説明

回転抵抗装置および回転抵抗装置を備えたペダル装置

【課題】 高い加工精度を必要とせず、また、部品点数も比較的少なくて安価に製造可能な回転抵抗装置を提供すること。
【解決手段】 回転抵抗装置10が、所定の軸線Oを中心とした中空部12aを有する円筒状のハウジング12、12bと、軸線Oに沿って延び同軸線Oを中心として回転自在にハウジングに支持された軸体14と、ハウジング12、12b内に軸体14と共に軸線を中心として両方向に回転自在に配設された回転子20と、ハウジング12、12bの内周面に接触可能に回転子20の外周面に取付けられたバネ部材22とを具備し、軸線Oに関するハウジング12、12bの内周面の半径は、回転子20の回転方向の何れか一方に次第に小さくなるように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のアクセルペダル等に用いる回転抵抗装置であって、特に回転方向によって抵抗にヒステリシスを生じるようにした回転抵抗装置および該回転抵抗装置を備えたペダル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のアクセルペダル装置は、車体等に固定されるケース、ケース内に回転自在に配設される回転子、回転子に連結されるペダルアーム、ペダルアームとケースとの間に配設ペダルアームを休止位置に戻すリターンスプリング、ペダルアームの回転位置を検出するアクセルポジションセンサ等が設けられている。また、アクセルペダル装置では、運転者の操作性等を考慮して、アクセルペダルを踏み込むときと、戻すときとでアクセルペダルの動作に要する踏力を異なる経路に従って発生させるヒステリシスを生じさせ回転抵抗装置が設けられている。特許文献1には、こうしたアクセルペダル装置の一例が開示されている。
【0003】
特許文献1に開示されたペダル装置では、ペダルアームに連結された回転体の傾斜面と、ケース内で前記回転体に向けて軸方向にコイルバネにより付勢され前記回転体の傾斜面に接触する傾斜面を有した移動体とを具備して、前記ペダルアームを操作することにより、前記回転体が回転したときに、前記移動体を前記コイルバネの付勢力に抗して軸方向に移動させるようになっている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−51737号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されたペダル装置では、互いに相対動作する2つの傾斜面に作用する摩擦力によって踏力にヒステリシスを持たせるようにしているが、傾斜面が互いに接触しながら摺動するがカム面として作用するために、傾斜面には高い加工精度が要求され、また、部品点数も多くなっている。
【0006】
そこで、本発明はこうした従来技術の問題点を解決することを技術課題としており、高い加工精度を必要とせず、また、部品点数も比較的少なくて安価に製造可能な回転抵抗装置を提供することを目的としている。
更に、本発明は、該回転抵抗装置を備えたペダル装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の本発明は、所定の軸線を中心とした中空部を有する円筒状のハウジングと、前記軸線に沿って延び同軸線を中心として回転自在に前記ハウジングに支持された軸体と、前記ハウジング内に前記軸体と共に前記軸線を中心として両方向に回転自在に配設された回転子と、前記ハウジングの内周面に接触可能に前記回転子の外周面に取付けられたバネ部材とを具備し、前記軸線に関する前記ハウジングの内周面の半径は、前記回転子の回転方向の何れか一方に次第に小さくなるように形成されている回転抵抗装置を要旨とする。
【0008】
請求項2に記載の本発明は、車体に固定されたブラケットを介して回転自在に支持されたペダルアームと、前記ペダルアームの一端に取着され使用者の足により踏み込まれるパッドと、前記ペダルアームの他端に係合する感知レバーを有し前記ペダルアームの回転位置または踏み込み量を検知するアクセルポジションセンサと、ペダルアームを休止位置へ復帰させるリターンスプリングと、請求項1に記載の回転抵抗装置とを具備し、前記ペダルアームが前記軸体に連結されて成るアクセルペダル装置を要旨とする。
【発明の効果】
【0009】
本願発明によれば、回転子が第1の方向へ回転するときは、前記ハウジングの内周面が前記回転子の第1の方向に向かって次第に半径が小さくなるように形成されているので、バネ部材は、次第に圧縮されハウジングの内周面により半径方向内側へ付勢される。従って、前記バネ部材を半径方向内側へ付勢するための負荷、および、バネ部材とハウジングの内周面との間に作用する摩擦力に基づく負荷が、回転子の第1の方向への回転量に概ね比例して増加し、従って回転抵抗もまた増加する。反対に回転子が第2の方向に回転するときは、バネ部材が拡がろうとする力は、回転子を第2の方向に回転するように作用するために、回転抵抗が小さくなる。
【0010】
バネ部材は、回転子が第1の方向に回転するときに、ハウジングの内周面との接触を通じて圧縮され、回転子の第1の方向への回転に抵抗する。反対に、回転子が第2の方向に回転するときには、ハウジングの内周面に対して回転子を第2の方向に付勢する。このように本発明によれば、回転子が第1の方向に回転するときと第2の方向に回転するときとで、回転子の回転方向に対するバネ部材が発生する力の方向が逆向きになることを利用して、回転子に作用する抵抗を変えている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図1〜図5を参照して、本発明の好ましい実施形態を説明する。
先ず、図1、2を参照すると、本発明の回転抵抗装置を適用するペダル装置として、アクセルペダル装置100が図示されている。アクセルペダル装置100は、車体に固定されるブラケット102、ペダルアーム104、ペダルアーム104の一端に取着されたパッド106、ペダルアーム104の他端に係合する感知レバー108aを有しペダルアーム104の回転位置または踏み込み量を検知するアクセルポジションセンサ108、ペダルアーム104を休止位置へ復帰させるリターンスプリング110、および、回転抵抗装置10を具備している。
【0012】
回転抵抗装置10は軸線Oを中心とした円筒有底状のケース12と、ケース12の開口部を閉鎖する蓋体12bとを具備している。ケース12および蓋体12bは、後述する回転子20およびバネ部材22を収納する中空部12aを画成するハウジングを形成する。ハウジング12、12bは、軸線Oに沿って延びる軸体またはシャフト14を、ブッシュ16、18を介して軸線Oを中心として回転自在に支持する。
【0013】
回転子20は、ハウジング12、12b内にシャフト14と共に矢印Rで示すように両方向に、つまり第1と第2の方向に回転自在に配設されており、該回転子20の外周面には、バネ部材22(図3、4参照)が配設されている。本実施形態において、回転子20は、所定半径の円弧状の外周面を有し半径方向に突出した複数の突起部20aを有して全体的にスプライン状に形成されている。ここで、本明細書では、前記所定半径を基準半径と定義する。
【0014】
バネ部材22は、バネ鋼より成る薄板をプレス加工して形成することができ、本体部22aと、該本体部22aから外側に突き出した複数の舌部22bと、本体部22aの周方向両端を屈曲して形成した係合部22cと有している。本体部22aは、その内周面が前記基準半径に従う円弧に沿って湾曲するように概ね円筒形状に形成されている。舌部22bは、その基端部22dを残して、本体部22aの側壁の一部を切り欠いて形成することができ、その先端部22eが本体部22aの円筒外周面から半径方向に膨出している。
【0015】
ケース12の内周面には、前記基準半径にバネ部材22の板厚を加えた長さに等しい最小半径を有した最小半径部12bと、最小半径部12bに隣接する最大半径部12cとが設けられており、ケース12の内周面は、ペダルアーム104を踏み込んだときの回転子20の回転方向に、最大半径部12cから最小半径部12bへ向かって次第に半径が小さくなるように形成されている。最小半径部12bと最大半径部12cは、バネ部材22の舌部22aの数に応じて設けられており、従って、本実施形態では、120°ごとに3つの最小半径部12bと最大半径部12cが設けられている。
【0016】
以下、図5に示す休止位置から開始して、図6に示す最大踏み込み位置を経て、再び休止位置へ戻る過程に沿って、本実施形態の作用を説明する。
図5において、ペダルアーム104には操作力が作用しておらず、ペダルアーム104はリターンスプリング110によって休止位置へ付勢されている。使用者が、その足112によりペダルアーム104の一端に取付けたペダルパッド106を踏み込むと、ペダルアーム104は、休止位置から図5、6において時計回りの方向に揺動する。これにより、シャフト14を介してペダルアーム104に連結されている回転子20もまた図5、6において時計回りの方向に回転する。
【0017】
ペダルアーム104が休止位置にあるとき、バネ部材22の舌部22aは、ケース12の内周面に沿って最大半径部12cと最小半径部12bとの間に配置されている。使用者がペダルパッド106を踏み込み、回転子20が回転すると、バネ部材22の舌部22aは、ケース12の内周面に沿って最小半径部12bへ向けて移動する。これにより、舌部22aは、ケース12の内周面により半径方向内側へ付勢される。従って、ペダルアーム104に作用するリターンスプリング110による負荷、バネ部材22の舌部22aを半径方向内側へ付勢するための負荷(図6において矢印Aで示す)、および、舌部22aの外周面とケース12の内周面との間に作用する摩擦力に基づく負荷は、ペダルアーム104の踏み込み量に概ね比例して増加する。従って、ペダルアーム104を踏み込むために必要な踏力は、図7において参照符号F1で示すように、踏み込み量に比例して増加する。
【0018】
休止位置へ復帰する場合には、図5において矢印A′で示すように、圧縮されていたバネ部材22の舌部22aが拡がろうとする力が作用するために、図7において参照符号F2で示すように、ペダルアーム104を踏み込むときよりも、つまり、最大踏み込み位置へ移動するときよりも踏力は小さくなる。こうして、踏力Fは、踏み込み時と復帰時において異なる経路に沿って変化し、踏力Fにヒステリシスを持たせることができる。
【0019】
本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明がこれに限定されず種々の変更と修正が可能であることは当業者の当然とするところである。
例えば、既述した実施形態では3つの舌部22aが周方向に等角度間隔で配設されているが、舌部22aの個数は、回転子22の回転角度範囲を勘案して適当に選択することができる。
【0020】
また、既述した実施形態では、本願発明の回転抵抗装置をアクセルペダル装置に適用した例を説明したが、本願発明はこれに限定されず、例えば、自動車のコンソールボックスやグローブボックスのドアのヒンジ部分に本願発明の回転抵抗装置を組み込んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の好ましい回転抵抗装置の図2において矢視線II-IIに沿う断面図である。
【図2】本発明の好ましい回転抵抗装置の図1において矢視線I-Iに沿う断面図である。
【図3】本発明の好ましい回転抵抗装置のバネ部材の端面図である。
【図4】本発明の好ましい回転抵抗装置のバネ部材と回転子を示す斜視図である。
【図5】本発明の好ましい回転抵抗装置を備えたアクセルペダル装置の概略側面図であり、休止位置を示す図である。
【図6】本発明の好ましい回転抵抗装置を備えたアクセルペダル装置の概略側面図であり、最大踏み込み位置を示す図である。
【図7】本発明の好ましい回転抵抗装置を備えたアクセルペダル装置の踏力の変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0022】
10 回転抵抗装置
12 ケース
14 シャフト
16 ブッシュ
18 ブッシュ
20 回転子
22 バネ部材
100 アクセルペダル装置
102 ブラケット
104 ペダルアーム
106 パッド
108 アクセルポジションセンサ
110 リターンスプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の軸線を中心とした中空部を有する円筒状のハウジングと、
前記軸線に沿って延び同軸線を中心として回転自在に前記ハウジングに支持された軸体と、
前記ハウジング内に前記軸体と共に前記軸線を中心として両方向に回転自在に配設された回転子と、
前記ハウジングの内周面に接触可能に前記回転子の外周面に取付けられたバネ部材とを具備し、
前記軸線に関する前記ハウジングの内周面の半径は、前記回転子の回転方向の何れか一方に次第に小さくなるように形成されている回転抵抗装置。
【請求項2】
車体に固定されたブラケットを介して回転自在に支持されたペダルアームと、
前記ペダルアームの一端に取着され使用者の足により踏み込まれるパッドと、
前記ペダルアームの他端に係合する感知レバーを有し前記ペダルアームの回転位置または踏み込み量を検知するアクセルポジションセンサと、
ペダルアームを休止位置へ復帰させるリターンスプリングと、
請求項1に記載の回転抵抗装置とを具備し、
前記ペダルアームが前記軸体に連結されて成るアクセルペダル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−183799(P2006−183799A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−378854(P2004−378854)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(000185617)小島プレス工業株式会社 (515)
【Fターム(参考)】