回転角度位置検出装置及びその誤差検出方法
【課題】簡易な構成でレゾルバから出力される多相出力信号に基づいて位置検出値を演算する位置信号演算部の検出誤差を求める。
【解決手段】ロータの回転角に応じて360°/N(Nは3以上の整数)毎の位相差を有する位置信号を出力し、且つ2以上の軸倍角を持つ多極のレゾルバと、前記レゾルバから出力されるN相位置信号に基づいて位置検出値を演算する位置信号演算部と、前記N相位置信号の前記位置信号演算部のN相入力端子への入力を順次シフトさせたN段階に切換える信号切換回路と、該信号切換回路で入力を切換える毎に、前記位置検出値からN回の検出誤差を機械角360度の全角度範囲で計測し、計測したN回の検出誤差の夫々について軸倍角数毎の範囲で軸倍角範囲平均値を算出し、算出したN個の軸倍角範囲平均値の平均値に基づいて前記位置信号演算部の検出誤差を算出する検出誤差算出部とを備えている。
【解決手段】ロータの回転角に応じて360°/N(Nは3以上の整数)毎の位相差を有する位置信号を出力し、且つ2以上の軸倍角を持つ多極のレゾルバと、前記レゾルバから出力されるN相位置信号に基づいて位置検出値を演算する位置信号演算部と、前記N相位置信号の前記位置信号演算部のN相入力端子への入力を順次シフトさせたN段階に切換える信号切換回路と、該信号切換回路で入力を切換える毎に、前記位置検出値からN回の検出誤差を機械角360度の全角度範囲で計測し、計測したN回の検出誤差の夫々について軸倍角数毎の範囲で軸倍角範囲平均値を算出し、算出したN個の軸倍角範囲平均値の平均値に基づいて前記位置信号演算部の検出誤差を算出する検出誤差算出部とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータの回転角に応じた3相以上の位置信号を出力し、且つ2以上の軸倍角を持つ多極のレゾルバと、このレゾルバから出力される3相以上の位置信号を位置検出値に変換する信号変換部とを備えた回転角度位置検出装置及びその誤差検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転角度位置検出装置としては、例えば、特許文献1〜特許文献3に記載の従来例が知られている。
特許文献1記載の従来例は、励磁信号が供給されたレゾルバから出力される3相電流信号を半固定抵抗によって構成される電流/電圧変換器で電圧信号に変換し、この電圧信号を3相/2相変換器でsin信号及びcos信号に変換し、さらにR/D変換器(レゾルバ・デジタル・コンバータ)でデジタル角度信号に変換し、このデジタル角度信号をCPUに供給して回転角位置信号を演算し、この回転角位置信号に基づいてDD(ダイレクトドライブ)モータを駆動するようにしている。
【0003】
ここで、CPUで演算される回転角位置信号には、通常、誤差が含まれる。その誤差の検証は、通常、基準エンコーダを搭載したレゾルバ精度測定器等で基準エンコーダの値とCPUから出力された回転角位置信号とを比較測定することによって、レゾルバの検出誤差を評価するようにしている。この検出誤差は、レゾルバ本体の検出誤差と、3相/2相変換器、R/D変換器、CPU等を含む位置検出部の誤差とが重畳されたものとなっている。
【0004】
レゾルバを使用した回転位置検出装置では、高精度互換性の確保が要求されている。通常、レゾルバを含むDDモータと、検出回路を含むドライブユニットと、取り替え負荷の1対1の組み合わせが一般的であったが、実際に複数の組み合わせを多数同時に使用するときや保守・交換時のメンテナンス性を考慮した場合、レゾルバと検出回路の各々の誤差が最小に抑えられていると、高精度な互換性を保ちつつ組み合わせの自由や交換が可能となる。
【0005】
このように高精度を保ちつつ交換できる調整方法として、特許文献2に記載の従来例が知られている。この従来例では、励磁信号により励磁される励磁コイルとSIN成分とCOS成分の振幅変調信号を出力する二次コイルとを有するレゾルバと、前記励磁信号と振幅変調信号とに基づき前記レゾルの回転角度に応じた角度検出値を出力する信号処理回路を有する位置検出回路を備え、レゾルバの特定の回転角度に相当する特定の励磁信号と特定の変調信号を前記信号処理回路に与えてその検出誤差を算出するようにしている。
【0006】
同様に、特許文献3に記載の従来例では、レゾルバから出力される2相の2次側電圧をデジタル信号に変換するAD変換手段と、デジタル変換された2次側電圧を補正する補正手段と、この補正手段の出力から位置情報を算出する位置算出手段とを備えたレゾルバインターフェース装置において、前記補正手段の信号からレゾルバの検出誤差を補正する補正パラメータを求める調整手段と、この調整手段で求めた補正パラメータを記憶する記憶手段とを備え、前記補正手段は、前記記憶手段に記憶した補正パラメータを使って前記2次側電圧の振幅位相及びオフセットを補正することにより、レゾルバの検出誤差を補正するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−23155号公報
【特許文献2】特開2003−344108号公報
【特許文献3】特開2007−57316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献2に記載の従来例にあっては、1相励磁2相出力型のレゾルバに対して検出誤差を算出するようにしたものであって、軸倍角4のレゾルバが記載されているものの、1相励磁で3相以上の多相出力型で且つ2以上の軸倍角を持つ多極のレゾルバについて適用することができないという未解決の課題がある。
同様に、上記特許文献3に記載の従来例にあっては、上記特許文献2と同様に1相励磁2相出力型のレゾルバを対象としてAD変換手段から出力されるデジタル変換されたレゾルの2次側電圧を補正する補正手段の信号から補正パラメータを求めるようにしており、3相以上の多相出力型で且つ2以上の軸倍角を持つ多極のレゾルバには適用できないとともに、その補正パラメータは2次側電圧に振幅調整ゲインを乗算する振幅調整と、2相の2次側電圧が90°の位相差となるように調整する位相調整と、オフセット調整とを行うもので、2相出力型のレゾルバに対しては有効であるが3相以上の多相出力型で且つ2以上の軸倍角を持つ多極のレゾルバには応用できず、さらにはレゾルバの検出誤差は検出できるが検出回路の検出誤差を検出することはできないという未解決の課題がある。
【0009】
そこで、本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、簡易な構成で3沿う以上の多相出力型で且つ2以上の軸倍角を持つ多極のレゾルバから出力される多相出力信号に基づいて位置検出値を演算する位置信号演算部の検出誤差を求めることができる回転角度位置検出装置及びその誤差検出方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の一の形態に係る回転角度検出装置は、ロータの回転角に応じて360°/N(Nは3以上の整数)毎の位相差を有する位置信号を出力し、且つ2以上の軸倍角を持つ多極のレゾルバを用いて回転角度位置を検出する回転角度位置検出装置であって、前記レゾルバから出力されるN相位置信号が入力され、当該N相位置信号を信号処理して位置検出値を演算する位置信号演算部と、前記レゾルバ及び前記位置信号演算部間と、当該位置信号演算部内との何れか一方に設けた前記N相位置信号の前記位置信号演算部のN相入力端子への入力を順次シフトさせたN段階に切換える信号切換回路と、該信号切換回路で入力を切換える毎に、前記位置信号演算部から出力される位置検出値に基づいてN回の検出誤差を機械角360度の全角度範囲で計測し、計測したN回の検出誤差の夫々について軸倍角数毎の範囲で軸倍角範囲平均値を算出し、算出したN個の軸倍角範囲平均値の平均値に基づいて前記位置信号演算部の検出誤差を算出する検出誤差算出部とを備えたことを特徴としている。
【0011】
この構成であれば、2以上の軸倍角を持つ多極のレゾルバから3相以上のN相位置信号が出力され、このN相位置信号が、切換回路によって位置信号演算部のN相入力端子に順次シフトされたN段階分入力され、切換回路で入力を切換える毎に、位置信号演算部から出力される位置検出値に基づいてレゾルバ側の検出誤差及び位置信号演算部の検出誤差が重畳された検出誤差を機械角260度の全角度範囲で計測し、計測した各計測誤差の軸倍角数毎の範囲でN個の軸倍角平均値を算出し、N個の軸倍角平均値の平均値を算出することにより、レゾルバ側の検出誤差を相殺して位置信号演算部側の検出誤差のみを算出することができる。
【0012】
また、本発明の一の形態に係る回転角度検出装置は、A相、B相及びC相の120度の位相差を有する位置信号を出力し、且つ2以上の軸倍角を持つ多極のレゾルバを用いて回転角度位置を検出する回転角度位置検出装置であって、前記レゾルバから出力される3相位置信号が入力され、当該3相位置信号を信号処理して位置検出値を演算する位置信号演算部と、前記レゾルバ及び前記位置信号演算部間と、当該位置信号演算部内との何れか一方に設けた前記3相位置信号の前記位置信号演算部のA相、B相及びC相入力端子への入力をA相、B相及びC相、B相、C相及びA相、C相、A相及びB相の3段階に切換える信号切換回路と、該信号切換回路で入力を切換える毎に、前記位置信号演算部から出力される位置検出値に基づいて3回の検出誤差を機械角360度の全角度範囲で計測し、計測した3回の検出誤差の夫々について軸倍角数毎の範囲で軸倍角範囲平均値を算出し、算出した3個の軸倍角範囲平均値の平均値に基づいて前記位置信号演算部の検出誤差を算出する検出誤差算出部とを備えたことを特徴としている。
この構成であれば、A相、B相及びC相の位置信号を出力する3相出力型で且つ2以上の軸倍角を持つ多極のレゾルバにおいて、位置信号演算部の検出誤差を正確に検出することができる。
【0013】
また、本発明の他の形態に係る回転角度検出装置は、記検出誤差算出部で算出した位置信号演算部の検出誤差を補正データとして当該位置信号換算部で演算する位置検出信号を補正する信号補正部を備えていることを特徴としている。
この構成によれば、検出誤差算出部で算出した位置信号演算部の検出誤差を補正データとして位置信号演算部で演算する位置検出信号を補正するので、検出誤差を抑制した位置信号演算部を構成することができる。
【0014】
また、本発明の他の形態に係る回転角度検出装置は、前記検出誤差算出部で算出した位置信号演算部の検出誤差を、当該検出誤差算出部で計測した検出誤差から減算してレゾルバ側の検出誤差を求めるレゾルバ検出誤差検出部を備えていることを特徴としている。
この構成によれば、検出誤差算出部で算出した位置信号演算部の検出誤差を、検出誤差算出部で計測した検出誤差から減算することにより、レゾルバ側の検出誤差を算出することができる。このレゾルバ側の検出誤差をレゾルバ側で補正しておくことにより、検出誤差を抑制したレゾルバを構成することができる。このため、レゾルバと位置信号演算部との互換性を確保することができ、レゾルバと位置信号演算部とを任意に組合せることができる。
【0015】
さらに、本発明の一の形態に係る回転角度位置検出装置の誤差検出方法は、ロータの回転角に応じて360°/N(Nは3以上の整数)毎の位相差を有するN相の位相信号を出力し、且つ2以上の軸倍角を持つ多極のレゾルバと、該レゾルバから出力されるN相位置信号が入力され、当該N相位置信号を信号処理して位置検出値を演算する位置信号演算部とを有する回転角度位置検出装置の誤差検出方法であって、前記位置信号演算部のN相入力端子への前記レゾルバからのN相位置信号を順次シフトさせてN段階に切換えて入力するステップと、該N相位置信号を順次切換える毎に、前記位置信号演算部から出力される位置検出値に基づいて検出誤差を機械角360度の全角度範囲で計測するステップと、計測したN個の検出誤差について軸倍角数毎の範囲で軸倍角範囲平均値を算出し、算出したN個の軸倍角範囲平均値の平均値に基づいて前記位置信号演算の検出誤差を算出するステップとを備えたことを特徴としている。
この構成によれば、上述した回転角度位置検出装置と同様の作用を得ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ロータの回転角に応じて360°/N(Nは3以上の整数)毎の位相差を有するN相の位相信号を出力し、且つ2以上の軸倍角を持つ多極のレゾルバから出力されるN相位置信号を、位置信号演算部のN相入力端子に、順次シフトさせたN段階に切換えて入力し、入力信号を切換える毎に、位置信号演算部から出力される位置検出値に基づいて検出誤差を機械角360度の全角度範囲で計測し、計測したN個の検出誤差について軸倍角数毎の範囲で軸倍角範囲平均値を算出し、算出したN個の軸倍角範囲平均値の平均値を算出することにより、レゾルバ側の全周誤差を除去して位置信号演算部のみの検出誤差を正確に検出することができるという効果が得られる。
【0017】
そして、算出した位置信号演算部の検出誤差を、信号補正部で、位置信号演算部で演算する位置検出信号を補正することにより、検出誤差を抑制した高精度の位置信号演算部を構成することができる。
同様に、誤差検出部で計測した検出誤差から検出誤差算出部で算出した位置信号演算部の検出誤差を減算することにより、レゾルバ側の検出誤差を算出することができ、このレゾルバ側の検出誤差でレゾルバのN相位置信号を補正することにより、検出誤差を抑制した高精度のレゾルバを構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の回転角度検出装置を構成するレゾルバを装着した回転テーブル装置の軸方向の断面図である。
【図2】図1のレゾルバの平面から見た模式図である。
【図3】1相励磁3相出力の多極レゾルバにおけるステータのコイルの配線構造を示す回路図である。
【図4】制御システムの構成を示すブロック図である。
【図5】図4の検出誤差算出部で実行する検出誤差算出処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図6】80歯レゾルバの全周精度波形を示す波形図である。
【図7】80歯レゾルバの全周精度波形の拡大図である。
【図8】相順ABCでの全周波形と全歯の平均誤差とを示す波形図である。
【図9】相順BCAでの全周波形と全歯の平均誤差とを示す波形図である。
【図10】相順CABでの全周波形と全歯の平均誤差とを示す波形図である。
【図11】相順ABC〜CABでの全歯の平均誤差とこれらの平均値とを示す波形図である。
【図12】本発明の第2の実施形態を示す80歯レゾルバの全周精度波形を示す波形図である。
【図13】本発明の第3の実施形態における検出誤差算出処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図14】本発明の第4の実施形態における制御システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は絶対角度位置検出装置としての3相の多極レゾルバを装着した回転テーブル装置を示す断面図である。
回転テーブル装置10は、図1に示すように、上端を開放した円筒状の固定ケース体22と、この固定ケース体22にクロスローラ軸受14を介して回転自在に支持された回転テーブル12とで構成されている。そして、固定ケース体22に対する回転テーブル12の回転角度位置検出装置を構成する多極レゾルバ30によって検出している。ここで、多極レゾルバ30およびクロスローラ軸受14は、回転テーブル装置10の半径方向内側からその順序で半径方向の同一平面上に配置されている。
【0020】
固定ケース体22には、内周側に軸方向上方(図1の上方向)に突出した円環状の内壁体22aが形成され、内壁体22aよりも径方向外側には、軸方向上方に突出した円環状の外壁体22bが形成されている。一方、回転テーブル12には、内周側に軸方向下方(図1の下方向)に突出した円環状の内壁体12aが形成され、内壁体12aよりも半径方向外側には、軸方向下方に突出した円環状の外壁体12bが形成されている。そして、固定ケース体22および回転テーブル12は、固定ケース体22の内壁体22aが回転テーブル12の内壁体12aと外壁体12bの間に、回転テーブル12の外壁体12bが固定ケース体22の内壁体22aと外壁体22bの間に位置するように互いに跨って配置されている。
【0021】
クロスローラ軸受14は、内輪14aと、外輪14bと、内輪14aおよび外輪14bの間で転動可能に設けられた複数のクロスローラ(ころ)14cとを有して構成されている。クロスローラ14cは、直径が長さよりわずかに大きな略円筒状で、軌道上偶数番目の回転軸と、軌道上奇数番目の回転軸が互いに90°傾斜している。
内輪14aは、固定ケース体22の内壁体22aに軸方向に押圧された状態で固定されている。具体的には、固定ケース体22の内壁体22aの上端を内輪14aの下面に当接させ、内輪押え26の押圧部26bを内輪14aの上面に接触させ、内輪押え26をボルト26aで固定ケース体22の内壁体22aに締結することにより固定される。
【0022】
外輪14bは、回転テーブル12の外壁体12bに軸方向に押圧された状態で固定されている。具体的には、回転テーブル12の外壁体12bの下端を外輪14bの上面に当接させ、外輪押え28の押圧部28bを外輪14bの下面に接触させ、外輪押え28をボルト28aで回転テーブル12の外壁体12bに締結することにより固定される。
なお、固定ケース体22は、ボルト24aにより固定板24に固定され、回転テーブル12は、例えば内壁体12aの内周面が後述するモータ40の回転軸の外周面に嵌合して回転駆動される。
【0023】
多極レゾルバ30は、図2に示すように、例えばインナーロータ式のインクリメンタルレゾルバであって、環状の成層鉄心からなる円環状のレゾルバロータ18と、このレゾルバロータ18の外側に所定間隔をもって対向して同軸的に配置された環状の成層鉄心で構成された環状のレゾルバステータ20とを有する。レゾルバロータ18は、レゾルバステータ20との対向面となる外周面に突起状の例えば80個の歯19が、円周方向に等間隔に形成されている。一方、レゾルバステータ20のレゾルバロータ18との対向面に形成されたコイル21aを巻装したポール21bにも歯21cが形成されているが、隣り合うポール21bとは1/3歯分のずれを持ち、且つポール21bは円周方向に等間隔に形成されている。このインクリメンタル型の多極レゾルバ30は、この例ではレゾルバロータ18の歯19が80個形成されており、1回転につき、基本波成分が80周期となるインクリメンタルレゾルバ信号を出力する軸倍角80Xとされている。すなわち、レゾルバロータ71の一回転当たり、4096(=212)×80=327680パルスのデジタル角度信号φに変換される。つまり、0から4095までのカウントが80回繰り返されたデジタル値となる。
【0024】
そして、レゾルバロータ18は、ボルト18bにより回転テーブル12の内壁体12aの外周面に取り付けられている。
一方、レゾルバステータ20は、ボルト20cにより固定ケース体22における内輪押え26の内周面に取り付けられ、内輪押え26と一体に固定ケース体22の内壁体22aの内周面側に固定されている。
【0025】
次に、レゾルバステータ20の配線構造を説明する。
図3は、1相励磁3相出力の多極レゾルバ30のレゾルバステータ20のコイルの配線構造を示す回路図である。
レゾルバステータ20は、環状部材の内周に等間隔で24個のポール21bと、各ポール21bに巻装した3相のA相コイルLA、B相コイルLB及びC相コイルLCを備えている。
A〜C相コイルLA〜LCのそれぞれは、図2に示すように、レゾルバステータ20の内周面に反時計方向にA相コイルLA、B相コイルLB及びC相コイルLCの順で繰り返して巻装されている。
【0026】
ここで、A相コイルLAは、図2及び図3に示すように、2つ置きの8つのポール22に個別に巻装された8つのコイル部LA11、LA12、……LA18が直列に接続されている。また、B相コイルLBも、図2及び図3に示すように、2つ置きの8つのポール22に個別に巻装された8つのコイル部LB11、LB12、……LB18が直列に接続されている。さらに、C相コイルLCも、図2及び図3に示すように、2つ置きの8つのポール22に個別に巻装された8つのコイル部LC11、LC12、……LC18が直列に接続されている。
そして、A相コイルLA、B相コイルLB及びC相コイルLCのコイル部LA11、LB11及びLC11側の端部が互いに接続されて中性点が形成され、この中性点が接続端子COMに接続されている。
【0027】
そして、A相コイルLA、B相コイルLB及びC相コイルLCのコイルLA11、LB11、LC11および第2系統のコイルLA21、LB21、LC21に、端子COMから正弦波からなる励磁信号sinωtが入力されることにより、他端側から下式に示すように、互いに位相が120°異なる3相のレゾルバ信号φA、φB及びφCを得ることができる。
A相:φA=(ADC+AAC1sin(θ))sinωt ……(1)
B相:φB=(BDC+BAC1sin(θ+120°))sinωt ……(2)
C相:φC=(CDC+CAC1sin(θ+240°))sinωt ……(3)
ここで、ADC、BDC及びCDCはA相、B相及びC相に含まれる直流成分であり、AAC1sin(θ)、BAC1sin(θ+120°)及びCAC1sin(θ+240°)はA相、B相及びC相に含まれる1次の交流成分である。
また、後述するように発振器50から励磁信号の供給を受けて3相コイルLA〜LCのコイル部LA11〜LC18によりレゾルバ信号φA、φB及びφCが検出されるので、励磁用コイルを設ける必要がなく、配線構造が簡素となる。
【0028】
次に、本実施の形態に係る制御システムの構成を説明する。
図4は、制御システムの構成を示すブロック図である。
制御システムは、図4に示すように、DDモータ40と、DDモータ40の回転軸の外周面に嵌合する多極レゾルバ30と、多極レゾルバ30から出力されるA相レゾルバ信号φA、B相レゾルバ信号φB及びC相レゾルバ信号φCに基づいて回転角度を検出する位置信号演算部としての中継装置200と、中継装置200で検出した回転角度に基づいてモータ40を制御するパワーアンプ300とを有して構成されている。
【0029】
中継装置200は、発振器50と、発振器50から出力される励磁信号を適度な信号レベルに増幅する増幅器52と、発振器50から出力される励磁信号を移相する移相器53とを有する励磁信号形成回路54を備えている。増幅器52から出力される励磁信号sinωtが多極レゾルバ30のA〜C相のコイルLA〜LCの中性点に接続された端子COMに供給される。また、移相器53は、発振器50から出力される励磁信号の位相を遅らせ、2相のレゾルバ信号のうちのキャリア信号の位相と同期させたRef信号を後述するR/D変換器60に供給する。
【0030】
中継装置200は、さらに、コイルLA〜LCから出力される3相検出電流IA、IB及びICが入力される電流/電圧変換器56と、この電流/電圧変換器56の出力がそれぞれ入力されてSIN信号及びCOS信号に変換する3相/2相変換器57と、この3相/2相変換器57から出力されるSIN信号及びCOS信号が入力されて、これら2相出力を移相器53から供給される移相出力に基づいて信号処理してデジタル角度信号φに変換して出力するR/D(レゾルバ/デジタル)変換器58とを備えている。
【0031】
電流/電圧変換器56では、半固定式のセンス抵抗器R1、R2及びR3を使用して、コイルLA〜LCから出力される3相検出電流IA、IB及びICを下記(4)式、(4)式及び(6)式で表される3相検出電圧VA、VB及びVCに変換する。
A相:VA=(ADC+AAC1sin(θ))sinωt …………(4)
B相:VB=(BDC+BAC1sin(θ+120°))sinωt……(5)
C相:VC=(CDC+CAC1sin(θ+240°))sinωt……(6)
ここで、AAC1sin(θ)、BAC1sin(θ+120°)およびCAC1sin(θ+240°)はA相、B相及びC相に含まれる1次(基本波)成分である。
【0032】
R/D変換器58は、移相器53から入力されるRef信号に基づいて、3/2相変換器57からのレゾルバ信号を所定周期でサンプリングし、サンプリングして得られた信号値をデジタル角度信号φとしてCPU59に出力する。具体的には、2相のレゾルバ信号は、レゾルバロータ18の1回転当たり4096(=212)×80=327680パルスのデジタル角度信号φaに変換される。つまり、0から327680までのカウントアップされたデジタル値となる。
CPU59は、R/D変換器58から出力されるデジタル角度信号φからDDモータ40の回転角度位置を演算し、その回転角度位置信号を、インバータ回路を含むモータ制御回路60に出力する。
【0033】
また、多極レゾルバ30のコイルLa、Lb及びLcと中継器200の入力端子tia、tib及びticとの間に信号切換回路61が介挿されている。この信号切換回路61は、例えば半導体スイッチング素子を有するアナログスイッチで構成され、多極レゾルバ30から出力されるA相レゾルバ信号φA、B相レゾルバ信号φB及びC相レゾルバ信号φCがそれぞれ個別に入力されるスイッチ回路SWa、SWb及びSWcを有する。これらスイッチ回路SWa〜SWcのそれぞれは、並列に配置された3つのスイッチ部S1、S2及びS3を有し、これらスイッチ部S1、S2及びSeの一方の固定端子tf11、tf12及びtf13にA相レゾルバ信号φA、B相レゾルバ信号φB及びC相レゾルバ信号φCが入力され、他方の固定端子tf21、tf22及びtf23が互いに接続されて中継装置200の入力端子tia、tib及びticに接続されている。
【0034】
そして、各スイッチ回路SWa、SWb及びSWcのスイッチ部S1〜S3が、選択信号SL1及びSL2によって、選択的に3段階にオンオフ制御される。
すなわち、選択信号SL1及びSL2がともに論理値“0”であるときには、図4に示すように、スイッチ回路SWaのスイッチ部S1がオンに、スイッチ部S2及びS3がオフに制御され、スイッチ回路SWbのスイッチ部S2がオンに、スイッチ部S1及びS3がオフに制御され、スイッチ回路SWcのスイッチ部S3がオンに、スイッチ部S1及びS2がオフに制御される。
このため、中継装置200の入力端子tiaにA相レゾルバ信号φAが入力され、中継装置200の入力端子tibにB相レゾルバ信号φBが入力され、中継装置200の入力端子ticにC相レゾルバ信号φCが入力される。
【0035】
また、選択信号SL1が論理値“1”で且つ選択信号SL2が論理値“0”であるときには、スイッチ回路SWaのスイッチ部S2がオンに、スイッチ部S1及びS3がオフに制御され、スイッチ回路SWbのスイッチ部S3がオンに、スイッチ部S1及びS2がオフに制御され、スイッチ回路SWcのスイッチ部S1がオンに、スイッチ部S2及びS3がオフに制御される。
このため、中継装置200の入力端子tiaにB相レゾルバ信号φBが入力され、中継装置200の入力端子tibにC相レゾルバ信号φCが入力され、中継装置200の入力端子ticにA相レゾルバ信号φAが入力される。
【0036】
さらに、選択信号SL1が論理値“0”で且つ選択信号SL2が論理値“1”であるときには、スイッチ回路SWaのスイッチ部S3がオンに、スイッチ部S1及びS2がオフに制御され、スイッチ回路SWbのスイッチ部S1がオンに、スイッチ部S2及びS3がオフに制御され、スイッチ回路SWcのスイッチ部SステップS2がオンに、スイッチ部S1及びS3がオフに制御される。
【0037】
このため、中継装置200の入力端子tiaにC相レゾルバ信号φCが入力され、中継装置200の入力端子tibにA相レゾルバ信号φAが入力され、中継装置200の入力端子ticにB相レゾルバ信号φBが入力される。
信号切換回路61に供給される選択信号SL1及びSL2は、検出誤差算出部62から入力される。この検出誤差算出部62は、CPU等の演算処理装置を備えており、CPU59から出力される回転角位置信号が入力されているとともに、検出誤差検出開始スイッチSWsが設けられている。
【0038】
そして、検出誤差算出部62は、図5に示す検出誤差算出処理を実行する。この検出誤差算出処理は、所定時間(例えば10mec)毎のタイマ割込処理として実行され、図5に示すように、先ず、ステップS1で、検出誤差検出開始スイッチSWsのスイッチ信号を読込み、この検出誤差検出開始スイッチSWsがオン状態であるか否かを判定し、これがオフ状態であるときにはステップS2に移行して、ともに論理値“0”の選択信号SL1及びSL2を信号切換回路61に出力してからタイマ割込処理を終了して所定のメインプログラムに復帰する。
【0039】
一方、ステップS1の判定結果が、検出誤差検出開始スイッチSWsがオン状態であるときには、ステップS3に移行して、CPU59から出力される回転角度位置信号を読込み、次いでステップS4に移行して、読込んだ回転角度位置信号に基づいて下記(7)式で表される検出誤差Error1の計測を開始する。
次いで、ステップS5に移行して、検出誤差Error1の計測が完了したか否かを判定し、検出誤差Error1の計測が完了したか否かを判定し、計測が完了していないときには前記ステップS3に戻り、検出誤差Error1の計測が完了したときには、ステップS6に移行する。
このステップS6では、計測した検出誤差Error1をもとに80歯の平均値すなわち、80歯の1電気角は機械角4.5度に相当するので、機械角4.5度分の軸倍角範囲平均値Me1を算出して、所定の記憶領域に記憶する。
【0040】
次いで、ステップS7に移行して、論理値“1”の選択信号SL1と論理値“0”の選択信号SL2とを信号切換回路61に出力し、次いでステップS8に移行して、CPU59から出力される回転角度位置信号を読込み、次いで、ステップS9に移行して、回転角度位置信号に基づいて下記(8)式で表される検出誤差Error2の計測を開始する。
次いで、ステップS10に移行して、検出誤差Error2の計測が完了したか否かを判定し、計測が完了していないときには前記ステップS8に戻り、計測が完了したときにはステップS11に移行する。
【0041】
このステップS11では、計測した検出誤差Error2をもとに80歯の平均値すなわち機械角4.5度分の軸倍角範囲平均値Me2を算出し、これを所定の記憶領域に記憶してからステップS12に移行する。このステップS12では、論理値“0”の選択信号SL1と論理値“1”の選択信号SL2とを信号切換回路61に出力し、次いで、ステップS13に移行して、CPU59から出力される回転角度位置信号を読込み、次いでステップS14に移行して、回転角度位置信号に基づいて下記(9)式で表される検出誤差Error3の計測を開始する。
【0042】
次いで、ステップS15に移行して、検出誤差Error3の計測が完了したか否かを判定し、計測が完了していないときには前記ステップS13に戻り、計測が完了したときには、ステップS16に移行して、計測した検出誤差Error3をもとに80歯の平均値すなわち機械角4.5度分の軸倍角範囲平均値Me3を算出する。
次いで、ステップS17に移行して、算出した軸倍角範囲平均値Me1、Me2及びMe3の平均値(Me1+Me2+Me3)/3を算出することにより、レゾルバ側の全周誤差が除去された中継装置200の検出誤差Ecを算出し、算出した中継装置200を構成する検出回路の検出誤差EcをRAM等のメモリ63に形成した記憶領域に記憶してからステップS18に移行する。
【0043】
このステップS18では、算出した中継装置200を構成する検出回路の検出誤差Ecを例えば検出誤差Error1から減算することにより、レゾルバ30側の検出誤差Erを算出し、これを所定の記憶領域に記憶してから誤差算出処理を終了して所定のメインプログラムに復帰する。
なお、レゾルバ側の検出誤差Er1、Er2及びErの誤差波形には2次までの高調波成分が重畳しているものとする。同様に、中継装置200の検出誤差Ecについても誤差波形には2次までの高調波が重畳しているものとする。
【0044】
Error1=Er1+Ec
Er1=Rdc11+Rs11sinθ+Rc11cosθ+Rs12sin2θ
+Rc12cos2θ
Ec=Ddc1+Ds1sinθ+Dc1cosθ+Ds2sin2θ+Dc2cos2θ
…………(7)
ここで、Rdc11:レゾルバ側誤差波形の直流成分
Rs11:レゾルバ側誤差波形のSIN1次成分
Rc11:レゾルバ側誤差波形のCOS1次成分
Rs12:レゾルバ側誤差波形のSIN2次成分
Rc12:レゾルバ側誤差波形のCOS2次成分
Ddc1:位置信号演算部側誤差波形の直流成分
Ds1:位置信号演算部側誤差波形のSIN1次成分
Dc1:位置信号演算部側誤差波形のCOS1次成分
Ds2:位置信号演算部側誤差波形のSIN2次成分
DC2:位置信号演算部側誤差波形のCOS2次成分
【0045】
Error2=Er2+Ec
Er2=Rdc21+Rs21sinθ+Rc21cosθ+Rs22sin2θ
+Rc22cos2θ
=Rdc11+Rs11sin(θ+120)+Rc11cos(θ+120)
+Rs12sin2(θ+120)+Rc12cos2(θ+120)
Ec=Ddc1+Ds1sinθ+Dc1cosθ+Ds2sin2θ+Dc2cos2θ
…………(8)
ここで、Rdc21:レゾルバ側誤差波形の直流成分
Rs21:レゾルバ側誤差波形のSIN1次成分
Rc21:レゾルバ側誤差波形のCOS1次成分
Rs22:レゾルバ側誤差波形のSIN2次成分
Rc22:レゾルバ側誤差波形のCOS2次成分
【0046】
Error3=Er3+Ec
Er3=Rdc31+Rs31sinθ+Rc31cosθ+Rs32sin2θ
+Rc32cos2θ
=Rdc11+Rs11sin(θ+240)+Rc11cos(θ+240)
+Rs12sin2(θ+240)+Rc12cos2(θ+240)
Ec=Ddc1+Ds1sinθ+Dc1cosθ+Ds2sin2θ+Dc2cos2θ
…………(9)
ここで、Rdc31:レゾルバ側誤差波形の直流成分
Rs31:レゾルバ側誤差波形のSIN1次成分
Rc31:レゾルバ側誤差波形のCOS1次成分
Rs32:レゾルバ側誤差波形のSIN2次成分
Rc32:レゾルバ側誤差波形のCOS2次成分
【0047】
次に、上記実施形態の動作を説明する。
モータ制御回路60によって、モータ40が回転駆動されると、回転テーブル12に回転トルクが付与され、回転テーブル12が回転する。
このときに、多極レゾルバ30の3相コイルLA〜LCの中性点には、端子COMを介して中継装置200の励磁信号形成回路54から励磁信号sinωtが供給されている。このため、回転テーブル12と一体に回転するレゾルバロータ18との間のリラクタンス変化が検出され、3相コイルLA〜LCにおけるコイル部LA11〜LC18から3相検出電流でなるA相レゾルバ信号φA、B相レゾルバ信号φB及び中継装置200の入力端子tia、tib及びticにそれぞれ入力される。
これら各相レゾルバ信号φA〜φCは、電流/電圧変換器56で3相検出電圧VA〜VCに変換される。これら3相検出電圧VA〜VCは3相/2相変換器57に供給されて、SIN信号及びCOS信号に変換される。
【0048】
次いで、R/D変換器58で移相器53から供給される発振器50から出力される励磁信号の位相を遅らせて3相/2相変換器57から出力されるSIN信号及びCOS信号のキャリア信号の位相と同期させたRef信号に基づいてSIN信号及びCOS信号をデジタル角度信号φに変換する。
そして、このデジタル角度信号φがCPU59に供給されて、DDモータ40の回転角度位置検出値を演算し、この回転各位置検出値をモータ制御回路60に出力することにより、このモータ制御回路60でDDモータ40を駆動制御する。
【0049】
ところで、通常状態では、多極レゾルバ30から出力されるA相レゾルバ信号φA、B相レゾルバ信号B及びC相レゾルバ信号Cには検出誤差Erを含んでいるとともに、中継装置200で算出される回転角度位置検出値にも中継装置200で発生する検出誤差Ecを含んでいる。
したがって、CPU59から出力される回転角度位置検出値にはレゾルバ側の検出誤差Erと中継装置200で発生する検出誤差Ecが重畳されている。
【0050】
ここで、レゾルバが、電気角360度が機械角360度に相当するアブソリュートレゾルバで構成されている場合には、以下に説明するように、3等分割処理を行うことにより、中継装置200側の検出誤差を正確に検出することができる。
すなわち、DDモータ40をモータ制御回路60で回転駆動して、多極レゾルバ30からA相レゾルバ信号φA、B相レゾルバ信号φB及びC相レゾルバ信号φCが出力されている状態で、検出誤差算出部62の検出誤差検出開始スイッチSWsをオン状態とすることにより、前述した図5に示す検出誤差算出処理のステップS1〜ステップS13を実行して前述した(1)式〜(3)式で表される検出誤差Error1〜Error3を計測する。
【0051】
このため、先ず、信号切換回路61で、アブソリュートレゾルバから出力されるA相レゾルバ信号φA,B相レゾルバ信号φB及びC相レゾルバ信号φCが、それぞれ中継装置200の入力端子tia、tib及びticに供給されている状態で、CPU59から出力される回転角度位置検出値に基づいて精度測定を行うことにより、前記(1)式で表される検出誤差Error1を計測する。
【0052】
次いで、信号切換回路61に対して論理値“1”の選択信号SL1及び論理値“0”の選択信号SL2を出力して、アブソリュートレゾルバのB相レゾルバ信号φB、C相レゾルバ信号φC及びA相レゾルバ信号φAをそれぞれ中継装置200の入力端子tia、tib及びticに入力し、この状態で、CPU59から出力される回転角度位置検出値を測定して、検出誤差Error2を計測する。
【0053】
さらに、信号切換回路61に対して論理値“0”の選択信号SL1及び論理値“1”の選択信号SL2を出力して、アブソリュートレゾルバのC相レゾルバ信号φC、A相レゾルバ信号φA及びB相レゾルバ信号φBをそれぞれ中継装置200の入力端子tia、tib及びticに入力し、この状態で、CPU59から出力される回転角度位置検出値を測定して、検出誤差Error3を計測する。
【0054】
そして、計測した3つの検出誤差Error1〜Error3を加算して3で除することにより、検出誤差平均値Errormを算出する。
このとき、前述した(1)〜(3)式から明らかなように、検出誤差Error1に含まれるレゾルバ検出誤差Erに対して、検出誤差Error2に含まれるレゾルバ検出誤差Erの各信号成分が120度の位相差を有し、検出誤差Error3に含まれるレゾルバ検出誤差Erの各信号成分が240°の位相差を有することになる。
【0055】
このため、三相交流の起電力の和はSINθ+SIN(θ+120°)+SIN(θ+240°)=0となることから120度ずつ位相が異なるレゾルバの検出誤差Erを加算することにより、下記10式で表されるように、レゾルバの検出誤差Erは零となり、中継装置200の検出誤差のみが残ることになり、中継装置200を構成する回路の検出誤差Ecを容易且つ正確に算出することができる。
Ec=(Error1+Error2+Error3)/3
=0+Ec …………(10)
となり、レゾルバ側の誤差が消え、回路側の誤差のみが得られる。
【0056】
ところが、多極レゾルバ30の場合には、レゾルバロータ18の全周360度にわたる誤差を測定した例が図6に示すようになる。
ここで、レゾルバロータ18には80個の歯19が形成されているので、中継装置200の電気角360度は機械角4.5度に相当する。この図6の全周波形をさらに0度〜45度の範囲で拡大した例を図7に示す。
【0057】
この図7から明らかなように、1電気角(=機械角4.5度)の範囲に発生している1サイクル分の誤差成分は、機械角度を推移すると、機械角0度〜4.5度の範囲から18度〜22.4度の範囲までは少しずつ増え、その後は少しずつ減少している。
この結果、機械角0度〜4.5度の範囲で3等分割を計測する場合と、他の角度範囲で3等分割を計測した場合では結果が異なることになる。
【0058】
つまり、対象となる測定値が異なると、上述したアブソリュートレゾルバのように3等分割処理を行った場合には、結果が異なることになり、より真値を求めることが不可能となる。
そこで、本実施形態では、DDモータ40をモータ制御回路60で回転駆動して、多極レゾルバ30からA相レゾルバ信号φA、B相レゾルバ信号φB及びC相レゾルバ信号φCが出力されている状態で、検出誤差算出部62の検出誤差検出開始スイッチSWsをオン状態とすることにより、前述した図5に示す検出誤差算出処理が実行される。
【0059】
このため、先ず、信号切換回路61で、多極レゾルバ30から出力されるA相レゾルバ信号φA,B相レゾルバ信号φB及びC相レゾルバ信号φCが、それぞれ中継装置200の入力端子tia、tib及びticに供給されている状態で、CPU59から出力される回転角度位置検出値に基づいて精度測定を行うことにより、前記(1)式で表される検出誤差Error1を機械角360度の全周に渡って計測する。このときの計測結果の一例は、図8(a)に示すようになる。この図8(a)では、全周のうちの180度分を示している。
【0060】
次いで、信号切換回路61に対して論理値“1”の選択信号SL1及び論理値“0”の選択信号SL2を出力して、多極レゾルバ30のB相レゾルバ信号φB、C相レゾルバ信号φC及びA相レゾルバ信号φAをそれぞれ中継装置200の入力端子tia、tib及びticに入力し、この状態で、CPU59から出力される回転角度位置検出値を測定して、検出誤差Error2を機械角360度の全周に渡って計測する。このときの計測結果の一例は、図9(a)に示すようになる。この図9(a)では全周のうちの180度分を示している。
【0061】
さらに、信号切換回路61に対して論理値“0”の選択信号SL1及び論理値“1”の選択信号SL2を出力して、多極レゾルバ30のC相レゾルバ信号φC、A相レゾルバ信号φA及びB相レゾルバ信号φBをそれぞれ中継装置200の入力端子tia、tib及びticに入力し、この状態で、CPU59から出力される回転角度位置検出値を測定して、検出誤差Error3を計測する。このときの計測結果の一例は、図10(a)に示すようになる。この図10(a)では全周のうちの180度分を示している。
【0062】
そして、計測した検出誤差Error1、Error2及びError3のそれぞれについて全80歯の平均値である軸倍角範囲平均値Me1、Me2及びMe3を算出する。
これら軸倍角範囲平均値Me1、Me2及びMe3は、それぞれ、図8(b)の特性曲線L1、図9(b)の特性曲線L2及び図10(b)の特性曲線L3に示す誤差波形となる(機械角4.5度分)。
【0063】
このように、各相順での検出誤差の計測を、全歯を対象にして行い、その計測結果に対して、軸倍角範囲平均値Me1、Me2及びMe3を算出することにより、1歯ごとに増減していたレゾルバ側の誤差値(1サイクル成分)が画一化され、電気角360度当たりの誤差として認識することができる。
このため、算出した軸倍角範囲平均値Me1〜Me2及びMe3の平均値を求める3等分割平均処理することにより、図11で太い実線図示の特性曲線L4で示す3等分割平均値を求めることができる。この3等分割平均値は、図11から明らかなように、レゾルバ側の全周誤差が除去された結果となり、検出回路としての中継装置200側の検出誤差Ecを正確に検出することができる。
【0064】
そして、算出した中継装置200を構成する回路の検出誤差Ecを例えば計測した検出誤差Error1から減算することにより、レゾルバ側の検出誤差Erを求めることができる。
Er=Error1−Ec
=(Rdc11+RS11sinθ+RC11cosθ+RS12sin2θ+RC12cos2θ)
したがって、図4に示すように、算出した中継装置200を構成する回路の検出誤差Ecを補正パラメータとしてCPU59に接続された記憶装置を構成するRAM等のメモリ64に記憶しておき、CPU59でデジタル位置信号φからDDモータ40の回転位置検出値を演算する際に、メモリ64に記憶されている中継装置200を構成する回路の検出誤差Ecに応じた補正パラメータで回転位置検出値を補正することにより、検出誤差Ecを略零とする中継装置200を構成することができる。
【0065】
同様に、レゾルバ検出誤差Erも算出することができるので、このレゾルバ検出誤差Erに基づいて多極レゾルバ30から出力される3相レゾルバ信号φA、φB及びφCを補正することにより、レゾルバ検出誤差Erを略零とする多極レゾルバ30を構成することができる。
このように構成することにより、多極レゾルバ30と中継装置200との双方の検出誤差Er及びEcを略零とすることができ、多極レゾルバ30と中継装置200とを一対一で対応させる必要がなく、両者を任意に組合せることができ、メンテナンス時の多極レゾルバ30又は中継装置200の交換を行った場合でも、高精度を維持することができる。
【0066】
次に、本発明の第2の実施形態を図12について説明する。
この第2の実施形態では、レゾルバロータ18の全周分の検出誤差波形に代えて、相順をかえながら機械角45度分(10歯分)の検出誤差を計測し、計測した各相順の検出誤差の軸倍角平均値を算出するようにしたものである。
すなわち、第2の実施形態では、前述した図6に示す全80歯分の検出誤差では、図12に示すように、全周で機械角45度の範囲で8回の繰り返し誤差が確認されている。このため、前述した第1の実施形態における全周分の検出誤差Error1〜Error3を検出する場合に代えて、8回分のうちの1つ例えば機械角0度〜45度の範囲すなわち10歯分の検出誤差をABC相、BCA相及びCAB相の各相順について全周推定値Error11〜Error13として計測し、計測した10歯分の検出誤差Error11〜Error13のそれぞれの平均値を軸倍角平均値Me11〜Me13として算出し、算出した軸倍角平均値Me11〜Me13の平均値(Me11+Me12+Me13)/3を算出して中継装置200を構成する検出回路の検出誤差Ecとする。これによっても、中継装置200を構成する検出回路の検出誤差Ecを正確に検出することができる。
【0067】
この第2の実施形態によると、ABC相、BCA相及びCAB相の各相順について10歯分すなわち機械角45度分の検出誤差を計測することにより、中継装置200を構成する検出回路の検出誤差Ecを正確に検出することができるので、前述した第1の実施形態におけるデータ処理量を1/8に低減することができ、検出誤差算出部62を構成するCPU等の演算処理装置の負担を軽減することができるとともに、検出誤差Ecを算出する処理速度を向上させることができ、さらにメモリ63の記憶容量を削減することができる。
【0068】
次に、本発明の第3の実施形態を図13について説明する。
この第3の実施形態では、ABC相、BCA相及びCAB相の各相順について検出誤差Error1〜Error3を計測する毎に軸倍角平均値Me1〜Me3を算出した場合に代えて、全ての検出誤差Error1〜Error3を計測した後に、各相順の検出誤差Error1〜Error3の軸倍角平均値Me1〜Me3を算出するようにしたものである。
【0069】
すなわち、第3の実施形態では、図13に示すように、前述した図5の検出誤差算出処理において、ステップS6、ステップS11を省略し、これに代えて、ステップS16で、各相順の検出誤差Error1〜Error3の軸倍角平均値Me1〜Me3を算出することを除いては、前述した図5の処理と同様の処理を行うようにしたものである。
この第3の実施形態では、各相順の検出誤差Error1〜Error3を計測した後に、各相順の検出誤差Error1〜Error3の軸倍角平均値Me1〜Me3を算出するので、前述した第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができ、しかも全歯の平均化を行う軸倍角平均処理を1回で済ませることができる。
【0070】
次に、本発明の第4の実施形態を図14について説明する。
この第4の実施形態は、本発明を互いに90度の位相差を有する4相レゾルバ信号を出力する多極レゾルバに適用したものである。
すなわち、第2の実施形態では、図14に示すように、多極レゾルバ30に4相のコイルがスター結線で巻装され、この多極レゾルバ30から出力される4相のレゾルバ信号φA、φB、φC及びφDが信号切換回路61を介して中継装置200の入力端子tia、tib、tic及びtidに入力されている。ここで、信号切換回路61は、前述した第1の実施形態における3相レゾルバ信号を順次シフトさせる場合と同様に、4相レゾルバ信号を順次4段階にシフトさせるように4つのスイッチ部を有する4つのスイッチ回路SWa〜SWdが設けられている。そして、各スイッチ回路SWa〜SWdのスイッチ部の切換えが選択信号SL1及びSL2を“00”、“10”、“01”及び“11”に切り換えることにより、4段階の切換えを行うようにしている。
【0071】
ここで、4段階の切換えは、選択信号SL1が“0”、SL2が“0”であるときには、入力端子tiaにA相レゾルバ信号φAが、入力端子tibにB相レゾルバ信号φBが、入力端子tcにC相レゾルバ信号φBが、入力端子tidにD相レゾルバ信号φDが入力される。
また、選択信号SL1が“1”、SL2が“0”であるときには、入力端子tiaにB相レゾルバ信号φBが、入力端子tibにC相レゾルバ信号φCが、入力端子tcにD相レゾルバ信号φDが、入力端子tidにA相レゾルバ信号φAが入力される。
【0072】
また、選択信号SL1が“0”、SL2が“1”であるときには、入力端子tiaにC相レゾルバ信号φCが、入力端子tibにD相レゾルバ信号φDが、入力端子tcにA相レゾルバ信号φAが、入力端子tidにB相レゾルバ信号φBが入力される。
また、選択信号SL1が“1”、SL2が“1”であるときには、入力端子tiaにD相レゾルバ信号φDが、入力端子tibにA相レゾルバ信号φAが、入力端子tcにB相レゾルバ信号φBが、入力端子tidにC相レゾルバ信号φCが入力される。
【0073】
そして、検出誤差算出部62で、検出誤差計測時に、信号切換回路61を4段階に切り換え、そのそれぞれにおいて、CPU59から出力される回転角度位置検出値に基づいて検出誤差Error1、Error2、Error3及びError4を計測し、計測した4つの検出誤差Error1〜Error4のそれぞれについて軸倍角平均値Me1〜Me4を算出し、算出した軸倍角平均値Me1〜Me4の平均値Mem=(Me1+Me2+Me3+Me4)/4を算出することにより、中継装置200を構成する検出回路の検出誤差Ecのみを算出することができる。
【0074】
さらに、算出した中継装置200を構成する検出回路の検出誤差Ecを例えば計測した検出誤差Error1から減算することにより、多極レゾルバ30の検出誤差Erのみを算出することができる。
このように、第4の実施形態によれば、4相のレゾルバ信号を出力するレゾルバ30についても、本発明を適用することができ、3相及び4相のレゾルバ信号を出力する多極レゾルバ30にかかわらず、5相以上の(360°/N)相で各相レゾルバ信号の総和が零となる多相出力型の多極レゾルバに本発明を適用することができる。
【0075】
なお、上記第1〜第4の実施形態においては、多極レゾルバ30の内側が回転するインナーロータ式で構成したが、これに限らず、多極レゾルバ30をレゾルバロータ18が外側で、レゾルバステータ20が内側となるアウターロータ式で構成することもできる。この場合には回転テーブル装置10もインナーロータ式に代えてアウターロータ式を適用する。
【0076】
また、上記第1〜第4の実施形態においては、多極レゾルバ30の軸倍角が80Xに設定されている場合について説明したが、これに限定されるものではなく、2以上の軸倍角2X,3X,4X……を持つ多極レゾルバに本発明を適用することができる。
また、上記実施の形態においては、本発明を回転テーブル装置10に設置した多極レゾルバに適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、回転テーブル12をロータとし、固定ケース体22の内周面にステータを配置したダイレクトモータ構成とすることもでき、さらに電動モータの回転軸の回転角度を直接検出したり、他の任意の回転駆動装置に適用して回転角度を検出したりすることができる。
【符号の説明】
【0077】
10…回転テーブル装置
12…回転テーブル
14…クロスローラ軸受
18…レゾルバロータ
19…歯
20…レゾルバステータ
21a…励磁コイル
21b…ポール
21c…歯
22…固定ケース体
30…多極レゾルバ
40…DDモータ
50…発振器
52…増幅器
53…移相器
56…電流/電圧変換器
57…3相/2相変換器
58…R/D変換器、
59…CPU
60…モータ制御回路
61…信号切換回路
62…検出誤差算出部
63,64…メモリ
200…中継装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータの回転角に応じた3相以上の位置信号を出力し、且つ2以上の軸倍角を持つ多極のレゾルバと、このレゾルバから出力される3相以上の位置信号を位置検出値に変換する信号変換部とを備えた回転角度位置検出装置及びその誤差検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転角度位置検出装置としては、例えば、特許文献1〜特許文献3に記載の従来例が知られている。
特許文献1記載の従来例は、励磁信号が供給されたレゾルバから出力される3相電流信号を半固定抵抗によって構成される電流/電圧変換器で電圧信号に変換し、この電圧信号を3相/2相変換器でsin信号及びcos信号に変換し、さらにR/D変換器(レゾルバ・デジタル・コンバータ)でデジタル角度信号に変換し、このデジタル角度信号をCPUに供給して回転角位置信号を演算し、この回転角位置信号に基づいてDD(ダイレクトドライブ)モータを駆動するようにしている。
【0003】
ここで、CPUで演算される回転角位置信号には、通常、誤差が含まれる。その誤差の検証は、通常、基準エンコーダを搭載したレゾルバ精度測定器等で基準エンコーダの値とCPUから出力された回転角位置信号とを比較測定することによって、レゾルバの検出誤差を評価するようにしている。この検出誤差は、レゾルバ本体の検出誤差と、3相/2相変換器、R/D変換器、CPU等を含む位置検出部の誤差とが重畳されたものとなっている。
【0004】
レゾルバを使用した回転位置検出装置では、高精度互換性の確保が要求されている。通常、レゾルバを含むDDモータと、検出回路を含むドライブユニットと、取り替え負荷の1対1の組み合わせが一般的であったが、実際に複数の組み合わせを多数同時に使用するときや保守・交換時のメンテナンス性を考慮した場合、レゾルバと検出回路の各々の誤差が最小に抑えられていると、高精度な互換性を保ちつつ組み合わせの自由や交換が可能となる。
【0005】
このように高精度を保ちつつ交換できる調整方法として、特許文献2に記載の従来例が知られている。この従来例では、励磁信号により励磁される励磁コイルとSIN成分とCOS成分の振幅変調信号を出力する二次コイルとを有するレゾルバと、前記励磁信号と振幅変調信号とに基づき前記レゾルの回転角度に応じた角度検出値を出力する信号処理回路を有する位置検出回路を備え、レゾルバの特定の回転角度に相当する特定の励磁信号と特定の変調信号を前記信号処理回路に与えてその検出誤差を算出するようにしている。
【0006】
同様に、特許文献3に記載の従来例では、レゾルバから出力される2相の2次側電圧をデジタル信号に変換するAD変換手段と、デジタル変換された2次側電圧を補正する補正手段と、この補正手段の出力から位置情報を算出する位置算出手段とを備えたレゾルバインターフェース装置において、前記補正手段の信号からレゾルバの検出誤差を補正する補正パラメータを求める調整手段と、この調整手段で求めた補正パラメータを記憶する記憶手段とを備え、前記補正手段は、前記記憶手段に記憶した補正パラメータを使って前記2次側電圧の振幅位相及びオフセットを補正することにより、レゾルバの検出誤差を補正するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−23155号公報
【特許文献2】特開2003−344108号公報
【特許文献3】特開2007−57316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献2に記載の従来例にあっては、1相励磁2相出力型のレゾルバに対して検出誤差を算出するようにしたものであって、軸倍角4のレゾルバが記載されているものの、1相励磁で3相以上の多相出力型で且つ2以上の軸倍角を持つ多極のレゾルバについて適用することができないという未解決の課題がある。
同様に、上記特許文献3に記載の従来例にあっては、上記特許文献2と同様に1相励磁2相出力型のレゾルバを対象としてAD変換手段から出力されるデジタル変換されたレゾルの2次側電圧を補正する補正手段の信号から補正パラメータを求めるようにしており、3相以上の多相出力型で且つ2以上の軸倍角を持つ多極のレゾルバには適用できないとともに、その補正パラメータは2次側電圧に振幅調整ゲインを乗算する振幅調整と、2相の2次側電圧が90°の位相差となるように調整する位相調整と、オフセット調整とを行うもので、2相出力型のレゾルバに対しては有効であるが3相以上の多相出力型で且つ2以上の軸倍角を持つ多極のレゾルバには応用できず、さらにはレゾルバの検出誤差は検出できるが検出回路の検出誤差を検出することはできないという未解決の課題がある。
【0009】
そこで、本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、簡易な構成で3沿う以上の多相出力型で且つ2以上の軸倍角を持つ多極のレゾルバから出力される多相出力信号に基づいて位置検出値を演算する位置信号演算部の検出誤差を求めることができる回転角度位置検出装置及びその誤差検出方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の一の形態に係る回転角度検出装置は、ロータの回転角に応じて360°/N(Nは3以上の整数)毎の位相差を有する位置信号を出力し、且つ2以上の軸倍角を持つ多極のレゾルバを用いて回転角度位置を検出する回転角度位置検出装置であって、前記レゾルバから出力されるN相位置信号が入力され、当該N相位置信号を信号処理して位置検出値を演算する位置信号演算部と、前記レゾルバ及び前記位置信号演算部間と、当該位置信号演算部内との何れか一方に設けた前記N相位置信号の前記位置信号演算部のN相入力端子への入力を順次シフトさせたN段階に切換える信号切換回路と、該信号切換回路で入力を切換える毎に、前記位置信号演算部から出力される位置検出値に基づいてN回の検出誤差を機械角360度の全角度範囲で計測し、計測したN回の検出誤差の夫々について軸倍角数毎の範囲で軸倍角範囲平均値を算出し、算出したN個の軸倍角範囲平均値の平均値に基づいて前記位置信号演算部の検出誤差を算出する検出誤差算出部とを備えたことを特徴としている。
【0011】
この構成であれば、2以上の軸倍角を持つ多極のレゾルバから3相以上のN相位置信号が出力され、このN相位置信号が、切換回路によって位置信号演算部のN相入力端子に順次シフトされたN段階分入力され、切換回路で入力を切換える毎に、位置信号演算部から出力される位置検出値に基づいてレゾルバ側の検出誤差及び位置信号演算部の検出誤差が重畳された検出誤差を機械角260度の全角度範囲で計測し、計測した各計測誤差の軸倍角数毎の範囲でN個の軸倍角平均値を算出し、N個の軸倍角平均値の平均値を算出することにより、レゾルバ側の検出誤差を相殺して位置信号演算部側の検出誤差のみを算出することができる。
【0012】
また、本発明の一の形態に係る回転角度検出装置は、A相、B相及びC相の120度の位相差を有する位置信号を出力し、且つ2以上の軸倍角を持つ多極のレゾルバを用いて回転角度位置を検出する回転角度位置検出装置であって、前記レゾルバから出力される3相位置信号が入力され、当該3相位置信号を信号処理して位置検出値を演算する位置信号演算部と、前記レゾルバ及び前記位置信号演算部間と、当該位置信号演算部内との何れか一方に設けた前記3相位置信号の前記位置信号演算部のA相、B相及びC相入力端子への入力をA相、B相及びC相、B相、C相及びA相、C相、A相及びB相の3段階に切換える信号切換回路と、該信号切換回路で入力を切換える毎に、前記位置信号演算部から出力される位置検出値に基づいて3回の検出誤差を機械角360度の全角度範囲で計測し、計測した3回の検出誤差の夫々について軸倍角数毎の範囲で軸倍角範囲平均値を算出し、算出した3個の軸倍角範囲平均値の平均値に基づいて前記位置信号演算部の検出誤差を算出する検出誤差算出部とを備えたことを特徴としている。
この構成であれば、A相、B相及びC相の位置信号を出力する3相出力型で且つ2以上の軸倍角を持つ多極のレゾルバにおいて、位置信号演算部の検出誤差を正確に検出することができる。
【0013】
また、本発明の他の形態に係る回転角度検出装置は、記検出誤差算出部で算出した位置信号演算部の検出誤差を補正データとして当該位置信号換算部で演算する位置検出信号を補正する信号補正部を備えていることを特徴としている。
この構成によれば、検出誤差算出部で算出した位置信号演算部の検出誤差を補正データとして位置信号演算部で演算する位置検出信号を補正するので、検出誤差を抑制した位置信号演算部を構成することができる。
【0014】
また、本発明の他の形態に係る回転角度検出装置は、前記検出誤差算出部で算出した位置信号演算部の検出誤差を、当該検出誤差算出部で計測した検出誤差から減算してレゾルバ側の検出誤差を求めるレゾルバ検出誤差検出部を備えていることを特徴としている。
この構成によれば、検出誤差算出部で算出した位置信号演算部の検出誤差を、検出誤差算出部で計測した検出誤差から減算することにより、レゾルバ側の検出誤差を算出することができる。このレゾルバ側の検出誤差をレゾルバ側で補正しておくことにより、検出誤差を抑制したレゾルバを構成することができる。このため、レゾルバと位置信号演算部との互換性を確保することができ、レゾルバと位置信号演算部とを任意に組合せることができる。
【0015】
さらに、本発明の一の形態に係る回転角度位置検出装置の誤差検出方法は、ロータの回転角に応じて360°/N(Nは3以上の整数)毎の位相差を有するN相の位相信号を出力し、且つ2以上の軸倍角を持つ多極のレゾルバと、該レゾルバから出力されるN相位置信号が入力され、当該N相位置信号を信号処理して位置検出値を演算する位置信号演算部とを有する回転角度位置検出装置の誤差検出方法であって、前記位置信号演算部のN相入力端子への前記レゾルバからのN相位置信号を順次シフトさせてN段階に切換えて入力するステップと、該N相位置信号を順次切換える毎に、前記位置信号演算部から出力される位置検出値に基づいて検出誤差を機械角360度の全角度範囲で計測するステップと、計測したN個の検出誤差について軸倍角数毎の範囲で軸倍角範囲平均値を算出し、算出したN個の軸倍角範囲平均値の平均値に基づいて前記位置信号演算の検出誤差を算出するステップとを備えたことを特徴としている。
この構成によれば、上述した回転角度位置検出装置と同様の作用を得ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ロータの回転角に応じて360°/N(Nは3以上の整数)毎の位相差を有するN相の位相信号を出力し、且つ2以上の軸倍角を持つ多極のレゾルバから出力されるN相位置信号を、位置信号演算部のN相入力端子に、順次シフトさせたN段階に切換えて入力し、入力信号を切換える毎に、位置信号演算部から出力される位置検出値に基づいて検出誤差を機械角360度の全角度範囲で計測し、計測したN個の検出誤差について軸倍角数毎の範囲で軸倍角範囲平均値を算出し、算出したN個の軸倍角範囲平均値の平均値を算出することにより、レゾルバ側の全周誤差を除去して位置信号演算部のみの検出誤差を正確に検出することができるという効果が得られる。
【0017】
そして、算出した位置信号演算部の検出誤差を、信号補正部で、位置信号演算部で演算する位置検出信号を補正することにより、検出誤差を抑制した高精度の位置信号演算部を構成することができる。
同様に、誤差検出部で計測した検出誤差から検出誤差算出部で算出した位置信号演算部の検出誤差を減算することにより、レゾルバ側の検出誤差を算出することができ、このレゾルバ側の検出誤差でレゾルバのN相位置信号を補正することにより、検出誤差を抑制した高精度のレゾルバを構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の回転角度検出装置を構成するレゾルバを装着した回転テーブル装置の軸方向の断面図である。
【図2】図1のレゾルバの平面から見た模式図である。
【図3】1相励磁3相出力の多極レゾルバにおけるステータのコイルの配線構造を示す回路図である。
【図4】制御システムの構成を示すブロック図である。
【図5】図4の検出誤差算出部で実行する検出誤差算出処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図6】80歯レゾルバの全周精度波形を示す波形図である。
【図7】80歯レゾルバの全周精度波形の拡大図である。
【図8】相順ABCでの全周波形と全歯の平均誤差とを示す波形図である。
【図9】相順BCAでの全周波形と全歯の平均誤差とを示す波形図である。
【図10】相順CABでの全周波形と全歯の平均誤差とを示す波形図である。
【図11】相順ABC〜CABでの全歯の平均誤差とこれらの平均値とを示す波形図である。
【図12】本発明の第2の実施形態を示す80歯レゾルバの全周精度波形を示す波形図である。
【図13】本発明の第3の実施形態における検出誤差算出処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図14】本発明の第4の実施形態における制御システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は絶対角度位置検出装置としての3相の多極レゾルバを装着した回転テーブル装置を示す断面図である。
回転テーブル装置10は、図1に示すように、上端を開放した円筒状の固定ケース体22と、この固定ケース体22にクロスローラ軸受14を介して回転自在に支持された回転テーブル12とで構成されている。そして、固定ケース体22に対する回転テーブル12の回転角度位置検出装置を構成する多極レゾルバ30によって検出している。ここで、多極レゾルバ30およびクロスローラ軸受14は、回転テーブル装置10の半径方向内側からその順序で半径方向の同一平面上に配置されている。
【0020】
固定ケース体22には、内周側に軸方向上方(図1の上方向)に突出した円環状の内壁体22aが形成され、内壁体22aよりも径方向外側には、軸方向上方に突出した円環状の外壁体22bが形成されている。一方、回転テーブル12には、内周側に軸方向下方(図1の下方向)に突出した円環状の内壁体12aが形成され、内壁体12aよりも半径方向外側には、軸方向下方に突出した円環状の外壁体12bが形成されている。そして、固定ケース体22および回転テーブル12は、固定ケース体22の内壁体22aが回転テーブル12の内壁体12aと外壁体12bの間に、回転テーブル12の外壁体12bが固定ケース体22の内壁体22aと外壁体22bの間に位置するように互いに跨って配置されている。
【0021】
クロスローラ軸受14は、内輪14aと、外輪14bと、内輪14aおよび外輪14bの間で転動可能に設けられた複数のクロスローラ(ころ)14cとを有して構成されている。クロスローラ14cは、直径が長さよりわずかに大きな略円筒状で、軌道上偶数番目の回転軸と、軌道上奇数番目の回転軸が互いに90°傾斜している。
内輪14aは、固定ケース体22の内壁体22aに軸方向に押圧された状態で固定されている。具体的には、固定ケース体22の内壁体22aの上端を内輪14aの下面に当接させ、内輪押え26の押圧部26bを内輪14aの上面に接触させ、内輪押え26をボルト26aで固定ケース体22の内壁体22aに締結することにより固定される。
【0022】
外輪14bは、回転テーブル12の外壁体12bに軸方向に押圧された状態で固定されている。具体的には、回転テーブル12の外壁体12bの下端を外輪14bの上面に当接させ、外輪押え28の押圧部28bを外輪14bの下面に接触させ、外輪押え28をボルト28aで回転テーブル12の外壁体12bに締結することにより固定される。
なお、固定ケース体22は、ボルト24aにより固定板24に固定され、回転テーブル12は、例えば内壁体12aの内周面が後述するモータ40の回転軸の外周面に嵌合して回転駆動される。
【0023】
多極レゾルバ30は、図2に示すように、例えばインナーロータ式のインクリメンタルレゾルバであって、環状の成層鉄心からなる円環状のレゾルバロータ18と、このレゾルバロータ18の外側に所定間隔をもって対向して同軸的に配置された環状の成層鉄心で構成された環状のレゾルバステータ20とを有する。レゾルバロータ18は、レゾルバステータ20との対向面となる外周面に突起状の例えば80個の歯19が、円周方向に等間隔に形成されている。一方、レゾルバステータ20のレゾルバロータ18との対向面に形成されたコイル21aを巻装したポール21bにも歯21cが形成されているが、隣り合うポール21bとは1/3歯分のずれを持ち、且つポール21bは円周方向に等間隔に形成されている。このインクリメンタル型の多極レゾルバ30は、この例ではレゾルバロータ18の歯19が80個形成されており、1回転につき、基本波成分が80周期となるインクリメンタルレゾルバ信号を出力する軸倍角80Xとされている。すなわち、レゾルバロータ71の一回転当たり、4096(=212)×80=327680パルスのデジタル角度信号φに変換される。つまり、0から4095までのカウントが80回繰り返されたデジタル値となる。
【0024】
そして、レゾルバロータ18は、ボルト18bにより回転テーブル12の内壁体12aの外周面に取り付けられている。
一方、レゾルバステータ20は、ボルト20cにより固定ケース体22における内輪押え26の内周面に取り付けられ、内輪押え26と一体に固定ケース体22の内壁体22aの内周面側に固定されている。
【0025】
次に、レゾルバステータ20の配線構造を説明する。
図3は、1相励磁3相出力の多極レゾルバ30のレゾルバステータ20のコイルの配線構造を示す回路図である。
レゾルバステータ20は、環状部材の内周に等間隔で24個のポール21bと、各ポール21bに巻装した3相のA相コイルLA、B相コイルLB及びC相コイルLCを備えている。
A〜C相コイルLA〜LCのそれぞれは、図2に示すように、レゾルバステータ20の内周面に反時計方向にA相コイルLA、B相コイルLB及びC相コイルLCの順で繰り返して巻装されている。
【0026】
ここで、A相コイルLAは、図2及び図3に示すように、2つ置きの8つのポール22に個別に巻装された8つのコイル部LA11、LA12、……LA18が直列に接続されている。また、B相コイルLBも、図2及び図3に示すように、2つ置きの8つのポール22に個別に巻装された8つのコイル部LB11、LB12、……LB18が直列に接続されている。さらに、C相コイルLCも、図2及び図3に示すように、2つ置きの8つのポール22に個別に巻装された8つのコイル部LC11、LC12、……LC18が直列に接続されている。
そして、A相コイルLA、B相コイルLB及びC相コイルLCのコイル部LA11、LB11及びLC11側の端部が互いに接続されて中性点が形成され、この中性点が接続端子COMに接続されている。
【0027】
そして、A相コイルLA、B相コイルLB及びC相コイルLCのコイルLA11、LB11、LC11および第2系統のコイルLA21、LB21、LC21に、端子COMから正弦波からなる励磁信号sinωtが入力されることにより、他端側から下式に示すように、互いに位相が120°異なる3相のレゾルバ信号φA、φB及びφCを得ることができる。
A相:φA=(ADC+AAC1sin(θ))sinωt ……(1)
B相:φB=(BDC+BAC1sin(θ+120°))sinωt ……(2)
C相:φC=(CDC+CAC1sin(θ+240°))sinωt ……(3)
ここで、ADC、BDC及びCDCはA相、B相及びC相に含まれる直流成分であり、AAC1sin(θ)、BAC1sin(θ+120°)及びCAC1sin(θ+240°)はA相、B相及びC相に含まれる1次の交流成分である。
また、後述するように発振器50から励磁信号の供給を受けて3相コイルLA〜LCのコイル部LA11〜LC18によりレゾルバ信号φA、φB及びφCが検出されるので、励磁用コイルを設ける必要がなく、配線構造が簡素となる。
【0028】
次に、本実施の形態に係る制御システムの構成を説明する。
図4は、制御システムの構成を示すブロック図である。
制御システムは、図4に示すように、DDモータ40と、DDモータ40の回転軸の外周面に嵌合する多極レゾルバ30と、多極レゾルバ30から出力されるA相レゾルバ信号φA、B相レゾルバ信号φB及びC相レゾルバ信号φCに基づいて回転角度を検出する位置信号演算部としての中継装置200と、中継装置200で検出した回転角度に基づいてモータ40を制御するパワーアンプ300とを有して構成されている。
【0029】
中継装置200は、発振器50と、発振器50から出力される励磁信号を適度な信号レベルに増幅する増幅器52と、発振器50から出力される励磁信号を移相する移相器53とを有する励磁信号形成回路54を備えている。増幅器52から出力される励磁信号sinωtが多極レゾルバ30のA〜C相のコイルLA〜LCの中性点に接続された端子COMに供給される。また、移相器53は、発振器50から出力される励磁信号の位相を遅らせ、2相のレゾルバ信号のうちのキャリア信号の位相と同期させたRef信号を後述するR/D変換器60に供給する。
【0030】
中継装置200は、さらに、コイルLA〜LCから出力される3相検出電流IA、IB及びICが入力される電流/電圧変換器56と、この電流/電圧変換器56の出力がそれぞれ入力されてSIN信号及びCOS信号に変換する3相/2相変換器57と、この3相/2相変換器57から出力されるSIN信号及びCOS信号が入力されて、これら2相出力を移相器53から供給される移相出力に基づいて信号処理してデジタル角度信号φに変換して出力するR/D(レゾルバ/デジタル)変換器58とを備えている。
【0031】
電流/電圧変換器56では、半固定式のセンス抵抗器R1、R2及びR3を使用して、コイルLA〜LCから出力される3相検出電流IA、IB及びICを下記(4)式、(4)式及び(6)式で表される3相検出電圧VA、VB及びVCに変換する。
A相:VA=(ADC+AAC1sin(θ))sinωt …………(4)
B相:VB=(BDC+BAC1sin(θ+120°))sinωt……(5)
C相:VC=(CDC+CAC1sin(θ+240°))sinωt……(6)
ここで、AAC1sin(θ)、BAC1sin(θ+120°)およびCAC1sin(θ+240°)はA相、B相及びC相に含まれる1次(基本波)成分である。
【0032】
R/D変換器58は、移相器53から入力されるRef信号に基づいて、3/2相変換器57からのレゾルバ信号を所定周期でサンプリングし、サンプリングして得られた信号値をデジタル角度信号φとしてCPU59に出力する。具体的には、2相のレゾルバ信号は、レゾルバロータ18の1回転当たり4096(=212)×80=327680パルスのデジタル角度信号φaに変換される。つまり、0から327680までのカウントアップされたデジタル値となる。
CPU59は、R/D変換器58から出力されるデジタル角度信号φからDDモータ40の回転角度位置を演算し、その回転角度位置信号を、インバータ回路を含むモータ制御回路60に出力する。
【0033】
また、多極レゾルバ30のコイルLa、Lb及びLcと中継器200の入力端子tia、tib及びticとの間に信号切換回路61が介挿されている。この信号切換回路61は、例えば半導体スイッチング素子を有するアナログスイッチで構成され、多極レゾルバ30から出力されるA相レゾルバ信号φA、B相レゾルバ信号φB及びC相レゾルバ信号φCがそれぞれ個別に入力されるスイッチ回路SWa、SWb及びSWcを有する。これらスイッチ回路SWa〜SWcのそれぞれは、並列に配置された3つのスイッチ部S1、S2及びS3を有し、これらスイッチ部S1、S2及びSeの一方の固定端子tf11、tf12及びtf13にA相レゾルバ信号φA、B相レゾルバ信号φB及びC相レゾルバ信号φCが入力され、他方の固定端子tf21、tf22及びtf23が互いに接続されて中継装置200の入力端子tia、tib及びticに接続されている。
【0034】
そして、各スイッチ回路SWa、SWb及びSWcのスイッチ部S1〜S3が、選択信号SL1及びSL2によって、選択的に3段階にオンオフ制御される。
すなわち、選択信号SL1及びSL2がともに論理値“0”であるときには、図4に示すように、スイッチ回路SWaのスイッチ部S1がオンに、スイッチ部S2及びS3がオフに制御され、スイッチ回路SWbのスイッチ部S2がオンに、スイッチ部S1及びS3がオフに制御され、スイッチ回路SWcのスイッチ部S3がオンに、スイッチ部S1及びS2がオフに制御される。
このため、中継装置200の入力端子tiaにA相レゾルバ信号φAが入力され、中継装置200の入力端子tibにB相レゾルバ信号φBが入力され、中継装置200の入力端子ticにC相レゾルバ信号φCが入力される。
【0035】
また、選択信号SL1が論理値“1”で且つ選択信号SL2が論理値“0”であるときには、スイッチ回路SWaのスイッチ部S2がオンに、スイッチ部S1及びS3がオフに制御され、スイッチ回路SWbのスイッチ部S3がオンに、スイッチ部S1及びS2がオフに制御され、スイッチ回路SWcのスイッチ部S1がオンに、スイッチ部S2及びS3がオフに制御される。
このため、中継装置200の入力端子tiaにB相レゾルバ信号φBが入力され、中継装置200の入力端子tibにC相レゾルバ信号φCが入力され、中継装置200の入力端子ticにA相レゾルバ信号φAが入力される。
【0036】
さらに、選択信号SL1が論理値“0”で且つ選択信号SL2が論理値“1”であるときには、スイッチ回路SWaのスイッチ部S3がオンに、スイッチ部S1及びS2がオフに制御され、スイッチ回路SWbのスイッチ部S1がオンに、スイッチ部S2及びS3がオフに制御され、スイッチ回路SWcのスイッチ部SステップS2がオンに、スイッチ部S1及びS3がオフに制御される。
【0037】
このため、中継装置200の入力端子tiaにC相レゾルバ信号φCが入力され、中継装置200の入力端子tibにA相レゾルバ信号φAが入力され、中継装置200の入力端子ticにB相レゾルバ信号φBが入力される。
信号切換回路61に供給される選択信号SL1及びSL2は、検出誤差算出部62から入力される。この検出誤差算出部62は、CPU等の演算処理装置を備えており、CPU59から出力される回転角位置信号が入力されているとともに、検出誤差検出開始スイッチSWsが設けられている。
【0038】
そして、検出誤差算出部62は、図5に示す検出誤差算出処理を実行する。この検出誤差算出処理は、所定時間(例えば10mec)毎のタイマ割込処理として実行され、図5に示すように、先ず、ステップS1で、検出誤差検出開始スイッチSWsのスイッチ信号を読込み、この検出誤差検出開始スイッチSWsがオン状態であるか否かを判定し、これがオフ状態であるときにはステップS2に移行して、ともに論理値“0”の選択信号SL1及びSL2を信号切換回路61に出力してからタイマ割込処理を終了して所定のメインプログラムに復帰する。
【0039】
一方、ステップS1の判定結果が、検出誤差検出開始スイッチSWsがオン状態であるときには、ステップS3に移行して、CPU59から出力される回転角度位置信号を読込み、次いでステップS4に移行して、読込んだ回転角度位置信号に基づいて下記(7)式で表される検出誤差Error1の計測を開始する。
次いで、ステップS5に移行して、検出誤差Error1の計測が完了したか否かを判定し、検出誤差Error1の計測が完了したか否かを判定し、計測が完了していないときには前記ステップS3に戻り、検出誤差Error1の計測が完了したときには、ステップS6に移行する。
このステップS6では、計測した検出誤差Error1をもとに80歯の平均値すなわち、80歯の1電気角は機械角4.5度に相当するので、機械角4.5度分の軸倍角範囲平均値Me1を算出して、所定の記憶領域に記憶する。
【0040】
次いで、ステップS7に移行して、論理値“1”の選択信号SL1と論理値“0”の選択信号SL2とを信号切換回路61に出力し、次いでステップS8に移行して、CPU59から出力される回転角度位置信号を読込み、次いで、ステップS9に移行して、回転角度位置信号に基づいて下記(8)式で表される検出誤差Error2の計測を開始する。
次いで、ステップS10に移行して、検出誤差Error2の計測が完了したか否かを判定し、計測が完了していないときには前記ステップS8に戻り、計測が完了したときにはステップS11に移行する。
【0041】
このステップS11では、計測した検出誤差Error2をもとに80歯の平均値すなわち機械角4.5度分の軸倍角範囲平均値Me2を算出し、これを所定の記憶領域に記憶してからステップS12に移行する。このステップS12では、論理値“0”の選択信号SL1と論理値“1”の選択信号SL2とを信号切換回路61に出力し、次いで、ステップS13に移行して、CPU59から出力される回転角度位置信号を読込み、次いでステップS14に移行して、回転角度位置信号に基づいて下記(9)式で表される検出誤差Error3の計測を開始する。
【0042】
次いで、ステップS15に移行して、検出誤差Error3の計測が完了したか否かを判定し、計測が完了していないときには前記ステップS13に戻り、計測が完了したときには、ステップS16に移行して、計測した検出誤差Error3をもとに80歯の平均値すなわち機械角4.5度分の軸倍角範囲平均値Me3を算出する。
次いで、ステップS17に移行して、算出した軸倍角範囲平均値Me1、Me2及びMe3の平均値(Me1+Me2+Me3)/3を算出することにより、レゾルバ側の全周誤差が除去された中継装置200の検出誤差Ecを算出し、算出した中継装置200を構成する検出回路の検出誤差EcをRAM等のメモリ63に形成した記憶領域に記憶してからステップS18に移行する。
【0043】
このステップS18では、算出した中継装置200を構成する検出回路の検出誤差Ecを例えば検出誤差Error1から減算することにより、レゾルバ30側の検出誤差Erを算出し、これを所定の記憶領域に記憶してから誤差算出処理を終了して所定のメインプログラムに復帰する。
なお、レゾルバ側の検出誤差Er1、Er2及びErの誤差波形には2次までの高調波成分が重畳しているものとする。同様に、中継装置200の検出誤差Ecについても誤差波形には2次までの高調波が重畳しているものとする。
【0044】
Error1=Er1+Ec
Er1=Rdc11+Rs11sinθ+Rc11cosθ+Rs12sin2θ
+Rc12cos2θ
Ec=Ddc1+Ds1sinθ+Dc1cosθ+Ds2sin2θ+Dc2cos2θ
…………(7)
ここで、Rdc11:レゾルバ側誤差波形の直流成分
Rs11:レゾルバ側誤差波形のSIN1次成分
Rc11:レゾルバ側誤差波形のCOS1次成分
Rs12:レゾルバ側誤差波形のSIN2次成分
Rc12:レゾルバ側誤差波形のCOS2次成分
Ddc1:位置信号演算部側誤差波形の直流成分
Ds1:位置信号演算部側誤差波形のSIN1次成分
Dc1:位置信号演算部側誤差波形のCOS1次成分
Ds2:位置信号演算部側誤差波形のSIN2次成分
DC2:位置信号演算部側誤差波形のCOS2次成分
【0045】
Error2=Er2+Ec
Er2=Rdc21+Rs21sinθ+Rc21cosθ+Rs22sin2θ
+Rc22cos2θ
=Rdc11+Rs11sin(θ+120)+Rc11cos(θ+120)
+Rs12sin2(θ+120)+Rc12cos2(θ+120)
Ec=Ddc1+Ds1sinθ+Dc1cosθ+Ds2sin2θ+Dc2cos2θ
…………(8)
ここで、Rdc21:レゾルバ側誤差波形の直流成分
Rs21:レゾルバ側誤差波形のSIN1次成分
Rc21:レゾルバ側誤差波形のCOS1次成分
Rs22:レゾルバ側誤差波形のSIN2次成分
Rc22:レゾルバ側誤差波形のCOS2次成分
【0046】
Error3=Er3+Ec
Er3=Rdc31+Rs31sinθ+Rc31cosθ+Rs32sin2θ
+Rc32cos2θ
=Rdc11+Rs11sin(θ+240)+Rc11cos(θ+240)
+Rs12sin2(θ+240)+Rc12cos2(θ+240)
Ec=Ddc1+Ds1sinθ+Dc1cosθ+Ds2sin2θ+Dc2cos2θ
…………(9)
ここで、Rdc31:レゾルバ側誤差波形の直流成分
Rs31:レゾルバ側誤差波形のSIN1次成分
Rc31:レゾルバ側誤差波形のCOS1次成分
Rs32:レゾルバ側誤差波形のSIN2次成分
Rc32:レゾルバ側誤差波形のCOS2次成分
【0047】
次に、上記実施形態の動作を説明する。
モータ制御回路60によって、モータ40が回転駆動されると、回転テーブル12に回転トルクが付与され、回転テーブル12が回転する。
このときに、多極レゾルバ30の3相コイルLA〜LCの中性点には、端子COMを介して中継装置200の励磁信号形成回路54から励磁信号sinωtが供給されている。このため、回転テーブル12と一体に回転するレゾルバロータ18との間のリラクタンス変化が検出され、3相コイルLA〜LCにおけるコイル部LA11〜LC18から3相検出電流でなるA相レゾルバ信号φA、B相レゾルバ信号φB及び中継装置200の入力端子tia、tib及びticにそれぞれ入力される。
これら各相レゾルバ信号φA〜φCは、電流/電圧変換器56で3相検出電圧VA〜VCに変換される。これら3相検出電圧VA〜VCは3相/2相変換器57に供給されて、SIN信号及びCOS信号に変換される。
【0048】
次いで、R/D変換器58で移相器53から供給される発振器50から出力される励磁信号の位相を遅らせて3相/2相変換器57から出力されるSIN信号及びCOS信号のキャリア信号の位相と同期させたRef信号に基づいてSIN信号及びCOS信号をデジタル角度信号φに変換する。
そして、このデジタル角度信号φがCPU59に供給されて、DDモータ40の回転角度位置検出値を演算し、この回転各位置検出値をモータ制御回路60に出力することにより、このモータ制御回路60でDDモータ40を駆動制御する。
【0049】
ところで、通常状態では、多極レゾルバ30から出力されるA相レゾルバ信号φA、B相レゾルバ信号B及びC相レゾルバ信号Cには検出誤差Erを含んでいるとともに、中継装置200で算出される回転角度位置検出値にも中継装置200で発生する検出誤差Ecを含んでいる。
したがって、CPU59から出力される回転角度位置検出値にはレゾルバ側の検出誤差Erと中継装置200で発生する検出誤差Ecが重畳されている。
【0050】
ここで、レゾルバが、電気角360度が機械角360度に相当するアブソリュートレゾルバで構成されている場合には、以下に説明するように、3等分割処理を行うことにより、中継装置200側の検出誤差を正確に検出することができる。
すなわち、DDモータ40をモータ制御回路60で回転駆動して、多極レゾルバ30からA相レゾルバ信号φA、B相レゾルバ信号φB及びC相レゾルバ信号φCが出力されている状態で、検出誤差算出部62の検出誤差検出開始スイッチSWsをオン状態とすることにより、前述した図5に示す検出誤差算出処理のステップS1〜ステップS13を実行して前述した(1)式〜(3)式で表される検出誤差Error1〜Error3を計測する。
【0051】
このため、先ず、信号切換回路61で、アブソリュートレゾルバから出力されるA相レゾルバ信号φA,B相レゾルバ信号φB及びC相レゾルバ信号φCが、それぞれ中継装置200の入力端子tia、tib及びticに供給されている状態で、CPU59から出力される回転角度位置検出値に基づいて精度測定を行うことにより、前記(1)式で表される検出誤差Error1を計測する。
【0052】
次いで、信号切換回路61に対して論理値“1”の選択信号SL1及び論理値“0”の選択信号SL2を出力して、アブソリュートレゾルバのB相レゾルバ信号φB、C相レゾルバ信号φC及びA相レゾルバ信号φAをそれぞれ中継装置200の入力端子tia、tib及びticに入力し、この状態で、CPU59から出力される回転角度位置検出値を測定して、検出誤差Error2を計測する。
【0053】
さらに、信号切換回路61に対して論理値“0”の選択信号SL1及び論理値“1”の選択信号SL2を出力して、アブソリュートレゾルバのC相レゾルバ信号φC、A相レゾルバ信号φA及びB相レゾルバ信号φBをそれぞれ中継装置200の入力端子tia、tib及びticに入力し、この状態で、CPU59から出力される回転角度位置検出値を測定して、検出誤差Error3を計測する。
【0054】
そして、計測した3つの検出誤差Error1〜Error3を加算して3で除することにより、検出誤差平均値Errormを算出する。
このとき、前述した(1)〜(3)式から明らかなように、検出誤差Error1に含まれるレゾルバ検出誤差Erに対して、検出誤差Error2に含まれるレゾルバ検出誤差Erの各信号成分が120度の位相差を有し、検出誤差Error3に含まれるレゾルバ検出誤差Erの各信号成分が240°の位相差を有することになる。
【0055】
このため、三相交流の起電力の和はSINθ+SIN(θ+120°)+SIN(θ+240°)=0となることから120度ずつ位相が異なるレゾルバの検出誤差Erを加算することにより、下記10式で表されるように、レゾルバの検出誤差Erは零となり、中継装置200の検出誤差のみが残ることになり、中継装置200を構成する回路の検出誤差Ecを容易且つ正確に算出することができる。
Ec=(Error1+Error2+Error3)/3
=0+Ec …………(10)
となり、レゾルバ側の誤差が消え、回路側の誤差のみが得られる。
【0056】
ところが、多極レゾルバ30の場合には、レゾルバロータ18の全周360度にわたる誤差を測定した例が図6に示すようになる。
ここで、レゾルバロータ18には80個の歯19が形成されているので、中継装置200の電気角360度は機械角4.5度に相当する。この図6の全周波形をさらに0度〜45度の範囲で拡大した例を図7に示す。
【0057】
この図7から明らかなように、1電気角(=機械角4.5度)の範囲に発生している1サイクル分の誤差成分は、機械角度を推移すると、機械角0度〜4.5度の範囲から18度〜22.4度の範囲までは少しずつ増え、その後は少しずつ減少している。
この結果、機械角0度〜4.5度の範囲で3等分割を計測する場合と、他の角度範囲で3等分割を計測した場合では結果が異なることになる。
【0058】
つまり、対象となる測定値が異なると、上述したアブソリュートレゾルバのように3等分割処理を行った場合には、結果が異なることになり、より真値を求めることが不可能となる。
そこで、本実施形態では、DDモータ40をモータ制御回路60で回転駆動して、多極レゾルバ30からA相レゾルバ信号φA、B相レゾルバ信号φB及びC相レゾルバ信号φCが出力されている状態で、検出誤差算出部62の検出誤差検出開始スイッチSWsをオン状態とすることにより、前述した図5に示す検出誤差算出処理が実行される。
【0059】
このため、先ず、信号切換回路61で、多極レゾルバ30から出力されるA相レゾルバ信号φA,B相レゾルバ信号φB及びC相レゾルバ信号φCが、それぞれ中継装置200の入力端子tia、tib及びticに供給されている状態で、CPU59から出力される回転角度位置検出値に基づいて精度測定を行うことにより、前記(1)式で表される検出誤差Error1を機械角360度の全周に渡って計測する。このときの計測結果の一例は、図8(a)に示すようになる。この図8(a)では、全周のうちの180度分を示している。
【0060】
次いで、信号切換回路61に対して論理値“1”の選択信号SL1及び論理値“0”の選択信号SL2を出力して、多極レゾルバ30のB相レゾルバ信号φB、C相レゾルバ信号φC及びA相レゾルバ信号φAをそれぞれ中継装置200の入力端子tia、tib及びticに入力し、この状態で、CPU59から出力される回転角度位置検出値を測定して、検出誤差Error2を機械角360度の全周に渡って計測する。このときの計測結果の一例は、図9(a)に示すようになる。この図9(a)では全周のうちの180度分を示している。
【0061】
さらに、信号切換回路61に対して論理値“0”の選択信号SL1及び論理値“1”の選択信号SL2を出力して、多極レゾルバ30のC相レゾルバ信号φC、A相レゾルバ信号φA及びB相レゾルバ信号φBをそれぞれ中継装置200の入力端子tia、tib及びticに入力し、この状態で、CPU59から出力される回転角度位置検出値を測定して、検出誤差Error3を計測する。このときの計測結果の一例は、図10(a)に示すようになる。この図10(a)では全周のうちの180度分を示している。
【0062】
そして、計測した検出誤差Error1、Error2及びError3のそれぞれについて全80歯の平均値である軸倍角範囲平均値Me1、Me2及びMe3を算出する。
これら軸倍角範囲平均値Me1、Me2及びMe3は、それぞれ、図8(b)の特性曲線L1、図9(b)の特性曲線L2及び図10(b)の特性曲線L3に示す誤差波形となる(機械角4.5度分)。
【0063】
このように、各相順での検出誤差の計測を、全歯を対象にして行い、その計測結果に対して、軸倍角範囲平均値Me1、Me2及びMe3を算出することにより、1歯ごとに増減していたレゾルバ側の誤差値(1サイクル成分)が画一化され、電気角360度当たりの誤差として認識することができる。
このため、算出した軸倍角範囲平均値Me1〜Me2及びMe3の平均値を求める3等分割平均処理することにより、図11で太い実線図示の特性曲線L4で示す3等分割平均値を求めることができる。この3等分割平均値は、図11から明らかなように、レゾルバ側の全周誤差が除去された結果となり、検出回路としての中継装置200側の検出誤差Ecを正確に検出することができる。
【0064】
そして、算出した中継装置200を構成する回路の検出誤差Ecを例えば計測した検出誤差Error1から減算することにより、レゾルバ側の検出誤差Erを求めることができる。
Er=Error1−Ec
=(Rdc11+RS11sinθ+RC11cosθ+RS12sin2θ+RC12cos2θ)
したがって、図4に示すように、算出した中継装置200を構成する回路の検出誤差Ecを補正パラメータとしてCPU59に接続された記憶装置を構成するRAM等のメモリ64に記憶しておき、CPU59でデジタル位置信号φからDDモータ40の回転位置検出値を演算する際に、メモリ64に記憶されている中継装置200を構成する回路の検出誤差Ecに応じた補正パラメータで回転位置検出値を補正することにより、検出誤差Ecを略零とする中継装置200を構成することができる。
【0065】
同様に、レゾルバ検出誤差Erも算出することができるので、このレゾルバ検出誤差Erに基づいて多極レゾルバ30から出力される3相レゾルバ信号φA、φB及びφCを補正することにより、レゾルバ検出誤差Erを略零とする多極レゾルバ30を構成することができる。
このように構成することにより、多極レゾルバ30と中継装置200との双方の検出誤差Er及びEcを略零とすることができ、多極レゾルバ30と中継装置200とを一対一で対応させる必要がなく、両者を任意に組合せることができ、メンテナンス時の多極レゾルバ30又は中継装置200の交換を行った場合でも、高精度を維持することができる。
【0066】
次に、本発明の第2の実施形態を図12について説明する。
この第2の実施形態では、レゾルバロータ18の全周分の検出誤差波形に代えて、相順をかえながら機械角45度分(10歯分)の検出誤差を計測し、計測した各相順の検出誤差の軸倍角平均値を算出するようにしたものである。
すなわち、第2の実施形態では、前述した図6に示す全80歯分の検出誤差では、図12に示すように、全周で機械角45度の範囲で8回の繰り返し誤差が確認されている。このため、前述した第1の実施形態における全周分の検出誤差Error1〜Error3を検出する場合に代えて、8回分のうちの1つ例えば機械角0度〜45度の範囲すなわち10歯分の検出誤差をABC相、BCA相及びCAB相の各相順について全周推定値Error11〜Error13として計測し、計測した10歯分の検出誤差Error11〜Error13のそれぞれの平均値を軸倍角平均値Me11〜Me13として算出し、算出した軸倍角平均値Me11〜Me13の平均値(Me11+Me12+Me13)/3を算出して中継装置200を構成する検出回路の検出誤差Ecとする。これによっても、中継装置200を構成する検出回路の検出誤差Ecを正確に検出することができる。
【0067】
この第2の実施形態によると、ABC相、BCA相及びCAB相の各相順について10歯分すなわち機械角45度分の検出誤差を計測することにより、中継装置200を構成する検出回路の検出誤差Ecを正確に検出することができるので、前述した第1の実施形態におけるデータ処理量を1/8に低減することができ、検出誤差算出部62を構成するCPU等の演算処理装置の負担を軽減することができるとともに、検出誤差Ecを算出する処理速度を向上させることができ、さらにメモリ63の記憶容量を削減することができる。
【0068】
次に、本発明の第3の実施形態を図13について説明する。
この第3の実施形態では、ABC相、BCA相及びCAB相の各相順について検出誤差Error1〜Error3を計測する毎に軸倍角平均値Me1〜Me3を算出した場合に代えて、全ての検出誤差Error1〜Error3を計測した後に、各相順の検出誤差Error1〜Error3の軸倍角平均値Me1〜Me3を算出するようにしたものである。
【0069】
すなわち、第3の実施形態では、図13に示すように、前述した図5の検出誤差算出処理において、ステップS6、ステップS11を省略し、これに代えて、ステップS16で、各相順の検出誤差Error1〜Error3の軸倍角平均値Me1〜Me3を算出することを除いては、前述した図5の処理と同様の処理を行うようにしたものである。
この第3の実施形態では、各相順の検出誤差Error1〜Error3を計測した後に、各相順の検出誤差Error1〜Error3の軸倍角平均値Me1〜Me3を算出するので、前述した第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができ、しかも全歯の平均化を行う軸倍角平均処理を1回で済ませることができる。
【0070】
次に、本発明の第4の実施形態を図14について説明する。
この第4の実施形態は、本発明を互いに90度の位相差を有する4相レゾルバ信号を出力する多極レゾルバに適用したものである。
すなわち、第2の実施形態では、図14に示すように、多極レゾルバ30に4相のコイルがスター結線で巻装され、この多極レゾルバ30から出力される4相のレゾルバ信号φA、φB、φC及びφDが信号切換回路61を介して中継装置200の入力端子tia、tib、tic及びtidに入力されている。ここで、信号切換回路61は、前述した第1の実施形態における3相レゾルバ信号を順次シフトさせる場合と同様に、4相レゾルバ信号を順次4段階にシフトさせるように4つのスイッチ部を有する4つのスイッチ回路SWa〜SWdが設けられている。そして、各スイッチ回路SWa〜SWdのスイッチ部の切換えが選択信号SL1及びSL2を“00”、“10”、“01”及び“11”に切り換えることにより、4段階の切換えを行うようにしている。
【0071】
ここで、4段階の切換えは、選択信号SL1が“0”、SL2が“0”であるときには、入力端子tiaにA相レゾルバ信号φAが、入力端子tibにB相レゾルバ信号φBが、入力端子tcにC相レゾルバ信号φBが、入力端子tidにD相レゾルバ信号φDが入力される。
また、選択信号SL1が“1”、SL2が“0”であるときには、入力端子tiaにB相レゾルバ信号φBが、入力端子tibにC相レゾルバ信号φCが、入力端子tcにD相レゾルバ信号φDが、入力端子tidにA相レゾルバ信号φAが入力される。
【0072】
また、選択信号SL1が“0”、SL2が“1”であるときには、入力端子tiaにC相レゾルバ信号φCが、入力端子tibにD相レゾルバ信号φDが、入力端子tcにA相レゾルバ信号φAが、入力端子tidにB相レゾルバ信号φBが入力される。
また、選択信号SL1が“1”、SL2が“1”であるときには、入力端子tiaにD相レゾルバ信号φDが、入力端子tibにA相レゾルバ信号φAが、入力端子tcにB相レゾルバ信号φBが、入力端子tidにC相レゾルバ信号φCが入力される。
【0073】
そして、検出誤差算出部62で、検出誤差計測時に、信号切換回路61を4段階に切り換え、そのそれぞれにおいて、CPU59から出力される回転角度位置検出値に基づいて検出誤差Error1、Error2、Error3及びError4を計測し、計測した4つの検出誤差Error1〜Error4のそれぞれについて軸倍角平均値Me1〜Me4を算出し、算出した軸倍角平均値Me1〜Me4の平均値Mem=(Me1+Me2+Me3+Me4)/4を算出することにより、中継装置200を構成する検出回路の検出誤差Ecのみを算出することができる。
【0074】
さらに、算出した中継装置200を構成する検出回路の検出誤差Ecを例えば計測した検出誤差Error1から減算することにより、多極レゾルバ30の検出誤差Erのみを算出することができる。
このように、第4の実施形態によれば、4相のレゾルバ信号を出力するレゾルバ30についても、本発明を適用することができ、3相及び4相のレゾルバ信号を出力する多極レゾルバ30にかかわらず、5相以上の(360°/N)相で各相レゾルバ信号の総和が零となる多相出力型の多極レゾルバに本発明を適用することができる。
【0075】
なお、上記第1〜第4の実施形態においては、多極レゾルバ30の内側が回転するインナーロータ式で構成したが、これに限らず、多極レゾルバ30をレゾルバロータ18が外側で、レゾルバステータ20が内側となるアウターロータ式で構成することもできる。この場合には回転テーブル装置10もインナーロータ式に代えてアウターロータ式を適用する。
【0076】
また、上記第1〜第4の実施形態においては、多極レゾルバ30の軸倍角が80Xに設定されている場合について説明したが、これに限定されるものではなく、2以上の軸倍角2X,3X,4X……を持つ多極レゾルバに本発明を適用することができる。
また、上記実施の形態においては、本発明を回転テーブル装置10に設置した多極レゾルバに適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、回転テーブル12をロータとし、固定ケース体22の内周面にステータを配置したダイレクトモータ構成とすることもでき、さらに電動モータの回転軸の回転角度を直接検出したり、他の任意の回転駆動装置に適用して回転角度を検出したりすることができる。
【符号の説明】
【0077】
10…回転テーブル装置
12…回転テーブル
14…クロスローラ軸受
18…レゾルバロータ
19…歯
20…レゾルバステータ
21a…励磁コイル
21b…ポール
21c…歯
22…固定ケース体
30…多極レゾルバ
40…DDモータ
50…発振器
52…増幅器
53…移相器
56…電流/電圧変換器
57…3相/2相変換器
58…R/D変換器、
59…CPU
60…モータ制御回路
61…信号切換回路
62…検出誤差算出部
63,64…メモリ
200…中継装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータの回転角に応じて360°/N(Nは3以上の整数)毎の位相差を有する位置信号を出力し、且つ2以上の軸倍角を持つ多極のレゾルバを用いて回転角度位置を検出する回転角度位置検出装置であって、
前記レゾルバから出力されるN相位置信号が入力され、当該N相位置信号を信号処理して位置検出値を演算する位置信号演算部と、
前記レゾルバ及び前記位置信号演算部間と、当該位置信号演算部内との何れか一方に設けた前記N相位置信号の前記位置信号演算部のN相入力端子への入力を順次シフトさせたN段階に切換える信号切換回路と、
該信号切換回路で入力を切換える毎に、前記位置信号演算部から出力される位置検出値に基づいてN回の検出誤差を機械角360度の全角度範囲で計測し、計測したN回の検出誤差の夫々について軸倍角数毎の範囲で軸倍角範囲平均値を算出し、算出したN個の軸倍角範囲平均値の平均値に基づいて前記位置信号演算部の検出誤差を算出する検出誤差算出部と
を備えたことを特徴とする回転角度位置検出装置。
【請求項2】
A相、B相及びC相の120度の位相差を有する位置信号を出力し、且つ2以上の軸倍角を持つ多極のレゾルバを用いて回転角度位置を検出する回転角度位置検出装置であって、
前記レゾルバから出力される3相位置信号が入力され、当該3相位置信号を信号処理して位置検出値を演算する位置信号演算部と、
前記レゾルバ及び前記位置信号演算部間と、当該位置信号演算部内との何れか一方に設けた前記3相位置信号の前記位置信号演算部のA相、B相及びC相入力端子への入力をA相、B相及びC相、B相、C相及びA相、C相、A相及びB相の3段階に切換える信号切換回路と、
該信号切換回路で入力を切換える毎に、前記位置信号演算部から出力される位置検出値に基づいて3回の検出誤差を機械角360度の全角度範囲で計測し、計測した3回の検出誤差の夫々について軸倍角数毎の範囲で軸倍角範囲平均値を算出し、算出した3個の軸倍角範囲平均値の平均値に基づいて前記位置信号演算部の検出誤差を算出する検出誤差算出部と
を備えたことを特徴とする回転角度位置検出装置。
【請求項3】
前記検出誤差算出部で算出した位置信号演算部の検出誤差を補正データとして当該位置信号換算部で演算する位置検出信号を補正する信号補正部を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の回転角度位置検出装置。
【請求項4】
前記検出誤差算出部で算出した位置信号演算部の検出誤差を、当該検出誤差算出部で計測した検出誤差から減算してレゾルバ側の検出誤差を求めるレゾルバ検出誤差検出部を備えていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の回転角度位置検出装置。
【請求項5】
ロータの回転角に応じて360°/N(Nは3以上の整数)毎の位相差を有するN相の位相信号を出力し、且つ2以上の軸倍角を持つ多極のレゾルバと、該レゾルバから出力されるN相位置信号が入力され、当該N相位置信号を信号処理して位置検出値を演算する位置信号演算部とを有する回転角度位置検出装置の誤差検出方法であって、
前記位置信号演算部のN相入力端子への前記レゾルバからのN相位置信号を順次シフトさせてN段階に切換えて入力するステップと、
該N相位置信号を順次切換える毎に、前記位置信号演算部から出力される位置検出値に基づいて検出誤差を機械角360度の全角度範囲で計測するステップと、
計測したN個の検出誤差について軸倍角数毎の範囲で軸倍角範囲平均値を算出し、算出したN個の軸倍角範囲平均値の平均値に基づいて前記位置信号演算の検出誤差を算出するステップと
を備えたことを特徴とする回転角度位置検出装置の誤差検出方法。
【請求項1】
ロータの回転角に応じて360°/N(Nは3以上の整数)毎の位相差を有する位置信号を出力し、且つ2以上の軸倍角を持つ多極のレゾルバを用いて回転角度位置を検出する回転角度位置検出装置であって、
前記レゾルバから出力されるN相位置信号が入力され、当該N相位置信号を信号処理して位置検出値を演算する位置信号演算部と、
前記レゾルバ及び前記位置信号演算部間と、当該位置信号演算部内との何れか一方に設けた前記N相位置信号の前記位置信号演算部のN相入力端子への入力を順次シフトさせたN段階に切換える信号切換回路と、
該信号切換回路で入力を切換える毎に、前記位置信号演算部から出力される位置検出値に基づいてN回の検出誤差を機械角360度の全角度範囲で計測し、計測したN回の検出誤差の夫々について軸倍角数毎の範囲で軸倍角範囲平均値を算出し、算出したN個の軸倍角範囲平均値の平均値に基づいて前記位置信号演算部の検出誤差を算出する検出誤差算出部と
を備えたことを特徴とする回転角度位置検出装置。
【請求項2】
A相、B相及びC相の120度の位相差を有する位置信号を出力し、且つ2以上の軸倍角を持つ多極のレゾルバを用いて回転角度位置を検出する回転角度位置検出装置であって、
前記レゾルバから出力される3相位置信号が入力され、当該3相位置信号を信号処理して位置検出値を演算する位置信号演算部と、
前記レゾルバ及び前記位置信号演算部間と、当該位置信号演算部内との何れか一方に設けた前記3相位置信号の前記位置信号演算部のA相、B相及びC相入力端子への入力をA相、B相及びC相、B相、C相及びA相、C相、A相及びB相の3段階に切換える信号切換回路と、
該信号切換回路で入力を切換える毎に、前記位置信号演算部から出力される位置検出値に基づいて3回の検出誤差を機械角360度の全角度範囲で計測し、計測した3回の検出誤差の夫々について軸倍角数毎の範囲で軸倍角範囲平均値を算出し、算出した3個の軸倍角範囲平均値の平均値に基づいて前記位置信号演算部の検出誤差を算出する検出誤差算出部と
を備えたことを特徴とする回転角度位置検出装置。
【請求項3】
前記検出誤差算出部で算出した位置信号演算部の検出誤差を補正データとして当該位置信号換算部で演算する位置検出信号を補正する信号補正部を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の回転角度位置検出装置。
【請求項4】
前記検出誤差算出部で算出した位置信号演算部の検出誤差を、当該検出誤差算出部で計測した検出誤差から減算してレゾルバ側の検出誤差を求めるレゾルバ検出誤差検出部を備えていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の回転角度位置検出装置。
【請求項5】
ロータの回転角に応じて360°/N(Nは3以上の整数)毎の位相差を有するN相の位相信号を出力し、且つ2以上の軸倍角を持つ多極のレゾルバと、該レゾルバから出力されるN相位置信号が入力され、当該N相位置信号を信号処理して位置検出値を演算する位置信号演算部とを有する回転角度位置検出装置の誤差検出方法であって、
前記位置信号演算部のN相入力端子への前記レゾルバからのN相位置信号を順次シフトさせてN段階に切換えて入力するステップと、
該N相位置信号を順次切換える毎に、前記位置信号演算部から出力される位置検出値に基づいて検出誤差を機械角360度の全角度範囲で計測するステップと、
計測したN個の検出誤差について軸倍角数毎の範囲で軸倍角範囲平均値を算出し、算出したN個の軸倍角範囲平均値の平均値に基づいて前記位置信号演算の検出誤差を算出するステップと
を備えたことを特徴とする回転角度位置検出装置の誤差検出方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−112662(P2012−112662A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−259242(P2010−259242)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】
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