説明

回路基板の検査装置

【課題】回路基板が実際に使用される環境で、回路基板の電気特性を検査するための回路基板の検査装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る検査装置10は、回路基板20における回路の電気特性である抵抗値を測定する電気特性測定部としての抵抗値測定部12と、回路基板20の温度を測定する温度測定部13と、抵抗値測定部12が抵抗値を測定した時刻を計測する計時部14と、抵抗値測定部12が測定した抵抗値を、温度測定部13が測定した温度及び計時部14が計測した時刻と関連付けて記憶する記憶部としてのメモリ15と、車両から電力の供給を受けて検査装置10の各部に電力を供給する電源部17と、上記各部を制御する制御部11と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板の検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、能動素子、受動素子等の回路素子が搭載された回路基板が種々な電子装置に組み込まれている。この回路基板に関して、例えば、新しい材料や新しい構造を用いた回路基板が開発された場合、新しい回路基板が実際の電子装置に組み込まれる前に、その耐久性の評価が行われる。
【0003】
また、最近は電子装置の小型化及び高性能化に伴って、電子装置に組み込まれる回路基板に搭載される回路素子の高密度化が進んでいる。この回路素子の高密度化に伴って、回路基板の配線は、狭くなっている。また、このような回路基板では、複数の回路層が絶縁層を介在させて積層された多層構造を有しているものがあり、回路層同士がビア等を用いて接続されている。そのため、回路基板の配線は、多数の接続箇所を有しており、電気的に接続不良が生じるおそれが増加している。
【0004】
回路基板の耐久性の評価は、例えば、デイジーチェーンパターンと呼ばれる検査用の回路パターンを有する検査用回路基板を用いた検査結果に基づいて行なう方法がある。この検査方法では、検査用回路基板に高温、高湿等の負荷を長時間又は繰り返し与える耐久性試験の後、常温の環境において検査用回路基板の接続抵抗又は絶縁抵抗等の電気特性を測定し、電気特性の耐久性試験前後の変化を見て、回路基板の耐久性を評価する。
【0005】
しかし、上記検査方法では、検査用回路基板の電気特性の測定が耐久性試験の前後のみにしか行えないので、測定を耐久試験中に行うことができない。そのため、検査用回路基板の電気特性を測定する環境が、温度等に関して、回路基板が実際に使用される環境とは大きく異なっている場合があり、回路基板の耐久性の評価を正しく行えないおそれがある。
【0006】
また、検査用回路基板は、回路素子が実装されていない基板単体であるので、基板に回路素子が実装された状態とは、温度変化、振動又は衝撃等に対する耐久性が大きく異なる場合がある。
【0007】
また、回路基板の耐久性を検査する場合には、なるべく人間が関与する割合を減らして、自動的に回路基板の検査が行われることが望ましい。このことは、特に、回路基板の耐久性を、実際に使用される環境で行う場合に求められる場合が多い。
【0008】
例えば、特許文献1には、自己診断機能を有し、故障判定を自ら行える無線端末が開示されている。
【0009】
【特許文献1】特許第3528837号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述した課題を解決するために、回路基板の検査装置を提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は、回路基板が実際に使用される環境で、回路基板の電気特性を検査するための回路基板の検査装置を提供することを目的とする。
【0012】
更に、本発明は、上記検査装置を用いて、車両に搭載される回路基板を検査する回路基板の検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決するために、本発明に係る回路基板の検査装置は、回路基板における回路の電気特性を測定する電気特性測定部(12)と、回路基板の温度を測定する温度測定部(13)と、上記電気特性測定部(12)が電気特性を測定した時刻を計測する計時部(14)と、上記電気特性測定部(12)が測定した電気特性を、上記温度測定部(13)が測定した温度及び上記計時部(14)が計測した時刻と関連付けて記憶する記憶部(15)と、を備えていることを特徴とする。
【0014】
これにより、回路基板が実際に使用される環境で、回路基板の電気特性を検査することができる。特に、回路基板が実際に使用される環境で回路基板を検査し、その耐久性を評価することができる。
【0015】
また、本発明に係る回路基板の検査装置は、車両から電力の供給を受ける電源部(17)を更に備えていることが好ましい。
【0016】
これにより、車両に搭載されて使用される回路基板の電気特性を、車両から電力の供給を受けながら検査することができる。特に、回路基板が車両に実際に搭載されて使用される環境で、回路基板の耐久性を検査して評価することができる。また、検査装置で用いる電力が車両から供給されるので、検査装置の電源部を、小型で軽量な構成とすることができる。
【0017】
また、本発明に係る回路基板の検査装置は、上記電気特性測定部(12)が、回路基板の電気特性として、抵抗値を測定することが好ましい。
【0018】
これにより、回路基板の接続抵抗又は絶縁抵抗等の抵抗値を検査することができる。特に、回路基板が実際に使用される環境で、回路基板の接続抵抗又は絶縁抵抗等の抵抗値に関する耐久性を検査して評価することができる。
【0019】
また、本発明に係る回路基板の検査装置は、検査する回路基板と一体に形成されていることが好ましい。
【0020】
これにより、検査用回路基板と検査装置とが一体となり、取り扱いが容易となる。
【0021】
また、本発明に係る回路基板の検査装置は、上記記憶部(15)に記憶した電気特性、温度及び時刻を、外部に出力するための出力部(16)を更に備えていることが好ましい。
【0022】
これにより、検査が終了した後、検査データを検査装置の外部に取り出して、検査結果を解析することができる。
【0023】
また、本発明に係る回路基板の検査方法は、回路基板、及び回路基板に接続された検査装置(10)を車両に搭載し、車両を走行させながら、回路基板の電気特性を、上記検査装置(10)が有する電気特性測定部(12)を用いて測定し、回路基板の温度を、上記検査装置(10)が有する温度測定部(13)を用いて測定し、且つ回路基板の電気特性を測定した時刻を、上記検査装置(10)が有する計時部(14)を用いて計測し、測定した電気特性を、測定した温度及び計測した時刻と関連付けて上記検査装置(10)が有する記憶部(15)に記憶し、車両の走行が終了した後、上記記憶部(15)に記憶された電気特性を、上記記憶部(15)に関連付けられて記憶された温度及び時刻と共に解析する、ステップを備えていることを特徴とする。
【0024】
これにより、車両に搭載される回路基板を検査することができる。特に、回路基板が車両に実際に搭載されて使用される環境で、回路基板の耐久性を検査して評価することができる。
【0025】
また、本発明に係る回路基板の検査方法は、上記検査装置(10)の電力を、搭載した車両の電源から供給することが好ましい。
【0026】
これにより、車両に搭載されて使用される回路基板の電気特性を、車両から電力の供給を受けながら検査することができる。特に、回路基板が車両に実際に搭載されて使用される環境で、回路基板の耐久性を検査して評価することができる。
【0027】
更に、本発明に係る回路基板の検査方法は、回路基板を、回路基板が車両に実際に配置されて使用される部位に搭載することが好ましい。
【0028】
これにより、車両に搭載されて使用される回路基板を、実際に搭載される車両の部位に配置して検査を行なうことができる。
【0029】
なお、上記各構成要素に付した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成要素との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明に係る検査装置の好ましい実施形態を、図面を参照して説明する。但し、本発明の技術範囲はそれらの実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0031】
図1は、本実施形態の検査装置、及びこの検査装置を用いて検査される回路基板を示す図である。図2は、図1の検査装置の回路ブロック図である。
【0032】
本実施形態の検査装置10は、小型且つ軽量であり、車両に搭載されて使用される回路基板20の電気特性を、回路基板20が実際に使用される環境で検査する装置である。
【0033】
回路基板は、プリント配線板又はプリント回路板とも呼ばれることもある。この回路基板が、新しい材料や新しい構造を用いて開発された場合、この新しい回路基板が実際の電子装置に組み込まれる前に、その耐久性の評価が行われる。検査装置10は、この回路基板の耐久性の評価を行うために、回路基板が車両に搭載されて実際に使用される環境で、回路基板の電気特性を検査する装置である。具体的には、回路基板20を車両に搭載して耐久試験を行い、この耐久試験中における回路基板20の電気特性を、検査装置10が検査する。
【0034】
図1に示すように、検査装置10により検査される回路基板20は、基板ホルダ21により保持されている。回路基板20は、配線を介して検査装置10に接続されている。基板ホルダ21により保持された回路基板20は、車両の所定の部位に固定されて、検査装置10により検査される。
【0035】
回路基板20は、図2に示すように、複数の回路層21が絶縁層23を介して積層された多層構造を有している。回路層21同士は、ビア22を介して接続されている。回路基板20は、一方の端子20aと他方の端子20bとの間が電気的に直列に接続された構成を有している。
【0036】
回路基板20は、回路層21とビア22との接続箇所、又は回路層21内の接続箇所のような接続部分を、例えば数百から数十万箇所有している。回路基板20は、これらの接続部分を全て直列に接続しても良いし、又は、これらの接続部分を複数に分割して、分割されたそれぞれの部分内を直列に接続しても良い。
【0037】
図1に示す例の回路基板20は、上記接続部分を複数に分割しており、一方の端子20aと他方の端子20bとからなる端子の組を複数有している。
【0038】
回路基板20としては、実際の電子製品に組み込まれるものと同様に、回路層21に、集積回路素子、能動素子、受動素子等の回路素子が実装された基板を用いても良いし、回路素子を実装していないデイジーチェーンパターンを用いても良い。デイジーチェーンパターンは、接続抵抗の異常の有無を検査したい箇所を多数個直列に数珠繋ぎして接続したもので、直列抵抗すなわち一方の端子20aと他方の端子20bとの間の抵抗値を検査することによって回路中の異常の有無を判定できるようにした回路パターンである。
【0039】
また、回路基板の開発と平行して、その耐久性の評価を行いたい場合には、最終的に電子製品に組み込まれる回路基板とは異なるものの、回路層21に回路素子を実装した検査用回路基板を用いることが、開発の初期から耐久性の向上を行ない、且つデイジーチェーンパターンを用いる場合よりも精度の高い検査を行なう観点から好ましい。
【0040】
検査装置10は、図2に示すように、回路基板20における回路の電気特性である抵抗値を測定する電気特性測定部としての抵抗値測定部12と、回路基板20の温度を測定する温度測定部13と、抵抗値測定部12が抵抗値を測定した時刻を計測する計時部14と、抵抗値測定部12が測定した抵抗値を、温度測定部13が測定した温度及び計時部14が計測した時刻と関連付けて記憶する記憶部としてのメモリ15と、車両から電力の供給を受けて検査装置10の各部に電力を供給する電源部17と、上記各部を制御する制御部11と、を備えている。
【0041】
また、検査装置10は、メモリ15に記憶した抵抗値、温度及び時刻を、外部PC(パソコン)40に出力するための入出力部としてのインターフェース16を備えている。
【0042】
検査装置10の抵抗値測定部12は、回路基板20の抵抗値を測定する。回路基板20は、上述したように、多数の接続部分を有しており、抵抗値測定部12は、回路基板20に生じた断線等を検知するために、一方の端子20aと他方の端子20bとの間の抵抗値を測定する。
【0043】
抵抗値測定部12は、図2に示すように、基準抵抗12cと、基準抵抗12cにおける電圧降下を測定する電圧計12bと、電圧計12bが測定した電圧のアナログ値を入力してデジタル値に変換するアナログ/デジタルコンバータ(以下、単にA/Dコンバータともいう)12aと、により構成されている。
【0044】
基準抵抗12aの一方は、回路基板20の一方の端子20aに接続されており、回路基板20の他方の端子20bはアースされている。このように、基準抵抗12aと回路基板20とは直列に接続されている。基準抵抗12aの他方には、制御部11によって、所定の電圧が印加されている。なお、アースは、車両の車体に接続されている。
【0045】
電圧計12bは、基準抵抗12aにおける分圧を測定して、測定した電圧のアナログ値をA/Dコンバータ12cに出力する。A/Dコンバータ12cは、入力した電圧のアナログ値をデジタル値に変換して、制御部11に出力する。
【0046】
基準抵抗12aの他方と、回路基板20の他方の端子20bとの間には、常に所定の電圧が印加されているので、基準抵抗12aにおける分圧を測定することにより、回路基板20の抵抗値を求めることができる。
【0047】
図2には、抵抗値測定部12を一つしか示していないが、実際には、検査装置10は、複数の抵抗値測定部12を有しており、一度に複数の抵抗値を測定できる。
【0048】
検査装置10の温度測定部13は、回路基板20の温度を測定する。例えば、回路基板20の断線は、温度が変化する場合に生じることが多い。また、回路基板20の抵抗値が、高温では異常値を示すのに、常温では正常値に近い値を示す場合がある。このような場合には、抵抗値と共に温度を測定することにより、高温時だけ抵抗値が異常値を示すといった問題点を検出することができる。そこで、検査装置10は、抵抗値と温度との関係を調べるために、抵抗値の測定と共に回路基板20の温度を測定する。
【0049】
温度測定部13は、図2に示すように、サーミスタ13aと、サーミスタ13aにおける電圧降下を測定する電圧計13bと、電圧計13bが測定した電圧のアナログ値を入力してデジタル値に変換するアナログ/デジタルコンバータ(以下、単にA/Dコンバータともいう)13cと、により構成されている。
【0050】
サーミスタ13aの一方には、制御部11から所定の電流が流されており、サーミスタ13aの他方は、アースされている。電圧計13bは、サーミスタ13aにおける電圧降下を測定し、測定した電圧のアナログ値をA/Dコンバータ13cに出力する。A/Dコンバータ13cは、入力した電圧のアナログ値をデジタル値に変換して、制御部11に出力する。
【0051】
サーミスタ13aは、温度の変化に対応して、抵抗値が変化する素子であり、この素子に関する抵抗値と温度との関係は事前に把握されている。サーミスタ13aには所定の電流が流されているので、サーミスタ13aの抵抗値が変化すると、サーミスタ13aにおける電圧降下が対応して変化する。この電圧降下を電圧計13bによって測定することにより、サーミスタ13aの抵抗値を求め、この抵抗値から回路基板20の温度を求めることができる。
【0052】
サーミスタ13aは、検査対象である回路基板20の温度を正確に測定できる部位に設置することが好ましい。本実施形態では、図1に示すように、サーミスタ13aを回路基板20の表面に設置している。図1に示す例では、サーミスタ13aと検査装置10の本体とが、ケーブル配線を用いて接続されているが、サーミスタ13aを回路基板20上に設けたプリント配線を通して回路基板20上のコネクタに接続し、このコネクタを介してサーミスタ13aと検査装置10の本体とを接続しても良い。
【0053】
また、サーミスタ13aの設置部位としては、例えば、断線の可能性が予想されるビア等が回路基板20に存在する場合には、そのビアが配置されている部位に対応する表面の部分にサーミスタ13aを設置しても良い。
【0054】
サーミスタ13aとしては、例えば、温度の上昇と共に抵抗値が増加するPTCサーミスタ、又は温度の上昇と共に抵抗値が減少するNTCサーミスタ等を用いることができる。
【0055】
図1及び図2には、温度測定部13を一つしか示していないが、検査装置10は、複数の温度測定部13を有していても良い。これにより、検査装置10は、抵抗値を測定する部位それぞれに対応した部分の温度を測定できる。制御部11は、抵抗値を測定した時の回路基板20の温度を、抵抗値と関連付けてメモリ15に記憶する。
【0056】
計時部14は、日時及び時刻データを作成する時計機能を有している。計時部14は、作成した日時及び時刻データを制御部11に出力する。計時部14は、内蔵電池を有しており、外部からの電力の供給を受けなくても動作する。制御部11は、抵抗値を測定した時刻を、抵抗値と関連付けてメモリ15に記憶する。
【0057】
メモリ15は、回路基板20の抵抗値を、温度測定部13が測定した温度及び計時部が計測した時刻と関連付けて記憶する。検査装置10は、車両から電力の供給を受けて動作するので、車両から取り外されても、メモリ15に記憶されたデータが消去しないように、本実施形態の検査装置10は、メモリ15として不揮発性メモリを有している。また、メモリ15には、制御部11が実行する所定のプログラムも記憶されている。
【0058】
メモリ15は、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリと共に、ランダムアクセスメモリ等の揮発性メモリとにより構成することができる。
【0059】
制御部11は、抵抗値測定部12が測定した基準抵抗12aにおける電圧降下から、回路基板20の抵抗値を求める。また、制御部11は、回路基板20の抵抗値を求めた時における回路基板20の温度を、温度測定部13が測定したサーミスタ13aにおける電圧降下から求める。更に、制御部11は、回路基板20の抵抗値を求めた時の時刻を、計時部14から入力する。
【0060】
そして、制御部11は、回路基板20の抵抗値を、回路基板20の温度及び計時部が計測した時刻と関連付けて、メモリ15に記憶する。本実施形態では、制御部11は、抵抗値を測定した時刻として、日、時間及び分をメモリ15に記憶する。
【0061】
制御部11は、回路基板20の抵抗値の測定を、所定の間隔で行なう。この間隔は、検査の目的、記憶部15の記憶容量等に基づいて、適宜設定することができる。
【0062】
例えば、回路基板20が車両のエンジン近傍に搭載されており、温度の急激な増加又は低下といった状態で回路基板20の断線が予想される場合には、車両の走行パターンの初期における所定の間及び終了前における所定の間では、相対的に短い間隔で回路基板20の抵抗値の測定を行う。一方、車両のその他の走行パターンの時には温度変化が少ないので、制御部11は、相対的に長い間隔で回路基板20の抵抗値の測定を行なっても良い。
【0063】
制御部11は、メモリ11に記憶された所定のプログラムに基づいて動作し、検査装置10の各部を制御する。制御部11は、例えば、中央演算装置(CPU)と、リードオンリーメモリ(ROM)又はランダムアクセスメモリ(RAM)等の半導体メモリ、定電圧源、定電流源等を用いて構成することができる。
【0064】
また、インターフェース16は、制御部11により制御されて、メモリ15に記憶された抵抗値、温度又は時刻等のデータを、外部PC40に出力する。そして、外部PC40において、検査装置10で測定した回路基板20の抵抗値等のデータの解析を行なう。なお、図2では、インターフェース16に外部PCが接続された状態が示されているが、通常、外部PC40はインターフェース16に接続されておらず、外部PC40は、回路基板20の検査終了後に、メモリ15に記憶されたデータを取り出す際にインターフェース16に接続される。
【0065】
また、外部PC40は、インターフェース16を介して、メモリ15に記憶されているプログラム等を変更又は置換することができる。
【0066】
電源部17は、検査装置10が回路基板20と共に搭載された車両から電力の供給を受けて、検査装置10の制御部11を含む各部(具体的には、図2の一点鎖線で囲まれた部分に配置された制御部11、メモリ15及びインターフェース16)に電力を供給する。電源部17から電力が供給される制御部11は、抵抗値測定部12及び温度測定部13に電力を供給する。
【0067】
電源部17は、検査装置10が回路基板20と共に車両に搭載されて、車両の電源30に接続される。
【0068】
検査装置10は、車両の電源30が電源部17へ電力を供給して、電源部17が検査装置10の各部に電力の供給を開始すると、初めて動作を開始する。また、検査装置10は、車両の電源30が電源部17への電力の供給を停止して、電源部17が検査装置10の各部への電力の供給を停止すると、動作を終了する。
【0069】
上述した検査装置10は、図1に示すように、配線された基板上に各種の回路素子が実装されて構成されている。検査装置10は、回路基板20の耐久試験中に、検査装置10自体が断線等の不具合を生じないように、各回路素子を接続する配線の太さ、配線同士の間隔等の設計を耐久性の高いものにすることが好ましい。具体的には、検査装置10の耐久性は、検査する回路基板20よりも高いことが好ましい。
【0070】
次に、上述した検査装置を用いて、車両に搭載される回路基板を検査する方法の一実施態様を、図3を用いて説明する。図3は、本発明に係る回路基板の検査方法の一実施態様のフローチャートである。検査装置10は、制御部11がメモリ15に記憶された所定のプログラムを実行することにより動作し、各部を制御する。
【0071】
まず、ステップS10において、図1に示す回路基板20及び回路基板の検査装置10を用意する。サーミスタ13aは、図1に示すように、回路基板20の所定の部位に固定されている。検査装置10のメモリ15には、検査の目的等に応じたプログラムが記憶されている。
【0072】
次に、ステップS20において、回路基板20、及び回路基板20に接続された検査装置10を、ステー等を用いて、車両に搭載して固定する。回路基板20は、回路基板20が車両に実際に配置されて使用される部位に搭載することが好ましい。即ち、回路基板20は、それが組み込まれる電子装置が配置される車両の部位又はその近傍に搭載されて、検査が行なわれることが好ましい。例えば、回路基板20が車両のエンジンを制御するECUに組み込まれて使用されるものである場合には、回路基板20は、ECUが配置されるエンジンの近傍に搭載されることが好ましい。検査装置10は、回路基板20と接続する配線の届く範囲で車両に固定する。この際、上記配線の長さを十分に長くして、検査装置10を回路基板20が固定された部位とは離れた車両の部位に固定しても良い。
【0073】
そして、検査装置10の電源部17を車両の電源30に接続する。検査装置10は、車両の電源30が電源部17へ電力の供給を開始すると、動作を開始する。このように、検査装置10の電力を、搭載した車両の電源から供給する。
【0074】
車両の電源30から電源部17への電力の供給開始時期は、車両におけるアクセサリ(ACC)又はイグニッション(IG)への電力の供給開始と同期させることが好ましい。これにより、車両の運転者が、キーを回してACC又はIGへ電力の供給を開始すると共に、検査装置10の電源部17にも電力の供給が開始される。即ち、車両の走行開始と共に、検査装置10が回路基板20の抵抗値の測定を開始する。
【0075】
次に、ステップS30において、車両を所定の走行パターンで走行させながら、回路基板20の電気特性としての抵抗値を、検査装置10が有する電気特性測定部としての抵抗値測定部12を用いて測定し、回路基板20の温度を、検査装置10が有する温度測定部13を用いて測定し、且つ回路基板20の抵抗値を測定した時刻を、検査装置10が有する計時部14を用いて計測する。制御部11は、メモリ15に記憶した所定のプログラムに基づいて、抵抗値測定部12、温度測定部13及び計時部14等の動作を制御する。
【0076】
次に、ステップS40において、測定した抵抗値を、測定した温度及び計測した時刻と関連付けて検査装置10が有する記憶部としてのメモリ15に記憶する。
【0077】
次に、ステップS50において、車両の走行が終了した後、検査装置10及び回路基板20を車両から取り外し、検査装置10のインターフェース16に外部PC40を接続する。そして、外部PC40を用いて、メモリ15に記憶された抵抗値を、メモリ15に関連付けられて記憶された温度及び時刻と共に解析する。
【0078】
メモリ15には、車両の走行開始から終了までの間における回路基板20の抵抗値が、回路基板20の温度及び測定時刻と共に記憶されている。もし、車両の走行中に回路基板20に断線等が生じて抵抗値が変化した場合には、その時の回路基板20の温度及び時刻がメモリ15に記憶されたデータを解析することにより判明する。
【0079】
そして、回路基板20の抵抗値のデータを解析した結果、抵抗値の異常が確認された場合には、異常が確認された一方の端子20aと他方の端子20bとの間に含まれる回路基板20の接続部分を、回路基板20を分解して特定し、異常の原因を解明する。
【0080】
上述した本実施形態の検査装置10によれば、小型で軽量であり、車両に搭載して抵抗値を測定できる構成を有しているので、回路基板20が実際に使用される環境で、回路基板20の抵抗値を検査することができる。具体的には、回路基板20が実際に車両に搭載されて使用される環境で、回路基板20の接続抵抗又は絶縁抵抗等の抵抗値を測定して、回路基板20の耐久性を評価することができる。
【0081】
また、検査装置10は、装置10で用いる電力が車両から供給されるので、検査装置の電源部17を、小型で軽量な構成とすることができる。
【0082】
また、検査装置10は、インターフェース16を有しているので、回路基板20の検査が終了した後、外部PC40をインターフェース16に接続し、検査データを検査装置10のメモリ15の外部に取り出して、検査内容を解析することができる。
【0083】
更に、検査装置10は、簡易な電源部17を有すると共に、データの解析機能を有さない構成を有しているので、構成が簡単であり、小型且つ軽量にでき、且つ製造コストを低くすることができる。
【0084】
本発明では、上述した検査装置、又はこの検査装置を用いた回路基板の検査方法は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更が可能である。例えば、上述した実施形態では、検査装置が測定する電気特性は抵抗値であったが、検査装置が測定する電気特性は、静電容量又はインダクタンス等であっても良い。
【0085】
また、上述した実施形態では、検査装置が検査する回路基板が車両に搭載して使用されていたが、検査装置が検査する回路基板は、人間が簡単に行けないような場所で使用される電子装置に組み込まれるものであり、検査装置がそのような場所で回路基板の検査を行なうものであっても良い。この場合、検査装置は、独自で電池等の電源を有していても良い。
【0086】
また、上述した実施形態では、検査装置10と回路基板20とが別体であったが、図4に示すように、検査装置10は、検査する回路基板20と一体に形成されていても良い。これにより、検査用回路基板と検査装置とが一体となり、取り扱いが容易となる。
【0087】
更に、上述した実施形態では、検査装置10は、回路基板20の耐久性の評価のための検査に用いられていたが、検査装置10は、回路基板20の耐久性の評価以外の目的に用いても良い。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明に係る検査装置の一実施形態及び回路基板を示す図である。
【図2】図1の検査装置のブロック図である。
【図3】本発明に係る回路基板の検査方法の一実施態様のフローチャートである。
【図4】図1の検査装置の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0089】
10 検査装置
11 制御部
12 抵抗値測定部(電気特性測定部)
12a 基準抵抗
12b 電圧計
12c A/Dコンバータ
13 温度測定部
13a サーミスタ
13b 電圧計
13c A/Dコンバータ
14 計時部
15 記憶部
16 入出力部
17 電源部
20 回路基板
30 車両の電源
40 外部PC

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板における回路の電気特性を測定する電気特性測定部(12)と、
回路基板の温度を測定する温度測定部(13)と、
前記電気特性測定部(12)が電気特性を測定した時刻を計測する計時部(14)と、
前記電気特性測定部(12)が測定した電気特性を、前記温度測定部(13)が測定した温度及び前記計時部(14)が計測した時刻と関連付けて記憶する記憶部(15)と、
を備えていることを特徴とする回路基板の検査装置。
【請求項2】
車両から電力の供給を受ける電源部(17)を更に備えている請求項1に記載の回路基板の検査装置。
【請求項3】
前記電気特性測定部(12)は、回路基板の電気特性として、抵抗値を測定する請求項1又は2に記載の回路基板の検査装置。
【請求項4】
検査する回路基板と一体に形成されている請求項1から3の何れか一項に記載の回路基板の検査装置。
【請求項5】
前記記憶部(15)に記憶した電気特性、温度及び時刻を、外部に出力するための出力部(16)を更に備えている請求項1から4の何れか一項に記載の回路基板の検査装置。
【請求項6】
回路基板、及び回路基板に接続された検査装置(10)を車両に搭載し、
車両を走行させながら、回路基板の電気特性を、前記検査装置(10)が有する電気特性測定部(12)を用いて測定し、回路基板の温度を、前記検査装置(10)が有する温度測定部(13)を用いて測定し、且つ回路基板の電気特性を測定した時刻を、前記検査装置(10)が有する計時部(14)を用いて計測し、
測定した電気特性を、測定した温度及び計測した時刻と関連付けて前記検査装置(10)が有する記憶部(15)に記憶し、
車両の走行が終了した後、前記記憶部(15)に記憶された電気特性を、前記記憶部(15)に関連付けられて記憶された温度及び時刻と共に解析する、
ステップを備えていることを特徴とする回路基板の検査方法。
【請求項7】
前記検査装置(10)の電力を、搭載した車両の電源から供給する請求項6に記載の回路基板の検査方法。
【請求項8】
回路基板を、回路基板が車両に実際に配置されて使用される部位に搭載する請求項6又は7に記載の回路基板の検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−281817(P2009−281817A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−133322(P2008−133322)
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】