説明

回路装置およびその製造方法

【課題】熱干渉が緩和された回路装置を提供する。
【解決手段】本発明の混成集積回路装置10Aは、回路基板12と、回路基板12の上面に配置された制御素子23およびチップ素子24と、回路基板12を部分的に開口させた開口部18と、開口部18を下面から塞ぐ実装基板28と、実装基板28の上面に実装されたパワー素子22と、実装基板28と回路基板12とを離間させるスペーサ26とを備えている。スペーサ26で実装基板28と回路基板12とが離間されることにより、実装基板28に実装されたパワー素子22が動作状況下にて発熱しても、この熱が回路基板12上に実装された制御素子23に与える熱的な影響が小さくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回路装置およびその製造方法に関し、特に、放熱性が向上された回路装置およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図8を参照して、従来型の回路装置の一例として混成集積回路装置100の構成を説明する(特許文献1)。先ず、アルミニウム等の金属からなる基板101の表面には、樹脂から成る絶縁層102を介して導電パターン103が形成され、この導電パターン103の所望の箇所に回路素子が固着されて、所定の電気回路が形成される。ここでは、回路素子として半導体素子105Aとチップ素子105Bが採用されている。半導体素子105Aは、例えばトランジスタまたはダイオードであり、上面の電極が金属細線107を経由して所定の導電パターン103と接続され、裏面の電極は導電パターン103に接続されている。一方、コンデンサまたは抵抗器であるチップ素子105Bは、両端の電極が半田等の接合材106を介して所定の導電パターン103と接合されている。また、封止樹脂108は、基板101の表面に形成された電気回路を封止する機能を有する。更に、リード109は装置全体の外部接続端子として機能し、内側の端部はパッド状に形成された導電パターン103に固着され、外側の端部は封止樹脂108から外部に導出する。
【0003】
この様な構成の混成集積回路装置100は、金属からなる基板101の上面に各回路素子が実装されるので、動作状況下にて半導体素子105Aが発熱しても、発生した熱は基板101を経由して良好に外部に放出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−036014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、数十アンペア程度の大電流のスイッチングを行うパワー素子等を回路素子として採用した場合、上記した構成の混成集積回路装置100でも放熱性が不十分な問題があった。
【0006】
具体的には、例えば半導体素子105Aから発生された熱が外部に至る経路は、導電パターン103、絶縁層102、基板101、封止樹脂108の順番である。この中でも、導電パターン103、基板101は金属から成るので熱伝導率は良いが、絶縁層102および封止樹脂108はエポキシ樹脂等の樹脂材料から成るので熱伝導性が悪い。このように、半導体素子105Aの熱が外部に放出される経路に、樹脂からなる部分が含まれることが、放熱性の更なる向上を阻害していた。
【0007】
また、基板101の下面を外部に露出させると、裏面を被覆していた封止樹脂108が無くなる分、放熱性が向上する。しかしながら、この場合であっても、基板101の上面を被覆する絶縁層102が、熱の経路に存在するので、放熱性の向上に限界があった。更に、絶縁層102自体の熱伝導率を向上させるために、絶縁層102はシリカ等の無機フィラーを含むが、この様な対策を施しても絶縁層102の熱伝導率は金属には劣る。
【0008】
更にまた、半導体素子105Aの動作時の発熱量が特に大きい場合、発生した熱が基板101を経由してチップ素子105B等に伝導し、この結果、高温と成ったチップ素子105Bの特性が劣化してしまう問題もあった。
【0009】
本発明は上記した問題を鑑みて成されたものであり、本発明の主たる目的は、放熱性が高く且つ回路素子同士の熱干渉が抑制された回路装置およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の回路装置は、上面に導電パターンが配置された回路基板と、前記回路基板を部分的に開口した開口部と、前記開口部と重畳するように前記回路基板の下方に配置された実装基板と、前記実装基板の上面に配置されて前記導電パターンと電気的に接続された半導体素子と、を備え、前記実装基板の一部を前記回路基板から離間させることを特徴とする。
【0011】
本発明の回路装置の製造方法は、上面に導電パターンが配置されると共に開口部が設けられた回路基板を用意し、半導体素子が上面に実装された実装基板を、前記開口部と重畳する位置で前記回路基板の下方に配置する工程と、金型のキャビティに前記回路基板および前記実装基板を収納し、前記回路基板の上面、側面および下面の周辺部を封止樹脂で被覆する工程と、を備え、前記実装基板を前記回路基板から離間させることで、前記実装基板と前記回路基板との間に間隙を形成し、前記間隙を経由して前記封止樹脂を流動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、発熱体である半導体素子が実装される実装基板と回路基板とを離間させている。これにより、回路基板と実装基板とが熱的に分離されるので、実装基板に実装された半導体素子が発熱しても、発生した熱は回路基板には殆ど伝導しない。この結果、回路基板に配置された小信号系の半導体素子等が過熱されることによる誤動作が抑止される。
【0013】
更に本発明によれば、熱伝導性に優れた材料からなる実装基板を回路基板とは別体で配置し、この実装基板の上面に半導体素子を実装している。これにより、半導体素子から発生した熱は、熱伝導性に優れる実装基板を経由して直ちに外部に放出される。従って、動作時の半導体素子の過熱が抑制され、その誤動作や特性低下が抑制される。
【0014】
更に、製法上に於いては、開口部を塞ぐ実装基板と回路基板との間に間隙が存在するので、樹脂封止の工程において、両者の間に存在する間隙を経由して封止樹脂が流通するように成る。この結果、回路基板の開口部および回路基板の下面に封止樹脂が良好に充填され、未重点領域であるボイドの出現が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の回路装置を示す図であり、(A)は斜視図であり、(B)は断面図であり、(C)は実装基板を示す斜視図である。
【図2】本発明の回路装置を示す図であり、(A)−(C)は他の形態の混成集積回路装置を示す断面図である。
【図3】本発明の回路装置を示す図であり、(A)−(B)は他の形態の混成集積回路装置を示す断面図である。
【図4】本発明の他の形態の回路装置を示す図であり、(A)は断面図であり、(B)は拡大された平面図であり、(C)は拡大された断面図である。
【図5】本発明の他の形態の回路装置を示す断面図である。
【図6】本形態の回路装置の熱抵抗を測定した結果を示すグラフである。
【図7】本形態の回路装置の製造方法を示す図であり、(A)は本工程を示す断面図であり、(B)は部分的に拡大して示す断面図であり、(C)は実装基板の部分を示す平面図であり、(D)は他の形態の回路装置を樹脂封止する状態を示す断面図である。
【図8】背景技術の混成集積回路装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1を参照して、本発明の回路装置の一例として混成集積回路装置10Aの構成を説明する。図1(A)は混成集積回路装置10Aを示す斜視図であり、図1(B)はその断面図であり、図1(C)は実装基板を抜き出して示す斜視図である。
【0017】
図1(A)および図1(B)を参照して、混成集積回路装置10Aは、導電パターン16および回路素子から成る混成集積回路が上面に組み込まれた回路基板12と、回路基板12を部分的に開口した開口部18と、開口部18と重畳する様に回路基板12の下方に配置された実装基板28と、実装基板28に実装されたパワー素子22(半導体素子)とを備えている。更に本形態では、パワー素子22が実装される実装基板28と回路基板12との間にスペーサ26を配置することにより、両者を離間させている。
【0018】
具体的には、回路基板12は、回路素子を相互に接続するための導電パターン16が上面に形成された基板である。回路基板12の材料としては、ガラスエポキシ樹脂等の樹脂材料、セラミック基板またはアルミニウム等の金属基板が採用される。また、金属基板が回路基板12として採用される場合は、アルミナ等のフィラーが充填された樹脂からなる絶縁層により回路基板12の上面が被覆され、この絶縁層の上面に導電パターン16が形成される。回路基板12の具体的な大きさは、例えば、縦×横=60mm×80mm程度であり、厚みは1.0mm〜2.0mm程度である。
【0019】
導電パターン16は厚みが35μm〜70μm程度の銅等の金属から成り、所定の電気回路が形成されるように回路基板12の上面に形成される。導電パターン16は、回路素子が固着されるアイランド、金属細線が接続されるパッド、リード14が固着されるパッドおよび、これらを相互に接続する配線部等を備える。ここでは単層の導電パターン16が図示されているが、絶縁層を介して積層された多層の導電パターン16が回路基板12の上面に形成されても良い。
【0020】
導電パターン16に電気的に接続される回路素子としては、能動素子や受動素子を全般的に採用することができる。具体的には、トランジスタ、LSIチップ、ダイオード、チップ抵抗、チップコンデンサ、インダクタンスなどを回路素子として採用することができる。図1(A)を参照すると、回路基板12の上面には、制御素子23(LSI)、チップ素子24等が回路基板12の上面に固着されている。一方、MOSFET等であるパワー素子22は、開口部18の内部に配置されており、この事項は図1(B)を参照して後述する。
【0021】
封止樹脂30は、回路基板12およびその上面に固着された回路素子を封止するように形成されている。封止樹脂30は、フィラーが混入されたエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂から成り、トランスファーモールドにより形成される。
【0022】
リード14は、回路基板12の対向する側辺に沿って、導電パターン16から成るパッドに固着されており、混成集積回路装置10Aの入出力端子として機能している。図1(A)を参照すると、紙面上にて右側の回路基板12の側辺に沿って多数のリード14が設けられているが、対向する2つの側辺に沿ってリード14が固着されても良い。
【0023】
開口部18は回路基板12を部分的に開口した部位であり、パワー素子22を収納可能な大きさで四角形形状を呈している。開口部18の平面視での大きさは、例えば、縦×横=0.4cm以上1.2cm以下である。このような開口部18は、回路基板12に対してプレス加工または研削加工を施すことで形成される。
【0024】
実装基板28は、回路基板12の開口部18と重畳する領域で回路基板12の下方に配置された基板であり、回路基板12よりも熱伝導性に優れ且つ電気的には絶縁性の材料から成る。実装基板28の具体的な材料としては、例えばセラミック基板が採用される。実装基板28の平面視での大きさは、開口部18よりも若干大きい程度であり、縦×横=0.5cm以上1.5cm以下である。回路基板12の材料であるエポキシ樹脂の熱伝導率が0.2〔W・m−1・K−1〕であるのに対し、実装基板28の材料であるセラミックの熱伝導率は30〔W・m−1・K−1〕である。また、実装基板28の下面は封止樹脂30から外部に露出している。図1(A)を参照すると、回路基板12に2つの開口部18が設けられ、これらの開口部18にパワー素子22が配置されている。また、ここでは、開口部18の全域を下方から覆うように実装基板28が回路基板12の下面に当接しているが、開口部18を部分的に覆うように実装基板28が設けられても良い。
【0025】
実装基板28の上面には、銅などの金属箔を所定形状にパターニングした配線パターン32が形成されている。パワー素子22の下面に形成された電極は、半田等の導電性固着材を介して、配線パターン32と接続される。
【0026】
実装基板28の上面に実装されるパワー素子22は、例えば1アンペア以上の大電流が通過する半導体素子であり、具体的には、MOSFET、IGBT、バイポーラトランジスタまたはダイオードが採用される。これらの複数が実装基板28に実装されても良い。
【0027】
パワー素子22としてMOSFETが採用された場合は、パワー素子22の下面にドレイン電極が配置され、上面にソース電極およびゲート電極が設けられる。一方、パワー素子22としてIGBTが採用された場合は、下面にコレクタ電極が設けられ、上面にエミッタ電極およびゲート電極が配置される。また、パワー素子22としてバイポーラトランジスタが採用された場合は、下面にコレクタ電極が設けられ、上面にエミッタ電極およびベース電極が配置される。
【0028】
実装基板28の上面に配置されたパワー素子22は、金属細線20を経由して回路基板12の上面に形成された導電パターン16と接続される。具体的には、例えばパワー素子22がMOSFETの場合、パワー素子22の上面に設けられたソース電極およびゲート電極は、金属細線20を経由して回路基板12の上面に形成された導電パターン16から成るパッドに接続される。一方、パワー素子22の下面に設けられたドレイン電極は、先ず、半田を介してランド形状の配線パターン32に電気的に接続される。そして、この配線パターン32は、金属細線20を経由して、回路基板12の上面に形成されたパッド状の導電パターン16と接続される。
【0029】
図1(B)を参照して、本形態では、実装基板28の上面と回路基板12の下面との間にスペーサ26を配置している。スペーサ26は、厚みが0.2mm以上0.5mm以下程度であり、実装基板28と回路基板12とを離間させて両者の間に間隙を形成する働きを有する。実装基板28の上面と回路基板12の下面とが離間する距離は、スペーサ26の厚みと同等である。スペーサ26の材料としては、エポキシ樹脂等の樹脂材料、セラミック等が採用可能である。
【0030】
図1(C)を参照すると、細長い直方体形状を呈する2本のスペーサ26が、実装基板28の対向する2つの側辺に沿って周辺部に配置されている。この様なスペーサ26が、実装基板28と回路基板12との間に介在することにより、両者が均等に離間される。ここで、スペーサ26の形状は図示以外の形状でも良く、例えば、実装基板28の側辺に沿って離散的にスペーサ26が配置されても良い。
【0031】
スペーサ26で実装基板28と回路基板12とを離間させることにより、パワー素子22が他の素子に与える悪影響が低減される。具体的には、大電流のスイッチングを行うパワー素子22が動作時に発熱すると、発熱した熱は実装基板28に伝導するが、スペーサ26により離間されている回路基板12にはそれほど伝導しない。従って、過熱により誤動作しやすい制御素子23が回路基板12の上面に実装されていても、パワー素子22から発生した熱は回路基板12には伝導しないので、パワー素子22の発熱に起因して制御素子23が過熱されることによる誤動作が抑制される。
【0032】
更に、上記した本形態の混成集積回路装置10Aによれば、パワー素子22から発生した熱を効率的に外部に放出させることができる。具体的には、本形態では、パワー素子22が配置される箇所を開口して開口部18を設け、この開口部を塞ぐように配置された実装基板28の上面にパワー素子22を固着している。これにより、パワー素子22が動作時に発生する熱は、配線パターン32および実装基板28を経由して良好に外部に放出される。従来例では、図8を参照すると、放熱の経路に基板101の上面を被覆する絶縁層102や、基板101の下面を覆う封止樹脂108が存在しており、これらの熱伝導性が悪いことによって放熱性が阻害されていたが、本形態ではこの様な樹脂材料(有機材料)が放熱の経路に存在していない。即ち、パワー素子22の放熱の経路に存在するのは、金属からなる配線パターン32およびセラミックから成る実装基板28の無機材料のみであり、これらの熱伝導率は上記したように非常に良い。更に、パワー素子22の固着に用いられる半田も放熱の経路となるが、半田は錫等から成る金属材料であるので、樹脂材料と比較すると熱伝導性に優れている。更にまた、実装基板28は回路基板12よりも薄く形成されているので、その分熱抵抗が小さくなる。以上の理由により、パワー素子22が動作時に発生した熱は直ちに外部に放出されるので、パワー素子22が過熱されることによる破壊や特性劣化が抑制されている。
【0033】
一方、回路基板12の上面には、発熱量が多いパワー素子22は載置されず、パワー素子22のスイッチングを制御する制御素子23やチップ素子24等の発熱量が比較的小さい素子のみが配置される。従って、放熱性に劣るが安価なガラスエポキシ基板を回路基板12として採用でき、コストダウンが図れる。更に、ガラスエポキシ基板は加工性に優れた材料であるので、容易に開口部18を形成できる。
【0034】
更にまた、混成集積回路装置10Aでは、背景技術で述べた絶縁破壊の問題が回避される。具体的には、本形態では、実装基板28自体が絶縁材料であるセラミックから成るので、実装基板28と配線パターン32との間に、絶縁破壊を起こしやすい樹脂からなる絶縁層を設ける必要が無い。また、配線パターン32に、1000V〜2000V程度の電圧を印加しても、セラミックから成る実装基板28は絶縁破壊を起こし難い。この様な理由により、装置全体の耐圧性が向上されている。
【0035】
図2を参照して、他の形態の混成集積回路装置の構成を説明する。図2(A)−図2(C)に示す混成集積回路装置10B−10Dの構成は、上述した装置と基本的には同様であり、相違点は、実装基板28にパワー素子22が実装される構造にある。以下では相違点を中心に説明する。
【0036】
図2(A)に示す混成集積回路装置10Bでは、実装基板28の裏面が封止樹脂30により被覆される。このようにすることで、パワー素子22から発生した熱の経路に封止樹脂30が存在することに成るので、放熱性が若干低下する。しかしながら、実装基板28の下面も被覆されるように封止樹脂30を形成することにより、実装基板28と封止樹脂30との界面が外部に露出しないので、その界面を経由して水分が内部に侵入することが抑制され、耐湿性が向上する。また、下記する他の形態に関しても、このように実装基板28も被覆されるように樹脂封止を行っても良い。
【0037】
図2(B)に示す混成集積回路装置10Cでは、パワー素子22のみが実装される実装基板28として、金属からなる基板を採用している。このように、セラミックよりも熱伝導性に優れた金属を、実装基板28の材料として採用することにより、パワー素子22から放出された熱をより効率的に外部に放出することができる。また、この場合、パワー素子22の下面電極が半田を介して実装基板28と接続され、この実装基板28に接続する金属細線20を経由して、回路基板12上の導電パターン16とパワー素子22とが電気的に接続されても良い。即ち、金属からなる実装基板28の電位は、パワー素子22の裏面電極(例えばコレクタ電極)と同電位となる。
【0038】
図2(C)に示す混成集積回路装置10Dでは、セラミックから成る実装基板28の下面に、アルミニウムまたは銅等の金属材料から成る金属基板34が固着されている。そして、金属基板34の下面は封止樹脂30から外部に露出している。従って、パワー素子22から発生した熱は、配線パターン32、実装基板28および金属基板34をこの順番で経由した後に外部に放出される。
【0039】
ここで、金属基板34の平面視での大きさは、パワー素子22よりも大きい程度が好適であり、厚みは実装基板28と同程度で良い。このようにすることで、パワー素子22から発せられて実装基板28を伝導した熱が、金属基板34で拡散される。即ち、金属基板34がヒートスプレッダーとして作用し、パワー素子22よりも広い面積で熱が外部に放出され、放熱特性が向上する。
【0040】
図3を参照して、更なる混成集積回路装置の他の形態を説明する。
【0041】
図3(A)に示す混成集積回路装置10Eでは、セラミックから成る実装基板28の上面に金属基板34を載置し、この金属基板34の上面にパワー素子22を実装している。従って、パワー素子22から発生した熱は、金属基板34、配線パターン32および実装基板28を経由して外部に放出される。図2(B)の場合と同様に、パワー素子22から発生した熱が、金属基板34にて周囲に拡散されて広い面積が伝導するので、放熱性が良好となる。
【0042】
図3(B)に示す混成集積回路装置10Fでは、開口部18の周辺部で回路基板12を厚み方向に窪ませて凹状部36を形成し、実装基板28を凹状部36に収納している。また、スペーサ26は、凹状部36の内部で、実装基板28と回路基板12とを離間させている。ここで、凹状部36の深さは、厚み方向で、スペーサ26のみが収納される程度でも良いし、スペーサ26と実装基板28の一部が収納される程度でも良い。このようにすることで、実装基板28を設けることによる装置全体の厚みの増加が抑制される。この凹状部36を設ける事項は、上記した他の形態に適用可能である。
【0043】
図4を参照して、更なる他の形態の混成集積回路装置10Gの構成を説明する。図4(A)は混成集積回路装置10Gを示す断面図であり、図4(B)は開口部18を拡大して示す平面図であり、図4(C)は図4(B)のC−C’線における断面図である。
【0044】
上記した混成集積回路装置10A等では、回路基板12と実装基板28との間にスペーサを配置することで両者を離間したが、この図に示す混成集積回路装置10Gでは、開口部18にて平面視で実装基板28を回路基板12から離間させている。
【0045】
図4(A)を参照して、ここでは、実装基板28の上面の周辺部は直に回路基板12の下面に固着されており、両者の間に上記したスペーサは配置されていない。また、両者の間にエポキシ樹脂等の接着材が塗布されるとしても、その厚みは極めて薄い。
【0046】
図4(B)および図4(C)を参照して、平面視で実装基板28と開口部18とを比較すると、紙面上縦方向に対しては実装基板28は開口部18よりも短く、紙面上横方向に対しては実装基板28は開口部18よりも長い。従って、開口部18の紙面上上下端部は、開口部18が実装基板28により覆われない領域(離間領域19)となる。一方、紙面上横方向に対しては、実装基板28の左右両端部が、開口部18周辺部の回路基板12と重畳し、この重畳する部分にて両者が固着される。
【0047】
このようにすることで、離間領域19を介して実装基板28と回路基板12とが離間されるので、実装基板28の全ての周辺部が回路基板12と接触する場合と比較すると、実装基板28と回路基板12とを熱的に分離させることが可能となる。
【0048】
更に、後述するように、製造方法の樹脂封止の工程にて、回路基板12の上方に供給された封止樹脂を、この離間領域19を経由して回路基板12の下方に流動させることが可能となる。
【0049】
図5を参照して、更なる他の形態の混成集積回路装置10Hの構成を説明する。ここでは、2つの開口部18A、18Bが設けられ、これらの開口部に配置された素子同士が、回路基板12の下面に設けられた導電パターン17Aを経由して接続されている。
【0050】
具体的には、紙面上にて左側に設けた開口部18Aを塞ぐように実装基板28Aが配置され、実装基板28Aにパワー素子22Aが実装されている。実装基板28Aの上面にはパワー素子22Aが接続される配線パターン32Aが配置され、回路基板12の下面に設けた導電パターン17と、半田等の導電性固着材を介して固着されている。ここで、実装基板28Aの上面は、回路基板12に当接しても良いし離間しても良い。
【0051】
また、紙面上にて右側に設けた開口部18Bを塞ぐように実装基板28Bが配置され、実装基板28Bの上面にパワー素子22Bが配置されている。そして、実装基板28Bの上面に設けた配線パターン32Bにパワー素子22Bが接続され、導電パターン17と半田を介して固着されている。
【0052】
ここでは、実装基板28Aに実装されたパワー素子22Aと、実装基板28Bに実装されたパワー素子22Bとが、回路基板12の裏面に設けた導電パターン17Aを経由して接続されている。例えば、これらの素子がIGBTであれば、パワー素子22A、22Bのコレクタ電極どうしが、導電パターン17Aを経由して接続される。これにより、両者を接続するパターンを回路基板12の上面に設ける必要がないので、回路基板12を小型なものとなる。
【0053】
図6を参照して、上記した構成の混成集積回路装置の熱抵抗を測定した実験結果を説明する。ここでは、上記した混成集積回路装置10A、10Dおよび10Eを用意し、従来例のものと共に熱抵抗の経時変化を測定した。この図に示すグラフでは、縦軸は熱抵抗を示し、横軸は経過時間を対数で示している。ここで、熱抵抗が小さいことは、放熱性に優れていることを示している。また、熱抵抗の値が時間と共に変化する領域での熱抵抗(グラフでは10秒までの領域)は過渡熱抵抗と称され、それ以降で経時的に熱抵抗が変化しない熱抵抗は(グラフでは10秒以降の領域)は定常熱抵抗と称される。
【0054】
図1(A)に示す混成集積回路装置10Aは、従来例と比較すると、10秒までの過渡熱抵抗では劣るが、それ以降の定常熱抵抗では良好な値を示している。過渡熱容量が従来例よりも劣る原因は、セラミックから成る実装基板28が、従来例のアルミから成る基板101よりも熱容量が小さいからである。また、混成集積回路装置10Aが定常熱抵抗に優れる原因は、上記したように、熱伝導率の低い樹脂材料が熱の経路に存在しないからである。
【0055】
図2(C)に示す混成集積回路装置10Dの実験結果を従来例と比較すると、過渡熱抵抗は従来例よりも劣るが、定常熱抵抗では従来例よりも優れている。この理由は、混成集積回路装置10Aの場合と同様である。また、この結果を混成集積回路装置10Aと比較すると、過渡熱抵抗値ではこのケースの方が優れている。この原因は、実装基板28の下面に配置された金属基板34がヒートシンクとして機能し、パワー素子22の急激な温度上昇が抑制されたからである。
【0056】
図3(A)に示す混成集積回路装置10Eの実験結果を従来例と比較すると、過渡熱抵抗および定常熱抵抗の両方に於いて、混成集積回路装置10Eが従来例よりも優れている。過渡熱抵抗が優れる理由は、動作の初期段階に於いてはパワー素子22から発生した熱が金属基板34に吸収されて急激な温度上昇が抑制されるからである。また、定常熱抵抗が優れる理由は、パワー素子22から発生した熱が金属基板34によって四方に広げられた後に、広い面積で実装基板28から外部に放出されるからである。
【0057】
以上の実験結果から、本形態の混成集積回路装置は、従来例のものよりも放熱性に優れていると判断される。
【0058】
図7を参照して、次に上記した構成の混成集積回路装置10Aの製造方法を説明する。図7(A)は本工程を示す断面図であり、図7(B)は開口部18を拡大して示す断面図であり、図7(C)は開口部18を上方から見た平面図である。更に図7(D)は、図4に示した混成集積回路装置10Gを樹脂封止する工程を示す断面図である。
【0059】
図7(A)を参照して、混成集積回路装置10Aの製造方法では、回路基板12の上面に形成された導電パターンに制御素子等の回路素子が接続され、回路基板12に設けられた開口部18を塞ぐように、回路基板12の下方に実装基板28が配置されている。実装基板28の上面にはパワー素子22が配置されている。そして、実装基板28の上面と回路基板12の下面との間にはスペーサ26が配置されており、これにより両者の間に間隙が形成されている。ここで、回路基板12、実装基板28及び、これらの基板に実装される回路素子の詳細は図1を参照して説明した通りである。また、回路基板12の周辺部には図1に示したリードが固着されており、このリードが金型38で挟持されることにより、金型38の内部に於ける回路基板12の位置が固定される。
【0060】
上記構成を備えた回路基板12は、金型38の内部に収納される。金型38は、上金型40と下金型42とから成り、両者を当接されることで形成されるキャビティ46の内部に回路基板12が収納されている。ここでは、実装基板28の下面を外部に露出させるので、実装基板28の下面は、下金型42の内壁に当接している。一方、図2(A)に示すように、実装基板28の下面を封止樹脂30で被覆する場合は、実装基板28の下面を下金型42の内壁から離間させる。
【0061】
回路基板12をキャビティ46に収納した後は、ゲート44から液状または半固形状の封止樹脂をキャビティ46に注入する。注入される樹脂としては、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が採用される。注入された封止樹脂により、回路基板12、回路基板12の上面に固着された回路素子、実装基板28、実装基板28の上面に固着されたパワー素子が樹脂封止される。また、開口部18にも封止樹脂が充填され、更に実装基板28の下面は外部に露出する。その後、注入された封止樹脂が加熱硬化した後に除熱し、上金型40と下金型42とを離型した後に、樹脂封止された回路基板12を金型38から取り出す。
【0062】
図7(B)を参照して、本形態では、実装基板28と回路基板12との間にスペーサ26を介在させることにより、両者の間に間隙を確保している。これにより、樹脂封止の工程にて開口部18に流入した液状の封止樹脂30は、スペーサ26により形成された間隙を経由して、回路基板12の下方に回りこむ。これにより、開口部18の内部および回路基板12の下方に封止樹脂30が充填され、未充填領域であるボイドの出現が抑制される。
【0063】
図7(C)を参照して、本形態では、実装基板28の対向する側辺に沿って細長いスペーサ26を配置している。従って、本工程にて開口部18に流入された封止樹脂30は、スペーサ26に沿って横方向外側に向かって流動する。この図では、封止樹脂30が流動する方向を矢印にて示している。
【0064】
更に本形態では、図7(A)を参照して、ゲート44の位置は、回路基板12の上面よりも上方に設定されている。一例として、ゲート44は回路基板12の上面から1mm以上の上方に配置されている。これにより、ゲート44からキャビティ46に注入された封止樹脂の一部は、開口部18を経由して良好に回路基板12の下方に行き渡る。
【0065】
また、図7(D)を参照して、図4に示す混成集積回路装置10Gの場合は、実装基板28と回路基板12との間に離間領域19が存在するので、回路基板12の上方に供給された封止樹脂30は、この離間領域19を経由して回路基板12の下方に良好に流動する。
【0066】
以上が、本形態に係る混成集積回路装置の製造方法の説明である。
【符号の説明】
【0067】
10A,10B,10C,10D,10E,10F,10G,10H 混成集積回路装置
12 回路基板
14 リード
16 導電パターン
17,17A 導電パターン
18,18A,18B 開口部
19 離間領域
20 金属細線
22,22A,22B パワー素子
23 制御素子
24 チップ素子
26 スペーサ
28,28A,28B 実装基板
30 封止樹脂
32,32A,32B 配線パターン
34 金属基板
36 凹状部
38 金型
40 上金型
42 下金型
44 ゲート
46 キャビティ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に導電パターンが配置された回路基板と、
前記回路基板を部分的に開口した開口部と、
前記開口部と重畳するように前記回路基板の下方に配置された実装基板と、
前記実装基板の上面に配置されて前記導電パターンと電気的に接続された半導体素子と、を備え、
前記実装基板の一部を前記回路基板から離間させることを特徴とする回路装置。
【請求項2】
前記回路基板の下面と前記実装基板の上面との間にスペーサを配置することにより、前記実装基板と前記回路基板とを離間させることを特徴とする請求項1に記載の回路装置。
【請求項3】
前記スペーサは、前記開口部の側辺に沿って設けられることを特徴とする請求項2に記載の回路装置。
【請求項4】
前記スペーサは、絶縁材料から成ることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の回路装置。
【請求項5】
前記実装基板の幅を、前記開口部の幅よりも狭くすることにより、前記実装基板を前記回路基板から離間させることを特徴とする請求項1に記載の回路装置。
【請求項6】
前記実装基板は、前記回路基板よりも熱伝導性に優れる材料から成ることを特徴とする請求項1から請求項5の何れかに記載の回路装置。
【請求項7】
前記回路基板および前記半導体素子を被覆する封止樹脂を更に具備し、
前記実装基板の下面は前記封止樹脂から外部に露出することを特徴とする請求項1から請求項6の何れかに記載の回路装置。
【請求項8】
前記実装基板の上面に配置された金属基板の上面に前記半導体素子が固着されることを特徴とする請求項1から請求項7の何れかに記載の回路装置。
【請求項9】
前記開口部を囲む部分の前記回路基板の下面を窪ませて凹状部を形成し、
前記スペーサは前記凹状部に備えられることを特徴とする請求項1から請求項8の何れかに記載の回路装置。
【請求項10】
上面に導電パターンが配置されると共に開口部が設けられた回路基板を用意し、半導体素子が上面に実装された実装基板を、前記開口部と重畳する位置で前記回路基板の下方に配置する工程と、
金型のキャビティに前記回路基板および前記実装基板を収納し、前記回路基板の上面、側面および下面の周辺部を封止樹脂で被覆する工程と、を備え、
前記実装基板を前記回路基板から離間させることで、前記実装基板と前記回路基板との間に間隙を形成し、前記間隙を経由して前記封止樹脂を流動させることを特徴とする回路装置の製造方法。
【請求項11】
前記回路基板の下面と前記実装基板の上面との間にスペーサを配置することにより、前記実装基板と前記回路基板との間に間隙を形成することを特徴とする請求項10に記載の回路装置の製造方法。
【請求項12】
前記スペーサは前記開口部の対向する2つの側辺に沿って設けられ、
前記封止樹脂で被覆する工程では、前記スペーサに沿って前記封止樹脂を流動させることを特徴とする請求項11に記載の回路装置の製造方法。
【請求項13】
前記実装基板の幅を前記開口部の幅よりも狭くすることにより、前記実装基板と前記回路基板との間に前記間隙を形成することを特徴とする請求項10に記載の回路装置の製造方法。
【請求項14】
前記封止樹脂で被覆する工程では、前記回路基板よりも上方に配置された前記金型のゲートを経由して前記封止樹脂を前記キャビティに注入し、前記開口部に流入した前記封止樹脂を、前記間隙を経由して前記回路基板の下方に流動させることを特徴とする請求項10から請求項13の何れかに記載の回路基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−178404(P2012−178404A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39672(P2011−39672)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(300057230)セミコンダクター・コンポーネンツ・インダストリーズ・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (119)
【Fターム(参考)】