説明

回転翼式攪拌装置及び回転翼式攪拌方法

【課題】 回転翼の回転に伴う反転運動とともに、気流による乾燥作業を効率よく行える回転翼式攪拌装置及びその方法を提供する。
【解決手段】 攪拌槽(1)の底壁を貫通する状態で配置された回転駆動軸(4)に回転翼(3)を固定し、この回転翼(3)を攪拌槽(1)内の底部で回転させることにより、攪拌槽(1)内に投入された原料粉体を混合攪拌する攪拌装置である。回転翼(3)の上端部よりも上側で、かつ攪拌される原料粉体の粉体表面よりも下側に対応する攪拌槽(1)の周側面に、気流噴出ノズル(14)を開口させ、この気流噴出ノズル(14)の攪拌槽側開口部を弁体(15)で開閉可能に構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転翼を攪拌槽内で回転させて原料粉体を攪拌混合する回転翼式攪拌装置に関し、特に湿潤原料粉体を乾燥、あるいは乾燥造粒させる攪拌装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、付着性・凝集性の強い湿潤粉体に、他の粉体などを添加して混合・乾燥させたり、粉体原料とともに液体原料を同時に混合したりするものとして、攪拌槽の底部で回転翼を回転させることで、湿潤粉体原料や液体原料と粉体原料とを攪拌混合するようにしたもの(特許文献1)や、攪拌混合槽の底部を回転する回転翼から熱風を供給して、気流による乾燥も付加するようにしたもの(特許文献2)が提案されている。
【特許文献1】特許第3190999号公報
【特許文献2】特開2001−9251号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
回転翼の回転で攪拌槽内に投入した粉体を攪拌・混合あるいは乾燥させる場合、攪拌槽内の原料粒子は回転による遠心力によって半径方向に移動されるとともに、回転翼での掬い上げで跳ね上げられ、半径方向での反転運動を繰り返すことになる。 ところが、この場合、原料粉体が塊状になると、この塊状になった原料粒子は、その重量が大きいことから、攪拌槽内周壁で勢いよく跳ね返るので、攪拌槽の中央部に集中することになる。このとき、回転翼の中央部ではその周速度が小さいことから、遠心力が小さいので、半径方向に移動しにくくなるという傾向がある。
【0004】
また、回転翼による攪拌に加えて、回転翼の軸や回転翼に開口されたノズルから気流を作用させて攪拌・混合及び乾燥を促進するようにしたものでは、軸径や翼厚で気流通路の口径が制限されることになるから、風量に限りがあり、処理に時間がかかったり、局部加熱による付着が見られるという傾向がある。
【0005】
本発明は、このような点に着目してなされたもので、回転翼の回転に伴う反転運動とともに、気流による乾燥作業を効率よく行える回転翼式攪拌装置及びその方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために請求項1に記載の本発明は、回転翼の上端部よりも上側で、かつ攪拌される原料粉体の粉体表面よりも下側に対応する攪拌槽の周側面に、気流噴出ノズルを開口させ、この気流噴出ノズルの攪拌槽側開口部を弁体で開閉可能に構成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載した本発明では、回転翼の上端部よりも上側で、かつ攪拌される原料粉体の粉体表面よりも下側に対応する攪拌槽の周側面に、気流噴出ノズルを開口させ、この気流噴出ノズルの攪拌槽側開口部を弁体で開閉可能に構成していることから、回転翼の回転に伴う反転運動と、この反転運動中の粉体に対して気流を確実に接触させることができるうえ、気流の噴出口となるノズルが攪拌槽の周側面に開口形成されることから、導入気流の通路断面積を制限を受けることなく形成することができることから、風量不足になることはない。この結果、湿潤粉体であっても、良好な攪拌混合ならびに乾燥を行うことができる。
【0008】
また、請求項2に開示されているように、気流噴出ノズルから噴出される気流の主軸方向を、攪拌槽の内周面に想定した接線に対して回転翼回転方向で20から90度の範囲内に構成した場合には、供給気流として熱風を使用した場合であっても、攪拌槽の内周壁面が熱風に曝され局所加熱されることがなくなり、壁面に付着する粉体はやわらかい付着であり、安定的に粉粒体化することができる。
【0009】
さらに、請求項3に開示されているように、気流噴出ノズルから噴出される気流の噴出速度を5〜20m/sに設定した場合には、粉体内への気流巻き込みを効果的に行うことができる。
【0010】
さらに、請求項4に開示されているように、チョッパ軸を設けた場合には、攪拌槽内での粉体の流れが、回転槽内面に沿って回転するのみならず、底部への潜込みを含む複雑な流れとなり、より効率的な運転を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図は本発明の実施形態を示し、図1は回転翼式攪拌装置の要部横断平面図、図2は該装置の一部縦断正面図である。
この回転翼式攪拌装置は、二重槽で構成されている攪拌槽(1)の内槽(2)の底部に垂直軸周りに回転する回転翼(3)を配置し、攪拌槽(1)の底部を貫通して内槽(2)内に突入している回転駆動軸(4)の上端部に前記回転翼(3)を連結固定し、回転駆動軸(4)の下端を動力伝達機構(5)を介して駆動用電動モータ(6)に連動連結してある。
【0012】
攪拌槽(1)は内槽(2)・外槽(7)ともに、上半部周壁(2a)・(7a)を上窄まりのテーパー状に形成するとともに、下半部周壁(2b)・(7b)を円筒状に形成してあり、上端部に投入口(8)を設け、開閉可能な蓋部材(9)で投入口(8)の蓋をしている。そして、この内槽(2)・外槽(7)間は、ジャケットとして形成してあり、所定温度の熱媒を流通させることにより、内槽(2)の温度を保温して、内槽(2)内での結露を防止することができるように形成してある。
【0013】
回転翼(3)は、環状に形成した中心取付部(10)から遠心方向に直線状に延びる3本の翼片(11)を形成したもので、各翼片(11)には、その先端部に上方に湾曲する跳ね上げ部(12)が形成されており、さらに、回転翼(3)の進行方向側(P)の斜面に攪拌槽(1)内の粉体を掬い上げる掬い上げ面(13)が形成されている。この掬い上げ面(13)が攪拌槽(1)の底壁となす掬い上げ角度は先端寄り部分で掬い上げ角度が基端より部分での掬い上げ角度よりも小さく、かつ先端へ行くほど連続的に小さくなるように形成してある。
【0014】
そして、回転翼(3)の上端部よりも上側で、かつ攪拌される原料粉体の粉体表面よりも下側に対応する攪拌槽(1)の周壁面部分に気流噴出ノズル(14)が開口している。この気流噴出ノズル(14)は、その噴出主軸を噴出ノズル開口部での接線方向に対して、回転翼(3)の回転方向で20〜90度の範囲内の角度で内側を指向する状態に形成してある。
また、この気流噴出ノズル(14)は、その攪拌槽側の開口部を弁体(15)で開閉可能に構成している。この弁体(15)は、その閉弁姿勢において、弁体(15)の先端面が攪拌槽(1)における内槽(2)の内周面とほぼ面一となるように形成してある。
【0015】
符号(16)はバインダー液等の噴霧ノズルである。また、符号(20)は攪拌槽(1)内に噴出した気流を排気する排気口であり、排気に同伴する微粉は図示を省略したフィルターにより回収される。
【0016】
このように形成した回転翼式攪拌装置では、攪拌槽(1)の内槽(2)に処理される原料粉体を投入して、回転翼(3)を回転駆動すると、原料粉体は回転翼(3)の回転による遠心力によって半径方向に移動されるとともに、回転翼(3)での掬い上げで跳ね上げられ、半径方向での反転運動を繰り返すことになる。この反転運動を繰り返している原料粉体に対して、攪拌槽(1)の内槽(2)の周壁面から、気流が吹き込まれ、原料粉体を微細化して攪拌混合するとともに、乾燥することになる。
【0017】
このとき、吹き込まれる気流の噴出速度が5m/sよりも遅い場合には、回転翼の回転で原料粉体に与えられる遠心力により、粉体が攪拌槽の壁面に押し付けられことになるから、攪拌槽内周面に開口している気流噴出ノズル(14)に進入することになり、気流の噴出速度が20m/sよりも速くなると、原料粉体内に気流が充分巻き込まれずに、粉体を吹き上げるのみとなり、安定的な運転が行われなかった。
【0018】
なお、噴出ノズル(14)の噴出主軸は、噴出ノズル開口部での接線方向に対して、回転方向で20〜90度としているが、この角度を90度よりも大きな角度に設定すると、回転翼の回転に伴って移動する原料粉体の移動に対してカウンターになることになるから、原料粉体が噴出ノズル開口部に入り込みノズル目詰まりの原因となる。一方、噴出ノズル(14)の噴出主軸を噴出ノズル開口部での接線方向に対して回転方向で20度よりも小さい角度に設定した場合には、常に攪拌槽壁面に沿って気流が流れる状態となるため、局所加熱となりやすい。
【0019】
図3及び図4は本発明の別の実施形態を示す。
この回転翼式攪拌装置は、前述と同様、二重槽で構成されている攪拌槽(1)の内槽(2)の底部に垂直軸周りに回転する回転翼(3)を配置し、攪拌槽(1)の底部を貫通して内槽(2)内に突入している回転駆動軸(4)の上端部に前記回転翼(3)を連結固定し、回転駆動軸(4)の下端を動力伝達機構(5)を介して駆動用電動モータ(6)に連動連結し、回転翼(3)の上端部よりも上側で、かつ攪拌される原料粉体の粉体表面よりも下側に対応する攪拌槽(1)の周壁面部分に気流噴出ノズル(14)を開口し、その気流噴出ノズル(14)の噴出主軸を噴出ノズル開口部での接線方向に対して、回転翼(3)の回転方向で20〜90度の範囲内の角度で内側を指向する状態に形成し、気流噴出ノズル(14)を弁体(15)で開閉可能に構成してある。
【0020】
攪拌槽(1)には、攪拌槽(1)を貫通する状態で、駆動源(17)に連動連結されているチョッパ軸(18)が回転可能な状態に架着してあり、このチョッパ軸(18)に複数対のチョッパ羽根(19)が固設してある。このチョッパ羽根(19)は攪拌槽(1)の底部で回転する回転翼(3)とは干渉することのない状態に配置されていて、回転翼(3)の回転と協働して作動することにより回転翼(3)による反転流とチョッパ羽根(19)の回転による跳ね上げ作動とで、原料粉体を複雑な流れにするとともに、回転翼(3)の回転に伴う遠心力の影響を受けにくい回転翼(3)の中心寄り部分での塊状となっている原料粉体をも確実に攪拌できるようになっている。
【0021】
この実施形態の場合、チョッパ軸(18)は攪拌槽(1)を貫通する状態に配置しているが、このチョッパ軸(18)は攪拌槽(1)で片持の構造にしてもよい。
【0022】
なお、上記各実施形態では、攪拌槽(1)を内外二重槽に構成し、内外槽の間を熱媒が流通するジャケットに形成してあるが、攪拌槽(1)を一槽構造に形成するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、粉体の攪拌混合、造粒、乾燥、冷却等の各作業に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】一実施形態を示す回転翼式攪拌装置の要部横断平面図である。
【図2】図1に示す実施形態での一部縦断正面図である。
【図3】異なる実施形態での要部横断平面図である。
【図4】図3に示す実施形態での一部縦断正面図である。
【符号の説明】
【0025】
1…攪拌槽、3…回転翼、4…回転駆動軸、14…気流噴出ノズル、15…弁体、18…チョッパ軸、19…チョッパ羽根。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
攪拌槽(1)の底壁を貫通する状態で配置された回転駆動軸(4)に回転翼(3)を固定し、この回転翼(3)を攪拌槽(1)内の底部で回転させることにより、攪拌槽(1)内に投入された原料粉体を混合攪拌する攪拌装置であって、
回転翼(3)の上端部よりも上側で、かつ攪拌される原料粉体の粉体表面よりも下側に対応する攪拌槽(1)の周側面に、気流噴出ノズル(14)を開口させ、この気流噴出ノズル(14)の攪拌槽側開口部を弁体(15)で開閉可能に構成したことを特徴とする回転翼式攪拌装置。
【請求項2】
気流噴出ノズル(14)から噴出される気流の主軸方向を、攪拌槽(1)の内周面に想定した接線に対して回転翼回転方向で20から90度の範囲内に構成した請求項1に記載の回転翼式攪拌装置。
【請求項3】
気流噴出ノズル(14)から噴出される気流の噴出速度を5〜20m/sに設定した請求項1または2に記載の回転翼式攪拌装置。
【請求項4】
軸芯方向に間隔を隔ててチョッパ羽根(19)を配置してなるチョッパ軸(18)を、その両端部を攪拌槽内壁面に回転可能に枢支して攪拌槽(1)内に位置させている請求項1から3のいずれか1項に記載の回転翼式攪拌装置。
【請求項5】
攪拌槽(1)をジャケットを有する二重槽で構成した請求項1から4のいずれか1項に記載の回転翼式攪拌装置。
【請求項6】
攪拌槽(1)の底壁を貫通する状態で配置された回転駆動軸(4)に固定した回転翼(3)を攪拌槽(1)内の底部で回転させることにより、攪拌槽(1)内に投入された原料粉体を混合攪拌する攪拌方法であって、
回転翼(3)の回転に伴い半径方向で反転運動している原料粉体の内部に気流噴出ノズル(14)から気流を噴出させるようにした回転翼式攪拌装置での攪拌方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−54729(P2007−54729A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−242922(P2005−242922)
【出願日】平成17年8月24日(2005.8.24)
【出願人】(399008058)深江パウテック株式会社 (2)
【Fターム(参考)】