説明

回転軸受付き直動軸受

【課題】小型化が容易で、そして回転軸受と直動軸受との同軸度にも優れる回転軸受付き直動軸受を提供すること。
【解決手段】両端部12a、12aの外径が相対的に小さくされた外筒12の内周面に複数の転動体13、13、〜を装着してなる直動軸受11と、この直動軸受の外筒の各端部12aの外周面に配設された一対の環状回転軸受21、21とからなる回転軸受付き直動軸受であって、上記外筒12の両端部12a、12aがその間の外筒本体部12bに別体として備えられていて、各端部12aの内径が前記本体部12bの内径よりも小さくされていることを特徴とする回転軸受付き直動軸受。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸受を備える直動軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、両側の端部の外径が相対的に小さくされた外筒の内周面に複数の転動体を装着してなる直動軸受と、前記外筒の各端部の外周面に配設された一対の環状回転軸受とからなる回転軸受付き直動軸受が開示されている。この回転軸受付き直動軸受は、複合モータが備える回転と直動とが可能な軸体(モータ出力軸)を支持している。
【0003】
直動軸受の外筒の各端部の外径を小さくすることにより、外径の小さな回転軸受を用いること、すなわち回転軸受付き直動装置の小型化が可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−14115号公報(第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の回転軸受付き直動軸受を更に小型化するため、外筒の端部の外径を更に小さくすると、この端部の厚みが小さくなる。このため、軸体から付与される荷重によって、外筒がその端部(回転軸受で支持される部位)にて変形し易くなる。このような変形が発生すると、直動軸受の外筒の各端部が回転軸受に不安定に支持されるため、この回転軸受と直動軸受との同軸度が低下する。このような同軸度の低下は、軸体の偏心した回転を生じさせるため好ましくない。
【0006】
本発明の課題は、小型化が容易で、そして回転軸受と直動軸受との同軸度にも優れる回転軸受付き直動軸受を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者は、直動軸受と回転軸受とを組み合わせる際に、この組み合わせにより得られる装置を、回転軸受と直動軸受との同軸度を良好に維持した状態で小型化することについて検討を行なった。そして、前記の直動軸受として、滑り軸受ではなく、これと比較して高精度での軸体の支持が可能な転がり軸受を用いる場合、この直動軸受(転がり軸受)は、その外筒の内周面に装着された複数の転動体を介して支持対象の軸体を支持する構成を有しているため、外筒と軸体とが互いに間隔をあけて配置されることに注目した。そして、このような直動軸受の外筒と軸体との間に形成される空間部に、回転軸受が装着される外筒の端部を配置して、前記空間部を有効に利用することにより、小型化が容易で、そして回転軸受と直動軸受との同軸度にも優れる回転軸受付き直動軸受の提供が可能となることを見出し、本願発明に到達した。
【0008】
従って、本発明は、両端部の外径が相対的に小さくされた外筒の内周面に複数の転動体を装着してなる直動軸受と、この直動軸受の外筒の各端部の外周面に配設された一対の環状回転軸受とからなる回転軸受付き直動軸受であって、上記外筒の両端部がその間の外筒本体部に別体として備えられていて、各端部の内径が前記本体部の内径よりも小さくされていることを特徴とする回転軸受付き直動軸受にある。
【0009】
本発明の回転軸受付き直動軸受の好ましい態様は、次の通りである。
(1)外筒の各端部の厚みが、外筒本体部の厚みの0.7〜2.5倍の範囲内の値にある。
(2)外筒の各端部に外筒本体部の内周面に嵌め合いとなる接続部が備えられている。更に好ましくは、外筒の各端部の外周面に外筒本体部の端面に接触するフランジが備えられている。
(3)外筒本体部の内側に各転動体を回転可能に保持する筒状転動体保持器が備えられている。
【0010】
本発明はまた、上記本発明の回転軸受付き直動軸受の外筒に、軸体をその外周面が直動軸受の各転動体と接触した状態で収容してなる回転軸受付き直動案内装置にもある。
【0011】
本発明の回転軸受付き直動案内装置においては、軸体の外周面に長さ方向に延びる複数本の溝が形成されていて、上記各転動体が軸体の各溝に収容配置されていることが好ましい。
【0012】
なお、本願明細書において、上記の「外筒本体部の内径」とは、この本体部の端部における内径を意味する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の回転軸受付き直動軸受は、外筒の各端部がその外径が小さくても十分に大きな機械的強度を示すため、前記各端部に小さなサイズの回転軸受を装着することにより装置全体を容易に小型化することができ、そして回転軸受と直動軸受との同軸度にも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の回転軸受付き直動軸受の構成例を示す部分断面図である。
【図2】図1の回転軸受付き直動軸受10の左側面図である。
【図3】本発明の回転軸受付き直動軸受の別の構成例を示す部分断面図である。回転軸受付き直動軸受30では、外筒32の端部32aが接続部34と共に円筒状に形成されている。
【図4】本発明の回転軸受付き直動軸受の更に別の構成例を示す部分断面図である。回転軸受付き直動軸受40では、外筒42の端部42aの外径が接続部44の外径よりも小さくされている。
【図5】本発明の回転軸受付き直動軸受の更に別の構成例を示す部分断面図である。回転軸受付き直動軸受50では、外筒52の端部52aに備えられた接続部54が外筒本体部52bの外周面に固定されている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の回転軸受付き直動軸受を、添付の図面を用いて説明する。
【0016】
図1は、本発明の回転軸受付き直動軸受の構成例を示す部分断面図であり、そして図2は、図1の回転軸受付き直動軸受10の左側面図である。
【0017】
図1及び図2に示す回転軸受付き直動軸受10は、両端部12a、12aの外径が相対的に小さくされた外筒12の内周面に複数の転動体13、13、〜を装着してなる直動軸受11と、直動軸受11の外筒12の各端部12aの外周面に配設された一対の環状回転軸受21、21などから構成されている。
【0018】
そして本発明の回転軸受付き直動軸受10は、外筒12の両端部12a、12aがその間の外筒本体部12bに別体として備えられていて、各端部12aの内径が本体部12bの内径よりも小さくされていることに主な特徴がある。
【0019】
このような構成の採用により、各回転軸受21が装着される外筒12の端部12aの外径を小さくした場合であっても、この端部12aの内径が外筒12の本体部12bの内径よりも小さくされているため、従来の装置のように外筒に一体に形成された両端部の外径を小さくする場合と比較して、前記端部12aの厚みが大きくなる。これにより、外筒12の各端部12aの機械的強度が大きくなるため、この端部12aが軸体19から荷重が付与された際に変形し難くなる。
【0020】
従って、本発明の回転軸受付き直動軸受10は、外筒12の端部12aに小さなサイズの回転軸受21を装着することにより装置全体を容易に小型化することができ、そして回転軸受21が装着される外筒12の端部12aに変形を生じ難いため回転軸受21と直動軸受11との同軸度にも優れている。
【0021】
以下、本発明の回転軸受付き直動軸受が備える直動軸受、そして回転軸受の構成について詳しく説明する。
【0022】
本発明に用いる直動軸受の構成は、その外筒の構成が異なること以外は、外筒の内周面に複数の転動体(例、球体、コロ)が装着された公知の直動軸受(転がり軸受)と同様である。言い換えれば、本発明に用いる直動軸受は、前記の公知の直動軸受の外筒の構成を変更することによって容易に作製することができる。
【0023】
図1に示す直動軸受11は、外筒12、そして外筒12の内周面に装着された複数の転動体(球体)13、13、〜などから構成されている。この外筒12の両端部12a、12aの外径は、その間の外筒本体部12bの外径よりも相対的に小さくされている。図1に示すように、各端部12aの外径を、外筒本体部12bの内径よりも小さくすることもできる。
【0024】
外筒12の両端部12a、12aは、その間の外筒本体部12bに別体として備えられていて、各端部12aの内径は、前記本体部12bの内径よりも小さくされている。この各端部12aの内径は、外筒12に収容される軸体19との接触を防止するため、この軸体19の外径よりも大きな値に設定される。
【0025】
外筒12の各端部12aの厚み(端部12aの外径と内径との差の値)は、外筒本体部の厚みの0.7〜2.5倍(特に、0.8〜2倍)の範囲内の値にあることが好ましい。これにより、従来のように外筒に一体に形成された端部の外径を小さくする場合と比較して、外筒12の端部12aの機械的強度を十分に大きくすることができる。
【0026】
外筒12の各端部12aには、外筒本体部12bの内周面に嵌め合いとなる接続部14が備えられていることが好ましい。接続部14を、外筒本体部12bの内周面に、例えば、接着、あるいは圧入することにより、各端部12aを外筒本体部12bに容易に固定することができる。
【0027】
外筒12の各端部12aの外周面には、外筒本体部12bの端面に接触するフランジ15が備えられていることが更に好ましい。フランジ15が外筒本体部12bの端面に接触した状態で、各端部12aを外筒本体部12bに固定することにより、各端部12aの位置決め、すなわち回転軸受21の位置決めを容易に行なうことができる。
【0028】
外筒本体部12bの内側には、各転動体13を回転可能に保持する筒状転動体保持器16が備えられていることが好ましい。各転動体13が筒状転動体保持器16に保持されていると、軸体19を外筒12から抜き出した際の各転動体13の脱落を防止することができる。
【0029】
筒状転動体保持器16は、各々外筒12の内周面に形成された周溝に収容配置された止め輪(スナップリング)17、17により、その長さ方向への移動が規制されている。
【0030】
図1の直動軸受11の構成は、外筒12の構成が異なること以外は、筒体、複数の転動体、筒状転動体保持器、そして止め輪から構成される公知の転がり軸受(ボールブッシュ)と同様である。
【0031】
直動軸受11の外筒12や転動体13は、例えば、鋼に代表される金属材料から形成され、そして筒状転動体保持器16や止め輪17は、例えば、鋼に代表される金属材料あるいは樹脂材料から形成される。これらの部品を形成する材料は、公知の直動軸受の場合と同様であるため、これ以上の詳しい説明は行なわない。但し、本発明では、外筒本体部12bと各端部12aとが別体として構成されるため、外筒本体部12bと各端部12aとを異なる材料から形成することもできる。
【0032】
また、本発明の回転軸受付き直動軸受には、公知の回転軸受を用いることができる。
【0033】
図1及び図2に示す回転軸受21は、内輪21aと外輪21bとの間に、環状転動体保持器22に保持された複数の転動体23、23、〜が配置された構成を有している。
【0034】
回転軸受21の内輪21a、外輪21b、そして転動体23は、例えば、鋼に代表される金属材料から形成され、そして環状転動体保持器22は、例えば、鋼に代表される金属材料あるいは樹脂材料から形成される。これらの部品の構成や材料は、公知の回転軸受の場合と同様であるため、これ以上の詳しい説明は行なわない。
【0035】
図1の回転軸受付き直動軸受10の組み立ては、例えば、次のようにして行なわれる。
【0036】
先ず、外筒本体部12bに、筒状転動体保持器16を、その外周面に形成された転動体収容溝(球体の軌道)の端部が前記本体部12bの外部に露出されるように部分的に挿入する。この状態で、筒状転動体保持器16の転動体収容溝に転動体13、13、〜を収容したのち、保持器16の全体を外筒本体部12bに収容する。次に、外筒本体部12bの内周面に形成された周溝に、止め輪17、17を収容配置する。そして、外筒の各端部12aの外周面に、例えば、接着剤を用いて回転軸受21を固定したのち、各端部12aを外筒本体部12bの内周面に、例えば、接着剤を用いて固定することにより、回転軸受付き直動軸受10を作製することができる。
【0037】
なお、従来の回転軸受付き直動軸受において、外筒に一体に形成された両端部の内径を、外筒の本体部の内径よりも小さくすると、外筒の内周面に転動体を装着すること、特に、前記のように筒状転動体保持器に保持された転動体を装着することが極めて困難になる。
【0038】
図1に示すように、回転軸受付き直動軸受10の外筒12に、軸体19をその外周面が上記各転動体13と接触した状態で収容することにより、本発明の回転軸受付き直動案内装置を構成することができる。
【0039】
この軸体19の外周面に長さ方向に延びる複数本の溝19aを形成し、そして各転動体13、13、〜を軸体19の各溝19aに収容配置することにより、軸体19の周方向への回転を防止することができる。
【0040】
図3は、本発明の回転軸受付き直動軸受の別の構成例を示す部分断面図である。
【0041】
図3の回転軸受付き直動軸受30の構成は、外筒32の端部32aにフランジが備えられていないこと、そして接続部34を備える端部32aが円筒状に形成されていること以外は図1の回転軸受付き直動軸受10と同様である。
【0042】
接続部34を備える端部32aが円筒状に形成されていると、これを作製する際の機械加工が極めて容易になる。また、接続部34を備える端部32aの外周面の研削(あるいは研磨など)により、外筒本体部32bの内周面の中心軸と、接続部34の外周面の中心軸、すなわち端部32aの外周面の中心軸とを極めて正確に一致させることができる。このため、回転軸受21と直動軸受31との同軸度が更に良好になる。
【0043】
図4は、本発明の回転軸受付き直動軸受の更に別の構成例を示す部分断面図である。
【0044】
図4の回転軸受付き直動軸受40の構成は、外筒42の端部42aの外径が、接続部44の外径よりも小さくされていること以外は図3の回転軸受付き直動軸受30と同様である。
【0045】
外筒42の端部42aの外径を、外筒本体部42bの内周面に固定された接続部44の外径よりも小さくすることにより、回転軸受付き直動軸受の更なる小型化が可能になる。
【0046】
図5は、本発明の回転軸受付き直動軸受の更に別の構成例を示す部分断面図である。
【0047】
図5の回転軸受付き直動軸受50の構成は、直動軸受51の外筒52の端部52aに備えられた接続部54が、外筒本体部52bの外周面に固定されていること以外は図1の回転軸受付き直動軸受10と同様である。
【0048】
このように、接続部54を外筒本体部52bの外周面に固定することによっても、回転軸受付き直動軸受の小型化は可能である。
【0049】
なお、外筒の各端部(接続部を持たないもの)を、外筒本体部の端面に固定(例、接着固定)することもできる。
【符号の説明】
【0050】
10、30、40 回転軸受付き直動軸受
11 直動軸受
12 外筒
12a 外筒の端部
12b 外筒本体部
13 転動体
14 接続部
15 フランジ
16 筒状転動体保持器
17 止め輪
19 軸体
19a 溝
21 環状回転軸受
21a 内輪
21b 外輪
22 環状転動体保持器
23 転動体
31、41 直動軸受
32、42 外筒
32a、42a 外筒の端部
32b、42b 外筒本体部
34、44 接続部
50 回転軸受付き直動軸受
51 直動軸受
52 外筒
52a 外筒の端部
52b 外筒本体部
54 接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端部の外径が相対的に小さくされた外筒の内周面に複数の転動体を装着してなる直動軸受と、該直動軸受の外筒の各端部の外周面に配設された一対の環状回転軸受とからなる回転軸受付き直動軸受であって、
上記外筒の両端部がその間の外筒本体部に別体として備えられていて、各端部の内径が該本体部の内径よりも小さくされていることを特徴とする回転軸受付き直動軸受。
【請求項2】
外筒の各端部の厚みが、外筒本体部の厚みの0.7〜2.5倍の範囲内の値にある請求項1に記載の回転軸受付き直動軸受。
【請求項3】
外筒の各端部に外筒本体部の内周面に嵌め合いとなる接続部が備えられている請求項1もしくは2に記載の回転軸受付き直動軸受。
【請求項4】
外筒の各端部の外周面に外筒本体部の端面に接触するフランジが備えられている請求項3に記載の回転軸受付き直動軸受。
【請求項5】
外筒本体部の内側に各転動体を回転可能に保持する筒状転動体保持器が備えられている請求項1乃至4のうちのいずれかの項に記載の回転軸受付き直動軸受。
【請求項6】
請求項1乃至5のうちのいずれかの項に記載の回転軸受付き直動軸受の外筒に、軸体をその外周面が上記各転動体と接触した状態で収容してなる回転軸受付き直動案内装置。
【請求項7】
軸体の外周面に長さ方向に延びる複数本の溝が形成されていて、上記各転動体が軸体の各溝に収容配置されている請求項6に記載の回転軸受付き直動案内装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−276198(P2010−276198A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101600(P2010−101600)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(394000493)ヒーハイスト精工株式会社 (76)
【Fターム(参考)】