説明

回路装置およびその製造方法

【課題】回路基板を、所定の筐体内に一体に封入して構成される回路装置を、要求された種々の仕様に合わせて、しかも煩雑な工程管理を行うことなしに効率的に製造することのできる回路装置の製造方法を提供する。
【解決手段】所定の筐体内に一体に封入される回路基板の調整部を、レーザ光の照射により加工される部材、例えば半田にて構成すると共に、前記筐体の少なくとも前記回路基板の調整部に対峙する部位を該調整部にレーザ光を照射可能な素材にて形成しておき、前記筐体にて前記回路基板を収納して該筐体を封止した後、前記筐体の外部から前記調整部にレーザ光を照射して該調整部を加工して前記回路本体の動作モードを設定および/または動作特性を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路本体を形成する電子部品を搭載すると共に、その調整部を設けた回路基板を、所定の筐体内に一体に封入した回路装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光電センサ等のセンサ装置は、例えばセンサ素子と、このセンサ素子に接続されて該センサ素子を駆動し、また前記センサ素子の出力に所定の処理を施すセンサ回路とを、所定の筐体内に一体に封入した構造を有する。また上記センサ回路は、一般的には回路基板上に搭載された電子部品により形成され、またこの回路基板には該センサ回路の動作条件(動作モード)等を設定し、および/またはその動作特性を調整する調整部が一体に組み込まれることも多い。
【0003】
ちなみにセンサ回路の動作特性(感度)を調整する手法として、例えば特許文献1にはセンサ素子に接続されたトリマブル抵抗をレーザトリミングすることが開示される。また、例えば特許文献2には、動作特性や動作モードを設定する為の調整抵抗に接続されたツェナーダイオードに外部から電気信号を与えることで上記調整抵抗を短絡制御し、これによってセンサ装置の特性を調整することが開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−162233号公報
【特許文献2】特開平5−312613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら光電センサのように、センサ素子とセンサ回路とを樹脂製ケース(筐体)に収納して密閉した構造のセンサ装置(回路装置)のような場合、特許文献2に示されるように、短絡制御用の端子を樹脂製ケースの外側に引き出して設けておくことは困難である。また特許文献1に示されるようにトリマブル抵抗をレーザトリミングするにしても、その調整作業についてはセンサ素子とセンサ回路とを樹脂製ケース(筐体)に収納して密閉する前に行うことが必要である。
【0006】
これ故、従来では、先ず図7に示すようにセンサ素子やセンサ回路等を所定の基板上に実装して回路基板を組み立てた後[ステップS1]、該回路基板に設けられたトリマブル抵抗をレーザトリミングする等してセンサ装置(回路装置)の動作特性等を調整・設定することが必要である[ステップS2]。この調整・設定は、センサ装置(回路装置)に要求される仕様に合わせて行われ、これによって種々の仕様に応じた複数種の半製品(回路基板)a,b〜nが製作される。その後、これらの各半製品(回路基板)a,b〜nをそれぞれ樹脂製ケース(筐体)に収納して密閉することで[ステップS3a,3b〜3n]、前述したセンサ素子とセンサ回路とを樹脂製ケース(筐体)に収納して密閉した構造のセンサ装置(回路装置)が種々の仕様の製品A,B〜Nとして製作される。
【0007】
この製作手順に示されるように、従来一般的には種々の仕様に応じた複数種のセンサ装置(回路装置)を製作する場合には、回路基板を筐体に収納して封止するに先立って上記回路基板に対する調整・設定を行う必要があるのでその工程管理が煩雑であり、しかも製品A,B〜Nを製作した後には前記回路基板に対する微調整等を行うことが全くできないと言う問題がある。しかも製品A,B〜Nを製作した後には、その調整等を行うことができないと言う問題がある。
【0008】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、その目的は、回路本体を形成する電子部品を搭載すると共に、その調整部を設けた回路基板を、所定の筐体内に一体に封入して構成される光電センサ等の回路装置を、要求された種々の仕様に合わせて、しかも煩雑な工程管理を行うことなしに効率的に製造することのできる回路装置およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するべく本発明に係る回路装置は、複数の電気部品により形成された電気回路と、この電気回路の動作条件を設定し、および/または動作特性を調整する調整部を設けた回路基板を、筐体内に収納して該筐体を封止した構造のものであって、
前記筐体の少なくとも前記調整部に対向する部分が前記レーザ光を透過する材質で形成されており、
前記調整部は、前記回路基板に搭載されてレーザ光の照射によりトリミングされる前記回路本体の動作特性調整用の抵抗からなることを特徴としている。
【0010】
或いは前記調整部は、前記回路基板上に所定の隙間を隔てて設けられた複数の導電体パットを備え、これらの複数の導電体パットは、各導電体パットにそれぞれ設けられた半田のレーザ光の照射による溶融によって隣接する導電体パット間が接続されて、若しくは隣接する導電体パット間に跨って設けられたジャンパー体のレーザ光の照射による溶断によって上記導電体パット間の接続が切り離されて前記回路本体の動作モードを設定するスイッチを形成することを特徴としている。
【0011】
また本発明に係る回路装置の製造方法は、回路本体を形成する電子部品を搭載すると共に、その調整部を設けた回路基板を、所定の筐体内に一体に封入した回路装置を製造するに際し、
前記回路基板の調整部を、レーザ光の照射により加工される部材、例えば半田にて構成すると共に、前記筐体の少なくとも前記回路基板の調整部に対峙する部位を該調整部にレーザ光を照射可能な素材にて形成し、この筐体にて前記回路基板を収納して該筐体を封止した後、前記筐体の外部から前記調整部にレーザ光を照射して該調整部を加工して前記回路本体の動作モードを設定および/または動作特性を調整することを特徴としている。
【0012】
即ち、本発明に係る、例えば光電センサ等の回路装置の製造方法は、筐体内にセンサ素子と共に回路基板を収納して該筐体を封止して回路装置の標準製品を製作した後、製品仕様に合わせて前記標準製品における前記筐体の外部から前記調整部にレーザ光を照射し、これによって該調整部を加工して前記回路本体の動作モードを設定および/または動作特性を調整することを特徴としている。
【0013】
ちなみに前記調整部は、前記回路基板に搭載されてレーザ光の照射によりトリミングされる前記回路本体の動作特性調整用の抵抗、および/または前記回路基板上に所定の隙間を隔てて設けられた複数の導電体パットを備え、各導電体パットにそれぞれ設けられた半田のレーザ光の照射による溶融によって隣接する導電体パット間が接続されて、若しくは隣接する導電体パット間に跨って設けられたジャンパー体のレーザ光の照射による溶断によって上記導電体パット間の接続が切り離されて前記回路本体の動作モードを設定するスイッチとして構成される。
【0014】
尚、前記回路本体は、例えばセンサ素子に接続されたセンサ回路であって、前記回路基板を収納した筐体は、センサ装置を構成するものからなる。
【発明の効果】
【0015】
上述した回路装置およびその製造方法によれば、例えばセンサ装置等の回路本体を形成する電子部品を搭載すると共に、その調整部を設けた回路基板を収納して一体に封入する筐体の、少なくとも前記回路基板の調整部に対峙する部位が該調整部にレーザ光を照射可能な素材にて形成されているので、前記回路基板を所定の筐体内に一体に封入してその標準製品を製作した後、上記標準製品の筐体外部から前記調整部に前記レーザ光を照射し、該調整部を製品仕様に合わせて調整・設定することができる。従って回路装置の製造工程の途中で前記調整部の調整・設定を行う必要がなく、製造手順の簡素化を図ることができる。しかも従来のように、製造工程の途中で種々の製品仕様に応じた調整・設定を行うことで、仕様の異なる複数種の半製品を作る必要がないので、仕様の異なる半製品をロット単位で管理する必要がなく、その製造工程管理の大幅な簡略化を図ることができる。
【0016】
その上で前記標準製品に対して、その筐体の外部から前記調整部にレーザ光を照射し、各種の仕様に応じた調整・設定を行うことができるので、仕様を異にする種々の回路装置を効率良く生産することができる等の実用上多大なる効果が奏せられる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る回路装置としてのセンサ装置の概略構成を示す分解斜視図。
【図2】図1に示すセンサ装置の要部断面構造を示す図。
【図3】調整部におけるトリマブル抵抗のトリミング例を示す図。
【図4】調整部における導電体パット間の切断例を示す図。
【図5】調整部における導電体パット間の短絡例を示す図。
【図6】本発明の一実施形態に係る回路装置の製造方法を説明するための、センサ装置の製作手順の一例を示す図。
【図7】従来の製作手順を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態に係る回路装置およびその製造方法について、光電センサ装置の製造を例に説明する。
図1は本発明に係る回路装置としてのセンサ装置の概略構成を示す分解斜視図であり、図2はその要部断面構造を示す図である。このセンサ装置は、センサ素子としての、発光ダイオード等の投光素子1とフォトダイオード等の受光素子2とを搭載すると共に、上記センサ素子(投光素子1および受光素子2)を駆動すると共に、そのセンサ出力に所定の信号処理を施すセンサ回路3、およびこのセンサ回路3に付随して設けられて該センサ回路3の動作モードを選択的に設定したり、その動作特性を調整する調整部4を搭載した回路基板5を、合成樹脂製の筐体(ケース)6内に収納して構成される。上記調整部4は、後述するようにレーザ光の照射によってトリミングされるトリマブル抵抗や、レーザ光の照射によって短絡または切断される複数の導電体パットを備えたものからなる。
【0019】
ちなみに前記合成樹脂製の筐体(ケース)6は、例えば回路基板5の載置部をなす第1のケース(下ケース)6aと、この第1のケース6aに載置された前記回路基板5を覆って前記第1のケース6aに固着される第2のケース(上ケース)6bとからなる。これらの第1および第2のケース6a,6bは、前記回路基板5を収納した状態で互いに突き合わせられ、その突き合わせ部をレーザ溶着により接合されて一体化されて、その内部に前記回路基板5を収納する密封空間を形成した箱形の筐体6を構成する。尚、図中7は前記回路基板5に接続されて前記筐体(ケース)6に設けられたケーブル取り出し孔6cを通して外部に引き出されるケーブルである。
【0020】
またここでは前記回路基板5は、前記センサ素子(投光素子1および受光素子2)の投受光面と前記調整部4とが同じ向きに向くように、前記センサ素子を搭載した面側に前記調整部4を設けている。特に前記センサ素子と調整部4とは、後述する隔壁により区画されるように所定の距離を隔てて設けられている。そして前記第1のケース(下ケース)6aは、回路基板3に搭載された前記センサ素子(投光素子1および受光素子2)を上向きにして前記回路基板3を載置し、また前記回路基板3を覆う第2のケース(上ケース)6bは前記センサ素子および調整部4に対峙させて設けられて前記第1のケース(下ケース)6aに接合一体化されるものとなっている。
【0021】
ちなみに前記第2のケース(上ケース)6bは、前記センサ素子と筐体6の外部の検出領域との間での投受光を可能とし、また前記調整部4への筐体6の外部からのレーザ光の照射を可能とするべく透光性を有する合成樹脂材、例えばPAR(ポリアリレート)にて形成されている。また前記第1のケース(下ケース6a)は、前記第2のケース(上ケース)6bとのレーザ溶着が容易な合成樹脂材、例えばPC(ポリカーボネート)にて形成されている。
【0022】
そしてこれらの第1および第2のケース6a,6bは、その突き合わせ面を互いに突き合わせ、透光性を有する第2のケース6b側からその突き合わせ部に向けて照射されるレーザ光により、そのレーザ光照射部位を溶融させて接合一体化(レーザ溶着)されるものとなっている。このレーザ溶着は、第1のケース6aと第2のケース6bとを突き合わせた筐体(ケース)6の外周壁に沿って連続的に行われ、これによって第1および第2のケース6a,6bが形成する前記回路基板5の収納空間を密閉するものとなっている。
【0023】
また前記筐体(ケース)6には、特に前記回路基板5を覆って設けられる第2のケース(上ケース)6bには、前記回路基板5の前記調整部4が位置付けられる領域と前記センサ素子(投光素子1および受光素子2)の収納空間側とを区画する隔壁6dが設けられている。特にこの例では前記隔壁6dは、第2のケース(上ケース)6bと一体に形成されており、第1のケース(下ケース)6aに載置された回路基板5を覆って第2の(上ケース)6bを設けたとき、その端部を前記回路基板5の面に当接させることで、前記回路基板5を収納した筐体(ケース)6の内部空間を調整部4側とセンサ素子側とを区画するものとなっている。この隔壁6dは、前記調整部4にレーザ光を照射して該調整部4をレーザ加工した際に発生する生成物(例えば後述するように調整部4に予め盛った半田に含まれるフラックス成分や、フラックスから発生する窒素等の活性ガス、或いは半田の加熱により発生するヒューム等)の前記センサ素子側への飛散を防止することで、センサ素子の光学特性の劣化を防止する役割を担う。
【0024】
また前記隔壁6dは、前記調整部4に照射されるレーザ光の前記センサ素子側への廻り込みを低減する役割も担う。ちなみに前記隔壁6dを前記第2のケース(上ケース)6bとは別部材である、例えばレーザ光を透過し難い部材(遮光性部材)にて形成すれば、前記調整部4に照射されるレーザ光のセンサ素子側への廻り込みを効果的に防止することができる。特にこのような遮光性を有する隔壁6dを備えれば、レーザ光の波長と受光素子の感度波長帯が重なる場合においては、受光素子での受光量をモニタしながら前記調整部4を調整する際、調整部4に照射されるレーザ光の受光素子への廻り込みが大きな悪影響を及ぼす虞があるので、その効果が大きい。
【0025】
尚、隔壁6dを第2のケース(上ケース)6bと一体成形した場合には、隔壁6dに遮光材料を塗布して前記レーザ光の廻り込みを防止するようにしても良い。またレーザ光の廻り込みを防止するだけを目的とするならば、必ずしも前記隔壁6にて調整部4の収納空間とセンサ素子の収納空間とを完全に分離する必要はなく、調整部4に照射したレーザ光が反射等によってセンサ素子側に回り込まない程度に設ければ十分である。
【0026】
ここで前述した調整部4について簡単に説明する。この調整部4は、センサ回路3の動作モードを設定したり、その動作特性を調整する役割を担うものであって、例えば図3に示すようなトリマブル抵抗4aや、図4に示すようにジャンパー体4bにより相互に接続された導電体パット対4c、或いは図5に示すように予め半田4dが盛られて互いに近接配置された導電体パッド群4eからなる。
【0027】
トリマブル抵抗4aは、レーザ光を照射してその一部を図3に示すようにトリミングすることで該トリマブル抵抗4aの両端間の抵抗値を変化させるもので、例えば前記センサ回路3における増幅利得の調整や、受光素子2による受光量の判定閾値の調整に用いられる。またトリマブル抵抗4aのトリミングにより、前記発光素子1からの発光量を調整する場合もある。いずれの場合にしろ前記トリマブル抵抗4aはセンサ装置のアナログ的な調整に使用される。
【0028】
これに対して前記導電パット対4cや導電パット群4eは、そのパット間の短絡(導通)または切断(遮断)によって前記センサ回路3にオン/オフの情報をデジタル的に与える役割を担う。図4に示すように導電パット対4cは、予めその間をジャンパー体(例えば細線や半田)4bにより相互に接続(短絡)されたものであって、当該ジャンパー体4bにレーザ光が照射されたとき、前記ジャンパー体4bを溶断することにより導電パット間を開放(切断)する役割を担っている。このようなジャンパー体4bの切断は、例えば光電センサにおいては、受光素子3の受光量が所定の閾値を上回ったときにセンサ出力をオンとするLO(ライトオン)モードを設定するか、或いは前記受光量が所定の閾値を下回ったときにセンサ出力をオンとするDO(ダークオン)モードを設定するかと言うような、動作モードの切り替え設定に利用される。
【0029】
また導電パット群4dは、複数の導電パットを微小な距離を隔てて互いに近接させて設け、隣接する導電パット間に跨ってレーザ光が照射されたとき、各導電パット上にそれぞれ盛られた半田を溶融させ、これらの溶融半田の濡れ性を利用して互いに結合させることで隣接する導電パット間を接続(短絡)する役割を担っている。このような導電パット群4dの選択的な導通制御は、例えば前記光電センサの検出感度を「高・中・低」に選択的に設定するような動作特性の設定に用いられる。このような調整部4のレーザ加工(センサ回路3に対する調整・設定)は、スポット径および強度が調整されたレーザ光の照射時間、およびその照射位置の制御により選択的に実施される。
【0030】
図6は、上述した構成を有するセンサ装置(回路装置)を製作する上での本発明に係る製造方法の概略的な手順を示している。即ち、この光電センサは、図6にその製作手順の一例を示すように、先ず前述した回路基板4を組み立てた後[ステップS11]、その回路基板4を筐体6内に収納して該筐体4を封止して標準製品を組み立てる[ステップS12]。その後、上述した如く組み立てられた標準製品に対して、前記筐体6の外側から前記調整部4にレーザ光を照射することにより該調整部4のレーザ加工が実施される[ステップS13]。ちなみにレーザ光を用いた前記調整部4の調整・設定は、センサ装置に要求される仕様に応じて実施されることは言うまでもない。そして前記調整部4の調整・設定により、種々の仕様に応じた複数種の製品A,B〜Nが製作される。
【0031】
即ち、本発明に係る製造方法においては、回路基板5を収納して封止する筐体6の、少なくとも前記回路基板5に設けられた調整部4に対峙する部位を、該調整部4にレーザ光を照射可能なように予め透明部材にて形成しているので、前記回路基板5を筐体6内に収納して封止した後、製品仕様等に応じて前記調整部4に対する調整・設定を可能としている。換言すればセンサ素子1,2と、これらのセンサ素子1,2に接続されたセンサ回路3およびその調整部4を設けた回路基板5とを、所定の筐体6内に収納して該筐体6を封止した後であっても、前記筐体6の外側から前記調整部4にレーザ光を照射して前記センサ回路3の動作条件を容易に設定し、若しくは前記センサ回路3の動作特性を容易に調整することができる。
【0032】
従ってセンサ装置(回路装置)の製造工程の途中において、その仕掛品を組立ラインから外して前記調整部4に対する調整・設定を実施し、その後、再び組立ラインに戻して筐体6の封止作業を実施する等の煩わしさがない。換言すれば回路基板5の組み立てと、組み立てた回路基板5を収納して筐体6を組み立ると言う製造手順を一括して実行し、その後、前記調整部4に対する調整・設定作業を実施することができる。
【0033】
従って本発明の製造方法によれば回路装置(センサ装置)の組み立て作業と調整・設定作業とを分けることができるので、その製造工程の円滑化を図ることができる。しかも製造工程の途中において、各種の製品仕様に応じた調整・設定作業を実行して、例えばロット毎に仕様の異なる製品を作る必要がないので、その製造工程管理の簡素化を図ることができる。更には製品製造の最終段階で調整・設定作業を行うだけで良いので、例えばその微調整等についても容易に行うことができ、従来のように筐体6への封入後、所望とする仕様を満たしていないとして廃棄処分することもなくなる。換言すれば本発明によれば製造歩留まりの向上と、製造品質の向上を図ることができる。
【0034】
また前述した構造のセンサ装置によれば、筐体6の内部に収納された回路基板5におけるセンサ素子1,2の搭載領域と、前記調整部4の実装領域とを区画する隔壁6dを備えているので、回路基板5を収納した筐体6の組立後に前記調整部4にレーザ光を照射してその調整・設定を行っても、調整部4へのレーザ光の照射の影響がセンサ素子に及ぶことがない。具体的にはレーザ光を照射して半田を溶融させた場合、例えば半田に含まれる溶剤(ペースト成分)が揮散するが、その揮散成分がセンサ素子のセンサ面(投受光面)に付着したり、センサ素子に対峙する上ケース6bの光学的窓部に付着する等してその光学特性が損なわれる虞がない。
【0035】
また副次的にはセンサ素子を動作させ、受光素子2での受光量やセンサ回路3の出力をモニタしながら前述したトリマブル抵抗4aをレーザトリミングする場合であっても、トリミングに用いるレーザ光の前記センサ素子側への廻り込みが前記隔壁4dによって低減することができるので、前述したセンサ出力等のモニタ自体が不安定になる等の不具合を招来することがない。従ってセンサ装置の安定した高精度な調整が可能となる等の効果が奏せられる。
【0036】
尚、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。ここでは筐体6を構成する第1のケース(上ケース)6aと第2のケース(第2のケース)6bとをレーザ溶着して封止する例について説明したが、第1のケース6aと第2のケース6bとを超音波溶着して封止したり、接着剤を用いて接着しても良いことは勿論のことである。またここでは光電センサを例に説明したが、高周波電磁誘導を利用した近接センサや、他のセンサ等にも同様に適用することができる。また前記筐体6には、基本的には前記調整部4にレーザ光を照射可能な透明部材からなる窓部を設けておけば十分であり、筐体6の形成部材についても特に限定されない。その他、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 投光素子(センサ素子)
2 受光素子(センサ素子)
3 センサ回路
4 調整部
5 回路基板
6 筐体
6d 隔壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路本体を形成する電子部品を搭載すると共に、その調整部を設けた回路基板を、所定の筐体内に一体に封入した回路装置を製造するに際し、
前記回路基板の調整部を、レーザ光の照射により加工される部材にて構成し、
少なくとも前記回路基板の調整部に対峙する部位を該調整部にレーザ光を照射可能な素材にて形成した筐体に前記回路基板を収納して該筐体を封止した後、前記筐体の外部から前記調整部にレーザ光を照射して該調整部を加工して前記回路本体の動作モードを設定および/または動作特性を調整することを特徴とする回路装置の製造方法。
【請求項2】
前記調整部は、前記回路基板に搭載されてレーザ光の照射によりトリミングされる前記回路本体の動作特性調整用の抵抗からなる請求項1に記載の回路装置の製造方法。
【請求項3】
前記調整部は、前記回路基板上に所定の隙間を隔てて設けられた複数の導電体パットを備え、各導電体パットにそれぞれ設けられた半田のレーザ光の照射による溶融によって隣接する導電体パット間が接続されて、若しくは隣接する導電体パット間に跨って設けられたジャンパー体のレーザ光の照射による溶断によって上記導電体パット間の接続が切り離されて前記回路本体の動作モードを設定するスイッチである請求項1に記載の回路装置の製造方法。
【請求項4】
前記回路本体は、センサ素子に接続されたセンサ回路であって、前記回路基板を収納した筐体は、センサ装置を構成するものである請求項1に記載の回路装置の製造方法。
【請求項5】
複数の電気部品により形成された電気回路と、この電気回路の動作条件を設定し、および/または動作特性を調整する調整部を設けた回路基板を、筐体内に収納して該筐体を封止した構造の回路装置であって、
前記筐体の少なくとも前記調整部に対向する部分が前記レーザ光を透過する材質で形成されており、
前記調整部は、前記回路基板に搭載されてレーザ光の照射によりトリミングされる前記回路本体の動作特性調整用の抵抗からなることを特徴とする回路装置。
【請求項6】
複数の電気部品により形成された電気回路と、この電気回路の動作条件を設定し、および/または動作特性を調整する調整部を設けた回路基板を、筐体内に収納して該筐体を封止した構造の回路装置であって、
前記筐体の少なくとも前記調整部に対向する部分が前記レーザ光を透過する材質で形成されており、
前記調整部は、前記回路基板上に所定の隙間を隔てて設けられた複数の導電体パットを備え、これらの複数の導電体パットは、各導電体パットにそれぞれ設けられた半田のレーザ光の照射による溶融によって隣接する導電体パット間が接続されて、若しくは隣接する導電体パット間に跨って設けられたジャンパー体のレーザ光の照射による溶断によって上記導電体パット間の接続が切り離されて前記回路本体の動作モードを設定するスイッチを形成していることを特徴とする回路装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−226002(P2010−226002A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−73804(P2009−73804)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】