説明

回転運動伝達用の安全継手

この安全継手は、同じ回転軸(X)を中心として回転することができ、継手の2部分(10,12)間でトルクを伝達するよう通常は互いに噛合する前面歯部(24,40,60,62)を有する第1のトルク伝達手段(14,24)と第2のトルク伝達手段(30,36,40,52,60,62)をそれぞれ備える駆動部(10)と被駆動部(12)とを含んでいる。安全継手はまた、継手の2部分(10,12)間で伝達されるトルクが所定の最大値を上回るときに、第1のトルク伝達手段(14,24)と第2のトルク伝達手段(30,36,40,52,60,62)の前面歯部(24,40,60,62)を離脱させ、かくしてトルク伝達を遮断するよう構成されたトルク感応開放手段(66,72,110)を含んでいる。トルク感応開放手段(66,72,110)は、非圧縮性流体を充填された圧力室(66)と、圧力室(66)内が所定の流体圧力値(p)を上回ると、この圧力室(66)から流体を放出させるのに適した弁手段(110)とを含んでいる。圧力室(66)内の流体の圧力が第1のトルク伝達手段(14,24)と第2のトルク伝達手段(30,36,40,52,60,62)の前面歯部(24,40,60,62)に対し、継手の2部分(10,12)間でトルクが伝達されるよう前面歯部の噛合を維持するように付勢する力を及ぼすとともに、第1のトルク伝達手段(14,24)と第2のトルク伝達手段(30,36,40,52,60,62)の前面歯部(24,40,60,62)を介して継手の2部分(10,12)間で伝達されるトルクが、最大トルク値が最大圧力値(p)に関連づけられるよう、伝達トルクに比例して圧力室(66)内の流体圧力の増大を生ぜしめる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同じ回転軸を中心として回転する、例えば回転シャフトとして作られた第1と第2の伝達部材を回転のために解放可能に接続する意図を有する安全継手に関するものであり、該継手は所定の最大許容トルク値を上回ると前記2つの伝達部材を分離するよう構成される。
【背景技術】
【0002】
上記のように特定されるタイプの安全継手は、回転出力伝達部材を有する例えば電動モータ等の回転運動の動力源から、回転入力伝達部材を有する機械へ回転運動を伝達するために産業界で一般的に使用される。安全継手は前記2つの伝達部材間に配置され、通常は第1の作動状態(締結状態)に維持され、この状態において、前記両部材を回転のために接続する。安全継手は、回転運動が伝達された機械の過大負荷あるいは偶発的故障の場合に、第2の作動状態(開放状態)へ移行するよう構成され、この状態において、運動力学的連鎖全体に対する機能不全あるいは損害を回避すべく前記2つの伝達部材を分離する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の一つの目的は、目下使用されている解決策に対し改善された回転運動伝達用の安全継手を提供することにある。
【0004】
この目的ならびに他の目的は、添付の独立請求項1に特定される特性を有する安全継手のお陰で本発明により完全に達成される。
【0005】
本発明による安全継手の好都合な実施形態は従属請求項の主題であり、その内容は下記の説明と一体かつ不可欠な部分であると見なされるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
要は、本発明は下記を含む安全継手を提供する考えに基づくものであり、該安全継手は、同じ回転軸を中心として回転することができる駆動部および被駆動部であって、これら継手の2部分間でのトルク伝達用に互いに常態的に噛合する前面歯部を有する各トルク伝達手段を備える駆動部および被駆動部と、継手の2部分のトルク伝達手段の前面歯部を離脱させるよう構成され、かくして継手の2部分間で伝達されるトルクが所定の最大値を上回るときにトルク伝達を中断するトルク感応開放手段とを含み、該トルク感応開放手段が、非圧縮性流体を充填された圧力室と、所定の最大圧力値を上回ると圧力室から流体を放出させるのに適した弁手段とを含んでおり、圧力室は、その中に収容された流体の圧力がトルク伝達手段の前面歯部に、継手の2部分間でのトルク伝達用に歯部を係合状態に保つように付勢する力を作用させ、トルク伝達手段の前面歯部を介して継手の2部分間で伝達されるトルクがトルク値に比例して圧力室内の流体の圧力の増大を生み出し、これにより、前記最大トルク値を前記最大圧力値に関連づけるよう構成してある。
【発明の効果】
【0007】
先行技術に比べ、本発明の安全継手はとりわけ下記の利点を有する。
継手の開放は、解除させる特別な解除部材(例えば、ピン等)を必要とせず、それ故に、そのような部材の機械的特性の変動による影響を受けない。
継手の開放は、継手の駆動部と被駆動部とを解放可能に接続する機械部材の離脱動作に影響を及ぼし得るヒステリシス現象による害を受けない。
継手を極めて迅速かつ簡単にリセットすることができる(すなわち、常態操作の締結状態へ戻される)。
継手が非常にコンパクトな構造を有し、その径方向寸法と軸方向寸法に比し高いトルク伝達能力を有する。
継手を開放させる最大トルク値が、広範な調整範囲内で調整可能である。
継手の常態操作の締結状態にあっても、継手を開放させる最大トルク値は、極めて迅速かつ簡単な仕方で調整可能である。
継手を開放させる最大トルク値は時間が経過しても一定に保たれ、かくして継手操作の高い信頼性が保証される。
継手は、その作動期間中に外部からの被加圧流体の供給を必要としない点で自給式であり、また被加圧流体の予想される損失を自動的に補償できる点で自力補償式である。
継手は、圧力室内の圧力の検出に適した圧力変換器と圧力変換器により固定あるいは可動の受信器へ供給される信号を送信するのに適した送信器の簡単な使用により、駆動部と被駆動部との間で伝達されるトルクの監視可能性をもたらす。
【0008】
本発明のさらなる特徴や利点は、添付図面を参照し非限定的な実例により純粋に与えられる下記の詳細な説明から明らかにされよう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】常態操作の締結状態における本発明の好適な実施形態による安全継手の一部軸断面図を示す。
【図2】常態操作の締結状態における本発明の安全継手の(図1とは異なる面での)別の一部軸断面図を示す。
【図3】締結状態における本発明の安全継手(常態操作の締結状態にある継手)の安全弁の断面図を示す。
【図4】図3の安全弁を上から見た図を示す。
【図5】図3と同様の安全弁の断面図であるが、該安全弁の放出状態(継手の開放状態)を示す。
【図6】図2と同様の本発明の安全継手の一部軸断面図であるが、該安全継手の開放状態を示す。
【図7】本発明の安全継手の貯留装置の拡大断面図を示す。
【図8】本発明の安全継手の流体給送ダクトの(図7のVIII−VIII面に沿う)拡大断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
詳細な説明とこれに続く特許請求の範囲では、用語「軸方向」と「長手方向」が安全継手の軸の方向、換言すれば、安全継手の駆動部と被駆動部の回転軸を指すのに対し、用語「横断方向」と「径方向」は安全継手の軸に垂直な方向を指す。
【0011】
先ず図1を参照するに、本発明の好適な実施形態による回転運動伝達用の安全継手は、基本的には全体を符号10で示す駆動部と全体を符号12で示す被駆動部とを含む。安全継手の駆動部10は、変速機の駆動部(例えば、電動モータの出力に接続された伝達シャフト)と共に回転するよう固定的に接続されるようにしてあり、安全継手の被駆動部12は、変速機の被駆動部(例えば、産業機械類の入力に接続された伝達シャフト)と共に回転するよう固定的に接続されるようにしてあって、駆動部10と被駆動部12とは、同じ回転軸Xを中心として回転できるように取り付けられている。
【0012】
安全継手の駆動部10は、第1の外側環状要素14と、この第1の要素14と共に回転するよう堅固に接続され、第1の要素14と共に空間18を画成する第2の内側環状要素16とを備える。駆動部10の第1の要素14は、安全継手の軸方向外側(すなわち、被駆動部12とは反対側)にフランジ部20を形成しており、該フランジ部は、変速機の駆動部(上流部分)と共に回転するように安全継手の駆動部10を堅固に接続するための螺子接続装置(図示せず)を挿入するための複数の孔22を有する。駆動部10の第1の要素14には、その軸方向の内端(すなわち、被駆動部12に対向する側)において前面歯部24が備わっており、これについては後程より詳しく説明するものとする。
【0013】
安全継手の被駆動部12は、第1の外側環状要素26と該第1の要素26と共に回転するよう堅固に接続した第2の内側環状要素28とを備える。被駆動部12の第1の要素26は、相対的に大きな肉厚の第1の軸方向外側部分30と、該第1の部分30から駆動部10に向かって軸方向に突出する相対的に小さな肉厚の第2の軸方向内側部分32とを備える。被駆動部12の第1の要素26の第1の部分30の軸方向外面(すなわち、駆動部10の反対側)には、変速機の被駆動部(下流側部分)と共に回転するよう被駆動部12を堅固に接続するための螺子接続装置(図示せず)の挿入用に複数の孔34が配設されている。駆動部10の第1の要素14と被駆動部12の第1の要素26の第2の部分32との間には、被駆動部12の第3の環状要素36が径方向に介挿してあって、スプライン継手38により被駆動部12の第1の要素26の第2の部分32と共に回転するよう堅固に接続してある。被駆動部12の第3の環状要素36には、駆動部10の第1の要素14の前面歯部24と位置合わせされた垂直な前面歯部40が備わっている。被駆動部12はまた、被駆動部12の第1の要素26の(螺合目的に合わせ対応する外螺子46が配設された)第2の部分32に螺合させる内螺子環状部分44を一体形成された第4の要素42と、内方へ径方向に延在し、駆動部10の第1の要素14のフランジ部分20と被駆動部12の第1の要素26の第2の部分32との間に軸方向に介挿したフランジ部分48とを含んでいる。被駆動部12の第4の要素42のフランジ部分48は、その軸方向垂直内面を被駆動部の第3の要素36に対し係止させている。被駆動部12の第4の要素42はかくして、第3の要素36の軸方向位置を割り当て、それ故に前面歯部40の位置が調整されるようにするリングナットとして機能する。填隙50が、第1の要素26の第2の部分32に対する第4の要素42の螺子が緩まないようにしている。
【0014】
安全継手の駆動部10と被駆動部12との間にはピストン52が介挿してあり、該ピストンは、被駆動部12の第1の要素26の軸方向筒状孔56内を軸方向に摺動できるよう案内される環状ガイド部分54と、該ガイド部分54から径方向外方へ延在し、一方の側にある駆動部10の第1の要素14及び被駆動部12の第3の環状要素36と、他方の側にある被駆動部12の第1の要素26の部分30との間に軸方向に介在するフランジ部分58とを備える。ピストン52のフランジ部分58には、駆動部10の第1の要素14の前面歯部24に噛合する第1の前面歯部60と、被駆動部12の第3の環状要素36の前面歯部40に噛合する第2の前面歯部62とが備わっている。前面歯部60,62を備える面に対する軸方向の反対側におけるピストン52の垂直面は、被駆動部12の第1の要素26の部分30の垂直面64と共に、非圧縮性流体が充填された圧力室66を軸方向に閉塞している。径方向において、圧力室66は、ピストン52のガイド部54により内部から、また被駆動部12の第1の要素26の部分32により外部から閉塞されている。ピストン52のフランジ部分58と被駆動部12の第1の要素26の部分32との間に介挿したガスケット68と、ピストン52のガイド部分54と被駆動部12の第1の要素26の部分30との間に介挿したガスケット70とは、圧力室66の流体密性を保証している。
【0015】
安全継手の常態作動状態にあっては、圧力室66内の流体の圧力がピストン52を左方へ押し、かくして駆動部10の第1の要素14と被駆動部12の第3の要素36の個々の歯部24,40とピストンの歯部60,62との噛合を確実にしている。それ故、駆動部10から被駆動部12へ、駆動部の第1の要素14、ピストン52、被駆動部の第3の要素36、被駆動部の第1の要素26の順でトルクを伝達させることができる。この状態では、被駆動部12の第3の要素36の前面歯部40の軸方向位置は被駆動部の第4の要素42自体の正/逆螺子送りにより調整し、ピストン52の歯部62との予想される遊隙を吸収するよう保証することができる。
【0016】
駆動部10の2つの環状要素14,16間の空間18内で、且つ、ピストン52のガイド部54内に、例えば筒状コイルばねで出来たばね72が受容されており、圧力室66内の流体の圧力が及ぼす力に対し反対方向に動作する軸方向の力、換言するならば、ピストン52の前面歯部60,62を駆動部10の第1の要素14と被駆動部12の第3の要素36のそれぞれの対応する前面歯部24,40から離脱させるように付勢する力をピストンに作用させている。ばね72は、一端(図1の見手から見て右手側)がピストン52のガイド部54の垂直底部壁74に係止し、他端(図1の見手から見て左手側)が被駆動部12の第2の要素28に対し螺子80を介して固定されたカップ要素78の垂直底部壁76に係止している。残る詳細な説明においてより詳しく説明することにする如く、ばね72は、設定最大圧力を上回ることで安全継手が開放した際に圧力室66からの流体の完全な排除を保証する機能を有する。
【0017】
図1を再度参照するに、被駆動部12の第2の要素の部分32と被駆動部12の第3の要素との間に介挿されたガスケット82と、被駆動部12の第3の要素と駆動部10の第1の要素14との間に介挿されたガスケット84とが、前面歯部24,40,60,62の継手面の潤滑に用いられる潤滑剤の漏洩を防止している。
【0018】
駆動部10の第2の要素16と被駆動部12の第2の要素28との間に回転支持手段が取り付けられてあり、該回転支持手段は、図1に示す実施形態において第1のラジアル玉軸受86と第2のアキシャルころ軸受88と第3の円錐ころ軸受90とを備える。第1の軸受86については、その外側リングが軸方向外側において弾性リング92を介して軸方向にロックされているのに対し、その内側リングは軸方向内側において駆動部10の第2の要素16の部分98上に嵌合させた環状要素96のフランジ94を介して軸方向にロックされている。駆動部10の第2の要素16の第2の部分102上に螺合させたリングナット100が、第2の軸受88を駆動部10の第2の要素16の段部104に対し軸方向に固締し、前面歯部24を担持する駆動部10の第1の要素14の段部と共にその要素の軸方向位置が調整できるようにしている。填隙106が、駆動部10の第2の要素16の第2の螺子部102からリングナット100の螺子が緩まないようにしている。環状要素96とリングナット100との間に、エラストマー性要素108が軸方向に介挿され弾性的に圧縮されており、軸受86内に予想される軸方向の遊隙を吸収している。
【0019】
図1の詳細部Aは、噛合状態にある前面歯部40と62を上から見た図を示す。
【0020】
ここで図2から図5を参照し、所定の最大の伝達トルク値を上回ったときの継手の自動開放を制御する安全継手の弁構成を説明することにする。
【0021】
先ず、図2の詳細部Aは、噛合状態にある駆動部10とピストン52のそれぞれの第1の要素14の前面歯部24,62の拡大図を示す。これらの前面歯部は、圧力室66内に存在する流体の予荷重圧力pに由来する軸方向の力の強度と、先に述べたように圧力室66内の流体の圧力が生成する軸方向の力に対し反対方向に作用する、ばね72により生成される軸方向の力の強度との間の差分に等しい強度の軸方向の力Fにより互いに軸方向に押し合っている。第1の要素14を介して駆動部10が伝達するトルクは、軸方向成分Fauを有する接線方向の力Fをピストン52の前面歯部60上に生成する。その結果生じる軸方向の力は、(前面歯部の輪郭間の摩擦の影響を無視した)強度が接線方向の力Fの軸方向成分Fauの強度と前記軸方向の力Fの強度との間の差分に等しく、圧力室66内に収容された流体に過大圧力pauを生成する。圧力室66内の流体の圧力pは、予荷重圧力pと過大圧力pauの総和に等しい。したがって、圧力室66内の流体の圧力pは、前記軸方向の力Fauが誘発して前記接線方向の力Fが生成する圧力pauに比例し、それ故に、継手により伝達されるトルクに比例する。
【0022】
下記の説明に照らしより十分理解されるように、本発明による安全継手の弁構成は、圧力室66の圧抜きを自動的に制御するよう、すなわちピストン52の前面歯部60,62と駆動部10と被駆動部12の前面歯部24,40それぞれとの間の離脱が、圧力室66内の圧力がユーザが調整することのできる所定の最大トルク値に対応する所定の最大圧力値に達したときに、その時点でまさにばね72が及ぼす軸方向の力にさらされるよう構成してある。
【0023】
これに関連し、弁構成は先ず安全弁110を備え、該安全弁は、図2に示す実施形態では被駆動部12の第1の要素26内に形成された適当な座部112(好ましくは、形状が筒状)内に受容されているが、例えば適当な螺子付き接続部品によりその要素外部に取り付けられてもよい。安全弁110は、ダクト114を介して圧力室66と流体連通させ、その室内に存在する圧力pを検出するようにしてある。安全弁は、圧力pが設定圧力pを上回ったときに開弁し、それによって圧力室66から流体が放出されるよう、(ユーザーが調整することができる)所定の設定圧力pに設定される。
【0024】
特に図3を参照するに、安全弁110は、基本的には座部112と、静止ディスク118と、本体116とディスク118との間に介挿されたカップ要素120との軸に沿って摺動できるように取り付けられた本体116を備えている。本体116は、座部112の外径に実質等しい外径を有する中空筒状体形状の上側部分122と、より小さな外径を有し、底部へ向かって先細とされ、座部112に環状ギャップ126を画成する下側部分124とで構成される。本体116の下側部分124と座部112との間に、ガスケット128が介挿されている。複数のダクト130が本体116の下側部分124を横断しており、それによって本体部分124上方の弁部を環状ギャップ126に流体連通させる状態にしている。本体116の下部124の下面に、好ましくは円錐形状のガスケット132が取り付けられてあり、該ガスケットは、安全弁110の閉弁状態においてダクト114を座部112に流体連通状態にするオリフィス134を封止している。
【0025】
安全弁110はまた、カップ要素120と本体116の上部122との間に存在する環状自由空間内に配置した筒状コイルばねとして好ましくは作成されるばね136を備える。このばね136は、その下端をカップ120の底部フランジに対し係止させ、その上端を座部112の適当な内螺子付き部分に螺入させたリングナット138に対し係止させてある。ばね136は、本体116と共にカップ120を下方へ押し、かくしてガスケット132を介してオリフィス134を閉じられた状態に保つ。
【0026】
安全弁110はまた、カップ要素120の軸に沿って延在し、カップ要素120の底部壁内に配設された同軸孔142内に摺動可能に受容されるピン要素140を備えている。底部のピン要素140が、孔142を封止するガスケット146を配設した頭部144を形成している。カップ要素120内に受容されたばね148がピン要素140の頭部144をカップ要素120の底部壁に対し押し、かくしてカップ要素120の内部室を150に示す如く閉じた状態に保っている。ピン要素140の外面には複数の溝152が配設してあり、それらがピン要素140が図3に示す閉鎖位置から図5に示す開放位置へ移動するときに孔142を介して室150から流体を流させる機能を有する。図3の閉鎖位置において、ピン要素140はカップ要素120の底部壁の外面を越えて突出している。
【0027】
安全弁110のディスク118は、保持リング156により座部112の段部154に対しロックされている。ディスク118は、安全弁110の放出状態において孔142を介して室150から到来する流体の放出に加え、リングナット138を回転させてばね136の予荷重を調整する適当なキーの通過もまた可能にする機能を有する複数の貫通孔158(図示の例では、図4において、120度に配置された3個の円形開口)を有する。
【0028】
図3に示した安全弁110の閉鎖状態は、圧力室66内の流体と同じ圧力pであるオリフィス134内の圧力によりガスケット132に対し、すなわち本体116に作用する力Fが、ばね136により作用する力とガスケット128と座部112の内面との間の摩擦力との総和により与えられる反力Rを上回るまで維持される。ばね136の力、すなわち安全弁110の設定圧力pは、リングナット138により調整可能である。
【0029】
ここで図5を参照するに、オリフィス134内の圧力によりガスケット132に対し、すなわち本体116に作用する力Fが反力Rを上回ると、ガスケット132と本体116とカップ要素120とピン要素140とで形成された組立体は、座部112の底面に対し上昇し、かくして圧力室66からダクト114とオリフィス134を介してギャップ126へ、さらにここからダクト130を介して室150へ流体を通過させる。ピン要素140がディスク118に当接する状態に至ると、カップ要素120のさらなる離床がピン要素140を閉鎖位置から開放位置へ移動させ、かくしてピン要素140内の溝152とディスク118内の開口158とを介して室150から流体が放出できるようにする。
【0030】
それ故、安全継手が伝達するトルクが圧力室66内の流体の圧力pが安全弁110の設定圧力pを上回るようにされたときに、安全弁110は閉弁状態から放出状態へ移行し、それによって圧力室66内に収容された流体の放出と、すなわち駆動部10の第1の要素14と被駆動部12の第3の要素36の関連する前面歯部24,40からのピストン52の前面歯部60,62の離脱を可能にする。放出状態に移行すると、安全弁110は、ピストン52に対し作用するばね72が本体116に対しばね136が作用する反力に打ち勝つことのできる流体内圧力を生成するよう選択され、結果的にオリフィス134を開き続けるようにするという事実の結果、その状態に保持される。このことで、ピストン52の右方への完全な並進、すなわち駆動部10と被駆動部12の前面歯部からのピストンの前面歯部自体の完全な離脱の保証が可能とされる。安全継手110の開放状態は、図6に示してある。
【0031】
好ましくは、本発明による安全継手はまた、圧力室66内の流体の予想される漏洩を自動的に回復し、かくして予荷重圧力p、すなわちそれを上回ると安全継手が開放される最大トルク値を一定に保つ機能を有する貯留装置160を備える。該貯留装置は、図2と図6の両方の詳細部Bに、さらに図7には拡大された縮尺で図示されている。図2には、締結状態の安全継手に対応する位置に貯留装置が図示してあるが、図6と図7では、貯留装置は安全継手の開放状態に対応する位置に図示してある。
【0032】
特に図7を参照するに、貯留装置160は先ず被駆動部12の第2の要素30内に配設された座部164内に摺動可能に受容されたピストン162を、図示の例では、安全弁110を受ける座部112に対し直径を挟んで反対側に備え、このピストン162が座部164と共に圧力室66の予荷重圧力pの被加圧流体を充填される平衡室166(図2)を形成している。図示の例では筒状コイルばねで出来た直列に機能する一対のばね168,170が、ピストン162を平衡室166の底部壁に向け押し、かくしてその中に収容された流体を排除するように付勢する。
【0033】
前記貯留装置はまた、平衡室166に流体連通する室174と、ダクト178を介して圧力室66に流体連通する室176との間に介挿された逆止弁172を備える。図7の詳細部Aに寸法を拡大して示した逆止弁172は、ステム182を装備するシャッター180と、シャッター180を閉鎖位置に保つように付勢するばね184とを備える。逆止弁172は、かくして流体を平衡室166から圧力室66への方向にのみ通過させる。圧力室66から流体が漏洩する場合、その室内の圧力が低下し、室174と176との間の圧力差が故に、逆止弁172が開弁し、平衡室166内に収容された流体を元々の圧力値pが回復するまで圧力室66内へ流出させる。透明な蓋186により、ユーザーにピストン162の位置を点検させ、かくして平衡室166の充填状態を点検させることができる。
【0034】
安全継手により伝達される最大のトルク値を上回った場合に安全弁110が開弁すると、逆止弁172の下流の圧力降下が平衡室166の底面に対しばね168,170により押されるピストン162の完全な変位を生ぜしめる。このような位置にあっては、逆止弁172のシャッター180のステム182と協働する制御突起188が配設されたピストン162がシャッター180を上昇状態に保ち、それ故に逆止弁172は開弁する。
【0035】
最後に、図8を参照するに、いわゆるリセット工程にて、すなわち安全継手が開放後に締結状態へ復帰する際に、圧力室66に流体を供給させることができるよう、被駆動部12の第1の要素26内に供給口190が配設してあり、該供給口は、逆止弁172上流の室174内に開口する供給ダクト194と流路192を介して流体連通する。螺子締め弁196が、流路192を開閉させる。
【0036】
安全継手のリセット操作は、下記の仕方で行なわれる。先ず、圧力室66の重力による充填中に空気が排出されるように、安全弁110が最高位置へ持っていかれるまで、継手の被駆動部12を回転させる。この時点で、供給接続部品(図示せず)を供給口190内へ挿入し、螺子込み弁196を開弁させ、圧力室66に連通する浄化弁198(図2と図6)を開弁させた後、圧力室66の重力による充填を行なう。充填工程期間中に安全弁110を開弁状態に保つため、その弁のカップ要素120をユーザが把持できる適当なハンドル200により持ち上げ、その要素内に配設されてディスク118内の開口158の一つを介して外部からアクセス可能な螺子付き有底孔202(図3と図5)内へその端部の一方をもって螺入する。空気気泡を含まない純粋な流体が安全弁110から、さらに浄化弁198から流出するや否や、安全弁110はその閉弁位置へ復帰できるようになり、浄化弁198は閉弁する。この時点で、被加圧流体を室66内へポンプ給送開始する。かくしてピストン52は、ピストンの前面歯部60,62自体と駆動部10と被駆動部12の前面歯部24,40との間の噛合がそれぞれ完成するまで、ばね72の力に抗して(図1,2,6の見手から見て)左方へ移動する。同時に、貯留装置160のピストン162は(図7の見手から見て)右方へ移動させられ、平衡室166は被加圧流体で充たされる。予荷重圧力pに達すると、螺子締め弁196が閉弁し、供給口190と供給ダクト194との間の流体連通を遮断し、供給接続部品は供給口190から螺合状態を外される。
【0037】
本発明の一実施形態によれば、安全継手には伝達されるトルクを検出する装置を配設することができ、その装置は基本的に、(先に説明した如く、継手の駆動部と被駆動部との間で伝達されるトルクに比例する)圧力室内の圧力の検出に適した圧力変換器や、圧力変換器が供給する信号を固定あるいは可動の受信器へ送信するのに適した送信器を含むものである。ユーザーは、かくして安全継手が伝達するトルクの値を時々刻々あるいは要請時に点検することができる。
【0038】
当然ながら、本発明原理は不変のままであり、純粋に非限定的な実例により説明し図示したものについて実施形態と製法の細部は幅広く変えることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転運動の伝達用の安全継手であって、
同じ回転軸(X)を中心として回転することができる駆動部(10)及び被駆動部(12)であって、前記継手の前記駆動部および前記被駆動部(10,12)の間でトルクを伝達するよう通常は互いに噛合する前面歯部(24,40,60,62)を有する第1のトルク伝達手段(14,24)と第2のトルク伝達手段(30,36,40,52,60,62)をそれぞれ備える駆動部(10)及び被駆動部(12)と、
前記継手の前記駆動部および前記被駆動部(10,12)の間で伝達されるトルクが所定の最大値を上回るときに、第1のトルク伝達手段(14,24)と第2のトルク伝達手段(30,36,40,52,60,62)の前面歯部(24,40,60,62)を離脱させ、かくしてトルク伝達を遮断するよう構成されたトルク感応開放手段(66,72,110)とを含み、
該トルク感応開放手段(66,72,110)は、非圧縮性流体が充填された圧力室(66)と、圧力室(66)内の圧力が所定の流体圧力値(p)を上回ると、この圧力室(66)から流体を放出させるのに適した弁手段(110)とを含んでおり、
圧力室(66)と第1のトルク伝達手段(14,24)と第2のトルク伝達手段(30,36,40,52,60,62)は、
圧力室(66)内の流体の圧力が、第1のトルク伝達手段(14,24)と第2のトルク伝達手段(30,36,40,52,60,62)の前面歯部(24,40,60,62)に対し、前記継手の前記駆動部および前記被駆動部(10,12)間でトルクが伝達されるよう前面歯部の噛合を維持するように付勢する力を及ぼすとともに、
第1のトルク伝達手段(14,24)と第2のトルク伝達手段(30,36,40,52,60,62)の前面歯部(24,40,60,62)を介して前記継手の前記駆動部および前記被駆動部(10,12)の間で伝達されるトルクが、伝達トルクに比例して圧力室(66)内の流体圧力の増大を生ぜしめ、かくして最大トルク値を最大圧力値(p)に関連づけるよう構成されている、安全継手。
【請求項2】
第1のトルク伝達手段(14,24)が第1の前面歯部(24)を有し、第2のトルク伝達手段(30,36,40,52,60,62)が回転軸(X)に垂直で第1の前面歯部(24)と同一面内に配された第2の前面歯部(40)を有しており、第2のトルク伝達手段(30,36,40,52,60,62)が前記第1の前面歯部(24)に噛合するよう構成された第3の前面歯部(60)と、前記第2の前面歯部(40)に噛合するよう構成された第4の前面歯部(62)とを有する軸方向に移動可能なピストン(52)を更に含んでおり、このピストン(52)が圧力室(66)内の流体圧力により前記第1と第2の前面歯部(24,40)に向け押され、継手の常態操作の締結状態において前記前面歯部(24,40,60,62)間の噛合、すなわち駆動部(10)と被駆動部(12)との間のトルクの伝達を確実にする、請求項1に記載の安全継手。
【請求項3】
第2の前面歯部(40)は、該歯部を第1の前面歯部(24)と同一面内に位置させるよう軸方向に調整可能な被駆動部(12)の要素(36)により形成される、請求項2に記載の安全継手。
【請求項4】
前記ピストン(52)は、その軸が回転軸(X)に一致する被駆動部(12)の筒状孔(56)内を軸方向に摺動案内されるガイド部(54)を含む、請求項2または3に記載の安全継手。
【請求項5】
前記被駆動部(12)は、筒状の孔(56)を有するとともに、ピストン(52)と共に圧力室(66)を封止する軸方向固定要素(30)を備える、請求項4に記載の安全継手。
【請求項6】
前記被駆動部(12)の前記の軸方向に調整可能な要素(36)と前記軸方向固定要素(30)は、スプライン継手(38)により相対回転するよう接続してある、請求項3または5に記載の安全継手。
【請求項7】
前記トルク感応開放手段(66,72,110)は、圧力室(66)内の流体の圧力が及ぼす力に対し反対方向にピストン(52)を押すように付勢する第1の弾性手段(72)を更に含む、請求項2から6のいずれか1項に記載の安全継手。
【請求項8】
前記弁手段(110)は圧力室(66)に連通するダクト(114)の端部に配置した安全弁(110)を含み、この安全弁(110)を、該安全弁がダクト(114)を封止する閉弁位置とダクト(114)を開いて該ダクトを介して圧力室(66)内に収容されている流体の放出を可能とする放出位置との間を可動とし、前記最大圧力値(p)を安全弁(110)の設定圧力と等しくした、請求項1から7のいずれか1項に記載の安全継手。
【請求項9】
前記安全弁(110)は、ダクト(114)を閉鎖するのに適した可動本体(116)と、該可動本体(116)に対して該可動本体をダクト(114)を閉鎖する位置に保持するように付勢する力を作用させる第2の弾性手段(136)とを備える、請求項8に記載の安全継手。
【請求項10】
前記安全弁(110)は設定圧力を調整する調整手段(138)を備える、請求項8または9に記載の安全継手。
【請求項11】
前記安全弁(110)の調整手段(138)が、前記第2の弾性手段(136)の予荷重を調整するよう構成されたリングナット(138)を含む、請求項9または10に記載の安全継手。
【請求項12】
圧力室(66)内の予想される流体漏洩を自動的に補償するよう配設した流体貯留手段(160)を更に備える、請求項1から11のいずれか1項に記載の安全継手。
【請求項13】
前記流体貯留手段(160)は、個々の座部(164)内に摺動可能に配置され、被加圧流体が充填される平衡室(166)を画成し、圧力室(66)との連通状態にすることのできるピストン(162)と、平衡室(166)から圧力室(66)の方向にのみ流体を通過させるよう配置された逆止弁(172)とを含む、請求項12に記載の安全継手。
【請求項14】
圧力室(66)内の流体の圧力を示す信号を供給するのに適した圧力センサ手段と、圧力センサ手段が供給する信号を送信するのに適した送信器手段と、送信器手段が送信する信号を受信するのに適した受信器手段もまた備え、安全継手により伝達されるトルクが監視できるようにした、請求項1から13のいずれか1項に記載の安全継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2011−522181(P2011−522181A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−511157(P2011−511157)
【出願日】平成21年6月1日(2009.6.1)
【国際出願番号】PCT/IB2009/052298
【国際公開番号】WO2009/144686
【国際公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(510314219)マイナ・オルガーニ・ディ・トラスミッシオーネ・ソシエタ・ペル・アチオニ (1)
【氏名又は名称原語表記】MAINA ORGANI DI TRASMISSIONE S.p.A.
【Fターム(参考)】