説明

回路接続材料並びに回路端子の接続構造体及び接続方法

【課題】 体積収縮の小さいラジカル重合性回路接続材料を提供する。
【解決手段】 相対向する回路電極1a,2a間に介在され、相対向する回路電極1a,2aを加圧し加圧方向の電極1a,2a間を電気的に接続する回路接続材料であって、下記(1)〜(3)の成分を必須とする回路接続材料。
(1)遊離ラジカルを発生する硬化剤
(2)熱可塑性樹脂
(3)ラジカル開環重合性物質

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相対向する回路電極間に介在され、相対向する回路電極を加圧し加圧方向の電極間のみを電気的に接続する回路接続材料と、回路端子の接続構造体及び接続方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂系接着剤は、高い接着強度が得られ、耐水性や耐熱性に優れること等から、電気・電子・建築・自動車・航空機等の各種用途に多用されている。
中でも一液型エポキシ樹脂系接着剤は、主剤と硬化剤との混合が不必要であり使用が簡便なことから、フィルム状、ペースト状、粉体状の形態で使用されている。この場合、エポキシ樹脂と硬化剤及び変性剤との多様な組合せにより、特定の性能を得ることが一般的である(例えば、特許文献1)。
しかしながら、上記エポキシ樹脂系のフィルム状接着剤は、作業性に優れるものの、20秒程度の接続時間で140〜180℃程度の加熱、10秒では180〜210℃程度の加熱が必要であった。このため、さらなる低温速硬化性が求められていた。
【0003】
特許文献2は、低温速硬化性の接着剤として、ラジカル重合性接着剤を開示している。しかし、ラジカル重合性モノマーを使用する場合、低温、短時間に優れるが、エポキシ樹脂と異なり、硬化時の体積収縮が大きいため、残留応力が大きいという問題があった。そのため、エポキシ樹脂を用いた接着剤より、接着力、接続抵抗に劣った。また、体積収縮を抑制するために、分子量の大きなモノマーを用いると、架橋密度が減少し、接続信頼性が低下した。
【特許文献1】特開昭62−141083号公報
【特許文献2】WO98/44067パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、体積収縮の小さいラジカル重合性回路接続材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、以下の回路接続材料等が提供される。
1.相対向する回路電極間に介在され、相対向する回路電極を加圧し加圧方向の電極間のみを電気的に接続する回路接続材料であって、下記(1)〜(3)の成分を必須とする回路接続材料。
(1)遊離ラジカルを発生する硬化剤
(2)熱可塑性樹脂
(3)ラジカル開環重合性物質
2.前記ラジカル開環重合性物質(3)が、ビニルシクロプロパン誘導体、ジオキソラン誘導体から選択される少なくとも一種である1記載の回路接続材料。
3.導電性粒子を含有する1又は2記載の回路接続材料。
4.第一の接続端子を有する第一の回路部材と、第二の接続端子を有する第二の回路部材とが、第一の接続端子と第二の接続端子を対向して配置されており、前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子の間に1〜3のいずれか記載の回路接続材料が介在されており、前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子のみが電気的に接続されている回路端子の接続構造体。
5.第一の接続端子を有する第一の回路部材と、第二の接続端子を有する第二の回路部材とを、第一の接続端子と第二の接続端子を対向して配置し、前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子の間に請求項1〜3のいずれか一項記載の回路接続材料を介在させ、加熱加圧又は光を照射して前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子のみを電気的に接続させる回路端子の接続方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、体積収縮の小さいラジカル重合性回路接続材料が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明に用いる遊離ラジカルを発生する硬化剤としては、過酸化化合物、アゾ系化合物等の加熱により分解して遊離ラジカルを発生するものを使用できる。
硬化剤は、目的とする接続温度、接続時間、ポットライフ等により適宜選定されるが、高反応性とポットライフの点から、半減期10時間の温度が40℃以上かつ、半減期1分の温度が180℃以下の有機過酸化物が好ましく、半減期10時間の温度が60℃以上かつ、半減期1分の温度が170℃以下の有機過酸化物がより好ましい。
【0008】
硬化剤は、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシエステル、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、シリルパーオキサイド等から選定できる。また、回路部材の接続端子の腐食を抑えるために、硬化剤中に含有される塩素イオンや有機酸は5000ppm以下であることが好ましく、さらに、加熱分解後に発生する有機酸が少ないものがより好ましい。
具体的には、パーオキシエステル、ジアルキルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、シリルパーオキサイドから選定され、高反応性が得られるパーオキシエステルから選定されることがより好ましい。
【0009】
パーオキシエステルとしては、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシノエデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、L−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、L−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノネート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(m−トルオイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシアセテート、ジブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート等が使用できる。
【0010】
ジアルキルパーオキサイドとしては、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド等が使用できる。
ハイドロパーオキサイドとしては、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等が使用できる。
【0011】
ジアシルパーオキサイドとしては、イソブチルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、スクシニックパーオキサイド、ベンゾイルパーオキシトルエン、ベンゾイルパーオキサイド等が使用できる。
【0012】
パーオキシジカーボネートとしては、ジ−n−ブロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシメトキシパーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシルパーオキシ)ジカーボネート、ジメトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチルパーオキシ)ジカーボネート等が使用できる。
【0013】
パーオキシケタールとしては、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1、1−(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)デカン等が使用できる。
【0014】
シリルパーオキサイドとしてはt−ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、ビス(t−ブチル)ジメチルシリルパーオキサイド、t−ブチルトリビニルシリルパーオキサイド、ビス(t−ブチル)ジビニルシリルパーオキサイド、トリス(t−ブチル)ビニルシリルパーオキサイド、t−ブチルトリアリルシリルパーオキサイド、ビス(t−ブチル)ジアリルシリルパーオキサイド、トリス(t−ブチル)アリルシリルパーオキサイド等が使用できる。
【0015】
さらに、光照射によって遊離ラジカルを発生する化合物を硬化剤として用いることもできる。このような光ラジカル重合開始剤としては、上記の有機過酸化物系硬化剤の他、ベンゾインエチルエーテル、イソプロピルベンゾインエーテル等のベンゾインエーテル、ベンジル、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のベンジルケタール、ベンゾフェノン、アセトフェノン等のケトン類及びその誘導体、チオキサントン類、ビスイミダゾール類等があり、これらの光開始剤に必要に応じてアミン類、イオウ化合物、リン化合物等の増感剤を任意の比で添加してもよい。
【0016】
これらの遊離ラジカルを発生する硬化剤は単独又は混合して使用することができ、分解促進剤、抑制剤等を混合して用いてもよい。
硬化剤の配合量は、熱可塑性樹脂とラジカル開環重合性物質の和100重量部に対し0.05〜10重量部が好ましく、0.1〜5重量部がより好ましい。
また、これらの硬化剤をポリウレタン系、ポリエステル系の高分子物質等で被覆してマイクロカプセル化したものは、可使時間が延長されるために好ましい。
【0017】
本発明で用いるラジカル開環重合性物質としては、ラジカルにより開環重合する官能基を有する物質であり、環状ジスルフィド、ビシクロブタビニルシクロプロパン、1,1−ビス(エトキシカルボニル)−2−ビニルシクロプロパン、ビニル環状スルホン、4−メチレン−1,3−ジオキソラン、環状ケテンアセタール、8−メチレン−1,4−ジオキサスピロ−[4.5]デカ−6,9−ジエン、環状アリルスルフィド、環状α−オキシアクリル酸エステル、ベンゾシクロブテン、o−キシリレンダイマー、エキソメチレン基を有するスピロオルトカーボナート(SOC)、エキソメチレン基を有するスピロオルトエステル(SOE)、ビニルプロパノン環状アセタール等が挙げられる。ラジカル開環重合性物質は通常のビニル重合性モノマーと比較して、重合時の体積収縮率が小さい。これらのラジカル開環重合性物質によるラジカル開環重合はラジカル重合の汎用性と、ポリマー主鎖に官能基を導入できるという開環重合の有用性を併せ持つため好ましい。
【0018】
本発明の接着剤組成物には、アルコキシシラン誘導体やシラザン誘導体に代表されるカップリング剤及び密着向上剤、レベリング剤等の接着助剤を適宜添加してもよい。具体的には、以下の一般式で示される化合物が好ましい。
【化1】

(ここで、R、R、Rは独立に、水素、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルコキシカルボニル基又はアリール基、Rは水素又はメチル基、Nは1〜10の整数を示す。)
【0019】
特に、上記一般式において、Rが炭素数1〜5のアルキル基又はアリール基、R及びRが炭素数2〜3のアルコキシ基、Nが2〜4である化合物が、高接着性及び電気的信頼性の観点からより好ましい。
これらの化合物は単独で用いる他に、2種以上の化合物を混合して用いてもよい。
【0020】
本発明の接着剤組成物は、橋架け率の向上を目的として、アリル基、マレイミド基、ビニル基等の活性ラジカルによって重合する官能基を有する化合物を適宜添加してもよい。具体的には、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルカプロラクタム、4,4’−ビニリデンビス(N,N−ジメチルアニリン)、N−ビニルアセトアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミドアクリルアミド等が挙げられる。
【0021】
本発明の接着剤組成物は、流動性向上を目的に、単官能(メタ)アクリレートを併用してもよい。具体的には、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、2−シアノエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリール(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート、N、N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N、N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N、N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N、N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリン等が挙げられる。
【0022】
本発明では、ラジカル開環重合性物質を用いることで、重合体の主鎖骨格中にエーテル、エステル、ケトン、アミド、カーボナート等の官能基を導入できる。また、通常のビニル重合性モノマーと比較して、重合時の体積収縮が小さいため、硬化収縮を抑制し、残留応力を緩和できる。
【0023】
本発明で用いる熱可塑性樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、キシレン樹脂、ポリウレタン樹脂等が使用できる。特に、水酸基含有樹脂が、硬化時の応力緩和性に優れ、水酸基による接着性が向上するため好ましい。各ポリマーをラジカル重合性の官能基で変性したものは耐熱性が向上するためより好ましい。このような場合は分子量10000以上の水酸基含有樹脂であり、かつラジカル重合性物質でもある。
これらポリマーの分子量は10000以上が好ましいが1000000以上になると混合性が悪くなる傾向にある。
【0024】
水酸基含有樹脂としては、Tg(ガラス転移温度)が40℃以上で分子量10000以上の水酸基含有樹脂が好ましく使用され、例えばフェノキシ樹脂を使用することができる。水酸基含有樹脂は、カルボキシル基含有エラストマー、エポキシ基含有エラストマー、ラジカル重合性の官能基によって変性されていてもよい。ラジカル重合性の官能基で変性したものは耐熱性が向上するため好ましい。
フェノキシ樹脂は、二官能フェノール類とエピハロヒドリンを高分子量まで反応させるか、又は二官能エポキシ樹脂と二官能フェノール類を重付加反応させることにより得られる。
【0025】
熱可塑性樹脂とラジカル開環重合性物質との配合量は、重量で、熱可塑性樹脂/ラジカル開環重合性物質が10/90〜90/10であることが好ましく、30/70〜70/30であることがより好ましい。
【0026】
さらに、充填材、軟化剤、促進剤、老化防止剤、着色剤、難燃化剤、チキソトロピック剤、カップリング剤及びフェノール樹脂やメラミン樹脂、イソシアネート類等を含有することもできる。
【0027】
本発明の回路接続材料は導電性粒子がなくても、接続時に相対向する回路電極の直接接触により接続が得られるが、導電性粒子を含有した場合、より安定した接続が得られる。
導電性粒子としては、Au、Ag、Ni、Cu、はんだ等の金属粒子やカーボン等があり、十分なポットライフを得るためには、表層はNi、Cu等の遷移金属類ではなくAu、Ag、白金族の貴金属類が好ましくAuがより好ましい。
また、Ni等の遷移金属類の表面をAu等の貴金属類で被覆したものでもよい。また、非導電性のガラス、セラミック、プラスチック等に前記した導通層を被覆等により形成し、最外層を貴金属類プラスチックを核とした場合や、熱溶融金属粒子の場合、加熱加圧により変形性を有するので接続時に電極との接触面積が増加し信頼性が向上するので好ましい。
【0028】
導電性粒子の配合量は用途により適宜設定するが、通常は、接着剤樹脂成分100部(体積)に対して0.1〜30部(体積)の範囲である。過剰な導電性粒子による隣接回路の短絡等を防止するためには0.1〜10部(体積)とするのがより好ましい。
【0029】
また、回路接続材料を2層以上に分割し、遊離ラジカルを発生する硬化剤を含有する層と導電性粒子を含有する層に分離した場合、ポットライフの向上が得られる。
【0030】
本発明の回路接続材料は、相対向する回路電極間に介在され、相対向する回路電極を加圧したとき、加圧方向の電極間を電気的に接続する。硬化剤が熱により硬化する場合は、回路接続材料は、好ましくは、140〜180℃で10秒程度加熱により硬化する。硬化剤が光により硬化する場合は、光照射時間は、好ましくは、3〜30秒である。
【0031】
本発明の接続方法は、第一の接続端子を有する第一の回路部材と、第二の接続端子を有する第二の回路部材とを、第一の接続端子と第二の接続端子を対向して配置し、前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子の間に本発明の接続材料(フィルム状接着剤)を介在させ、加熱加圧及び/又は光照射して前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子を電気的に接続させる。
このような回路部材としては半導体チップ、抵抗体チップ、コンデンサチップ等のチップ部品、プリント基板等の基板等が用いられる。回路部材には接続端子が通常は多数(場合によっては単数でもよい)設けられている。
【0032】
より良好な電気的接続を得るためには、回路電極の少なくとも一方の表面を、金、銀、錫及び白金族から選ばれる金属にすることが好ましい。表面層は金、銀、白金族、又は錫のいずれかから選択され、これらを組み合わせて用いてもよい。また、銅/ニッケル/金のように複数の金属を組み合わせて多層構成としてもよい。
【0033】
図1は本発明の一実施形態にかかる回路端子の接続方法を示す断面図である。この実施形態においては、熱により回路接続材料を硬化させる。
図1(a)において、1は第一の基板(第一の回路部材)を、2は第二の基板(第二の回路部材)を、1aは第一の回路電極(第一の接続端子)を、2aは第二の回路電極(第二の接続端子)を、3は接着剤を、4は導電性粒子を、5は加熱加圧ヘッドを、それぞれ示している。接着剤3と導電性粒子4から本発明の回路接続材料が構成される。
【0034】
基板1,2は、半導体チップ類のシリコーンやガリウム・ヒ素等や、ガラス、セラミックス、ガラス・エポキシ複合体、プラスチック等の絶縁基板である。
回路電極1aは基板1の表面に銅箔で設けたもので、金の表面層が形成されている。回路電極2aは基板2の表面に銅箔で設けたもので、錫の表面層が形成されている。
回路電極を設けた基板は接続時の加熱による揮発成分による接続への影響をなくすために、回路接続材料による接続工程の前に予め加熱処理することが好ましい。加熱処理条件は50℃以上の温度で1時間以上が好ましく、100℃以上の温度で5時間以上がより好ましい。
図1(b)に示すように、仮接続の後に、基板1の回路電極1aと基板2の回路電極2aを位置合わせし、基板2上方より加熱加圧ヘッド5にて所定時間の加熱加圧を行い本接続を完了する。
【0035】
図2は、本発明の他の実施形態にかかる回路端子の接続方法を示す断面図である。図1と同じ部材については、同じ参照番号を付してその説明を省略する。
図2は、硬化剤が光硬化剤の場合の、第一の回路電極1aと第二の回路電極2aとを接着方法を示している。この実施形態では、第一の基板1が透光性である。加熱加圧ヘッド5により、第二の基板2を第一の基板1が載置されている透光性ベース6に向けて押圧しており、同時に光源7から接着剤3に光を照射している。光源7からの光は、透光性ベース6及び透光性の第二の基板2を透過して接着剤3に照射される。硬化に用いる光は、一般的に広く使用されている紫外線を用いることができ、水銀ランプ、メタルハライドランプ、無電極ランプ等で発生させることができる。尚、この実施形態では、加熱加圧ヘッド5を加熱する必要はない。
【実施例】
【0036】
実施例1
フェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド株式会社製、商品名PKHC、平均分子量45,000)50gを、重量比でトルエン(沸点110.6℃、SP値8.90)/酢酸エチル(沸点77.1℃、SP値9.10)=50/50の混合溶剤に溶解して、固形分40%の溶液とした。
ラジカル開環重合性物質として1,1−ビス(エトキシカルボニル)−2−ビニルシクロプロパンを用いた。
遊離ラジカル発生剤としてt−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノネートの50重量%DOP溶液(日本油脂株式会社製、商品名パーキュアHO)を用いた。
ポリスチレンを核とする粒子の表面に、厚み0.2μmのニッケル層を設け、このニッケル層の外側に、厚み0.04μmの金層を設け、平均粒径10μmの導電性粒子を作製した。
固形重量比でフェノキシ樹脂50g、1,1−ビス(エトキシカルボニル)−2−ビニルシクロプロパン50g及び2-(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート(ライトエステルP-2M、共栄社株式会社製商品名)5g、t−ヘキシルパーオキシ2−エチルヘキサノネート5gとなるように配合し、さらに導電性粒子を3体積部(樹脂成分100体積部に対し)配合分散させ、厚み80μmの片面を表面処理したポリエチレンテレフタレートフィルムに塗工装置を用いて塗布し、70℃、10分の熱風乾燥により、接着剤層の厚みが35μmの回路接続材料を得た。
上述の回路接続材料を用いて、ライン幅50μm、ピッチ100μm、厚み18μmの銅回路を500本有するフレキシブル回路板(FPC)同士を160℃、3MPaで10秒間加熱加圧して幅2mmにわたり接続した。このとき、予め一方のFPC上に、回路接続材料の接着面を貼り付けた後、70℃、0.5MPaで5秒間加熱加圧して仮接続し、その後、ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離してもう一方のFPCと接続することにより、回路を接続した。
【0037】
比較例1
ラジカル開環重合性物質にかえてラジカル重合性物質としてジシクロベンテニルアクリレート(共栄社油脂株式会社製、商品名DCP−A)を用いたこと以外は実施例1と同様にして回路接続材料を得た。また、実施例1と同様にして回路を接続した。
【0038】
評価例1
本発明の効果は体積収縮の小さい回路接続材料を得ることであり、すなわち硬化後の応力緩和性に優れる。尚、応力緩和性が良いとは耐湿試験後の浮きが無いこと等が指標として挙げられる。回路接続材料では、応力緩和性等に起因する接着力や接続信頼性が評価の対象となる。そこで、実施例と比較例効果の違いを比較するため、以下のような測定を行い評価した。結果を表1に示す。尚、評価は相対的に行い、◎は相対的に極めて良好、○は相対的に良好、△は相対的に不良を示す。
(接続抵抗の測定)
実施例及び比較例で得られた回路の接続体を、接続部を含むFPCの隣接回路間の抵抗値を、初期と、85℃、85%RHの高温高湿槽中に500時間保持した後にマルチメータで測定した。
(接着力の測定)
実施例及び比較例で得られた回路の接続体を、90度剥離、剥離速度50mm/分で接着力測定を行った。
【0039】
表1
接続抵抗(初期) 接続抵抗(85℃85%) 接着力
実施例1 ◎ ○ ◎
比較例1 ○ △ △
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の回路接続材料は、電気・電子用の等方性、異方性接着剤として、幅広く使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施形態にかかる回路端子の接続方法を示す断面図である。
【図2】本発明の他の実施形態にかかる回路端子の接続方法を示す断面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 第一の基板
1a 第一の回路電極
2 第二の基板
2a 第二の回路電極
3 接着剤
4 導電性粒子
5 加熱加圧ヘッド
6 透光性ベース
7 光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対向する回路電極間に介在され、相対向する回路電極を加圧し加圧方向の電極間のみを電気的に接続する回路接続材料であって、下記(1)〜(3)の成分を必須とする回路接続材料。
(1)遊離ラジカルを発生する硬化剤
(2)熱可塑性樹脂
(3)ラジカル開環重合性物質
【請求項2】
前記ラジカル開環重合性物質(3)が、ビニルシクロプロパン誘導体、ジオキソラン誘導体から選択される少なくとも一種である請求項1記載の回路接続材料。
【請求項3】
導電性粒子を含有する請求項1又は2記載の回路接続材料。
【請求項4】
第一の接続端子を有する第一の回路部材と、第二の接続端子を有する第二の回路部材とが、第一の接続端子と第二の接続端子を対向して配置されており、前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子の間に請求項1〜3のいずれか一項記載の回路接続材料が介在されており、前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子のみが電気的に接続されている回路端子の接続構造体。
【請求項5】
第一の接続端子を有する第一の回路部材と、第二の接続端子を有する第二の回路部材とを、第一の接続端子と第二の接続端子を対向して配置し、前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子の間に請求項1〜3のいずれか一項記載の回路接続材料を介在させ、加熱加圧又は光を照射して前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子のみを電気的に接続させる回路端子の接続方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−131839(P2006−131839A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−325334(P2004−325334)
【出願日】平成16年11月9日(2004.11.9)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】