説明

回転子表面のリアルタイム測定

【課題】電気回転機械の回転子表面を監視するシステムを提供すること。
【解決手段】回転子(110)表面のリアルタイム測定が開示される。一態様では、一体化型センサ(135)を有する少なくとも1つの無線周波数識別(RFID)タグ(130)は、回転子(110)上に配置され、回転子(110)から動作データを測定する。RFIDリーダ(200)は、一体化型センサ(135)を有する少なくとも1つのRFIDタグ(130)によってリアルタイムに回転子(110)から測定される動作データを読み取る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、電気回転機械に関し、より詳細には電気回転機械の回転子表面から動作データを得ることに関する。
【背景技術】
【0002】
電動機などの電気回転機械に損傷を与える主な原因の1つは過熱である。電動機の場合、過熱によって、電動機が恒久的に破壊される、またはその有効寿命の著しい低下に至ることがある。過熱の原因のいくつかには、過負荷、不十分な電力条件、高い有効サービス率(high effective service factor)、頻繁な停止と始動、および環境問題がある。過熱のこれらの理由により、電動機は、一般に、有効寿命を最大にするために出力を下げて使われる必要がある。電動機の過熱を防止するために、電動機の温度を制限すること、または少なくとも、過熱、最終的には電動機の故障につながる注意状態を検出することが望まれる。しかし、電動機の温度を制限し、過熱を示す状態を検出する現在の手法は効果的でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7726955号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一態様では、回転子の表面を監視するシステムが提供される。この実施形態では、システムは、回転子上に配置され回転子から動作データを測定する、一体化型センサを有する少なくとも1つの無線周波数識別(RFID)タグを備える。RFIDリーダは、一体化型センサを有する少なくとも1つのRFIDタグによってリアルタイムに回転子から測定される動作データを読み取る。
【0005】
本発明の他の態様では、電気回転機械の回転子表面を監視するシステムが提供される。本発明のこの態様では、システムは、回転子の表面のまわりに配置され電気回転機械の動作データを測定する、一体化型センサを有する少なくとも1つの無線周波数識別(RFID)タグを備える。RFIDリーダは、一体化型センサを有する少なくとも1つのRFIDタグによってリアルタイムに回転子の表面上で測定される動作データを読み取る。演算器は、RFIDリーダから測定動作データを受信し処理するように構成される。
【0006】
本発明の第3の態様では、電動機の回転子表面の温度を監視するシステムが開示される。本発明のこの態様では、システムは、回転子の表面上に配置され回転子の表面の温度を測定する、一体化された温度センサを有する少なくとも1つの無線周波数識別(RFID)タグを備える。RFIDリーダは、一体化型センサを有する少なくとも1つのRFIDタグによってリアルタイムに測定される回転子の表面の温度測定値を読み取る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一実施形態による、回転子の表面上に配置され動作データを測定する、一体化型センサを有する少なくとも1つの無線周波数識別(RFID)タグを有する電動機の概略断面図である。
【図2】本発明の一実施形態による、電動機の回転子上に配置され、RFIDリーダおよび演算器とともに使用される、一体化型センサを有するRFIDタグの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の様々な実施形態は、電動機などの電気回転機械の回転子表面の監視を対象とする。一実施形態では、一体化型センサを有する少なくとも1つの無線周波数識別(RFID)タグが電気回転機械の回転子の表面上に配置され、機械の動作データを測定する。一実施形態では、一体化型センサを有する少なくとも1つのRFIDタグは、温度センサ、振動センサ、速度センサ、運動センサ、圧力センサおよびその組み合わせのうちの少なくとも1つを備えることができる。RFIDリーダは、一体化型センサを有する少なくとも1つのRFIDタグによってリアルタイムに回転子の表面上で測定される動作データを読み取る。一実施形態では、演算器(例えばホストコンピュータ、コントローラなど)は、RFIDリーダから測定動作データを受信することができ、測定動作データに基づく回転子の遠隔監視および診断、測定動作データに基づく回転子の動作の制御、ならびに測定動作データに基づく回転子表面の温度の制御を実行することができる。
【0009】
本発明の様々な実施形態の技術的効果には、過熱を防止するように回転子の表面から検出される動作データを使用する、または過熱による故障の前兆を表す状態を検出することによって、電気回転機械の有効寿命を最大にすることがある。本発明の様々な実施形態に関連する他の技術的効果には、回転子の表面から検出される動作データに基づく電気回転機械の動作の制御、ならびに機械の問題の監視および診断がある。
【0010】
本発明の様々な実施形態は、電動機などの電気回転機械で使用される回転子に関して説明されているが、単に電動機での使用に限定されるわけではない。本発明の様々な実施形態が他の電気回転機械での使用に適することは当業者には理解されよう。本発明の様々な実施形態の使用に適する他の電気回転機械を、全部ではないが列挙すれば、発電機またはオルタネータがある。
【0011】
図面を参照すると、図1は、本発明の一実施形態による(例えば電動機または発電機である)電気回転機械100の概略断面図である。以下、電気回転機械100は電動機と称することにするが、これは説明を簡単にするためだけであり、本発明の実施形態の限定を意図するものではない。一実施形態では、電動機100は、同期電動機であってよい。しかし、本発明の様々な実施形態の範囲は、直流(DC)電動機または誘導電動機などの他の電動機での使用に適することは当業者には明らかであろう。図1に示されるように、電動機100は、回転子110を囲む固定子105を含む。回転子110まわりに巻かれる巻線115は、回転する多極磁界を生成するように構成される。回転子110は、回転子軸125まわりに固定子105に対して相対的に回転するように回転子を支持する軸120を含む。
【0012】
電動機100は、回転子110の表面上またはそのまわりに配置され電動機の動作データを測定する、一体化型センサ135を有する少なくとも1つのRFIDタグ130をさらに含む。RFIDタグ130は、電子駆動回路(図示せず)によって励起されると特定の周波数でインタロゲーション電磁界を生成し、放射する。周知の市販のRFIDタグは、無線周波数(RF)回路を有する半導体チップ、論理回路、メモリならびにアンテナを含む。RFIDタグ130は、コード化されたRF信号に応答して機能する。RFIDタグ130が、十分な時間の間、インタロゲーション電磁界内に配置されると、タグは、刺激され、一意にコード化された信号を送信するようになる。一実施形態では、一意にコード化された信号は、電動機100と回転子110の識別に使用され得る。センサ135は、RFIDタグ130と一体化され、電動機100の動作に関する情報を得るのに使用可能などんなタイプのセンサであってもよい。RFIDタグ130と一体化され得る可能なセンサを、全部ではないが列挙すれば、温度センサ、振動センサ、速度センサ、運動センサまたは圧力センサがある。一実施形態では、一体化型センサ135を有するRFIDタグ130は、上述のセンサのいずれかの組み合わせを含むことができる。以下で説明するように、センサ135からの測定値は、電動機100の動作の制御に使用され得る。一実施形態では、一体化型センサ135を有するRFIDタグ130は、回転子110の表面の温度を測定するように構成される熱電対または抵抗温度検出器などの温度センサを含む。以下で説明するように、一体化型センサからの温度測定値は、回転子110の表面の温度を制御し、したがって電動機100の過熱を防ぐのに使用され得る。一体化された温度センサを有するRFIDタグは、周知であり市販されている。MicroStrain、Williston、VermontからのEMBEDSENSE(商標)無線センサは、使用可能な一体化された温度センサを有するRFIDタグの1つの例である。
【0013】
図2に示されるように、RFIDリーダ200は、一体化型センサを有する少なくとも1つのRFIDタグ130によってリアルタイムに回転子110の表面上で測定される動作データを読み取る。一実施形態では、RFIDリーダ200は、電動機100(図1)から遠く離れた場所に配置される。他の実施形態では、RFIDリーダ200は、端子箱内において電動機100(図1)の一部であってよく、または電動機に接続されるコンピュータ/コントローラ(図示せず)の一部であってもよい。動作において、RFIDリーダ200は、信号を復調することによって、RFIDタグ130および一体化型センサ135からのRF信号を検出し記録する。RF信号の検出および記録は、必要または望ましいと思われるときに実行され得る。
【0014】
演算器210は、RFIDリーダ200から、測定動作データ、ならびに電動機100(図1)および回転子110に特有の識別情報を受信するように構成される。演算器210は、ホストコンピュータまたはコントローラとして実装されてよい。演算器210は、電動機100(図1)に近い内部に配置されても遠く離れて配置されてもよい。RFIDリーダ200は、演算器210からの情報を有線または無線接続を介して送信することができる。演算器210は、測定動作データに基づいて、電動機100(図1)の遠隔監視および診断を実行するように構成され得る。演算器210は、過熱および考えられる障害につながる恐れがある他の状態を防止するために、回転子110の表面の温度などの電動機100(図1)の動作データを連続的に監視することで、温度が容認できないレベルに近づいている場合、予防措置を取ることができる。さらに、演算器210は、所望のやり方での動作のために、測定動作データに基づいて電動機100(図1)の動作を制御するのにも使用され得る。演算器210は、本発明の様々な実施形態に関して先に述べたものに加えて他の処理機能も実行することができることは当業者には理解されよう。例えば、演算器210は、温度測定値に加えて電流および電圧測定値に基づいて、電動機100(図1)の動作を制御することができる。
【0015】
演算器210によって実行される処理機能は、完全にハードウエアの実施形態、完全にソフトウエアの実施形態、または、これに限定されるものではないがファームウエア、常駐ソフトウエア、マイクロコードなどを含む、ハードウエアエレメントとソフトウエアエレメントの両方を含む実施形態の形で実装され得る。さらに、演算器210によって実行される処理機能は、コンピュータもしくは任意の命令実行システム(例えば処理装置)によってまたはそれに関連して使用するためのプログラムコードを供給する、コンピュータ使用可能媒体またはコンピュータ可読媒体からアクセス可能なコンピュータプログラム製品の形をとることができる。本記載の目的のために、コンピュータ使用可能媒体またはコンピュータ可読媒体は、コンピュータ、命令実行システム、装置もしくはデバイスによってまたはそれに関連して使用するためのプログラムを含むまたは記憶することができる任意のコンピュータ可読記憶媒体、あるいはコンピュータ、命令実行システム、装置もしくはデバイスによってまたはそれに関連して使用するためのプログラムを通信、伝播または転送することができるコンピュータ可読伝送媒体であってよい。コンピュータ可読媒体は、電子、磁気、光学、電磁気、赤外もしくは半導体のシステム(または装置もしくはデバイス)、あるいは伝播媒体であってよい。コンピュータ可読媒体の例には、半導体またはソリッドステートメモリ、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、固定磁気ディスクおよび光ディスクがある。光ディスクの現在の例には、コンパクトディスク−リードオンリメモリ(CD−ROM)、コンパクトディスク−リード/ライト(CD−R/W)およびデジタルビデオディスク(DVD)がある。
【0016】
本開示をその好ましい実施形態と併せて具体的に図示し説明してきたが、変形形態および修正形態が当業者には思いつくであろうと理解されよう。したがって、添付の特許請求の範囲は、開示の真の精神に入る全てのそうした修正および変更を包合するものであると理解されたい。
【符号の説明】
【0017】
100 電動機
105 固定子
110 回転子
115 巻線
120 軸
125 回転子軸
130 RFIDタグ
135 センサ
200 RFIDリーダ
210 演算器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転子(110)の表面を監視するシステムであって、
前記回転子(110)から動作データを測定するように前記回転子(110)上に配置された、一体化型センサ(135)を有する少なくとも1つの無線周波数識別(RFID)タグ(130)と、
前記一体化型センサ(135)を有する前記少なくとも1つのRFIDタグ(130)によってリアルタイムに前記回転子(110)から測定される前記動作データを読み取る、RIFDリーダ(200)と
を備える、システム。
【請求項2】
前記RFIDリーダ(200)から測定動作データを受信する演算器(210)をさらに備える、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記演算器(210)が、前記測定動作データに基づいて前記回転子(110)の動作を制御する、請求項2記載のシステム。
【請求項4】
前記演算器(210)が、前記測定動作データに基づいて前記回転子(110)表面の温度を制御する、請求項2記載のシステム。
【請求項5】
前記一体化型センサ(135)を有する前記少なくとも1つのRFIDタグ(130)が、温度センサ、振動センサ、速度センサ、運動センサ、圧力センサおよびその組み合わせのうちの少なくとも1つを備える、請求項1記載のシステム。
【請求項6】
前記一体化型センサ(135)を有する前記少なくとも1つのRFIDタグ(130)が、前記回転子(110)を一意に識別する、請求項1記載のシステム。
【請求項7】
電気回転機械(100)の回転子(110)表面を監視するシステムであって、
前記電気回転機械(100)の動作データを測定するように前記回転子(110)の前記表面のまわりに配置された、一体化型センサ(135)を有する少なくとも1つの無線周波数識別(RFID)タグ(130)と、
前記一体化型センサ(135)を有する前記少なくとも1つのRFIDタグ(130)によってリアルタイムに前記回転子(110)の前記表面上で測定される前記動作データを読み取る、RFIDリーダ(200)と、
前記RFIDリーダ(200)から測定動作データを受信し処理するように構成された演算器(210)と
を備える、システム。
【請求項8】
電動機(100)の回転子(110)表面の温度を監視するシステムであって、
前記回転子(110)の前記表面の前記温度を測定するように前記回転子(110)の前記表面上に配置された、一体化された温度センサ(135)を有する少なくとも1つの無線周波数識別(RFID)タグ(130)と、
前記一体化型センサ(135)を有する前記少なくとも1つのRFIDタグ(130)によってリアルタイムに測定される前記回転子(110)の前記表面の温度測定値を読み取るRFIDリーダ(200)と
を備える、システム。
【請求項9】
前記RFIDリーダ(200)から前記温度測定値を受信するように構成された演算器(210)をさらに備える、請求項8記載のシステム。
【請求項10】
前記演算器(210)が、前記温度測定値に基づく前記電動機(100)の遠隔監視および診断、ならびに前記温度測定値に基づく前記電動機(100)の動作の制御のうちの少なくとも1つを実行するように構成されている、請求項9記載のシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−74035(P2012−74035A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208869(P2011−208869)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】