説明

回転ドラム装置

【課題】シートコイル16を固定ドラム11に保持するための部品点数を削減し、かつ組立工程も削減することができる回転ドラム装置を提供することを目的とする。
【解決手段】固定ドラム11の内部に円周状溝部11aを設け、またシートコイル16の外周部に突部16aを設けて、シートコイル16を固定ドラム11に挿入保持する際に、突部16aを円周状溝部11aに挿入させてシートコイル16を固定ドラム11に保持させることで、シートコイル16を固定ドラム11に保持するための部品点数を削減し、かつ組立工程も削減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビデオテープレコーダー等に用いることができる回転ドラム装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の回転ドラム装置は、モータを構成するシートコイルが固定ドラムに接着剤等で固定される構成を有している。(例えば特許文献1参照)。
【0003】
以下に従来の回転ドラム装置について説明する。
【0004】
図5は従来のビデオテープレコーダーに用いられる回転ドラム装置の断面図を、図6,図7は図5における要部拡大断面図で組立過程を示すものである。図5〜図7を説明すると、1は磁気テープ(図示せず)を案内する固定ドラム、2は固定ドラム1に対し同軸的に回転し、後述する少なくとも一対の磁気ヘッド3を有する回転ドラム、3は磁気ヘッド、4は回転ドラム2にビス止め固定されたバックプレート、5はバックプレート4に固着したマグネット、6はマグネット5の下面と微小間隔で対向するように位置したシートコイル、7はシートコイル6を保持し、熱溶着等により固定ドラム1に設けられた円周状溝部1aに溶着されたコイルホルダー、8はシートコイル6の下面と微小間隔で対向するように位置し、マグネット5の磁力により吸引されたサブロータである。
【0005】
以上のように構成された従来の固定ドラム装置について、以下にその動作について説明する。
【0006】
バックプレート4,マグネット5,シートコイル6,サブロータ8から成るモータ部により磁気ヘッド3を含む回転ドラム2が回転することによって、磁気テープ(図示せず)に映像・音声等の情報が記録される。また、記録済みの磁気テープ(図示せず)であれば、上述した逆の経路で記録情報を再生することができる。
【特許文献1】特開2002−222508号公報(第4頁、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら上記の従来の構成では、シートコイル6を固定ドラム1に保持するために、コイルホルダー7が必要であり、かつコイルホルダー7を固定ドラム1の円周状溝部1aに熱溶着する工程(図6、図7)が必要であり、コストアップになるという問題点を有していた。
【0008】
本発明は上記従来の問題点を解決するもので、少ない部品点数でシートコイルを固定ドラムに保持し、かつ組立工程を削減することができる回転ドラム装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために本発明の回転ドラム装置は、磁気テープを案内する固定ドラムと、前記固定ドラムに対し同軸的に回転し少なくとも一対の磁気ヘッドを有する回転ドラムと、前記回転ドラムを回転駆動させるモータとから成り、前記モータは前記回転ドラムに固着したバックプレートと、前記バックプレートに固着したマグネットと、複数のコイルパターンが形成されかつその外周部には複数の突部を設け前記複数の突部が前記固定ドラムに設けられた円周状の溝部に挿入保持されたシートコイルと、前記マグネットに吸引されたサブロータから成るという構成を有している。
【0010】
この構成によって、シートコイルを固定ドラムに保持するための部品点数を削減し、かつ組立工程も削減することができる回転ドラム装置が得られる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように本発明は、シートコイルを固定ドラムに保持するための部品点数を削減し、かつ組立工程も削減することができるという優れた効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の請求項1に記載の発明は、磁気テープを案内する固定ドラムと、前記固定ドラムに対し同軸的に回転し少なくとも一対の磁気ヘッドを有する回転ドラムと、前記回転ドラムを回転駆動させるモータとから成り、前記モータは前記回転ドラムに固着したバックプレートと、前記バックプレートに固着したマグネットと、複数のコイルパターンが形成されかつその外周部には複数の突部を設け前記複数の突部が前記固定ドラムに設けられた円周状の溝部に挿入保持されたシートコイルと、前記マグネットに吸引されたサブロータから成るという構成としたものであり、シートコイルを固定ドラムに保持するための部品点数を削減し、かつ組立工程も削減することができるという作用を有する。
【0013】
本発明の請求項2に記載の発明は、前記シートコイルは、中心部に積層間基材が設けられ、前記積層間基材の両面に絶縁ワニスが有り、前記各々の絶縁ワニスの上には、導体とオーバーコート層が設けられているという構成としたものであり、シートコイルを固定ドラムに保持するための部品点数を削減し、かつ組立工程も削減することができるという作用を有する。
【0014】
本発明の請求項3に記載の発明は、前記シートコイルの突部最外周から、コイルパターンを形成する導体部分の最外周までの寸法をA、前記固定ドラムの円周状の溝部に保持された前記シートコイルの固定ドラム受け面寸法をBとした時、A>Bの関係が成り立つこととしたものであり、シートコイルを固定ドラムに保持するための部品点数を削減し、かつ組立工程も削減することができるという作用を有する。
【0015】
本発明の請求項4に記載の発明は、前記シートコイルの外周部には、積層間基材と絶縁ワニスとオーバーコートの層で構成された複数の突部を設けたという構成としたものであり、シートコイルを固定ドラムに保持するための部品点数を削減し、かつ組立工程も削減することができ、さらにシートコイルを容易に固定ドラムに挿入保持させることができるという作用を有する。
【0016】
本発明の請求項5に記載の発明は、前記シートコイルの外周部には、積層間基材と絶縁ワニスと導体の層で構成された複数の突部を設けたという構成としたものであり、シートコイルを固定ドラムに保持するための部品点数を削減し、かつ組立工程も削減することができ、さらにシートコイルを容易に固定ドラムに挿入保持させることができるという作用を有する。
【0017】
本発明の請求項6に記載の発明は、前記シートコイルの外周部には、積層間基材と絶縁ワニスで構成された複数の突部を設けたという構成としたものであり、シートコイルを固定ドラムに保持するための部品点数を削減し、かつ組立工程も削減することができ、さらにシートコイルを容易に固定ドラムに挿入保持させることができるという作用を有する。
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜4を用いて説明する。
【0019】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における回転ドラム装置の断面図を、図2は図1における要部拡大断面図、図3、図4は図1の構成部品の平面図を示すものである。
【0020】
図1〜図4を説明すると、11は磁気テープ(図示せず)を案内する固定ドラムで、略円筒形状を成しており、その外周側面には磁気テープを摺接させて案内するリード(図示せず)を備えている。また、固定ドラム11は金属製が一般的であり、例えばアルミダイキャストより構成されているが、材料についてはこれに限定されるものではない。さらに、固定ドラム11の略中央には支軸30が固定されている。
【0021】
11aは固定ドラム11の側部内壁に形成された円周状溝部で、側部内壁に円周方向に形成されている。後述するが、円周状溝部11aは、シートコイル16を保持する。円周状溝部11aの高さ方向の位置は、シートコイル16を保持した際、シートコイル16をマグネット15とサブロータ17との間に位置させるような位置である。11bは固定ドラム11における円周状溝部11a近傍において内周方向へ突出して形成された設置部で、本実施の形態では固定ドラム11と一体成形されている。そしてその上部にはシートコイル16を設置可能なように略平坦な設置面を有している。その接地面と円周状溝部11aとが連設されている。
【0022】
12は固定ドラム11に対し同軸的に回転自在に配置しかつ後述する少なくとも一対の磁気ヘッド13を有する回転ドラムで、略円筒形状を成しており、その外周側面において磁気テープと摺動する。また、回転ドラム12は金属製が一般的であり、例えばアルミダイキャストより構成されているが、材料についてはこれに限定されるものではない。また、回転ドラムの半径方向略中央ににおいて、固定ドラム11に固定された支軸30に対して、軸受け31を介して回転自在に保持されている。本実施の形態では、軸受け31はボールベアリングとしたがこれに限定されるものではない。
【0023】
13は回転ドラム12に設けられた開口部(図示せず)内に配された磁気ヘッドで、磁気テープに記録された信号を読み出したり、磁気テープに対して信号を記録したりすることができる。
【0024】
14は回転ドラム12にビス止め固定されたバックプレートで、マグネット15(後述する)を保持している。
【0025】
15はバックプレート14に固着したマグネットである。
【0026】
16はマグネット15の下面と微小間隔で対向するように位置し、外周部に複数の突部16aを設け、固定ドラム11に設けられた円周状溝部11aに挿入保持されたシートコイルで、薄肉のシート状のコイルユニットである。本実施の形態のシートコイル16は中央に開口を有した略ドーナツ形状としているが、これに限定されるものではない。シートコイル16には、複数個のコイル16gを有している。
【0027】
16aはシートコイル16の外周部に複数個設けられた突起で、シートコイル16の半径方向外方に向かって放射状に配している。本実施の形態では、シートコイル16の外周部におけるコイル16g間に相当する位置に設けたが、この位置に限定されるものではない。
【0028】
17はシートコイル16の下面と微小間隔で対向するように位置し、マグネット15の磁力により吸引されるサブロータであり、回転ドラム11に固定されている。
【0029】
以上のように構成された本実施の形態の回転ドラム装置について、その動作を説明する。
【0030】
バックプレート14,マグネット15,シートコイル16,サブロータ17から成るモータ部により、磁気ヘッド13を含む回転ドラム12を回転させ、また別途設けられたテープローディング手段(図示せず)によって磁気テープを回転ドラムに巻回させ、磁気ヘッド13に通電することで、磁気テープ(図示せず)に映像・音声等の情報が記録される。また、記録済みの磁気テープ(図示せず)であれば、上述した逆の経路で記録情報を再生することができることは従来例と同様である。
【0031】
次に、シートコイル16の保持方法について説明する。
【0032】
シートコイル16を固定ドラム11に挿入保持するために、図3に示すようにシートコイル16の外周部に複数の突部16aを設けた。シートコイル16を固定ドラム11に保持させる際は、シートコイル16の外周部に設けられた突部16aが、固定ドラム11の内周面に設けられた円周状溝部11aに挿入させる。この時、シートコイル16の外周近傍部位は、固定ドラム11の設置部11bの上面に設置され、これによりシートコイル16の下方向の位置決めを行うことができる。また、シートコイル16の上方向及び横方向の位置決めは、シートコイル16の突部16aを円周状溝部11a内に位置させることで、突部16aが円周状溝部11aの内壁に当接可能な構成となり、これにより位置決めを行っている。なお、シートコイル16を固定ドラム11に挿入保持させる際は、シートコイル16を固定ドラム11内に挿入し、組立作業者が治具を用いてシートコイル16を軸方向へ押圧することで、突起16aを円周状溝部11aに係合させて、保持させている。本実施の形態では、治具を用いて組立作業者が組み立てているが、このような組立方法に限定されるものではない。
【0033】
このようなシートコイル16を固定ドラム11に挿入保持した際、複数の突部16aが固定ドラム11に設けた円周状溝部11aに挿入保持されるため、シートコイル16を保持するための余分な部品(上記背景技術におけるコイルホルダー7など)が必要なく、また従来のような熱溶着等の組立工程も必要ない。
【0034】
また、シートコイル16は、図2に示すように、中心部に積層間基材16eが設けられ、積層間基材16eの両面にそれぞれ絶縁ワニス16fが有り、前記各々の絶縁ワニス16fの上には、導体16bとオーバーコート層16dが設けられている構造となっているが、図2に示すようにシートコイル16の突部16a最外周から、コイルパターンを形成する導体部分16bの最外周までの寸法をA、固定ドラム11の円周状溝部11aに保持されたシートコイル16の固定ドラム受け面寸法をBとした時、
A>B
の関係が成り立っているため、固定ドラム11の円周状溝部11a切削時の残留バリ又は、加工時の金属切子等の金属異物によるオーバーコート層16dの破壊があっても、コイルパターンを形成する導体部分16bのグランド落ちはない。
【0035】
また、図4に示すシートコイル16に設けた複数の突部16aの近傍部分16cには導体を設けず、弾性を持たせていることから、突部16aを容易に固定ドラム11の円周状溝部11aに挿入保持させることができる。本実施例では、突部16aの近傍部分16cに導体を設けていないが、弾性を持たせる手段として、シートコイル16のオーバーコート層を設けない構成、又は導体及びオーバーコート層16dの両方を設けない構成でも良い。
【0036】
さらに本実施例では、突部に弾性を持たせる構成が容易に出来ることから、突部の位置をコイル間に設けているが、突部の位置をコイルセンターに設けコイルの振動を抑制する様にしても良く、突部の位置及び幅は任意で良い。
【0037】
以上のように本実施の形態によれば、固定ドラム11の内部に円周状溝部11aを設け、またシートコイル16の外周部に突部16aを設けて、シートコイル16を固定ドラム11に挿入保持する際に、突部16aを円周状溝部11aに挿入させてシートコイル16を固定ドラム11に保持させることで、シートコイル16を固定ドラム11に保持するための部品点数を削減し、かつ組立工程も削減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明にかかる回転ドラム装置は、ビデオテープレコーダー等として有用であり、安価で容易にシートコイルを固定ドラムに挿入保持させることに適している。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施の形態1における回転ドラム装置の断面図
【図2】同実施の形態における要部拡大断面図
【図3】同実施の形態における図1の構成部品の平面図
【図4】同実施の形態における図1の構成部品の平面図
【図5】従来の回転ドラム装置の断面図
【図6】図5の要部拡大断面図
【図7】図5の要部拡大断面図
【符号の説明】
【0040】
11 固定ドラム
11a 円周状溝部
12 回転ドラム
13 磁気ヘッド
14 バックプレート
15 マグネット
16 シートコイル
16a 突部
16b コイルパターンを形成する導体部分
16c シートコイル16の突部16aの近傍部分
16d オーバーコート層
16e 積相関基材
16f 絶縁ワニス
17 サブロータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気テープを案内する固定ドラムと、前記固定ドラムに対し同軸的に回転し少なくとも一対の磁気ヘッドを有する回転ドラムと、前記回転ドラムを回転駆動させるモータとから成り、前記モータは前記回転ドラムに固着したバックプレートと、前記バックプレートに固着したマグネットと、複数のコイルパターンが形成されかつその外周部には複数の突部を設け前記複数の突部が前記固定ドラムに設けられた円周状の溝部に挿入保持されたシートコイルと、前記マグネットに吸引されたサブロータから成ることを特徴とする回転ドラム装置。
【請求項2】
シートコイルは、中心部に積層間基材が設けられ、前記積層間基材の両面に絶縁ワニスが有り、前記各々の絶縁ワニス部分の上には導体、そしてオーバーコート層が設けられていることを特徴とする請求項1記載の回転ドラム装置。
【請求項3】
シートコイルの突部最外周から、コイルパターンを形成する導体部分の最外周までの寸法をA、前記固定ドラムの円周状の溝部に保持された前記シートコイルの固定ドラム受け面寸法をBとした時、A>Bの関係が成り立つことを特徴とする請求項1,2記載の回転ドラム装置。
【請求項4】
シートコイルの外周部には、積層間基材と絶縁ワニスとオーバーコートの層で構成された複数の突部を設けたことを特徴とする請求項1,2記載の回転ドラム装置。
【請求項5】
シートコイルの外周部には、積層間基材と絶縁ワニスと銅箔の層で構成された複数の突部を設けたことを特徴とする請求項1,2記載の回転ドラム装置。
【請求項6】
シートコイルの外周部には、積層間基材と絶縁ワニスで構成された複数の突部を設けたことを特徴とする請求項1,2記載の回転ドラム装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−286057(P2006−286057A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−102164(P2005−102164)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】