説明

回転駆動装置及び電子ビーム照射装置

【課題】電磁誘導を介したトランス機構により、固定側から回転側に非接触で電力を供給することで、耐久性を向上する。
【解決手段】ターンテーブル内に設けられ回転軸とともに回転するクランプ電極に対し、筐体側からクランプ電圧をロータリトランスを介して供給し、クランプ電極の静電力によってターンテーブルに載置された基板を把持する。このように、電磁誘導を介したトランス機構により給電することで、非接触で電力を供給することができ、摩耗を招くことがなく耐久性を向上することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に電子ビームを照射してディスク原盤を製造する際等に用いる回転駆動装置及びこれを備えた電子ビーム照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大容量の画像・音声データ、デジタルデータを記録可能な種々の記録媒体の開発がなされている。例えば、CD(Compact Disk)やDVD(Digital Versatile Disk)等の高密度ディスクは、ディスク原盤製造装置により基板にレーザビームを照射することにより製造されているが、今後、記録の高密度化が進むにつれ、電子ビームの照射へ移行すると考えられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、電子ビームを射出する電子ビーム射出手段(電子ビーム射出部)と、この電子ビーム射出部からの電子ビームが照射される基板を回転駆動させる回転駆動手段(回転駆動部)と、この回転駆動部を電子ビーム射出部に対し相対移動させる移動手段(並進駆動部)とを有するディスク原盤製造装置が開示されている。上記回転駆動手段は、回転軸(スピンドルシャフト)を回転可能に支持する筐体(スピンドルハウジング)と、回転軸とともに回転し、基盤を載置する絶縁性のターンテーブルと、このターンテーブル内に設けたクランプ電極(チャッキング電極)と、回転軸の回転に伴うクランプ電極と筐体との相対回転を許容しつつ当該クランプ電極にクランプ電圧を給電するためのロータリコネクタと、回転軸を回転駆動するモータとを有している。
【0004】
【特許文献1】特開2003−36569号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術では、ロータリコネクタを有する回転駆動手段を用いている。このロータリコネクタには、転がり軸受けが用いられており、その回転部及び固定部の接続部(接点)には水銀が用いられている。このような構成であるロータリコネクタを用いると、転がり軸受け及び接点によって固定部と回転部間に摩擦が生じる。その結果、摩擦が生じる部分に摩耗が発生する可能性があり、耐久性の点で改善の余地があった。
【0006】
本発明が解決しようとする課題には、上記した問題が一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、回転軸を回転可能に支持する筐体と、前記回転軸とともに回転するように設けられ、基板を載置する絶縁性のターンテーブルと、このターンテーブル内に設けたクランプ電極と、前記回転軸の回転に伴う前記クランプ電極と前記筐体との相対回転を許容しつつ当該クランプ電極にクランプ電圧を給電するためのロータリトランスとを有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0009】
図1は、本実施形態のディスク原盤製造装置1の全体構成を示すブロック図である。
【0010】
まず、光ディスクの原盤の製造工程の概要について以下に説明する。電子ビームは、大気雰囲気中では著しく減衰する特性を有していることから、真空雰囲気中で使用される。従って、電子銃や光ディスク原盤を作製するための基板を載置したターンテーブル等は真空雰囲気中に配される。光ディスク原盤の製造には、例えば、シリコン(Si)基板が用いられる。シリコン基板は、その主面上に電子線用レジストが塗布される。電子線用レジストが塗布された基板は、ディスク原盤製造装置内において、回転駆動されるとともに情報データ信号によって変調された電子ビームが照射され、ピット、グルーブなどの微細凹凸パターンの潜像が螺旋状に形成される。
【0011】
当該基板は、電子ビーム露光が終了した後、ディスク原盤製造装置から取り出され、現像処理が施される。次に、パターニング及びレジスト除去の処理が行われ、基板上に微細な凹凸パターンが形成される。パターン形成された基板の主面には導電膜が形成され、電鋳処理が施されて光ディスク原盤(スタンパ)が製造される。
【0012】
図1に示すように、ディスク原盤製造装置1は、真空チャンバ2、真空チャンバ2内に配されたディスク基板を駆動する回転駆動装置3、及び真空チャンバ2に取り付けられた電子ビーム光学系を含む電子カラム4を有している。光ディスク原盤用の光ディスク基板(以下、単にディスク基板と称する)5は、ターンテーブル6上に載置されている。ターンテーブル6は、これに接続されたスピンドルシャフト7を回転可能に支持するスピンドルハウジング11によってディスク基板主面の垂直軸に関して回転駆動される。回転駆動装置3は送りステージ(以下、単にステージと称する)8上に設置されている。このステージ8は、並進駆動装置である送りモータ9にボールネジ10を介して結合され、スピンドルハウジング11及びターンテーブル6を含む回転駆動装置3をディスク基板5の主面と平行な面内の所定方向に並進移動することが可能となっている。なお、ターンテーブル6は、例えばセラミック等の絶縁材料からなり、ディスク基板5は後述する静電クランプ機構によりターンテーブル6上にクランプされる。
【0013】
真空チャンバ2には(又はその外部でもよい)、ディスク基板5の主面の並進移動位置を検出するためのレーザ測長器15が設けられている。このレーザ測長器15は、図示しない発光器、受光器及び検出部を有しており、発光器から射出され、ステージ8に設けられた反射鏡19で反射されたレーザビームを受光器で受光し、光波の干渉によりディスク基板5の主面の並進移動方向における位置を検出する。そして、この検出結果を送りモータ制御回路20に出力する。送りモータ制御回路20は、この入力された結果に基づきステージ8の位置の誤差を算出し、その誤差を修正するように送りモータ9の駆動を制御する。また、算出したステージ位置の誤差を後述する照射位置調整回路33に出力する。
【0014】
なお、真空チャンバ2は、エアーダンパなどの防振台(図示しない)を介して設置され、外部からの振動の伝達が抑制されている。また、この真空チャンバ2には真空ポンプ22が接続されており、この真空ポンプ22によってチャンバから排気することによりチャンバ内部が所定圧力の真空雰囲気となるように設定されている。
【0015】
電子ビームを射出するための電子カラム4内には、電子ビーム源25、収束レンズ26、ビーム変調器27、アパーチャ28、ビーム偏向器29、及び対物レンズ30がこの順でビーム上流側から下流側に向けて配置されている。この電子カラム4は、その先端に設けられた電子ビーム射出口31が真空チャンバ2内に位置するように、真空チャンバ2の天井面に取り付けられている。このとき、電子ビーム射出口31は、ターンテーブル6上のディスク基板5の主面に近接した位置に対向して配置されている。
【0016】
電子ビーム源25は、図示しない電源から供給される高電圧が印加される陰極(図示せず)により、例えば、数10KeVに加速された電子ビームを射出する。収束レンズ26は、射出された電子ビームを収束してアパーチャ28へと導く。ビーム変調器27は、記録信号発生器32からの信号に基づいて動作し、電子ビームのオン・オフ制御を行う。すなわち、例えばビームをオフとする場合には、ビーム変調器27の電極間に電圧を印加して通過する電子ビームを大きく偏向させる。これにより、電子ビームはアパーチャ28の絞り孔に収束されない状態となってアパーチャ28を通過するのを阻止され、その結果、ビームオフ状態とすることができる。
【0017】
ビーム偏向器29は、照射位置調整回路33からの制御信号に応答し、電極に電圧を印加して通過する電子ビームを偏向させる。これにより、ディスク基板5に対する電子ビームスポットの位置制御を行う。なお、前述したように、照射位置調整回路33は、上記送りモータ制御回路20から入力されるステージ8の位置誤差に基づき、ビーム偏向器29の電極に印加する電圧の制御を行う。
【0018】
図2は回転駆動装置3の全体構成を説明するために、図1に示すディスク原盤製造装置1のスピンドルハウジング11の内部の構成を模式的に示す断面図である。
【0019】
スピンドルハウジング11の内部には、回転可能に支持されたスピンドルシャフト7、このスピンドルシャフト7を回転駆動するためのスピンドルモータ35、ロータリトランス42、及び整流回路43等が収容されている。スピンドルシャフト7は、スピンドルハウジング11に気体軸受36を介して回転自在に支持されている。この気体軸受36には、バルブ(図示せず)を介して外部から軸受用のエアーが供給され、当該エアーが気体軸受36から空隙部に噴出しスピンドルシャフト7を回転自在に支持する。そして、このエアーは、スピンドルハウジング11からパイプ(図示せず)を介して真空チャンバ2外に排気されるようになっている。また、スピンドルシャフト7の一端側(図2中上側)はスピンドルハウジング11の開口部11aを貫通しており、その先端部にはターンテーブル6が固定されている。なお、上記開口部11aとスピンドルシャフト7との径方向の間隙は真空シール部37によってシールされており、これによりスピンドルハウジング11内部の気密性が保持されるようになっている。なお、上記真空シール部の代わりに差動排気シール部を用いてもよい。
【0020】
スピンドルシャフト7における気体軸受36の下方部には、スピンドルシャフト7を回転駆動するための磁性部材35Aが取り付けられている。前記のスピンドルモータ35は、上記磁性部材35A及びその周囲に設けられたコイル35B等から構成されており、コイル35Bに電流を流すことにより発生した電磁力を利用してスピンドルシャフト7を回転させる。その結果、スピンドルシャフト7の一端側に固定されたターンテーブル6が回転される。なお、スピンドルモータ35は、スピンドルモータ制御回路21により駆動制御される(図1参照)。
【0021】
また、スピンドルシャフト7における上記スピンドルモータ35の下方部には、ロータリーエンコーダ39が設けられている。このロータリーエンコーダ39は、図示しない発光部と受光部を備えており、スピンドルシャフト7に設けた円盤39aに形成されたスリット(図示せず)を通過する光(例えば赤外線)のパルスによりスピンドルシャフト7の回転角度を検出する。このロータリーエンコーダ39により検出されたスピンドルシャフト7の回転角度は、図示しない制御装置等に出力される。
【0022】
一方、スピンドルシャフト7内には、ディスク基板5及びターンテーブル6に高電圧を供給するための同軸ケーブル38が設けられている。この同軸ケーブル38は、内部導体(芯線)38A及び外部導体38Bを有しており、スピンドルシャフト7の中心に形成された貫通孔7a内に設けられている。内部導体38Aの一端側(図2中上側)はターンテーブル6内に設けられた静電クランプ電極50に接続され、他端側(図2中下側)は整流回路43に接続されている。また、外部導体38Bの一端側は接点部材51を介してディスク基板5に接続され、他端側は整流回路43に接続されている。当該同軸ケーブル38には、交流電源40からの供給電圧が、スピンドルハウジング11に設けられた端子41、ロータリトランス42、及び整流回路43を介して供給される。
【0023】
ロータリトランス42は、スピンドルシャフト7の他端側(図2中下側)先端に固定されシャフトと共に回転する回転部42Aと、スピンドルハウジング11側に固定された固定部42Bとを有する。これら回転部42Aと固定部42Bとは、非接触に対向配置するように設けられている。このロータリトランス42の略中心部にはシャフト軸方向に略沿うように貫通孔42aが設けられており、この貫通孔42a内にスピンドルシャフト7の他端側先端から突設するように設けられたアースシャフト7Aが挿通されている。一方、整流回路43は、スピンドルシャフト7の他端側に内設されており、上記ロータリトランス42の回転部42Aと接続され、交流電源40から端子41、ロータリトランス42を介して供給された交流電圧を直流電圧に変換する。
【0024】
なお、スピンドルハウジング11内における交流電流が流れる部分、すなわちロータリトランス42と整流回路43の周囲には、電磁シールド部材44が設けられている。これにより、交流電流が流れるロータリトランス42及び整流回路43から発生する磁界を減衰させ、当該磁界が電子カラム4からディスク基板5に照射される電子ビームの軌道に影響を与えて記録精度の悪化等を招くのを防止できるようになっている。
【0025】
上記アースシャフト7aは、その先端がスピンドルハウジング11側に設けられた接点部材52に当接されており、スピンドルシャフト7の回転時には当該当接部分で摺動するようになっている。この摺動部54は、スピンドルシャフト7の略軸心線X上に位置するようになっている。上記接点部材52は、端子53を介して接地されており、これによりスピンドルシャフト7の電位が接地されるようになっている。なお、前述したように交流電源40から整流回路43及び同軸ケーブル38を介してディスク基板5と静電クランプ電極50間に電圧が供給されるが、外部導体38Bとスピンドルシャフト7が導通しているため、整流回路43の外部導体38B側の出力はディスク基板5に導通するとともに接地されるようになっている。
【0026】
次に、図3を参照して、ディスク基板5の静電クランプ機構について説明する。図3は、ディスク原盤製造装置1の電気回路のうち、静電クランプ機能に関わる部分を抽出した回路図である。
【0027】
この図に示すように、交流電源40は、ロータリトランス42の前記固定部42Bに設けられた一次側コイル55に接続されている。一方、ロータリトランス42の前記回転部42Aに設けられた二次側コイル56は整流回路43に接続されている。このような構成により、交流電源40のスイッチ57をONにすると、一次側コイル55に流れる一次電流により二次側コイル56が励磁され、当該電磁誘導により誘導電流が発生する。この誘起された誘導電流は整流回路43で整流され、これにより発生した直流電圧が静電クランプ電極50とディスク基板5との間に印加される。その結果、静電クランプ電極50とディスク基板5との間に静電力が発生し、この静電力によりディスク基板5をターンテーブル6に吸着させてクランプできるようになっている。なお、交流電源40のスイッチ57をOFFとすると、静電クランプ電極50とディスク基板5との間に帯電した電荷は整流回路43の並列抵抗58に電流となって流れるため、一定時間経過後、静電クランプ電極50とディスク基板5とは同電位となり、吸着力が消滅するようになっている。なお、この図3では整流回路43として代表的な回路を一例として示したが、これに限られず、他の方式の整流回路を用いてもよい。
【0028】
以上説明したように、本実施形態における回転駆動装置3は、回転軸(この例ではスピンドルシャフト)7を回転可能に支持する筐体(この例ではスピンドルハウジング)11と、回転軸7とともに回転するように設けられ、基板(この例ではディスク基板)5を載置する絶縁性のターンテーブル6と、このターンテーブル6内に設けたクランプ電極(この例では静電クランプ電極)50と、回転軸7の回転に伴うクランプ電極50と筐体11との相対回転を許容しつつ当該クランプ電極50にクランプ電圧を給電するためのロータリトランス42とを有することを特徴とする。
【0029】
本実施形態の回転駆動装置3においては、ターンテーブル6内に設けたクランプ電極50の静電力によって、ターンテーブル6に載置された基板5が把持(クランプ)される。そして、回転軸7とともに回転する回転体側のクランプ電極50に対し、筐体11すなわち固定側からクランプ電圧をロータリトランス42を介して供給する。このように、電磁誘導を介したトランス機構により給電することで、クランプ電極50と筐体11との相対回転を許容しつつ、非接触で電力を供給することができる。この結果、クランプ電極50と筐体11との相対回転を接触部分で許容して給電する場合のように摩耗することがなく、耐久性を向上することができる。
【0030】
本実施形態における電子ビーム照射装置(この例ではディスク原盤製造装置)1は、電子ビームを基板5に照射する電子ビーム照射装置1であって、電子ビームを射出する電子ビーム射出手段(この例では電子カラム)4と、この電子ビーム射出手段4からの電子ビームを内部へ導入する減圧室(この例では真空チャンバ)2と、回転軸7を回転可能に支持する筐体11と、回転軸7とともに回転するように減圧室2内に設けられ、基板5を載置する絶縁性のターンテーブル6、このターンテーブル6内に設けたクランプ電極50、回転軸7の回転に伴うクランプ電極50と筐体11との相対回転を許容しつつ当該クランプ電極50にクランプ電圧を給電するためのロータリトランス42、及び、回転軸7を回転駆動するモータ(この例ではスピンドルモータ)35を含む回転駆動手段(この例では回転駆動装置)3と、この回転駆動手段3を電子ビーム射出手段4に対し相対移動させる移動手段(この例ではステージ)8とを有することを特徴とする。
【0031】
本実施形態の電子ビーム照射装置1においては、電子ビーム射出手段4から射出された電子ビームが減圧室2内に導入され、回転駆動手段3のターンテーブル6に載置された基板5に入射される。このとき回転駆動手段3は移動手段8によって電子ビーム射出手段4に対し相対移動され、さらに回転駆動手段3においてモータ35によって回転軸7が駆動されることでターンテーブル6が回転されることで、基板5に対し所定の描画が行われる。
【0032】
このとき、基板5は、ターンテーブル6内に設けたクランプ電極50の静電力によって、ターンテーブル6に載置された状態で把持(クランプ)されるが、回転軸7とともに回転する回転体側のクランプ電極50に対し筐体11すなわち固定側からクランプ電圧がロータリトランス42を介し供給される。このように、電磁誘導を介したトランス機構により給電することで、クランプ電極50と筐体11との相対回転を許容しつつ、非接触で電力を供給することができる。この結果、クランプ電極50と筐体11との相対回転を接触部分で許容して給電する場合のように摩耗することがなく、耐久性を向上することができる。
【0033】
上記実施形態における回転駆動装置3においては、ロータリトランス42は、筐体11側に設けられ交流電源電圧が供給される1次側固定部(この例では固定部)42Bと、1次側固定部42Bと非接触に対向配置するように回転軸7側に設けられ、当該1次側固定部42Bからの電磁誘導により励磁される2次側回転部(この例では回転部)42Aとを備えることを特徴とする。
【0034】
筐体11側において1次側固定部42Bに供給された交流電源電圧に基づき、これに対向して回転軸7側に配置された2次側回転部42Aに非接触にて電磁誘導にて起電力が誘起されることにより、クランプ電極50と筐体11との相対回転を許容しつつ、非接触で電力をクランプ電極50へ供給することができる。
【0035】
上記実施形態における電子ビーム照射装置1においては、回転駆動手段3に備えられたロータリトランス42は、筐体11側に設けられ交流電源電圧が供給される1次側固定部42Bと、1次側固定部42Bと非接触に対向配置するように回転軸7側に設けられ、当該1次側固定部42Bからの電磁誘導により励磁される2次側回転部42Aとを備えることを特徴とする。
【0036】
筐体11側において1次側固定部42Bに供給された交流電源電圧に基づき、これに対向して回転軸7側に配置された2次側回転部42Aに非接触にて電磁誘導にて起電力が誘起されることにより、クランプ電極50と筐体11との相対回転を許容しつつ、非接触で電力をクランプ電極50へ供給することができる。
【0037】
上記実施形態における回転駆動装置3においては、回転軸7とともに回転するように設けられ、2次側回転部42Aで励磁された交流電圧を整流しクランプ電圧を供給するための整流手段(この例では整流回路)43を有することを特徴とする。
【0038】
これにより、1次側固定部42Bの交流電源電圧に基づき2次側回転部42Aに誘起された交流電圧を整流して直流化し、クランプ電圧としてクランプ電極に供給することができる。
【0039】
上記実施形態における電子ビーム照射装置1においては、回転駆動手段3は、回転軸7とともに回転するように設けられ、2次側回転部42Aで励磁された交流電圧を整流しクランプ電圧を供給するための整流手段43を有することを特徴とする。
【0040】
これにより、1次側固定部42Bの交流電源電圧に基づき2次側回転部42Aに誘起された交流電圧を整流して直流化し、クランプ電圧としてクランプ電極50に供給することができる。
【0041】
上記実施形態における回転駆動装置3においては、回転軸7と筐体11との相対回転を許容しつつ回転軸7の電位を接地するための摺動部54を、回転軸7の略軸心線X上に設けたことを特徴とする。
【0042】
摺動部54を介して、回転軸7と筐体11との相対回転を許容しつつ回転軸7を接地電位とすることにより、例えば電子ビーム照射装置に用いた場合に入射電子が基板5に帯電するのを防止することができる。また導電性流体を用いて導電接続する場合に比べ、アース抵抗を小さくすることができる。
【0043】
上記実施形態における電子ビーム照射装置1においては、回転駆動手段3は、回転軸7と筐体11との相対回転を許容しつつ回転軸7の電位を接地するための摺動部54を、回転軸7の略軸心線X上に有することを特徴とする。
【0044】
摺動部54を介して、回転軸7と筐体11との相対回転を許容しつつ回転軸7を接地電位とすることにより、電子ビーム射出手段4から入射した電子が基板5に帯電するのを防止することができる。また導電性流体を用いて導電接続する場合に比べ、アース抵抗を小さくすることができる。
【0045】
上記実施形態における電子ビーム照射装置1においては、回転駆動手段3は、ロータリトランス42及び整流手段43の少なくとも一方から発生する磁界を減衰させる電磁シールド手段(この例では電磁シールド部材)44を有することを特徴とする。
【0046】
これにより、交流電流が流れるロータリトランス42及び整流手段43から発生する磁界を減衰させ、当該磁界が電子ビーム射出手段4から基板5に照射される電子ビームの軌道に影響を与えて記録精度の悪化等を招くのを防止することができる。
【0047】
なお、本実施形態は、上記に限られず、種々の変形が可能である。以下、そのような変形例を順を追って説明する。
【0048】
(1)アースシャフトと筐体を導電性磁性流体で導通させる場合
上記実施形態では、アースシャフト7Aと接点部材52とを摺動させることによりスピンドルシャフト7の電位を接地させる構造としたが、これに限られず、アースシャフト7Aとスピンドルハウジング11とを導電性磁性流体により導通させる構造としてもよい。
【0049】
図4は本変形例におけるスピンドルハウジング11の内部の構成を模式的に示す断面図であり、前述の図2に対応する図である。図2と同様の部分には同符号を付し、説明を省略する。
【0050】
この図に示すように、スピンドルシャフト7の他端部から突設されたアースシャフト7Aは、スピンドルハウジング11に設けられた接続部材60と導電性磁性流体61を介して接続されている。これにより、スピンドルシャフト7の電位は、アースシャフト7A、導電性磁性流体61、接続部材60及びスピンドルハウジング11を介して接地されるようになっている。
【0051】
本変形例における回転駆動装置3においては、回転軸7と筐体11との相対回転を許容しつつ回転軸7の電位を接地するための導電性流体接続部(この例では導電性磁性流体)61を設けたことを特徴とする。
【0052】
導電性流体接続部61を介して、回転軸7と筐体11との相対回転を許容しつつ回転軸7を接地電位とすることにより、例えば電子ビーム照射装置に用いた場合に入射電子が基板5に帯電するのを防止することができる。また摺動部を介して導電接続する場合に比べ、接触抵抗が小さく摩耗を抑制することができる。
【0053】
本変形例における電子ビーム照射装置1においては、回転駆動手段3は、回転軸7と筐体11との相対回転を許容しつつ回転軸7の電位を接地するための導電性流体接続部61を有することを特徴とする。
【0054】
導電性流体接続部61を介して、回転軸7と筐体11との相対回転を許容しつつ回転軸7を接地電位とすることにより、電子ビーム射出手段4から入射した電子が基板5に帯電するのを防止することができる。また摺動部を介して導電接続する場合に比べ、接触抵抗が小さく摩耗を抑制することができる。
【0055】
(2)真空シール部の代わりに導電性磁性流体を用いる場合
上記実施形態では、スピンドルハウジング11の開口部11aとスピンドルシャフト7との径方向の間隙を真空シール部37によってシールするようにしたが、これに限られず、真空シール部の代わりに導電性磁性流体を用いてシールを行いつつスピンドルシャフトとスピンドルハウジング11とを導通させる構造としてもよい。
【0056】
図5は本変形例におけるスピンドルハウジング11の内部の構成を模式的に示す断面図であり、前述の図2に対応する図である。図2と同様の部分には同符号を付し、説明を省略する。
【0057】
この図に示すように、本変形例ではスピンドルハウジング11の開口部11aとスピンドルシャフト7との径方向の間隙に導電性磁性流体62が設けられている。これにより、開口部11aとスピンドルシャフト7との間隙を導電性磁性流体62によってシールすることができ、スピンドルハウジング11内部の気密性を保持できる。さらに、この導電性磁性流体62を介し、スピンドルシャフト7の電位がスピンドルハウジング11を介して接地されるようになっている。
【0058】
本変形例における回転駆動装置3においては、回転軸7と筐体11との相対回転を許容しつつ回転軸7の電位を接地するための導電性流体接続部(この例では導電性磁性流体)62を設けたことを特徴とする。
【0059】
導電性流体接続部62を介して、回転軸7と筐体11との相対回転を許容しつつ回転軸7を接地電位とすることにより、例えば電子ビーム照射装置に用いた場合に入射電子が基板5に帯電するのを防止することができる。また摺動部を介して導電接続する場合に比べ、接触抵抗が小さく摩耗を抑制することができる。
【0060】
本変形例における電子ビーム照射装置1においては、回転駆動手段3は、回転軸7と筐体11との相対回転を許容しつつ回転軸7の電位を接地するための導電性流体接続部62を有することを特徴とする。
【0061】
導電性流体接続部62を介して、回転軸7と筐体11との相対回転を許容しつつ回転軸7を接地電位とすることにより、電子ビーム射出手段4から入射した電子が基板5に帯電するのを防止することができる。また摺動部を介して導電接続する場合に比べ、接触抵抗が小さく摩耗を抑制することができる。
【0062】
上記実施形態における回転駆動装置3は、スピンドルシャフト7を回転可能に支持するスピンドルハウジング11と、スピンドルシャフト7とともに回転するように設けられ、ディスク基板5を載置する絶縁性のターンテーブル6と、このターンテーブル6内に設けた静電クランプ電極50と、スピンドルシャフト7の回転に伴う静電クランプ電極50とスピンドルハウジング11との相対回転を許容しつつ当該静電クランプ電極50にクランプ電圧を給電するためのロータリトランス42とを有する。
【0063】
本実施形態の回転駆動装置3においては、ターンテーブル6内に設けた静電クランプ電極50の静電力によって、ターンテーブル6に載置されたディスク基板5が把持(クランプ)される。そして、スピンドルシャフト7とともに回転する回転体側の静電クランプ電極50に対し、スピンドルハウジング11すなわち固定側からクランプ電圧をロータリトランス42を介して供給する。このように、電磁誘導を介したトランス機構により給電することで、静電クランプ電極50とスピンドルハウジング11との相対回転を許容しつつ、非接触で電力を供給することができる。この結果、静電クランプ電極50とスピンドルハウジング11との相対回転を接触部分で許容して給電する場合のように摩耗することがなく、耐久性を向上することができる。
【0064】
また、上記実施形態におけるディスク原盤製造装置1は、電子ビームをディスク基板5に照射するディスク原盤製造装置1であって、電子ビームを射出する電子カラム4と、この電子カラム4からの電子ビームを内部へ導入する真空チャンバ2と、スピンドルシャフト7を回転可能に支持するスピンドルハウジング11と、スピンドルシャフト7とともに回転するように真空チャンバ2内に設けられ、ディスク基板5を載置する絶縁性のターンテーブル6、このターンテーブル6内に設けた静電クランプ電極50、スピンドルシャフト7の回転に伴う静電クランプ電極50とスピンドルハウジング11との相対回転を許容しつつ当該静電クランプ電極50にクランプ電圧を給電するためのロータリトランス42、及び、スピンドルシャフト7を回転駆動するスピンドルモータ35を含む回転駆動装置3と、この回転駆動装置3を電子カラム4に対し相対移動させるステージ8とを有する。
【0065】
本実施形態のディスク原盤製造装置1においては、電子カラム4から射出された電子ビームが真空チャンバ2内に導入され、回転駆動装置3のターンテーブル6に載置されたディスク基板5に入射される。このとき回転駆動装置3はステージ8によって電子カラム4に対し相対移動され、さらに回転駆動装置3においてスピンドルモータ35によってスピンドルシャフト7が駆動されターンテーブル6が回転されることで、ディスク基板5に対し所定の描画が行われる。
【0066】
このとき、ディスク基板5は、ターンテーブル6内に設けた静電クランプ電極50の静電力によって、ターンテーブル6に載置された状態で把持(クランプ)されるが、スピンドルシャフト7とともに回転する回転体側の静電クランプ電極50に対しスピンドルハウジング11すなわち固定側からクランプ電圧がロータリトランス42を介し供給される。このように、電磁誘導を介したトランス機構により給電することで、静電クランプ電極50とスピンドルハウジング11との相対回転を許容しつつ、非接触で電力を供給することができる。この結果、静電クランプ電極50とスピンドルハウジング11との相対回転を接触部分で許容して給電する場合のように摩耗することがなく、耐久性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の一実施形態であるディスク原盤製造装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示したスピンドルハウジングの内部の構成を模式的に示す断面図である。
【図3】ディスク原盤製造装置の電気回路のうち、静電クランプ機能に関わる部分を抽出した回路図である。
【図4】アースシャフトと筐体を導電性磁性流体で導通させる変形例におけるスピンドルハウジングの内部の構成を模式的に示す断面図である。
【図5】真空シール部の代わりに導電性磁性流体を用いる変形例におけるスピンドルハウジングの内部の構成を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0068】
1 ディスク原盤製造装置(電子ビーム照射装置)
2 真空チャンバ(減圧室)
3 回転駆動装置(回転駆動手段)
4 電子カラム(電子ビーム射出手段)
5 ディスク基板(基板)
6 ターンテーブル
7 スピンドルシャフト(回転軸)
8 ステージ(移動手段)
11 スピンドルハウジング(筐体)
35 スピンドルモータ(モータ)
42 ロータリトランス
42A 回転部(2次側回転部)
42B 固定部(1次側固定部)
43 整流回路(整流手段)
50 静電クランプ電極(クランプ電極)
61 導電性磁性流体(導電性流体接続部)
62 導電性磁性流体(導電性流体接続部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を回転可能に支持する筐体と、
前記回転軸とともに回転するように設けられ、基板を載置する絶縁性のターンテーブルと、
このターンテーブル内に設けたクランプ電極と、
前記回転軸の回転に伴う前記クランプ電極と前記筐体との相対回転を許容しつつ当該クランプ電極にクランプ電圧を給電するためのロータリトランスと
を有することを特徴とする回転駆動装置。
【請求項2】
請求項1記載の回転駆動装置において、
前記ロータリトランスは、
前記筐体側に設けられ交流電源電圧が供給される1次側固定部と、
前記1次側固定部と非接触に対向配置するように前記回転軸側に設けられ、当該1次側固定部からの電磁誘導により励磁される2次側回転部と
を備えることを特徴とする回転駆動装置。
【請求項3】
請求項2記載の回転駆動装置において、
前記回転軸とともに回転するように設けられ、前記2次側回転部で励磁された交流電圧を整流し前記クランプ電圧を供給するための整流手段を有することを特徴とする回転駆動装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項記載の回転駆動装置において、
前記回転軸と前記筐体との相対回転を許容しつつ前記回転軸の電位を接地するための摺動部を、前記回転軸の略軸心線上に設けたことを特徴とする回転駆動装置。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか1項記載の回転駆動装置において、
前記回転軸と前記筐体との相対回転を許容しつつ前記回転軸の電位を接地するための導電性流体接続部を設けたことを特徴とする回転駆動装置。
【請求項6】
電子ビームを基板に照射する電子ビーム照射装置であって、
前記電子ビームを射出する電子ビーム射出手段と、
この電子ビーム射出手段からの前記電子ビームを内部へ導入する減圧室と、
回転軸を回転可能に支持する筐体、前記回転軸とともに回転するように前記減圧室内に設けられ、基板を載置する絶縁性のターンテーブル、このターンテーブル内に設けたクランプ電極、前記回転軸の回転に伴う前記クランプ電極と前記筐体との相対回転を許容しつつ当該クランプ電極にクランプ電圧を給電するためのロータリトランス、及び、前記回転軸を回転駆動するモータを含む回転駆動手段と、
この回転駆動手段を前記電子ビーム射出手段に対し相対移動させる移動手段と
を有することを特徴とする電子ビーム照射装置。
【請求項7】
請求項6記載の電子ビーム照射装置において、
前記回転駆動手段に備えられた前記ロータリトランスは、
前記筐体側に設けられ交流電源電圧が供給される1次側固定部と、
前記1次側固定部と非接触に対向配置するように前記回転軸側に設けられ、当該1次側固定部からの電磁誘導により励磁される2次側回転部と
を備えることを特徴とする電子ビーム照射装置。
【請求項8】
請求項7記載の電子ビーム照射装置において、
前記回転駆動手段は、
前記回転軸とともに回転するように設けられ、前記2次側回転部で励磁された交流電圧を整流し前記クランプ電圧を供給するための整流手段を有することを特徴とする電子ビーム照射装置。
【請求項9】
請求項6乃至8のいずれか1項記載の電子ビーム照射装置において、
前記回転駆動手段は、
前記回転軸と前記筐体との相対回転を許容しつつ前記回転軸の電位を接地するための摺動部を、前記回転軸の略軸心線上に有することを特徴とする電子ビーム照射装置。
【請求項10】
請求項6乃至8のいずれか1項記載の電子ビーム照射装置において、
前記回転駆動手段は、
前記回転軸と前記筐体との相対回転を許容しつつ前記回転軸の電位を接地するための導電性流体接続部を有することを特徴とする電子ビーム照射装置。
【請求項11】
請求項6乃至10のいずれか1項記載の電子ビーム照射装置において、
前記回転駆動手段は、
前記ロータリトランス及び前記整流手段の少なくとも一方から発生する磁界を減衰させる電磁シールド手段を有することを特徴とする電子ビーム照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−134775(P2009−134775A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−63828(P2006−63828)
【出願日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】