説明

回路接続フィルム

【課題】本発明は、異方導電性接着剤を用いた微細回路の電気的接続において、微小面積の接続電極間の導通性に優れると共に、微細な隣接電極間スペース部のショートやイオンマイグレーション等の絶縁不良が起こりにくい回路接続方法とそれによって得られる接続構造体の提供を目的とする。
【解決手段】導電粒子および絶縁性接着剤を主成分とする異方導電性接着フィルムであって、接続時における隣接電極間スペース部の絶縁性接着剤の流動速度が、接続電極間の絶縁性接着剤の流動速度よりも速く、隣接電極間スペース部の絶縁性接着剤の流動速度に対しては、追従して導電粒子は流動するが、接続電極間の絶縁性接着剤の流動速度に対しては、それに抗して、導電粒子の流動性が抑制される様な固定強さで、導電粒子を固定用樹脂で固定した異方導電性接着フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異方導電性接着剤を用いて、微細パターンの回路電極同士を電気的に接続する際の接続方法、および接続構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイとICチップやTCP(Tape Carrier Package)との接続、FPC(Flexible Printed Circuit)とTCPとの接続、又は、TCPとプリント配線板との接続を簡便に行うための接続材料として、絶縁性接着剤中に導電粒子を分散させた異方導電性接着剤が使用されている。例えば、ノート型パソコンや携帯電話の液晶ディスプレイと制御ICとの接続用として、異方導電性接着剤が広範に用いられ、最近では、ICチップを直接プリント基板やフレキシブル配線板に搭載するフリップチップ実装にも用いられている(特許文献1、2、3)。
【0003】
この分野では近年、接続される配線パターンやバンプパターンの寸法が益々微細化され、導電粒子をランダムに分散した従来の異方導電性接着剤では、接続信頼性の高い接続は困難になっている。即ち、微小面積の電極を接続するために導電粒子密度を高めると、導電粒子が凝集し隣接電極間の絶縁性を保持できなくなる。逆に、絶縁性を保持するために導電粒子の密度を下げると、今度は接続されない電極が生じ、接続信頼性を保ったまま微細化に対応することは困難とされていた(特許文献4)。
【0004】
一方、導電粒子を絶縁性接着剤中に配列することで、微細パターンの接続に対応する試みが成されている(特許文献5)。しかし、微細パターンの接続において、接着性や酸素や湿気に対する封止性を確保するために、接続時に絶縁性接着剤を流動させて隣接する電極間を絶縁性接着剤で満たす必要があり、その際に折角配列した導電粒子が絶縁性接着剤と共に流動してしまうと言う課題を有していた。
一方、接続時の粒子の流動を抑えて微細パターンを接続するために、実質的に流動しない膜中に導電粒子を配列する方法(特許文献6,7)が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平03−107888号公報
【特許文献2】特開平04−366630号公報
【特許文献3】特開昭61−195179号公報
【特許文献4】特開平09−312176号公報
【特許文献5】特開2000−151084号公報
【特許文献6】特開2001−52778号公報
【特許文献7】特開2003−64324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、異方導電性接着剤を用いた微細回路の電気的接続において、微小面積の接続電極間の導通性に優れると共に、微細な隣接電極間スペース部のショートやイオンマイグレーション等の絶縁不良が起こりにくい回路接続方法とそれによって得られる接続構造体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、接続電極間の導電粒子捕
捉率が隣接電極間スペース部の導電粒子滞留率の3倍以上となる様に接続する回路接続方法が、上記目的に適合しうることを見出し、本発明をなすに至った。
上記課題を解決するために本願出願以前に行われた上記開示の技術では、例えば、特許文献5では、折角配列した導電粒子が接続時に流動してしまい、配列した効果は限定的なものであった。一方、文献6、文献7の場合、接続時に接続電極間の粒子は流動せずに高い捕捉率が得られ良好な導通性が得られるものの、隣接電極間スペース部の導電粒子も同様に流動しないため、スペース部にも導電粒子が多数滞留した状態で接続が成されるため、イオンマイグレーション等の絶縁不良の原因となり、満足の行くものが得られていないのが現状であった。
【0008】
本願のように、接続電極間の導電粒子捕捉率と隣接電極間スペース部の導電粒子滞留率を別々に制御して、導電粒子捕捉率を導電粒子滞留率に対して特定倍以上にする回路接続方法を用いることで上記課題を解決できたことは、上記技術開示に鑑みて、当業者にとって予想だにできない、驚くべき発見であった。
【0009】
即ち、本発明は、下記の通りである。
1)相対峙する回路電極同士を、導電粒子と絶縁性接着剤を主成分とする異方導電性接着剤を用いて接続する回路接続方法において、接続電極間の導電粒子捕捉率が隣接電極間スペース部の導電粒子滞留率の3倍以上となる様に接続する回路接続方法。
2)回路の一方がICチップであり、異方導電性接着剤が、導電粒子が面方向に略均等に分散され、厚み方向には単層に配置された異方導電性接着フィルムであって、接続時における隣接電極間スペース部に存在する導電粒子の流動性が、接続電極間に存在する導電粒子の流動性よりも高くなる様に接続する上記1)記載の回路接続方法。
3)回路基板とICチップを、異方導電性接着剤で接続した接続構造体であって、接続電極間の導電粒子密度q個/mm2と、隣接電極間スペース部の導電粒子密度r個/mm2との間に、q>r×3の関係を有することを特徴とする接続構造体。
4)回路基板とICチップを、異方導電性接着剤で接続した接続構造体であって、ICチップの電極を有さない中心部の導電粒子密度p個/mm2と隣接電極間スペース部の導電粒子密度r個/mm2との間に、p>r×3の関係を有することを特徴とする接続構造体。
【発明の効果】
【0010】
本発明の回路接続方法および接続構造体は、異方導電性接着剤を用いた微細回路の電気的接続が可能で、微小面積の接続電極間の導通性に優れると共に、微細な電極間スペース部のショートやイオンマイグレーション等の絶縁不良が起こりにくい接続構造体を与え、電子機器の部品として有用に用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明について、以下具体的に説明する。
本発明の回路接続方法では、相対峙した回路電極同士が異方導電性接着剤で接続される。
接続される回路の組み合わせとしては、ICチップと回路基板との組み合わせが好ましい。回路基板としては液晶パネル等で用いられるガラス基板やセラミックス等の無機基板、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルスルフォン、ポリエチレンナフタレート等のフィルム基板の回路基板が好ましい。これら回路基板の回路は、基板上にアルミニウム、銅、銀、錫、鉛、インジウム、クロム、ニッケル、シリコン等の金属材料やITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)等の薄膜を真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などによって形成した後、該薄膜を精密エッチングやレーザービームカッティング等を行うことによって形成することができる。あるいは、導電性ペーストをスクリーン印刷やインクジェット法を用いて回路形成する方法、基板に銅箔等の導電性箔を積層してエッチングにより回路形成する方法、基板にメッキにより回路形成するアディティブ法と呼ばれる方法等によって形成することができる。回路の一部が接続するための電極となっている。
【0012】
ICチップは縦横比の大きいものでも構わないし、正方形のものやそれに近いものでも構わない。液晶パネルに使用する場合は、縦横比が大きいものが狭額縁化でき好ましい。
ICチップの電極は、チタン、銅、金、ニッケル等よりなるアンダーバンプメタルと呼ばれる下地電極のみの場合と、その上にバンプと呼ばれる金やニッケル等の金属よりなる突起状の電極を有する場合がある。突起状電極を有する方が、接続信頼性が高く好ましい。ICチップの電極配置は、チップの下面のほぼ前面に電極を有する全面配置、チップ下面の中心部を除く部分に電極を有する周辺面配置、下面端部の2辺あるいは4辺に電極が一列で配置した2辺配置、あるいは4辺配置等が挙げられる。更に2辺配置あるいは4辺配置では電極の一部または全部が2列に配置している千鳥配置等も挙げられる。
【0013】
ICチップの電極サイズは、500μm2以上10000μm2以下が接続安定性とICチップの小面積化の観点から好ましい。更に好ましくは550μm2以上5000μm2以下、一層好ましくは600μm2以上2000μm2以下、更に一層好ましくは、650μm2以上1500μm2以下である。ICチップの電極ピッチは15μm以上100μm以下が隣接電極間の絶縁性確保とICチップの小面積化の観点から好ましい。更に好ましくは16μm以上50μm以下、一層好ましくは17μm以上30μm以下、更に一層好ましくは18μm以上25μm以下である。
接続される回路の組み合わせには、上記回路基板とTCP、COF(Chip on Flex)、FPCの組み合わせも使用できる。
【0014】
本発明に用いられる異方導電性接着剤は、導電粒子と絶縁性接着剤が主成分である。
本発明に用いられる導電粒子としては、金属粒子、炭素からなる粒子や高分子核材に金属薄膜を被覆した粒子等を用いることができる。
金属粒子としては、例えば、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、亜鉛、錫、鉛、半田、インジウム、パラジウム等の単体や、2種以上のこれらの金属が層状あるいは傾斜状に組み合わされている粒子が例示される。
【0015】
高分子核材に金属薄膜を被覆した粒子としては、エポキシ樹脂、スチレン樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ジビニルベンゼン架橋体、NBR、SBR等のポリマーの中から1種あるいは2種以上組み合わせた高分子核材に、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、亜鉛、錫、鉛、半田、インジウム、パラジウム等の中から1種あるいは2種以上組み合わせてメッキ等により金属被覆した粒子が例示される。金属薄膜の厚さは0.005μm以上1μm以下の範囲が、接続安定性と粒子の凝集性の観点から好ましい。金属薄膜は均一に被覆されていることが接続安定性上好ましい。これら導電粒子の表面を更に絶縁被覆した粒子や微小粒子を表面に付着したコンペイ糖型の粒子も使用することができる。
【0016】
導電粒子は球状のものを用いるのがよく、その場合、真球に近いものほど好ましく、長軸に対する短軸の比は0.5以上が好ましく、0.7が更に好ましく、0.9以上が一層好ましい。長軸に対する短軸の比の最大値は1である。
導電粒子の平均径は、接続しようとする隣接電極間距離よりも小さい必要があると共に、接続する電子部品の電極高さのバラツキよりも大きいことが好ましい。そのために導電粒子の平均径は、0.3μm以上30μm未満の範囲が好ましく、更に好ましくは0.5μm以上20μm未満、更に好ましくは0.7μm以上15μm未満、更に好ましくは1μm以上10μm未満、更に好ましくは2μm以上7μm未満である。導電粒子の粒子径分布の標準偏差は平均粒子径の50%以下が好ましい。
【0017】
本発明に用いられる絶縁性接着剤は、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、光硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂から選ばれた1種類以上の樹脂を含有する。これらの樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、SBR、SBS、NBR、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリエーテルテレフタレート樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテルオキシド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリイソブチレン樹脂、アルキルフェノール樹脂、スチレンブタジエン樹脂、カルボキシル変性ニトリル樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルケトン樹脂等又はそれらの変性樹脂が挙げられる。特に基板との接着性を必要とする場合には、エポキシ樹脂を含有することが好ましい。
【0018】
ここで用いられるエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、脂肪族エーテル型エポキシ樹脂等のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエーテルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、脂環族エポキサイド等があり、これらエポキシ樹脂はハロゲン化や水素添加されていても良く、また、ウレタン変性、ゴム変性、シリコーン変性等の変性されたエポキシ樹脂でも良い。
【0019】
前記エポキシ樹脂の硬化剤としては、潜在性硬化剤が好ましい。潜在性硬化剤としては、ホウ素化合物、ヒドラジド、3級アミン、イミダゾール、ジシアンジアミド、無機酸、カルボン酸無水物、チオール、イソシアネート、ホウ素錯塩及びそれらの誘導体等の硬化剤が好ましい。潜在性硬化剤の中でも、マイクロカプセル型の硬化剤が好ましい。マイクロカプセル型硬化剤は、前記硬化剤の表面を樹脂皮膜等で安定化したもので、接続作業時の温度や圧力で樹脂皮膜が破壊され、硬化剤がマイクロカプセル外に拡散し、エポキシ樹脂と反応する。マイクロカプセル型潜在性硬化剤の中でも、アミンアダクト、イミダゾールアダクト等のアダクト型硬化剤をマイクロカプセル化した潜在性硬化剤が安定性と硬化性のバランスに優れ好ましい。これらエポキシ樹脂の硬化剤は一般に、エポキシ樹脂100質量部に対して、2〜100質量部の量で用いられる。
【0020】
本発明に用いられる絶縁性接着剤は、フィルム形成性、接着性、硬化時の応力緩和製等を付与する目的で、フェノキ樹脂、ポリエステル樹脂、アクリルゴム、SBR、NBR、シリコーン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアセタール樹脂、尿素樹脂、キシレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、カルボキシル基、ヒドロシキシル基、ビニル基、アミノ基などの官能基を含有するゴム、エラストマー類等の高分子成分を含有することが好ましい。これら高分子成分は分子量が10000〜10,000,000のものが好ましい。高分子成分の含有量は、絶縁性接着剤に対して2〜80質量%が好ましい。
【0021】
絶縁性接着剤には、さらに、絶縁粒子、充填剤、軟化剤、促進剤、老化防止剤、着色剤、難燃化剤、チキソトロピック剤、カップリング剤等を含有することもできる。絶縁粒子や充填剤を含有する場合、これらの最大径は導電粒子の平均粒径未満である事が好ましい。カップリング剤としてはケチミン基、ビニル基、アクリル基、アミノ基、エポキシ基及びまたはイソシアネート基含有シランカップリング剤が、接着性の向上の点から好ましい。
絶縁性接着剤の各成分を混合する場合、必要に応じ、溶剤を用いることができる。溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート等が挙げられる。
【0022】
本発明に用いられる異方導電性接着剤は、ペースト状の異方導電性ペーストとフィルム状の異方導電性接着フィルムが挙げられる。異方導電性接着フィルムが導電粒子の流動性制御が容易であり好ましい。
本発明に使用される異方導電性接着剤は、導電粒子が絶縁性接着剤にランダムに分散していても構わないが、導電粒子が絶縁性接着剤中に単層として配置された異方導電性接着フィルムが好ましい。単層に配置された導電粒子は絶縁性接着剤の表面層にあることがより好ましい。ここで導電粒子が表面層にあるとは、絶縁性接着剤表面から導電粒子の平均粒径に対して1.5倍の厚み領域に導電粒子の中心が位置することを意味する。
【0023】
導電粒子は好ましくは、特定の中心間距離で、更にその中心間距離が特定の変動係数を有して配列されていることが、接続電極の導通性と隣接電極間の絶縁性を両立でき、好ましい。導電粒子の中心間距離の平均は、2μm以上20μm以下が好ましく、好ましくは2.5μm以上18μm以下、更に好ましくは3μm以上16μm以下、更に好ましくは3.5μm以上15μm以下であり、更に好ましくは4μm以上13μm以下である。2μ以上にすることで、面方向の絶縁性、即ち、隣接する電極間の絶縁性を高レベルで維持できる。一方、中心間距離を20μm以下にすることで、厚さ方向の導電性、即ち接続電極間の導通性を高レベルで維持でき、高い性能を発揮する。
【0024】
導電粒子は面方向に略均等に分散配置されていることが好ましく、その指標である導電粒子の中心間距離の変動係数(導電粒子の中心間距離の標準偏差をその平均値で割った値)は0.5以下が好ましい。好ましくは0.03以上0.45以下、更に好ましくは0.05以上0.4以下、更に好ましくは0.07以上0.35以下、更に好ましくは0.08以上0.3以下である。0.5以下とすることで、接続電極間に捕捉される導電粒子数が安定し、電極ごとの接続抵抗のバラツキが小さく、安定した接続が得られる。
【0025】
本発明の回路接続方法は、接続電極間の導電粒子捕捉率が隣接電極間スペース部の導電粒子滞留率の3倍以上となる接続方法である。ここで接続電極間の導電粒子捕捉率は、接続前の異方導電性接着フィルムの接続電極相当面積に含まれる導電粒子数に対する接続後の接続電極間に捕捉される導電粒子数の割合であり、接続される全電極の捕捉率の平均値を使用するのが好ましいが、接続電極数が多い場合は、任意にサンプリングした電極の導電粒子捕捉率の平均値で代用する事ができる。サンプリングする場合、サンプリングによる誤差を極力抑える様にサンプリング場所や数を選択する必要がある。
【0026】
一方、導電粒子滞留率は、接続前の異方導電性接着フィルムの隣接電極間スペース相当面積に含まれる導電粒子数に対する接続後の隣接電極間スペース部に滞留している導電粒子数の割合であり、全隣接電極間スペース部の滞留率の平均値を使用するのが好ましいが、接続電極数が多い場合は、任意にサンプリングした隣接電極間スペース部の導電粒子滞留率の平均値で代用する事ができる。サンプリングする場合、サンプリングによる誤差を極力抑える様にサンプリング場所や数を選択する必要がある。接続電極間の導電粒子捕捉率は、全ての接続電極間が低抵抗で導通するために、25%以上が好ましい。更に好ましくは30%以上85%以下、一層好ましくは35%以上70%以下、更に一層好ましくは、40%以上65%以下である。導電粒子滞留率は、全ての隣接電極間の絶縁性を確保するために、30%以下が好ましい。更に好ましくは20%以下、一層好ましくは10%以下、更に一層好ましくは7%以下であり、導電粒子が隣接電極間スペース部に滞留していない事が最も好ましい。滞留している導電粒子は2個以上凝集していない事が好ましい。
【0027】
本発明においては、接続電極の導通性と隣接電極間の絶縁性を両立するために、導電粒子捕捉率は導電粒子滞留率の3倍以上である。好ましくは4倍以上、一層好ましくは5倍以上、更に一層好ましくは10倍以上である。
【0028】
導電粒子の捕捉率が導電粒子の滞留率の3倍以上となる回路接続方法としては、接続時の隣接電極間スペース部に存在する導電粒子の流動性を、接続電極間に存在する導電粒子の流動性よりも高くなる様に接続する方法が挙げられる。異方導電性接着剤を用いた回路接続方法においては、接着性や電極部の封止性を確保するために、接続時に空隙部を埋める様に、絶縁性接着剤が流動する様、異方導電性接着剤は設計されている。導電粒子の流動性とは、この絶縁性接着剤の流れに追従した導電粒子の流れやすさの事である。接続時の隣接電極間スペース部に存在する導電粒子の流動性を接続電極間に存在する導電粒子の流動性よりも高くなる様にする方法としては、例えば、接続後に隣接電極間スペース部にあたる部分以外の異方導電性接着剤の導電粒子を、固定用樹脂で固定して、実質的に流動しないかあるいは流動性を低下させてから接続する方法が挙げられる。
【0029】
別の方法としては、例えば、接続時における隣接電極間スペース部の絶縁性接着剤の流動速度が、接続電極間の流動速度や、電極を有さないICチップ中心部の流動速度よりも速くなる様にICチップの電極配置を設計し、あるいは接続条件を選択して、隣接電極間スペース部の絶縁性接着剤の流動速度に対しては、追従して導電粒子は流動するが、接続電極間および電極を有さないICチップ中心部の絶縁性接着剤の流動速度に対しては、それに抗して、導電粒子は実質的に非流動、あるいは流動性が抑制される様な固定強さで、導電粒子を固定用樹脂で固定した異方導電性接着剤を用いて接続する方法が挙げられる。この様なICチップの電極配置としては、例えば、ICチップの端部に単列あるいは千鳥状に、チップ端面に対して直角方向に長辺を有する長方形の電極を並べた配置が好ましい。
【0030】
導電粒子を固定用樹脂で固定した異方導電性接着剤を製造する方法としては、例えば下記の様な方法がある。即ち、隔てられて配置された複数の導電粒子を固定用樹脂で相互に連結し、連結された導電粒子を絶縁性接着剤中に埋め込む方法や導電粒子の直径よりも薄いフィルム状の固定用樹脂中に導電粒子を単層で分散し、その少なくとも片面に絶縁性接着剤をラミネート等により積層する方法等が挙げられる。前者が固定用樹脂の導電粒子固定力を制御し易く好ましい。
【0031】
ここで用いられる固定用樹脂は、接続条件下で、隣接電極間スペース部は導電粒子を固定できないが、接続電極間および電極を有さないICチップ中心部では導電粒子を固定できる樹脂が好ましく、熱や光で硬化した架橋ポリマーや熱可塑ポリマーが好ましい。架橋ポリマーとしては、架橋アクリレート樹脂、架橋ビニル樹脂、架橋ポリエステル樹脂、架橋ポリウレタン樹脂、架橋メラミン樹脂、架橋シロキサン樹脂、架橋エポキシ樹脂、架橋フェノール樹脂等が例示される。耐熱性の熱可塑性ポリマーとしては、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスルホン樹脂、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂等が例示される。これら固定用樹脂は2種以上を混合して用いる事もできる。
【0032】
導電粒子を固定用樹脂で相互に連結し、連結された導電粒子を絶縁性接着剤中に埋め込む方法としては、例えば、固定用樹脂に、導電粒子を単層に充填し、固定用樹脂の凝集を起こさせながら延伸し、凝集力と延伸力のバランスを取ることによって、導電粒子を固定用樹脂で連結することができる。固定用樹脂として架橋ポリマーを用いる場合は、未架橋の状態で延伸し、その後、熱や光を用いて架橋することが好ましい。固定用樹脂で連結された導電粒子を絶縁性接着剤中に埋め込む方法としては、剥離可能な基材上に形成された絶縁性接着剤上に固定用樹脂で連結された導電粒子を重ね、熱ロールやラミネーターを用
いて、絶縁性接着剤中に埋め込む方法が例示される。ここで連結に使用される固定用樹脂は導電粒子径未満の線状樹脂であることが好ましく、導電粒子を頂点とする蜘蛛の巣状の形状を有することが好ましい。個々の導電粒子は、平均2個以上の他の導電粒子と相互に連結されている事が好ましい。更に好ましくは平均3個以上である。
【0033】
フィルム状の固定用樹脂中に導電粒子を単層分散し、絶縁性接着剤をラミネートする方法としては、例えば、剥離可能な基材上に固定用樹脂として架橋ポリマーを未架橋状態で、最終膜厚が導電粒子径よりも薄くなる様に塗布し、その表面に導電粒子を配置する。導電粒子を配置する方法としては、同一電荷に帯電して散布する方法や、微細配置された孔を通して導電粒子を供給する方法や、任意配置された導電粒子径より小さな貫通孔に導電粒子を吸引固定し、その後固定用樹脂に転写する方法等が挙げられる。
【0034】
次に導電粒子を剥離可能な基材に到達する様に、固定用樹脂内に埋め込み、架橋ポリマーを熱や光エネルギーを使って架橋する。必要に応じ剥離可能な基材を剥離した後、絶縁性接着剤に熱ロールやラミネーターを用いてラミネートする。ここで固定用樹脂の膜厚は、導電粒子の粒径未満であり、好ましくは2/3以下であり、更に好ましくは1/2以下である。架橋ポリマーの替わりに熱可塑ポリマーを用いる事もできる。この場合、熱可塑ポリマーを加温して軟化状態で導電粒子を所定位置に保持した後、温度を下げて、導電粒子を固定する方法や、溶剤等で熱可塑性ポリマーを軟化させた状態で導電粒子を所定位置に保持した後、乾燥して導電粒子を固定する方法等がある。
【0035】
本発明に使用される異方導電性接着剤は、厚みが5μm以上50μm以下のフィルム状であることが好ましく、更に好ましくは6μm以上35μm以下、更に好ましくは7μm以上25μm以下、更に好ましくは8μm以上20μm以下である。
【0036】
本発明の回路接続方法においては、回路基板の接続部分に異方導電性接着剤を貼り付けた後、ICチップまたは別の回路基板を位置合わせして重ね、必要に応じ仮圧着した後、加熱加圧される。この時の温度は、100℃以上280℃以下が好ましい。固定用樹脂の強度と絶縁性接着剤の溶融粘度とのバランスを考えて温度を決定するのが好ましい。即ち、低温で接続することで、絶縁性接着剤の溶融粘度が高くなり、導電粒子は流動し易くなる傾向があり、温度が高くなると絶縁性接着剤の溶融粘度が低くなり、導電粒子は流動しにくくなる。隣接電極間スペース部に存在する導電粒子は流動するが、接続電極間の導電粒子や電極を有さないICチップ中心部に存在する導電粒子は実質的に流動しない温度で接続するのが好ましい。必要に応じ、絶縁性接着剤の流動が収まった後、温度を上げて絶縁性接着剤の硬化反応を進行させることができる。
【0037】
本発明の接続構造体は、回路基板とICチップを異方導電性接着剤で接続した接続構造体であって、接続電極間の導電粒子密度q個/mm2と、隣接電極間スペース部の導電粒子密度r個/mm2との間に、q>r×3の関係を有している。好ましくはq>r×4であり、更に好ましくはq>r×5、一層好ましくはq>r×10である。qがrの3倍より大きい事で接続電極の導通性と隣接電極間の絶縁性を高度に両立させる事ができる。
更に、ICチップの電極を有さない中心部の導電粒子密度p個/mm2との間にp>r×3の関係を有していることが好ましい。更に好ましくはp>r×4であり、一層好ましくはp>r×5、更に一層好ましくはp>r×10である。pがrの3倍より大きい事で隣接電極間の高い絶縁性が維持できる。
【0038】
本発明の接続構造体は、例えば、先に説明した本発明の回路接続方法によって、ICチップと回路基板を接続する事で得られる。
接続構造体の導電粒子数は、必要に応じ接続部を分解した後、光学顕微鏡やマイクロスコープ、X線検査装置等を用いて数えることができる。
qおよびrを求める場合、接続された全電極間あるいは全隣接電極間スペース部の導電粒子数より算出するのが好ましいが、接続電極数が多い場合は、任意にサンプリングした接続電極間あるいは隣接電極間スペース部の導電粒子数より求めた値で代用する事ができる。サンプリングする場合、サンプリングによる誤差を極力抑える様にサンプリング場所や数を選択する必要がある。
pを求める場合は、ICチップの中心を含み、0.01mm2以上の面積より求める必要がある。但し、電極が有さない中心部の面積が0.01mm2に満たない場合は、電極を有さない中心部全体より求める。
【0039】
本発明の接続構造体の接続電極間に捕捉されている最少の導電粒子数(以下、最少粒子捕捉数と称す)は、低い接続抵抗を維持するために、2個以上であることが好ましい。更に好ましくは3個以上30個以下、一層好ましくは4個以上25個以下、更に一層好ましくは5個以上20個以下である。ここで、最少粒子捕捉数は、接続電極間に捕捉されている導電粒子数の平均値からその標準偏差の3倍を引いた値として定義する。
【実施例】
【0040】
本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
(製造例1)(異方導電性接着剤の製造)
フェノキシ樹脂(東都化成株式会社製、商品名:フェノトートYP50)100質量部、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社、商品名:エピコートYL980)50質量部、マイクロカプセル型潜在性硬化剤と液状エポキシ樹脂の混合物(旭化成ケミカルズ株式会社製、商品名:ノバキュアHX−3941HP)50質量部、酢酸エチル200質量部を混合し、接着剤ワニスを得た。この接着剤ワニスを離型処理した50μmのPETフィルム製セパレーター上にブレードコーターを用いて塗布、溶剤を乾燥除去して、平均膜厚20μmのフィルム状の絶縁性接着剤Aを得た。
ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社、商品名:エピコートYL980)50質量部、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社、商品名:エピコート157)50質量部、ジシアンジアミド4質量部、2−エチル−4−メチルイミダゾール0.2質量部、メチルエチルケトン3000質量部を混合し、それを離型処理した50μmのPETフィルムにブレードコーターを用いて塗布し、80℃で5分間乾燥し、粘着性を有する架橋前の固定用樹脂を平均膜厚1.2μmで形成した。
【0041】
この架橋前の固定用樹脂に直径3μmの導電粒子を8μm間隔の格子状に埋め込んだ。ここで導電粒子はジビニルベンゼン系樹脂をコアとし、その表層に無電解メッキで0.07μmのニッケル層を形成し、更に電気メッキで0.04μmの金層を形成した、粒径の標準偏差が0.15μmのものを用いた。また、導電粒子を格子状に埋め込む方法としては、金属マスクを通してエキシマレーザーを照射することにより作成した直径2.0μmの貫通孔が8μm間隔で格子状に形成された25μm厚のポリイミドフィルムを吸引口に設置した吸引装置を用いて、導電粒子を貫通孔部に真空吸引で保持し、引き続き架橋前の固定用樹脂表面に吸引保持した導電粒子を押し付け、導電粒子がPETフィルムに到達するまで架橋前の固定用樹脂に埋め込み、真空を解除してから吸引装置を引き離し、架橋前の固定用樹脂に導電粒子を転写する方法を用いた。
【0042】
次に導電粒子を埋め込んだ架橋前の固定用樹脂を160℃で2分間加熱し、固定用樹脂を架橋した後、フィルム状の絶縁性接着剤Aを導電粒子側に重ね、真空下、50℃でラミネートすることで、固定用樹脂からはみ出していた導電粒子が絶縁性接着剤Aに埋め込まれ、固定用樹脂と絶縁性接着剤Aが隙間なく積層され、フィルム状の異方導電性接着剤Aを得た。異方導電性接着剤Aをマイクロスコープ(株式会社キーエンス製、商品名:VHX−100、以下同じ)で観察した結果、導電粒子は相互に隔てられて配置しており、更
にマイクロスコープで得られた画像から、画像処理ソフト(旭化成株式会社製、商品名:A像くん、以下同じ)を用いて、導電粒子の近接6粒子との中心間距離の平均値およびその変動係数を求めた結果、平均値が8.7μm、変動係数が0.25であり、導電粒子数は15000個/mm2であった。尚、画像処理は、任意に選択した0.06mm2の面積5箇所について行い、その平均の値を用いた。
【0043】
(製造例2)(異方導電性接着剤の製造)
導電粒子の直径が4μm、標準偏差が0.2μm、ポリイミドフィルムに開けた貫通孔の直径が2.5μmである以外は製造例1と同様にしてフィルム状の異方導電性接着接着剤Bを得た。異方導電性接着剤Bをマイクロスコープで観察した結果、導電粒子は相互に隔てられて配置しており、更にマイクロスコープで得られた画像から、画像処理ソフトを用いて、導電粒子の近接6粒子との中心間距離の平均値およびその変動係数を求めた結果、平均値が8.2μm、変動係数が0.11であり、導電粒子数は17000個/mm2であった。尚、画像処理は、任意に選択した0.06mm2の面積5箇所について行い、その平均の値を用いた。
【0044】
(製造例3)(異方導電性接着剤の製造)
フェノキシ樹脂(東都化成株式会社製、商品名:フェノトートYP50)100質量部、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社、商品名:エピコートYL980)90質量部、マイクロカプセル型潜在性硬化剤と液状エポキシ樹脂の混合物(旭化成ケミカルズ株式会社製、商品名:ノバキュアHX−3941HP)60質量部、酢酸エチル200質量部を混合し、接着剤ワニスを得た。この接着剤ワニスを離型処理した50μmのPETフィルム製セパレーター上にブレードコーターを用いて塗布、溶剤を乾燥除去して、平均膜厚18μmのフィルム状の絶縁性接着剤Bを得た。
【0045】
100μm無延伸ポリプロピレンフィルム上にブレードコーターを用いて酢酸エチルで樹脂分4質量%に希釈した重量平均分子量110万、ガラス転移温度が−30℃のアクリルポリマーを塗布、80℃で5分間乾燥し、粘着性を有するアクリルポリマーを厚さ5μmで形成した。
このアクリルポリマー上に、直径4μmの導電粒子を充填した後、エアーブローによりアクリルポリマーに到達していない導電粒子を排除し、全面積に対する導電粒子の充填面積率で定義される充填率が73%の単層導電粒子層が形成された。ここで導電粒子はジビニルベンゼン系樹脂をコアとし、その表層に無電解メッキで0.07μmのニッケル層を形成し、更に電気メッキで0.04μmの金層を形成した、粒径の標準偏差が0.2μmのものを用いた。
【0046】
次に、この導電粒子がアクリルポリマーに保持されたポリプロピレンフィルムを、試験用二軸延伸装置を用いて、130℃で、縦横共に6%/秒の比率で1.5倍に延伸した後、延伸比率を2%/秒に落として、初期値の2.5倍まで延伸した後、室温まで冷却した。得られた延伸後のフィルムをマイクロスコープで観察した結果、導電粒子は相互に隔てられて配置し、個々の導電粒子は平均4.3個の他の導電粒子とアクリルポリマーで連結された蜘蛛の巣状の構造を有し、アクリルポリマーは径が約2μmの糸状構造であった。
【0047】
ここで得られたアクリルポリマーを固定用樹脂とする導電粒子連結構造体に絶縁性接着剤Bを導電粒子側に重ね、真空下、50℃でラミネートした後、ポリプロピレンフィルムを剥離すると、アクリルポリマーを固定用樹脂とする導電粒子連結構造体は絶縁性接着剤Bの表面層に埋め込まれ、フィルム状の異方導電性接着剤Cを得た。異方導電性接着剤Cをマイクロスコープで観察した結果、導電粒子は相互に隔てられて配置しており、更にマイクロスコープで得られた画像から、画像処理ソフトを用いて、導電粒子の近接6粒子との中心間距離の平均値およびその変動係数を求めた結果、平均値が10.6μm、変動係
数が0.35であり、導電粒子数は9300個/mm2であった。尚、画像処理は、任意に選択した0.06mm2の面積5箇所について行い、その平均の値を用いた。
【0048】
[実施例1]
15.1mm×1.6mmのサイズを有し、20μm×100μmの金バンプ電極(高さ15μm)が、長辺をICチップの端面に対して垂直となる様に、4辺の端部に一列でピッチ30μmの間隔で合計726個並んだICチップと、これに対応した接続ピッチを有するITOガラス基板の組みよりなるTEG1(Test Element Group)を準備した。
16mm×1.8mmにカットした異方導電性接着剤Aを導電粒子側のPETフィルムを剥がした後、ITOガラス基板の接続部位に貼り付け、80℃で3秒加熱し、セパレーターを剥がした。次に、東レエンジニアリング株式会社製のフリップチップボンダーFC2000を用いてICチップと異方導電性接着剤Aを貼り付けたITOガラス基板を位置合わせした後、接続速度は5mm/秒、接続温度は200℃、接続圧力は1電極当たり20gf、接続時間10秒間の条件で加熱加圧し、ICチップをITOガラス基板に接続し、接続構造体1を得た。
【0049】
接続構造体1をマイクロスコープで観察した結果、接続電極間の導電粒子密度が11250個/mm2、隣接電極間スペース部の導電粒子密度が3200個/mm2、電極を有さない中心部の導電粒子密度が13000個/mm2であり、接続電極間の導電粒子捕捉率75%、隣接電極間スペース部の導電粒子滞留率は21%であり、導電粒子の流動性は、隣接電極間スペース部の方が、接続電極間よりも高いことが判った。尚、マイクロスコープでの観察は、任意に選択した50個の接続電極間および50個のスペース部とICチップの中心を含む0.06mm2の面積について実施した。
【0050】
次に、接続構造体1の接続信頼の評価を実施した。接続構造体1は、480箇所の接合部を有するデイジーチェーン回路と20対の櫛を有する櫛形電極が形成され、デイジーチェーン部で接続抵抗測定を、櫛型電極部でイオンマイグレーション試験を実施した。イオンマイグレーション試験は、温度85℃、相対湿度85%、20Vの電圧を懸けて実施した。測定の結果、デイジーチェーン回路は導通がとれ、すべての接続が行われていることを示した。一方、イオンマイグレーション試験では500時間に渡り、5×107Ω以上の絶縁抵抗を示し、高い絶縁信頼性を示した。
【0051】
[実施例2〜6]
15.1mm×1.6mmのサイズを有し、16μm×90μmの金バンプ電極(高さ10μm)が、長辺をICチップの端面に対して垂直となる様に、4辺の端部に一列でピッチ25μmの間隔で合計870個並んだICチップと、これに対応した接続ピッチを有するITOガラス基板の組みよりなるTEG2を準備した。実施例1と同様にして、表1の条件で接続を行い、接続構造体2〜6を得た。
接続構造体2〜6のマイクロスコープでの観察結果を表1に示す。更に、実施例1と同様にして接続信頼性評価を実施した。結果を表1に示す。
【0052】
[比較例1〜2]
実施例1と同様にして、表1の条件で接続を行い、接続構造体7〜8を得た。
接続構造体7〜8のマイクロスコープでの観察結果を表1に示す。更に、実施例1と同様にして接続信頼性評価を実施した。結果を表1に示す。
表1に示した様に、比較例1の回路接続方法では、接続電極間の導電粒子捕捉率、隣接電極間スペース部の導電粒子滞留率ともに高く、その比は1.3:1であり、その結果接続抵抗測定では、全ての接続の導通が取れ、問題なかったが、イオンマイグレーション試験で、120時間で絶縁破壊が起こり、絶縁信頼性が低かった。
一方、比較例2の回路接続方法では、接続電極間の導電粒子捕捉率、隣接電極間スペー
ス部の導電粒子滞留率ともに低く、その比は1.9:1であり、導電粒子が載っていない接続の存在が確認された。その結果、デイジーチェーン回路の接続不良と言う不具合が発生した。更に、イオンマイグレーション試験でも、スペース部で導電粒子の凝集が起こり不具合が発生した。
【0053】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の回路接続方法および接続構造体は、異方導電性接着剤を用いた微細回路の電気的接続が可能で、微小面積の接続電極間の導通性に優れると共に、微細な隣接電極間スペ
ース部のショートやイオンマイグレーション等の絶縁不良が起こりにくい接続構造体を与え、電子機器の部品として好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電粒子および絶縁性接着剤を主成分とする異方導電性接着フィルムであって、接続時における隣接電極間スペース部の絶縁性接着剤の流動速度が、接続電極間の絶縁性接着剤の流動速度よりも速く、隣接電極間スペース部の絶縁性接着剤の流動速度に対しては、追従して導電粒子は流動するが、接続電極間の絶縁性接着剤の流動速度に対しては、それに抗して、導電粒子の流動性が抑制される様な固定強さで、導電粒子を固定用樹脂で固定した異方導電性接着フィルム
【請求項2】
前記導電粒子が絶縁性接着剤中に面方向に略均等に分散され、厚み方向には単層に配置された請求項1記載の異方導電性接着フィルム
【請求項3】
前記導電粒子の中心間距離の変動係数が0.5以下である請求項1または2に記載の異方導電性接着フィルム

【公開番号】特開2011−155009(P2011−155009A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34465(P2011−34465)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【分割の表示】特願2005−213814(P2005−213814)の分割
【原出願日】平成17年7月25日(2005.7.25)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【Fターム(参考)】