説明

回転式アクチュエータ

【課題】 放熱性が高く且つ出力トルクの脈動を抑制可能な回転式アクチュエータを提供する。
【解決手段】 回転式アクチュエータ15は、SRモータ40と、SRモータ40を収容する樹脂製のハウジング20と、放熱用金属板80とを備える。放熱用金属板80は、ステータコア42を構成するコア部81からハウジング20外に放射状に突き出す3つの突起部82、83、84を有する。突起部82、83、84は、コイル45、46、47毎に1つずつ設けられる。各突起部にはステータコア42の熱が直接伝導可能である。ステータコア42および放熱用金属板80は、各コイルの熱をハウジング20外に伝導し放熱するための熱伝導路を形成する。これにより高い放熱性を得ることができる。また、各相コイル毎に放熱量を均等にし、SRモータ40の出力トルクの脈動を抑制可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転式アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばシフトバイワイヤシステムの駆動部等に用いられる回転式アクチュエータが公知である。例えば、特許文献1に開示された回転式アクチュエータは、ロータおよびステータからなるモータを備えている。ステータは、U相コイル、V相コイルおよびW相コイルを有し、各相コイルを順に通電することでロータまわりに回転する磁界を発生させる。モータは樹脂製のハウジングに覆われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−177982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された回転式アクチュエータでは、金属と比べ熱伝導率が低い樹脂によってモータが覆われているため、ステータのコイル等で生じた熱をハウジング外に逃し難い即ち放熱性が低いという問題があった。この放熱性の低さに起因しハウジング内の温度が上昇すると、モータの連続作動回数を制限せざるを得ず、また、コイルの電気抵抗が高まりモータの出力トルクが低下するおそれがあった。
【0005】
また、特許文献1に開示された回転式アクチュエータでは、各相コイル毎に放熱量が異なるため、各相コイルが発生する磁界の強さが異なり、モータの出力トルクの脈動が大きくなるという問題があった。
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、放熱性が高く且つモータの出力トルクの脈動を抑制可能な回転式アクチュエータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明による回転式アクチュエータは、ロータおよびステータからなるモータと、このモータを収容するハウジングと、複数の放熱手段とを備える。
ロータは、ハウジングにより回転可能に支持される。ステータは、ステータコアおよび複数相のコイルから構成され、ハウジングに固定支持される。ステータコアは、ロータの径外方向に設けられるリング部、及び、このリング部からロータ側に突き出し周方向で互いに離間する複数のティース部を有する。各コイルは、ステータコアの各ティース部に巻回する導線から構成される。
【0007】
各放熱手段は、ステータコアのうちコイルに対する径外方向の位置からコイルの各相毎に同じ数ずつハウジング外に放射状に突き出す。各放熱手段にはステータコアの熱が直接伝導可能である。各放熱手段は当該伝導した熱を放熱する。
【0008】
このような回転式アクチュエータによれば、ステータコアおよび放熱手段は、コイルの熱をハウジング外に伝導し放熱するための熱伝導路を形成する。各コイルで生じた熱の多くは、樹脂製のハウジングを経由することなしに上記熱伝導路を経由しハウジング外に放熱される。これにより高い放熱性が得ることができ、ハウジング内の温度の上昇を抑制可能である。したがって、モータの連続作動回数の制限を緩和することができ、また、コイルの電気抵抗が高まることに起因するモータの出力トルクの低下を抑制することができる。
【0009】
また、放熱手段は、各相コイル毎に同じ数ずつ設けられる。これにより、各相コイル毎に放熱量を均等にすることができる。そのため、各相コイルが発生する磁界の強さを回転方向で均等にすることができ、モータの出力トルクの脈動を抑制可能である。
【0010】
請求項2に記載の発明では、各放熱手段は、ステータコアと一体に形成される。請求項3に記載の発明では、各放熱手段は、ステータコアを構成する複数枚の環状プレートのうち少なくとも1枚のプレートと同一部材からなる。
これらによれば、部品点数を削減し、組付工数を低減するとともに製造コストを削減することができる。
【0011】
請求項4に記載の発明では、各放熱手段は、ステータコアに対し軸方向に当接している。請求項5に記載の発明では、各放熱手段は、ステータコアの径外壁が有する環状凹部に嵌合している。
これらによれば、各放熱手段をステータコアに広範囲に接触させ、ステータコアの熱をより多く放熱手段に伝導させることができる。
【0012】
請求項6に記載の発明では、各放熱手段は、軸方向に厚みを持つ板状であり、軸方向の一方側の第1放熱面、軸方向の他方側の第2放熱面、及び、径外方向の第3放熱面を有する。
これによれば、放熱面が広範囲に形成されるため、放熱性を効果的に高めることができる。
【0013】
請求項7に記載の発明では、ハウジングは、各放熱手段に対し軸方向の一方側に位置する第1ハウジングと、各放熱手段に対し軸方向の他方側に位置する第2ハウジングとを有する。また、各放熱手段は、第1ハウジングと第2ハウジングとの間に挟まれ、第1ハウジングおよび第2ハウジングを固定するねじに共締めされている。
これによれば、放熱手段を固定する固定部材を別途設ける必要がなく、部品点数を削減することができる。
【0014】
請求項8に記載の発明では、第1ハウジングおよび第2ハウジングは樹脂製である。また、第1ハウジングおよび第2ハウジングの一方には、ねじが挿通し放熱手段とねじの頭部との間に挟まれる金属製のインサートカラーが埋設されている。また、第1ハウジングおよび第2ハウジングの他方には、ねじが螺合し放熱手段に当接するとともにハウジング外に露出する金属製のインサートナットが埋設されている。
【0015】
これによれば、ステータコアと放熱手段とが形成する第1の熱伝導路、ステータコアと放熱手段とインサートナットとが形成する第2の熱伝導路、および、ステータコアと放熱手段とインサートカラーとねじの頭部とが形成する第3の熱伝導路を有するため、放熱性をさらに効果的に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態による回転式アクチュエータを用いたシフトバイワイヤシステムを示す図である。
【図2】本発明の第1実施形態による回転式アクチュエータを示す縦断面図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】図2の矢印IV部を拡大して示す図であって、各熱伝導路を示す図である。
【図5】本発明の第2実施形態による回転式アクチュエータを示す縦断面図である。
【図6】図2のV−V線断面図である。
【図7】本発明の第3実施形態による回転式アクチュエータを示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づき説明する。実施形態同士で実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態による回転式アクチュエータは、図1に示すシフトバイワイヤシステムの駆動部として用いられる。このシフトバイワイヤシステム1は、マニュアルバルブ2を作動させることで車両用自動変速機のシフトレンジを切り替える機能と、パーキングギヤ4の回転を規制することで自動変速機の回転をロックする機能とを有する。先ず、このシフトバイワイヤシステム1を説明する。
【0018】
図1に示すように、シフトバイワイヤシステム1は、電子制御装置5、回転式アクチュエータ15、コントロールロッド6、ディテント機構7およびパーキング機構11を備える。
電子制御装置5は、運転者が操作する図示しないセレクトレバーの操作位置に応じ回転式アクチュエータ15を作動させる。回転式アクチュエータ15は、コントロールロッド6を回転駆動する。コントロールロッド6は、回転式アクチュエータ15の出力軸と一体に回転する。
【0019】
ディテント機構7は、コントロールロッド6と一体に回転するディテントプレート8、および、ディテントプレート8の回転位置を固定するディテントスプリング10から構成される。ディテントプレート8は、マニュアルバルブ2の弁部材3に対し軸方向に係合可能な係合突起9を有し、回転位置に応じ弁部材3を軸方向に移動させる。これにより自動変速機のシフトレンジが切り替わる。
【0020】
パーキング機構11は、パーキングギヤ4に対し接近および離間可能なパーキングロックポール12、ディテントプレート8の回転位置に応じパーキングギヤ4の軸心に平行な方向へ移動するパークロッド13、および、パークロッド13の移動に伴いパーキングロックポール12をパーキングギヤ4に接近および離間させるカム部材14から構成される。カム部材14は、ディテントプレート8が所定のパーキング位置に回転すると、パーキングロックポール12をパーキングギヤ4と係合する位置に移動させる。これによりパーキングギヤ4と一体に回転する自動変速機のアウトプットシャフトの回転がロックされる。
【0021】
次に、回転式アクチュエータ15の構成を図2および図3に基づき詳しく説明する。
図2および図3に示すように、回転式アクチュエータ15は、ハウジング20、スイッチトリラクタンスモータ(以下、「SRモータ」という。)40、減速機60、出力軸70、ブラケット75および放熱用金属板80等を備えている。
【0022】
ハウジング20は、リヤハウジング21およびフロントハウジング30から構成されている。
リヤハウジング21は、樹脂製であり、有底筒部22、コネクタ部23および複数の固定部24を有している。有底筒部22には、有底筒状に形成された金属製のステータ保持部材25が埋設されている。コネクタ部23は、図1の電子制御装置5と接続可能な複数の端子26を有している。各固定部24は、有底筒部22から径外方向へ突き出すように形成されている。この固定部24には、金属製のインサートナット27が埋設されている。
【0023】
フロントハウジング30は、樹脂製であり、有底筒部31、出力部32および複数の固定部34を有している。有底筒部31は、有底筒部22と同軸上に位置し、且つ有底筒部22側に開口端部が位置するように配置されている。出力部32は、有底筒部31の底部の中央からリヤハウジング21とは反対側に突き出すように筒状に形成されている。この出力部32および有底筒部31の底部は、共通の通孔33を有している。各固定部24は、有底筒部31のうち周方向で固定部24に対応する位置から径外方向へ突き出すように形成されている。この固定部24には、金属製のインサートカラー35が埋設されている。このインサートカラー35は、インサートナット27のねじ孔28と同軸のねじ挿通孔36を有している。
【0024】
フロントハウジング30は、リヤハウジング21との間に放熱用金属板80を挟んだ状態でねじ37によりリヤハウジング21に固定されている。ねじ37は、インサートカラー35のねじ挿通孔36に挿入されるとともにインサートナット27のねじ孔28に螺合している。ハウジング20内空間は、フロントハウジング30と放熱用金属板80との間に設けられるシール部材38、及び、リヤハウジング21と放熱用金属板80との間に設けられるシール部材39によって、ハウジング外空間に対し封止されている。
ブラケット75は、ハウジング20を例えば図示しないトランスミッションケース等に取り付けるためのものであり、フロントハウジング30の底部の外壁にねじ37で固定されている。
【0025】
SRモータ40は、3相ブラシレスモータであり、ステータ41およびロータ48から構成されている。
ステータ41は、ステータコア42、U相コイル45、V相コイル46およびW相コイル47を有している。ステータコア42は、ステータ保持部材25の径内壁に嵌合するリング部43と、このリング部43から径内方向に突き出す複数のティース部44とからなる。各ティース部44は、図3に示すように周方向で等間隔に12個形成されている。ステータコア42は、図2に示すように、放熱用金属板80を含む複数枚の環状プレートを板厚方向に積層することによって形成されている。
【0026】
U相コイル45、V相コイル46およびW相コイル47は、各ティース部44に巻回された導線からなる。これらのU相コイル45、V相コイル46およびW相コイル47は、4個ずつ設けられ、周方向でU相、V相、W相の順に1個ずつ配置されている。
各コイル45〜47は、バスバー部57に電気的に接続されている。バスバー部57は、図2に示すようにステータ41に対しリヤハウジング21の底部側に設けられている。バスバー部57は、例えば金属の薄板によって形成され、コネクタ部23の端子26と電気的に接続している。各コイル45〜47には、バスバー部57を経由し電流が供給される。
【0027】
ロータ48は、ステータ41の径内方向に設けられ、ロータ軸49およびロータコア54を有している。ロータ軸49は、フロントハウジング30の底部側の一端部50がフロントベアリング58に回転可能に支持され、リヤハウジング21の底部側の他端部51がリヤベアリング59に回転可能に支持されている。またロータ軸49は、一端部50と他端部51との間で一端部50側にから順にロータコア固定部52および偏心部53を形成する。一端部50とロータコア固定部52と他端部51とは互いに同軸上に配置され、偏心部53はロータコア固定部52に対し偏心するよう配置されている。
【0028】
ロータコア54は、ロータ軸49のロータコア54の径外壁に例えば圧入により固定されたボス部55と、このボス部55から径外方向に突き出す複数の突極56とからなる。各突極56は、図3に示すように周方向で等間隔に8個形成されている。ロータコア54は、図2に示すように、複数枚のプレートを板厚方向に積層することによって形成されている。
【0029】
減速機60は、いわゆる遊星歯車装置の一種であり、リングギヤ61およびプラネタリギヤ62から構成されている。
リングギヤ61は、ロータ軸49の偏心部53の径外方向に位置し、ロータ軸49の一端部50や他端部51と同軸上に配置される環状の内歯車である。リングギヤ61は、フロントハウジング30の有底筒部22の径内壁に固定されている。
【0030】
プラネタリギヤ62は、リングギヤ61の径内方向に位置し、ロータ軸49の偏心部53と同軸上に配置され、リングギヤ61に噛み合う外歯車である。プラネタリギヤ62は、ミドルベアリング64により偏心部53まわりに自転可能かつロータ軸49の回転軸まわりに公転可能に支持されている。
プラネタリギヤ62は、ロータコア54とは反対側に突き出す複数のトルク伝達用突起63を形成する。各トルク伝達用突起63は、プラネタリギヤ62の自転軸まわりに等間隔に形成されている。トルク伝達用突起63は、後述のトルク伝達用穴73と共に、プラネタリギヤ62の自転成分を出力軸70に伝達するための回転伝達手段として機能する。
【0031】
出力軸70は、軸部71およびフランジ部72から構成されている。軸部71は、ロータ軸49の回転軸上に配置され、フロントハウジング30の出力部32により回転可能に支持されている。フランジ部72は、軸部71のうちプラネタリギヤ62側の端部に一体に形成されている。フランジ部72は、プラネタリギヤ62の各トルク伝達用突起63が遊嵌する複数のトルク伝達用穴73を有する。各トルク伝達用穴73は、ロータ軸49の回転軸まわり即ちプラネタリギヤ62の公転軸まわりに等間隔に形成され、トルク伝達用穴73と共に回転伝達手段を構成する。出力軸70は、減速機60および上記回転伝達手段を介しロータ軸49の一端部50にトルク伝達可能に連結されている。
【0032】
放熱用金属板80は、ステータコア42を構成する複数枚の環状プレート間に挟まれ、これらの環状プレートと共にステータコア42のリング部43およびティース部44を形成するコア部81と、このコア部81からハウジング20外に放射状に突き出す3つの突起部82、83、84とを有している。放熱用金属板80は、フロントハウジング30とリヤハウジング21との間に挟まれ、ねじ37に共締めされている。放熱用金属板80には、ステータコア42の熱が例えば空気や樹脂部材等を経由することなしに直接伝導可能である。
【0033】
突起部82は、各U相コイル45のいずれか1つに対し径外方向に位置し、ステータコア42と一体に形成されている。突起部83は、各V相コイル46のいずれか1つに対し径外方向に形成されている。突起部84は、各W相コイル47のいずれか1つに対し径外方向に形成されている。これらの突起部82、83、84は、周方向で等間隔に配置されている。以下、突起部82、83、84を特に区別しないときは単に「突起部」と記載する。放熱用金属板80の突起部は、軸方向に厚みを持つ板状であり、軸方向の一方側の第1放熱面85、軸方向の他方側の第2放熱面86、及び、径外方向の第3放熱面87を有している。
【0034】
インサートカラー35は、放熱用金属板80とねじ37の頭部との間に挟まれている。ねじ37の頭部は、ハウジング20外に露出し、放熱用金属板80からインサートカラー35を経由し伝導する熱を放熱可能な第4放熱面88を有している。
インサートナット27は、一端部が放熱用金属板80に当接し、他端部がハウジング20外に露出している。インサートナット27は、放熱用金属板80から直接伝導する熱を放熱可能な第5放熱面89を有している。
【0035】
図4に矢印Xで示すように、ステータコア42および放熱用金属板80は第1の熱伝導路を形成する。また、図4に矢印Yで示すように、ステータコア42、放熱用金属板80およびインサートナット27は、第2の熱伝導路を形成する。また、図4に矢印Zで示すように、ステータコア42、放熱用金属板80、インサートカラー35、及び、ねじ37の頭部は第3の熱伝導路を形成する。放熱用金属板80の突起部、インサートナット27、及び、ねじ37の頭部は、ステータコア42から伝導する熱をハウジング20外空間に放熱する「放熱手段」として機能する。
【0036】
このように構成される回転式アクチュエータ15では、U相コイル45、V相コイル46、W相コイル47の順に通電を切り替えるとロータ48が図3の反時計まわりに回転し、W相コイル47、V相コイル46、U相コイル45の順に通電を切り替えるとロータ48が図3の時計まわりに回転する。ロータ48は、U相コイル45、V相コイル46およびW相コイル47の通電が一巡する毎に45度回転する。
上述のようにロータ48が回転すると、プラネタリギヤ62は、リングギヤ61の径内壁を転動することによりロータ軸49の偏心部まわりに自転しつつロータ軸の回転軸まわりに公転する。このときプラネタリギヤ62はロータ軸49に対し減速回転する。
【0037】
上述のようにプラネタリギヤ62が回転すると、プラネタリギヤ62の自転成分がトルク伝達用突起63およびトルク伝達用穴73を介し出力軸70に伝達される。出力軸70は、この回転をコントロールロッド6に出力する。
各コイルに通電することで生じた熱は、ステータコア42から放熱用金属板80を経由し放熱用金属板80の各突起部、インサートナット27、及び、ねじ37の頭部に伝導し、各放熱面85〜89から放熱される。
【0038】
以上説明したように、第1実施形態による回転式アクチュエータ15は、ロータ48およびステータ41からなるSRモータ40と、このSRモータ40を収容する樹脂製のハウジング20と、放熱用金属板80とを備える。
放熱用金属板80は、ステータコア42を構成するコア部81と、このコア部81からハウジング20外に放射状に突き出す3つの突起部82、83、84とを有している。
【0039】
突起部82は、各U相コイル45のいずれか1つに対し径外方向に位置し、ステータコア42と一体に形成されている。突起部83は、各V相コイル46のいずれか1つに対し径外方向に形成されている。突起部84は、各W相コイル47のいずれか1つに対し径外方向に形成されている。これらの突起部82、83、84は、周方向で等間隔に配置されている。突起部82、83、84にはステータコア42の熱が直接伝導可能である。これらの突起部82、83、84は、ステータコア42から伝導した熱をハウジング20外空間に放熱する「放熱手段」として機能する。
【0040】
このような回転式アクチュエータ15によれば、ステータコア42および放熱用金属板80は、各コイルの熱をハウジング20外に伝導し放熱するための第1の熱伝導路を形成する。各コイルで生じた熱の多くは、樹脂製のハウジング20を経由することなしに上記第1の熱伝導路を経由しハウジング20外に放熱される。これにより高い放熱性を得ることができ、ハウジング20内の温度の上昇を抑制可能である。したがって、SRモータ40の連続作動回数の制限を緩和することができ、また、各コイルの電気抵抗が高まることに起因するSRモータ40の出力トルクの低下を抑制することができる。
【0041】
また、放熱用金属板80の突起部は、各相コイル毎に1つずつ設けられる。これにより、各相コイル毎に放熱量を均等にすることができる。そのため、各相コイルが発生する磁界の強さを回転方向で均等にすることができ、SRモータ40の出力トルクの脈動を抑制可能である。
【0042】
また、第1実施形態では、放熱用金属板80は、ステータコア42を構成するコア部81と、放熱手段としての突起部82、83、84とから一体に形成されている。すなわち、放熱用金属板80の突起部82、83、84は、ステータコア42を構成するコア部81と同一部材からなり、ステータコア42と一体に形成される。
これによれば、放熱用金属板80の突起部がステータコア42とは別体に形成される場合と比べ部品点数を削減し、組付工数を低減するとともに製造コストを削減することができる。
【0043】
また、第1実施形態では、放熱用金属板80の突起部82、83、84は、軸方向に厚みを持つ板状であり、軸方向の一方側の第1放熱面85、軸方向の他方側の第2放熱面86、及び、径外方向の第3放熱面87を有している。
これによれば、放熱面が広範囲に形成されるため、放熱性を効果的に高めることができる。
【0044】
また、第1実施形態では、放熱用金属板80は、フロントハウジング30とリヤハウジング21との間に挟まれ、ねじ37に共締めされている。
これによれば、放熱用金属板80を固定する固定部材を別途設ける必要がなく、部品点数を削減することができる。
【0045】
また、第1実施形態では、インサートカラー35は、放熱用金属板80とねじ37の頭部との間に挟まれている。ねじ37の頭部は、放熱用金属板80からインサートカラー35を経由し伝導する熱を放熱可能な第4放熱面88を有している。インサートナット27は、一端部が放熱用金属板80に当接するとともに他端部がハウジング20外に露出し、放熱用金属板80から直接伝導する熱を放熱可能な第5放熱面89を有している。
これによれば、ステータコア42と放熱用金属板80とインサートナット27とが形成する第2の熱伝導路、および、ステータコア42と放熱用金属板80とインサートカラー35とねじ37の頭部とが形成する第3の熱伝導路を有するため、放熱性を効果的に高めることができる。
【0046】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態による回転式アクチュエータを図5および図6に基づき説明する。
図5および図6に示すように、第2実施形態では、放熱用金属板90は、環状に形成され、ステータコア92の径外壁に例えば圧入により固定されている。この放熱用金属板90は、突起部82、83、84と、各突起部82、83、84同士を接続する3つの接続部91とを有している。突起部82、83、84は、径内方向の面がステータコア92に当接している。放熱用金属板90には、ステータコア92の熱が例えば空気や樹脂部材等を経由することなしに直接伝導可能である。
【0047】
このような放熱用金属板90を備える回転式アクチュエータによれば、各コイルで生じた熱がステータコア92および放熱用金属板90を経由し放熱用金属板90の突起部の各放熱面から放熱されるので、第1実施形態と同様に放熱性を高めることができる。
また、放熱用金属板90の突起部が各相コイル毎に1つずつ設けられことで各相コイル毎に放熱量を均等にすることができることも第1実施形態と同様である。これにより、各相コイルが発生する磁界の強さを回転方向で均等にすることができ、モータ出力トルクの脈動を抑制可能である。
【0048】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態による回転式アクチュエータを図7に基づき説明する。
図7に示すように、第3実施形態では、放熱用金属板95は、ステータコア97の径外壁が有する環状溝98に嵌合する突起部82、83、84と、各突起部82、83、84同士を接続する3つの接続部96とを有している。突起部82、83、84は、軸方向の両側の面と径内方向の面とがステータコア97に当接している。放熱用金属板95には、ステータコア97の熱が例えば空気や樹脂部材等を経由することなしに直接伝導可能である。
このような放熱用金属板95を備える回転式アクチュエータによれば、各コイルで生じた熱がステータコア97および放熱用金属板95を経由し放熱用金属板95の突起部の各放熱面から放熱されるので、第1実施形態と同様に放熱性を高めることができる。
【0049】
また、放熱用金属板95の突起部が各相コイル毎に1つずつ設けられことで各相コイル毎に放熱量を均等にすることができることも第1実施形態と同様である。これにより、各相コイルが発生する磁界の強さを回転方向で均等にすることができ、モータ出力トルクの脈動を抑制可能である。
また、放熱用金属板95の突起部は、軸方向の両側の面と径内方向の面とがステータコア97に当接しているので、突起部をステータコア97に広範囲に接触させ、ステータコア97の熱をより多く突起部に伝導させることができる。
【0050】
(他の実施形態)
本発明の他の実施形態では、コイルの相数は、2つあるいは4つ以上であってもよい。
また、本発明の他の実施形態では、各放熱手段は、周方向で互いに分離していてもよく、また、板状でなくてもよい。また、放熱手段は、コイルの相数の整数倍の数が形成されてもよい。
ステータコアは、各ティース毎に分離した複数のセグメントステータコアから形成されてもよい。
【0051】
また、本発明の他の実施形態では、ハウジングは、必ずしも放熱用金属板に対し軸方向両側に分割されている必要はない。放熱用金属板は、例えば、ハウジングを内外に貫通する通孔を通してハウジング外に突き出すように設けられてもよい。
また、本発明の他の実施形態では、回転式アクチュエータは、車両のうちシフトバイワイヤシステム以外の装置に用いられてもよい。
また、本発明の他の実施形態では、回転式アクチュエータは、必ずしも減速機を備える必要はない。
【0052】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0053】
15・・・回転式アクチュエータ
20・・・ハウジング
42、92、97・・・ステータコア
43・・・リング部
44・・・ティース部
45・・・U相コイル(コイル)
46・・・V相コイル(コイル)
47・・・W相コイル(コイル)
48・・・ロータ
80、90、95・・・放熱用金属板
82、83、84・・・突起部(放熱手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能なロータと、
前記ロータの径外方向に設けられるリング部、及び、当該リング部から前記ロータ側に突き出し周方向で互いに離間する複数のティース部を有するステータコアと、
前記ステータコアの前記各ティース部に巻回する導線から構成される複数相のコイルと、
前記ロータ、前記ステータコアおよび前記各コイルを収容し、前記ロータを回転可能に支持し、前記ステータコアを固定支持するハウジングと、
前記ステータコアのうち前記コイルに対する径外方向位置から前記コイルの各相毎に同じ数ずつ前記ハウジング外に放射状に突き出し、前記ステータコアの熱が直接伝導可能であり、当該伝導した熱を放熱する複数の金属製の放熱手段と、
を備えることを特徴とする回転式アクチュエータ。
【請求項2】
前記各放熱手段は、前記ステータコアと一体に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の回転式アクチュエータ。
【請求項3】
前記ステータコアは、複数枚の環状プレートが軸方向に積層されてなり、
前記各放熱手段は、前記各環状プレートのうち少なくとも1枚のプレートと同一部材からなることを特徴とする請求項2に記載の回転式アクチュエータ。
【請求項4】
前記各放熱手段は、前記ステータコアに対し軸方向に当接していることを特徴とする請求項1に記載の回転式アクチュエータ。
【請求項5】
前記各放熱手段は、前記ステータコアの径外壁が有する環状凹部に嵌合していることを特徴とする請求項4に記載の回転式アクチュエータ。
【請求項6】
前記各放熱手段は、軸方向に厚みを持つ板状であり、軸方向の一方側の第1放熱面、軸方向の他方側の第2放熱面、及び、径外方向の第3放熱面を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の回転式アクチュエータ。
【請求項7】
前記ハウジングは、前記各放熱手段に対し軸方向の一方側に位置する第1ハウジングと、前記各放熱手段に対し軸方向の他方側に位置する第2ハウジングとを有し、
前記各放熱手段は、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとの間に挟まれ、前記第1ハウジングおよび前記第2ハウジングを固定するねじに共締めされていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の回転式アクチュエータ。
【請求項8】
前記第1ハウジングおよび前記第2ハウジングは樹脂製であり、
前記ねじの頭部は前記ハウジング外に露出し、
前記第1ハウジングおよび前記第2ハウジングの一方には、前記ねじが挿通し前記放熱手段と前記ねじの頭部との間に挟まれる金属製のインサートカラーが埋設され、
前記第1ハウジングおよび前記第2ハウジングの他方には、前記ねじが螺合し前記放熱手段に当接するとともに前記ハウジング外に露出する金属製のインサートナットが埋設されていることを特徴とする請求項7に記載の回転式アクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−99198(P2013−99198A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242283(P2011−242283)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】