説明

回転型電気部品

【課題】良好な複数のクリック感触を得ると共に、これらの複数のクリック感触の変更を円滑に行うこと。
【解決手段】ハウジングと、同軸上に回転可能に保持された内軸部材50及び外軸部材80と、交互に形成された山部と谷部からなる凹凸部の数が異なる環状の複数のクリックカム604が同心円状に設けられ、内軸部材50と一体的に回転すると共に軸線方向に付勢されたクリック部材60と、内軸部材50の回転に伴ってクリックカム604と係脱する複数の係合突部とを備え、係合突部をそれぞれのクリックカム604に対応して設け、外軸部材80の回転位置に応じて係脱するクリックカム604と係合突部との組を選択可能としたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転型電気部品に関し、特に、回転する際にパルスコードを出力して回転角度や回転方向などを検知する回転型エンコーダなどに好適な回転型電気部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの車両に搭載された各種装置(カーナビゲーション装置、オーディオ装置やエアコンディショナー(エアコン)等)の操作に用いられる操作装置において、回転操作に応じて異なるクリック感触を生起するため、ピッチの異なる凹凸部を有する2種類の係合部を回転軸の軸線方向に並べて配設するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この操作装置においては、コイルばねにより付勢される係合突部を回転軸の回転に応じていずれかの係合部に係脱させることにより、異なるクリック感触を生起させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−135069号公報、図11
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の操作装置においては、2種類の係合部に係脱させる係合突部が共通していることから、それぞれの係合部の形状に対応する形状とすることができず、両方の係合部との係脱において良好なクリック感触を得ることが困難であるという問題がある。また、この操作装置においては、2種類の係合部上を係合突部が移動する構成を採ることから、双方の係合部間の境界部分において係合突部が引っ掛かる事態が想定され、クリック感触の変更をスムーズに行うことができないという問題も発生し得る。
【0005】
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであり、良好な複数のクリック感触を得ると共に、これらの複数のクリック感触の変更を円滑に行うことができる回転型電気部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の回転型電気部品は、ハウジングと、同軸上に回転可能に保持された内軸部材及び外軸部材と、交互に形成された山部と谷部からなる凹凸部の数及び形状の少なくとも一方が異なる環状の複数の係合部が同心円状に設けられ、前記内軸部材と一体的に回転すると共に軸線方向に付勢されたクリック部材と、前記内軸部材の回転に伴って前記係合部と係脱する複数の係合突部とを備え、前記係合突部をそれぞれの前記係合部に対応して設け、前記外軸部材の回転位置に応じて係脱する前記係合部と前記係合突部との組を選択可能としたことを特徴とする。
【0007】
上記回転型電気部品によれば、複数の係合部に対応して係脱する係合突部をそれぞれ設け、外軸部材の回転位置に応じて係脱する係合部と係合突部との組を選択可能としたことから、内軸部材の回転操作時のクリック感触をそれぞれ独立した係合部と係合突部との組により生起することができるので、良好な複数のクリック感触を得ることが可能となる。また、複数の係合部に対応して係脱する係合突部をそれぞれ設けたことから、共通する係合突部を利用する場合のように係合突部が係脱する係合部を切り替える必要がないので、円滑に複数のクリック感触を変更することが可能となる。
【0008】
上記回転型電気部品においては、前記複数の係合突部に第1係合突部と第2係合突部とを含み、前記第1係合突部及び第2係合突部は、それぞれ径の異なる環状をなした第1係合部材及び第2係合部材にそれぞれ複数個設けられていることが好ましい。この場合には、第1係合突部及び第2係合突部を、第1係合部材及び第2係合部材にそれぞれ複数個設けたことから、第1係合部材又は第2係合部材をクリック部材に対して傾き難くできるので、安定したクリック感触を生起することが可能となる。また、複数の係合突部(第1係合突部又は第2係合突部)を、同一の係合部材(第1係合部材又は第2係合部材)に設けたことから、係合突部間の位置精度を高めることが可能となる。
【0009】
上記回転型電気部品においては、前記複数の係合突部に第1係合突部と第2係合突部とを含み、前記第1係合突部及び第2係合突部は、それぞれ径の異なる環状をなした第1係合部材及び第2係合部材に設けられ、前記内軸部材は、筒状部とその外周に鍔状部を有する筒状に形成され、前記ハウジングの筒状をした軸受け部に回転可能に保持される一方、前記クリック部材は、中央に貫通孔が形成された環状をなし、前記貫通孔が前記内軸部材の筒状部に挿通されて軸線方向には移動可能で周方向には回転が規制された状態で保持されており、前記鍔状部と前記クリック部材との間に、前記クリック部材を前記係合突部側へ付勢する付勢部材が設けられていることが好ましい。この場合には、回転型電気部品を中空状に形成することができるので、部品内部に光源や他のスイッチ等の部品を配置することが可能となる。また、係合部と係合突部とを係脱させるための付勢力を、鍔状部とクリック部材との間に設けた付勢部材により供給することから、コイルばねで付勢された球体により係合突部を構成するような場合に比べて、部品を組み立てる際の作業効率を向上することが可能となる。
【0010】
上記回転型電気部品において、前記第1係合部材及び第2係合部材には、前記係合突部の突出方向と反対側の端部にカム部が設けられ、当該第1係合部材及び第2係合部材のそれぞれのカム部は、周方向の異なる位置に突出部を有し、前記外軸部材には、前記カム部上を摺動する凸部が設けられ、前記凸部が前記第1係合部材及び第2係合部材のいずれかの前記突出部上に位置することにより、いずれか一方の前記係合部材が選択的に移動され、当該選択された前記係合部材の前記係合突部が対応する前記係合部と係脱可能になることが好ましい。この場合には、外軸部材の回転に応じて係合部材を選択的に軸線方向に移動させることができるので、クリック感触を生起させる係合突部と係合部との組を簡単に切り替えることが可能となる。
【0011】
上記回転型電気部品においては、前記外軸部材と前記クリック部材との間に、前記ハウジングの一部を構成するケースを設け、このケースに、前記第1係合突部及び第2係合突部を軸線方向に移動可能に挿通させる孔を形成すると共に、当該ケースの底壁上に前記第1係合部材及び第2係合部材を前記係合突部の突出方向と反対側に付勢するばねを配設することが好ましい。この場合には、ハウジングの一部を利用して第1係合突部及び第2係合突部を案内すると共に、第1係合部材及び第2係合部材を付勢することができるので、安定して第1係合突部及び第2係合突部を軸線方向に移動させることが可能となる。
【0012】
上記回転型電気部品において、選択された前記係合部材の前記係合突部は、前記第1係合部材及び第2係合部材の一方に設けられた前記突出部を介して前記外軸部材の凸部と対向配置されることが好ましい。この場合には、選択された係合部材に設けられた突出部を挟んで係合突部と外軸部材の凸部とが対向配置されることから、当該凸部により確実に係合突部を押えることができるので、当該係合突部と係合部との係脱を適切に行わせることができ、良好なクリック感触を生起させることが可能となる。
【0013】
上記回転型電気部品において、前記外軸部材の凸部は、当該外軸部材の径方向に連続して延設されることが好ましい。この場合には、外軸部材の径方向に連続して凸部が設けられることから、凸部と係合部材のカム部とが引っ掛かる事態を抑止でき、係合部材の選択を円滑に行うことが可能となる。
【0014】
上記回転型電気部品においては、前記外軸部材の凸部が前記第1係合部材及び第2係合部材のいずれか一方の前記突出部上に配置される際、前記凸部は、選択されていない他方の前記係合部材の前記カム部に形成された谷部に配置されることが好ましい。このように選択されていない他方の係合部材の谷部に外軸部材の凸部を配置することにより、当該凸部を安定的に保持することができ、一方の係合部材の突出部上から脱落する事態を防止することが可能となる。
【0015】
上記回転型電気部品においては、前記複数の係合突部に更に第3係合突部を含み、当該第3係合突部は、前記第1係合部材及び第2係合部材と径の異なる第3係合部材に設けられ、当該第3係合部材は、前記係合突部の突出方向と反対側の端部にカム部が設けられ、当該第1係合部材、第2係合部材及び第3係合部材のそれぞれのカム部は、周方向の異なる位置に突出部を有し、前記外軸部材の凸部が前記第1係合部材、第2係合部材及び第3係合部材のいずれかの前記突出部上に配置される際、前記凸部は、選択されていない2つの前記係合部材の前記カム部に形成された谷部に挟まれて配置されることが好ましい。このように選択されていない2つの係合部材の谷部に挟んで外軸部材の凸部を配置することにより、当該凸部を安定的に保持することができ、選択された係合部材の突出部上から脱落する事態を防止することが可能となる。
【0016】
上記回転型電気部品において、前記カム部の前記突出部の中央部には、前記突出部よりも高さ寸法の小さい凹部が設けられていることが好ましい。この場合には、カム部の突出部の中央部に凹部を設けたことから、当該凹部により外軸部材の凸部を安定的に保持すると共に、外軸部材の回転操作時におけるクリック感触を生起させることが可能となる。
【0017】
上記回転型電気部品においては、前記ハウジング内に前記外軸部材と共に回転する回転部材を配設し、前記内軸部材の鍔状部及び前記回転部材に、それぞれ第1摺動子と第2摺動子を設ける一方、前記ハウジングの底面に、前記第1摺動子及び第2摺動子がそれぞれ摺接する第1導電パターン及び第2導電パターンを設け、前記第1摺動子及び前記第1導電パターンによって前記内軸部材の回転検出手段を構成し、前記第2摺動子及び第2導電パターンによって前記外軸部材の回転検出手段を構成することが好ましい。この場合には、鍔状部に設けた第1摺動子及び回転部材に設けた第2摺動子と、ハウジングに設けた第1、第2導電パターンによって内軸部材及び外軸部材の回転検出手段が構成されることから、簡単な構成で2種類の回転検出手段を実現することが可能となる。また、第1、第2導電パターンを同一部材(ハウジング)に設けていることから、インサート成形等で導電パターンを埋設する場合における成形対象を少なくできるので、回転型電気部品の製造に要するコストを低減することが可能となる。
【0018】
上記回転型電気部品においては、前記係合突部が係脱する前記係合部が、凹凸部の数が多い係合部から少ない係合部に切り替えられる場合に、切り替え先の前記係合部の山部に前記係合突部の頂部が当接して止まる現象を回避する機構を設けることが好ましい。この場合には、クリック部材における切り替え先の係合部の山部に対応する係合突部の頂部が当接して止まる現象(山止まり現象)を防止することができるので、クリック感触を生起する係合突部と係合部との組を確実に切り替えることが可能となる。
【0019】
上記回転型電気部品においては、前記クリック部材の一部に前記外軸部材に当接し、当該外軸部材の回転に伴って当該クリック部材を回転させる当接部を設ける一方、前記外軸部材の一部に前記クリック部材の当接部を収容して当該当接部の当接による前記クリック部材の回転を制限する凹部を設け、前記係合突部が係脱する前記係合部が切り換えられる際に、前記外軸部材の回転に伴って前記クリック部材を回転させる一方、前記クリック部材の当該回転によって前記現象が発生し得る場合には、前記当接部を前記凹部に収容して、前記外軸部材の回転に伴う前記クリック部材の回転を制限することが好ましい。この場合には、外軸部材の一部にクリック部材の当接部を収容する凹部を設けたことから、当該山止まり現象が発生する虞があるタイミングで外軸部材の回転に伴うクリック部材の回転を制限することができるので、効果的に山止まり現象を防止することが可能となる。
【0020】
上記回転型電気部品においては、前記ハウジング内に前記外軸部材と共に回転する回転部材を配設すると共に、前記回転部材の一部に前記クリック部材の一部と当接可能で、前記外軸部材の回転に伴って前記クリック部材を回転させる突起部を設ける一方、前記クリック部材の一部に前記突起部と当接可能な当接部を設け、前記係合突部が係脱する前記係合部が切り換えられる際に、前記現象が発生した場合に前記回転部材の突起部と前記クリック部材の当接部とを当接させて、前記外軸部材の回転に伴って前記クリック部材を回転させることにより、前記現象を解消させるようにすることが好ましい。この場合には、互いに当接する突起部及び当接部を設けたことから、発生した山止まり現象が解消するようにクリック部材を回転させることができるので、効果的に山止まり現象を防止することが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、複数の係合部に対応して係脱する係合突部をそれぞれ設け、外軸部材の回転位置に応じて係脱する係合部と係合突部との組を選択可能としたことから、内軸部材の回転操作時のクリック感触をそれぞれ独立した係合部と係合突部との組により生起することができるので、良好な複数のクリック感触を得ることが可能となる。また、複数の係合部に対応して係脱する係合突部をそれぞれ設けたことから、共通する係合突部を利用する場合のように係合突部が係脱する係合部を切り替える必要がないので、円滑に複数のクリック感触を変更することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態1に係る回転型電気部品を前方側から示す分解斜視図である。
【図2】実施の形態1に係る回転型電気部品を後方側から示す分解斜視図である。
【図3】実施の形態1に係る回転型電気部品の外観を示す斜視図である。
【図4】実施の形態1に係る回転型電気部品の第1ケースの平面図である。
【図5】実施の形態1に係る回転型電気部品が有するクリック部材の斜視図である。
【図6】実施の形態1に係る回転型電気部品が有するカム部材の分解斜視図である。
【図7】実施の形態1に係る回転型電気部品が有するカム部材を組み合わせた状態の斜視図(a)及び側面図(b)である。
【図8】実施の形態1に係る回転型電気部品が有する外軸部材を軸部側及び壁面部側から示す斜視図である。
【図9】実施の形態1に係る回転型電気部品の側断面図である。
【図10】実施の形態1に係る回転型電気部品で回転操作を受け付けた場合の動作について説明するための側面図である。
【図11】実施の形態1に係る回転型電気部品で回転操作を受け付けた場合の動作について説明するための側面図である。
【図12】実施の形態1に係る回転型電気部品で回転操作を受け付けた場合の動作について説明するための側面図である。
【図13】実施の形態1に係る回転型電気部品で回転操作を受け付けた場合の動作について説明するための側面図である。
【図14】実施の形態1に係る回転型電気部品で回転操作を受け付けた場合の動作について説明するための側面図である。
【図15】実施の形態1に係る回転型電気部品で回転操作を受け付けた場合の動作について説明するための側面図である。
【図16】実施の形態1に係る回転型電気部品で回転操作を受け付けた場合の動作について説明するための側面図である。
【図17】実施の形態1に係る回転型電気部品で回転操作を受け付けた場合の動作について説明するための側面図である。
【図18】実施の形態1に係る回転型電気部品で回転操作を受け付けた場合の動作について説明するための側面図である。
【図19】実施の形態1に係る回転型電気部品で回転操作を受け付けた場合の動作について説明するための側面図である。
【図20】実施の形態1に係る回転型電気部品で回転操作を受け付けた場合の動作について説明するための側面図である。
【図21】実施の形態1に係る回転型電気部品で回転操作を受け付けた場合の動作について説明するための側面図である。
【図22】実施の形態1に係る回転型電気部品において、外軸部材に伴ってクリック部材が回転するのを規制した状態の側面図である。
【図23】実施の形態1に係る回転型電気部品の回転部材に固定される摺動子と、第1ケースに設けられた切換パターン及びコモンパターンとの関係を説明するための図である。
【図24】本発明の実施の形態2に係る回転型電気部品を前方側から示す分解斜視図である。
【図25】実施の形態2に係る回転型電気部品を後方側から示す分解斜視図である。
【図26】実施の形態2に係る回転型電気部品が有する回転部材の斜視図である。
【図27】実施の形態2に係る回転型電気部品が有するクリック部材の斜視図である。
【図28】実施の形態2に係る回転型電気部品が有するカム部材の分解斜視図である。
【図29】実施の形態2に係る回転型電気部品が有するカム部材を組み合わせた状態の斜視図(a)及び側面図(b)である。
【図30】実施の形態2に係る回転型電気部品が有する外軸部材を軸部側及び壁面部側から示す斜視図である。
【図31】実施の形態2に係る回転型電気部品の側断面図である。
【図32】実施の形態2に係る回転型電気部品で回転操作を受け付けた場合の動作について説明するための側面図である。
【図33】実施の形態2に係る回転型電気部品で回転操作を受け付けた場合の動作について説明するための側面図である。
【図34】実施の形態2に係る回転型電気部品で回転操作を受け付けた場合の動作について説明するための側面図である。
【図35】実施の形態2に係る回転型電気部品で回転操作を受け付けた場合の動作について説明するための側面図である。
【図36】実施の形態2に係る回転型電気部品で回転操作を受け付けた場合の動作について説明するための側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。本発明に係る回転型電気部品は、例えば、自動車などの車両に搭載された各種装置(カーナビゲーション装置、オーディオ装置やエアコンディショナー(エアコン)等)の操作に好適に用いられるが、その適用対象についてはこれに限定されるものではなく適宜変更が可能である。複数の操作対象を有し、それぞれに異なるクリック感触の生起が要請される任意の装置の操作に適用することが可能である。
【0024】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る回転型電気部品を前方側から示す分解斜視図である。図2は、実施の形態1に係る回転型電気部品を後方側から示す分解斜視図である。図3は、実施の形態1に係る回転型電気部品の外観を示す斜視図である。なお、以下においては、説明の便宜上、図1に示す左下方側を「回転型電気部品の前方側」と呼び、同図に示す右上方側を「回転型電気部品の後方側」と呼ぶものとする。
【0025】
図1及び図2において、回転型電気部品100は、ハウジングを構成する第1ケース10、第2ケース20及び取付部材30と、第1ケース10と第2ケース20との間の空間に一部又は全部が収納される回転部材40、内軸部材50及びクリック部材60と、第2ケース20と取付部材30との間の空間に収納される複数のカム部材70と、外軸部材80とを備えて構成されている。また、複数のカム部材70は、係合部材として機能するものであり、第1カム部材710、第2カム部材720及び第3カム部材730で構成されている。
【0026】
第1ケース10は、例えば、絶縁性の合成樹脂材料(以下、「絶縁性樹脂」という)で成形される。第1ケース10の中央には、前後方向に貫通する貫通孔101を規定する筒状の軸受け部102が設けられている。この軸受け部102の後方側の外面側には、有底状で前方側が開口された環状の収納部103が設けられている。この収納部103の外周は、概して円形状を有する側壁部104が設けられている。また、収納部103の底面には、例えば、導電性の金属板からなる複数の切換パターン及びコモンパターンがインサート成形等により設けられている。なお、これらの切換パターン及びコモンパターンの構成については後述する。
【0027】
第2ケース20は、第1ケース10と同様に、絶縁性樹脂等で成形される。第2ケース20は、その中央に形成された円形状の開口部201を規定する環状の底面部202と、この底面部202の外縁部から前方側に延出して設けられた円形状の側壁部203とを有し、概して前方側に開口する構成を有している。そして、これらの底面部202と側壁部203とで囲まれる空間に収納部204が設けられている。開口部201は、後述する内軸部材50の筒状部501を挿通可能な大きさに形成され、この筒状部501を前方側に露出可能に構成されている。底面部202の前面の所定位置には、カム部材70を付勢する複数のコイルばね901を保持する複数の軸部205が設けられている。また、底面部202の所定位置には、後述する第1カム部材710、第2カム部材720及び第3カム部材730の突出片712、722及び732を挿通可能な孔又は切り欠きからなる複数の貫通部206が設けられている。このように第2ケース20に軸部205及び貫通部206を設けることにより、ハウジングの一部を利用して突出片712、722及び732を案内すると共に、第1カム部材710、第2カム部材720及び第3カム部材730を付勢することができるので、安定して第1カム部材710、第2カム部材720及び第3カム部材730を軸線方向に移動できるものとなっている。側壁部203は、側壁部104と略同一の形状を有し、側壁部104と共に回転型電気部品100の外壁面を構成する。
【0028】
取付部材30は、金属板を打ち抜き、折り曲げて形成されており、円環状の上板部301と、この上板部301から後方側に向けて垂直に延出する複数(本実施の形態では3つ)の脚部302とを有している。上板部301の中央には、円形状の開口部303が形成されている。この開口部303は、後述する外軸部材80の軸部802を挿通可能な大きさに形成され、これを前方側に露出可能に構成されている。脚部302の先端には、組み立てられた状態の回転型電気部品100において、第1ケース10の後面側に折り曲げられて取付部材30を固定する爪部302aが設けられている。
【0029】
回転部材40は、例えば、絶縁性樹脂等で成形され、円環形状に設けられる環状部401と、この環状部401の外縁部の所定位置から前方側に突出して設けられた複数(本実施の形態では3つ)の突出片402とを有している。これらの突出片402の先端部には、後述する外軸部材80の突出片804と係合する係合片402aが設けられている。環状部401の中央には、円形状の開口部403が設けられている。この開口部403は、第1ケース10の軸受け部102を挿通可能な大きさに設けられている。環状部401の後面の所定位置には、第2摺動子として機能する摺動子902が固定される。この摺動子902は、第1ケース10の収納部103に設けられた外軸部材80の回転検出用の切換パターン及びコモンパターン上を摺動可能に回転部材40に固定されている。
【0030】
内軸部材50は、例えば、絶縁性樹脂で成形される。内軸部材50は、前方側に突出して設けられた中空状の筒状部501と、この筒状部501の後端部に設けられた鍔状部502とを有している。内軸部材50は、この筒状部501の内部に設けられた貫通孔503で第1ケース10の軸受け部102の外周部に回転可能に保持される。筒状部501の周面の後端部には、その周面よりも僅かに外側に突出する複数(本実施の形態では3つ)の係合片501aが設けられている。鍔状部502は、円環形状を有しており、その前面には、クリック部材60を前方側に付勢する複数(本実施の形態では3つ)のコイルばね903の後端部を収容する凹部502aが形成されている。また、鍔状部502の後面の所定位置には、第1摺動子として機能する複数(本実施の形態では2つ)の摺動子904が固定される。これらの摺動子904は、第1ケース10の収納部103に設けられた内軸部材50の回転検出用の切換パターン及びコモンパターン上を摺動可能に内軸部材50に固定されている。
【0031】
クリック部材60は、例えば、絶縁性樹脂で成形され、円環形状に設けられた基部601と、この基部601の内縁部から前方側に突出して設けられた壁面部602とを有している。この壁面部602の内側には、内軸部材50の筒状部501の周面よりも僅かに大径の挿通孔603が設けられ、この筒状部501が挿通可能に構成されている。基部601の前面には、同心円状に設けられた複数(本実施の形態では3つ)のクリックカム604が設けられている。それぞれのクリックカム604においては、交互に形成された山部と谷部からなる凹凸部の数が異なっている。これらのクリックカム604は、係合部として機能するものであり、内軸部材50が回転する際に後述するカム部材70の突出片712、722及び732の係脱に応じてクリック感触を生起させる。壁面部602には、複数(本実施の形態では3つ)の切り欠き部602aが設けられている。これらの切り欠き部602aは、内軸部材50の筒状部501に設けられた係合片501aと係合する。これらの切り欠き部602aに係合片501aが係合することで、内軸部材50とクリック部材60とが一体的に回転可能に構成されている。
【0032】
第1カム部材710、第2カム部材720及び第3カム部材730は、例えば、絶縁性樹脂で成形され、それぞれ中央に挿通孔711、721及び731を有する円環形状に設けられている。第1カム部材710、第2カム部材720及び第3カム部材730の前面の所定位置には、それぞれカム部としての複数の凹凸部が設けられている。また、第1カム部材710、第2カム部材720及び第3カム部材730の後面の所定位置には、それぞれ後方側に延出する複数(本実施の形態では3つ)の突出片712、722及び732が設けられている。これらの突出片712、722及び732の先端部には、クリック部材60のクリックカム604と係脱する係合突部が設けられている。なお、これらの第1カム部材710、第2カム部材720及び第3カム部材730の構成については後述する。
【0033】
外軸部材80は、例えば、絶縁性樹脂で成形される。外軸部材80は、円環形状に設けられた基部801と、この基部801の内縁部から前方側に突出して設けられた軸部802と、基部801の内縁部から後方側に突出して設けられた壁面部803と、この基部801の外縁部の所定位置から後方側に突出して設けられた複数(本実施の形態では3つ)の突出片804とを有している。基部801の後面における突出片804に対応する位置には、後方側に突出する複数の凸部801aが設けられている(図2参照)。この凸部801aは、第1カム部材710、第2カム部材720及び第3カム部材730に設けられた凹凸部上を移動し、これらの凹凸部の形状に応じて第1カム部材710、第2カム部材720及び第3カム部材730を後方側に移動させる。軸部802及び壁面部803の内側には、円形状の挿通孔805が設けられている。この挿通孔805は、内軸部材50の筒状部501の周面よりも僅かに大径に設けられている。突出片804の先端部には、回転部材40の突出片402に設けられた係合片402aを収容する凹部804aが設けられている。
【0034】
このような構成部品を有する回転型電気部品100を組み立てると、図3に示すように、回転部材40などの構成部材を第1ケース10に収納した状態で前方側から第2ケース20が重ねられると共に、外軸部材80などの構成部材を第2ケース20に収納した状態で前方側から取付部材30が取り付けられる。そして、取付部材30の脚部302の爪部302aが第1ケース10の後面側で折り曲げられることで第1ケース10及び第2ケース20が一体化される。この場合において、外軸部材80の軸部802の一部及び内軸部材50の筒状部501の一部が取付部材30の開口部303から前方側に向けて突出した状態となっている。内軸部材50の筒状部501は、外軸部材80の軸部802よりも前方側に突出している。このように組み立てられた状態において、内軸部材50は、第1ケース10の軸受け部102に回転可能に保持される一方、外軸部材80は、第2ケース20の側壁部203に回転可能に保持されており、それぞれ操作者の回転操作を受け付け可能に構成されている。
【0035】
ここで、実施の形態1に係る回転型電気部品100の第1ケース10に設けられる切換パターン及びコモンパターンの構成について説明する。図4は、実施の形態1に係る回転型電気部品100の第1ケース10の平面図である。なお、図4においては、説明の便宜上、第1ケース10にインサート成形されている切換パターン及びコモンパターンに斜線を付与している。
【0036】
図4に示すように、第1ケース10の収納部103の底面部においては、軸受け部102の周囲に内軸部材50の回転検出用の切換パターン105A、105B及びコモンパターン106が設けられ、一部の側壁部104の内周側に外軸部材80の回転検出用の切換パターン107A、107B及び107C、並びに、コモンパターン108が設けられている。これらの切換パターン105A、105B及びコモンパターン106の一端部、並びに、切換パターン107A、107B及び107C、並びに、コモンパターン108の一端部は、側壁部104の所定位置から外部に導出されている。
【0037】
内軸部材50の回転検出用のコモンパターン106は、軸受け部102の近傍で環状に設けられている。一方、切換パターン105A、105Bは、それぞれコモンパターン106の略半分の長さに対応する円弧形状に設けられている。切換パターン105A、105B及びコモンパターン106は、櫛歯形状に設けられ、切換パターン105A、105Bとコモンパターン106とが対向する領域(パターン形成領域)と、これらのパターンがいずれも配置されない領域(パターン非形成領域)とが交互に配置されている。
【0038】
外軸部材80の回転検出用のコモンパターン108は、概して切換パターン105Bの外周側であって、第1ケース10の略1/3の長さを有する円弧形状に設けられている。切換パターン107A、107B及び107Cは、このコモンパターン108の先端側の略1/2の部分の外周側の領域に配置されている。切換パターン107A、107Bは、当該領域の略1/2の長さを有する円弧形状に設けられ、コモンパターン108の外周側で互いに一定の空間109を挟んで配置されている。切換パターン107Cは、当該領域の略1/2の長さを有する円弧形状に設けられ、切換パターン107A、107Bの外周側でこれらの間の空間109を含む一定領域に配置されている。
【0039】
すなわち、外軸部材80の回転検出用の切換パターン107A、107B及び107C、並びに、コモンパターン108は、空間109の側方側において、コモンパターン108、切換パターン107A(又は107B)及び切換パターン107Cがオーバーラップして配置されている。このようにコモンパターン108、切換パターン107A(又は107B)及び切換パターン107Cにオーバーラップする箇所を設けたのは、外軸部材80の回転に伴う内軸部材50の回転に応じて誤ったコード信号が出力されるのを防止するためである。なお、この誤ったコード信号の出力を防止する処理については後述する。
【0040】
実施の形態1に係る回転型電気部品100においては、切換パターン105A、105B及びコモンパターン106と、内軸部材50の鍔状部502に固定された摺動子904とで内軸部材50の回転検出手段を構成し、切換パターン107A、107B及び107C、並びに、コモンパターン108と、回転部材40に固定された摺動子902とで外軸部材80の回転検出手段を構成していることから、簡単な構成で2種類の回転検出手段を実現することが可能となる。また、内軸部材50の回転検出用の切換パターン105A、105B及びコモンパターン106と、外軸部材80の回転検出用の切換パターン107A、107B及び107C、並びに、コモンパターン108とを同一部材である第1ケース10に設けていることから、インサート成形等でこれらの導電パターンを埋設する場合における成形対象を少なくできるので、回転型電気部品100の製造に要するコストを低減可能となっている。
【0041】
次に、実施の形態1に係る回転型電気部品100が有するクリック部材60、カム部材70及び外軸部材80の構成について説明する。図5は、実施の形態1に係る回転型電気部品100が有するクリック部材60の斜視図である。図6は、実施の形態1に係る回転型電気部品100が有するカム部材70の分解斜視図である。図7(a)及び図7(b)は、それぞれ実施の形態1に係る回転型電気部品100が有するカム部材70を組み合わせた状態の斜視図及び側面図である。図8(a)及び図8(b)は、それぞれ実施の形態1に係る回転型電気部品100が有する外軸部材80を軸部802側及び壁面部803側から示す斜視図である。なお、図7においては、説明の便宜上、第1カム部材710がクリック感触の生起用に選択されて移動した場合について示している。また、以下においては、説明の便宜上、図1〜図3における回転型電気部品100の前方側を上方側とし、同図における回転型電気部品100の後方側を下方側として説明する。
【0042】
図5に示すように、クリック部材60の基部601には、その外周部分から内周側に向けて3つのクリックカム604a〜604cが設けられている。クリックカム604a〜604cの上面の凹凸部は、クリックカム604a、604b及び604cの順に少なくなるように設けられており、例えば、それぞれの山部(又は谷部)の数が72個、18個及び9個に設計されている。壁面部602の上端部には、一定間隔を空けて上方側に突出する複数の当接部602bが設けられている。これらの当接部602bは、先端が幅狭をなした概して台形形状に設けられている。詳細について後述するように、これらの当接部602bは、クリック感触を切り替えるために凹凸部の数が少ないクリックカム604に切り替えられる場合にカム部材70の係合突部が凹凸部の山部に当接して止まる現象(以下、「山止まり現象」という)の発生を防止する機構の一部を構成する。
【0043】
カム部材70において、第2カム部材720は、図6に示すように、第1カム部材710よりも小径の円環形状に設けられ、第3カム部材730は、第2カム部材720よりも小径の円環形状に設けられている。具体的には、第1カム部材710は、クリック部材60のクリックカム604aに対応する径に設けられ、第2カム部材720は、クリックカム604bに対応する径に設けられ、第3カム部材730は、クリックカム604cに対応する径に設けられている。
【0044】
第1カム部材710の上端部には、山部713と谷部714とが交互に配置される凹凸部が設けられている。第1カム部材710においては、6個の山部713(又は谷部714)が並べられている。突出片712は、隣接する2個の山部713のうち、いずれか一方の山部713の下方側に設けられ、全体として突出片712が設けられていない山部713を挟む3個の山部713に対応して設けられている。突出片712の下端部には、その中央に僅かに下方側に突出する係合突部712aが設けられている。この係合突部712aがクリックカム604aの凹凸部を係脱することによりクリック感触が生起されるものとなっている。また、第1カム部材710の外周面の所定位置には、第2ケース20の側壁部203の内壁面に摺接する摺接片715が突出して設けられている。一方、第1カム部材710の内周面の所定位置には、後述する第2カム部材720の係合片727を収容可能な凹部716が設けられている。
【0045】
第2カム部材720の上端部には、谷部723を挟んで水平部分724を含む第1山部725と第2山部726とが交互に配置される凹凸部が設けられている。第2カム部材720においては、3個の第1山部725及び第2山部726が並べられている。突出片722は、第1山部725の水平部分724の右方側端部の下方側に設けられている。突出片712と同様に、突出片722の下端部には、その中央に僅かに下方側に突出する係合突部722aが設けられている。この係合突部722aがクリックカム604bの凹凸部を係脱することによりクリック感触が生起されるものとなっている。第2カム部材720の外周面の所定位置には、第1カム部材710の凹部716に係合する係合片727が突出して設けられている。一方、第2カム部材720の内周面の所定位置には、後述する第3カム部材730の係合片737を収容可能な凹部728が設けられている。
【0046】
第3カム部材730の上端部には、谷部733を挟んで水平部分734を含む第1山部735と第2山部736とが交互に配置される凹凸部が設けられている。第3カム部材730においては、3個の第1山部735及び第2山部736が並べられている。突出片732は、第1山部735の水平部分734の左方側端部の下方側に設けられている。突出片712、722と同様に、突出片732の下端部には、その中央に僅かに下方側に突出する係合突部732aが設けられている。この係合突部732aがクリックカム604cの凹凸部を係脱することによりクリック感触が生起されるものとなっている。第3カム部材730の外周面の所定位置には、第2カム部材720の凹部728に係合する係合片737が突出して設けられている。
【0047】
このような第1カム部材710、第2カム部材720及び第3カム部材730は、第2ケース20の収納部204に組み込まれた状態において、図7(a)に示すように、第1カム部材710の内側に近接して第2カム部材720が配置され、第2カム部材720の内側に近接して第3カム部材730が配置される。第1カム部材710、第2カム部材720及び第3カム部材730は、第2カム部材720の係合片727が第1カム部材710の凹部716に係合し、第3カム部材730の係合片737が第2カム部材720の凹部728に係合することで一定の位置関係を維持するように構成されている。
【0048】
また、第2ケース20の収納部204に組み込まれた状態において、図7(b)に示すように、突出片712、722及び732は、それぞれカム部材70の円周上の異なる位置に配置されている。さらに、突出片712が設けられた山部713は、第2カム部材720、第3カム部材730の谷部723、733に対応する位置に配置されている。同様に、突出片722が設けられた第1山部725の一部は、第1カム部材710、第3カム部材730の谷部714、733に対応する位置に配置され、突出片732が設けられた第1山部735の一部は、第1カム部材710、第2カム部材720の谷部714、723に対応する位置に配置されている。このように外軸部材80の凸部801aにより選択されていないカム部材70の谷部(例えば、第2カム部材720、第3カム部材730の谷部723、733)を、選択されているカム部材の山部(例えば、第1カム部材710の山部713)に対応する位置に配置することにより凸部801aを安定して保持可能に構成されている。
【0049】
外軸部材80においては、図8(a)に示すように、基部801を挟んで上方側に軸部802が設けられる一方、下方側に壁面部803が設けられている。そして、これらの軸部802及び壁面部803を貫通するように挿通孔805が設けられている。図8(b)に示すように、基部801の下面に設けられる凸部801aは、壁面部803の外周部から突出片804の内周部まで径方向に連続して設けられている。このように外軸部材80の径方向に連続して凸部801aを設けることにより、凸部801aとカム部材70の凹凸部とが引っ掛かる事態を抑止でき、カム部材70の円滑な選択を可能としている。これらの凸部801aは、カム部材70の凹凸部上を摺動し、その回転位置に応じて特定のカム部材70を選択的に押し下げるように構成されている。軸部802の周面には、一定間隔でフック部806と位置決め片807とが交互に設けられている。これらのフック部806及び位置決め片807は、不図示の操作つまみ等を固定及び位置決めするために利用される。壁面部803の下端部には、一定間隔で複数の凹部808が形成されている。これらの凹部808は、概して台形形状に設けられている。詳細について後述するように、これら凹部808は、クリック部材60に設けられた当接部602bと共に、山止まり現象の発生を防止する機構の一部を構成する。
【0050】
次に、このような構成を有する回転型電気部品100を組み立てた場合の内部の構成について説明する。図9は、実施の形態1に係る回転型電気部品100の側断面図である。図9においては、内軸部材50の貫通孔503の中心点を通る断面を示している。なお、図9においては、説明の便宜上、第1カム部材710がクリック感触の生起用に選択されて下方側に移動した場合について示している。
【0051】
図9に示すように、回転型電気部品100の内部においては、第1ケース10の収納部103の底面部に回転部材40が配置されると共に、軸受け部102に内軸部材50の筒状部501が回転可能に支持される。この場合、内軸部材50の鍔状部502は、回転部材40の開口部403の内側に配置されている。回転部材40に固定された摺動子902は、収納部103の底面部に設けられた切換パターン107A、107B及び107C、並びに、コモンパターン108に摺接可能な位置に配置される。また、内軸部材50の鍔状部502に設けられた摺動子904は、切換パターン105A、105B及びコモンパターン106に摺接可能な位置に配置される。
【0052】
クリック部材60は、挿通孔603に筒状部501が挿通された状態で第1ケース10の収納部103に収納される。クリック部材60は、内軸部材50の鍔状部502上に載置されたコイルばね903により上方側に付勢された状態で上下方向に移動可能に保持されている。この場合、筒状部501に設けられた係合片501aは、壁面部602に設けられた切り欠き部602aに係合した状態とされ、内軸部材50とクリック部材60とが一体的に回転可能に構成されている。
【0053】
第2ケース20は、回転部材40等を収納部103に収納した第1ケース10の上方側に重ねられる。この場合、内軸部材50の筒状部501及びクリック部材60の壁面部602は、第2ケース20の開口部201から上方側に突出した状態となっている。第1カム部材710、第2カム部材720及び第3カム部材730は、挿通孔711、721及び731に内軸部材50の筒状部501等が挿通された状態で第2ケース20の収納部204に収納される。第1カム部材710、第2カム部材720及び第3カム部材730は、第2ケース20の底面部202に保持されたコイルばね901により上方側に付勢された状態で上下方向に移動可能に保持されている。この場合、突出片712、722及び732は、第2ケース20の底面部202に設けられた貫通部206を貫通可能な位置に配置されている。なお、貫通部206は、突出片712、722、732に対応して複数設けられており、これらの突出片712、722、732の上下方向の移動を案内すると共に、各カム部材710、720、730の周方向の移動を規制している。
【0054】
外軸部材80は、挿通孔805に内軸部材50の筒状部501等が挿通された状態で第2ケース20の収納部204に収納される。この場合、外軸部材80は、基部801の下面を第1カム部材710、第2カム部材720及び第3カム部材730の上方側に対向させた状態で配置されている。また、外軸部材80の突出片804は、回転部材40の突出片402と対応する位置に配置されている。突出片804の凹部804aは、突出片402の係合片402aと係合した状態とされ、外軸部材80と回転部材40とが一体的に回転可能に構成されている。
【0055】
取付部材30は、収納部204に第1カム部材710、第2カム部材720及び第3カム部材730、並びに、外軸部材80を収納した状態の第2ケース20に上方側から取り付けられる。この場合、内軸部材50の筒状部501及び外軸部材80の軸部802は、取付部材30の開口部303から上方側に突出した状態とされる。そして、取付部材30の脚部302の爪部302aが第1ケース10の下面において内側に折り曲げられることにより第2ケース20が第1ケース10に取り付けられ、回転電気部品100が完成する。
【0056】
次に、実施の形態1に係る回転型電気部品100で回転操作を受け付けた場合の動作について説明する。図10〜図21は、実施の形態1に係る回転型電気部品100で回転操作を受け付けた場合の動作について説明するための側面図である。図10、図13、図16及び図19においては、説明の便宜上、第1ケース10、第2ケース20、取付部材30及びコイルばね901を省略している。これに加え、図11、図14、図17及び図20においては、回転部材40及び外軸部材80を省略している。一方、図12、図15、図18及び図21においては、カム部材70を省略している。
【0057】
図10においては、外軸部材80の基部801の下面に設けられた凸部801aが、第1カム部材710における突出片712が設けられた山部713上に当接した状態で配置され、この第1カム部材710が選択されて下方側に移動した状態について示している。この場合、第1カム部材710の突出片712に設けられた係合突部712aは、図11に示すように、クリック部材60のクリックカム604aの谷部に係合した状態となっている。このように係合突部712aがクリックカム604aの谷部に係合した状態で内軸部材50の回転操作が行われると、コイルばね903により上方側に付勢されたクリック部材60のクリックカム604aに対して係合突部712aが係脱することでクリック感触が生起される。
【0058】
なお、このように外軸部材80の凸部801aが、突出片712が設けられた山部713上に配置された状態において、外軸部材80の基部801に設けられた凸部801aは、第2カム部材720及び第3カム部材730の谷部723、733に対応する位置に配置された状態となっている(図11参照)。第2カム部材720及び第3カム部材730は、不図示のコイルばね901により上方側に付勢されていることから、凸部801aは、これらの谷部723、733で保持された状態となり、第1カム部材710の山部713から脱落するのを防止することができるものとなっている。
【0059】
また、クリックカム604aと係脱可能な状態において、係合突部712aは、山部713を介して外軸部材80の凸部801aと対向配置されている。このように係合突部712aと凸部801aとの位置関係を設計することにより、凸部801aにより確実に係合突部712aを押えることができるので、当該係合突部712aとクリックカム604aとの係脱を適切に行わせることができ、良好なクリック感触を生起させることができるものとなっている。
【0060】
さらに、第1カム部材710の下方側への移動により係合突部712aがクリックカム604aと係合した状態においては、図12に示すように、クリック部材60は、コイルばね903の付勢力に抗して僅かに押し下げられた状態となっている。この場合、クリック部材60の壁面部602に設けられた当接部602bは、外軸部材80の壁面部803の下端面から離間した状態となっている。このため、内軸部材50の回転に伴って回転する際、クリック部材60は、外軸部材80と干渉することなく回転することができるものとなっている。
【0061】
図10に示す状態から外軸部材80の軸部802が矢印A方向に回転操作されると、これに伴って基部801に設けられた凸部801aも同一方向に回転する。矢印A方向に回転すると、図13に示すように、凸部801aは、第1カム部材710の上端面を摺動し、山部713から谷部714側に向かって移動する。このように凸部801aが谷部714側に移動すると、図14に示すように、不図示のコイルばね901の付勢力に応じて第1カム部材710が押し上げられる一方、不図示のコイルばね901の付勢力に抗して第2カム部材720が押し下げられる。なお、図13及び図14に示す状態においては、第1カム部材710の突出片712の係合突部712aは、クリックカム604aの谷部から完全に抜け出ておらず、これらの係合が完全に解除されていない状態について示している。
【0062】
このように第1カム部材710の突出片712が上方側に移動すると、図15に示すように、クリック部材60がコイルばね903の付勢力により押し上げられ、その壁面部602に設けられた当接部602bが外軸部材80の壁面部803の下端面に当接する。この場合、当接部602bは、壁面部803に設けられた凹部808とは異なる位置に当接するように構成されている。このように当接部602bが壁面部803の下端面に当接した状態から更に外軸部材80が回転操作されると、当接部602bと壁面部803の下端面との摩擦によりクリック部材60が外軸部材80と同一方向に回転するように構成されている。
【0063】
図13に示す状態から外軸部材80が更に矢印A方向に回転操作されると、図16に示すように、凸部801aが第2カム部材720の山部725に向かう谷部723上を摺動し、不図示のコイルばね901の付勢力に抗して第2カム部材720が押し下げられていく。このとき、突出片722に設けられた係合突部722aは、図17に示すように、クリック部材60のクリックカム604bの谷部に進入していく。すなわち、外軸部材80の回転に伴って第1カム部材710が選択された状態から第2カム部材720が選択される状態に切り替えられていく。
【0064】
このように第2カム部材720が押し下げられていく過程において、クリック部材60は、コイルばね903の付勢力に抗して僅かに押し下げられていく。この場合、クリック部材60の壁面部602に設けられた当接部602bは、図18に示すように、外軸部材80の壁面部803の下端面から下方側に移動して離間した状態となる。図15において説明した外軸部材80に伴うクリック部材60の回転は、当接部602bが壁面部803の下端面から離間した時点で停止される。すなわち、クリック部材60は、いずれのカム部材70も選択されていない状態に限って外軸部材80と共に断続的に回転するように構成されている。
【0065】
そして、図16に示す状態から外軸部材80が更に矢印A方向に回転操作され、基部801に設けられた凸部801aが第2カム部材720の山部725に対応する位置に到達すると、図19に示すように、第2カム部材720が完全に押し下げられる。このとき、突出片722に設けられた係合突部722aは、図20に示すように、クリック部材60のクリックカム604bの谷部に係合した状態とされる。このように係合突部722aがクリックカム604bの谷部に係合した状態で内軸部材50の回転操作が行われると、コイルばね903により上方側に付勢されたクリック部材60のクリックカム604bに対して係合突部722aが係脱することでクリック感触が生起される。この場合、係合突部712aとクリックカム604aとの係脱により生起されるクリック感触よりも大きい時間間隔のクリック感触が生起されることとなる。
【0066】
なお、このように係合突部722aがクリック部材60のクリックカム604bの谷部に係合した状態においても、クリック部材60の壁面部602に設けられた当接部602bは、図21に示すように、外軸部材80の壁面部803の下端面から離間した状態を維持している。この場合、係合突部722aがクリックカム604bの谷部に係合していることから、当該谷部に係合する前の状態(図18に示す状態)と比べて、当接部602bと壁面部803の下端面との距離が短くなっている。
【0067】
また、外軸部材80の凸部801aが、突出片722が設けられた山部725上に当接して配置された状態において、外軸部材80の基部801に設けられた凸部801aは、第1カム部材710及び第3カム部材730の谷部714、733に対応する位置に配置された状態となっている(図20参照)。これにより、第1カム部材710が選択されている場合と同様に、凸部801aは、これらの谷部714、733で保持された状態となり、第2カム部材720の山部725から脱落するのを防止することができるものとなっている。
【0068】
このように外軸部材80の回転に応じて凸部801aがカム部材70の上端部を摺動していき、第1カム部材710、第2カム部材720及び第3カム部材730が選択的に押し下げられる。そして、係合突部712a、722a及び732aがクリック部材60に係合した状態において、内軸部材50が回転操作されると、これに伴ってクリック部材60が回転し、クリック感触を生起させることができるものとなっている。ここでは、説明を省略しているが、第3カム部材730が選択された状態において、内軸部材50が回転操作された場合には、第2カム部材720が選択された場合に生起されるクリック感触よりも大きい時間間隔のクリック感触が生起される。すなわち、実施の形態1に係る回転型電気部品100においては、外軸部材80の回転位置に応じて3つのクリック感触を生起することができるものとなっている。
【0069】
そして、このように外軸部材80の回転に応じて選択するカム部材70を切り替える場合において、クリック部材60の凹凸部が多いクリックカム(例えば、クリックカム604b)から凹凸部が少ないクリックカム(例えば、クリックカム604c)に切り替える際には、上述した山止まり現象が発生し得る。実施の形態1に係る回転型電気部品100においては、この山止まり現象の発生を防止するため、外軸部材80の所定の操作タイミングでクリック部材60の壁面部602に設けた当接部602bを壁面部803に設けた凹部808に収容し、外軸部材80の回転に伴うクリック部材60の回転を規制する。
【0070】
クリックカム604a、604b、604cの凹凸部の配置及び係合突部712a、722a、732aの位置が定まっていることから、山止まり現象は、外軸部材80の回転操作に応じて発生するタイミングが事前に分かっている。このため、実施の形態1に係る回転型電気部品100においては、いずれのカム部材70を選択されていない状態において、外軸部材80の回転に伴ってクリック部材60を回転させる一方、山止まり現象が発生するタイミングではクリック部材60の回転を規制することで山止まり現象の発生を防止している。以下、山止まり現象が防止された回転型電気部品100の状態について説明する。
【0071】
図22は、実施の形態1に係る回転型電気部品100において、外軸部材80に伴ってクリック部材60が回転するのを規制した状態の側面図である。図22においては、図21と同様に、第1ケース10、第2ケース20、取付部材30及びカム部材70、並びに、コイルばね901を省略している。図22においては、クリック部材60の壁面部602に設けられた当接部602bが、外軸部材80の壁面部803に設けた凹部808に収容された状態について示している。
【0072】
仮に、外軸部材80の壁面部803に凹部808が設けられていない状態においては、外軸部材80の回転に伴ってクリック部材60が回転し、山止まり現象が発生する。実施の形態1に係る回転型電気部品100においては、このようにクリック部材60が外軸部材80と共に回転すると山止まり現象が発生する箇所に凹部808を設けている。外軸部材80を回転操作する過程において、凹部808に当接部602bを収容することにより、クリック部材60の回転が規制されることとなり、山止まり現象の発生を効果的に防止できるものとなっている。
【0073】
なお、実施の形態1に係る回転型電気部品100においては、山止まり現象の発生を防止するために外軸部材80の回転に伴ってクリック部材60を回転させていることから、このクリック部材60の回転に応じて内軸部材50も僅かに回転することとなる。外軸部材80の回転操作に応じて内軸部材50が回転する場合には、内軸部材50に固定された摺動子904の切換パターン105A、105B及びコモンパターン106に対する摺接位置が変更され、意図しないコード信号が出力される可能性がある。このため、実施の形態1に係る回転型電気部品100においては、外軸部材80の回転操作の途中における内軸部材50の位置に応じたコード信号を無効とする(キャンセルする)。
【0074】
具体的には、外軸部材80の回転検出用の切換パターン107A、107B及び107C、並びに、コモンパターン108にオーバーラップする箇所を設け、当該箇所に摺動子902が配置されることで、外軸部材80から2つのコード信号が出力される場合には、内軸部材50からのコード信号を無効とする一方、外軸部材80から単一のコード信号が出力された場合に内軸部材50からのコード信号を有効とする。これにより、外軸部材80が回転操作されている間、すなわち、外軸部材80の回転操作に応じて内軸部材50が回転している間は、内軸部材50からのコード信号が無効とされ、外軸部材80の回転操作が完了した後に内軸部材50からのコード信号が有効とされる。
【0075】
図23(a)及び(b)は、実施の形態1に係る回転型電気部品100の回転部材40に固定される摺動子902と、第1ケース10に設けられた切換パターン107A、107B及び107C、並びに、コモンパターン108との関係を説明するための図である。図23(a)においては、第1カム部材710が選択された場合の摺動子902の位置を示し、同図(b)においては、第2カム部材720が選択された場合の摺動子902の位置を示している。
【0076】
ここで、摺動子902は、その先端部でコモンパターン108に摺接可能な第1摺接片902aと、その先端部で切換パターン107A、107Bに摺接可能な第2摺接片902bと、その先端部で切換パターン107Cに摺接可能な第3摺接片902cとを有している。外軸部材80(回転部材40)の回転に応じて第1摺接片902a、第2摺接片902b及び第3摺接片902cの摺接状態が切り替えられることにより、外軸部材80の回転位置に応じたコード信号が出力されるものとなっている。
【0077】
第1カム部材710が選択され、摺動子902が図23(a)に示す位置に配置されている場合には、第1摺接片902aがコモンパターン108に摺接し、第3摺接片902cが切換パターン107Cに摺接した状態となっている。第2摺接片902bは、空間109に配置され、切換パターン107A、107Bのいずれにも摺接していない状態である。このため、摺動子902を介して切換パターン107Cとコモンパターン108とが導通状態とされ、外軸部材80から1つのコード信号が出力される。一方、第2カム部材720が選択され、摺動子902が図23(b)に示す位置に配置されている場合には、第1摺接片902aがコモンパターン108に摺接し、第2摺接片902bが切換パターン107Bに摺接した状態となっている。第3摺接片902cは、切換パターン107Cの左方側に配置され、切換パターン107Cに摺接していない状態である。このため、摺動子902を介して切換パターン107Bとコモンパターン108とが導通状態とされ、外軸部材80から1つのコード信号が出力される。実施の形態1に係る回転型電気部品100においては、このように外軸部材80から1つのコード信号が出力される場合に内軸部材50からのコード信号を有効とする。すなわち、内軸部材50の回転位置に応じて出力されるコード信号が有効に処理されることとなる。
【0078】
これに対し、例えば、第1カム部材710が選択された状態から第2カム部材720が選択される状態に切り替えられる場合には、摺動子902は、図23(a)に示す位置と図23(b)に示す位置との間に配置される。この場合、摺動子902においては、第1摺接片902aがコモンパターン108に摺接し、第2摺接片902bが切換パターン107Bに摺接し、第3摺接片902cが切換パターン107Cに摺接した状態となっている。このため、摺動子902を介して切換パターン107Cとコモンパターン108とが導通状態とされると共に、切換パターン107Bとコモンパターン108とが導通状態とされ、外軸部材80から2つのコード信号が出力される。実施の形態1に係る回転型電気部品100においては、このように外軸部材80から2つのコード信号が出力される場合に内軸部材50からのコード信号を無効とする。すなわち、内軸部材50の回転位置に応じて出力されるコード信号が無効とされ、回転型電気部品100が搭載される装置本体にコード信号が出力されることはない。
【0079】
このように実施の形態1に係る回転型電気部品100においては、クリック部材60に設けられた複数のクリックカム604a〜604cに対応して係脱する係合突部712a、722a及び732aをそれぞれ設け、外軸部材80の回転位置に応じて係脱するクリックカム604と係合突部712a、722a及び732aとの組を選択可能としている。これにより、内軸部材50の回転操作時のクリック感触をそれぞれ独立したクリックカム604と係合突部712a、722a及び732aとの組により生起することができるので、良好な複数のクリック感触を得ることが可能となる。また、複数のクリックカム604に対応して係脱する係合突部712a、722a及び732aをそれぞれ設けたことから、共通する係合突部を利用する場合のように係合突部が係脱する係合部を切り替える必要がないので、円滑に複数のクリック感触を変更することが可能となる。
【0080】
また、実施の形態1に係る回転型電気部品100においては、係合突部712a、722a及び732aを、第1カム部材710、第2カム部材720及び第3カム部材730にそれぞれ複数個設けている。これにより、第1カム部材710、第2カム部材720及び第3カム部材730をクリック部材60に対して傾き難くできるので、安定したクリック感触を生起することが可能となる。また、複数の係合突部712a、722a及び732aを、同一の係合部材(第1カム部材710、第2カム部材720又は第3カム部材730)に設けたことから、係合突部712a、722a及び732a間の位置精度を高めることが可能となる。
【0081】
さらに、実施の形態1に係る回転型電気部品100において、内軸部材50は、筒状部501とその外周に鍔状部502を有する筒状に形成され、第1ケース10の筒状をした軸受け部102に回転可能に保持される一方、クリック部材60は、中央に挿通孔603が形成された環状をなし、挿通孔603が内軸部材50の筒状部501に挿通されて軸線方向には移動可能で周方向には回転が規制された状態で保持されている。そして、鍔状部502とクリック部材60との間には、クリック部材60を係合突部712a、722a及び732a側(カム部材70側)へ付勢するコイルばね903が設けられている。このような構成とすることにより、回転型電気部品100を中空状に形成することができるので、部品内部に光源や他のスイッチ等の部品を配置することが可能となる。また、クリックカム604a〜604cと係合突部712a、722a及び732aとを係脱させるための付勢力を、鍔状部502とクリック部材60との間に設けたコイルばね903により供給することから、コイルばねで付勢された球体により係合突部を構成するような場合に比べて、部品を組み立てる際の作業効率を向上することが可能となる。
【0082】
さらに、実施の形態1に係る回転型電気部品100において、第1カム部材710、第2カム部材720及び第3カム部材730に設けられた凹凸部は、周方向の異なる位置に山部713、第1山部725及び第1山部735を有し、外軸部材80の基部801に設けられた凸部801aがいずれかの山部713、第1山部725及び第1山部735上に位置することにより、第1カム部材710、第2カム部材720及び第3カム部材730が選択的に移動され、当該選択されたカム部材70の係合突部が対応するクリックカム604と係脱可能となっている。これにより、外軸部材80の回転に応じて第1カム部材710、第2カム部材720及び第3カム部材730を選択的に軸線方向に移動させることができるので、クリック感触を生起させる係合突部712a、722a及び732aとクリックカム604a〜604cとの組を簡単に切り替えることが可能となる。
【0083】
さらに、実施の形態1に係る回転型電気部品100においては、係合突部712a、722a及び732aが係脱するクリックカム604a〜604cにおいて、凹凸部の数が多いものから少ないものに切り替えられる場合に、切り替え先のクリックカム604の山部に係合突部712a、722a及び732aの頂部が当接して止まる山止まり現象を防止する機構を設けたことから、外軸部材80の回転操作途中で山止まり現象が発生する事態を防止できるので、クリック感触を生起する係合突部と係合部との組を確実に切り替えることが可能となる。
【0084】
さらに、実施の形態1に係る回転型電気部品100においては、クリック部材60の一部に外軸部材80に当接し、外軸部材80の回転に伴ってクリック部材60を回転させる当接部602bを設ける一方、外軸部材80の一部にクリック部材60の当接部602bを収容して当該当接部602bの当接によるクリック部材60の回転を制限する凹部808を設け、この凹部808を外軸部材80の回転位置に応じて山止まり現象が発生し得る箇所に配置していることから、山止まり現象が発生する虞があるタイミングで外軸部材80の回転に伴うクリック部材60の回転を制限することができるので、効果的に山止まり現象を防止することが可能となる。
【0085】
(実施の形態2)
実施の形態2に係る回転型電気部品においては、主に山止まり現象を防止する機構(以下、「山止まり防止機構」という)が異なる点において、実施の形態1に係る回転型電気部品100と相違する。また、カム部材70及び外軸部材80の構成が異なる点においても、実施の形態1に係る回転型電気部品100と相違する。以下、実施の形態2に係る回転型電気部品の構成について、実施の形態1に係る回転型電気部品100との相違点を中心に説明する。
【0086】
図24は、本発明の実施の形態2に係る回転型電気部品を前方側から示す分解斜視図である。図25は、実施の形態2に係る回転型電気部品を後方側から示す分解斜視図である。図24及び図25において、実施の形態1に係る回転型電気部品100と実質的に共通する構成部品については、同一の符号を付与してその説明を省略する。なお、以下においては、説明の便宜上、図24に示す左下方側を「回転型電気部品の前方側」と呼び、同図に示す右上方側を「回転型電気部品の後方側」と呼ぶものとする。
【0087】
図24及び図25に示すように、実施の形態2に係る回転型電気部品200においては、山止まり防止機構を含む構成部品である回転部材40A及びクリック部材60Aの構成において、実施の形態1に係る回転型電気部品100と相違する。具体的には、回転部材40Aは、その環状部401の前面に僅かに突出する突起部404が設けられている点、並びに、環状部401に一対の突出片402を備える点で実施の形態1に係る回転部材40と相違する。一方、クリック部材60Aは、壁面部602に当接部602bが設けられていない点、並びに、基部601の後面に僅かに突出する当接部605が設けられている点で実施の形態1に係るクリック部材60と相違する。
【0088】
また、実施の形態2に係る回転型電気部品200においては、カム部材70Aがその前面に設けられた凹凸部の形状が異なる第1カム部材710A、第2カム部材720A及び第3カム部材730Aを有する点で実施の形態1に係るカム部材70と相違する。さらに、実施の形態2に係る回転型電気部品200においては、外軸部材80Aがその後面に設けられる凸部801aの位置が異なる点、基部801に一対の突出片804を備える点、並びに、壁面部803に凹部808が設けられていない点で実施の形態1に係る外軸部材80と相違する。
【0089】
なお、実施の形態2に係る回転型電気部品200においては、クリック部材60Aを前方側に付勢する板ばね905をコイルばね903の代わりに備え、その板ばね905がクリック部材60Aに固定される点、並びに、取付部材30が4本の脚部302を備えると共に、一対の位置決め片304を備える点などにおいて、実施の形態1に係る回転型電気部品100と相違する点を有するが、実質的な相違点ではない。
【0090】
ここで、実施の形態2に係る回転型電気部品200が有する回転部材40A、クリック部材60A、カム部材70A及び外軸部材80Aの構成について説明する。図26は、実施の形態2に係る回転型電気部品200が有する回転部材40Aの斜視図である。図27は、実施の形態2に係る回転型電気部品200が有するクリック部材60Aの斜視図である。図28は、実施の形態2に係る回転型電気部品200が有するカム部材70Aの分解斜視図である。図29(a)及び図29(b)は、それぞれ実施の形態2に係る回転型電気部品200が有するカム部材70Aを組み合わせた状態の斜視図及び側面図である。図30(a)及び図30(b)は、それぞれ実施の形態2に係る回転型電気部品200が有する外軸部材80Aを軸部802側及び壁面部803側から示す斜視図である。なお、図29においては、説明の便宜上、第2カム部材720Aがクリック感触の生起用に選択されて移動した場合について示している。また、以下においては、説明の便宜上、図24及び図25における回転型電気部品200の前方側を上方側とし、同図における回転型電気部品200の後方側を下方側として説明する。
【0091】
図26に示すように、回転部材40Aの環状部401には、上方側に突出する複数の突起部404が等間隔に設けられている。これらの突起部404は、概して三角形状を有しており、後述するクリック部材60Aの当接部605と共に山止まり防止機構の一部を構成する。
【0092】
図27(a)に示すように、クリック部材60Aの基部601には、その外周部分から内周側に向けて3つのクリックカム604d〜604fが設けられている。クリックカム604d〜604fの上面の凹凸部は、中央に配置されたクリックカム604eが最も多く、外周側に配置されたクリックカム604dが次に多く、内周側に配置されたクリックカム604fが最も少なく設けられており、例えば、それぞれの山部(又は谷部)の数が72個、18個及び9個に設計されている。また、図27(b)に示すように、基部601の下面には、その外縁部に下方側に突出する複数の当接部605が等間隔に設けられている。これらの当接部605は、概して三角形状を有しており、回転部材40Aの突起部404と共に山止まり防止機構の一部を構成する。
【0093】
図28に示すように、カム部材70Aにおいて、第2カム部材720Aは、第1カム部材710Aよりも小径の円環形状に設けられ、第3カム部材730Aは、第2カム部材720Aよりも小径の円環形状に設けられている。具体的には、第1カム部材710Aは、クリック部材60Aのクリックカム604dに対応する径に設けられ、第2カム部材720Aは、クリックカム604eに対応する径に設けられ、第3カム部材730Aは、クリックカム604fに対応する径に設けられている。
【0094】
第1カム部材710Aの上端部には、山部717と谷部718とが交互に配置される凹凸部が設けられている。第1カム部材710Aにおいては、3個の山部717(又は谷部718)が並べられている。山部717は、凹部717aを挟んで配置される円弧形状部717b、717cと、この円弧形状部717cの左方側(上面視して時計回り方向側)に配置される水平部717dとを有している。突出片712は、凹部717aに対応する位置において山部717の下方側に設けられている。
【0095】
第2カム部材720Aの上端部には、谷部729aを挟んで第1山部729bと第2山部729cとが交互に配置される凹凸部が設けられている。第1山部729bは、概して三角形状を有しており、第2山部729cは、第1山部729bと同程度の高さに配置される水平面を有している。突出片722は、第1山部729bの下方側に設けられている。突出片722の下端部には、下方側に突出する複数(本実施の形態では3個)の係合突部722bが設けられている(図29(b)参照)。これらの係合突部722bがクリックカム604eの凹凸部を係脱することによりクリック感触が生起されるものとなっている。
【0096】
第3カム部材730Aの上端部には、山部738と谷部739とが交互に配置される凹凸部が設けられている。第3カム部材730Aにおいては、3個の山部738(又は谷部739)が並べられている。山部738は、凹部738aを挟んで配置される円弧形状部738b、738cと、この円弧形状部738bの右方側に配置される水平部738dとを有している。突出片732は、凹部738aに対応する位置において山部738の下方側に設けられている。
【0097】
このような第1カム部材710A、第2カム部材720A及び第3カム部材730Aは、第2ケース20の収納部204に組み込まれた状態において、図29(a)に示すように、第1カム部材710Aの内側に近接して第2カム部材720Aが配置され、第2カム部材720Aの内側に近接して第3カム部材730Aが配置される。突出片712、722及び732は、それぞれカム部材70Aの円周上の異なる位置に配置されている。また、これらの突出片712、722及び732が設けられる山部717、729b、738も、それぞれカム部材70Aの円周上の異なる位置に配置されている。
【0098】
外軸部材80Aにおいては、図30(a)に示すように、基部801の対向する位置に一対の突出片804が設けられている。基部801の下面には、半円柱形状を有する3つの凸部801aが設けられている。ある凸部801aは、一方の突出片804に対応する位置に設けられ、残りの2つは、その凸部801aから等間隔になる位置(すなわち、120度離間した位置)に設けられている。これらの凸部801aは、壁面部803の外周部から基部801の外縁部まで連続して設けられている。
【0099】
次に、このような構成を有する回転型電気部品200を組み立てた場合の内部の構成について説明する。図31は、実施の形態2に係る回転型電気部品200の側断面図である。図31においては、内軸部材50の貫通孔503の中心点を通る断面を示している。なお、図31においては、説明の便宜上、第2カム部材720Aがクリック感触の生起用に選択されて下方側に移動した場合について示している。
【0100】
図31に示すように、回転型電気部品200の内部においては、第1ケース10の収納部103の底面部に回転部材40Aが配置されると共に、軸受け部102に内軸部材50の筒状部501が回転可能に支持される。この場合、内軸部材50の鍔状部502は、回転部材40Aの開口部403の内側に配置されている。回転部材40Aに固定された摺動子902は、収納部103の底面部に設けられた切換パターン107A、107B及び107C、並びに、コモンパターン108に摺接可能な位置に配置される。また、内軸部材50の鍔状部502に設けられた摺動子904は、切換パターン105A、105B及びコモンパターン106に摺接可能な位置に配置される。
【0101】
クリック部材60Aは、挿通孔603に筒状部501が挿通された状態で第1ケース10の収納部103に収納される。クリック部材60Aは、その下面に固定された板ばね905により上方側に付勢された状態で上下方向に移動可能に保持されている。この場合、筒状部501に設けられた係合片501aは、壁面部602に設けられた切り欠き部602aに係合した状態とされ、内軸部材50とクリック部材60Aとが一体的に回転可能に構成されている。
【0102】
第2ケース20は、回転部材40A等を収納部103に収納した第1ケース10の上方側に重ねられる。この場合、内軸部材50の筒状部501及びクリック部材60Aの壁面部602は、第2ケース20の開口部201から上方側に突出した状態となっている。第1カム部材710A、第2カム部材720A及び第3カム部材730Aは、挿通孔711、721及び731に内軸部材50の筒状部501等が挿通された状態で第2ケース20の収納部204に収納される。第1カム部材710A、第2カム部材720A及び第3カム部材730Aは、第2ケース20の底面部202に保持されたコイルばね901により上方側に付勢された状態で上下方向に移動可能に保持されている。この場合、突出片712、722及び732は、第2ケース20の底面部202に設けられた貫通部206を貫通可能な位置に配置されている。
【0103】
外軸部材80Aは、挿通孔805に内軸部材50の筒状部501等が挿通された状態で第2ケース20の収納部204に収納される。この場合、外軸部材80Aは、基部801の下面を第1カム部材710A、第2カム部材720A及び第3カム部材730Aの上方側に対向させた状態で配置されている。また、外軸部材80Aの突出片804は、回転部材40Aの突出片402と対応する位置に配置されている。突出片804の凹部804aは、突出片402の係合片402aと係合した状態とされ、外軸部材80Aと回転部材40Aとが一体的に回転可能に構成されている。
【0104】
取付部材30は、収納部204に第1カム部材710A、第2カム部材720A及び第3カム部材730A、並びに、外軸部材80Aを収納した状態の第2ケース20に上方側から取り付けられる。この場合、内軸部材50の筒状部501及び外軸部材80Aの軸部802は、取付部材30の開口部303から上方側に突出した状態とされる。そして、取付部材30の脚部302の爪部302aが第1ケース10の下面において内側に折り曲げられることにより第2ケース20が第1ケース10に取り付けられ、回転電気部品200が完成する。
【0105】
次に、実施の形態2に係る回転型電気部品200で回転操作を受け付けた場合の動作について説明する。図32〜図36は、実施の形態2に係る回転型電気部品200で回転操作を受け付けた場合の動作について説明するための側面図である。図32〜図36においては、説明の便宜上、第1ケース10、第2ケース20、取付部材30及びコイルばね901を省略している。なお、実施の形態2に係る回転型電気部品200で回転操作を受け付けた場合の動作については、原則として実施の形態1に係る回転型電気部品100と共通するが、山止まり現象を解消する際の動作において相違する。このため、以下においては、この山止まり現象を解消する際の動作を中心に説明するものとする。
【0106】
図32においては、外軸部材80Aの基部801の下面に設けられた凸部801aが、第2カム部材720Aにおける山部729b上に配置され、この第2カム部材720Aが選択されて下方側に移動した状態について示している。この場合、第2カム部材720Aの突出片722に設けられた係合突部722bは、クリック部材60Aのクリックカム604eの谷部に係合した状態となっている。このように係合突部722bがクリックカム604eの谷部に係合した状態で内軸部材50の回転操作が行われると、鍔状部502に当接(弾接)している板ばね905により上方側に付勢されたクリック部材60Aのクリックカム604eに対して係合突部722bが係脱することでクリック感触が生起される。
【0107】
なお、このように外軸部材80Aの凸部801aが、山部729b上に配置された状態において、外軸部材80Aの基部801に設けられた凸部801aは、第1カム部材710Aの山部717の円弧形状部717bと、第3カム部材730Aの山部738の円弧形状部738cとの間に配置された状態となっている。第1カム部材710A及び第3カム部材730Aは、不図示のコイルばね901により上方側に付勢されていることから、凸部801aは、円弧形状部717bと円弧形状部738cとの間で保持された状態となり、第2カム部材720Aの山部729bから脱落するのを防止することができるものとなっている。
【0108】
図32に示す状態から外軸部材80Aの軸部802が矢印A方向に回転操作されると、これに伴って基部801に設けられた凸部801aも同一方向に回転する。矢印A方向に回転すると、凸部801aは、第2カム部材720Aの上端面を摺動し、山部729bから谷部729a側に向かって移動する。このように凸部801aが谷部729a側に移動すると、図33に示すように、不図示のコイルばね901の付勢力に応じて第2カム部材720Aが押し上げられる一方、不図示のコイルばね901の付勢力に抗して第1カム部材710Aが押し下げられる。
【0109】
なお、図33においては、凸部801aが第1カム部材710Aの山部717の円弧形状部717b上に配置された場合について示している。このとき、第1カム部材710Aの突出片712においては、カムクリック604dの山部に当接して止まった状態となっている(すなわち、山止まり現象が発生している)。このように山止まり現象が発生した場合、クリック部材60Aは、板ばね905の付勢力に抗して押し下げられている。クリック部材60Aに設けられた当接部605は、回転部材40Aに設けられた突起部404に当接可能な位置に配置された状態となっている。
【0110】
図33に示す状態から外軸部材80Aの軸部802が矢印A方向に更に回転操作されると、突出片804及び突出片402を介して連結された回転部材40Aも同一方向に回転する。矢印A方向に回転すると、回転部材40Aに設けられた突起部404は、図34に示すように、クリック部材60Aに設けられた当接部605に当接する。これにより、クリック部材60Aが同一方向に回転駆動される。図34においては、このように回転部材40Aに設けられた突起部404が、クリック部材60Aに設けられた当接部605に当接し、クリック部材60Aが回転する直前の状態について示している。
【0111】
図34に示す状態から外軸部材80Aの軸部802が矢印A方向に更に回転操作されると、回転部材40Aに設けられた突起部404によって、当接部605を介してクリック部材60Aが同一方向に回転駆動される。これにより、第1カム部材710Aの突出片712が当接していたクリックカム604dの山部が同一方向に移動されることとなり、図35に示すように、突出片712における山止まり現象が解消される。図35においては、このように回転部材40Aに設けられた突起部404が、クリック部材60Aを回転させ、山止まり現象が解消された状態について示している。なお、山止まり現象が解消されると、クリック部材60Aは、板ばね905によって上方側へ付勢されていることから、クリックカム604d(谷部側へ向かう斜面)が第1カム部材710Aの突出片712によって案内されながら、クリック部材60Aは上方側へ移動していく。
【0112】
図35に示す状態から外軸部材80Aの軸部802が矢印A方向に更に回転操作されると、基部801に設けられた凸部801aが第1カム部材710Aの上端面を摺動し、円弧形状部717bから凹部717a側に向かって移動する。このように凸部801aが凹部717a側に移動すると、図36に示すように、不図示のコイルばね901の付勢力に応じて第1カム部材710Aが押し上げられ、凸部801aが凹部717aに保持された状態となる。この場合、第1カム部材710Aの突出片712の係合突部712aは、クリックカム604dの谷部に係合した状態となる。このように係合突部712aがクリックカム604dの谷部に係合した状態で内軸部材50の回転操作が行われると、板ばね905により上方側に付勢されたクリック部材60Aのクリックカム604dに対して係合突部712aが係脱することでクリック感触が生起される。この場合、係合突部722bとクリックカム604eとの係脱により生起されるクリック感触よりも大きい時間間隔のクリック感触が生起されることとなる。
【0113】
なお、クリックカム604dと係合状態とされる場合、回転型電気部品200においては、外軸部材80Aの凸部801aを、第1カム部材710Aの凹部717aに収容するようにしていることから、当該凸部801aを安定的に保持すると共に、外軸部材80Aの回転操作時におけるクリック感触を生起させることができるものとなっている。
【0114】
このように実施の形態2に係る回転型電気部品200においても、クリック部材60Aに設けられた複数のクリックカム604d〜604fに対応して係脱する係合突部712a、722b及び732aをそれぞれ設け、外軸部材80Aの回転位置に応じて係脱するクリックカム604と係合突部712a、722b及び732aとの組を選択可能としている。これにより、内軸部材50の回転操作時のクリック感触をそれぞれ独立したクリックカム604と係合突部712a、722b及び732aとの組により生起することができるので、良好な複数のクリック感触を得ることが可能となる。また、複数のクリックカム604に対応して係脱する係合突部712a、722b及び732aをそれぞれ設けたことから、共通する係合突部を利用する場合のように係合突部が係脱する係合部を切り替える必要がないので、円滑に複数のクリック感触を変更することが可能となる。
【0115】
また、実施の形態2に係る回転型電気部品200においては、回転部材40Aの一部にクリック部材60Aの当接部605と当接し、外軸部材80Aの回転に伴ってクリック部材60Aを回転させる突起部404を設ける一方、クリック部材60Aの一部に突起部404と当接する当接部605を設け、外軸部材80Aの回転位置に応じて山止まり現象が発生し得る箇所に突起部404及び当接部605を配置したことから、山止まり現象が発生する虞があるタイミングでクリック部材60Aを回転させることができるので、効果的に山止まり現象を防止することが可能となる。
【0116】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0117】
例えば、上記実施の形態においては、回転型電気部品100、200において、交互に形成された山部と谷部からなる凹凸部の数が異なる複数のクリックカム604が設けられたクリック部材60、60Aを備える場合について説明しているが、クリック部材60、60Aの構成についてはこれに限定されるものではない。例えば、交互に形成された山部と谷部からなる凹凸部の数が同一であって、その凹凸部の形状が異なる構成や、凹凸部の数及び形状が異なる構成を有するようにしても良い。これらのようにクリック部材60、60Aを構成する場合においても、上記実施の形態と同様の効果を得ることが可能である。
【0118】
また、上記実施の形態においては、回転型電気部品100、200において、3つのカム部材70(第1カム部材710(710A)、第2カム部材720(720A)及び第3カム部材730(730A))を備える場合について説明している。しかしながら、カム部材70の数については、これに限定されるものではなく、2つ以上の任意の数のカム部材70を備えることが可能である。
【符号の説明】
【0119】
100、200 回転型電気部品
10 第1ケース
101 貫通孔
102 軸受け部
103 収納部
104 側壁部
20 第2ケース
201 開口部
202 底面部
203 側壁部
204 収納部
205 軸部
206 貫通部
30 取付部材
301 上板部
302 脚部
303 開口部
40、40A 回転部材
401 環状部
402 突出片
403 開口部
404 突起部
50 内軸部材
501 筒状部
502 鍔状部
502a 凹部
503 貫通孔
60、60A クリック部材
601 基部
602 壁面部
602a 切り欠き部
602b 当接部
603 挿通孔
604、604a〜604f クリックカム
605 当接部
70、70A カム部材
710、710A 第1カム部材
720、720A 第2カム部材
730、730A 第3カム部材
711、721、731 挿通孔
712、722、732 突出片
712a、722a、722b、732a 係合突部
713 山部
714、723、733 谷部
715 摺接片
716 凹部
717 山部
717a 凹部
717b、717c 円弧形状部
718 谷部
724 水平部分
725 第1山部
726 第2山部
727 係合片
728 凹部
729a 谷部
729b 第1山部
729c 第2山部
734 水平部分
735 第1山部
736 第2山部
737 係合片
738 山部
738a 凹部
738b、738c 円弧形状部
739 谷部
80、80A 外軸部材
801 基部
801a 凸部
802 軸部
803 壁面部
804 突出片
804a 凹部
805 挿通孔
806 フック部
807 位置決め片
808 凹部
901、903 コイルばね
902、904 摺動子
905 板ばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、同軸上に回転可能に保持された内軸部材及び外軸部材と、交互に形成された山部と谷部からなる凹凸部の数及び形状の少なくとも一方が異なる環状の複数の係合部が同心円状に設けられ、前記内軸部材と一体的に回転すると共に軸線方向に付勢されたクリック部材と、前記内軸部材の回転に伴って前記係合部と係脱する複数の係合突部とを備え、前記係合突部をそれぞれの前記係合部に対応して設け、前記外軸部材の回転位置に応じて係脱する前記係合部と前記係合突部との組を選択可能としたことを特徴とする回転型電気部品。
【請求項2】
前記複数の係合突部に第1係合突部と第2係合突部とを含み、前記第1係合突部及び第2係合突部は、それぞれ径の異なる環状をなした第1係合部材及び第2係合部材にそれぞれ複数個設けられていることを特徴とする請求項1記載の回転型電気部品。
【請求項3】
前記複数の係合突部に第1係合突部と第2係合突部とを含み、前記第1係合突部及び第2係合突部は、それぞれ径の異なる環状をなした第1係合部材及び第2係合部材に設けられ、前記内軸部材は、筒状部とその外周に鍔状部を有する筒状に形成され、前記ハウジングの筒状をした軸受け部に回転可能に保持される一方、前記クリック部材は、中央に貫通孔が形成された環状をなし、前記貫通孔が前記内軸部材の筒状部に挿通されて軸線方向には移動可能で周方向には回転が規制された状態で保持されており、前記鍔状部と前記クリック部材との間に、前記クリック部材を前記係合突部側へ付勢する付勢部材が設けられていることを特徴とする請求項1記載の回転型電気部品。
【請求項4】
前記第1係合部材及び第2係合部材には、前記係合突部の突出方向と反対側の端部にカム部が設けられ、当該第1係合部材及び第2係合部材のそれぞれのカム部は、周方向の異なる位置に突出部を有し、前記外軸部材には、前記カム部上を摺動する凸部が設けられ、前記凸部が前記第1係合部材及び第2係合部材のいずれかの前記突出部上に位置することにより、いずれか一方の前記係合部材が選択的に移動され、当該選択された前記係合部材の前記係合突部が対応する前記係合部と係脱可能になることを特徴とする請求項3記載の回転型電気部品。
【請求項5】
前記外軸部材と前記クリック部材との間に、前記ハウジングの一部を構成するケースを設け、このケースに、前記第1係合突部及び第2係合突部を軸線方向に移動可能に挿通させる孔を形成すると共に、当該ケースの底壁上に前記第1係合部材及び第2係合部材を前記係合突部の突出方向と反対側に付勢するばねを配設したことを特徴とする請求項4記載の回転型電気部品。
【請求項6】
選択された前記係合部材の前記係合突部は、前記第1係合部材及び第2係合部材の一方に設けられた前記突出部を介して前記外軸部材の凸部と対向配置されることを特徴とする請求項4又は請求項5記載の回転型電気部品。
【請求項7】
前記外軸部材の凸部は、当該外軸部材の径方向に連続して延設されることを特徴とする請求項4から請求項6のいずれかに記載の回転型電気部品。
【請求項8】
前記外軸部材の凸部が前記第1係合部材及び第2係合部材のいずれか一方の前記突出部上に配置される際、前記凸部は、選択されていない他方の前記係合部材の前記カム部に形成された谷部に配置されることを特徴とする請求項7記載の回転型電気部品。
【請求項9】
前記複数の係合突部に更に第3係合突部を含み、当該第3係合突部は、前記第1係合部材及び第2係合部材と径の異なる第3係合部材に設けられ、当該第3係合部材は、前記係合突部の突出方向と反対側の端部にカム部が設けられ、当該第1係合部材、第2係合部材及び第3係合部材のそれぞれのカム部は、周方向の異なる位置に突出部を有し、前記外軸部材の凸部が前記第1係合部材、第2係合部材及び第3係合部材のいずれかの前記突出部上に配置される際、前記凸部は、選択されていない2つの前記係合部材の前記カム部に形成された谷部に挟まれて配置されることを特徴とする請求項7記載の回転型電気部品。
【請求項10】
前記カム部の前記突出部の中央部には、前記突出部よりも高さ寸法の小さい凹部が設けられていることを特徴とする請求項4から請求項9のいずれかに記載の回転型電気部品。
【請求項11】
前記ハウジング内に前記外軸部材と共に回転する回転部材を配設し、前記内軸部材の鍔状部及び前記回転部材に、それぞれ第1摺動子と第2摺動子を設ける一方、前記ハウジングの底面に、前記第1摺動子及び第2摺動子がそれぞれ摺接する第1導電パターン及び第2導電パターンを設け、前記第1摺動子及び前記第1導電パターンによって前記内軸部材の回転検出手段を構成し、前記第2摺動子及び第2導電パターンによって前記外軸部材の回転検出手段を構成したことを特徴とする請求項3から請求項10のいずれかに記載の回転型電気部品。
【請求項12】
前記係合突部が係脱する前記係合部が、凹凸部の数が多い係合部から少ない係合部に切り替えられる場合に、切り替え先の前記係合部の山部に前記係合突部の頂部が当接して止まる現象を回避する機構を設けたことを特徴とする請求項4から請求項10のいずれかに記載の回転型電気部品。
【請求項13】
前記クリック部材の一部に前記外軸部材に当接し、当該外軸部材の回転に伴って当該クリック部材を回転させる当接部を設ける一方、前記外軸部材の一部に前記クリック部材の当接部を収容して当該当接部の当接による前記クリック部材の回転を制限する凹部を設け、前記係合突部が係脱する前記係合部が切り換えられる際に、前記外軸部材の回転に伴って前記クリック部材を回転させる一方、前記クリック部材の当該回転によって前記現象が発生し得る場合には、前記当接部を前記凹部に収容して、前記外軸部材の回転に伴う前記クリック部材の回転を制限することを特徴とする請求項12記載の回転型電気部品。
【請求項14】
前記ハウジング内に前記外軸部材と共に回転する回転部材を配設すると共に、前記回転部材の一部に前記クリック部材の一部と当接可能で、前記外軸部材の回転に伴って前記クリック部材を回転させる突起部を設ける一方、前記クリック部材の一部に前記突起部と当接可能な当接部を設け、前記係合突部が係脱する前記係合部が切り換えられる際に、前記現象が発生した場合に前記回転部材の突起部と前記クリック部材の当接部とを当接させて、前記外軸部材の回転に伴って前記クリック部材を回転させることにより、前記現象を解消させるようにしたことを特徴とする請求項12記載の回転型電気部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【公開番号】特開2012−178263(P2012−178263A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40422(P2011−40422)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】