め辞書画像を保存し、前記制御部は、該辞書画像と前記画像とを比較し位置ずれ量を求め、該位置ずれ量の周波数解析を行うことを特徴とする回路パターンの検査装置。
【請求項4】
請求項2から3のいずれかの記載において、前記基板を載置する試料台を備え、該試料台を連続的に移動させながら前記基板に前記電子線を照射することを特徴とする回路パターンの検査装置。
【請求項5】
請求項2から3のいずれかの記載において、前記基板を載置する試料台を備え、該試料台を所望の位置で停止させて前記基板に前記電子線を照射することを特徴とする回路パターンの検査装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかの記載において、前記周波数解析の結果を表示するマンマシンインターフェースを備えたことを特徴とする回路パターンの検査装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかの記載において、前記制御装置は、前記画像の直交する2つの座標系それぞれについて前記周波数解析を行うことを特徴とする回路パターンの検査装置。
【請求項8】
複数の回路パターンの検査装置と管理装置とを通信媒体を介して接続した回路パターン検査装置を含む管理システムにおいて、
前記回路パターンの検査装置は、回路パターンが形成された基板に電子線を照射して発生する二次電子または反射電子を検出して画像を生成し、前記回路パターンの異常を検出するものであり、
前記管理装置は、前記回路パターンの検査装置で生成された前記画像に含まれるノイズの周波数解析結果と、前記回路パターンの検査装置の稼動状態とを受信し、前記回路パターン検査装置で生成された前記画像に含まれるノイズの時間的変化を表示装置へ表示することを特徴とする回路パターン検査装置を含む管理システム。
【請求項9】
請求項8の記載において、前記管理装置は、前記回路パターンの検査装置で生成された前記画像の周波数解析結果を定期的に取得し、前記回路パターンの検査装置のメンテナンスの内容および時期を算出し、前記表示装置へ表示することを特徴とする回路パターン検査装置を含む管理システム。
【請求項10】
請求項8の記載において、前記管理装置は、前記回路パターンの検査装置での前記画像に含まれる前記ノイズの周波数が、複数の装置で共通している場合と、単独の装置だけの場合とで、区別して前記表示装置へ表示することを特徴とする回路パターン検査装置を含む管理システム。
【請求項11】
回路パターンが形成された基板に電子線を照射して発生する二次電子または反射電子を検出し、前記回路パターンの異常を検出する回路パターンの検査方法において、
検出された前記二次電子または反射電子の信号強度に基づいて画像を生成し、該画像をインターフェースの表示装置へ表示するとともに、
前記画像に含まれるノイズの周波数解析を行うことを特徴とする回路パターンの検査方法。
【請求項12】
請求項11の記載において、前記画像を複数加算して参照画像を生成し、前記参照画像と前記画像とを比較し位置ずれ量を求め、該位置ずれ量の周波数解析を行うことを特徴とする回路パターンの検査方法。
【請求項13】
請求項11の記載において、予め辞書画像を保存し、該辞書画像と前記画像とを比較し位置ずれ量を求め、該位置ずれ量の周波数解析を行うことを特徴とする回路パターンの検査方法。
【請求項14】
請求項12から13のいずれかの記載において、前記基板を載置する試料台を連続的に移動させながら前記基板に前記電子線を照射することを特徴とする回路パターンの検査方法。
【請求項15】
請求項12から13のいずれかの記載において、前記基板を載置する試料台を所望の位置で停止させて前記基板に前記電子線を照射することを特徴とする回路パターンの検査方法。
【請求項16】
請求項11から15のいずれかの記載において、マンマシンインターフェースに前記周波数解析の結果を表示することを特徴とする回路パターンの検査方法。
【請求項17】
請求項11から16のいずれかの記載において、前記画像の直交する2つの座標系それぞれについて前記周波数解析を行うことを特徴とする回路パターンの検査方法。
【請求項18】
複数の回路パターンの検査装置と管理装置とを通信媒体を介して接続した回路パターン検査装置を含む管理システムにおける回路パターンの検査方法において、
前記回路パターンの検査装置により、回路パターンが形成された基板に電子線を照射して発生する二次電子または反射電子を検出して画像を生成し、前記回路パターンの異常を検出し、
前記管理装置により、前記回路パターンの検査装置で生成された前記画像に含まれるノイズの周波数解析結果と、前記回路パターンの検査装置の稼動状態とを受信し、前記回路パターン検査装置で生成された前記画像に含まれるノイズの時間的変化を表示装置へ表示することを特徴とする回路パターンの検査方法。
【請求項19】
請求項18の記載において、前記管理装置により、前記回路パターンの検査装置で生成された前記画像の周波数解析結果を定期的に取得し、前記回路パターンの検査装置のメンテナンスの内容および時期を算出し、前記表示装置へ表示することを特徴とする回路パターンの検査方法。
【請求項20】
請求項18の記載において、前記管理装置により、前記回路パターンの検査装置での前記画像に含まれる前記ノイズの周波数が、複数の装置で共通している場合と、単独の装置だけの場合とで、区別して前記表示装置へ表示することを特徴とする回路パターンの検査方法。
【請求項21】
回路パターンが形成された試料に電子線を照射して発生する二次信号を検出する電子光学系カラムと、
検出した二次信号から取得画像を作成し、該取得画像からノイズ成分を除去するように参照画像を作成する画像処理回路と、
前記取得画像と前記参照画像とを比較して前記取得画像に含まれるノイズ成分を抽出し、周波数解析を実行し、その結果をインターフェースへ表示させるプロセッサとを備えたことを特徴とする回路パターンの検査装置。
【請求項22】
請求項21の記載において、前記周波数解析は、高速フーリエ変換を用いることを特徴とする回路パターンの検査装置。
【請求項23】
回路パターンが形成された試料に電子線を照射して発生する二次信号を検出して取得画像を作成し、該取得画像からノイズ成分を除去するように参照画像を作成し、該取得画像と該参照画像とを比較して該取得画像に含まれるノイズ成分を抽出し、周波数解析を実行し、その結果をインターフェースへ表示させる回路パターンの検査装置と、
該回路パターンの検査装置の複数から通信網を介して前記周波数解析結果を受信し、時系列的に記憶し、管理する管理装置とを備えたことを特徴とする回路パターン検査装置を含む管理システム。
【請求項24】
請求項23の記載において、前記周波数解析は、高速フーリエ変換を用いることを特徴とする回路パターンの検査装置を含む管理システム。
【請求項25】
請求項23の記載において、前記管理装置は、ディスプレイへ前記複数の回路パターン検査装置の周波数解析結果を時系列的に並べて表示することを特徴とする回路パターン検査装置を含む管理システム。
【請求項26】
請求項23の記載において、前記管理装置は、ディスプレイへ指定されたノイズの周波数の時間的変化を他と区別して強調表示することを特徴とする回路パターン検査装置を含む管理システム。
【請求項27】
請求項23の記載において、前記管理装置は、ディスプレイへ突発的なノイズを他のノイズと区別して強調表示することを特徴とする回路パターン検査装置を含む管理システム。
【請求項28】
回路パターンが形成された試料に電子線を走査して発生する二次信号を検出し、前記回路パターンの欠陥を検出する回路パターンの検査装置において、
前記二次信号から作成される取得画像を前記電子線の走査の方向に対して直角方向に加算して参照画像を作成する画像処理回路と、
前記取得画像と前記参照画像とを比較して前記取得画像に含まれるノイズ成分を抽出し、周波数解析を実行し、その結果をインターフェースへ表示させるプロセッサとを備えたことを特徴とする回路パターンの検査装置。
【請求項29】
請求項28の記載において、前記周波数解析は、高速フーリエ変換を用いることを特徴とする回路パターンの検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−103322(P2010−103322A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−273713(P2008−273713)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】