説明

回転角度検出装置および検出装置付き軸受

【課題】 時間遅れによる誤差のない正確な回転角度検出が可能な回転角度検出装置、およびこの回転角度検出装置を組み込んだ検出装置付き軸受を提供する。
【解決手段】 固定部材に対して回転自在な回転軸の軸端に、一対の磁極が形成された磁石を配置する。この磁石と軸方向に対向して前記固定部材に大規模集積回路からなる磁気センサを設け、この磁気センサの出力から前記回転軸の回転角度を検出する角度算出手段7を設ける。さらに、前記角度算出手段7で検出した回転角度の時間変化から回転速度を算出する回転速度算出手段11と、この回転速度算出手段11で算出した回転速度によって、前記磁気センサによる磁界の検出から前記角度算出手段7で回転角度を出力するまでの回転角度の時間遅れを補正する角度時間遅れ補正手段13を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、各種の機器における回転角度検出、例えば小型モータの回転制御のための回転角度検出等に用いられる回転角度検出装置、およびその回転角度検出装置を組み込んだ検出装置付き軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
小型の機器に組み込み可能で、かつ高精度の回転角度検出が可能な回転角度検出装置として、磁気センサアレイを用いるものが提案されている(例えば特許文献1)。これは、図13のように、磁気センサ素子(MAGFET)を多数並べて構成した磁気センサアレイ45を、信号増幅回路、AD変換回路、デジタル信号処理回路などの回路46とともにセンサチップ42に集積し、このセンサチップ42を、回転側部材41に配置される磁石44に対向配置したものである。この場合、磁石44は回転中心O回りの円周方向異方性を有するものとされ、前記センサチップ42上では、仮想の矩形の4辺における各辺に沿って磁気センサアレイ45が配置される。
このように構成された回転角度検出装置43では、各辺の磁気センサアレイ45の出力を信号増幅回路、AD変換回路で読み出して前記磁石44の磁界分布を検出し、その検出結果に基づき磁石44の回転角度をデジタル信号処理回路により算出する。
【特許文献1】特開2003−37133号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記構成の回転角度検出装置の動作では、磁界測定→角度計算→角度出力というサイクルを繰り返すので、そのサイクルに対応する一定時間間隔で角度データが出力されることになる。このため、出力される角度データは、角度計算に要する時間分だけの時間遅れが生じ、観測時刻における正確な角度情報が得られないという課題があった。また、この回転角度検出装置を用いて回転角度や回転速度を検出することにより、モータの回転制御を行う場合、任意の時刻における回転角度や回転速度を正確に検出することが難しいという課題もあった。
【0004】
この発明の目的は、時間遅れによる誤差のない正確な回転角度検出が可能な回転角度検出装置、およびこの回転角度検出装置を組み込んだ検出装置付き軸受を提供することである。
この発明の他の目的は、モータなどの回転軸の角度検出に用いて、任意の時刻における回転角度を正確に検出することができる回転角度検出装置、およびこの回転角度検出装置を組み込んだ検出装置付き軸受を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明の回転角度検出装置は、固定部材に対して回転自在な回転軸の軸端に、一対の磁極が形成された磁石を配置し、この磁石と軸方向に対向して前記固定部材に大規模集積回路からなる磁気センサを設け、この磁気センサの出力から前記回転軸の回転角度を検出する角度算出手段を設けた回転角度検出装置において、前記角度算出手段で検出した回転角度の時間変化から回転速度を算出する回転速度算出手段と、この回転速度算出手段で算出した回転速度によって、前記磁気センサによる磁界の検出から前記角度算出手段で回転角度を出力するまでの回転角度の時間遅れを補正する角度時間遅れ補正手段とを設けたことを特徴とする。
磁気センサの出力から回転軸の回転角度を検出する角度算出手段の出力は、磁気センサが磁石の磁界をサンプリングしてから回転角度を演算し出力するまでに時間遅れがある。そのため、回転角度のデータを読み込んだときの実際の回転軸の回転角度は、読み込んだデータと異なっている可能性がある。そこで、前記角度算出手段で検出した回転角度の時間変化から回転速度算出手段が算出する回転速度に基づき、回転速度算出手段は前記角度算出手段で検出される回転角度の時間遅れを補正する。これにより、回転軸の正確な回転角度を検出することができる。
【0006】
この発明において、前記角度時間遅れ補正手段で補正された回転角度を一定時間毎に得て、この一定時間毎の回転角度情報と前記回転速度算出手段の算出する回転速度の情報とから、任意の時刻における前記回転軸の回転角度を推測する回転角度推測手段を設けても良い。
前記角度時間遅れ補正手段で補正された回転角度データは、一定時間間隔で出力される離散的なデータであるため、データが更新される間隔よりも細かく角度情報を得ることができない。そこで、回転角度推定手段は、回転角度データを要求した時刻における角度値を、回転角度データと回転速度から予測して、任意の時刻における回転角度を推測する。これにより、任意の時刻における回転角度を正確に検出することができる。
【0007】
この発明において、前記磁気センサを構成する大規模集積回路に、前記角度算出手段、回転速度算出手段、および角度時間遅れ補正手段を集積しても良い。この構成の場合、大規模集積回路が集積される半導体チップから出力される回転角度のデータは、その時刻における回転角度を示すことになるので、このデータを受けて動作する各種機器での制御にとって、より扱いやすい回転角度検出装置とすることができる。
【0008】
この発明において、前記磁気センサを構成する大規模集積回路に、前記角度算出手段、回転速度算出手段、前記角度時間遅れ補正手段、および前記回転角度推測手段を集積しても良い。この構成の場合、任意の時刻における正確な回転角度を得ることができる小型で高精度な回転角度検出装置を実現できる。
【0009】
この発明の検出装置付き軸受は、この発明の上記いずれかの構成の回転角度検出装置を軸受に組み込んだものである。
この構成によると、軸受使用機器の部品点数、組立工数の削減、およびコンパクト化が図れる。
【0010】
この発明のモータの回転制御装置は、この発明の上記いずれかの構成の回転角度検出装置と、この回転角度検出装置の回転角度の出力によって、モータの励磁電流および励磁タイミングを制御する制御回路とを備えたものである。
この構成によると、モータの回転制御を高精度に行うことができる。とくに、前記回転角度推測手段を設けた場合には、任意の時刻でのモータの磁極位置を正確に知ることができるので、モータの効率を高めたり、回転音を低く抑えたりするために、励磁タイミングを制御する場合などに、回転速度およびロータの回転角度に応じた細かな制御が有効である。この場合、小型の回転角度検出装置で高精度の角度検出が可能になり、装置を小型化、高性能化することができる。
【発明の効果】
【0011】
この発明の回転角度検出装置は、固定部材に対して回転自在な回転軸の軸端に、一対の磁極が形成された磁石を配置し、この磁石と軸方向に対向して前記固定部材に大規模集積回路からなる磁気センサを設け、この磁気センサの出力から前記回転軸の回転角度を検出する角度算出手段を設けた回転角度検出装置において、前記角度算出手段で検出した回転角度の時間変化から回転速度を算出する回転速度算出手段と、この回転速度算出手段で算出した回転速度によって、前記磁気センサによる磁界の検出から前記角度算出手段で回転角度を出力するまでの回転角度の時間遅れを補正する角度時間遅れ補正手段とを設けたため、時間遅れによる誤差のない正確な回転角度検出が可能となる。
この発明の検出装置付き軸受は、この発明の回転角度検出装置を軸受に組み込んだものであるため、軸受使用機器の部品点数、組立工数の削減、およびコンパクト化が図れる。 この発明のモータの回転制御装置は、この発明の回転角度検出装置と、この回転角度検出装置の回転角度の出力によって、モータの励磁電流および励磁タイミングを制御する制御回路とを備えたものであるため、モータの回転制御を高精度に行うことができる。とくに、回転角度検出装置が回転角度推測手段を有する場合には、任意の時刻でのモータの磁極位置を正確に知ることができるので、モータの効率を高めたり、回転音を低く抑えたりするため、励磁タイミングを制御する場合などに、回転速度およびロータの回転角度に応じた細かな制御が有効となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
この発明の一実施形態を図面と共に説明する。図1は、この実施形態の回転角度検出装置を組み込んだ軸受の断面図を示す。この検出装置付き軸受20は、内輪21と外輪22の転走面間に、保持器23に保持された転動体24を介在させた転がり軸受である。転動体24はボールからなり、この転がり軸受20は単列の深溝玉軸受とされている。内輪21には回転部材である回転軸10が圧入状態に嵌合しており、外輪22は軸受使用機器のハウジング(図示せず)に設置されている。
【0013】
転がり軸受20に組み込まれる回転角度検出装置1は、転がり軸受20の内輪21側に配置された磁石2と、外輪22側に配置された回転センサ3とを備える。具体的には、内輪21と共に回転する回転軸10に、一対の磁極N,Sが形成された永久磁石2が配置され、外輪22と固定関係にあるセンサ取付部材27に回転センサ3が配置される。
磁石2は、図2に示すように、その一対の磁極N,Sから発生する磁気が転がり軸受20の軸心Oの回りの方向性を有するものである。この磁石2は、転がり軸受20の軸心Oが磁石2の中心と一致するように、回転軸10の一端の中央に固定される。磁石2が回転軸10と一体に回転することによって、上記軸受軸心Oの回りをN磁極およびS磁極が旋回移動する。
【0014】
回転センサ3は磁石2の磁気を感知して回転角度の情報を出力するセンサである。回転センサ3は、転がり軸受20の軸心Oの軸方向に向けて磁石2と対面するように、センサ取付部材27を介して外輪22側に取付けられる。具体的には、外輪22に前記センサ取付部材27が取付けられ、このセンサ取付部材27に回転センサ3が固定されている。センサ取付部材27は、外周部の先端円筒部27aを外輪22の内径面に嵌合させ、この先端円筒部27aの近傍に形成した鍔部27bを外輪22の幅面に係合させて軸方向に位置決めがなされている。また、センサ取付部材27には、回転センサ3の出力を取り出すための出力ケーブル29も取付けられている。
【0015】
回転センサ3は、図3に平面図で示すように、1つの半導体チップ4上に大規模集積回路(LSI)を集積して構成される。その大規模集積回路は、磁気センサ5を構成する複数の磁気センサ素子5aと、その磁気センサ素子5aの出力から回転角度を演算して出力する演算回路部6とからなる。半導体チップ4上において、磁気センサ素子5aは、仮想の矩形上の4辺における各辺に沿って配置されて、4辺の磁気センサアレイ5A〜5Dとされる。この場合、前記矩形の中心O’は、転がり軸受20の軸心Oに一致する。4辺の磁気センサアレイ5A〜5Dは、同図の例ではセンサ素子5aが一列に並んだものとしているが、センサ素子5aが複列に平行に並んだものであっても良い。前記演算回路部6は、磁気センサアレイ5A〜5Dの矩形配置の内部に配置される。半導体チップ4は、その素子形成面が前記磁石2と対向するように前記センサ取付部材27に固定される。
【0016】
このように、半導体チップ4上に磁気センサ素子5aと演算回路部6とを集積して一体化すると、磁気センサ素子5aと演算回路部6間の配線が不要となり、回転センサ3のコンパクト化が可能で、断線等に対する信頼性も向上し、回転角度検出装置1の組み立て作業も容易になる。特に、上記したように矩形に配置された磁気センサアレイ5A〜5Dの内部に演算回路部6を配置すると、チップサイズをより小さくすることができる。
【0017】
演算回路部6は、角度算出手段7、回転速度算出手段11、角度時間遅れ補正手段13(図7)、および回転角度推測手段14(図8)を有する。角度算出手段7は、前記磁気センサ5の出力から前記回転軸10の回転角度を検出する手段である。回転速度算出手段11は、前記角度算出手段7で検出した回転角度の時間変化から回転速度を算出する手段である。角度時間遅れ補正手段13は、前記磁気センサ5による磁界の検出から前記角度算出手段7で回転角度を出力するまでの回転角度の時間遅れを補正する手段である。回転角度推測手段14は、前記角度時間遅れ手段13で補正された回転角度を一定時間毎に得て、この一定時間毎の回転角度情報と前記回転速度算出手段11の算出する回転速度の情報とから、任意の時刻における前記回転軸10の回転角度を推測する手段である。
【0018】
図4および図5は、前記角度算出手段7(図7)による回転角度算出処理の説明図である。図5(A)〜(D)は、回転軸10が回転している時の磁気センサアレイ5A〜5Dによる出力波形図を示し、それらの横軸は各磁気センサアレイ5A〜5Dにおける磁気センサ素子5aを、縦軸は検出磁界の強度をそれぞれ示す。
いま、図4に示す位置X1とX2に磁気センサアレイ5A〜5Dの検出磁界のN磁極とS磁極の境界であるゼロクロス位置があるとする。この状態で、各磁気センサアレイ5A〜5Dの出力は、図5(A)〜(D)に示す信号波形となる。したがって、ゼロクロス位置X1,X2は、磁気センサアレイ5A,5Cの出力から直線近似することで算出できる。
角度計算は、次式(1)で行うことができる。
θ=tan-1(2L/b) ……(1)
ここでθは、磁石2の回転角度を絶対角度(アブソリュート値)で示した値である。2Lは、矩形に並べられる各磁気センサアレイ5A〜5Dより構成される四角形の1辺の長さである。bは、ゼロクロス位置X1,X2間の横方向長さである。
ゼロクロス位置X1,X2が磁気センサアレイ5B,5Dにある場合には、それらの出力から得られるゼロクロス位置データにより、上記と同様にして回転角度θが算出される。
【0019】
図6は、前記磁気センサアレイ5A〜5Dと角度算出手段7とでなる磁気センサ回路8(図7)が、回転角度θを検出して出力する処理動作のサイクルを示すタイミングチャートである。その1サイクルの時間Tの前半の区間Taにおいて、回転センサ3の磁気センサ5である磁気センサアレイ5A〜5Dが回転側の磁石2の磁界をサンプリングし、その1サイクルの後半の区間Tbにおいて、前記サンプリング値から角度算出手段7が回転角度θを演算し出力する。このように、角度データが算出されるまでには時間遅れがあるため、回転角度のデータを読み込んだときの実際の回転軸10の回転角度は、読み込んだデータと異なっている可能性がある。
【0020】
前記演算回路部6における回転速度算出手段11(図7)は、上記したように時間Tごとに角度算出手段7から出力される回転角度θのデータからその変化量を求めることで、回転軸10の回転速度ωを算出する。
【0021】
図7は、回転センサ3の回路構成の一部をブロック図で示したものである。磁気センサアレイ5A〜5Dによる毎回のサンプリングによって得られる磁気データは、増幅・AD変換されて角度演算手段7に入力される。角度算出手段7は、磁気センサアレイ5A〜5Dによる毎回のサンプリング値に基づき、図4および図5に示した演算処理を行って回転角度θをその都度算出する。
一方、回転速度算出手段11は、時間T毎に前記角度算出手段7より毎回出力される回転角度データθの変化量と、タイマー12によって求められるその間の経過時間Tとから回転速度ωおよび回転方向を演算する。回転速度ωの演算は例えば以下のように行われる。
毎回サンプリングされる回転角度θ(n)が変化しているものとすると、連続したサンプリング間の角度変化量から次式(2)のように回転速度ωを求めることができる。
ω={θ(n+1)−θ(n)}/T ……(2)
ただし、θ(n),θ(n+1)は、n回目,(n+1)回目のサンプリングで求められた回転角度を表す。
【0022】
このようにして求められた回転速度ωのデータと、タイマー12によって求められる経過時間とにより、角度時間遅れ補正手段13が前記角度算出手段7により演算された回転角度θを補正する。すなわち、角度時間遅れ補正手段13は、回転速度算出手段11が算出する回転速度ωで回転軸10が回転している場合、角度算出手段7が回転角度θ(n)を算出するのに必要な時間Tbの間に、どれだけ回転角度θが変化しているかを、次式(3)のようにして推測することができる。
θ(n+Tb)=θ(n)+ω×Tb ……(3)
ただし、θ(n+Tb)は、n回目のサンプリングから角度算出手段7による演算が終了した時点での回転角度である。
この回転角度検出装置1は、回転軸10の軸端に設けた磁石2の回転を回転センサ3で検出する構成であるため、回転体である回転軸10の慣性によって回転速度ωは急激な変動が起きにくい状態にあり、上記した回転角度補正により、かなり高い精度の回転角度を推測することができる。
ここでは、前記半導体チップ4の上に集積される大規模集積回路の一部として、前記角度算出手段7と共に、前記回転速度算出手段11および前記角度時間遅れ補正手段13を設けているので、半導体チップ4から出力される回転角度θのデータは、その時刻における回転角度を示すことになり、このデータを受けて動作する各種機器での制御にとってより扱いやすい回転角度検出装置1となる。
なお、回転速度算出手段11および角度時間遅れ補正手段13は、半導体チップ4と別に設けても良い。
【0023】
図8は、前記演算回路部6における回転角度推定手段14の構成を示すブロック図である。同図において、回転角度検出回路9は、図7における角度算出段7、回転速度算出段11、タイマー12、および角度時間遅れ補正手段13を含めた回路部を示す。この回転角度検出回路9で得られる時間遅れ補正済みの回転角度データθは、上記したように一定時間Tの間隔で出力される離散的なデータであるため、データが更新される間隔よりも細かく角度情報を得ることができない。
そこで、上記回転角度推定手段14は、回転角度データを要求した時刻における角度値を、回転角度データθと回転速度ωから予測して補間するものである。具体的には、図9のように、回転角度推定手段14は、回転角度検出回路9から出力された最新の回転角度データ(例えばθ2 )が出力された時刻t2 から、要求トリガaを受け取るまでの経過時間Δtをタイマー15で測定し、回転速度ωから予測される角度変化量をデータに加算する処理を実行する。すなわち、前記回転角度推定手段14は前記回転角度データθ、回転速度ω、および経過時間を一旦メモリ16に記憶して、これらの値から要求トリガ信号aを受け取ったときの回転角度θを予測する。その結果、要求トリガaが入力された時刻t2 +Δtにおける回転角度データθ2 +Δθを出力することができる。すなわち、任意の時刻における回転角度を、回転軸10が回転している状態においても、静止している状態においても、正確に検出して出力することができる。演算回路部6で算出された回転角度θは前記出力ケーブル29(図1)により出力される。
ここでは、前記半導体チップ4の上に集積される大規模集積回路の一部として、前記角度算出手段7、回転速度算出手段11および角度時間遅れ補正手段13と共に、前記回転角度推定手段14を設けているので、任意の時刻における正確な回転角度情報を得ることができる小型で高精度な回転センサ3が構成されることになり、コンパクトな回転角度検出装置1を実現できる。
なお、回転角度推定手段14は、半導体チップ4と別に設けても良い。
また、上記の例では、磁気センサとして磁気センサアレイを用いた半導体センサを使用する場合を示したが、磁界の方向を検出するベクトル式の磁気センサなどの半導体センサを使用しても同様な効果を得ることができる。
【0024】
また、図1の検出装置付き軸受20では、上記回転角度検出装置1を転がり軸受20に組み込んでいるので、軸受使用機器の部品点数、組立工数の削減、およびコンパクト化を図ることができる。
【0025】
図10は、前記構成の回転角度検出装置1を搭載したサーボモータ,ブラシレスモータ等のモータの回転制御装置の一例の概略構成を示すブロック図である。このモータ回転制御装置30は、上記回転角度検出装置1と、この検出装置の回転角度検出値に応じて、ロータ31を回転させるためのステータコイルの励磁電流の切替えを行うドライバー回路32と、前記励磁電流の切替えタイミングを調整してモータの回転状態の制御を行う制御回路33とを備える。ここではステータコイルは3相とされ、各相のステータコイルへの励磁電流の切替えがドライバー回路32で行われる。制御回路33は、回転角度検出装置1で検出されたロータ25の回転角度θに基づき前記励磁電流の切替え制御を行うと共に、ステータコイルを流れる励磁電流をフィードバックして励磁電流の進み角制御も行う。とくに、前記回転角度検出装置1によると、任意の時刻でのモータの磁極位置を正確に知ることができるので、モータの効率を高めたり、回転音を低く抑えたりするため、励磁タイミングを制御する場合などに、回転速度およびロータの回転角度に応じた細かな制御が有効である。この場合、小型の回転角度検出装置1で高精度の角度検出が可能になり、装置を小型化、高性能化することができる。
【0026】
図11は、図1の検出装置付き軸受20を、ブラシレスモータ34の回転軸10の軸端に組み込んだ例を示す。ブラシレスモータ34は、両端が閉塞された円筒状のモータハウジング35と、このモータハウジング35に同心状に配置した回転軸10と、この回転軸10に設けたロータ36と、このロータ36と径方向に対向してモータハウジング周壁35aの内周面に設けたステータ37とを備える。回転軸10は前記検出装置付き軸受20と他の軸受19とでモータハウジング35の両端部に回転自在に支持されている。
この場合、前記回転角度検出装置1が軸受20と一体化されているため、コンパクトで組立調整が不要となり、組立工数が削減され、利便性が高い。
【0027】
図12は、上記回転角度検出装置1を、ブラシレスモータ34の回転軸10の軸端に組み込んだ他の例を示す。ここでは、軸受20の外輪22にセンサ取付部材27を取付けるのに代えて、モータハウジング端部壁35bに形成された軸受嵌合部39にセンサ取付部材47を取付け、このセンサ取付部材47に、回路基板38を介して回転センサ3を取付けている。すなわち、この例では、回転角度検出装置1を軸受20から完全に分離している。前記軸受嵌合部39には、回転軸10の軸心Oと同心の段部39aが形成され、この段部39aに上記センサ取付部材47の本体47aの裏面に設けられた環状凸部47bを嵌合させることにより、回転軸10と同心に回転センサ3(図1)が配置される。センサ取付部材47は、環状突部47bを軸受嵌合部39の段部39aに嵌合させると共に、センサ取付部材本体47aを取付ねじ40で締結することにより、モータハウジング端部壁35bに固定される。この場合、軸受20に対する回転センサ3の軸方向位置が定まり、軸受20の内輪21に回転軸10を嵌合させた時に軸受20に対する磁石2の軸方向位置が定まるので、回転軸10を内輪21に嵌合させた状態で、磁石2と回転センサ3の軸方向隙間(ギャップ)を規定の範囲に収めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】この発明の一実施形態に係る回転速度信号出力付き回転角度検出装置を組み込んだ検出装置付き軸受の断面図である。
【図2】同軸受における回転角度検出装置設置部を示す拡大側面図である。
【図3】同軸受における回転センサの一例を構成する半導体チップの平面図である。
【図4】同回転センサの角度算出手段による角度算出処理の説明図である。
【図5】同回転センサにおける磁気センサアレイの出力を示す波形図である。
【図6】同回転センサが回転角度を検出して出力する処理動作のサイクルを示すタイミングチャートである。
【図7】同回転センサの回路構成の一部を示すブロック図である。
【図8】同回転センサにおける回転角度推測手段を示すブロック図である。
【図9】回転角度推測手段の処理動作を示す説明図である。
【図10】回転角度検出装置を組み込んだモータの駆動装置の一例の概略構成を示すブロック図である。
【図11】回転角度検出装置を組み込んだブラシレスモータの一例の断面図である。
【図12】回転角度検出装置を組み込んだブラシレスモータの他の例の部分拡大断面図である。
【図13】従来例の斜視図である。
【符号の説明】
【0029】
1…回転角度検出装置
2…磁石
3…回転センサ
4…半導体チップ
5…磁気センサ
7…角度算出手段
10…回転軸
11…回転速度算出手段
13…角度時間遅れ補正手段
14…回転角度推測手段
20…検出装置付き軸受
27…センサ取付部材(固定部材)
30…モータ回転制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部材に対して回転自在な回転軸の軸端に、一対の磁極が形成された磁石を配置し、この磁石と軸方向に対向して前記固定部材に大規模集積回路からなる磁気センサを設け、この磁気センサの出力から前記回転軸の回転角度を検出する角度算出手段を設けた回転角度検出装置において、
前記角度算出手段で検出した回転角度の時間変化から回転速度を算出する回転速度算出手段と、この回転速度算出手段で算出した回転速度によって、前記磁気センサによる磁界の検出から前記角度算出手段で回転角度を出力するまでの回転角度の時間遅れを補正する角度時間遅れ補正手段とを設けたことを特徴とする回転角度検出装置。
【請求項2】
請求項1において、前記角度時間遅れ補正手段で補正された回転角度を一定時間毎に得て、この一定時間毎の回転角度情報と前記回転速度算出手段の算出する回転速度の情報とから、任意の時刻における前記回転軸の回転角度を推測する回転角度推測手段を設けた回転角度検出装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記磁気センサを構成する大規模集積回路に、前記角度算出手段、回転速度算出手段、および角度時間遅れ補正手段を集積した回転角度検出装置。
【請求項4】
請求項2において、前記磁気センサを構成する大規模集積回路に、前記角度算出手段、回転速度算出手段、前記角度時間遅れ補正手段、および前記回転角度推測手段を集積した回転角度検出装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の回転角度検出装置を軸受に組み込んだ検出装置付き軸受。
【請求項6】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の回転角度検出装置と、この回転角度検出装置の回転角度の出力によって、モータの励磁電流および励磁タイミングを制御する制御回路とを備えたモータの回転制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−256034(P2007−256034A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−79896(P2006−79896)
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】