説明

固体撮像素子の製造方法、固体撮像素子、および電子機器

【課題】撮像領域を三次元に湾曲させた湾曲部の周囲に平坦部を残すことが可能で、これによりクラックなどの損傷が発生し難い固体撮像素子の製造方法を提供する。
【解決手段】一主面側に光電変換部を配列した素子チップ2を作製する。素子チップ2よりも膨張係数の大きい材料を用いて構成されると共に、開口23を有し開口23の周囲が平坦面25として整形された台座21を用意する。台座21を加熱して膨張させる。台座21の開口23を塞ぐ状態で、台座21の平坦面25上に素子チップ2を載置する。その後、膨張させた台座21の平坦面25に素子チップ2を固定した状態で台座21を冷却して収縮させる。これにより、素子チップ2において開口23に対応する部分を三次元に湾曲させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、三次元に湾曲した湾曲面に光電変換部を配列させた固体撮像素子の製造方法、この製造方法によって得られる固体撮像素子、およびこの固体撮像素子を備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
固体撮像素子と撮像レンズとを組み合わせたカメラなどの撮像装置においては、固体撮像素子の受光面側に撮像レンズを配置して構成されている。このような撮像装置においては、被写体を撮像レンズで結像させた場合、像面湾曲と称されるレンズ収差によって撮像面の中心部と周辺部とで焦点位置のずれが発生する。そこで、撮像レンズの像面湾曲に応じて三次元に湾曲させた湾曲面を形成し、この湾曲面を固体撮像素子の撮像面(受光面)として光電変換部を配列する構成が提案されている。これにより、複数枚のレンズの組み合わせによる像面湾曲(レンズ収差)の補正が不要となる。このような湾曲面に光電変換部を配列させた固体撮像素子の製造方法として、例えば以下の二つの方法が開示されている。
【0003】
第1の方法は、素子配設領域に湾曲面を有すると共に底部に吸引孔が形成されたパッケージ本体を用いる方法である。この場合、固着剤が塗布された湾曲面に固体撮像素子を対向させて配置し、吸引孔を通じて固体撮像素子と湾曲面との間の間隙部を減圧することによって固体撮像素子を湾曲面に密着させ、固着剤で固定する(以上、下記特許文献1参照)。
【0004】
第2の方法は、開口部を有すると共に、固体撮像素子よりも熱膨張係数が大きい材質によって形成された配線基板を用いる方法である。この場合、先ず配線基板と固体撮像素子とを突起電極を介して接合する。そして加熱冷却後の冷却作用によって固体撮像素子の収縮率よりも配線基板の収縮率が大きくなり、この収縮率の差によって固体撮像素子に圧縮力を加えて湾曲させる(以上、下記特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−243635号公報(特に段落0013〜0014および図2)
【特許文献2】特開2004−146633号公報(特に段落0017〜0020および図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した第1の方法および第2の方法の何れであっても、固体撮像素子を構成するチップの全体が湾曲される。このため、ダイシングによって分割されたことで粗面となっているチップの周端部にストレスが加わり、この周端部側からチップにクラックが発生し易い方法であった。
【0007】
そこで本開示は、撮像領域を三次元に湾曲させた湾曲部の周囲に平坦部を残すことが可能で、これによりクラックなどの損傷が発生し難い固体撮像素子の製造方法を提供することを目的とする。さらに本開示は、このような製造方法によって得られる固体撮像素子であり、三次元の湾曲部を備えつつもクラックなどの損傷の発生が防止された信頼性の高い固体撮像素子、およびこの固体撮像素子を用いた電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するための本開示の固体撮像素子の製造方法は、次の手順を含むことを特徴としている。先ず、一主面側に光電変換部を配列した素子チップを作製する。また、素子チップよりも膨張係数の大きい材料を用いて構成されると共に、開口を有し当該開口の周囲が平坦面として整形された台座を用意する。そして、この台座を加熱して膨張させ、台座の開口を塞ぐ状態で当該台座の平坦面上に前記素子チップを載置する。その後、膨張させた台座の平坦面に素子チップを固定した状態で、当該台座を冷却して収縮させることにより、当該素子チップにおいて前記開口に対応する部分を三次元に湾曲させる。
【0009】
以上の製造方法によれば、台座において、開口の周囲の平坦面に素子チップの周縁を固定した状態で、当該開口を塞いで配置された素子チップの中央部分のみが三次元に湾曲される。このため、湾曲した部分の周端から連続する素子チップの周縁部は、台座の平坦面に固定された平坦部となる。したがって、素子チップの周縁部は、湾曲によるストレスが加わることのない平坦部として残される。
【0010】
また本開示の固体撮像素子は、三次元に湾曲した湾曲部と当該湾曲部の周端から延設された平坦部とを有する素子チップと、この素子チップにおける湾曲部の凹曲面側に配列された光電変換部とを備えたことを特徴としている。
【0011】
また本開示の電子機器は、このような構成の固体撮像素子を備えた電子機器でもあり、前記固体撮像素子の光電変換部に入射光を導く光学系を備えたものである。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように本開示によれば、素子チップの周縁部を湾曲によるストレスが加わることのない平坦部として残して中央部のみを三次元に湾曲させることが可能である。このため、クラックなどの損傷を発生させることなく、素子チップの中央部に三次元の湾曲部を備えた固体撮像素子を製造することが可能になる。またこの結果、三次元の湾曲部を備えた固体撮像素子およびこの固体撮像素子を用いた電子機器の信頼性の向上を図ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本開示を適用して得られる固体撮像素子における要部の概略構成図である。
【図2】第1実施形態および第2実施形態の製造方法に用いる台座の断面図および平面図である。
【図3】第1実施形態の製造方法を示す断面工程図である。
【図4】第2実施形態の製造方法を示す断面工程図である。
【図5】第3実施形態の製造方法に用いる台座の断面図および平面図である。
【図6】第3実施形態の製造方法を示す断面工程図である。
【図7】第4実施形態の製造方法に用いる台座の断面図および平面図である。
【図8】第4実施形態の製造方法を示す断面工程図である。
【図9】本開示の電子機器の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下本開示の実施の形態を、図面に基づいて次に示す順に説明する。
1.本開示の固体撮像素子の概略構成例
2.第1実施形態(樹脂の硬化収縮を併用して素子チップを湾曲させる例)
3.第2実施形態(ガスの体積収縮を併用して素子チップを湾曲させる例)
4.第3実施形態(台座をパッケージとして用いる例)
5.第4実施形態(真空吸着によって台座に素子チップを固定する例)
6.第5実施形態(電子機器の実施形態)
尚、各実施形態および変形例において共通の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0015】
≪1.固体撮像素子の概略構成例≫
図1に、本開示の各実施形態の製造方法を適用して作製される固体撮像素子の一例として、MOS型の固体撮像素子の概略構成を示す。
【0016】
この図に示す固体撮像素子は、素子チップ2の一主面側の中央に、光電変換部を含む複数の画素3が2次元的に配列された撮像領域4を有している。撮像領域4に配列された各画素3には、光電変換部と共に複数のトランジスタ(いわゆるMOSトランジスタ)および容量素子等で構成された画素回路が接続されている。尚、複数の光電変換部で画素回路の一部を共有している場合もある。この場合、画素3としては、複数の光電変換部と、複数の転送トランジスタと、共有する1つのフローティングディフュージョンと、共有する1つずつの他の画素トランジスタとからなる共有画素構造を1単位として構成することもできる。また、画素3において光電変換部と共に配置される画素回路は、光電変換部が設けられた表面とは反対側の裏面に設けられていても良い。
【0017】
以上のような撮像領域4の周辺部分には、垂直駆動回路5、カラム信号処理回路6、水平駆動回路7、およびシステム制御回路8などの周辺回路が設けられている。
【0018】
垂直駆動回路5は、例えばシフトレジスタによって構成され、撮像領域4に配線された画素駆動線9を選択し、選択された画素駆動線9に画素3を駆動するためのパルスを供給し、撮像領域4に配列された画素3を行単位で駆動する。すなわち、垂直駆動回路5は、撮像領域4に配列された各画素3を行単位で順次垂直方向に選択走査する。そして、画素駆動線9に対して垂直に配線された垂直信号線10を通して、各画素3において受光量に応じて生成した信号電荷に基づく画素信号をカラム信号処理回路6に供給する。
【0019】
カラム信号処理回路6は、画素3の例えば列ごとに配置されており、1行分の画素3から出力される信号を画素列ごとにノイズ除去などの信号処理を行う。すなわちカラム信号処理回路6は、画素固有の固定パターンノイズを除去するための相関二重サンプリング(CDS:Correlated Double sampling)や、信号増幅、アナログ/デジタル変換(AD:Analog/Digital Conversion)等の信号処理を行う。
【0020】
水平駆動回路7は、例えばシフトレジスタによって構成され、水平走査パルスを順次出力することによって、カラム信号処理回路6の各々を順番に選択し、カラム信号処理回路6の各々から画素信号を出力させる。
【0021】
システム制御回路8は、入力クロックと、動作モードなどを指令するデータを受け取り、また固体撮像素子1の内部情報などのデータを出力する。すなわち、システム制御回路8では、垂直同期信号、水平同期信号及びマスタクロックに基づいて、垂直駆動回路5、カラム信号処理回路6、および水平駆動回路7などの動作の基準となるクロック信号や制御信号を生成する。そして、これらの信号を垂直駆動回路5、カラム信号処理回路6、および水平駆動回路7等に入力する。
【0022】
以上のような各周辺回路5〜8と、撮像領域4に設けられた画素回路とで、各画素を駆動する駆動回路が構成されている。
【0023】
また以下に説明する本開示の各実施形態の製造方法を適用して作製される固体撮像素子では、各実施形態で詳細に説明するように、素子チップ2の中央部が三次元に湾曲した湾曲部11として構成されている。この湾曲部11の周囲は、表面平坦な平坦部13として構成されている。上述した撮像領域4は、湾曲部11における凹曲面側に配列されている。一方、周辺回路5〜8は、撮像領域4の周囲の湾曲部11および平坦部13に配置されている。尚、周辺回路5〜8の一部は、撮像領域4に積層される位置に配置されていても良い。
【0024】
また素子チップ2の変形例として、撮像領域4の各画素3に配置された光電変換部とは反対側の裏面に、各画素3の画素回路や周辺回路5〜8から引き出された端子電極(チップ側電極)を設けた素子チップ2aとして良い。この場合、これらの駆動回路に接続される端子は、チップ貫通ヴィア(Through Silicon via:TSV、Through Chip Via:TCV)を介して光電変換部が設けられた表面とは反対側に引き出される。尚、本開示の固体撮像素子は、表面照射型または裏面照射型の何れの構成にも適用することができる。すなわち表面照射型の固体撮像素子であれば、図示したように、半導体基板で構成された素子チップ2の凹曲面側に光電変換部と画素トランジスタからなる画素が配列された撮像領域4が形成される。この凹曲面側には周辺回路5〜8も形成され、この上部に層間絶縁膜を介して複数層の配線を配置した多層配線層が形成され、さらに更にその上にカラーフィルタ及びオンチップレンズが形成される。一方、裏面照射型の固体撮像素子であれば、薄膜化された半導体基板で構成された素子チップ2の凹曲面側に光電変換部を有する撮像領域4が形成され、この凹曲面側にカラーフィルタ及びオンチップレンズが形成される。また凹曲面と反対の凸曲面側には、画素トランジスタ、および周辺回路5〜8が形成され、その上に層間絶縁膜を介して複数層の配線を配置した多層配線層が形成される。
【0025】
以下各実施形態において、このような素子チップ2,2aを備えた固体撮像素子の製造方法と詳細な構成を説明する。
【0026】
≪2.第1実施形態(樹脂の体積収縮を併用して素子チップを湾曲させる例)≫
[第1実施形態の製造方法に用いる台座の構成]
図2は、第1実施形態の製造方法に用いる台座21の断面図および平面図である。この図に示す台座21は、中央に開口23を有している。開口23は、開口23が設けられた台座21の一方の面は、開口23の周囲が平坦面25として整形されている。
【0027】
開口23は、ここで作製する固体撮像素子と組み合わせて用いられるレンズおよび複数のレンズを組み合わせた光学系の像面湾曲(レンズ収差)に合わせた外形形状を有することとする。通常の外形形状が円形のレンズを用いた場合であれば、開口23の平面視的に見た開口形状は、円形(正円)であることが好ましく、正方形の4つの角部を曲線にした形状であっても良い。また平坦面25側における開口23の内壁部分は、平坦面25側に向かって開口径が広がるテーパ形状を有している。開口23の側壁と平坦面25の延長面とがなす角度θは、θ=90°未満であり、一例としてθ=45°程度であることが好ましい。このように開口23において開口径が広がる部分は、平坦面25に対して凹状に湾曲した形状であることが特に好ましい。湾曲の曲率は、図1を用いて説明した素子チップ(2)と組み合わせて用いられるレンズなどの光学系の像面湾曲に合わせた曲率であることとする。さらに、開口23において開口径が広がる部分から平坦面25にかけての境界部分、すなわち開口23のエッジ部分は、凸曲面として構成されていることが特に好ましい。また、平坦面25側における開口23の開口幅w1(開口径が広がる部分を含む)は、図1を用いて説明した素子チップ(2)の撮像領域(4)が開口23の範囲内に収まる程度であることとする。
【0028】
平坦面25は、開口23の全周にわたって設けられている。この平坦面25は、少なくとも図1を用いて説明した素子チップ(2)の撮像領域(4)が、開口23の範囲内に収まる位置で、当該素子チップ(2)の周縁を支持する幅w2を有している。このような平坦面25の外周の全周または一部は、素子チップ(2)を載置する場合の位置合わせを容易にするために、平坦面25よりも高い面として構成しても良い。尚、このような位置合わせが不要な場合には、台座21の一方の面の全面を同一高さの平坦面25としても良い。
【0029】
以上のような台座21は平坦面25が設けられている側と反対側の面に、開口23を閉塞する底板27が設けられていることとする。この底板27は、台座21と一体に形成されたものであっても良いし、開口23を密閉状態で閉塞できれば台座21とは別体で形成されたものであっても良い。またこの底板27は、配線や端子が形成されたパッケージとして構成されていても良い。
【0030】
特に台座21は、素子チップ(2)よりも膨張係数(Coefficient of thermal expansion:CTE)の大きい材料を、主な構成部材に用いて構成されている。例えば素子チップ(2)が主に単結晶シリコン(CTE=2.4)を用いて構成されたものであれば、ステンレス鋼(SUS410:CTE=10.4、SUS304:CTE=17.3)やアルミニウム(CTE=23)を用いて台座21が構成される。
【0031】
[第1実施形態の製造方法]
図3は、第1実施形態の固体撮像素子の製造方法を説明する断面工程図である。図3に示す第1実施形態の製造方法は、上記構成の台座21を用いた固体撮像素子の製造方法であり、以下この図に基づいて第1実施形態の製造方法を説明する。
【0032】
先ず図3Aに示すように、底板27によって底部が閉塞された台座21の開口23内に、未硬化の樹脂31を充填する。この樹脂31は、例えば熱硬化性樹脂からなることとし、冷却による台座21の収縮率よりも、硬化収縮率が高い材料を用いることが好ましい。またここで用いる未硬化の樹脂31は、硬化後に台座21と素子チップとの接着剤としても作用するものとする。例えば台座21の構成材料として上述したステンレス鋼やアルミニウムを用いた場合であれば、樹脂31として例えばエポキシ系の樹脂が用いられる。樹脂材料は、例えばフィラー含有量を調整することにより、硬化収縮1〜8%程度またはこれ以上にして用いることができる。
【0033】
開口23内への樹脂31の充填量は、次に台座21の上部に載置する素子チップと台座21との接着剤となる程度に、予め台座21の平坦面25上にも供給される程度であることとする。また開口23内への樹脂31の充填量は、以降に台座21および樹脂31を加熱した場合に、未硬化の樹脂31が膨張して台座21の平坦面25上にも樹脂31が供給される程度であっても良い。
【0034】
次に、図3Bに示すように、台座21の開口23を塞ぐ状態で、台座21の平坦面25上に素子チップ2を載置する。この際、素子チップ2における撮像領域4の形成面(すなわち光電変換部の形成面)を上方に向け、開口23の範囲内に撮像領域4を納める。また、撮像領域4の周囲を、全周にわたって台座21の平坦面25で支持させる。この状態では、撮像領域4の周囲に配置される周辺回路5〜8は、平坦面25に対応して配置され、一部が開口23の範囲内に配置されても良い。尚、台座21の平坦面25上に未硬化の樹脂31が供給されている場合には、台座21の平坦面25と素子チップ2との間の全域に未硬化の樹脂31を接着剤として挟持させる。
【0035】
次いで、図3Cに示すように、台座21を加熱して膨張させる。さらに必要に応じて底板27も加熱することで、台座21と同程度に底板27も膨張させる。これにより、台座21を膨張させ、開口23の径を拡大し平坦面25を外側に広げる。また台座21および底板27からの熱伝導によって、開口23内に充填した未硬化の樹脂31も加熱されて膨張する。尚、台座21の平坦面25上に直接素子チップ2を載置した場合には、このような未硬化の樹脂31の膨張によって台座21の平坦面25と素子チップ2との間に樹脂31を供給し、台座21の平坦面25と素子チップ2との間の全域に未硬化の樹脂31を接着剤として挟持させる。
【0036】
この状態で、素子チップ2に影響が及ぶことのない範囲で、かつ樹脂31の硬化が開始される温度まで樹脂31を加熱し、樹脂31の硬化を進める。例えば、樹脂31として上述したエポキシ系の樹脂を用いた場合であれば、160℃で1時間程度の加熱を行う。このような樹脂31の硬化により、素子チップ2が台座21の平坦面25に固定される。この際、素子チップ2の周縁の全周が平坦面25に固定されていることが重要である。
【0037】
尚、樹脂31の硬化が完了する前で樹脂31の接着作用が得られる期間であれば、台座21を加熱した後に、台座21に素子チップ2を載置する手順であっても良い。この場合、先ず台座21の開口23内に樹脂31を充填し、次いで台座21を加熱して台座21と共に樹脂31を膨張させる。次に、樹脂31が硬化する前に台座21に素子チップ2を載置し、その後、素子チップ2に影響が及ぶことのない範囲で、かつ樹脂31の硬化が開始される温度まで樹脂31を加熱し、樹脂31の硬化を進める。
【0038】
以上の後には、図3Dに示すように、素子チップ2を台座21の平坦面25に固定した状態で、台座21および底板27を加熱状態から常温にまで冷却する。これにより、台座21の開口23内に充填した樹脂31も常温にまで冷却される。冷却の過程において、台座21、底板27、および硬化した樹脂31が収縮する。この際、台座21および底板27は、加熱前の大きさにまで収縮する。また硬化した樹脂31は、加熱前の未硬化の状態よりもさらに硬化収縮が進む。
【0039】
このような台座21および樹脂31の収縮により、台座21の開口23に対応して配置された素子チップ2の中央部分は、樹脂31が充填されている開口23の内部に向かって引っ張られ、三次元に湾曲した湾曲部11として整形される。この湾曲部11の湾曲形状は、台座21の平坦面25側における開口23の内壁形状に追従した形状となる。そして台座21の開口23の平面形状と同様に、例えば円形の底部を有する形状に整形される。また、開口23の形状が正方形の4つの角部を曲線にした形状であれば、湾曲部11の頂部に近い部分で円形を底部とする三次元の湾曲が形成されることになる。この際、素子チップ2の周縁の全周を平坦面25に固定したことにより、開口23に対応する素子チップ2の中央部分に対して、樹脂31の硬化収縮による応力と台座21の収縮による応力を均等に加えることができる。これにより、「しわ」を発生させることなく三次元に湾曲させた湾曲部11を形成することができる。
【0040】
尚、素子チップ2の周縁の全周を平坦面25に対して十分に固定させるためには、平坦部13が有る程度以上の幅に保たれるように、素子チップ2の外形形状に対して開口23の幅w1を調整することが重要である。一例として素子チップ2の形状が、外形形状4mm×4mm、厚み15μm程度であれば、素子チップ2の全周に、平坦部13が0.3mm以上の幅で残されるように設定する。
【0041】
また、台座21の開口23の内壁をテーパ形状とし、さらに開口23のエッジ部分を凸曲面としたことにより、開口23のエッジに対応する素子チップ2部分に、湾曲の際の応力が集中することを防止でき、この部分での素子チップ2の割れを防止できる。
【0042】
一方、素子チップ2において湾曲部11の周囲は、台座21の平坦面25に固定されて湾曲せず、平坦部13として残される。この平坦部13は、湾曲部11の全周にわたって残される。
【0043】
素子チップ2に形成する湾曲部11は、この素子チップ2と組み合わせて用いられるレンズなどの光学系の像面湾曲に合わせた曲率であることが好ましく、例えば10%〜20%程度、一例として17%程度の曲率であることとする。このような湾曲部11の形状は、主に平坦面25側における開口23の内壁形状によって制御される。また湾曲部11の曲率の調整は、平坦面25側における開口23の内壁形状、台座21の膨張係数、樹脂31の硬化時における体積収縮率(硬化収縮率)、さらには開口23内に充填する樹脂31の体積によって調整される。湾曲部11の曲率を大きくしたい場合であれば、台座21の膨張係数が大きい材料で台座21を構成するか、硬化収縮率が大きい樹脂31を用いるか、開口23の容積を大きくして開口23内に充填する樹脂31の体積を増加させる。またこれらを適宜組み合わせて用いる。
【0044】
また、素子チップ2を無理なく目的の曲率を有する三次元に湾曲させるために、素子チップ2の厚みを調整しても良い。このため、湾曲部11の底面積が大きい場合と比較して、湾曲部11の底面積が小さいほど、素子チップ2の厚みを小さくすることが好ましい。
【0045】
以上のようにして、湾曲部11を有する固体撮像素子1-1を形成する。固体撮像素子1の形成後には、必要に応じて台座21および樹脂31を裏面側から薄型化しても良い。また、湾曲部11の形状が保てる場合であれば、素子チップ2を台座21および樹脂31から剥離させて固体撮像素子1-1としても良い。このような素子チップ2の剥離を容易にするために、台座21に素子チップ2を載置する前に、素子チップ2の裏面(台座21に向かう面)に剥離剤を塗布しておいても良い。また、台座21と素子チップ2との固定には、開口23内に充填した熱硬化性の樹脂31を接着剤として用いた。しかしながら、台座21と素子チップ2との固定には、開口23内に樹脂31とは別に、光硬化性樹脂を接着剤として合わせて用いても良い。この場合、膨張させた台座21の平坦面25上に、長波長光の照射によって硬化する光硬化性樹脂からなる接着剤を挟持させて素子チップ2を載置する。この状態で、素子チップ2を透過する波長の光照射によって、接着剤を硬化させて上記固定を行う。一例として、素子チップ2が単結晶シリコンで構成されている場合であれば、波長700nm程度かこれ以上の長波長光を用いた光照射を行う。これにより、素子チップ2を透過して光硬化性樹脂に達した長波長光によって接着剤が硬化する。
【0046】
[第1実施形態の固体撮像素子]
以上の手順で得られた固体撮像素子1-1は、図1に示したように、素子チップ2の中央部が三次元に湾曲した湾曲部11として構成されたものとなる。またこの湾曲部11の周縁部から延設された平坦部13を備えている。平坦部13は湾曲部11の全周に配置されて同一面を構成している。
【0047】
この湾曲部11の凹曲面側には、光電変換部が配列された撮像領域4が配置されている。このような湾曲部11は、この固体撮像素子1-1と組み合わせて用いられるレンズなどの光学系の像面湾曲に合わせ、この像面湾曲に沿って光電変換部が配置されるような曲率であることとする。このため、湾曲部11の底面は円形であることが好ましい。
【0048】
また平坦部13には、撮像領域3の周囲に配置された周辺回路5〜8が設けられている。周辺回路5〜8は、平坦部13に配置され、その一部が湾曲部11に配置されていても良い。尚、平坦部13には、周辺回路5〜8から引き出した端子を設け、この端子を利用して外部回路との接続を図ることができる。この際、端子が平坦部13に設けられたことにより、ボンディングのような外部回路と接続を図るための良好な作業性が確保される。ただし、周辺回路5〜8から引き出した端子は、平坦部13に設けられることに限定されることはなく、湾曲部11に配置されても良く、さらには湾曲部11における凸曲面側に引き出されも良い。
【0049】
さらに、この固体撮像素子1-1は、上述した台座21の開口23内に素子チップ2の湾曲部11を挿入させた状態で、素子チップ2における湾曲部11の凸曲面側に台座21が接着されている。素子チップ2と台座21とは、平坦面25と素子チップ2との間に挟持された樹脂31を接着剤として、湾曲部11を囲む全周において固定されていることとする。また、台座21の開口23には樹脂31が充填され、この樹脂31によって湾曲部11の形状が確保されている。
【0050】
[第1実施形態の効果]
以上のような第1実施形態によれば、台座21において、開口23の周囲の平坦面25に素子チップ2の周縁を固定した状態で、当該開口23を塞いで配置された素子チップ2の中央部分のみが三次元に湾曲される。この湾曲によって形成された湾曲部11の周端から連続する素子チップ2の周縁部は、台座21の平坦面25に固定された平坦部13として残される。したがって、素子チップ2の周縁部を、湾曲によるストレスが加わることのない平坦部13として残すことが可能になる。
【0051】
また、素子チップ2を湾曲させる際には、台座21が収縮することで台座21に固定した素子チップ2に圧縮応力が加わる。これと共に、台座21の開口23内に充填した樹脂31の硬化収縮によって素子チップ2の中央部に引張応力が加わる。これにより、素子チップ2に加わる圧縮応力と引張応力とが打消し合い、ストレスフリーで素子チップ2を湾曲させることが可能になる。
【0052】
また湾曲部11の曲率は、台座21の平坦面25側における開口23の内壁形状、台座21の膨張係数、開口23内に充填する樹脂31の硬化収縮率、さらには樹脂31の体積(開口23の容積)によって調整可能である。このため、湾曲部11の形状および曲率を高精度でかつ広範囲に制御することが可能である。
【0053】
以上より本第1実施形態によれば、素子チップ2の周縁部を湾曲によるストレスが加わることのない平坦部13として残し、中央部のみを三次元の湾曲部11として形成することが可能である。このため、クラックなどの損傷を発生させることなく、三次元の湾曲部11を備えた固体撮像素子1-1を製造することが可能になる。この結果、三次元の湾曲部11を備えた固体撮像素子1-1の信頼性の向上を図ることが可能である。
【0054】
≪3.第2実施形態(ガスの体積収縮を併用して素子チップを湾曲させる例)≫
[第2実施形態の製造方法に用いる台座の構成]
本第2実施形態の製造方法に用いる台座は、第1実施形態において図2を用いて説明した台座21と同様ものが用いられる。
【0055】
[第2実施形態の製造方法]
図4は、第2実施形態の固体撮像素子の製造方法を説明する断面工程図である。図4に示す第2実施形態の製造方法は、上記構成の台座21を用いた固体撮像素子の製造方法であり、以下この図に基づいて製造方法を説明する。
【0056】
先ず図4Aに示すように、台座21において平坦面25が設けられている側と反対側に底板27を配置し、台座21の開口23を一方側から閉塞しておく。
【0057】
次に図4Bに示すように、台座21を加熱して膨張させる。さらに必要に応じて底板27も加熱することで、台座21と同程度に底板27も膨張させる。これにより、台座21を膨張させ、開口23の径を拡大して平坦面25を外側に広げる。この際の加熱温度は、次に説明する素子チップ(2)の裏面に設けた接着剤の硬化温度以上で、素子チップ(2)に影響のない範囲とする。
【0058】
次いで図4Cに示すように、台座21の開口23を塞ぐ状態で、素子チップ2における撮像領域4の形成面(すなわち光電変換部の形成面)を上方に向け、台座21の平坦面25上に素子チップ2を載置する。この素子チップ2における台座21への載置面側には、例えば熱硬化性の樹脂からなる接着剤35を配置する。図示したように、接着剤35は素子チップ2における台座21への載置面側の全面に配置しても良いし、台座21の平坦面25に対応させて素子チップ2の周縁のみに配置してもよい。ただし、開口23を囲む全周において、台座21の平坦面25と素子チップ2との間に接着剤35が挟持されることが重要である。
【0059】
この際、開口23の範囲内に撮像領域4を納め、接着剤35を介して撮像領域4の周囲を、全面にわたって台座21の平坦面25で支持させる。またこの状態では、撮像領域4の周囲に配置される周辺回路5〜8は、平坦面25に対応して配置され、一部が開口23の範囲内に配置されても良いことは、上述した第1実施形態と同様である。
【0060】
この状態で、台座21の平坦面25と素子チップ2との間に挟持させた接着剤35が硬化するまで維持し、素子チップ2を台座21の平坦面25上に固定する。この際、素子チップ2の周縁の全周を平坦面25に固定させることが重要である。例えば、接着剤35としてエポキシ系の樹脂を用いた場合であれば、160℃、15分程度である。以上により、素子チップ2と底板27とによって、加熱された台座21の開口23を密閉する。
【0061】
次に、図4Dに示すように、台座21および底板27を加熱状態から常温にまで冷却し、底板27と素子チップ2とによって密閉された台座21の開口23内のガスも常温にまで冷却する。この冷却過程において、台座21、底板27、および開口23内のガスが収縮する。この際、台座21および底板27は、加熱前の大きさにまで収縮する。
【0062】
このような台座21および開口23内のガスの体積収縮により、素子チップ2において台座21の開口23に対応して配置された中央部分は、開口23の内部に向かって引っ張られ、三次元に湾曲した湾曲部11として整形される。この湾曲部11の湾曲形状は、台座21における平坦面25側における開口23の内壁形状に追従した形状となる。そして台座21の開口23の平面形状と同様に、例えば円形の底部を有する形状に整形される。また、開口23の形状が正方形の4つの角部を曲線にした形状であれば、湾曲部11の頂部に近い部分で円形を底部とする三次元の湾曲が形成されることになる。この際、素子チップ2の周縁の全周を平坦面25に固定したことにより、開口23に対応する素子チップ2の中央部分に対して、樹脂31の硬化収縮による応力と台座21の収縮による応力を均等に加えることができる。これにより、「しわ」を発生させることなく三次元に湾曲させた湾曲部11を形成することができる。このため、素子チップ2の外形形状に対して開口23の幅w1を調整することによって素子チップ2の周縁の全周を平坦面25に対して十分に固定することが重要であることは、第1実施形態と同様である。
【0063】
尚、台座21の開口23の内壁をテーパ形状とし、さらに開口23のエッジ部分を凸曲面としたことにより、開口23のエッジに対応する素子チップ2部分に湾曲の際の力が集中することを防止でき、この部分での素子チップ2の割れを防止できることは、第1実施形態と同様である。
【0064】
また、素子チップ2において湾曲部11の周辺部は、台座21の平坦面25に固定されて湾曲せず、平坦部13として残される。この平坦部13は、湾曲部11の全周にわたって残されることも、第1実施形態と同様である。
【0065】
素子チップ2に形成する湾曲部11が、この素子チップ2と組み合わせて用いられるレンズなどの光学系の像面湾曲に合わせた曲率であることは、第1実施形態と同様である。このような湾曲部11の形状は、主に平坦面25側にける開口23の内壁形状によって制御される。また湾曲部11の曲率の調整は、平坦面25側における開口23の内壁形状、台座21の膨張係数によって調整され、さらに開口23の容積によって調整される。湾曲部11の曲率を大きくしたい場合であれば、台座21の膨張係数が大きい材料で台座21を構成するか、または開口23の容積を大きくして開口23内に密閉されるガスの体積を増加させる。またこれらを適宜組み合わせて用いる。
【0066】
尚、台座21の膨張係数および開口23の容積のみでは、湾曲部11の曲率の調整が不十分である場合、開口23内を排気する排気系37を設け、台座21を常温にまで冷却する際に開口23内のガスを排気系37で排気しても良い。また他の方法として、真空チャンバを用いる方法もある。この場合、真空チャンバ内において台座21上に素子チップ2を載置した状態とし、当該真空チャンバ内を減圧することで台座21の開口23内も減圧する。この状態で膨張させた台座21に対して素子チップ2を張り合わせて開口23内を密閉状態とする。その後、台座21と素子チップ2とを大気放出することにより、素子チップ2を台座21の開口23内に向かって湾曲させる。尚、素子チップ2を無理なく目的の曲率を有する三次元に湾曲させるために、素子チップ2の厚みを調整しても良いことは、第1実施形態と同様である。
【0067】
以上のようにして、湾曲部11を有する固体撮像素子1-2を形成する。固体撮像素子1-2の形成後には、必要に応じて台座21を裏面側から薄型化しても良い。また湾曲部11の形状を安定化させるため、底板27を取り外した後に開口23内に樹脂を充填して硬化させても良い。一方、湾曲部11の形状が保てる場合であれば、素子チップ2を台座21から剥離させても良い。このような素子チップ2の剥離を容易にするために、台座21に素子チップ2を載置する前に、素子チップ2の裏面(台座21に向かう面)に剥離剤を塗布しておいても良い。また、台座21と素子チップ2との固定には、光硬化性樹脂を接着剤として用いても良いことは、第1実施形態と同様である。
【0068】
[第2実施形態の固体撮像素子]
以上の手順で得られた固体撮像素子1-2は、第1実施形態の固体撮像素子において、台座21の開口23内を空間部としたものとなる。またさらに、製造工程において開口23内を排気または減圧し、底板27をパッケージとしてそのまま残して形成された固体撮像素子1-2は、開口23内の空間部が減圧雰囲気に保たれたものとなる。ただし、台座21の開口23内に樹脂を充填した場合には、第1実施形態の固体撮像素子と同様のものとなる。
【0069】
[第2実施形態の効果]
以上のような第2実施形態によれば、第1実施形態と同様に、台座21において、開口23の周囲の平坦面25に素子チップ2の周縁を固定した状態で、当該開口23を塞いで配置された素子チップ2の中央部分のみが三次元に湾曲される。この湾曲によって形成された湾曲部11の周端から連続する周縁部は、台座21の平坦面25に固定された平坦部13として残される。したがって、素子チップ2の周縁部を、湾曲によるストレスが加わることのない平坦部13として残すことが可能になる。
【0070】
また、素子チップ2を湾曲させる際には、台座21が収縮することで台座21に固定した素子チップ2に圧縮応力が加わる。これと共に、台座21の開口23内のガスの体積収縮によって素子チップ2の中央部に引張応力が加わる。これにより、第1実施形態と同様に湾曲によって素子チップ2に加わる圧縮応力と引張応力とが打消し合い、ストレスフリーで素子チップ2を湾曲させることが可能になる。
【0071】
また湾曲部11の曲率(形状)は、台座21の平坦面25側における開口23の内壁形状、および台座21の膨張係数、開口23内に密閉されるガスの体積(開口23の容積)、さらには排気系37からの開口23内のガスの排気によって調整可能である。このため、湾曲部11の曲率を高精度でかつ広範囲に制御することが可能である。
【0072】
以上より本第2実施形態によれば、素子チップ2の周縁部を湾曲によるストレスが加わることのない平坦部13として残して中央部のみを三次元の湾曲部11として形成することが可能である。このため、クラックなどの損傷を発生させることなく、三次元の湾曲部11を備えた固体撮像素子1-2を製造することが可能になる。この結果、第1実施形態と同様に、三次元の湾曲部11を備えた固体撮像素子1-2の信頼性の向上を図ることが可能である。
【0073】
≪4.第3実施形態(台座をパッケージとして用いる例)≫
[第3実施形態の製造方法に用いる台座の構成]
図5は、第3実施形態の製造方法に用いる台座の断面図および平面図である。この図に示す台座21aが、第1実施形態および第2実施形態の製造方法で用いた台座と異なるところは、台座21aがパッケージとして機能する構成であって、平坦面25側が絶縁膜41で覆われ、さらに台座側電極43が設けられているところにある。
【0074】
すなわちこの台座21aは、第1実施形態および第2実施形態の製造方法で用いた台座21を台座本体21とし、その平坦面25側が絶縁膜41で覆われ、さらに絶縁膜41で覆われた平坦面25に台座側電極43を配置した構成である。この台座側電極43は、次に説明する素子チップに設けられたチップ側電極に対応して配置され、絶縁膜41に埋め込まれた状態で配置されている。つまり、台座側電極43の表面は、絶縁膜41と共に平坦面25の一部を構成しているのである。このような台座側電極43は、台座21aの平坦面25から引き出され、さらに外部の部材に接続される構成となっている。尚、台座側電極43は、平坦面25側における開口13の内壁に設けても良い。
【0075】
[第3実施形態の製造方法]
図6は、第3実施形態の固体撮像素子の製造方法を説明する断面工程図である。図6に示す第3実施形態の製造方法は、上記構成の台座21aを用いた固体撮像素子の製造方法であり、以下この図に基づいて製造方法を説明する。
【0076】
先ず図6Aに示すように、台座21aにおいて平坦面25が設けられている側と反対側に底板27を配置し、台座21aの開口23を一方側から閉塞しておく。
【0077】
次に図6Bに示すように、台座21aを加熱して膨張させる。さらに必要に応じて底板27も加熱することで、台座21aと同程度に底板27も膨張させる。これにより、台座21aを膨張させ、開口23の径を拡大して平坦面25を外側に広げる。この際の加熱温度は、次に説明する素子チップ(2a)の裏面に設けた接着剤の硬化温度以上で、素子チップ(2a)に影響のない範囲とする。
【0078】
次いで図6Cに示すように、加熱によって膨張させた台座21aに素子チップ2aを載置する。ここで用いる素子チップ2aは、撮像領域4および周辺回路5〜8が設けられた表面と逆の裏面側に、チップ側電極15を備えている。これらのチップ側電極15は、撮像領域4や周辺回路5〜8から引き出されたものであり、台座側電極43に対応する位置、例えば素子チップ2aにおける周縁部分に配置されている。またこのような素子チップ2aにおけるチップ側電極15の配置面側には、異方性導電接着剤45を配置する。図示したように、この異方性導電接着剤45は素子チップ2aにおけるチップ側電極15の配置面の全面に配置しても良いし、台座21aの平坦面25に対応させて素子チップ2aの周縁のみに配置してもよい。ただし、開口23を囲む全周において、台座21aの平坦面25と素子チップ2aとの間に異方性導電接着剤45が挟持されることが重要である。
【0079】
以上のような素子チップ2aは、台座21aの開口23を塞ぐ状態で、素子チップ2aにおける撮像領域4の形成面(すなわち光電変換部の形成面)を上方に向け、台座21aの平坦面25上に載置される。これにより、台座21aの平坦面25と素子チップ2aとの間に異方性導電接着剤45を挟持させる。
【0080】
この際、素子チップ2aに設けられたチップ側電極15と、加熱によって膨張させた台座21aの平坦面25に設けられた台座側電極43とが1:1で対向配置されるように、台座21aに対して素子チップ2aを位置合わせする。また、台座21aの開口23の範囲内に、素子チップ2aの撮像領域4を納め、異方性導電接着剤45を介して撮像領域4の周縁部分を台座21aの平坦面25で支持する。またこの状態では、撮像領域4の周囲に配置される周辺回路5〜8は、平坦面25に配置され、一部が開口23の範囲内に配置されても良いことは、上述した各実施形態と同様である。
【0081】
異方性導電接着剤45が、例えば熱硬化性の樹脂に導電性微粒子を分散させたものである場合、台座21aの平坦面25と素子チップ2aとの間に異方性導電接着剤45を挟持させた状態を維持し、素子チップ2aを台座21aの平坦面25上に固定する。この際、素子チップ2aの周縁の全周を平坦面25に固定させることが重要である。例えば、異方性導電接着剤45にエポキシ樹脂を用いた場合であれば、160℃、15分程度である。以上により、素子チップ2aと底板27とによって、加熱された台座21aの開口23を密閉する。また、異方性導電接着剤45により、台座側電極43とチップ側電極15とを接続する。
【0082】
次に、図6Dに示すように、台座21aおよび底板27を加熱状態から常温にまで冷却し、底板27と素子チップ2aとによって密閉された台座21aの開口23内のガスも常温にまで冷却する。この冷却過程において、台座21a、底板27、および開口23内のガスが収縮する。この際、台座21aおよび底板27は、加熱前の大きさにまで収縮する。
【0083】
このような台座21aおよび開口23内のガスの体積収縮により、素子チップ2aにおいて台座21aの開口23に対応して配置された中央部分は、開口23の内部に向かって引っ張られ、三次元に湾曲した湾曲部11として整形される。この湾曲部11の湾曲形状は、台座21aにおける平坦面25側における開口23の内壁形状に追従した形状となる。そして台座21aの開口23の平面形状と同様に、例えば円形の底部を有する形状に整形される。また、開口23の形状が正方形の4つの角部を曲線にした形状であれば、湾曲部11の頂部に近い部分で円形を底部とする三次元の湾曲が形成されることになる。また、台座21aと素子チップ2aとの固定には、光硬化性樹脂を接着剤(異方性導電接着剤)として用いても良いことは、他の実施形態と同様である。この場合、光硬化性樹脂に導電性微粒子を分散させた異方性導電接着剤45を用いる。
【0084】
尚、台座21aの開口23の内壁をテーパ形状とし、さらに開口23のエッジ部分を凸曲面としたことにより、開口23のエッジに対応する素子チップ2a部分に湾曲の際の力が集中することを防止でき、この部分での素子チップ2aの割れを防止できることは、他の実施形態と同様である。
【0085】
また、素子チップ2aにおいて湾曲部11の周辺部は、台座21aの平坦面25に固定されて湾曲せず、平坦部13として残される。この平坦部13は、湾曲部11の全周にわたって残されることも他の実施形態と同様である。
【0086】
素子チップ2aに形成する湾曲部11は、この素子チップ2aと組み合わせて用いられるレンズなどの光学系の像面湾曲に合わせた曲率であることは、他の実施形態と同様である。このような曲率の調整は、第2実施形態と同様であり、主に平坦面25側における開口23の内壁形状、および台座21aの膨張係数によって調整され、さらに開口23の容積によって調整される。さらに曲率の調整を十分に行うために、台座21aを常温にまで冷却する際に開口23内のガスを排気系37で排気しても良いこと、さらに減圧状態で貼り合わせた後に大気放出する方法を組み合わせても良いことも第2実施形態と同様である。また、素子チップ2aを無理なく目的の曲率を有する三次元に湾曲させるために、素子チップ2aの厚みを調整しても良いことは、他の実施形態と同様である。
【0087】
以上のようにして、湾曲部11を有する固体撮像素子1-3を形成する。固体撮像素子1-3の形成後には、必要に応じて台座21aを裏面側から薄型化しても良い。また湾曲部11の形状を安定化させるため、底板27を取り外した後に開口23内に樹脂を充填して硬化させても良い。
【0088】
[第3実施形態の固体撮像素子]
以上の手順で得られた固体撮像素子1-3は、素子チップ2aにおける湾曲部11の凸曲面側に、上述した台座21aがパッケージとして接着されたものとなる。素子チップ2aは、第1実施形態の固体撮像素子(1-1)の素子チップ(2)に対して、チップ側電極15を設けたものとなる。このチップ側電極15は、平坦部13において撮像領域4および周辺回路5〜8が設けられた表面と逆の裏面側に配置され、パッケージとして構成された台座21aに配置した台座側電極43に対して1:1で接続されている。チップ側電極15と台座側電極43との接続は、台座21aの平坦面25と素子チップ2aとの間に挟持された異方性導電接着剤45によってなされている。また、製造工程において開口23内を排気または減圧し、底板27をパッケージとしてそのまま残して形成された固体撮像素子1-3は、開口23内の空間部が減圧雰囲気に保たれたものとなる。
【0089】
[第3実施形態の効果]
以上のような第3実施形態であっても、他の実施形態と同様に、台座21aにおいて、開口23の周囲の平坦面25に素子チップ2aの周縁を固定した状態で、当該開口23を塞いで配置された素子チップ2aの中央部分のみが三次元に湾曲される。この湾曲によって形成された湾曲部11の周端から連続する周縁部は、台座21aの平坦面25に固定された平坦部13として残される。したがって、素子チップ2aの周縁部を、湾曲によるストレスが加わることのない平坦部13として残すことが可能になる。
【0090】
また、素子チップ2aを湾曲させる際には、台座21aが収縮することで台座21aに固定した素子チップ2aに圧縮応力が加わる。これと共に、台座21aの開口23内のガスの体積収縮によって素子チップ2aの中央部に引張応力が加わる。これにより、他の実施形態と同様に、湾曲によって素子チップ2aの中央に加わる圧縮応力と引張応力とが打消し合い、ストレスフリーで素子チップ2aを湾曲させることが可能になる。
【0091】
また湾曲部11の曲率は、台座21aの膨張係数、開口23内に密閉されるガスの体積(開口23の容積)、さらには排気系37からの開口23内のガスの排気によって調整可能である。このため、湾曲部11の曲率を高精度でかつ広範囲に制御することが可能である。
【0092】
以上より本第3実施形態によれば、素子チップ2aの周縁部を湾曲によるストレスが加わることのない平坦部13として残して中央部のみを三次元の湾曲部11として形成することが可能である。このため、クラックなどの損傷を発生させることなく、三次元の湾曲部11を備えた固体撮像素子1-3を製造することが可能になる。この結果、他の実施形態と同様に、三次元の湾曲部11を備えた固体撮像素子1-3の信頼性の向上を図ることが可能である。
【0093】
さらに本第3実施形態によれば、台座21aをパッケージとして用いたことにより、素子チップ2aと外部端子として台座側電極43付のパッケージとを組み立てる工程を削減することが可能である。また素子チップ2aの平坦部13における撮像領域4が配置された面側に、周辺回路5〜8から引き出した端子を設け、この端子を利用して外部回路との接続を図ることもできる。この際、端子が平坦部13に設けられたことにより、ボンディングのような外部回路と接続を図るための良好な作業性が確保される。
【0094】
尚、本第3実施形態は、第1実施形態で説明した樹脂の硬化収縮によって湾曲部を形成する方法と組み合わせることも可能である。この場合、第1実施形態において用いた樹脂として、硬化収縮性を有する異方性導電接着剤を用いることとする。
【0095】
≪5.第4実施形態(真空吸着によって台座に素子チップを固定する例)≫
[第4実施形態の製造方法に用いる台座の構成]
図7は、第4実施形態の製造方法に用いる台座の断面図および平面図である。図7に示す台座21bが、第1実施形態および第2実施形態の製造方法で用いた台座と異なるところは、台座21bが素子チップを固定するための排気溝51を備えているところにあり、他の構成は同様であることとする。
【0096】
すなわち、この台座21bは、第1実施形態および第2実施形態の製造方法で用いた台座21を台座本体21とし、その平坦面25に排気溝51を備えている。排気溝51は、台座21bにおける開口23の全周を囲む状態で設けられている。この排気溝51には、排気系53が接続され、排気溝51内のガスを排気する構成となっている。
【0097】
[第4実施形態の製造方法]
図8は、第4実施形態の固体撮像素子の製造方法を説明する断面工程図である。図8に示す第4実施形態の製造方法は、上記構成の台座21bを用いた固体撮像素子の製造方法であり、以下この図に基づいて製造方法を説明する。
【0098】
先ず図8Aに示すように、台座21bにおいて平坦面25が設けられている側と反対側に底板27を配置し、台座21bの開口23を一方側から閉塞しておく。
【0099】
次に図8Bに示すように、台座21bを加熱して膨張させる。さらに必要に応じて底板27も加熱することで、台座21bと同程度に底板27も膨張させる。これにより、台座21bを膨張させ、開口23の径を拡大して平坦面25を外側に広げる。この際の加熱温度は、次に説明する素子チップ(2)に影響のない範囲とし、例えば300℃以下とする。
【0100】
次いで図8Cに示すように、台座21bの開口23を塞ぐ状態で、素子チップ2における撮像領域4の形成面(すなわち光電変換部の形成面)を上方に向け、台座21bの平坦面25上に素子チップ2を載置する。この際、開口23の範囲内に撮像領域4を納め、撮像領域4の周縁部分を台座21bの平坦面25で支持する。さらに、素子チップ2によって、台座21bの平坦面25に設けた排気溝51の全面を塞ぐ。またこの状態では、撮像領域4の周囲に配置される周辺回路5〜8は、平坦面25に配置され、一部が開口23の範囲内に配置されても良いことは、上述した他の実施形態と同様である。
【0101】
この状態で、排気溝51内のガスを排気系53によって排気して、排気溝51内を減圧し、加熱によって膨張させた台座21bの平坦面25に素子チップ2を真空吸着によって固定する。この際、素子チップ2の周縁の全周を平坦面25に固定させることが重要である。これにより、素子チップ2と底板27とによって、加熱された台座21bの開口23を密閉する。
【0102】
次に、図8Dに示すように、台座21bに対する素子チップ2の固定を維持しつつ、台座21bおよび底板27を加熱状態から常温にまで冷却し、底板27と素子チップ2とによって密閉された台座21bの開口23内のガスも常温にまで冷却する。この冷却過程において、台座21b、底板27、および開口23内のガスが収縮する。この際、台座21bおよび底板27は、加熱前の大きさにまで収縮する。
【0103】
このような台座21bおよび開口23内のガスの体積収縮により、素子チップ2の中央部分は、開口23の内部に向かって引っ張られ、三次元に湾曲した湾曲部11として整形される。この湾曲部11の湾曲形状は、台座21bの平坦面25側における開口23の内壁形状に追従した形状となる。そして台座21bの開口23の平面形状と同様に、例えば円形の底部を有する形状に整形される。また、開口23の形状が正方形の4つの角部を曲線にした形状であれば、湾曲部11の頂部に近い部分で円形を底部とする三次元の湾曲が形成されることになる。この際、素子チップ2の周縁の全周を真空吸着によって平坦面25に固定したことにより、開口23に対応する素子チップ2の中央部分に対して、開口23内のガスの体積収縮による応力と台座21bの収縮による応力とを均等に加えることができる。これにより、「しわ」を発生させることなく三次元に湾曲させた湾曲部11を形成することができる。このため、素子チップ2の外形形状に対して開口23の幅w1を調整することによって素子チップ2の周縁の全周を平坦面25に対して十分に固定することが重要であることは、他の実施形態と同様である。
【0104】
尚、台座21bの開口23の内壁をテーパ形状とし、さらに開口23のエッジ部分を凸曲面としたことにより、開口23のエッジに対応する素子チップ2部分に湾曲の際の力が集中することを防止でき、この部分での素子チップ2の割れを防止できることは、他の実施形態と同様である。
【0105】
また、素子チップ2において湾曲部11の周辺部は、台座21bの平坦面25に固定されて湾曲せず、平坦部13として残される。この平坦部13は、湾曲部11の全周にわたって残されることも他の実施形態と同様である。
【0106】
素子チップ2に形成される湾曲部11は、この素子チップ2と組み合わせて用いられるレンズなどの光学系の像面湾曲に合わせた曲率であることは、他の実施形態と同様である。このような曲率の調整は、第2実施形態および第3実施形態と同様であり、主に平坦面25側における開口23の内壁形状、および台座21bの膨張係数によって調整され、さらに開口23の容積によって調整される。また曲率の調整を十分に行うために、台座21bを常温にまで冷却する際に開口23内のガスを排気系37で排気しても良いこと、さらに減圧状態で貼り合わせた後に大気放出する方法を組み合わせても良いことも第2実施形態および第3実施形態と同様である。また、素子チップ2を無理なく目的の曲率を有する三次元に湾曲させるために、素子チップ2の厚みを調整しても良いことも、他の実施形態と同様である。
【0107】
以上のようにして、湾曲部11を有する固体撮像素子1-4を形成する。固体撮像素子1-4の形成後には、さらに湾曲部11の形状を安定化させるため、台座21bに素子チップ2を真空吸着させた状態で、底板27を取り外して開口23内に樹脂を充填して硬化させ、台座21bと素子チップ2とを一体化しても良い。この場合、台座21bと素子チップ2とを一体化した後、台座21bを裏面側から薄型化しても良い。一方、湾曲部11の形状が保てる場合であれば、素子チップ2と台座21bとを一体化させる必要はなく、台座21bから素子チップ2を外して固体撮像素子として用いても良い。
【0108】
[第4実施形態の固体撮像素子]
以上の手順で得られた固体撮像素子1-4は、素子チップ2の中央部が三次元に湾曲した湾曲部11として構成されたものとなる。またこの湾曲部11の周縁部から延設された平坦部13を備えている。平坦部13は湾曲部11の全周に配置されて同一面を構成している。
【0109】
この湾曲部11の凹曲面側には、光電変換部が配列された撮像領域4が配置されている。このような湾曲部11は、この固体撮像素子1-4と組み合わせて用いられるレンズなどの光学系の像面湾曲に合わせ、この像面湾曲に沿って光電変換部が配置されるような曲率であることとする。このため、湾曲部11の底面は円形であることが好ましい。
【0110】
また平坦部13には、撮像領域4の周囲に配置された周辺回路5〜8が設けられている。周辺回路5〜8は、その一部が湾曲部11に配置されていても良い。尚、平坦部13には、周辺回路5〜8から引き出した端子を設け、この端子を利用して外部回路との接続を図ることができる。この際、端子が平坦部13に設けられたことにより、ボンディングのような外部回路と接続を図るための良好な作業性が確保されることは、他の実施形態と同様である。
【0111】
さらに、この固体撮像素子1-4は、台座21bによって素子チップ2が湾曲部11の凸曲面側から支持され、台座21bの開口23内に樹脂が充填された構成ともなる。この場合、開口23内に充填した樹脂によって湾曲部11の形状が確保されたものとなる。
【0112】
[第4実施形態の効果]
以上のような第4実施形態であっても、他の実施形態と同様に、台座21bにおいて、開口23の周囲の平坦面25に素子チップ2の周縁を固定した状態で、当該開口23を塞いで配置された素子チップ2の中央部分のみが三次元に湾曲される。この湾曲によって形成された湾曲部11の周端から連続する周縁部は、台座21bの平坦面25に固定された平坦部13として残される。したがって、素子チップ2の周縁部を、湾曲によるストレスが加わることのない平坦部13として残すことが可能になる。
【0113】
また、素子チップ2を湾曲させる際には、台座21bが収縮することで台座21bに固定した素子チップ2に圧縮応力が加わる。これと共に、台座21bの開口23内のガスの体積収縮によって素子チップ2の中央部に引張応力が加わる。これにより、他の実施形態と同様に、湾曲によって素子チップ2の中央に加わる圧縮応力と引張応力とが打消し合い、ストレスフリーで素子チップ2を湾曲させることが可能になる。
【0114】
また湾曲部11の曲率は、台座21bにおける平坦面25側の内壁形状、台座21bの膨張係数、開口23内に密閉されるガスの体積(開口23の容積)、さらには排気系37からの開口23内のガスの排気によって調整可能である。このため、湾曲部11の曲率を高精度でかつ広範囲に制御することが可能である。
【0115】
以上より本第4実施形態によれば、素子チップ2の周縁部を湾曲によるストレスが加わることのない平坦部13として残して中央部のみを三次元の湾曲部11として形成することが可能である。このため、クラックなどの損傷を発生させることなく、三次元の湾曲部11を備えた固体撮像素子1-4を製造することが可能になる。この結果、他の実施形態と同様に、三次元の湾曲部11を備えた固体撮像素子1-4の信頼性の向上を図ることが可能である。
【0116】
尚、上述の第1実施形態〜第4実施形態では、MOS型の固体撮像素子を有する素子チップを適用した。しかしながら本開示は、CCD型の固体撮像素子を有する素子チップを適用することもできる。MOS型固体撮像素子、CCD型固体撮像素子のいずれも、裏面照射型あるいは表面照射型を適用することができる。本開示の実施の形態では、裏面照射型のMOS型固体撮像素子を有する撮像チップを用いるときは、受光面積が大きくとれて、より感度の向上が図れて好ましい。
【0117】
≪6.第5実施形態(電子機器の実施形態)≫
上述の各実施形態で説明した本開示に係る固体撮像素子は、例えばデジタルカメラやビデオカメラ等のカメラシステムや、撮像機能を有する携帯電話、あるいは撮像機能を備えた他の機器、などの電子機器に適用することができる。
【0118】
図9は、本開示に係る電子機器の一例として、固体撮像素子を用いたカメラの構成図を示す。本実施形態例に係るカメラは、静止画像又は動画撮影可能なビデオカメラを例としたものである。本実施形態例のカメラ91は、固体撮像素子1と、固体撮像素子1の受光センサ部に入射光を導く光学系93と、シャッタ装置94と、固体撮像素子1を駆動する駆動回路95と、固体撮像素子1の出力信号を処理する信号処理回路96とを有する。
【0119】
固体撮像素子1には、上述した各実施形態で説明した三次元の湾曲部を備えた固体撮像素子(1-1〜1-4)が適用される。光学系93は、複数または単数の光学レンズから構成された光学レンズ系としても良い。ここでは、固体撮像素子1として光学系93の像面湾曲に沿った三次元の湾曲部を有する固体撮像素子(1-1〜1-4)が用いられるため、光学系93を構成する光学レンズは少ない枚数であっても良い。このような光学系93は、固体撮像素子1において、撮像領域が設けられた素子チップの湾曲部の凹曲面側に配置され、この光学系93の像面湾曲に沿って素子チップの湾曲部の凹曲面が配置される構成となっている。これにより、被写体からの像光(入射光)を、固体撮像素子1の撮像面(撮像領域)上に結像させ、固体撮像素子1内に一定期間信号電荷を蓄積させる。
【0120】
シャッタ装置94は、固体撮像素子1への光照射期間及び遮光期間を制御する。駆動回路95は、固体撮像素子1の転送動作及びシャッタ装置94のシャッタ動作を制御する駆動信号を供給する。駆動回路95から供給される駆動信号(タイミング信号)により、固体撮像素子1の信号転送を行う。信号処理回路96は、各種の信号処理を行う。信号処理が行われた映像信号は、メモリなどの記憶媒体に記憶され、或いは、モニタに出力される。
【0121】
以上説明した本実施形態に係る電子機器によれば、上述した第1実施形態〜第4実施形態で説明したように、三次元湾曲部を備えつつもクラック発生のない固体撮像素子を用いたことにより、この固体撮像素子を用いた電子機器の信頼性の向上を図ることが可能である。
【0122】
尚、本技術は以下のような構成も取ることができる。
(1)
一主面側に光電変換部を配列した素子チップを作製することと、
前記素子チップよりも膨張係数の大きい材料を用いて構成されると共に、開口を有し当該開口の周囲が平坦面として整形された台座を用意することと、
前記台座を加熱して膨張させることと、
前記台座の前記開口を塞ぐ状態で当該台座の平坦面上に前記素子チップを載置することと、
前記膨張させた台座の平坦面に前記素子チップを固定した状態で当該台座を冷却して収縮させることにより、当該素子チップにおいて前記開口に対応する部分を三次元に湾曲させることとを含む
固体撮像素子の製造方法。
【0123】
(2)
前記膨張させた台座の平坦面に対する前記素子チップの固定は、前記開口の全周においてなされる
(1)に記載の固体撮像素子の製造方法。
【0124】
(3)
前記台座の開口は、前記平坦面側の開口形状が円形である
(1)または(2)に記載の固体撮像素子の製造方法。
【0125】
(4)
前記素子チップの一主面には、前記光電変換部が設けられた撮像領域の周囲に周辺回路を設け、
前記台座の平坦面上に前記素子チップを載置する工程では、前記撮像領域を前記開口の範囲内に配置する
(1)〜(3)の何れかに記載の固体撮像素子の製造方法。
【0126】
(5)
前記台座の平坦面上に前記素子チップを載置する前に、前記開口内に未硬化の樹脂を充填し、
前記台座の平坦面上に前記素子チップを載置する際には、前記光電変換部が配列された一主面側を上方に向けて当該台座の平坦面上に当該素子チップを載置し、
前記台座を冷却して収縮させる際には、前記樹脂の冷却による体積収縮により前記素子チップを前記開口側に向かって湾曲させる
(1)〜(4)の何れかに記載の固体撮像素子の製造方法。
【0127】
(6)
前記台座の平坦面上に前記素子チップを載置する際には、前記光電変換部が配列された一主面側を上方に向けて当該台座の平坦面上に当該素子チップを載置し、
前記台座を冷却して収縮させる際には、前記開口内を密閉して当該開口内のガスを冷却して体積収縮させることにより前記素子チップを当該開口側に向かって湾曲させる
(1)〜(4)の何れかに記載の固体撮像素子の製造方法。
【0128】
(7)
前記台座の開口は、前記素子チップを載置する平坦面側に向かって開口径が広がる形状を有する
(1)〜(6)の何れかに記載の固体撮像素子の製造方法。
【0129】
(8)
前記台座の平坦面と前記素子チップとは、当該台座の平坦面と当該素子チップとの間に挟持させた接着剤によって固定する
(1)〜(7)の何れかに記載の固体撮像素子の製造方法。
【0130】
(9)
前記台座の平坦面には、当該台座の外部に連通する排気溝が設けられ、
前記台座の平坦面上に前記素子チップを固定する際には、前記排気溝からの吸引によって当該台座の平坦面に当該素子チップを真空吸着する
(1)〜(7)の何れかに記載の固体撮像素子の製造方法。
【0131】
(10)
前記素子チップにおいて前記台座に向かう面にはチップ側電極が配置され、
前記台座の平坦面には台座側電極が配置され、
前記台座の平坦面上に前記素子チップを固定する際には、当該台座の平坦面と当該素子チップとの間に異方性導電接着剤を挟持させることにより、前記チップ側電極と前記台座側電極とを接続する
(1)〜(7)の何れかに記載の固体撮像素子の製造方法。
【0132】
(11)
三次元に湾曲した湾曲部と当該湾曲部の周端から延設された平坦部とを有する素子チップと、
前記素子チップにおける前記湾曲部の凹曲面側に配列された光電変換部とを備えた
固体撮像素子。
【0133】
(12)
前記素子チップにおける平坦部は、当該素子チップにおける湾曲部の全周に配置されて同一面を構成している
(11)に記載の固体撮像素子。
【0134】
(13)
前記湾曲部の底面は円形である
(11)または(12)に記載の固体撮像素子。
【0135】
(14)
前記素子チップにおいて前記光電変換部が配列された撮像領域の周囲に周辺回路が配置された
(11)〜(13)の何れかに記載の固体撮像素子。
【0136】
(15)
前記素子チップよりも膨張係数の大きい材料を用いて構成されると共に、開口を有し当該開口の周囲が平坦面として整形された台座を備え、
前記台座の開口内に前記素子チップの湾曲部を挿入させた状態で、当該台座の平坦面に当該素子チップの前記平坦部を固定させた
(11)〜(14)の何れかに記載の固体撮像素子。
【0137】
(16)
前記台座の開口内には樹脂が充填されている
(15)に記載の固体撮像素子。
【0138】
(17)
前記台座の開口は、前記素子チップを載置する平坦面側に向かって開口径が広がる形状を有する
(15)または(16)に記載の固体撮像素子。
【0139】
(18)
前記台座の平坦面と前記素子チップとの間に接着剤が挟持された
(15)〜(17)の何れかに記載の固体撮像素子。
【0140】
(19)
前記素子チップにおいて前記台座に向かう面にはチップ側電極が配置され、
前記台座の平坦面には台座側電極が配置され、
前記台座の平坦面と前記素子チップとの間には、前記チップ側電極と前記台座側電極とを接続する異方性導電接着剤が挟持された
(15)〜(17)の何れかに記載の固体撮像素子。
【0141】
(20)
三次元に湾曲した湾曲部と当該湾曲部の周端から延設された平坦部とを有する素子チップと、
前記素子チップにおける前記湾曲部の凹曲面側に配列された光電変換部と、
前記光電変換部に入射光を導く光学系とを備えた
電子機器。
【符号の説明】
【0142】
1,1-1,1-2,1-3,1-4…固体撮像素子、2,2a…素子チップ、3…画素(光電変換部)、4…撮像領域、11…湾曲部、13…平坦部、15…チップ側電極、21,21a,21b…台座、23…開口、25…平坦面、31…樹脂(接着剤)、w1…開口径、35…接着剤、43…台座側電極、45…異方性導電接着剤、51…排気溝、93…光学系、91…電子機器。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一主面側に光電変換部を配列した素子チップを作製することと、
前記素子チップよりも膨張係数の大きい材料を用いて構成されると共に、開口を有し当該開口の周囲が平坦面として整形された台座を用意することと、
前記台座を加熱して膨張させることと、
前記台座の前記開口を塞ぐ状態で当該台座の平坦面上に前記素子チップを載置することと、
前記膨張させた台座の平坦面に前記素子チップを固定した状態で当該台座を冷却して収縮させることにより、当該素子チップにおいて前記開口に対応する部分を三次元に湾曲させることとを含む
固体撮像素子の製造方法。
【請求項2】
前記膨張させた台座の平坦面に対する前記素子チップの固定は、前記開口の全周においてなされる
請求項1記載の固体撮像素子の製造方法。
【請求項3】
前記台座の開口は、前記平坦面側の開口形状が円形である
請求項1記載の固体撮像素子の製造方法。
【請求項4】
前記素子チップの一主面には、前記光電変換部が設けられた撮像領域の周囲に周辺回路を設け、
前記台座の平坦面上に前記素子チップを載置する工程では、前記撮像領域を前記開口の範囲内に配置する
請求項1記載の固体撮像素子の製造方法。
【請求項5】
前記台座の平坦面上に前記素子チップを載置する前に、前記開口内に未硬化の樹脂を充填し、
前記台座の平坦面上に前記素子チップを載置する際には、前記光電変換部が配列された一主面側を上方に向けて当該台座の平坦面上に当該素子チップを載置し、
前記台座を冷却して収縮させる際には、前記樹脂の硬化収縮により前記素子チップを前記開口側に向かって湾曲させる
請求項1記載の固体撮像素子の製造方法。
【請求項6】
前記台座の平坦面上に前記素子チップを載置する際には、前記光電変換部が配列された一主面側を上方に向けて当該台座の平坦面上に当該素子チップを載置し、
前記台座を冷却して収縮させる際には、前記開口内を密閉して当該開口内のガスを冷却して体積収縮させることにより前記素子チップを当該開口側に向かって湾曲させる
請求項1記載の固体撮像素子の製造方法。
【請求項7】
前記台座の開口は、前記素子チップを載置する平坦面側に向かって開口径が広がる形状を有する
請求項1記載の固体撮像素子の製造方法。
【請求項8】
前記台座の平坦面と前記素子チップとは、当該台座の平坦面と当該素子チップとの間に挟持させた接着剤によって固定する
請求項1記載の固体撮像素子の製造方法。
【請求項9】
前記台座の平坦面には、当該台座の外部に連通する排気溝が設けられ、
前記台座の平坦面上に前記素子チップを固定する際には、前記排気溝からの吸引によって当該台座の平坦面に当該素子チップを真空吸着する
請求項1記載の固体撮像素子の製造方法。
【請求項10】
前記素子チップにおいて前記台座に向かう面にはチップ側電極が配置され、
前記台座の平坦面には台座側電極が配置され、
前記台座の平坦面上に前記素子チップを固定する際には、当該台座の平坦面と当該素子チップとの間に異方性導電接着剤を挟持させることにより、前記チップ側電極と前記台座側電極とを接続する
請求項1記載の固体撮像素子の製造方法。
【請求項11】
三次元に湾曲した湾曲部と当該湾曲部の周端から延設された平坦部とを有する素子チップと、
前記素子チップにおける前記湾曲部の凹曲面側に配列された光電変換部とを備えた
固体撮像素子。
【請求項12】
前記素子チップにおける平坦部は、当該素子チップにおける湾曲部の全周に配置されて同一面を構成している
請求項11記載の固体撮像素子。
【請求項13】
前記湾曲部の底面は円形である
請求項11記載の固体撮像素子。
【請求項14】
前記素子チップにおいて前記光電変換部が配列された撮像領域の周囲に周辺回路が配置された
請求項11記載の固体撮像素子。
【請求項15】
前記素子チップよりも膨張係数の大きい材料を用いて構成されると共に、開口を有し当該開口の周囲が平坦面として整形された台座を備え、
前記台座の開口内に前記素子チップの湾曲部を挿入させた状態で、当該台座の平坦面に当該素子チップの前記平坦部を固定させた
請求項11記載の固体撮像素子。
【請求項16】
前記台座の開口内には樹脂が充填されている
請求項15記載の固体撮像素子。
【請求項17】
前記台座の開口は、前記素子チップを載置する平坦面側に向かって開口径が広がる形状を有する
請求項15記載の固体撮像素子。
【請求項18】
前記台座の平坦面と前記素子チップとの間に接着剤が挟持された
請求項15記載の固体撮像素子。
【請求項19】
前記素子チップにおいて前記台座に向かう面にはチップ側電極が配置され、
前記台座の平坦面には台座側電極が配置され、
前記台座の平坦面と前記素子チップとの間には、前記チップ側電極と前記台座側電極とを接続する異方性導電接着剤が挟持された
請求項15記載の固体撮像素子。
【請求項20】
三次元に湾曲した湾曲部と当該湾曲部の周端から延設された平坦部とを有する素子チップと、
前記素子チップにおける前記湾曲部の凹曲面側に配列された光電変換部と、
前記光電変換部に入射光を導く光学系とを備えた
電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−182244(P2012−182244A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−43015(P2011−43015)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】