説明

回転部材のシール構造

【課題】シール部材のシール性を維持し、且つトルクの低減が可能な回転部材のシール構造を提供する。
【解決手段】軸受ユニットを構成する回転側部材及び固定側部材の一方の部材に固定され、他方の部材に相対摺接する弾性材からなるシールリップを備えた回転部材のシール構造であって、前記シールリップが摺接する面には、40℃での基油動粘度が10〜60mm2/secのグリースが塗布されており、前記シールリップが摺接する面は、多数のディンプルを備えた凹凸面とされ、且つ前記シールリップによる圧力が作用しても前記グリースの油膜が維持される表面粗さRaが、0.5〜1.5μmであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転側部材及び固定側部材の一方の部材に固定され、他方の部材に相対摺接するシールリップを備えた回転部材のシール構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、回転部材のシール構造として、回転側部材及び固定側部材の一方の部材に固定され、他方の部材に相対摺接するシールリップで構成されるものが知られており、このようなシール構造は、転がり軸受ユニットの転動体の両側に装着される場合には、軸受ユニット内への水、塵埃等の浸入や軸受ユニット内からのグリースの漏出を防止する役目を担っている。
そして、シールリップが相対摺接する部分には、上記両者の摺接が円滑になされるよう、グリースが塗布されている。
【0003】
下記特許文献1には、軸受ユニットに装着され、回転側に固着されるスリンガと、固定側に固着され前記スリンガに摺接するシールリップとを組み合わせて構成されるものが記載されており、シールリップ先端縁を摺接させる部分を平滑面とし、シール性を確保するものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2002−62305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、自動車の燃費向上のための取り組みがなされており、車輪の軸受部分でもその回転トルクの低減化が求められるようになった。
上記のようなスリンガとシールリップとの摺接部分に塗布されるグリースは、そのシール性を勘案して40℃での基油動粘度が、70〜75mm2/secと比較的高いものが用いられている。このようなグリースの塗布によって、シール性の維持と円滑な摺接がなされるが、グリースの粘性抵抗によるトルクがなお無視出来ず、燃費の向上のためにはまだ充分に応えることができなかった。
また、特許文献1のように、スリンガのシールリップ先端縁との摺接部を平滑面にすると、シール性は確保されるが、摩擦抵抗が大きくなって回転トルクの増大を来たすことになる。
そこで、シールリップの先端部表面を、凹凸処理を施した金型を用いて転写したり、サンドブラストやサンドペーパー等で表面仕上げすることにより粗面化すれば、スリンガとの摺接部での摩擦抵抗が小さくなり、トルクの低減化に有効となることが考えられる。
【0006】
しかしながら、凹凸処理が施された金型により粗面化する場合は、成型回数を重ねる毎に金型の凹凸が摩耗し、製品(シールリップ)表面の凹凸がなくなり、トルクの低減の効果が薄れてしまう。またサンドブラストやサンドペーパー等により粗面を形成する方法は、処理面がゴム等の弾性体であるため、品質にバラ付きが生じ易く生産性の面で問題があった。
【0007】
本発明は、上記のような実情に鑑みなされたもので、シール部材のシール性を維持し、且つトルクの低減が可能な回転部材のシール構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために提案される請求項1では、軸受ユニットを構成する回転側部材及び固定側部材の一方の部材に固定され、他方の部材に相対摺接する弾性材からなるシールリップを備えた回転部材のシール構造であって、前記シールリップが摺接する面には、40℃での基油動粘度が10〜60mm2/sec 軸受ユニットを構成する回転側部材及び固定側部材の一方の部材に固定され、他方の部材に相対摺接する弾性材からなるシールリップを備えた回転部材のシール構造であって、前記シールリップが摺接する面には、40℃での基油動粘度が10〜60mm2/secのグリースが塗布されており、前記シールリップが摺接する面は、多数のディンプルを備えた凹凸面とされ、且つ前記シールリップによる圧力が作用しても前記グリースの油膜が維持される表面粗さRaが、0.5〜1.5μmであることを特徴とする。
【0009】
請求項2では、請求項1において、上記多数のディンプルが、微小剛体粒子を衝突させることにより形成されたものであることを特徴とする。
請求項3では、請求項1または請求項2において、前記他方の部材が、金属製スリンガを備えた回転側部材であって、前記シールリップはこの金属製スリンガに相対摺接するものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の請求項1に記載の回転部材のシール構造によれば、弾性材からなるシールリップが摺接する面には、40℃での基油動粘度が10〜60mm2/secのグリースが塗布されているので、シール性を維持しながら、回転トルクの低減を図ることができ、またシールリップが摺接する面は、多数のディンプルを備えた凹凸面とされ、表面粗さRaが、0.5〜1.5μmであるので、グリースがこの凹凸部に保持され、シールリップによる圧力が摺接する面に作用してもグリースの油膜が破壊されないので、上記基油動粘度のグリースとの相乗効果でより一層、シール性を維持しながらトルクを顕著に低減させることができる。
なお、40℃での基油動粘度が10mm2/secより小さくなると、グリースの流動性が大きくなり、上記凹凸部に保持されず、回転摺接作用により摺接部分から離散し、シール性が低下すると共に摩擦抵抗が増大する傾向となる。また40℃での基油動粘度が60mm2/secより大きくなると粘性抵抗が大となるため、上記凹凸部にグリースが強固に保持され、トルクの低減効果が低下する傾向となる。
また本発明の請求項1に記載の回転部材のシール構造によれば、シールリップが摺接する面の表面粗さRaは、0.5〜1.5μmとすると最適である。0.5μmより小さくなると、平滑面に近くグリースの保持性が低下し、グリースの流失及び摩擦抵抗の増大をきたす傾向となる。また1.5μmを超えると粗面が粗くなりすぎて、シール性が悪くなる傾向となる。
さらに本発明の請求項1に記載の回転部材のシール構造によれば、回転側部材及び固定側部材が軸受ユニットを構成するものであるので、例えば自動車の軸受ユニットに採用されれば、軸受ユニット内への水、塵埃の浸入やグリースの漏出を防止するシール性を維持しながら、車両の燃費を向上させることができる。
【0011】
本発明の請求項2に記載の回転部材のシール構造によれば、摺接面に形成される多数のディンプルは、微小剛体粒子を衝突させることにより形成されるので、ディンプルを容易に形成することができる。
【0012】
本発明の請求項3に記載の回転部材のシール構造によれば、シールリップが金属製スリンガに相対摺接する構成であっても、請求項1に記載のものと同様にシール性を維持しながら、顕著な回転トルクの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のシール構造が用いられた軸受ユニットの一例を示す縦断面図である。
【図2】(a)及び(b)は、図1におけるX部の拡大図である。
【図3】図2におけるY部の拡大図である。
【図4】(a)及び(b)は、本発明の別の実施態様の図2と同様図である。
【図5】(a)及び(b)は、本発明の別の実施態様の図2と同様図である。
【図6】実験条件をまとめた図である。
【図7】実験結果の測定値をグラフにした図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図とともに本発明の実施の形態について説明する。
【実施例1】
【0015】
以下に本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明のシール構造を軸受ユニットに採用した一例を示す縦断面図であり、図2(a)及び(b)は図1におけるX部の拡大図を、図3は図2におけるY部の拡大図を夫々示す。
図1は、自動車の車輪を駆動シャフト2に対して転がり軸受ユニット1により支持する構造の一例を示すものであり、内輪を構成するハブ3にボルト31によりタイヤホイール(不図示)が固定される。また、32はハブ3に形成されたスプライン孔であり、このスプライン孔32には駆動シャフト2がスプライン嵌合され且つハブ3に一体固定されて、該駆動シャフト2の回転駆動力がタイヤホイールに駆動伝達される。33は内輪部材であり、上記ハブ3とにより内輪が構成される。
【0016】
4は外輪であり、車体の懸架装置(不図示)に取付固定される。この外輪4と上記内輪(ハブ3及び内輪部材33)との間に2列の転動体(玉)5…がリテーナ51で保持された状態で介装されている。6、9は上記転動体5…の転動部に装填されるグリース(グリース等の潤滑剤)の漏出或いは外部からの泥や水等の浸入を防止するためのシール部材であり、外輪4と内輪(ハブ3及び内輪部材33)との間に圧入される。
【0017】
図2(a)及び(b)は、図1のX部の拡大図を示し、内輪(ハブ3及び内輪部材33)側の周体には、ステンレス鋼等により板金加工されたリング状のスリンガ7が圧入嵌合されている。該スリンガ7は内輪(ハブ3及び内輪部材33)の周体に嵌着される筒状部71と、この筒状部71の一端に曲成された外向鍔部72とより構成される。
また、スリンガ7に対応する位置にはシールリップ8が圧入嵌合されている。該シールリップ8は、ステンレス鋼や低炭素鋼等からなる芯金80とこの芯金80と成形一体とされたゴム等の弾性材からなるリップ本体81とより構成される。リップ本体81は、複数の舌状に延びるリップ部82…を含み、上記スリンガ7及びシールリップ8を互いに嵌め合わせ組み合わせてシール部材6を構成した際には、このリップ部82…の先側部分がスリンガ7の表面に弾性変形を伴い弾接する。そしてこの状態で、外輪4側の周体(内周面)に圧入嵌装される。
【0018】
斯くして、上記スリンガ7及びシールリップ8により、シール部材6が構成され、内輪(ハブ3及び内輪部材33)の回転に伴い、上記リップ部82…のスリンガ7に弾接する面が、互いに摺接するシール面となって、外部から軸受ユニット1への泥や水等の浸入或いは軸受ユニット1内に充填されるグリース等の漏出が防止される。図例では、リップ部82は3個形成された例を示しているが、リップ部82の形状はこれに限定されるものではない。またリップ部82の構成においても、限定されるものではなく、図2(a)のように、3個のリップ部82をスリンガ7に弾接させるものとしてもよいし、図2(b)のように、内1個は内輪部材33の周体に直接弾接しており、この弾接面も互いに摺接して同様にシール面として機能するものとしてもよい。
【0019】
本発明のシール構造は、スリンガ7のシールリップ8との摺接面73に、40℃での基油動粘度が10〜60mm2/secのグリースGが塗布されていることを特徴とし、またその摺接面73には、多数のディンプルを備えた凹凸面が形成されている。
ここで塗布されるグリースGはエステル系、合成炭化水素系、鉱油系のもの、或いはエステル系と鉱油とを混ぜたもの等が用いられるが、これに限定されるものではない。
【0020】
上記基油動粘度の値は、後述する実験を根拠にしたデータであり、40℃で10〜60mm2/secの範囲内とすれば、シール性を維持しながらトルクの低減を図ることができる。またグリースGは、その基油動粘度を40℃で10〜30mm2/secの範囲内とすれば、スリンガ7のシールリップ8との摺接面73に、下記のようなディンプル73aを形成しなくても、顕著なトルク低減効果を発揮することができる。
図3は、上記ディンプル73a…の形成態様を模式的に示すものである。
ここで、上記多数のディンプルの加工方法は、限定するものではないが、微小剛体粒子を衝突させるショットピーリングにより形成してもよいし、上記微小剛体粒子を直径40〜200μmのスチール球とし、これを100m/sec以上の噴射速度で噴射衝突させ形成してもよい。
【0021】
このような多数のディンプル73a…の存在により、ディンプル73aによって形成される空間にグリースGが保持され、リップ部82の先側部分との高速相対摺接の際に、圧力がかかっても油膜が保持され摺動抵抗を低減でき、摩擦係数が小さくなるため、トルクの低減を図ることができると共に、発熱の抑止効果が期待できる。
この場合のスリンガ7の摺接面73の表面粗さRa(JIS BO601−2001)は、0.5〜1.5μmとすると、シール性を維持しつつ、トルクを低減できるので、最適である。
【0022】
またディンプル73a…を形成するための微小剛体粒子がスチール球である例について述べたが、被加工面の材質によっては、他の金属小球或いはガラスやセラミックス等の小球も使用される。上記被加工面の材質としては、ステンレス鋼、圧延鋼板(SPCC等)等の金属板が挙げられる。
更に上記では他方のシール部材9については特に述べなかったが、これについてもシール部材6と同様に構成すれば、トルクの低減効果及び燃費の向上効果が一層顕著となる。
なお、図例の軸受ユニット1に限らず、内輪固定、外輪回転の軸受機構にも、本発明が適用されることは言うまでもない。
【実施例2】
【0023】
図4(a)及び図4(b)は本発明の別の実施態様を示した図であり、図2と同様図である。
上述の実施例1では、回転側に固着される金属製スリンガ7と、固定側に固着されスリンガ7に相対摺接するシールリップ8とを組み合わせて構成されるシール部材6の例を説明したが、ここでは、スリンガ7がなくシールリップ8自体がシール部材6を構成するシール構造を説明する。なお、実施例1に共通の部分には同一の符号を付し、説明を割愛する。
【0024】
本実施例においてシールリップ8は、固定側部材である外輪4の内周面に圧入嵌合されて固定されている。該シールリップ8はステンレス鋼や低炭素鋼等からなる芯金80とこの芯金80と成形一体とされたゴム等の弾性材からなるリップ本体81とより構成され、リップ本体81には、複数の舌状に延びるリップ部82…が形成される。そしてこのリップ部82…の先側部分が内輪部材33の摺接面73に弾性変形を伴い弾接する。
【0025】
本実施例のシール構造はこのようなシールリップ8を備えた回転部材のシール構造であって、シールリップ8が摺接する内輪部材33の摺接面73には、40℃での基油粘度が10〜60mm2/secのグリースが塗布されていることを特徴とする。また上記摺接面73が、多数のディンプルを備えた凹凸面とされる点や、その表面粗さRaが、0.5〜1.5μmである点は、実施例1と共通し、多数のディンプルは、微小剛体粒子を衝突させることにより形成されたものであってもよいことは言うまでもない。また、図例の軸受ユニット1に限らず、内輪固定、外輪回転の軸受機構にも、本実施例が適用可能である。
【実施例3】
【0026】
図5(a)及び図5(b)は本発明の別の実施態様を示した図であり、図2と同様図である。
上述の実施例2では、スリンガがなくシールリップ8自体がシール部材6を構成するシール構造を説明したが、ここではシールリップ8の構成は同様とし、シールリップ8が摺接する面が相違するシール構造を説明する。なお、実施例1、2に共通の部分には同一の符号を付し、説明を割愛する。
【0027】
本実施例においてシールリップ8は、実施例2と同様に固定側部材である外輪4の内周面に圧入嵌合されて固定され、該シールリップ8はステンレス鋼や低炭素鋼等からなる芯金80とこの芯金80を覆うよう成形一体されたゴム等の弾性材からなるリップ本体81とより構成されている。リップ本体81には、複数の舌状に延びるリップ部82…が形成されており、このリップ部82…の先側部分が内輪部材33に形成される周溝33aの側壁(摺接面73)に弾性変形を伴い弾接する。
【0028】
本実施例のシール構造はこのような周溝33aの側壁に摺接するシールリップ8を備えた回転部材のシール構造であって、シールリップ8が摺接する摺接面73には、40℃での基油粘度が10〜60mm2/secのグリースが塗布されていることを特徴とする。またシールリップ8の摺接面73が、多数のディンプルを備えた凹凸面とされる点やその表面粗さRaは、0.5〜1.5μmである点は、実施例1と共通し、多数のディンプルは、微小剛体粒子を衝突させることにより形成されたものであってもよいことは言うまでもない。また、図例の軸受ユニット1に限らず、内輪固定、外輪回転の軸受機構にも、本実施例が適用可能である。
【0029】
(実験例)
SUS430でスリンガを形成し、シールリップとの摺接面に直径40〜200μmのスチール球を100m/sec以上の噴射速度で噴射衝突させディンプル加工を施し、表面粗さRa0.85μmとしたスリンガとNBRで成形加工したシールリップとからなるシール部材、すなわち表面処理ありのものを5個と、これとは別に、上記ディンプル加工が施されていないスリンガとシールリップとからなるシール部材、すなわち表面処理なしのものを5個準備し、各々のシール部材には、基油動粘度が15.3〜74.7mm2/secまでのグリースを塗布した。図6の表に示すように計10種のサンプルを用意し、自動車の軸受ユニット部分に装着し、車軸の回転数200〜1500rpmについて車軸にかかる回転トルクを計測する実験を行った。
【0030】
(結果)
図6、7は上記実験結果をまとめたものであり、図6は、上記10種のスリンガの加工状態及びグリースの塗布状態を図7のグラフ表記に対応させて表にしたもの、図7は測定値をグラフにしたものである。なお、図6の表外には塗布されるグリースの種類を記載しており、図7のグラフの縦軸は、表面処理をせず40℃での基油動粘度74.7mm2/secのグリースを摺接面に塗布したスリンガからなるシール部材を軸受ユニットに装着し、車軸の回転数を200rpmの場合を100とした場合のトルク比を示している。横軸は車軸の回転数(rpm)である。
【0031】
以上より、スリンガに表面処理を施さなくても、基油動粘度が15.3mm2/secのグリースを塗布すれば、現行品(表面処理なし、グリースの基油動粘度:74.7mm2/sec)よりおよそ3.5割程度、基油動粘度を25.5mm2/secとすれば、現行よりおよそ3割程度、トルクを低減できることがわかった。ここで、基油動粘度を30.5mm2/secとした場合においても、現行より2割程度のトルク低減を図ることができるが、この場合は、表面処理を施した方がトルクの低減が一層顕著になるといえる。
よって、スリンガに表面処理を施さない場合は、基油動粘度を10〜30mm2/secとすることが効果的といえる。
一方、表面処理を施した場合においては、基油動粘度が48.1mm2/secで現行よりおよそ2.5割程度、30.5mm2/secでおよそ4割程度、25.5mm2/secでおよそ4割程度、15.3mm2/secでおよそ4.5割程度のトルクの低減が実現できることがわかった。ここで表面処理を施せば、現行品のグリース(基油動粘度:74.7mm2/sec)でも2割程度のトルク低減を図ることができるが、その他の実験データと比べると、効果が顕著とはいえない。
よって、スリンガに表面処理を施した場合は、基油動粘度を10〜60mm2/secとすることが効果的といえる。
(まとめ)
以上の実験結果より、現行品のグリース(基油動粘度:74.7mm2/sec)とするより、基油動粘度はより低いものを塗布する方が、トルクの低減が可能といえ、また上記摺接面に表面処理を施すとグリースによる効果と相俟って、より一層顕著にトルクが低減できるがわかった。
また、スリンガに表面処理を施さない場合は、基油動粘度を10〜30mm2/sec、スリンガに表面処理を施す場合は、基油動粘度を10〜60mm2/secとすれば、より効果的にトルクの低減が図れることがわかった。
なお、上述の基油動粘度はいずれも40℃におけるグリースの基油動粘度を示す。
【符号の説明】
【0032】
1 軸受ユニット
6 シール部材
7 スリンガ
73 摺接面
73a ディンプル
8 シールリップ
80 芯金
81 リップ本体
82 リップ部
G グリース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受ユニットを構成する回転側部材及び固定側部材の一方の部材に固定され、他方の部材に相対摺接する弾性材からなるシールリップを備えた回転部材のシール構造であって、
前記シールリップが摺接する面には、40℃での基油動粘度が10〜60mm2/secのグリースが塗布されており、
前記シールリップが摺接する面は、多数のディンプルを備えた凹凸面とされ、且つ前記シールリップによる圧力が作用しても前記グリースの油膜が維持される表面粗さRaが、0.5〜1.5μmであることを特徴とする回転部材のシール構造。
【請求項2】
請求項1において、
前記多数のディンプルが、微小剛体粒子を衝突させることにより形成されたものであることを特徴とする回転部材のシール構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記他方の部材が、金属製スリンガを備えた回転側部材であって、前記シールリップはこの金属製スリンガに相対摺接するものであることを特徴とする回転部材のシール構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−107758(P2012−107758A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−41369(P2012−41369)
【出願日】平成24年2月28日(2012.2.28)
【分割の表示】特願2006−548931(P2006−548931)の分割
【原出願日】平成17年12月16日(2005.12.16)
【出願人】(000225359)内山工業株式会社 (204)
【Fターム(参考)】