説明

回転体のアース接地構造、ベルト装置及び画像形成装置

【課題】アース接地状態を確保して電気的安定性を向上することができる回転体のアース接地構造を提供する。
【解決手段】回転体としての駆動ローラ5と従動ローラ6とによって回動移動する搬送ベルト8と、回転体としての従動ローラ6を回転可能に支持する軸受18と、この軸受18とは別に回転体を回転可能に支持する軸受19と、軸受19を回転体の回転中心に向けて付勢する付勢部材21と備え、回転体は軸受18,19を介してアース接地されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転体の回転によって回動移動するベルトと、この回転体を回転可能に支持する軸受とを備え、その回転体が軸受を介してアース接地されている回転体のアース接地構造、ベルト装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンタ・複写機・ファクシミリ並びにこれらを機能的に具備した複合機等の画像形成装置には、一方を駆動側とし且つ他方を従動側とした一対のローラやプーリ等の回転体と、この回転体間に回動移動可能に設けられた無端ベルト状の搬送ベルトとを備え、必要に応じて搬送ベルトの緊張状態を維持するためにテンションを加えつつ駆動側の回転体を回転させることにより搬送ベルトを回動移動させるベルト装置を採用したものが周知である。
【0003】
また、このようなベルト装置を画像形成装置に適用した場合、画像形成処理のための感光体ドラムの帯電や搬送ベルトの回動移動に伴って発生する静電気等に起因する搬送ベルト並びに回転体の電気的安定性の確保を目的とし、回転体を回転可能に支持する導電性の軸受を介してアース接地する構成も知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−282805号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記の如く構成された回転体のアース接地構造にあっては、例えば、図7に示すように、搬送ベルト8の緊張状態や回動移動等に伴って回転体に発生する荷重により、回転体としての従動ローラ6の軸部6aが荷重方向(矢印A参照)に変位し、軸受18が軸部6aの荷重方向側の外周面とのみ接触した状態となる。
【0005】
これにより、画像形成装置本体内で浮遊する塵埃やトナー成分等が軸部6aと軸受18との間に侵入すると、この接触部分で塵埃やトナー成分等が堰き止められてしまい、軸部6aと軸受18との接触状態、即ち、導通状態が阻害されてアース接地ができなくなるという問題が発生していた。
【0006】
そこで、本発明は、上記事情を考慮し、アース接地状態を確保して電気的安定性を向上することができる回転体のアース接地構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の回転体のアース接地構造は、回転体の回転によって回動移動するベルトと、前記回転体を回転可能に支持する軸受とを備え、前記回転体は前記軸受を介してアース接地されている回転体のアース接地構造において、前記軸受とは別に前記回転体を回転可能に支持する第2の軸受と、該第2の軸受を前記回転体の回転中心に向けて付勢する付勢部材と備え、前記回転体は前記第2の軸受を介してアース接地されていることを特徴とする。
【0008】
この際、前記付勢部材は、前記ベルトから前記回転体に加わる荷重方向とは同方向に前記第2の軸受を付勢していることが望ましい。
【0009】
また、前記第2の軸受は、カバーによって覆われていることが望ましい。
【0010】
さらに、本発明は、上記した何れかの回転体のアース接地構造を採用したベルト装置とすることができる。
【0011】
しかも、本発明は上記した何れかの構成からなる回転体のアース接地構造を採用した画像形成装置とすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の回転体のアース接地構造は、アース接地状態を確保して電気的安定性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明の一実施形態に係る回転体のアース接地構造を、画像形成装置としてのタンデム方式のフルカラープリンタに適用し、図面を参照して説明する。
【0014】
(画像形成装置の全体構成)
図1は本発明の一実施形態に係る回転体のアース接地構造を採用した画像形成装置の模式図である。
【0015】
図1において、画像形成装置としてのフルカラープリンタ1は、外部コンピュータからの原稿画像データの色情報に応じてフルカラー画像出力とモノクロ画像出力の何れかが選択される。フルカラープリンタ1の本体2の内部には、図示を略する転写紙等の搬送シートが収納される給紙カセット3と、この給紙カセット3に収納された搬送シートを取り出して搬送する給紙経路4と、駆動ローラ(又はプーリ)5と従動ローラ(又はプーリ)6との間に巻き掛けられていると共にテンションローラ7によって緊張状態が維持される無端ベルト状の搬送ベルト8と、搬送ベルト8の上方に位置されると共にシート搬送方向(図示右方から左方)に沿って配置された画像形成部としての4つの画像形成ユニット9B,9Y,9C,9Mと、搬送ベルト8のシート搬送方向終端部に隣接して設けられた定着装置10と、定着装置10に隣接する排出経路11と、排出経路11の終端部に設けられた排出口12から搬送シートを排出する排出部13とを備えている。
【0016】
(画像形成ユニットの構成)
画像形成ユニット9B,9Y,9C,9Mは、この実施の形態においては、シート搬送方向上流側から順に、ブラック用の画像形成ユニット9B、イエロー用の画像形成ユニット9Y、シアン用の画像形成ユニット9C、マゼンタ用の画像形成ユニット9Mの順で配置されている。また、画像形成ユニット9B,9Y,9C,9Mは、上述した各色毎のトナーを収納するトナー収納部14B,14Y,14C,14Mと、アモルファスシリコン等を感光体とする感光体ドラム15B,15Y,15C,15M等を備えている。尚、この感光体ドラム15B,15Y,15C,15Mに対する帯電から除電に至る機能は公知技術であるため、その構成部品等の説明は省略する。
【0017】
感光体ドラム15B,15Y,15C,15Mは、トナー収納部14B,14Y,14C,14Mに収納されたトナーを必要に応じて感光体ドラム15B,15Y,15C,15Mに担持させ、搬送ベルト8によって搬送されてきた搬送シートの表面上に、各感光体ドラム15B,15Y,15C,15Mと対向するように搬送ベルト8の裏面側に配置された転写ローラ16B,16Y,16C,16Mとの協働によってトナーを転写することにより未定着トナー画像を形成(静電潜像を可視化)する。
【0018】
その未定着トナー画像形成済みの搬送シートは、定着装置10によってトナー定着された後、排出口12からフェイスダウン状態で排出される。
【0019】
(回転体のアース接地構造)
一方、駆動ローラ5・従動ローラ6・テンションローラ7等の各ローラ(回転体)には、必要に応じて感光体ドラム15B,15Y,15C,15Mの帯電や搬送ベルト8の回動移動等に伴って発生する静電気等を除電するためのアース接地構造が採用されている。
【0020】
以下、本発明の回転体のアース接地構造を、回転体としての従動ローラ6に適用し、その周辺構造を図2乃至図6に基づいて説明する。尚、本発明の回転体のアース接地構造は、この従動ローラ6以外にも、上述した駆動ローラ5やテンションローラ7等の各ローラに適用することができる。
【0021】
尚、上述した感光体ドラム15B,15Y,15C,15Mから搬送シートの表面上にトナーを転写する際等には、トナー粒子が微粒子であることと相俟って、本体2の内部にトナー粒子が飛散(浮遊)することを完全に防止することは困難である。
【0022】
従って、本発明の回転体のアース接地構造は、このような飛散したトナー粒子が付着しやすい駆動ローラ5・従動ローラ6・テンションローラ7等、感光体ドラム15B,15Y,15C,15Mの近傍に配置されるローラに対して、特に有用である。
【0023】
図2は本発明の回転体のアース接地構造の要部の分解斜視図、図3は本発明の回転体のアース接地構造の要部の斜視図、図4は本発明の回転体のアース接地構造の一部を破断した要部の分解斜視図、図5は本発明の回転体のアース接地構造の一部を破断した要部の拡大斜視図、図6は本発明の回転体のアース接地構造の要部の説明図である。
【0024】
図2乃至図5において、17は本体2に固定されたローラ支持パネルである。上述した従動ローラ6は、その両端の軸部6a(一端側のみ図示。以下、同じ。)が軸受18,19を介してローラ支持パネル17に回転可能に支持されている。
【0025】
軸受18は、ローラ支持パネル17の外面側に突出する従動ローラ6の各軸部6aに位置しており、導電性材料から構成されたリング状の軸受や導電性グリスを封入したベアリング等が用いられている。また、軸受18は、図示しない配線等によって本体2にアース接地されている(直接接地、間接接地は問わない)。尚、軸受18は、従来技術で説明したように(図7参照)、搬送ベルト8の回動移動やテンションローラ7による緊張等に伴って従動ローラ6に加わる荷重によって軸部6aが従動ローラ6と一体に荷重方向に変位することに伴い、軸部6aの荷重方向側の外周面と接触した状態となる。
【0026】
軸受19は、各軸部6aにそれぞれ設けられた軸受本体20と、この軸受本体20を付勢するコイルスプリング等の付勢部材21と、これら軸受本体20と付勢部材21とを覆った状態でローラ支持パネル17の内面側に支持させるカバー22とを備えている。
【0027】
軸受本体20は、導電性材料から構成された焼結軸受等が用いられており、図示しない配線等によって本体2にアース接地されている(直接接地、間接接地は問わない)。
【0028】
付勢部材21は、略L字形状に構成されており、その一端はローラ支持パネル17に当接し且つその他端は軸受本体20に当接するようにカバー22内に収納されている。また、付勢部材21は、搬送ベルト8の回動移動やテンションローラ7による緊張等に伴って従動ローラ6に加わる荷重方向に対して、図6に示すように、略同方向(矢印B参照)に向けて軸受本体20を付勢している。これにより、軸受本体20は、軸部6aが従動ローラ6と一体に荷重方向に変位したとしても、軸部6aの非荷重方向側の外周面と接触した状態となる。
【0029】
尚、付勢部材21を軸部6aに直接接触させ、軸受本体20を廃止して付勢部材21によりアース接地させても良い。
【0030】
上記の構成において、搬送シートを搬送ベルト8で搬送しつつ画像形成ユニット9B,9Y,9C,9Mを利用して画像形成処理を行っている際、この搬送ベルト8から従動ローラ6に加わる荷重によって、従動ローラ6と一体に軸部6aが荷重方向に沿って変位する。
【0031】
従って、軸受18と軸受本体20とは、軸部6aの荷重方向側の外周面(軸受18)と、この外周面とは逆の非荷重方向側の外周面(軸受本体20)とに接触した状態となる。
【0032】
これにより、例えば、軸部6aと軸受18との隙間に浮遊トナー成分等が侵入し、その接触部分で堰き止められるようにトナー成分等が堆積して軸部6aと軸受18との導通状態が阻害されたとしても、その接触とは逆側で接触する軸部6aと軸受本体20との接触により、アース接地が確保されている。
【0033】
この際、カバー22により軸受本体20の周辺を覆っていることにより、軸部6aと軸受本体20との間への浮遊トナー成分等の侵入が抑制され、アース接地をより一層確保することが可能となる。
【0034】
また、例え、軸受18に導電性グリスを封入したベアリングを用い、そのベアリングから染み出したグリスにより浮遊トナー成分等が固着した場合であっても、軸部6aと軸受本体20との接触状態を高く(長く)確保することができ、アース接地の長期間の確保を容易に実現することができる。
【0035】
このように、本発明の回転体のアース接地構造にあっては、回転体(従動ローラ6)を異なった2種類の軸受18.19で支持すると共に、その各軸受18,19と回転軸(軸部6a)外周面との接触を荷重方向側と非荷重方向側の2方向とすることにより、回転軸のアース接地を容易に確保することができ、電気的安定性を向上することができる。
【0036】
特に、上述した従動ローラ6の近傍には、搬送ベルト8の表面をクリーニングするクリーニング部材(図示せず)を配置するものが多いことから、このクリーニング部材との電位差を設けるためにアース接地の確実性を向上させたい場合に有用である。
【0037】
ところで、上記実施の形態では、本発明の回転体のアース接地構造を画像形成装置としてのプリンタに適用して説明したが、例えば、複写機やファクシミリ、或いはこれらを機能的に具備した複合機のように、画像形成装置全般に適用することができることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施形態に係る回転体のアース接地構造を採用した画像形成装置の模式図である。
【図2】本発明の回転体のアース接地構造の要部の分解斜視図である。
【図3】本発明の回転体のアース接地構造の要部の斜視図である。
【図4】本発明の回転体のアース接地構造の一部を破断した要部の分解斜視図である。
【図5】本発明の回転体のアース接地構造の一部を破断した要部の拡大斜視図である。
【図6】本発明の回転体のアース接地構造の要部の説明図である。
【図7】従来の回転体のアース接地構造の要部の説明図である。
【符号の説明】
【0039】
1…プリンタ(画像形成装置)
2…本体
5…駆動ローラ(回転体)
6…従動ローラ(回転体)
7…テンションローラ(回転体)
8…搬送ベルト(ベルト)
18…軸受
19…軸受(第2の軸受)
20…軸受本体
21…付勢部材
22…カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体の回転によって回動移動するベルトと、前記回転体を回転可能に支持する軸受とを備え、前記回転体は前記軸受を介してアース接地されている回転体のアース接地構造において、
前記軸受とは別に前記回転体を回転可能に支持する第2の軸受と、該第2の軸受を前記回転体の回転中心に向けて付勢する付勢部材と備え、前記回転体は前記第2の軸受を介してアース接地されていることを特徴とする回転体のアース接地構造。
【請求項2】
前記付勢部材は、前記ベルトから前記回転体に加わる荷重方向とは同方向に前記第2の軸受を付勢していることを特徴とする請求項1に記載の回転体のアース接地構造。
【請求項3】
前記第2の軸受は、カバーによって覆われていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の回転体のアース接地構造。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の回転体のアース接地構造を備えていることを特徴とするベルト装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の回転体のアース接地構造を備えていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−129488(P2008−129488A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−316744(P2006−316744)
【出願日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】