説明

回路基板およびその製造方法、銅箔の形成方法

【課題】樹脂基板上に銅配線パタ―ンを強い密着力で形成する。
【解決手段】回路基板の製造方法は、無機フィラー粒子の表面に、UVオゾン処理によりOH基を形成する工程と、前記OH基が結合した無機フィラーを、ビニル基を有するシランカップリング剤により処理する工程と、前記シランカップリング剤により処理した無機フィラー粒子に、トリアジンチオールあるいはトリアジンチオール系化合物を結合する工程と、前記トリアジンチオールあるいはトリアジンチオール系化合物を結合した無機フィラー粒子を樹脂前駆体中に混合する工程と、前記樹脂前駆体を硬化させることにより樹脂基板を形成する工程と、前記樹脂基板上に銅パタ―ンをメッキにより形成する工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板およびその製造方法、銅箔の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば電気的用途や装飾的用途を目的として、樹脂体上に銅箔をメッキにより強い密着力で形成する必要が生じることは多い。例えば回路基板の製造では、樹脂基板上に銅配線パタ―ンを銅メッキにより形成するが、このような銅配線パタ―ンは、下地を構成する樹脂基板上に大きな密着力で保持されている必要がある。
【0003】
しかし例えば回路基板の製造の際、樹脂基板表面になんら加工や変成をせずに銅メッキを行うと、メッキにより形成された銅パターンの密着力は通常ほぼ0g/cmとなってしまい、少しの力でも形成された銅パターンが樹脂基板表面から剥離してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−17921号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】森,阿部「六価クロムフリー樹脂めっき―分子接着法―」表面技術59巻,第5号,2008年,299頁−304頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
樹脂表面上への密着力の強い銅めっき膜の形成については、例えばプリント回路基板の技術分野において切実な要求がある。例えば樹脂を含浸したガラス布(プリプレグ)を重ね合わせて、熱プレスを行い、積層板を成形し、その表面に銅めっきにより回路パターンを形成するアディティブ法で形成する回路基板や、近年盛んになってきたビルドアップ法による回路基板の製造方法では、密着力の強い銅めっき膜の形成が必須である。従来は、デスミア処理により樹脂表面の粗化を行うことにより、その上に形成される銅めっきの密着力を大きくしているが、表面粗化の有無にかかわらず、銅めっき膜の密着力を増大させることのできる技術が求められている。
【0007】
ところで、トリアジントリチオール系化合物は、銅メッキ膜との密着力に優れていることが知られている(特許文献1,非特許文献1)。そこでトリアジントリチオール系化合物と樹脂基板との間に大きな密着力が実現できれば、樹脂基板と銅配線パタ―ンとの密着力も増大させることが可能となると考えられる。
【0008】
トリアジントリチオールと銅メッキ膜との間の大きな密着力は、トリアジントリチオールが有するチオール基と銅とが化学結合することにより生じている。そこで樹脂表面にトリアジントリチオール系化合物を強固に密着させておくことができれば、このような樹脂表面上に銅メッキを施すことにより、銅メッキ膜を、樹脂表面に対して強い密着力で形成することができる。
【0009】
しかし、このようにトリアジントリチオール系化合物と銅メッキ層との間には強固な結合が生じることは指摘されているが、一般に樹脂とトリアジントリチオールあるいはトリアジントリチオール系化合物とは化学結合をしない。このため樹脂基板の表面にトリアジントリチオール系化合物を析出させても、析出したトリアジントリチオールあるいはトリアジントリチオール化合物は容易に樹脂基板表面から脱離してしまう。このためトリアジントリチオールあるいはトリアジントリチオール系化合物を使っても、従来は樹脂基板表面に銅箔ないし銅パターンを強い密着力で形成することは困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一の実施形態による回路基板は、樹脂基板と、前記樹脂基板表面に埋設され、前記樹脂基板表面に部分的に露出された無機フィラー粒子と、前記無機フィラー粒子の表面に形成されたトリアジントリチオールまたはトリアジントリチオール系化合物を含む層と、前記樹脂層表面に形成され、前記無機フィラー粒子と前記トリアジントリチオールまたはトリアジントリチオール系化合物を含む層で接する銅配線パタ―ンと、を含む。
【0011】
他の実施形態による回路基板の製造方法は、無機フィラー粒子の表面に、UVオゾン処理によりOH基を形成する工程と、前記OH基が結合した無機フィラー粒子を、ビニル基を有するシランカップリング剤により処理する工程と、前記シランカップリング剤により処理した無機フィラー粒子に、トリアジントリチオールまたはトリアジントリチオール系化合物を結合する工程と、前記トリアジントリチオールまたはトリアジントリチオール系化合物を結合した無機フィラー粒子を樹脂前駆体中に混合する工程と、前記樹脂前駆体を硬化させることにより樹脂基板を形成する工程と、前記樹脂基板上に銅配線パタ―ンを形成する工程と、を含む。
【0012】
さらに別の実施形態によれば樹脂成形体上への銅箔の形成方法は、無機フィラー粒子の表面に、UVオゾン処理によりOH基を形成する工程と、前記OH基が結合した無機フィラーを、ビニル基を有するシランカップリング剤により処理する工程と、前記シランカップリング剤により処理した無機フィラー粒子に、トリアジントリチオール、または、トリアジントリチオール系化合物を結合する工程と、前記トリアジントリチオールまたはトリアジントリチオール系化合物を結合した無機フィラー粒子を樹脂前駆体中に混合する工程と、前記樹脂前駆体を硬化させることにより樹脂成型体を形成する工程と、前記樹脂成型体上に銅箔を、メッキにより形成する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0013】
上記一または他の実施形態によれば、トリアジントリチオールあるいはトリアジントリチオール系化合物を含む層を担持した無機フィラー粒子を樹脂基板表面に、前記無機フィラー粒子が部分的に露出するように埋設することにより、前記樹脂基板はトリアジントリチオールあるいはトリアジントリチオール系化合物とは化学結合しなくても、銅配線パタ―ンを前記樹脂基板と、前記無機フィラー粒子の表面に形成されたトリアジントリチオールあるいはトリアジントリチオール系化合物を含む層を介して、強力に密着させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1の実施形態による回路基板の製造方法を説明するフローチャートである。
【図2A】図1の回路基板の製造方法で使われるトリアジントリチオールの化学式を示す図である。
【図2B】図1の回路基板の製造方法で使われるトリアジントリチオール系化合物の一例の化学式を示す図である。
【図3】図1の回路基板の製造方法の一部をより詳細に示すフローチャートである。
【図4】図3のフローチャートに対応した無機フィラーの表面処理を説明する図である。
【図5】図1のフローチャートの一部の工程の実際を示す概略図である。
【図6】図1のフローチャートの一部の工程の実際を示す概略図である。
【図7】第1の実施形態で使われる樹脂基体の一例を示す断面図である。
【図8】図7の樹脂基体上への電着樹脂の形成を示す断面図である。
【図9】図8の樹脂基板上への銅パターンの形成を示す断面図である。
【図10】図1の実施形態の一変形例を示すフローチャートである。
【図11】第2の実施形態による回路基板の製造方法を説明するフローチャートである。
【図12】第1の実施形態により形成された回路基板を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施形態)
図1は、電着樹脂を使った第1の実施形態による回路基板の製造方法の全体を概略的に示すフローチャートである。ただし本実施形態は、回路基板以外にも、装飾用途の樹脂成型体の形成にも有用である。
【0016】
図1を参照するに、まずステップ1において粒径が0.1μm以上10μm以下の無機フィラー粒子を準備し、ステップ2において、前記無機フィラー粒子に対して、以下に図2〜図4で説明する表面処理を行う。
【0017】
次にステップ3において、かかる表面処理を施された無機フィラー粒子を、樹脂前駆体として使われる電着塗料と混合し、ステップ4において、回路基板を構成する樹脂基体上に、前記無機フィラーを含む電着塗料を電着し、前記樹脂基体の表面に、表面処理された無機フィラーを含む電着樹脂層を形成する。
【0018】
さらにステップ5において、このようにして形成された電着樹脂層上に、配線パタ―ンやビアホールとなる銅パターンを、銅メッキにより形成する。このようにして形成された銅パターンは、前記表面処理された無機フィラー粒子と強固に結合し、一方、前記無機フィラー粒子は、その平均粒径を上記の範囲に選ぶことにより電着樹脂層を構成する分子鎖中に安定かつ確実に保持される。その結果前記銅パターンは、前記回路基板表面を構成し前記無機フィラー粒子を保持する電着樹脂層に強く密着する。
【0019】
以下、図1に説明した本実施形態の技術的意義について、より詳細に説明する。
【0020】
本実施形態は、樹脂基板など、樹脂成型体の表面に配線パタ―ンなどの銅パターンないし銅箔を、トリアジントリチオール系化合物を使って強固に密着して形成する技術を提供する。
【0021】
トリアジントリチオール系化合物と銅メッキ層との間には強固な結合が生じることが指摘されているが(特許文献1,非特許文献1)、一般に樹脂とトリアジントリチオールあるいはトリアジントリチオール系化合物とは化学結合をしない。このため樹脂基板の表面にトリアジントリチオール系化合物を析出させても、析出したトリアジントリチオールあるいはトリアジントリチオール化合物は容易に樹脂基板から脱離してしまう。このためトリアジントリチオールあるいはトリアジントリチオール系化合物を使っても、従来は樹脂基板表面に銅箔ないし銅パターンを強い密着力で形成することはできなかった。
【0022】
これに対し本実施形態による回路基板の製造方法では、回路基板を構成する樹脂基体の表面に電着樹脂層を電着する際、そのフィラーとして前記図1のステップ1において無機フィラー粒子を準備し、前記ステップ2においてこの無機フィラー粒子の表面をシランカップリング剤で処理し、前記無機フィラー粒子の表面に、図2Aに化学式を示すトリアジントリチオールあるいは図2Bに化学式の一例を示すトリアジントリチオール系化合物のチオール基(−SH基)と化学反応を行い得る置換基、例えばビニル基を導入する。ただし図2B中、Mはナトリウムやカリウムなどのアルカリ金属を表す。
【0023】
これにより、まず無機フィラー粒子とトリアジントリチオールあるいはトリアジントリチオール系化合物とが、シランカップリング剤を介して強固に結合される。なお無機フィラー粒子とシランカップリング剤との間に強固な結合が生じるのは周知である。
【0024】
本実施形態では、このようなトリアジントリチオールあるいはトリアジントリチオール系化合物を表面に結合させた無機フィラー粒子が、図1のステップ3において電着塗料よりなる樹脂前駆体に混合され、このようにして得られた無機フィラー粒子を含む樹脂前駆体がステップ4において前記樹脂基体の表面に電着され硬化される。その際、樹脂成型体中において網目を構成する分子鎖の間隙は一般に0.1μm以下であるので、大きさが0.1μm以下のトリアジントリチオールあるいはトリアジントリチオール系化合物自体は、このような網目に保持することができないが、前記ステップ1において前記無機フィラー粒子の粒径を0.1μm以上、例えば1μm〜10μmとしておき、このような無機フィラー粒子の表面にトリアジントリチオールあるいはトリアジントリチオール系化合物を結合させておけば、これらのトリアジントリチオールあるいはトリアジントリチオール系化合物を樹脂表面に、前記無機フィラー粒子を介して固定することが可能となる。ただし前記無機フィラー粒子の粒径が10μmを超えると樹脂表面が粗くなり、回路基板の場合、機械的特性や電気的特性が損なわれる恐れがあり、また装飾用途の樹脂成型体の場合には美的感覚が損なわれる恐れがあるため、前記ステップ1において前記無機フィラー粒子粒径は10μmを超えないように、0.1μm〜10μm、例えば1μm〜10μmの範囲に設定するのが望ましい。ステップ1におけるこのような粒径の調整は、例えば篩や湿式分級技術などを使うことにより行うことができる。
【0025】
また前記ステップ3において、前記樹脂前駆体中に添加される無機フィラー粒子の割合を適切に、例えば前記電着樹脂の固形分に対して10重量%〜40重量%の範囲に設定することにより、ステップ4で得られた回路基板の表面に前記無機フィラーを露出させることができ、その結果、前記無機フィラー粒子の表面に形成されたトリアジントリチオールあるいはトリアジントリチオール系化合物を露出させることができる。ここで前記無機フィラー粒子の割合が10重量%未満だと、電着樹脂表面に露出される無機フィラー粒子の割合が少なすぎて、ステップ5の工程で形成される銅パターンに対して十分な密着力を実現できない。一方前記無機フィラー粒子の割合が40重量%を超えると、樹脂表面における無機フィラー粒子の割合が多くなりすぎ、無機フィラー粒子の脱落などの問題が発生する。この場合、結果的に電着樹脂層表面における銅パターンの密着力は、前記無機フィラー粒子の割合が30重量%であった場合と比較しても低下してしまう。
【0026】
本実施形態によれば、このように回路基板を構成する樹脂基体の表面にトリアジントリチオールあるいはトリアジントリチオール系化合物を結合させた無機フィラー粒子を担持した電着樹脂層を形成しておくことにより、ステップ5において銅めっきを施した場合、形成された銅パターンを前記樹脂基板表面に強力に密着させることができる。
【0027】
以下、図1のステップ2における無機フィラー粒子の表面処理について、詳細に説明する。
【0028】
図3は前記図1のステップ2における無機フィラー粒子の表面処理を示すフローチャート、図4は、図3のフローチャートに対応した表面処理の様子を示す図、さらに図5(A)〜図5(E)は、図3,4に示すプロセスの実際を示す図である。
【0029】
以下の説明では、前記無機フィラー粒子として、平均粒径が0.1μmから10μmのゼオライト粒子31を使った場合を説明するが、本実施形態はこのようなゼオライト粒子31を使った場合に限定されるものではなく、例えばアルミナ粒子、シリカ粒子、窒化ホウ素粒子、活性炭粒子、窒化ケイ素粒子、炭化珪素粒子など、様々な無機粒子を使うことが可能である。ただし、前記無機フィラー粒子として特にゼオライトのような細孔を有する多孔質の粒子を使った場合、図1のステップ2における無機フィラー表面処理の際、このような無機フィラー粒子中の細孔にも前記表面処理がなされ、図1のステップ5における銅メッキ処理の際に、前記細孔内に銅が進入することでめっきの密着力がより大きくなるという、好ましい効果を得ることができる。
【0030】
図3を参照するに、前記無機フィラー粒子の表面処理においては、ステップ11において前記ゼオライト粒子31の表面に紫外光を照射して、UVオゾン処理を施し、さらにステップ12においてこのようにUVオゾン処理を行ったゼオライト粒子31の表面にシランカップリング剤処理を行い、シランカップリング剤を結合させる。さらにステップ13において、前記シランカップリング剤を結合させたゼオライト粒子31の表面に、トリアジントリチオールあるいはトリアジントリチオール系化合物を作用させて前記シランカップリング剤に、トリアジントリチオールあるいはトリアジントリチオール系化合物のチオール(−SH)基を結合させる。
【0031】
図5(A)は、前記ステップ11のUVオゾン処理の実際を示す。
【0032】
図5(A)に示すように平均粒径が0.1μmから10μmに調製されたゼオライト粒子31は大気中、あるいは酸素雰囲気中において、石英などの紫外光を透過する透明容器41中に保持され、低圧水銀灯などのUVランプ42より、前記波長が185nm〜254nmの紫外光を照射することにより表面を活性化することで、UVオゾン処理がなされる。このようなUVオゾン処理の結果、前記ゼオライト粒子31などの無機粒子の表面には、周知のように、雰囲気の水蒸気に起因して、図4に示すように水酸基(OH)が結合する。
【0033】
次にこのようにしてUVオゾン処理を行ったゼオライト粒子31に対し、図3のステップ12において、ビニル基を有するシランカップリング剤を作用させ、前記ゼオライト粒子31の表面に、先に形成されたOH基を介して前記シランカップリング剤を結合させる。
【0034】
図5(B),(C)は、このようなシランカップリング剤処理の実際を示す。
【0035】
図5(B)を参照するに、前記UVオゾン処理を行ったゼオライト粒子31が、容器43中に保持されたシランカップリング剤中に投入され、撹拌されることにより、前記ゼオライト粒子31の表面にシランカップリング剤が付着する。さらにこのようにシランカップリング剤が付着したゼオライト粒子31を図5(C)に示すように例えば濾過により分離した上で加熱乾燥させることにより、前記シランカップリング剤が図4の「シランカップリング剤処理」として概略的に示すように前記ゼオライト粒子31表面のOH基と縮合反応を生じ、前記ゼオライト粒子31の表面に強固に結合される。なお、シランカップリング剤が様々な無機粒子の表面に強固に結合すること自体は周知のことである。
【0036】
次に、図3のステップ13において、このようにしてシランカップリング剤処理を行ったゼオライト粒子31に対し前記図2Aのトリアジントリチオールあるいは図2Bのトリアジントリチオール化合物を作用させ、前記ゼオライト粒子31の表面に結合した前記シランカップリング剤のビニル基を、トリアジントリチオールあるいはトリアジントリチオールのチオール基と反応させる。これにより、本実施形態では前記トリアジントリチオールあるいはトリアジントリチオール系化合物を前記ゼオライト粒子31の表面に強固に結合させることができる。
【0037】
図5(D),(E)は、このようなチオール基結合処理の実際を示す。
【0038】
図5(D)を参照するに、前記シランカップリング剤処理を行ったゼオライト粒子31が容器45中に保持されたトリアジントリチオールの水溶液中に投入され、撹拌されることにより、前記シランカップリング剤が結合したゼオライト粒子の表面に、トリアジントリチオールが付着する。さらにこのようにトリアジントリチオールが付着したゼオライト粒子31を図5(E)に示すように例えば濾過により分離した上で加熱乾燥することにより、前記トリアジントリチオールのチオール基が、図4において「チオール基結合」として概略的に示すように、前記シランカップリング剤のビニル基と反応して結合し、前記ゼオライト粒子31の表面に前記シランカップリング剤を介して強固に結合する。
【0039】
このように、図1のステップ2の無機フィラー粒子の表面処理を行うことにより、無機フィラー粒子として使われるゼオライト粒子31の表面にトリアジントリチオールあるいはトリアジントリチオール系化合物を強固に結合することができる。
【0040】
次に、図1のステップ3およびステップ4における電着樹脂層の形成について、図6(A)〜図6(E)を参照しながら説明する。
【0041】
図6(A)を参照するに、容器51中には「+」で示したカチオン電着塗料を溶解した水溶液52が保持されており、前記水溶液52中には「○」で示した、前記図1のステップ2の工程における表面処理を施され、トリアジントリチオールあるいはトリアジントリチオール系化合物を結合したゼオライト粒子31が分散されている。また前記水溶液52中には、一方の側に回路基板を構成する樹脂基板に対応した樹脂基体53が保持されており、他方の側に電極54が保持されている。ここで前記樹脂基体53は、例えば図7に示すようなガラスクロスに樹脂を含浸させたコア層81の上下面に電着樹脂層82A,82Bを形成した構成を有している。また前記樹脂基体53には図7に示すようにスルーホール82Cが形成されていてもよい。
【0042】
図6(A)において前記電極に正電圧を印加し樹脂基体53に負電圧を印加すると、図6(B)に示すように前記カチオン電着塗料が図中の矢印に沿って前記樹脂基体53に向かって電気泳動を生じ、同時に水溶液中のゼオライト粒子31も前記カチオン電着塗料の分子と共に前記水溶液52中を前記樹脂基体53へと移動し、前記樹脂基体53の表面に、ゼオライト粒子31を含んだ電着塗料の層が付着する。さらにこのようにして得られた電着塗料の層を前記樹脂基体53上において加熱硬化させることにより、図6(C)に示すような、前記樹脂基体53上にゼオライト粒子31を含む電着樹脂層61が形成された樹脂基板60が得られる。
【0043】
例えば図7の樹脂基体53の場合、図8に示すように前記電着樹脂層61は前記樹脂基体53の上下面および側壁面、さらにスルーホール82Cの内面を覆って形成され、これにより、図6(C)の樹脂基板60に対応した樹脂基板80が得られる。
【0044】
次に図1のステップ5における銅パターンのメッキ処理について簡単に説明する。
【0045】
本実施形態ではまず図6(C)の樹脂基板60において、前記樹脂基体53上の電着樹脂層61にパラジウムを含む化合物、例えばPd−Sn錯体を吸着させ、吸着した化合物を還元処理することにより金属パラジウムを析出させる。さらにこのようにして析出した金属パラジウムを担持した樹脂基板60を銅の無電解メッキ浴に浸漬し、前記金属パラジウムを触媒として銅メッキ液を還元し、銅層62をメッキシード層として形成する。
【0046】
さらに図6(E)の工程において、前記メッキシード層62を形成された樹脂基板60を電解メッキ浴に浸漬し、前記メッキシード層62に通電することにより、前記メッキシード層62上に銅の電解メッキ層63を形成する。
【0047】
このようにして形成された銅層63は前記電着樹脂層61中に保持されているゼオライト粒子31に接しており、前記ゼオライト粒子表面に結合しているトリアジントリチオールあるいはトリアジントリチオール系化合物のチオール基と強固に結合する。例えば特許文献1あるいは非特許文献1を参照。その結果、前記銅層63は前記樹脂基板60上に強い密着力で保持される。
【0048】
例えば図8の樹脂基板80の場合、図9に示すようにレジストパターンRを形成し、前記レジストパターンRをマスクに無電解メッキおよび電解メッキを行うことにより、前記樹脂基板80上に、銅配線パタ―ン83,84を有する回路基板90が得られる。ここで銅配線パタ―ン83は前記樹脂基板80の上下主面上に形成されているのに対し、銅配線パタ―ン84は前記樹脂基板80中に形成されたスルーホール82Cの内面を覆っている。ただし図8では、無電解メッキ層と電解メッキ層の表示は区別していない。
【0049】
電着樹脂はいわゆる重ね塗りができるため、本実施形態では、図10のフローチャートに示すように、前記図1のステップ2とステップ3の間に、無機フィラーを含有しない電着塗料溶液を使用して第1層の電着塗料層を形成する工程3Aを挟み、次いで、前記ステップ3および4を実行して前記表面処理のなされた無機フィラーを含有する電着樹脂層を形成することも可能である。ただし図10中、先に説明した部分には同一の参照符号を付し、説明を省略する。
【0050】
この場合、例えば図6(C)や図8の電着樹脂層61は、無機フィラーを含まない下層と無機フィラーを含む上層の二層構造になる。このような二層構造の電着樹脂層は、全体としての無機フィラー含有量が少なくなるために機械的特性等の劣化が少なく、一方、表面には表面処理された無機フィラーが露出しているために、めっき密着力を増大できる格別の効果を奏する。
【0051】
(第2の実施形態)
次に、通常の熱可塑性あるいは熱硬化性樹脂(以下、通常の樹脂という)を使用する第2の実施形態について説明する。
【0052】
図11は、第2の実施形態による回路基板の製造方法を示すフローチャートである。
【0053】
図11を参照するに、ステップ1とステップ2は先の実施形態と同じであり、平均粒径が0.1μm以上で10μm以下の、例えばゼオライト粒子31などよりなる無機フィラー粒子の表面に、トリアジントリチオールあるいはトリアジントリチオール系化合物が強固に結合される。
【0054】
次にステップ13において、前記通常の樹脂、すなわち熱可塑性樹脂あるいは熱硬化性樹脂を加熱ニーダ等で加熱溶融して混合攪拌し、この混合攪拌時に、前記表面処理済みの無機フィラーを所定量添加する。前記樹脂が液状樹脂であり室温で混合攪拌する場合には、この室温での混合攪拌時に、前記表面処理済みの無機フィラーを所定量添加する。その際、銅めっきの密着力向上効果を有効に発現させるためには、樹脂固形分100重量部に対する表面処理済み無機フィラー粒子の添加量を、先の実施形態の場合と同様に、10重量部以上、40重量部以下の割合とするのが好ましい。前記無機フィラー粒子の割合が10重量部以下では銅めっきの密着力は向上せず、40重量部以上では、かえって銅の密着力は低下し、また、樹脂自体の機械的特性や美観等に悪影響が生じることがあるためである。
【0055】
本実施形態で使用できる樹脂はその種類を問わない。たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ブタジエン樹脂、ABS樹脂、PMMA樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等多くの樹脂を対象とすることができる。また、使用できる無機フィラー粒子も、平均粒子径が0.1μm以上で10μm以下であればいずれの種類を問わず使用できる。たとえば無機フィラー粒子として、粉体状、粒子状のアルミナ、シリカ、ゼオライト、窒化ほう素、活性炭、窒化ケイ素、炭化珪素等をあげることができる。
【0056】
このようにして無機フィラー粒子と共に混練された樹脂は、ステップ14において押し出し成型、射出成型などの成型技術により所望の回路基板形状に成型され、ステップ15において、熱硬化性樹脂の場合には加熱して硬化させ、熱可塑性樹脂の場合には冷却して硬化させる。
【0057】
さらにステップ16において、先の実施形態のステップ5と同様にして、得られた樹脂基板上に所望の銅パターンが形成される。
【0058】
図12は、本実施形態により得られる回路基板90の概略的構成を示す。
【0059】
図12を参照するに、上記の図11のステップ1〜ステップ15の工程により形成された樹脂基板91上には、ステップ16の工程において銅配線パタ―ン92が形成されているが、図12に示すように前記樹脂基板91中に一様にゼオライト粒子31などの無機フィラー粒子が分散しており、各々の無機フィラー粒子はその表面にトリアジントリチオール系化合物を強固に結合している。
【0060】
そこで、前記樹脂基板91上にステップ16の工程により銅配線パタ―ン92を形成した場合、形成された銅配線パタ―ン92は、前記樹脂基板91の表面に露出したゼオライト粒子31などの無機フィラー粒子の表面に形成されたトリアジントリチオールあるいはトリアジントリチオール系化合物と強固に結合し、結果的に樹脂基板91の表面に強固に結合する。
【0061】
また図12の回路基板90において樹脂基板91中に例えば図7のスルーホール82Cと同様なスルーホールを形成する場合にも、形成されたスルーホールの内壁面に露出する無機フィラー粒子があれば、銅メッキ膜はこのような露出した無機フィラー粒子と強固に結合するため、前記内壁面を覆う銅メッキ膜に対しても、強力な密着力が得られる。
【0062】
本実施形態では、前記無機フィラー粒子が0.1μm以上の平均粒径を有しているため、無機フィラー粒子は、樹脂基板91中における分子鎖に安定に保持され、容易に脱落することはない。
【0063】
以下、第1および第2の実施形態に対応した実施例について説明する。
【実施例1】
【0064】
トリアジントリチオールで表面処理したゼオライトの調製
ゼオライト粉末(和光純薬株式会社製ゼオライトA−3)を目開き10μmの精密ふるいにより篩い分け、篩い目の通過物を試料とした。この試料を底面が平らな石英容器に移し、低圧水銀灯(岩崎電気製アイーUV−オゾン洗浄装置)により、120秒間UVオゾン処理を行った。容器中のゼオライトを軽く攪拌して、再び、120秒間UVオゾン処理を行った。合計5回UVオゾン処理を行った。次に、ビニルトリメチルシランの1.0重量%水溶液を1kg調製し、この水溶液中に、上記UVオゾン処理を行ったゼオライト50gを入れて、容器全体を5分間攪拌した。次いで前記水溶液からゼオライトを分離し、十分に水洗し、100℃で1時間、乾燥および熱処理を行った。これらの操作により、ゼオライトの表面および細孔内は、ビニルシランカップリング剤と結合する。
【0065】
次に、トリアジントリチオールのモノナトリウム塩(三協化成株式会社製商品名サンチオールN−1)の1重量%水溶液を調製しこれに、シランカップリング剤で表面処理したゼオライト粉末を入れて100℃で30分間、浸漬・攪拌を行った。次にゼオライトのみを取り出し、120℃の恒温槽で30分間熱処理した。これによりシランカップリング剤が有するビニル基とチオール基のイオウ原子が結合し、結果として、トリアジントリチオールが表面に結合したゼオライトを得ることができた。
【実施例2】
【0066】
(1)電着樹脂塗膜の形成
カチオン電着樹脂として、アミノアクリル樹脂系カチオン電着塗料(株式会社シミズ 商品名:エレコートCM)を使用した。この塗料溶液中に、前記実施例1で表面処理を施したゼオライトを、樹脂固形分に対して25重量%になるように添加した。均一混合後に、銅板を負極として50Vで120秒間電着した。形成できた膜厚は約25μmであった。さらに120℃で60分間熱処理し、加熱硬化した電着塗膜を得た。
【0067】
(2)銅めっきおよびめっきの密着強度
次にこの試験片を使用して無電解銅めっきを行い、シード層を形成した。前記シード層の形成にはPd/Snコロイド溶液を使用し、また、ホルムアルデヒドを還元剤とする硫酸銅溶液中に室温で30分間浸漬することにより、無電解銅めっきを行った。次にこのようにして形成された無電解銅めっきシード層を陰極として電気銅めっきを行い、前記電着塗膜上に厚さ約35μmの銅めっき薄膜を形成した。JIS−C6481に準じて前記銅めっき薄膜の密着強度を測定したところ、10N/cmの密着力が得られるのが確認された。
【実施例3】
【0068】
(1)液状エポキシ樹脂組成物の成形
液状エポキシ樹脂(ナガセケムテックス株式会社製CY230)100重量部、および硬化剤(ナガセケムテクス株式会社製
ハードナーHY951)10重量部、および、前記実施例1で調製したゼオライトを30重量部添加して十分に攪拌し、底面が平らな容器に混合樹脂を流し込み、その後50℃で24時間熱処理を行い、100mm×100mm×5mmのエポキシ樹脂の平板を成形した。
【0069】
(2)銅めっきおよびめっきの密着強度
上記平板を使用して無電解銅めっきを行いシード層を形成した。この場合もシード層の形成にはPd/Snコロイド溶液を使用し、また、ホルムアルデヒドを還元剤とする硫酸銅溶液中に室温で30分間浸漬することにより、無電解銅めっきを行った。次にこのエポキシ樹脂の平板上に形成された無電解メッキシード層を陰極として電気銅めっきを行い、厚さ約35μmの銅めっき薄膜を形成した。JIS−C6481に準じて銅めっきの密着強度を測定し、12N/cmの密着力を得た。
【0070】
比較例1
電着塗料の場合
実施例1と同じアミノアクリル樹脂系カチオン電着塗料を使用し、無機充填材を含有させずに、実施例1と同様の条件で電着操作を行い、銅板上に樹脂被膜を形成した。無電解銅めっきおよび電気銅めっきも実施例1と同様に行い、めっき密着力を測定したところ2N/cmであった。
【0071】
比較例2
液状エポキシ樹脂組成物の場合
実施例2と同じエポキシ樹脂を使用し、無機充填材を添加しないエポキシ樹脂の平板成形物を作成した。この樹脂の板に対して、実施例と同じく、無電解銅めっきに続いて電気銅めっきを行い、めっき密着力を測定した。めっき密着力は2N/cmであり、実施例にくらべるとはるかに小さい値であった。
【0072】
このように上記第1および第2の実施形態によれば、樹脂基板80あるいは90上に形成された銅メッキ膜は、前記樹脂基板中に保持されて樹脂基板表面に露出し、表面にトリアジントリチオールあるいはトリアジントリチオール系化合物を担持した無機フィラー粒子を介して、前記樹脂基板の表面に強固に結合する。
【0073】
なお本発明は上記の回路基板の製造に限定されるものではなく、例えば装飾用途などの様々な樹脂成型体の表面に銅箔を強固に密着して形成する場合にも有用である。
【0074】
なお以上の説明では、前記無機フィラー粒子表面にシランカップリング剤を介して結合される化合物がトリアジントリチオールあるいはトリアジントリチオール系化合物であるとしたが、本実施形態はこのような無機フィラー粒子の表面にチオール基を結合することにより、無機フィラー粒子を介した銅パタ―ンの樹脂基板上への強力な密着を実現するものであるため、前記無機フィラー粒子の表面にチオール基を結合できるものであれば、前記トリアジントリチオールあるいはトリアジントリチオール化合物に限定されるものではなく、他にトリアジンジチオールやトリアジンジチオール系化合物を含むトリアジンチオールあるいはトリアジンチオール化合物を使うことも可能である。
【0075】
以上、本発明を好ましい実施形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した要旨内において様々な変形・変更が可能である。
(付記1)
樹脂基板と、少なくとも前記樹脂基板表面に埋設され、前記樹脂基板表面に部分的に露出された無機フィラー粒子と、前記無機フィラー粒子の表面に形成されたトリアジンチオールあるいはトリアジンチオール系化合物を含む層と、前記樹脂層表面に形成され、前記無機フィラー粒子と前記トリアジンチオールあるいはトリアジンチオール系化合物を含む層で接する銅パタ―ンと、を含むことを特徴とする回路基板。
(付記2)
前記トリアジンチオールはトリアジントリチオールを含み、トリアジンチオール系化合物はトリアジントリチオール系化合物を含むことを特徴とする付記1記載の回路基板。
(付記3)
前記無機フィラー粒子は、0.1μm以上で10μm以下の平均粒径を有することを特徴とする付記1または2記載の回路基板。
(付記4)
前記無機フィラー粒子は、前記樹脂基板中に、前記樹脂基板を構成する樹脂1フィラー量部に対して10重量部以上で40重量部以下の割合で含まれることを特徴とする付記1〜3のうち、いずれか一項記載の回路基板。
(付記5)
前記無機フィラー粒子は、アルミナ、シリカ、ゼオライト、窒化ホウ素、窒フィラー、炭化珪素、活性炭よりなる群から選ばれることを特徴とする付記1〜4のうち、いずれか一項記載の回路基板。
(付記6)
前記無機フィラー粒子は前記樹脂基板の表面の電着樹脂層中に埋設されていることを特徴とする付記1〜5のうち、いずれか一項記載の回路基板。
(付記7)
前記樹脂基板は熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂よりなることを特徴とする付記1〜5のうち、いずれか一項記載の回路基板。
(付記8)
前記樹脂基板はポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ブタジエン樹脂、ABS樹脂、PMMA樹フィラーコーン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂よりなる群から選ばれ、前記無機フィラー粒子は前記樹脂基板中に一様に分布していることを特徴とする付記7記載の回路基板。
(付記9)
無機フィラー粒子の表面に、UVオゾン処理によりOH基を形成する工程と、
前記OH基が結合した無機フィラーをビニル基を有するシランカップリング剤により処理する工程と、
前記シランカップリング剤により処理した無機フィラー粒子に、トリアジンチオール、またはトリアジンチオール系化合物を結合する工程と、
前記トリアジンチオールまたはトリアジンチオール系化合物を結合したフィラー無機フィラー粒子を樹脂前駆体中に混合する工程と、
前記樹脂前駆体を硬化させることにより樹脂基板を形成する工程と、
前記樹脂基板上に銅パタ―ンをメッキにより形成する工程と、
を含むことを特徴とする回路基板の製造方法。
(付記10)
前記トリアジンチオールはトリアジントリチオールを含み、トリアジンチオール系化合物はトリアジントリチオール系化合物を含むことを特徴とする付記9記載の回路基板の製造方法。
(付記11)
前記無機フィラーは0.1μm以上10μm以下の平均粒径を有することを特徴とする付記9または10記載の回路基板の製造方法。
(付記12)
前記無機フィラー粒子を前記樹脂前駆体中に混合する工程は、前記無機フィラー粒子を電着塗料溶液中に分散する工程と、前記電着塗料樹脂中に配設された樹脂基体に電圧を印加し、前記樹脂基体上に前記樹脂フィラー粒子が分散した電着樹脂層を形成する工程とを含むことを特徴とする付記9〜11のうち、いずれか一項記載の回路基板の製造方法。
(付記13)
前記無機フィラー粒子を前記樹脂前駆体中に混合する工程は、前記樹脂前駆体中に前記無機フィラー粒子を混合する工程を含み、前記樹脂基板を形成する工程は、前記無機フィラー粒子を混合された前記樹脂前駆体を成形の上、硬化させる工程を含むことを特徴とする付記9〜11記載の回路基板の製造方法。
(付記14)
無機フィラー粒子の表面に、UVオゾン処理によりOH基を形成する工程と、
前記OH基が結合した無機フィラーを、ビニル基を有するシランカップリング剤により処理する工程と、
前記シランカップリング剤により処理した無機フィラー粒子に、トリアジンチオール、またはトリアジンチオール系化合物を結合する工程と、
前記トリアジンチオールまたはトリアジンチオール系化合物を結合したフィラー無機フィラー粒子を樹脂前駆体中に混合する工程と、
前記樹脂前駆体を硬化させることにより樹脂成型体を形成する工程と、
前記樹脂成型体上に銅箔を、メッキにより形成する工程と、を含むことを特徴とする樹脂成形体上への銅箔の形成方法。
【符号の説明】
【0076】
31 無機フィラー粒子
41 石英容器
42 UVランプ
43,45,51 容器
44 シランカップリング剤
46 トリアジントリチオール水溶液
52 カチオン電着塗料水溶液
53 樹脂基体
54 電極
60,80,91 樹脂基板
61 電着樹脂
62 銅無電解メッキ層
63 銅メッキ層
81 ガラスクロス
82A,82B ビルドアップ樹脂層
82C スルーホール
83,84,92 銅メッキパタ―ン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂基板と、少なくとも前記樹脂基板表面に埋設され、前記樹脂基板表面に部分的に露出された無機フィラー粒子と、前記無機フィラー粒子の表面に形成されたトリアジンチオールあるいはトリアジンチオール系化合物を含む層と、前記樹脂層表面に形成され、前記無機フィラー粒子と前記トリアジンチオールあるいはトリアジンチオール系化合物を含む層で接する銅パタ―ンと、を含むことを特徴とする回路基板。
【請求項2】
前記トリアジンチオールはトリアジントリチオールを含み、トリアジンチオール系化合物はトリアジントリチオール系化合物を含むことを特徴とする請求項1記載の回路基板。
【請求項3】
前記無機フィラー粒子は、0.1μm以上で10μm以下の平均粒径を有することを特徴とする請求項1または2記載の回路基板。
【請求項4】
前記無機フィラー粒子は、前記樹脂基板中に、前記樹脂基板を構成する樹脂1フィラー量部に対して10重量部以上で40重量部以下の割合で含まれることを特徴とする請求項1〜3のうち、いずれか一項記載の回路基板。
【請求項5】
前記無機フィラー粒子は、アルミナ、シリカ、ゼオライト、窒化ホウ素、窒フィラー、炭化珪素、活性炭よりなる群から選ばれることを特徴とする請求項1〜4のうち、いずれか一項記載の回路基板。
【請求項6】
無機フィラー粒子の表面に、UVオゾン処理によりOH基を形成する工程と、
前記OH基が結合した無機フィラーをビニル基を有するシランカップリング剤により処理する工程と、
前記シランカップリング剤により処理した無機フィラー粒子に、トリアジンチオール、またはトリアジンチオール系化合物を結合する工程と、
前記トリアジンチオールまたはトリアジンチオール系化合物を結合したフィラー無機フィラー粒子を樹脂前駆体中に混合する工程と、
前記樹脂前駆体を硬化させることにより樹脂基板を形成する工程と、
前記樹脂基板上に銅パタ―ンをメッキにより形成する工程と、
を含むことを特徴とする回路基板の製造方法。
【請求項7】
無機フィラー粒子の表面に、UVオゾン処理によりOH基を形成する工程と、
前記OH基が結合した無機フィラーを、ビニル基を有するシランカップリング剤により処理する工程と、
前記シランカップリング剤により処理した無機フィラー粒子に、トリアジンチオール、またはトリアジンチオール系化合物を結合する工程と、
前記トリアジンチオールまたはトリアジンチオール系化合物を結合したフィラー無機フィラー粒子を樹脂前駆体中に混合する工程と、
前記樹脂前駆体を硬化させることにより樹脂成型体を形成する工程と、
前記樹脂成型体上に銅箔を、メッキにより形成する工程と、を含むことを特徴とする樹脂成形体上への銅箔の形成方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−44062(P2012−44062A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−185387(P2010−185387)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】