説明

回転伝達装置

【課題】長期間使用されてもコイルばねの歪みや疲労を防ぎ、長期間にわたり安定した回転伝達機能を発揮する回転伝達装置に提供する。
【解決手段】ケーシング6内にほぼ内接状態に配設され、両端部を内方へ突出するように屈曲したフック部50、51を有するコイルばね5と、フック部50、51の内側面間Aに配置されて回転し、フック部50、51の内側部に当接してコイルばね5を縮径させる入力側作用片20を有する入力軸2と、フック部50、51の外側面間Bに配置されて回転し、フック部50、51の外側部に当接してコイルばね5を拡径させる出力側作用片30を有する出力軸3とで構成されている。入力軸2の軸芯と出力軸3の軸芯にそれぞれ設けられた軸孔21、31へ、同入力軸2と出力軸3とを共通に支持する中心軸4が嵌め込まれている。コイルばね5の両端の各フック部50、51はそれぞれ、中心軸4に当接して支持される長さに形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、入力軸を回転することにより出力軸を正逆双方向へ自在に回転できるが、出力軸は回転力を受けても正逆いずれの方向にも回転不能に構成された回転伝達装置の技術分野に属し、更に云えば、長期間使用されてもコイルばねの歪みや疲労を防ぎ、長期間にわたり安定した回転伝達機能を発揮する回転伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ビニールハウスの通風換気等に使用される回転伝達装置は、入力軸を回転することにより出力軸を正逆双方向へ自在に回転できるが、出力軸は回転力を受けても正逆いずれの方向にも回転不能に構成されている。
例えば下記特許文献1及び2に開示された回転伝達装置は、筒状のケーシング内にほぼ内接状態に配設され、両端部を内方へ突出するように屈曲したフック部を有するコイルばねと、該コイルばねの両端のフック部の内側面間に配置されて回転し、前記フック部の内側部に当接してコイルばねを縮径させ回転を可能にする入力側作用片を有する入力軸と、前記コイルばねの両端のフック部の外側面間に配置されて回転し、前記フック部の外側部に当接してコイルばねを拡径させ摩擦力を発生させて回転不能とする出力側作用片を有する出力軸とで構成されている。
前記入力軸が回転すると、前記コイルばねのフック部の内側部に当接した入力側作用片が同フック部の内側部を押し回して、同コイルばねを縮径するので、コイルばねの外周面とケーシングの内周面との間の摩擦抵抗が小さくなり、入力軸側の回転をそままま出力軸の正逆方向の回転として伝達することができる。
一方、出力軸が回転する場合は、前記コイルばねのフック部の外側部に当接した出力側作用片がコイルばねを巻き戻す方向に押し回して拡径させるため、コイルばねの外周面がケーシングの内周面に強く圧接されて、大きな摩擦抵抗が発生し、出力軸の回転は阻止される。
【0003】
【特許文献1】特開2001−112356号公報
【特許文献2】特開2002−34353号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1及び2の回転伝達装置は、長期間にわたり繰り返し使用し続けると、コイルばねのフック部は云わば片持ち梁の構成であるため、出力軸の出力側作用片によって繰り返し大きな応力を受け、同コイルばねのフック部が歪み、疲労する現象が生じる。
【0005】
本発明の目的は、長期間の使用により、コイルばねのフック部が、特に出力側作用片によって繰り返し大きな応力を受けても、同フック部の歪みや疲労を防いで、長期間にわたり安定した回転伝達機能を発揮する構成に改良した回転伝達装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した従来技術の課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係る回転伝達装置は、
筒状のケーシング6内にほぼ内接状態に配設され、両端部を内方へ突出するように屈曲したフック部50、51を有するコイルばね5と、該コイルばね5の両端のフック部50、51の内側面間Aに配置されて回転し、前記フック部50、51の内側部に当接してコイルばね5を縮径させる入力側作用片20を有する入力軸2と、前記コイルばね5の両端のフック部50、51の外側面間Bに配置されて回転し、前記フック部50、51の外側部に当接してコイルばね5を拡径させる出力側作用片30を有する出力軸3とで構成された回転伝達装置1において、
前記入力軸2の軸芯と出力軸3の軸芯にそれぞれ設けられた軸孔21、31へ、同入力軸2と出力軸3とを共通に支持する中心軸4が嵌め込まれており、
前記コイルばね5の両端の各フック部50、51はそれぞれ、前記中心軸4に当接して支持される長さに形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る回転伝達装置1は、入力軸2の軸芯及び出力軸3の軸芯にそれぞれ設けた軸孔21と31へ、同入力軸2と出力軸3を共通に回転可能に支持する中心軸4が嵌め込まれているので、入力軸2と出力軸3は共に安定した回転動作をする。そして、コイルばね5の両端の各フック部50、51はそれぞれ、中心軸4へ当接して支持される長さに形成されているので、コイルばね5のフック部50、51が特に出力側作用片30により大きな作用力で繰り返し押されても、自由端を中心軸4に支持されたフック部50、51は、いわば両端支持梁の如く働き、負担する応力が小さくて済むので、極度に歪んだり、疲労することがなく、長期間にわたり安定した回転伝達機能と長寿命を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の回転伝達装置1は、入力軸2の軸芯と出力軸3の軸芯にそれぞれ設けられた軸孔21、31へ、同入力軸2と出力軸3とを共通に支持する中心軸4が嵌め込まれており、コイルばね5の両端の各フック部50、51はそれぞれ、前記中心軸4に当接して支持される長さに形成されている。
【実施例1】
【0009】
以下に、本発明を、図示した実施例に基づいて説明する。
図1〜図5に示す回転伝達装置1は、図示しないビニールハウスの通風換気の開閉手段に使用されるもので、図示を省略したハンドルで入力軸2を回転することにより、出力軸3を正逆双方向へ同一速度で同一方向へ自在に回転できるが、逆に出力軸3はいかに大きな回転力を受けても正逆いずれの方向にも回転不能に構成されている。その構成原理は、上述した特許文献1及び2の回転伝達装置と大部分共通する。なお、図1〜図3に示す符号22は、前記ハンドルを取り付けるピン孔を示している。
【0010】
本発明による回転伝達装置1の特長は、図1〜図5に示すように、上記入力軸2の軸芯と出力軸3の軸芯にそれぞれ設けられた軸孔21、31へ、同入力軸2と出力軸3を共通に回転可能に支持する中心軸4が嵌め込まれており、入力軸2と出力軸3は、基本的に中心軸4を中心として安定した回転をする構成とされている。したがって、軸孔21、31と中心軸4は、回転運動を許容する限度の公差で構成されている。その上で、入力軸2はケーシング6の内周面及びカバー体8によっても回転を案内され支持される。また、出力軸3は、軸受7によっても回転を案内され支持される。
前記出力軸3は、図2に示すように、ケーシング6を固定した軸受7から突き出されて被回転体(例えばシート巻軸)と連結可能に構成されている。そして、前記ケーシング6と軸受7はそれぞれ、この回転伝達装置1を内蔵するハウジングと結合して支持されている。
【0011】
上記コイルばね5の両端の各フック部50、51はそれぞれ、図5に示すように、円弧A及び円弧B(A<B)を形成するように屈曲されており、各フック部50、51の自由端は、前記中心軸4へ届いて当接し支持される長さに形成されている。
上記入力軸2の入力側作用片20は、前記コイルばね5の両端のフック部50、51によって形成された小さい円弧Aの範囲内に2つのフック部50、51の内側面間に納まる幅寸に形成されている。一方、上記出力軸3の出力側作用片30は、大きい円弧Bの範囲内に2つのフック部50、51の外側面間へほぼ接する大きさの長い円弧形状に形成されており、もって遊びに起因する出力軸3の回転変位は極力防止する構成とされている。
【0012】
したがって、入力軸2が正逆いずれかの方向へ回転して、その入力側作用片20がいずれかのフック部50又は51へ当たり押し回すと、コイルばね5を内方へ張り込むように縮径させて、そのまま同方向への回転を軽く続けることができる。このときのフック部50又は51の自由端は中心軸4から外のく方向へ変形しようとする。
逆に、出力軸3が正逆いずれかの方向へ回転しようとすると、その出力側作用片30は直ちにいずれかのフック部50又は51へ当たり押し回す。このとき出力側作用片30の先端は、いずれかのフック部50又は51の根元側を外方へ押し拡げて拡径するように力を加える。しかも、同フック部50又は51の自由端は、中心軸4へ当たって反力を受けるので、前記根元側を外方へ押し拡げて拡径する作用・効果は確実に奏され、拡径したコイルばね5は、ケーシング6の内面との間に急増大する摩擦力を生じて、確実に効果的な回り止め機能を発揮し、出力軸3の回転を不能にする。そして、前記コイルばね5のフック部50、51は、前記出力側作用片30により大きな作用力で繰り返し押されても、中心軸4に当たって支持されるので、同フック部50、51は、いわば両端支持梁の如く負担する応力が小さくて済み、極度に歪んだり、疲労することがないから、長期間にわたり安定した回転伝達機能と長寿命を発揮する。
【0013】
以上に本発明を図示した実施例と共に説明したが、もとより本発明は実施例に限定されるものではない。本発明の目的と要旨を逸脱しない範囲で、当業者が必要に応じて行う設計変更や応用変形を包含するものであることを念のため申し添える。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る回転伝達装置を分解して示した斜視図である。
【図2】本発明に係る回転伝達装置の組立状態を示した断面図である。
【図3】入力軸とコイルばねの関係を示す斜視図である。
【図4】出力軸とコイルばねの関係を示す斜視図である。
【図5】図2のV−V線矢視断面図である。
【符号の説明】
【0015】
1 回転伝達装置
2 入力軸
20 入力側作用片
21 軸孔
3 出力軸
30 出力側作用片
31 軸孔
4 中心軸
5 コイルばね
50 フック部
51 フック部
6 ケーシング
7 軸受


【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のケーシング内にほぼ内接状態に配設され、両端部を内方へ突出するように屈曲したフック部を有するコイルばねと、該コイルばねの両端のフック部の内側面間に配置されて回転し、前記フック部の内側部に当接してコイルばねを縮径させる入力側作用片を有する入力軸と、前記コイルばねの両端のフック部の外側面間に配置されて回転し、前記フック部の外側部に当接してコイルばねを拡径させる出力側作用片を有する出力軸とで構成された回転伝達装置において、
前記入力軸の軸芯と出力軸の軸芯にそれぞれ設けられた軸孔へ、同入力軸と出力軸とを共通に支持する中心軸が嵌め込まれており、
前記コイルばねの両端の各フック部はそれぞれ、前記中心軸に当接して支持される長さに形成されていることを特徴とする、回転伝達装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−48388(P2010−48388A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−215170(P2008−215170)
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【出願人】(000221568)東都興業株式会社 (57)
【Fターム(参考)】