説明

回転ブラシ、回転ブラシの製造方法、および搬送洗浄装置

【課題】人参、馬鈴薯、甘藷、大根等の野菜を洗浄しながら搬送するための搬送洗浄装置を実現する。
【解決手段】搬送洗浄装置100は、複数の回転ブラシ3a、3b等、飛びはね防止用回転ブラシ4からなる被搬送物の搬送路を形成し、複数の回転ブラシ3a、3b等を同一方向に同一角速度で回転させることで、被搬送物を洗浄しながら確実に、かつ、スピーディーに搬送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人参、馬鈴薯、甘藷、大根、長芋等の野菜を搬送しながら洗浄するための回転ブラシ、回転ブラシの製造方法、およびその回転ブラシを用いた搬送洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
見た目がきれいな野菜は、一般消費者の購買意欲を喚起するので、見た目がきれいな野菜をスーパー等で陳列し、販売したいという需要は高い。そのような野菜を市場に流通させるために、収穫した野菜を洗浄、艶だし、選別、分別、包装等の処理を施し、出荷する必要がある。そこで、収穫した野菜を洗浄しながら搬送し、選別、分別、包装等の各工程を実行することが頻繁に行われている。このように、収穫した野菜を洗浄しながら搬送することができる搬送洗浄装置を導入することで、作業効率を上げることができる。そのため、収穫した野菜を出荷するために洗浄、艶だし、選別、分別、包装等をする現場では、搬送洗浄装置が導入されることが多い(例えば、特許文献1〜4)。
【特許文献1】特公昭59−37068号公報
【特許文献2】特3388441号公報
【特許文献3】特3388436号公報
【特許文献4】特3343683号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の特許文献1に記載された搬送洗浄装置では、被搬送物が小さい野菜(例えば、馬鈴薯、玉葱、胡瓜等)であれば、搬送方向前方に傾斜させたブラシ毛を有する回転ブラシを回転させることで、洗浄しながら搬送するようにしている。しかし、この種の搬送洗浄装置では、被搬送物に対して1つの搬送路を確保しなければ、被搬送物を十分に洗浄しながら搬送することはできない。
【0004】
また、大根等の細長くて大きな野菜を搬送洗浄する装置、あるいは人参、馬鈴薯のような小さな野菜を複数個同時に搬送洗浄する装置では、回転ブラシの回転のみで、洗浄しながら安定して搬送することは困難である。そこで、従来の特許文献2〜4に記載された搬送洗浄装置では、回転ブラシを設置しているフレーム本体を傾斜させるか、または搬送用コンベア等を別途設ける用にしている。
【0005】
本発明の課題は、フレームを傾斜させることもなく、また搬送用コンベア等を別途設けることもなく、大根等の大きな野菜を、あるいは人参、馬鈴薯、甘藷等の小さな野菜を複数個同時に、回転ブラシを回転させることのみにより、洗浄しながら、安定して搬送することができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明に係る回転ブラシは、円形の表面を有する回転体と、複数のブラシ毛束と、を備えている。複数のブラシ毛束は、回転体の表面に、回転体の軸に対して鋭角である第1の角度を有して植え込まれており、それぞれが複数のブラシ毛からなる。そして、複数のブラシ毛束のそれぞれは、先端部分が形成する平面が回転体の表面と平行であり、かつ、ブラシ毛束を回転体の軸方向に直交する断面に投影した場合、その投影面において、ブラシ毛束は回転体の回転中心に対して第2の角度を有して埋め込まれている。
【0007】
これにより、被搬送物と回転ブラシとの接触面が大きくなるので、被搬送物を掻き上げる力と、被搬送物を搬送方向に搬送する力が大きくなり、被搬送物の洗浄および搬送を、同時に効率良く行うことができる。
【0008】
第2の発明に係る回転ブラシの製造方法は、円形表面を有する半径rの回転体の表面に、それぞれ複数のブラシ毛からなる複数のブラシ毛束を植え込んで、前記複数のブラシ毛束の先端を切断する方法であって、植え込み工程と、切断工程とを有する回転ブラシの製造方法である。植え込み工程では、回転体の軸方向に直交する断面において、回転中心から所定の第1の距離だけオフセットされ、かつ、回転体の軸方向に所定の第2の距離だけオフセットされたオフセットセンタに向かってブラシ毛束を植え込むとともに、回転体を所定角度回転させた後にその植え込み位置と同じ位置で前記オフセットセンタに向かって次のブラシ毛束を植え込む工程を繰り返して、回転体の表面に複数のブラシ毛束を植え込む植え込み。切断工程では、植え込み位置において、ブラシ毛束の先端に当接する刃先面が所定角度で傾斜している回転かんなによって複数のブラシ毛束のそれぞれを切断する。
【0009】
ここで、「所定の第1の距離」とは、例えば、図1におけるOC間の距離である。「所定の第2の距離」とは、例えば、図2のおけるCC'間の距離である。
【0010】
これにより、被搬送物と回転ブラシとの接触面が大きくなる回転ブラシを効率良く製造することが可能となる。
【0011】
第3の発明に係る回転ブラシの製造方法は、第2の発明の方法であって、第1の距離は、r・sinθ1で、第2の距離は、(r・cosθ1)/tanθ2であり、植え込み工程における回転体の所定の回転角度はθ1である。
【0012】
第4の発明に係る搬送洗浄装置は、フレームと、複数の回転ブラシと、給水手段と、を備えている。複数の回転ブラシは、フレームに回転自在に設置され、被搬送物を洗浄しながら搬送するものであり、第1の発明の回転ブラシ、又は第2若しくは第3の発明の製造方法により製造された回転ブラシである。給水手段は、複数の回転ブラシにより形成される被搬送物の搬送路に水を供給する。複数の回転ブラシは、内部に被搬送物を保持し得るように、回転中心がU字状になるように配置されている。
【0013】
これにより、人参、馬鈴薯、甘藷等の小さな野菜を複数個同時に、洗浄しながら、確実に搬送方向に搬送することができる搬送洗浄装置を実現できる。
【0014】
第5の発明に係る搬送洗浄装置は、第4の発明の装置であって、フレームに回転自在に、かつ回転ブラシと平行に設置され、被搬送物が複数の回転ブラシによって形成される搬送路から飛び出るのを防止する飛びはね防止用回転ブラシをさらに備えている。
【0015】
これにより、人参、馬鈴薯、甘藷等の小さな野菜を複数個同時に、洗浄しながら、確実に搬送方向に搬送することができるとともに、搬送路から被搬送物が飛び出るのを防止することができる。
【0016】
第6の発明に係る搬送洗浄装置は、第5の発明の装置であって、飛びはね防止用回転ブラシは、搬送路において被搬送物が搬送方向と交差する方向に移動したときに、被搬送物の移動方向の下流側端部に配置された回転ブラシのさらに下流側に配置されている。
【0017】
第7の発明に係る搬送洗浄装置は、第4から第6のいずれかの発明の装置であって、複数の回転ブラシのそれぞれは、同方向に、かつブラシ毛束の鋭角をなす側の先端が先に前記被搬送物に当接する方向に、同速度で回転する。
【0018】
これにより、被搬送物に対して、回転ブラシが掻き上げる力が大きく作用するので、被搬送物の洗浄力を向上させることができ、しかも搬送方向への力も大きく作用するので、搬送速度も向上させることができる。
【0019】
第8の発明に係る搬送洗浄装置は、フレームと、少なくとも2つの回転ブラシと、加圧給水手段と、を備えている。回転ブラシは、フレームに回転自在に設置され、被搬送物を洗浄しながら搬送するものであり、第1の発明の回転ブラシ、又は第2若しくは第3の発明の製造方法により製造された回転ブラシである。加圧給水手段は、少なくとも2つの回転ブラシにより形成される被搬送物の搬送路に、加圧して水を供給する。少なくとも2つの回転ブラシは、内部に被搬送物を保持し得るように、回転中心が同じ高さとなるように配置されており、ブラシ毛束の鋭角をなす側の先端が先に被搬送物に当接する方向と同一方向に、同一角速度で、回転するものである。加圧給水手段は、水を加圧して、給水方向を変化させながら、前記搬送路に給水する。
【0020】
これにより、大根等の大きな野菜や、大根、長芋、人参等の細長い形状の野菜を洗浄しながら、確実に搬送方向に搬送することができる搬送洗浄装置を実現できる。なお、ここで「ブラシ毛束の鋭角をなす側の先端」とは、例えば、図1では、ブラシ毛束のZ2の下側の部分をいう。図1におけるDR方向に回転ブラシを回転させることで、被搬送物SにはDS方向の力が加わり、被搬送物SがDS方向に掻き上げられることになるので、被搬送物を効率良く洗浄かつ搬送することができる。
【0021】
第9の発明に係る搬送洗浄装置は、第8の発明の装置であって、フレームに回転自在に、かつ回転ブラシと平行に設置され、被搬送物が少なくとも2つの前記回転ブラシによって形成される搬送路から飛び出るのを防止する飛びはね防止用回転ブラシをさらに備えている。
【0022】
これにより、大根等の大きな野菜や、大根、長芋、人参等の細長い形状の野菜を、洗浄しながら、確実に搬送方向に搬送することができるとともに、搬送路から被搬送物が飛び出るのを防止することができる。
【0023】
第10の発明に係る搬送洗浄装置は、第9の発明の装置であって、飛びはね防止用回転ブラシは、搬送路において被搬送物が搬送方向と交差する方向に移動したときに、被搬送物の移動方向の下流側端部に配置された回転ブラシのさらに下流側に配置されている。
【0024】
第11の発明に係る搬送洗浄装置は、第8から第10のいずれかの発明の装置であって、少なくとも2つの回転ブラシのそれぞれは、同方向に、かつブラシ毛束の鋭角をなす側の先端が先に被搬送物に当接する方向に、同速度で回転する。
【0025】
第12の発明に係る搬送洗浄装置は、第8から第11のいずれかの発明の装置であって、加圧給水手段は、軸方向の断面での位置が同一な対の複数の吸水口を持ち、被搬送物の移動方向に進むにしたがって、対の吸水口の軸方向の距離が大きくなる直線上に設置されており、吸水口は、直線に平行な方向および軸方向に給水方向を変化させる。
【0026】
これにより、被搬送物に対する洗浄効率が向上する。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る回転ブラシでは、被搬送物と、回転ブラシのブラシ毛束との当接する面積が大きくなるので、洗浄するために被搬送物に加えられる力、および搬送方向へ搬送するために被搬送物に加えられる力が大きくなり、このため、被搬送物を洗浄しながら、確実に、かつ、スピーディーに搬送することが可能となる。
【0028】
本発明に係る回転ブラシの製造方法では、回転かんなの刃の傾斜角度と、回転ブラシのブラシ毛束の半径方向からのなす角を同一にすることで、被搬送物に対する当接面の面積を大きくすることができる回転ブラシを簡単に製造することができる。
【0029】
本発明に係る搬送洗浄装置では、ブラシ毛束が搬送方向に傾斜し、かつ、半径方向にも傾斜し、被搬送物との当接面の面積が大きくなるものを回転ブラシに使用し、複数の回転ブラシにより搬送路を形成し、搬送路中の被搬送物全体に回転力を加えながら、被搬送物を搬送することができるので、被搬送物を、効率良く洗浄しながら、確実に、かつスピーディーに搬送することができる。特に、人参、馬鈴薯、甘藷等の小さな野菜を洗浄しながら搬送する場合、その効果は、顕著である。
【0030】
本発明に係る搬送洗浄装置では、前述の回転ブラシを用い、被搬送物の洗浄開始地点付近に集中的に加圧した水を供給することができるので、大きく長い野菜を効率良く洗浄、搬送することができる。特に大根、長芋等の野菜を洗浄しながら搬送する場合、その効果は顕著である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
[第1実施形態]
<回転ブラシの構成>
図1に本発明の第1実施形態に係る回転ブラシ3の図2のV方向から見た矢視図を、図2に回転ブラシ3の軸方向の側面図を示す。回転ブラシ3は、回転中心をOとする回転体1と、複数のブラシ毛からなるブラシ毛束2を備えている。
【0032】
回転体1は、Oを回転中心とし、図1(a)において、時計周りに回転するものである。つまり、回転体1は、ブラシ毛束2と被搬送物との摩擦が大きくなる方向に回転するものである。
【0033】
ブラシ毛束2は、図2に示すように、回転軸方向に等間隔で、回転軸方向に対して角度θ2だけ傾斜して、回転体1に植え込まれており、かつ、回転体の円周方向にも等間隔で植え込まれている(図示していないが、図2の1点鎖線上に等間隔にブラシ毛2が埋め込まれている)。また、図2に示すように、回転体のブラシ毛束の回転体表面からの突出量は、全て同じである。図1(a)は、回転ブラシを、図2のV方向から見た矢視図である。図1(a)に示すように、ブラシ毛束2は、回転体の半径方向から角度θ1だけ傾斜して、ブラシ毛束2の回転体への埋め込み位置から突出している。そして、ブラシ毛束2の先端が形成する平面は、ブラシ毛束2の埋め込み位置と回転中心Oとを結ぶ直線が、その放線となる平面となるように、ブラシ毛束2の形状が決定される。つまり、ブラシ毛束2の形状は、例えば、図1(a)のA点において、ブラシ毛束2の先端が形成する平面の放線が直線OAとなるような形状をしている。すなわち、図1(a)のA点におけるブラシ毛束2の先端が形成する平面の法線は、直線OAとなり、直線OCと直線ADは平行となる。
【0034】
なお、ブラシ毛の素材としては、例えば、塩化ビニル、ナイロン、ポリエステル等によるものを用いるとよい。また、θ2としては、例えば、70°〜87°程度、θ1としては、例えば、10°程度にするとよい。
【0035】
<回転ブラシの動作>
図1を用いて、本発明の第1実施形態の回転ブラシの動作について説明する。
【0036】
図1(a)に示すように、回転ブラシ3は回転中心をOとしてDRの方向に回転する。
図1(a)のZ2の部分において、回転ブラシ3のブラシ毛束2の先端が形成する平面が、直線OAと平行であるので、被搬送物と接触する面積が大きい。よってブラシ毛束2と被搬送物Sとの摩擦力が大きくなり、被搬送物SをDS方向へ掻き上げる力が大きくなり、洗浄効率が上がる。図2に示すように、ブラシ毛束2は、軸方向の断面からθ2だけ傾斜して植え込まれているので、回転ブラシ3で被搬送物を掻き上げることで、DH方向への力が加わり、被搬送物にはDH方向への推進力が加えられる。これにより、回転ブラシ3を回転させることにより、被搬送物Sを洗浄しながら、搬送させることが可能となる。
【0037】
[第2実施形態]
図1から図4を用いて、本発明の第2の実施形態の回転ブラシの製造方法について説明する。本発明の第2の実施形態の回転ブラシの製造方法は、主に、複数のブラシ毛からなるブラシ毛束2を回転体1へ植え込む植え込み工程と、埋め込み位置において、ブラシ毛束2の先端に当接する刃先面が所定角度θ1で傾斜している回転かんな6によって複数のブラシ毛束2のそれぞれを切断する切断工程と、からなる。
【0038】
埋め込み工程で、ブラシ毛束2を、図2に示すDH方向に対してθ2だけ傾斜させ、かつ、図1(a)のZ1のように、直線OAと平行な直線CBと平行となるように、ブラシ毛束2を植え込む。つまり、図1(a)において、回転中心Oからr・sinθ1だけオフセットし(つまりC点までオフセット)、さらに、図2において、回転体1の軸方向にC点から(r・cosθ1)/tanθ2だけオフセットした位置(つまり、C'点)に向かってまっすぐ、B点が植え込み位置となるように、ブラシ毛束2を埋め込む。なお、ここで、図4に示すように、回転軸方向が直線FGから(90°−θ2)の角度をなすように、回転体1を傾け、直線FGと直交する方向DPからブラシ毛束2を埋め込むようにしてもよい。
【0039】
次に、植え込み用回転工程で、図1(a)のθ1分だけ回転体1を回転させ、次のブラシ毛束2を植え込むための位置決めを行う。位置決めした後、前述した植え込み工程で行ったのと同じ作業により、次のブラシ毛束2を埋め込む。これを回転体が1周するまで行う。植え込み工程では、植え込むブラシ毛束は、回転ブラシからの設定突出量(図3のL1)以上の長さにしておけばよく、別段長さをそろえておく必要はない。なお、回転体の軸方向に等間隔でブラシ毛束2を埋め込むが、回転体の軸方向の同一直線上に配置される、複数のブラシ毛束2を同時に埋め込みようにしても当然良い。
【0040】
次に、切断工程で、図3(b)のように、ブラシ毛束2を埋め込まれた回転体1と、回転かんな6との距離がL1となるように設置する。L1は、ブラシ毛束2の回転体1からの設定突出量である。図3(a)は、図3(b)のaa−aa'での、回転かんなの断面図である。この断面図において、6a〜6dにかんなの刃が設置されており、図3(a)の部分拡大図のように回転かんな6の回転方向KRに対して、かんなの刃がθ1だけ傾斜して設置されている。図3(b)のように回転ブラシ1を固定し、回転かんな6をKR方向に回転することで、図1(a)、図2に示した形状に、ブラシ毛束2を切断することができる。図1(a)で、Z1の部分に示すように、図2(b)に示す回転かんなの刃6aがZ1部分のブラシ毛束を切断すると、かんなの刃が直線ADからθ1だけ傾斜しているので、Z1部分でのブラシ毛束2の切断面は、図1(c)のように直線ADからθ1だけ傾斜したものとなる。これを図1のDR方向にθ1だけ回転させると、A点のようにブラシ毛束2が形成する平面が直線ADに平行で、直線OAに直交するものとなる。なお、図1(c)では、便宜上、ブラシ毛を分かりやすく描いているが、ブラシ毛の本数、間隙等はこれに限定されるものではない。
【0041】
次に、回転ブラシ3を角度θ1だけ回転させ、次のブラシ毛束を切断するための位置決めを行う。その後、前述の切断工程と同じ作業を行う。以上の作業を回転体が1周するまで行う。
【0042】
以上により、図1(a)、図2に示す回転ブラシ3を、効率良く製造することができる。
【0043】
[第3実施形態]
図5に本発明の第3実施形態に係る搬送洗浄装置100の斜視図を示す。この搬送洗浄装置100は、人参、馬鈴薯、甘藷等の小さな野菜を複数個同時に、回転ブラシを回転させることのみにより、洗浄しながら、安定して搬送することができるものである。搬送洗浄装置100について、図5〜図7を用いて説明する。
【0044】
搬送洗浄装置100は、主に、フレーム5と、フレーム5に設置され、被搬送物を洗浄しながら搬送する複数の回転ブラシ3と、フレーム5に設置され、被搬送物Sが複数の回転ブラシ3から形成される被搬送物の搬送路の外に飛び出るのを防止する飛びはね防止用回転ブラシ4と、搬送路に給水する給水手段からなる。なお、回転ブラシ3は、第1実施形態および第2実施形態で説明した回転ブラシ3と同一のものである。
【0045】
図6は、図5のY−Y'での切断面を示す。図6に示すように、8つの回転ブラシ3(3a〜3h)が、その回転中心がU字形の曲線上にくるように配置されている。そして、回転体3hの上方近傍に、被搬送物が搬送路外に出ることを防止する、回転ブラシ3と同じ形状の飛びはね防止用回転ブラシ4が配置されている。図6(a)は、図6(b)の回転ブラシ3a〜3h、および飛びはね防止用回転ブラシ4を拡大したものである。
【0046】
図6(a)、(b)に示した回転方向に、回転ブラシ3a〜3hおよび飛びはね防止用回転ブラシ4を回転させることで、被搬送物SはD1の方向への推進力を受け、回転ブラシ3a〜3hで構成される搬送路内を、D1方向に回転しながら、搬送方向へ進む。
【0047】
図7は、図5のV2方向からの搬送洗浄装置100の矢視図である。8つの回転ブラシ駆動部8と、飛びはね防止用回転ブラシ駆動部10とをチェーン7で結び、テンショナー11によりチェーンが安定駆動されるようにしつつ、チェーン駆動部9によりチェーンを駆動することで、回転ブラシ3a〜3h、および飛びはね防止用回転ブラシ4を同一方向に、同一角速度で回転させることができる。給水手段は図示していないが、搬送路に水を供給できる位置に設置される。
【0048】
本発明の搬送洗浄装置100によれば、図6(b)において、回転ブラシ3a〜3hにより形成される搬送路の断面積に対して、被搬送物Sが占める断面積の総和が30%くらいになると、被搬送物がD1方向に回転し始め、洗浄搬送をすることが可能となる。図6(a)において半径方向に傾斜していない回転ブラシを使用した搬送洗浄装置の場合、搬送路の断面積に対して、被搬送物Sが占める断面積の総和が50〜80%程度にならないと被搬送物Sは回転し始めない。つまり、図6(a)のような回転ブラシ3を使用することで、洗浄効率が格段に上がる。また、半径方向に傾斜していない回転ブラシを使用した搬送洗浄装置の場合、ばらつきがあり、被搬送物Sを確実に搬送方向へ搬送することができない。図6(a)のような回転ブラシ3を使用することで、フレーム5を傾斜させたり、別途搬送用コンベアを設けたりすることなく、被搬送物Sを確実に、かつ、従来のものより速い速度で搬送方向へ搬送することが可能となる。
【0049】
[第4実施形態]
本発明の第4実施形態に係る長野菜用搬送洗浄装置101の正面図を図8に、平面図を図9に、側面図を図10に示す。この長野菜用搬送洗浄装置101は、大根等の長くて大きな野菜を、回転ブラシを回転させることのみにより、洗浄しながら、安定して搬送することができるものである。長野菜用搬送洗浄装置101について、図8〜図10を用いて説明する。
【0050】
長野菜用搬送洗浄装置101は、主に、フレーム51と、フレーム51に設置され被搬送物S2を洗浄しながら搬送する2つの回転ブラシ31a、31bと、フレーム51に設置され被搬送物S2がフレーム外に飛び出るのを防止する飛びはね防止用回転ブラシ41と、2つの回転ブラシ31a、31bにより形成される被搬送物の搬送路に加圧して水を供給する加圧給水手段とからなる。なお、回転ブラシ31a、31bは、第1実施形態および第2実施形態で説明した回転ブラシ3と同一のものである。
【0051】
図10に示すように、回転ブラシ31a、31bは、被搬送物S2が落ちないような間隔で、同じ高さdに配置されている。飛びはね防止用回転ブラシ41は、回転ブラシ31aの近傍上方外側に配置されている。ここで、飛びはね防止用回転ブラシ41は、回転ブラシ31a、31bと同じ形状のものである。回転ブラシ31a、31bは、チェーン71で連結されており、回転ブラシ31aと飛びはね防止用回転ブラシ41も別のチェーンで連結されている。チェーン駆動部81により、チェーン71を駆動することで、回転ブラシ31a、31b、飛びはね防止用回転ブラシ41は、同一角速度で、同一方向に回転する。図10では、DC1方向にチェーンを駆動するので、回転ブラシ31a、31b、飛びはね防止用回転ブラシ41は、反時計回りに回転することとなる。被搬送物S2は、回転ブラシ31b、31aにより掻き上げられ、長野菜用搬送洗浄装置101の外側方向への推進力を受けるが、飛びはね防止用回転ブラシ41により、飛びはねが防止されるので、搬送路上を安定して、洗浄されながら進むことになる。加圧給水手段20は、被搬送物S2の搬送路上に水を加圧して供給する。加圧給水手段20は、長野菜用搬送洗浄装置101の幅方向には、図10のように等間隔で、長野菜用搬送洗浄装置101の長さ方向には、図9のように、対をなすように配置され、かつ、その対が、幅方向の中心から外方向に進むにつれ、直線的に間隔が広がるように配置されている。つまり、2つの、中心付近で交差する、直線状の給水手段支持部材21、22上に、図9に示すように、加圧給水手段20が配置されている。このように、加圧給水手段20を配置し、加圧給水手段の吸水口を、長野菜用搬送洗浄装置101の長さ方向に単振動するように振り、次に、前述した直線状の給水手段支持部材21、22に平行な方向に単振動するように振り、これらの動作を繰り返すことで、搬送路に水を加圧して供給する。これにより、被搬送物S2を洗浄し始めの部分である回転ブラシ31b上付近に供給される水の量が多くなるので、洗浄効率が高くなる。前述したような加圧給水手段20の吸水口の振り方をすることで、例えば、吸水口が円弧を描くように振る場合に比べて、格段に洗浄力が向上する。
【0052】
なお、図10において、回転ブラシ31a'、31b'、飛びはね防止用回転ブラシ41'、加圧給水手段20'、チェーン駆動部81'、チェーン71'等が線対称に配置されているが、左右が逆だけで動作は前述したものと同じである。
【0053】
以上により、この長野菜用搬送洗浄装置101は、大根等の長くて大きな野菜を、回転ブラシを回転させることのみにより、洗浄しながら、安定して搬送することができ、しかも、搬送速度は従来のものより速い。
【0054】
[他の実施形態]
第3実施形態および第4実施形態において、飛びはね防止用回転ブラシは、回転ブラシ4と同じものを用いたが、必ずしもこれに限定されるものではなく、被搬送物の飛びはねを防止する効果を有するものを用いることもできる。
【0055】
また、上記実施形態において、装置全体のコストを削減するため、飛びはね防止用回転ブラシを設置しない構成にしてもよい。
【0056】
また、回転ブラシの数は、上記実施形態で説明した数に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更してもよい。
【0057】
また、回転ブラシのブラシ毛束の突出量は、野菜の種類等によって変えてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明に係る回転ブラシ、回転ブラシの製造方法、および搬送洗浄装置は、人参、馬鈴薯、甘藷、大根、長芋等の野菜を搬送しながら洗浄することができるため、農業生産加工関連産業分野において、有用であり、本発明は、当該分野において実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の第1実施形態に係る回転ブラシの軸方向の断面図
【図2】本発明の第1実施形態に係る回転ブラシのV方向から見た矢視図
【図3】本発明の第2実施形態に係る回転ブラシと回転かんなの軸方向の側面図
【図4】本発明の第2実施形態に係る回転ブラシの軸方向の側面図
【図5】本発明の第3実施形態に係る搬送洗浄装置の斜視図
【図6】本発明の第3実施形態に係る搬送洗浄装置のV2方向からの矢視図
【図7】本発明の第3実施形態に係る搬送洗浄装置の端部の断面図
【図8】本発明の第4実施形態に係る搬送洗浄装置の正面図
【図9】本発明の第4実施形態に係る搬送洗浄装置の平面図
【図10】本発明の第4実施形態に係る搬送洗浄装置の側面図
【符号の説明】
【0060】
1 回転体
2 ブラシ毛束
3、3a、3b、3c、3d、3e、3f、3g、3h 回転ブラシ
4 飛びはね防止用回転ブラシ
5 フレーム
6 回転かんな
6a、6b、6c、6d かんな刃
S 被搬送物
100 搬送洗浄装置
20、20' 加圧給水手段
31、31a、31b、31'、31a'、31b' 回転ブラシ
41、41' 飛びはね防止用回転ブラシ
51 フレーム
S2、S2' 被搬送物
101 長野菜用搬送洗浄装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形の表面を有する回転体と、
前記回転体の表面に、前記回転体の軸に対して鋭角である第1の角度を有して植え込まれた、それぞれが複数のブラシ毛からなる複数のブラシ毛束と、
を備え、
前記複数のブラシ毛束のそれぞれは、先端部分が形成する平面が前記回転体の表面と平行であり、かつ、前記ブラシ毛束を前記回転体の軸方向に直交する断面に投影した場合、前記投影面において、前記ブラシ毛束は前記回転体の回転中心に対して第2の角度を有して埋め込まれている、
回転ブラシ。
【請求項2】
円形表面を有する半径rの回転体の表面に、それぞれ複数のブラシ毛からなる複数のブラシ毛束を植え込んで、前記複数のブラシ毛束の先端を切断する方法であって、
前記回転体の軸方向に直交する断面において、回転中心から所定の第1の距離だけオフセットされ、かつ、前記回転体の軸方向に所定の第2の距離だけオフセットされたオフセットセンタに向かって前記ブラシ毛束を植え込むとともに、前記回転体を所定角度回転させた後に前記植え込み位置と同じ位置で前記オフセットセンタに向かって次のブラシ毛束を植え込む工程を繰り返して、前記回転体の表面に複数のブラシ毛束を植え込む植え込み工程と、
前記植え込み位置において、前記ブラシ毛束の先端に当接する刃先面が前記所定角度で傾斜している回転かんなによって前記複数のブラシ毛束のそれぞれを切断する切断工程と、
を有する回転ブラシの製造方法。
【請求項3】
前記第1の距離は、r・sinθ1で、前記第2の距離は、(r・cosθ1)/tanθ2であり、
前記植え込み工程における前記回転体の所定の回転角度はθ1である、
請求項2に記載の回転ブラシの製造方法。
【請求項4】
フレームと、
前記フレームに回転自在に設置され、被搬送物を洗浄しながら搬送する複数の、請求項1に記載の回転ブラシ又は請求項2若しくは請求項3に記載の製造方法により製造された回転ブラシと、
複数の前記回転ブラシにより形成される被搬送物の搬送路に水を供給する給水手段と、
を備え、
複数の前記回転ブラシは、内部に被搬送物を保持し得るように、回転中心がU字状になるように配置されている、
搬送洗浄装置。
【請求項5】
前記フレームに回転自在に、かつ前記回転ブラシと平行に設置され、被搬送物が複数の前記回転ブラシによって形成される搬送路から飛び出るのを防止する飛びはね防止用回転ブラシをさらに備えた、請求項4に記載の搬送洗浄装置。
【請求項6】
前記飛びはね防止用回転ブラシは、前記搬送路において被搬送物が搬送方向と交差する方向に移動したときに、被搬送物の移動方向の下流側端部に配置された回転ブラシのさらに下流側に配置されている、請求項5に記載の搬送洗浄装置。
【請求項7】
複数の前記回転ブラシのそれぞれは、同方向に、かつ前記ブラシ毛束の鋭角をなす側の先端が先に前記被搬送物に当接する方向に、同速度で回転する、請求項4から6のいずれかに記載の搬送洗浄装置。
【請求項8】
フレームと、
前記フレームに回転自在に設置され、被搬送物を洗浄しながら搬送する少なくとも2つの、請求項1に記載の回転ブラシ又は請求項2若しくは請求項3に記載の製造方法により製造された回転ブラシと、
少なくとも2つの前記回転ブラシにより形成される被搬送物の搬送路に、加圧して水を供給する加圧給水手段と、
を備え、
少なくとも2つの前記回転ブラシは、内部に被搬送物を保持し得るように、回転中心が同じ高さとなるように配置されており、前記ブラシ毛束の鋭角をなす側の先端が先に前記被搬送物に当接する方向と同一方向に、同一角速度で、回転するものであり、
前記加圧給水手段は、水を加圧して、給水方向を変化させながら、前記搬送路に給水する、
搬送洗浄装置。
【請求項9】
前記フレームに回転自在に、かつ前記回転ブラシと平行に設置され、被搬送物が少なくとも2つの前記回転ブラシによって形成される搬送路から飛び出るのを防止する飛びはね防止用回転ブラシをさらに備えた、請求項8に記載の搬送洗浄装置。
【請求項10】
前記飛びはね防止用回転ブラシは、前記搬送路において被搬送物が搬送方向と交差する方向に移動したときに、被搬送物の移動方向の下流側端部に配置された回転ブラシのさらに下流側に配置されている、請求項9に記載の搬送洗浄装置。
【請求項11】
少なくとも2つの前記回転ブラシのそれぞれは、同方向に、かつ前記ブラシ毛束の鋭角をなす側の先端が先に前記被搬送物に当接する方向に、同速度で回転する、請求項8から10のいずれかに記載の搬送洗浄装置。
【請求項12】
前記加圧給水手段は、前記軸方向の断面での位置が同一な対の複数の吸水口を持ち、前記被搬送物の移動方向に進むにしたがって、当該対の吸水口の前記軸方向の距離が大きくなる直線上に設置されており、前記吸水口は、前記直線に平行な方向および前記軸方向に給水方向を変化させる、
請求項8から11のいずれかに記載の搬送洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−289475(P2007−289475A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−121794(P2006−121794)
【出願日】平成18年4月26日(2006.4.26)
【出願人】(594047131)サンデーシステム株式会社 (6)
【Fターム(参考)】