説明

回転電機用ロータ

【課題】配置スペース及び保持強度を適切に確保しつつ、回転バランスの低下が抑制された形態で整流素子を配置することが可能な回転電機用ロータを実現する。
【解決手段】ロータコア21は、外周部に形成されて界磁巻線22が巻装される巻線巻装部60と、内周面から径方向外側R2に窪むように形成された凹部50と、を備え、整流素子100が、凹部50内において径方向外側R2から支持されるように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒状のロータコアと、ロータコアに巻装された界磁巻線と、界磁巻線に接続されるとともに当該界磁巻線に流れる電流を一方向に規制する整流素子と、を備えた回転電機用ロータに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような回転電機用ロータの従来技術として、例えば下記の特許文献1に記載された技術がある。以下、この背景技術の説明では、特許文献1の符号又は名称を適宜()内に記載して引用する。特許文献1には、ステータ(12)で形成された高調波成分を含む回転磁界の鎖交により界磁巻線(ロータ巻線18,18n,18s)に誘導起電力を発生させ、当該誘導起電力により発生するトルク(磁石トルクに相当するトルク)を利用してロータ(14)を回転させる構成が記載されている。そして、特許文献1には、上記の誘導起電力を効率的に発生させるべく、界磁巻線を短節巻で巻装すること等が記載されている。
【0003】
ところで、上記のような回転電機用ロータでは、少なくとも1つの整流素子が必要になるが、このような整流素子はある程度の大きさや重量を有する。そのため、整流素子の配置位置によっては、回転電機用ロータの回転バランスが低下し、当該回転電機用ロータを備える回転電機の性能が低下するおそれがある。また、ローアコアには界磁巻線が巻装されるとともに磁束が通過するため、整流素子の配置スペースには制約がある。更に、回転電機用ロータは回転部材であるため、配置した整流素子が飛散しないような保持強度を適切に確保する必要もある。しかしながら、特許文献1には、整流素子(ダイオード21,21n,21s)の配置位置に言及した記載はなく、上記の回転バランス、配置スペース、及び保持強度の確保の観点から好適な整流素子の配置構成は未だ判明していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−112091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、配置スペース及び保持強度を適切に確保しつつ、回転バランスの低下が抑制された形態で整流素子を配置することが可能な回転電機用ロータの実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る円筒状のロータコアと、前記ロータコアに巻装された界磁巻線と、前記界磁巻線に接続されるとともに当該界磁巻線に流れる電流を一方向に規制する整流素子と、を備えた回転電機用ロータの特徴構成は、前記ロータコアは、外周部に形成されて前記界磁巻線が巻装される巻線巻装部と、内周面から径方向外側に窪むように形成された凹部と、を備え、前記整流素子が、前記凹部内において径方向外側から支持されるように配置されている点にある。
【0007】
本願において、「回転電機」は、モータ(電動機)、ジェネレータ(発電機)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータ・ジェネレータのいずれをも含む概念として用いている。
【0008】
上記の特徴構成によれば、整流素子がロータコアの内周部に形成された凹部に配置されるため、整流素子がロータコアの外周部に配置される場合に比べ、整流素子を内径側に位置させて、整流素子を配置することで重量のアンバランスが生じる部位を内径側に位置させることができる。これにより、ロータの回転時に整流素子に発生する遠心力を低く抑えることができ、ロータの回転バランスを適切に確保するのが容易となる。このように、上記の特徴構成によれば、回転バランスの低下を抑制しつつ整流素子を適切に配置することができる。
また、上記の特徴構成によれば、整流素子が凹部内において径方向外側から支持されるように配置される。よって、ロータの回転速度が高く整流素子に発生する遠心力が大きくなった場合でも、整流素子を凹部によって適切に保持することができ、整流素子の保持強度を適切に確保するのが容易となる。
更に、整流素子を配置するための凹部が、巻線巻装部が設けられる外周部とは径方向に離れた内周部に形成されるため、ロータコア内を通過する磁束に与える影響が少ない場所に、整流素子を配置するためのスペースを適切に確保することが可能となっている。
【0009】
ここで、前記ロータコアの内周面に囲まれた挿通孔に挿通されるロータ軸を更に備え、
前記ロータ軸の外周面は、前記ロータコアの内周面に接して前記凹部の径方向内側の開口部を閉塞し、前記凹部は、前記ロータコアの軸方向の少なくとも一方の端部に開口する端部開口まで前記軸方向に延びるように形成され、前記整流素子と前記界磁巻線とを接続する接続導体が、前記凹部内を前記端部開口まで延びるように配置されていると好適である。
【0010】
この構成によれば、凹部に整流素子を配置した後にロータ軸をロータコアの挿通孔に挿通することで、径方向内側の開口部が閉塞された凹部に整流素子が配置された構成を実現することができるため、ロータの製造工程の簡素化を図ることができる。
また、整流素子を配置するための凹部を有効に利用して、整流素子と界磁巻線とを接続する接続導体を配置することができるため、ロータコアの構成を簡素なものとして製造工程の簡素化を図ることができる。
【0011】
また、前記巻線巻装部は、前記ロータコアの外周部において径方向外側に向かって突出するとともに前記界磁巻線が巻かれる径方向突出部を複数備え、複数の前記径方向突出部は、前記ロータコアの周方向に沿って均等な間隔で配置され、前記凹部は、少なくとも前記整流素子の配置位置における径方向外側面が、前記ロータコアの径方向に直交する平面とされ、前記径方向視で、前記径方向外側面の前記周方向の端部が、前記径方向突出部の径方向内側端の前記周方向の幅内に位置するように設定されていると好適である。
【0012】
この構成によれば、周方向の位置に関して、整流素子の配置位置における凹部の径方向最外側部位(径方向外側面の周方向の端部)が、ロータコアにおける径方向幅が他の部位に比べて大きく形成された径方向突出部と重複する部分に位置するため、磁路幅を適切に確保しつつ凹部を設けることが容易となる。
【0013】
また、偶数個の前記凹部が、前記ロータコアの周方向に沿って均等な間隔で配置され、
前記凹部のそれぞれに、互いに同じ個数の前記整流素子が配置されていると好適である。
【0014】
この構成によれば、偶数個の凹部が設けられる場合に、各凹部に対して軸心を挟んで径方向に対向する位置に他の凹部が位置する構成とすることができ、ロータの周方向の重量バランスを良好にして、ロータの回転バランスを適切に確保することができる。
【0015】
また、前記凹部は、少なくとも前記ロータコアの軸方向中央部に形成され、前記整流素子は、前記ロータコアの軸方向中央部に配置されていると好適である。
【0016】
この構成によれば、ロータの軸方向の重量バランスを良好にすることができるため、ロータの回転バランスを適切に確保するのが容易となる。
【0017】
また、前記凹部における前記ロータコアの軸方向に直交する断面の形状が、前記ロータコアの軸方向全域にわたって同じ形状とされていると好適である。
【0018】
この構成によれば、ロータコアの製造工程を簡素化することができ、製造コストを抑制することができる。例えば、ロータコアが複数の鋼板を積層してなる積層構造体である場合には、各鋼板を同一形状のものとすることができ、管理手段を共通化して製造コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係る回転電機の軸方向に沿う断面形状を示す模式図である。
【図2】本発明の実施形態に係る回転電機の軸方向に直交する断面形状を示す模式図である。
【図3】本発明の実施形態に係る界磁巻線の結線構成を示す模式図である。
【図4】本発明の実施形態に係るロータの一部の軸方向に直交する断面形状を示す模式図である。
【図5】本発明のその他の実施形態に係るロータの一部の軸方向に直交する断面形状を示す模式図である。
【図6】本発明のその他の実施形態に係るロータの軸方向に直交する断面形状を示す模式図である。
【図7】本発明のその他の実施形態に係るロータの軸方向に沿う断面形状を示す模式図である。
【図8】本発明のその他の実施形態に係るロータの軸方向に沿う断面形状を示す模式図である
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る回転電機用ロータの実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態に係る回転電機用ロータ2(以下、単に「ロータ」という。)は、ラジアルタイプの回転電機1に用いられるロータとされ、図1に示すように、ロータ2はステータ3の径方向内側R1に配置されている。そして、ロータ2に界磁巻線(ロータコイル)22が備えられているとともにステータ3に回転磁界を発生させるための電機子巻線(ステータコイル)32が備えられている。この回転電機1は、界磁巻線22に鎖交する電機子巻線32からの回転磁界の高調波成分によって界磁巻線22に発生する誘導起電力を利用し、当該誘導起電力により界磁巻線22に流れる電流を一方向に整流することで界磁巻線22に磁極を発生させる。そして、界磁巻線22に発生した磁極と回転磁界との吸引反発を利用してロータ2を回転させる。すなわち、この回転電機1は、誘導起電力によって界磁巻線22を電磁石として機能させる誘導式の同期機(同期回転電機)である。
【0021】
以下の説明では、特に断らない限り、「軸方向L」、「周方向C」、「径方向R」は、ロータコア21の軸心(ロータ軸41の軸心)を基準として定義している(図1、図2参照)。そして、「径方向内側R1」はロータコア21の軸心を基準とした径方向Rにおける内側を表し、「径方向外側R2」はロータコア21の軸心を基準とした径方向Rにおける外側を表す。なお、各部材についての方向は、当該各部材が回転電機1として組み付けられた状態での方向を表す。ここで、各部材についての方向や、2つの部材間の配置方向の関係(例えば、「平行」や「直交」等)は、製造上の誤差に応じたずれを含む概念として用いている。このような製造上の誤差は、例えば、寸法や取り付け位置の公差の範囲内のずれにより生じる。
【0022】
図1に示すように、ロータ2は、界磁巻線22に流れる電流を一方向に規制するための整流素子として、ダイオード100を備えている。そして、このダイオード100は、ロータコア21の内周部(内周面を含む部分、以下同じ。)に設けられた凹部50に配置される。これにより、ロータ2の回転バランスの低下を抑制しつつダイオード100を配置することや、ダイオード100の保持強度を適切に確保すること、更には、ロータコア21内を通過する磁束に与える影響が少ない位置にダイオード100を配置することが可能となっている。以下、本実施形態に係るロータ2の構成について詳細に説明する。なお、以下の説明で参照する各図面は、本願発明の理解に必要な構成を模式的に示したものであり、一部の構成を適宜省略し、或いは一部の構成を適宜簡略化して示している。
【0023】
1.回転電機の全体構成
図1に示すように、本実施形態に係る回転電機1は、ロータ2及びステータ3を備えており、回転電機1はケース4の内部に収容されている。この回転電機1は、ステータ3に供給される電力によりロータ2の動力(回転駆動力)を得るモータ(電動機)として機能するとともに、ロータ2の動力によりステータ3に電力を発生させるジェネレータ(発電機)としても機能するように構成されている。このような回転電機1は、例えば、電気自動車やハイブリッド自動車等に車輪の駆動力源として備えられる。
【0024】
ステータ3は、ケース4の内面に固定されている。本例では、ステータ3は、締結ボルト94によりケース4の内面に締結固定されている。ステータ3は、ステータコア31と当該ステータコア31に巻装された電機子巻線32とを備え、回転電機1の電機子を構成する。ステータコア31は、図2に示すように、外周部(外周面を含む部分、以下同じ。)に設けられた取付用突出部33を除いて全体として円筒状に形成されており、本例では、ステータコア31は複数枚の電磁鋼板を軸方向Lに積層して構成されている。本実施形態では、ステータコア31には3つの取付用突出部33が形成されている。そして、これら3つの取付用突出部33は、ステータコア31の外周部に周方向Cに沿って均等に配置されており、各取付用突出部33には締結ボルト94の挿通孔33aが形成されている。
【0025】
ステータコア31は、内周面側に周方向Cに一定間隔で複数のティース31aが形成されており、周方向Cに隣接するティース31aの間にスロット31bが形成されている。そして、電機子巻線32が、スロット31b内に収まるように、各ティース31aの周囲に巻装されている。
【0026】
ステータ3の径方向内側R1には、ロータ2が、ステータ3に対して相対回転可能に配置されている。ロータ2は、ロータコア21と、当該ロータコア21に巻装された界磁巻線22とを備え、回転電機1の界磁を構成する。ロータコア21は、全体として円筒状に形成されており、本例では、ロータコア21は複数枚の電磁鋼板を軸方向Lに積層して構成されている。なお、ロータ2の構成については、後の「2.ロータの構成」の項で詳しく説明する。
【0027】
本実施形態では、回転電機1は、三相交流(U相、V相、及びW相)で駆動されるモータとして機能する。そのため、電機子巻線32は、U相、V相、及びW相の各相に対応して備えられている。そして、電機子巻線32に三相の交流電流を供給することで、ステータ3(電機子巻線32)は、ロータ2を回転させるための回転磁界を発生させる。また、回転電機1は、回転電機1の外部から伝達される動力によりロータ2を回転させて、ステータ3(電機子巻線32)に交流電力を発生させることも可能となっている。
【0028】
詳細は後述するが、この回転電機1は、ロータ2を回転させるためのトルクの少なくとも一部を、ロータコア21に巻装された界磁巻線22に発生する誘導起電力を利用して得る構成となっている。そして、この誘導起電力として、回転磁界に含まれる高調波成分が界磁巻線22に鎖交することで生じる起電力を用いる。そこで、本実施形態では、回転磁界に適度な量の高調波成分が含まれるように、電機子巻線32は、ステータコア31に対して集中巻で巻装されている。
【0029】
具体的には、電機子巻線32は、各相(U相、V相、及びW相)の巻線同士が互いに周方向Cに重ならないように、各ティース31aに対して各相の巻線が集中的に巻回された短節集中巻とされている。従って、ステータ3には、U相用の電機子巻線32が巻回されたティース31aと、V相用の電機子巻線32が巻回されたティース31aと、W相用の電機子巻線32が巻回されたティース31aとが、基本的に、周方向Cに沿って順番に現れるように配置されている。この際、各スロット31bには、互いに異なる相の巻線が周方向Cに隣接して配置されている。なお、本実施形態では、図2に示すように、ステータコア31には12個のティース31aが形成されており、またステータ3に供給される交流電流の相数は「3」であるため、ステータ3の極対数は「4」となっている。
【0030】
2.ロータの構成
次に、ロータ2の構成について詳細に説明する。上記のように、ロータ2は、ロータコア21と界磁巻線22とを備えている。また、ロータ2は、ロータコア21に固定されて当該ロータコア21と一体回転するロータ軸41と、界磁巻線22に接続されるとともに当該界磁巻線22に流れる電流を一方向に規制するダイオード100とを備えている。
【0031】
図2及び図3に示すように、ロータコア21にはロータ軸41を挿通するための挿通孔23が形成されている。挿通孔23は、ロータコア21の内周面に囲まれた空間として形成されている。そして、ロータ軸41は、挿通孔23に挿通された状態でロータコア21に固定されている。この状態で、ロータ軸41の外周面が、ロータコア21の内周面に接して、後述する凹部50の径方向内側R1の開口部50aを閉塞する。なお、ロータ軸41は、例えば、圧入や焼き嵌め、或いはキー結合等により、ロータコア21と一体回転するようにロータコア21に固定される。
【0032】
図1に示すように、ロータ軸41は、軸方向Lの一方側(図1における右側、以下同様。)で第一支持軸受81によってケース4に対して回転可能に支持されているとともに、軸方向Lの他方側(図1における左側、以下同様。)で第二支持軸受82によってケース4に対して回転可能に支持されている。すなわち、ロータ2は、軸方向Lの両側で支持軸受81,82によってケース4に対して回転可能に支持されている。
【0033】
ロータコア21の軸方向Lの両側には、ロータコア21を挟持するためのエンドプレート93が備えられている。そして、本実施形態では、軸方向Lの一方側のエンドプレート93が、ロータ軸41に形成されたフランジ部により、ロータ軸41に対して軸方向Lに位置決め保持されている。また、軸方向Lの他方側のエンドプレート93が、止めねじ91によりロータ軸41に対して軸方向Lに位置決め保持されている。これにより、ロータコア21は、軸方向Lの両側からエンドプレート93により挟持された状態で、ロータ軸41に対して固定される。なお、本例では、軸方向Lの他方側のエンドプレート93と止めねじ91との間に、ワッシャ92が介装されている。
【0034】
ロータコア21は、図2及び図3に示すように、巻線巻装部60と凹部50とを備えている。巻線巻装部60は、ロータコア21の外周部に形成されて、界磁巻線22が巻装される部分である。また、凹部50は、ロータコア21の内周面から径方向外側R2に窪むように形成されて、ダイオード100が配置される部分である。なお、ダイオード100の配置構成については、後の「3.ダイオードの配置構成」の項で詳しく説明する。
【0035】
本実施形態では、図3に示すように、巻線巻装部60は、ロータコア21の外周部において径方向外側R2に向かって突出する径方向突出部61を備えて構成されている。この径方向突出部61は、当該径方向突出部61の径方向外側R2の端面と、ステータコア31に形成されたティース31aの径方向内側R1の端面(内周対向面)との間に微小な径方向Rの間隔が形成されるように設けられている。すなわち、本実施形態では、径方向突出部61の径方向外側R2の端面が、ステータコア31に対向する外周対向面とされている。
【0036】
巻線巻装部60は、径方向突出部61を複数備えている。複数の径方向突出部61は、周方向Cに沿って均等な間隔で配置されている。そして、周方向Cに隣接する径方向突出部61の間にスロット部62が形成される。本実施形態では、巻線巻装部60は、8個の径方向突出部61と8個のスロット部62とを備えている。
【0037】
このような径方向突出部61(突極)をロータコア21に形成することで、ステータ3からの磁束がロータコア21を通過する際の磁気抵抗が、周方向C位置によって変化することになる。具体的には、周方向Cにおける径方向突出部61の配設位置では磁気抵抗が低くなり、周方向Cにおけるスロット部62の配設位置では磁気抵抗が高くなる。これにより、電機子巻線32に三相の交流電流を供給してステータ3から回転磁界を発生させると、ロータコア21を通過する磁束の磁気抵抗が小さくなるように径方向突出部61が回転磁界に吸引され、ロータ2がステータ3により形成された回転磁界(正確には、回転磁界に含まれる基本波成分)に同期して回転する。すなわち、ロータ2にリラクタンストルクが発生して、ロータ2が回転駆動される。
【0038】
さらに、このロータ2には、以下に述べるように、上記のリラクタンストルクに加えて磁石トルクに相当するトルクも作用するように構成されている。図2及び図3に示すように、複数の径方向突出部61のそれぞれには、界磁巻線22が巻かれている。この界磁巻線22は、電機子巻線32に三相の交流電流を供給してステータ3から回転磁界を発生させた際に、ロータ2に磁石トルクに相当するトルクが作用するように、巻線巻装部60に巻装されている。
【0039】
本実施形態では、界磁巻線22は、ステータ3から発生する回転磁界に含まれる高調波成分が鎖交した際に、周方向Cに隣接する径方向突出部61同士が互いに異なる方向に磁化されるように構成されている。具体的には、界磁巻線22は、径方向突出部61に対して短節集中巻で巻回されている。本実施形態では、径方向突出部61の周方向Cの幅が、ロータ2の電気角で180度に相当する幅よりも小さく設定(例えば、90度に相当する角度に設定)されている。界磁巻線22は、周方向Cに隣接する一対のスロット部62の間に複数回巻回されている。すなわち、各磁極を生成する界磁巻線22のそれぞれが、互いに周方向Cに重ならないように1つの径方向突出部61の周りに集中的に巻回されている。そして、図3に示すように、各スロット部62には、互いに異なる方向に径方向突出部61を磁化させるための巻線が周方向Cに隣接して配置されている。また、本実施形態では、界磁巻線22は、本例では重ね巻により巻回されている。
【0040】
そして、図3に示すように、互いに同じ方向に磁化される径方向突出部61に巻回された界磁巻線22同士が直列に接続されて、2つの界磁巻線部(第一界磁巻線部22a及び第二界磁巻線部22b)が形成されている。第一界磁巻線部22a及び第二界磁巻線部22bは、互いに電気的に絶縁されているとともに、それぞれが短絡回路を構成している。そして、第一界磁巻線部22a及び第二界磁巻線部22bのそれぞれは、各界磁巻線部に流れる電流を一方向に整流するためのダイオード100を備えている。すなわち、本実施形態では、ロータ2は、2つのダイオード100を備えている。各ダイオード100は、第一界磁巻線部22a或いは第二界磁巻線部22bが形成する短絡回路に、直列に接続されている。
【0041】
本実施形態では、図3に模式的に示すように、各径方向突出部61に対する界磁巻線22の巻回方向は互いに同一とされている。そして、電流の流れる方向を周方向Cで見た場合に、第一界磁巻線部22aに接続されているダイオード100と、第二界磁巻線部22bに接続されているダイオード100とは、互いに逆向きの電流の流れを許容するように配置されている。これにより、第一界磁巻線部22aが巻回される径方向突出部61と、第二界磁巻線部22bが巻回される径方向突出部61とは、ステータ3から発生する回転磁界に含まれる高調波成分が鎖交した際に、互いに異なる方向に磁化される。具体的には、第一界磁巻線部22aが巻回される径方向突出部61の径方向外側R2にS極が形成され、第二界磁巻線部22bが巻回される径方向突出部61の径方向外側R2にN極が形成される。すなわち、N極とS極とが周方向Cに交互に並ぶように、各径方向突出部61が磁化される。
【0042】
これにより、電機子巻線32に三相の交流電流を供給してステータ3から高調波成分を含む回転磁界を発生させると、各径方向突出部61がロータ2に固定された磁石として機能して回転磁界との間で吸引力及び反発力が生じ、ロータ2がステータ3により形成された回転磁界(基本波成分)に同期して回転する。すなわち、ロータ2に磁石トルクに相当するトルクが発生して、ロータ2が回転駆動される。このように、本実施形態に係る回転電機1は、磁石トルクに相当するトルク及びリラクタンストルクの双方を利用して、ロータ2を回転駆動することが可能となっている。
【0043】
なお、本実施形態では、図2に示すように、径方向突出部61の径方向外側R2の端部には、周方向Cのスロット部62側に突出する突出部が形成されており、この突出部に保持されるように非磁性体からなる板状部材24が配置されている。これにより、遠心力が発生するロータ2の回転時においても、界磁巻線22が径方向外側R2に外れないように適切に保持することが可能となっている。また、本実施形態では、図3に示すように、8個の径方向突出部61が設けられており、ロータ2の極対数は「4」となる。すなわち、本実施形態では、ロータ2の極対数は、ステータ3の極対数と等しくなっている。
【0044】
3.ダイオードの配置構成
次に、本発明の要部であるダイオード100の配置構成について説明する。上記のように、ロータコア21には凹部50が形成されており、ダイオード100はこの凹部50に配置されている。本実施形態では、ダイオード100が本発明における「整流素子」に相当する。
【0045】
凹部50は、図3に示すように、ロータコア21の内周面から径方向外側R2に窪むように形成されている。本実施形態では、凹部50は軸方向Lに延びる直線状の溝状凹部とされ、軸方向Lに直交する断面形状は矩形状とされている。そして、本実施形態では、凹部50の径方向外側面52は、径方向Rに直交する平面とされている。なお、本実施形態では、図1に示すように、凹部50の径方向内側R1の開口部50aは、軸方向Lの全域でロータ軸41の外周面により閉塞されている。
【0046】
図1に示すように、凹部50は、軸方向Lの両側に端部開口51を備えている。端部開口51は、ロータコア21の軸方向L端面に開口する凹部50の開口部である。そして、凹部50は、軸方向L両側の端部開口51のそれぞれまで軸方向Lに延びるように形成されている。すなわち、本実施形態では、凹部50は、ロータコア21における軸方向Lの中央部を含む、ロータコア21における軸方向Lの全域に形成されている。そして、ダイオード100と界磁巻線22とを接続する接続導体101が、凹部50内をダイオード100から軸方向Lの一方側の端部開口51まで延びるように配置されている。本実施形態では、ダイオード100に対する電流の流入側と流出側との双方の接続導体101が、軸方向Lの同じ側の端部開口51まで延びるように配置されている。なお、接続導体101として、例えば、絶縁皮膜により被覆された導体線を用いることができる。
【0047】
また、本実施形態では、凹部50は、軸方向Lに直交する断面の形状が軸方向L全域にわたって同じ形状とされているとともに、当該断面の周方向Cの位置も同じとなっている。そして、軸方向Lの全域で、凹部50の径方向外側面52が径方向Rに直交する平面となっている。すなわち、本実施形態では、凹部50におけるダイオード100の配置位置に加えて接続導体101の配置位置においても、径方向外側面52が径方向Rに直交する平面とされている。
【0048】
ダイオード100は、図2に示すように、凹部50内において径方向外側R2から支持されるように配置されている。本実施形態では、ダイオード100は、凹部50の径方向外側面52に固定されることで、径方向外側面52によって径方向外側R2から支持される。ダイオード100は、例えば接着剤や接着シート等を用いて径方向外側面52に対して固定することができる。なお、ダイオード100を、径方向外側面52に固定せずに、ダイオード100を径方向外側面52に当接させた状態で、凹部50の径方向外側面52以外の面(例えば、周方向Cの両側の面)に対してダイオード100が固定された構成とすることもできる。
【0049】
本実施形態では、上記のように、ロータ2は2つのダイオード100を備えている。これに合わせて、本実施形態では、ロータコア21には2つの凹部50が形成されている。すなわち、本実施形態では、偶数個の凹部50が形成されている。そして、これら偶数個の凹部50は、図3に示すように、周方向Cに沿って均等な間隔で配置されている。言い換えれば、各凹部50に対して軸心を挟んで径方向Rに対向する位置に他の凹部50が位置する構成となっている。これにより、ロータ2の周方向Cの重量バランスを良好にして、ロータ2の回転バランスを適切に確保することが可能となっている。
【0050】
また、本実施形態では、図1に示すように、凹部50のそれぞれには、互いに同じ個数(本例では1個)のダイオード100が配置されている。そして、ダイオード100は、ロータコア21における軸方向Lの中央部に配置されている。これにより、ロータ2の軸方向Lの重量バランスを良好にすることができ、ロータ2の回転バランスを適切に確保するのが容易となっている。
【0051】
さらに、本実施形態では、図4に示すように、径方向R視で、径方向外側面52の周方向Cの端部52aが、径方向突出部61の径方向内側端61aの周方向Cの幅W内に位置するように設定されている。なお、ここでいう「周方向の幅」は、厳密には「軸方向視で径方向に直交する方向の幅」を意味する。これにより、凹部50における最も径方向外側R2に位置する部分である端部52aの周方向Cの位置を、ロータコア21における径方向Rの幅の大きい部分に位置させることができ、その結果、ロータコア21内の磁路幅を適切に確保しつつ凹部50を設けることが可能となっている。
【0052】
本実施形態では、ダイオード100として、その周方向Cの幅が径方向突出部61の径方向内側端61aの周方向Cの幅よりも大きなものが用いられている。このようなダイオード100の形状に合わせて、凹部50の径方向外側面52の周方向Cの幅が、径方向内側端61aの周方向Cの幅よりも大きく形成されている。そこで、本実施形態では、径方向外側面52の周方向Cにおける中央位置を、周方向Cに隣接する2つの径方向突出部61から周方向Cに均等に離れた位置に設定している。これにより、上記のような構成、すなわち、径方向R視で、径方向外側面52の周方向Cの端部52aが、径方向突出部61の径方向内側端61aの周方向Cの幅W内に位置する構成を実現している。
【0053】
4.その他の実施形態
最後に、本発明に係るその他の実施形態を説明する。なお、以下の各々の実施形態で開示される特徴は、その実施形態でのみ利用できるものではなく、矛盾が生じない限り、別の実施形態にも適用可能である。
【0054】
(1)上記の実施形態では、ダイオード100として、その周方向Cの幅が径方向突出部61の径方向内側端61aの周方向Cの幅よりも大きなものが用いられている構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、ダイオード100として、その周方向Cの幅が径方向突出部61の径方向内側端61aの周方向Cの幅よりも小さなものを用いることも可能である。この場合、図5に示すように、凹部50の径方向外側面52の周方向Cの幅を、径方向突出部61の径方向内側端61aの周方向Cの幅Wよりも小さく形成することができる。この場合には、径方向外側面52の周方向Cにおける中央位置を、径方向R視で、径方向突出部61の周方向Cにおける中央位置と重なる位置に設定すると好適である。このように設定することで、上記実施形態と同様、径方向R視で、径方向外側面52の周方向Cの端部52aを、径方向突出部61の径方向内側端61aの周方向Cの幅W内に位置させることができる。
【0055】
(2)上記の実施形態では、ロータ2が、2つのダイオード100を備えた構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、ロータ2に備えられるダイオード100の個数は、偶数であるか奇数であるかや、単数であるか複数であるかを問わず、適宜変更可能である。例えば、上記実施形態とは異なり、互いに同じ方向に磁化される径方向突出部61に巻回された界磁巻線22同士を接続せずに、各径方向突出部61のそれぞれに専用のダイオード100を設けて径方向突出部61毎に短絡回路が形成された構成とすることができる。この場合、上記実施形態のように8個の径方向突出部61が形成された構成では、8個のダイオード100が必要となり、例えば図6及び図7に示すように、4個の凹部50を周方向Cに沿って均等な間隔で設けるとともに、各凹部50に2個のダイオード100が配置された構成とすることができる。
【0056】
図7に示す例では、1つの凹部50に配置されるダイオード100が偶数個(2つ)であるため、ロータ2の軸方向Lの重量バランスを考慮して、2つのダイオード100を、ロータコア21における軸方向Lの中央部に対して軸方向Lの両側に分散させて配置している。このように偶数個のダイオード100が1つの凹部50に配置される場合には、ロータコア21における軸方向Lの中央部に対して軸方向Lの両側に、互いに同数のダイオード100が配置された構成とすると好適である。また、3以上の奇数個のダイオード100が1つの凹部50に配置される場合には、ロータコア21における軸方向Lの中央部に1つのダイオード100を配置するとともに、当該中央部に対して軸方向Lの両側に互いに同数のダイオード100が配置された構成とすると好適である。
【0057】
また、図7に示す例では、1つの凹部50に配置される複数のダイオード100について、それぞれの接続導体101が互いに軸方向Lの同じ側の端部開口51まで延びるように配置された構成を例示しているが、一部のダイオード100の接続導体101について、残りのダイオード100の接続導体101とは反対側の端部開口51まで延びるように配置された構成とすることもできる。
【0058】
(3)上記の実施形態では、凹部50における軸方向Lに直交する断面の形状が、矩形状とされた構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、凹部50の断面形状は、ダイオード100の形状等に応じて適宜変更可能である。例えば凹部50の断面形状を、U字状やV字状等とすることができる。すなわち、凹部50の径方向外側面52が平面ではなく曲面(例えば円弧面等)により形成された構成とすることもできる。
【0059】
(4)上記の実施形態では、凹部50における軸方向Lに直交する断面の形状が、軸方向L全域にわたって同じ形状とされた構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、凹部50における軸方向Lに直交する断面の形状が、軸方向Lに一様ではなく、軸方向L位置によって断面の形状が異なる構成とすることもできる。このような構成において、少なくともダイオード100の配置位置における径方向外側面52を、径方向Rに直交する平面とすると好適である。
【0060】
図8に、凹部50における軸方向Lに直交する断面の形状が一様ではない例を示す。この例では、ダイオード100の配置位置における凹部50の断面形状と、接続導体101の配置位置における凹部50の断面形状とが異なるように、凹部50が形成されている。具体的には、接続導体101の配置位置における凹部50の深さ(径方向Rの幅)が、ダイオード100の配置位置における凹部50の深さよりも小さくなるように構成されている。なお、図示は省略するが、接続導体101の配置位置における凹部50の幅(周方向Cの幅)を、ダイオード100の配置位置における凹部50の幅よりも小さく形成することも可能である。このように、凹部50の深さ(径方向Rの幅)及び幅(周方向Cの幅)の一方或いは双方を、軸方向L位置によって異ならせる構成とすることができる。
【0061】
また、凹部50における軸方向Lに直交する断面の形状を軸方向L位置によって変化させる構成において、形状の特徴(例えば、矩形状、U字状、或いはV字状のいずれであるか等)を維持しつつ互いに異なる大きさの断面形状(例えば相似の関係にある形状)とすることができ、また、形状の特徴が互いに異なる断面形状とすることもできる。
【0062】
(5)上記の実施形態では、凹部50が、軸方向Lの両側に端部開口51を備えた構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば図8に示すように、凹部50が、軸方向Lの一方側にのみ端部開口51を備えた構成とすることもできる。また、接続導体101を凹部50以外の場所に配置することが可能な構成では、凹部50が端部開口51を備えず、凹部50が軸方向Lの両側で閉塞された構成とすることもできる。これらの場合において、上記実施形態とは異なり、凹部50が、ロータコア21における軸方向Lの中央部分には形成されておらず、当該中央部分から軸方向Lにずれた位置にのみ形成された構成とすることも可能である。
【0063】
(6)上記の実施形態では、ロータコア21に偶数個の凹部50が備えられた構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、ロータコア21に奇数個の凹部50が備えられた構成とすることもできる。この場合においても、複数の凹部50を周方向Cに沿って均等な間隔で配置すると好適である。なお、当然ながら、複数(偶数であるか奇数であるかを問わない。)の凹部50がロータコア21に備えられる構成において、複数の凹部50を周方向Cに沿って不均一な間隔で配置することも可能である。また、ロータコア21に、1つの凹部50のみが形成された構成とすることも可能である。
【0064】
(7)上記の実施形態では、同一のダイオード100に対する電流の流入側と流出側との双方の接続導体101が、軸方向Lの同じ側の端部開口51まで延びるように配置されている構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、上記実施形態のように軸方向Lの両側に端部開口51が形成されている場合には、同一のダイオード100に対する電流の流入側と流出側との双方の接続導体101が、それぞれ互いに反対側の端部開口51まで延びるように配置された構成とすることもできる。
【0065】
(8)上記の実施形態では、凹部50のそれぞれに、互いに同じ個数(上記実施形態では1つ)のダイオード100が配置された構成を例として説明したが、凹部50のそれぞれに配置されるダイオード100の個数を互いに異ならせることも可能である。
【0066】
(9)上記の実施形態では、径方向R視で、径方向外側面52の周方向Cの端部52aが、径方向突出部61の径方向内側端61aの周方向Cの幅W内に位置するように設定された構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、ダイオード100の大きさやロータコア21の径方向Rの幅等によっては、径方向R視で、径方向外側面52の周方向Cの端部52aが、ロータコア21の外周部における径方向突出部61の形成されていない部分(スロット部62)の径方向内側端の周方向Cの幅内に位置するように設定された構成とすることも可能である。
【0067】
(10)上記の実施形態では、界磁巻線22が、径方向突出部61に対して短節巻で巻回されている構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、界磁巻線22が径方向突出部61に対して全節巻で巻回されるように、径方向突出部61の周方向Cの幅が、ロータ2の電気角で約180度に相当する幅に設定された構成とすることもできる。また、上記の実施形態では、界磁巻線22が、周方向Cに隣接する一対のスロット部62の間に複数回巻回されている構成を例として説明したが、間に他のスロット部62を挟んで周方向Cに並ぶ一対のスロット部62の間に、界磁巻線22が複数回巻回された構成とすることもできる。例えば、間に2つのスロット部62を挟んで周方向Cに並ぶ一対のスロット部62の間に、界磁巻線22が複数回巻回された構成とすることができる。
【0068】
(11)上記の実施形態では、界磁巻線22が、各径方向突出部61に対して集中巻で巻回されている構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、ロータコア21に対する界磁巻線22の巻装方法は適宜変更可能である。例えば、界磁巻線22が、分布巻で巻装された構成とすることができる。また、上記の実施形態では、界磁巻線22が重ね巻により巻装された構成を例として説明したが、波巻により巻装された構成とすることもできる。
【0069】
(12)上記の実施形態では、ロータ2が永久磁石やフラックスバリアを備えない構成を例として説明したが、ロータコア21に永久磁石が備えられた構成や、ロータコア21の内部にフラックスバリア(例えば空隙等)が形成された構成とすることもできる。
【0070】
(13)上記の実施形態では、凹部50の径方向内側R1の開口部50aが、軸方向Lの全域で、ロータ軸41の外周面により閉塞された構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、開口部50aの少なくとも一部が閉塞されずに開放されている構成や、開口部50aの少なくとも一部がロータ軸41とは別の部材により閉塞された構成とすることもできる。
【0071】
(14)上記の実施形態では、ロータコア21及びステータコア31の双方が、複数枚の電磁鋼板の積層体である構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、ロータコア21及びステータコア31の少なくとも一方が、磁性材料の粉体である磁性粉体を加圧成形してなる圧粉材を主な構成要素として形成された構成とすることもできる。
【0072】
(15)上記の実施形態では、ロータ2がステータ3の径方向内側R1に配置される構成、すなわち、回転電機1がラジアルタイプの回転電機とされた構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、本発明に係る回転電機子用ロータを、アキシャルタイプの回転電機用のロータに適用することも可能である。この場合、ロータがステータに対して軸方向Lに並べて配置される構成となる。
【0073】
(16)上記の実施形態では、整流素子としてダイオード100を用いた構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、電流を一方向に規制することができるあらゆる素子(モジュールを含む)を用いて、本発明に係る整流素子を構成することも可能である。
【0074】
(17)上記の実施形態では、回転電機1が三相交流で駆動される構成を例として説明したが、回転電機1が三相以外の相数(例えば「1」、「2」、「4」等)の交流により駆動される構成とすることもできる。
【0075】
(18)その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、本願の特許請求の範囲に記載された構成及びこれと均等な構成を備えている限り、特許請求の範囲に記載されていない構成の一部を適宜改変した構成も、当然に本発明の技術的範囲に属する。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、円筒状のロータコアと、ロータコアに巻装された界磁巻線と、界磁巻線に接続されるとともに当該界磁巻線に流れる電流を一方向に規制する整流素子と、を備えた回転電機用ロータに好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0077】
2:ロータ(回転電機用ロータ)
21:ロータコア
22:界磁巻線
23:挿通孔
41:ロータ軸
50:凹部
50a:開口部
51:端部開口
52:径方向外側面
52a:周方向の端部
60:巻線巻装部
61:径方向突出部
61a:径方向内側端
100:ダイオード(整流素子)
101:接続導体
C:周方向
L:軸方向
R:径方向
R1:径方向内側
R2:径方向外側
W:周方向の幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のロータコアと、前記ロータコアに巻装された界磁巻線と、前記界磁巻線に接続されるとともに当該界磁巻線に流れる電流を一方向に規制する整流素子と、を備えた回転電機用ロータであって、
前記ロータコアは、外周部に形成されて前記界磁巻線が巻装される巻線巻装部と、内周面から径方向外側に窪むように形成された凹部と、を備え、
前記整流素子が、前記凹部内において径方向外側から支持されるように配置されている回転電機用ロータ。
【請求項2】
前記ロータコアの内周面に囲まれた挿通孔に挿通されるロータ軸を更に備え、
前記ロータ軸の外周面は、前記ロータコアの内周面に接して前記凹部の径方向内側の開口部を閉塞し、
前記凹部は、前記ロータコアの軸方向の少なくとも一方の端部に開口する端部開口まで前記軸方向に延びるように形成され、
前記整流素子と前記界磁巻線とを接続する接続導体が、前記凹部内を前記端部開口まで延びるように配置されている請求項1に記載の回転電機用ロータ。
【請求項3】
前記巻線巻装部は、前記ロータコアの外周部において径方向外側に向かって突出するとともに前記界磁巻線が巻かれる径方向突出部を複数備え、
複数の前記径方向突出部は、前記ロータコアの周方向に沿って均等な間隔で配置され、
前記凹部は、少なくとも前記整流素子の配置位置における径方向外側面が、前記ロータコアの径方向に直交する平面とされ、
前記径方向視で、前記径方向外側面の前記周方向の端部が、前記径方向突出部の径方向内側端の前記周方向の幅内に位置するように設定されている請求項1又は2に記載の回転電機用ロータ。
【請求項4】
偶数個の前記凹部が、前記ロータコアの周方向に沿って均等な間隔で配置され、
前記凹部のそれぞれに、互いに同じ個数の前記整流素子が配置されている請求項1から3のいずれか一項に記載の回転電機用ロータ。
【請求項5】
前記凹部は、少なくとも前記ロータコアの軸方向中央部に形成され、
前記整流素子は、前記ロータコアの軸方向中央部に配置されている請求項1から4のいずれか一項に記載の回転電機用ロータ。
【請求項6】
前記凹部における前記ロータコアの軸方向に直交する断面の形状が、前記ロータコアの軸方向全域にわたって同じ形状とされている請求項1から5のいずれか一項に記載の回転電機用ロータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−175835(P2012−175835A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36275(P2011−36275)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】