説明

固体撮像装置、半導体装置及びカメラ

【課題】高感度及び広ダイナミックレンジを実現するとともに、画像の時間的なずれの発生を抑制する。
【解決手段】本発明に係る固体撮像装置は、2次元状に複数の画素ブロック80が配置されている画素アレイ2を備える固体撮像装置101であって、複数の画素ブロック80の各々は、第1の色の光を第1の色信号に変換する第1色信号画素と、第1の色と異なる第2の色の光を第2の色信号に変換する第2色信号画素と、可視光を第1輝度信号に変換する第1白色画素とを含み、第1白色画素は、透過率を電気的に制御可能な光減衰フィルタ16と、光減衰フィルタ16を透過した可視光を受光し、受光した可視光を第1輝度信号に変換するフォトダイオード11とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体撮像装置、半導体装置及びカメラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の固体撮像装置は、カラーフィルタによって所望の波長帯を選別してフォトダイオードで検出する構成であるが、カラーフィルタによって光が吸収される分、フォトダイオードに到達する光量は減少する。これに対して、光を分光せずにフォトダイオードで検出する白色画素を設けることで高感度化を実現する方法が特許文献1に開示されている。
【0003】
図25は、特許文献1で開示された固体撮像装置の画素配置を示す図である。通常の3原色ベイヤー配列では、画素ブロックは、赤色(R)画素と、2個の緑色(G)画素と、青色(B)画素とから構成されているが、特許文献1では、2個あるG画素の1つを白色画素(W画素)に置き換えている。当該固体撮像装置では、この白色画素を用いて輝度信号を検出する。この構成により、全可視光線領域の光を検出する白色画素を用いることによって画素ブロックの輝度信号が増大する。これにより、輝度S/N比が向上する。さらに、白色画素で得られた信号の強度を色比率によってR、G、B信号に分解できることから、R、G、B信号のS/N比を増大できる。これにより、高感度で色再現性のよい撮像装置を実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−022521号公報
【特許文献2】特開2009−296276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図25に示す白色画素は他の色信号を得る画素に比べて感度が高い反面、飽和速度が速い。これにより、高照度下では白色画素の輝度信号が飽和してしまうので、画質の劣化の原因となる。また、蓄積時間を短くすることで白色画素の飽和を抑制できるが、この場合、色信号の信号強度が弱くなりS/N比を低下させてしまう。
【0006】
このように、特許文献1記載の固体撮像装置は、高輝度の被写体の撮像する場合及び撮像面照度が高い場合に、画質の劣化が避けられない。この課題に対して白色画素とその他の色信号画素とに異なる蓄積時間を用いることで白色画素における速い飽和を抑制する構成が特許文献2に開示されている。
【0007】
図26は、特許文献2で開示された画素配置を示す図である。図26に示す構成では、白色画素(W画素)と色信号画素(RGB画素)とには別々の転送信号線が接続されている。このように、W画素転送信号線と、色信号画素転送信号線とに制御信号を独立して供給することにより、複数の色信号画素と、複数のW画素とを独立して制御できる。
【0008】
これにより、図26の構成は、W画素の飽和を抑制できるので、高照度下でも撮像が可能な固体撮像装置を実現できる。
【0009】
しかしながら、この構成では新たな配線を配置しなければならない。これは開口率の低下の原因となるので、画素の微細化の妨げとなる。また、同じ画素ブロック内の画素間で蓄積時間を異ならせるため、又は、撮像領域内の画素間で蓄積時間を異ならせるためには、シャッターを同時に切ることができない。これにより、画像に時間的な「ずれ」が発生してしまう。
【0010】
このように、従来の技術は、開口率を低下させることなく、かつ時間的なずれを発生させずに高感度化と広ダイナミックレンジ化を同時に実現することが困難であるという課題を有する。
【0011】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたものであり、高感度及び広ダイナミックレンジを実現できるとともに、画像の時間的なずれの発生を抑制できる固体撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するため、本発明の一形態に係る固体撮像装置は、2次元状に複数の画素ブロックが配置されている画素アレイを備える固体撮像装置であって、前記複数の画素ブロックの各々は、第1の色の光を第1の色信号に変換する第1色信号画素と、前記第1の色と異なる第2の色の光を第2の色信号に変換する第2色信号画素と、可視光を第1輝度信号に変換する第1白色画素とを含み、前記第1白色画素は、透過率を電気的に制御可能な第1光減衰フィルタと、前記第1光減衰フィルタを透過した可視光を受光し、受光した前記可視光を前記第1輝度信号に変換する第1光電変換部とを備える。
【0013】
この構成によれば、本発明の一形態に係る固体撮像装置は、白色画素を有することにより、高感度化を実現できる。さらに、本発明の一形態に係る固体撮像装置は、第1光減衰フィルタの透過率を制御することで、高輝度の被写体及び低輝度の被写体を撮像できるので、広ダイナミックレンジを実現できる。さらに、本発明の一形態に係る固体撮像装置は、第1光減衰フィルタの透過率を制御することで広ダイナミックレンジを実現しているので、白色画素と色信号画素との蓄積時間を同一にできる。よって、本発明の一形態に係る固体撮像装置は、画像の時間的なずれの発生を抑制できる。
【0014】
また、前記固体撮像装置は、さらに、前記第1輝度信号が飽和しているか否かを判定する飽和判定部と、前記飽和判定部により前記第1輝度信号が飽和していると判定された場合、前記第1光減衰フィルタの透過率を下げる透過率制御部とを備えてもよい。
【0015】
この構成によれば、本発明の一形態に係る固体撮像装置は、高輝度の被写体を撮影する場合には、第1光減衰フィルタの透過率を下げることにより、白色画素の飽和を抑制できる。よって、本発明の一形態に係る固体撮像装置は、高照度下でも撮像が可能である。
【0016】
また、前記画素ブロックの各々は、2行2列に配置された4個の画素を含み、前記4個の画素は、前記第1色信号画素と、前記第2色信号画素と、前記第1の色及び前記第2の色と異なる第3の色の光を第3の色信号に変換する第3色信号画素と、前記第1白色画素とであってもよい。
【0017】
この構成によれば、本発明の一形態に係る固体撮像装置は、解像度を低下させることなく、高感度化を実現できる。
【0018】
また、前記第1の色は赤色であり、前記第2の色は青色であり、前記第3の色は緑色であり、前記第1白色画素と前記第3色信号画素とは前記画素ブロック内において対角に配置されていてもよい。
【0019】
この構成によれば、本発明の一形態に係る固体撮像装置では、各画素ブロックにおいて、解像度を決める輝度情報に大きく寄与する白色画素と緑色画素とが各行各列に1つずつ配置される。これにより、本発明の一形態に係る固体撮像装置は、行数×列数の解像度が得られるので、高解像度及び高感度を実現できる。
【0020】
また、前記第1の色はシアンであり、前記第2の色はマゼンダであり、前記第3の色はイエローであり、前記第1白色画素と前記第3色信号画素とはとは前記画素ブロック内において対角に配置されていてもよい。
【0021】
この構成によれば、補色系は広い波長領域を検出するため、本発明の一形態に係る固体撮像装置は、RGBを用いる場合に比べ、より高感度化を実現できる。また、本発明の一形態に係る固体撮像装置では、視感度の高い緑と赤とで構成されるイエローを検出するイエロー画素を白色画素と対角に配置する。これにより、本発明の一形態に係る固体撮像装置は、高解像度及び高感度を実現できる。
【0022】
また、前記画素ブロックの各々は、2行2列に配置された4個の画素を含み、前記4個の画素は、前記第1色信号画素と、前記第2色信号画素と、前記第1白色画素と、可視光を第2輝度信号に変換する第2白色画素とであってもよい。
【0023】
この構成によれば、本発明の一形態に係る固体撮像装置は、高感度及び広ダイナミックレンジを両立できる。
【0024】
また、前記第2白色画素は、可視光の透過率を電気的に制御可能な第2光減衰フィルタと、前記第2光減衰フィルタを透過した可視光を受光し、受光した前記可視光を前記第2輝度信号に変換する第2光電変換部とを備えてもよい。
【0025】
この構成によれば、本発明の一形態に係る固体撮像装置は、高感度及び広ダイナミックレンジを両立できる。
【0026】
また、前記第1の色は赤色であり、前記第2の色は青色であってもよい。
【0027】
この構成によれば、本発明の一形態に係る固体撮像装置は、視感度の最も高い緑色信号を輝度信号に置き換えることで、ベイヤー配列に対して色差信号の誤差を最も小さくできる。これにより、本発明の一形態に係る固体撮像装置は、色S/N比を低下させることなく高感度で高画質な画像を生成できる。
【0028】
また、前記第1の色は赤色であり、前記第2の色は緑色であってもよい。
【0029】
この構成によれば、本発明の一形態に係る固体撮像装置は、視感度の最も小さい青色を検出する画素を白色画素に置き換えることで、色S/N比の低下を抑制できるので、高感度で高画質な画像を生成できる。
【0030】
また、前記第1の色はシアンであり、前記第2の色はイエローであってもよい。
【0031】
この構成によれば、本発明の一形態に係る固体撮像装置は、より広い波長領域を検出する補色系を用いるとともに、各画素ブロックが、視感度の高い緑色を含むシアンとイエローとの2色を含むことで、より高感度を実現できる。
【0032】
また、前記複数の画素ブロックの各々は、2行2列に配置された4個のサブブロックを含み、前記4個のサブブロックは、前記画素ブロックの対角に配置される2個の第1サブブロックと、前記画素ブロックの対角に配置される2個の第2サブブロックとであり、前記第1サブブロック及び前記第2サブブロックは、それぞれ、2行2列に配置された4個の画素を含み、前記第1サブブロックに含まれる前記4個の画素は、前記第1色信号画素と、前記第2色信号画素と、前記第1白色画素と、可視光を第2輝度信号に変換する第2白色画素とであり、前記第2サブブロックに含まれる前記4個の画素は、前記第2色信号画素と、前記第1の色及び前記第2の色と異なる第3の色の光を第3の色信号に変換する第3色信号画素と、前記第1白色画素と、前記第2白色画素とであり、前記第1白色画素及び前記第2白色画素の各々は、1個の前記第1色信号画素と、2個の前記第2色信号画素と、1個の前記第3色信号画素とに隣接して配置されていてもよい。
【0033】
この構成によれば、本発明の一形態に係る固体撮像装置は、3色全ての色を撮像領域内に配置できるとともに、白色画素に3色全ての色信号画素が接している構造になる。これにより、本発明の一形態に係る固体撮像装置は、輝度信号の色構成の精度を高くできるとともに、減算処理をすることなく3色のカラー画像を作成できることから、高感度で高画質な画像を生成できる。
【0034】
また、前記第1から第3の色は、青色、緑色、赤色の組み合わせ、及びシアン、イエロー、マゼンダの組み合わせのいずれか一方であってもよい。
【0035】
この構成によれば、本発明の一形態に係る固体撮像装置は、3色に光の3原色又は補色系3色を用いることで、高精細なカラー画像を生成できる。
【0036】
また、前記飽和判定部は、前記第1白色画素ごとに、当該第1白色画素により変換された第1輝度信号が飽和しているか否かを判定し、前記透過率制御部は、前記画素アレイに含まれる複数の前記第1光減衰フィルタのうち、前記飽和判定部により前記第1輝度信号が飽和していると判定された前記第1白色画素に含まれる前記第1光減衰フィルタの透過率を下げてもよい。
【0037】
この構成によれば、本発明の一形態に係る固体撮像装置は、白色画素ごとに飽和判定をすることにより、白色画素ごとに透過率を制御できる。これにより、本発明の一形態に係る固体撮像装置は、高輝度と低輝度の被写体を同時に撮像できる。
【0038】
また、前記光減衰フィルタは、第1透明電極及び第2透明電極と、前記第1透明電極と前記第2透明電極との間に積層されている固体電解質層及び活物質層とを備え、前記固体電解質層は、絶縁性誘電体であり、前記第1透明電極と前記第2透明電極との間に印加される電圧の極性に応じて、前記固体電解質層から前記活物質層へ、又は、前記活物質層から前記固体電解質層へ、イオンが移動することにより、前記活物質層の光の吸収スペクトルが変化し、これにより、前記光減衰フィルタの透過率が変化してもよい。
【0039】
この構成によれば、本発明の一形態に係る固体撮像装置は、光減衰フィルタの薄膜化を実現できることから、高精細な画像を生成できるとともに小型化を実現できる。
【0040】
また、前記活物質層は、アモルファスのWO3、MoO3、IrO2で構成されていてもよい。
【0041】
この構成によれば、本発明の一形態に係る固体撮像装置は、光減衰フィルタで透明及び深青での色変換をできることから、広ダイナミックレンジを実現できるとともに小型化を実現できる。
【0042】
また、前記固体電解質層は、ZrO2、Ta25、Cr23、V25、SiO2、Nb25、HfO2を含むとともに、水素を含有していてもよい。
【0043】
この構成によれば、水素をイオン伝導の媒体とすることから、固体電解質層中へのイオンの導入が容易となる。また、水素のイオン半径が小さいことから光減衰フィルタの高速な切り替えが可能である。これにより、本発明の一形態に係る固体撮像装置は、製造コストを下げることができるとともに、高速動作を実現できる。
【0044】
また、前記固体電解質層は、Li、Na又はAgを含む、ジルコニア、タンタル、クロム、バナジウム、ニオブ及びハフニウムの酸化物のうちいずれかを含んでもよい。
【0045】
この構成によれば、本発明の一形態に係る固体撮像装置は、不揮発性元素のLi、Na、Agをイオン伝導媒体として用いることから、固体電解質層へのイオンの導入を定量的に行える。また、本発明の一形態に係る固体撮像装置は、光減衰フィルタの透過率のばらつきを低減できるとともに、透過率をより正確に制御できる。これらにより、本発明の一形態に係る固体撮像装置の歩留まりを向上できる。
【0046】
また、前記光減衰フィルタは、さらに、前記固体電解質と活物質層との間に積層された絶縁性層間膜を備え、前記絶縁性層間膜は、SiO2、SiON、SiNのいずれか1つの材料で形成されていてもよい。
【0047】
この構成によれば、本発明の一形態に係る固体撮像装置は、絶縁性層間膜を固体電解質層と活物質層との間に挿入することで、エレクトロクロミック素子のリーク電流を抑えることができる。これにより、光減衰フィルタの面内の透過率のばらつきを低減でき、透過率の再現性と透過率の長時間維持とが可能となる。よって、本発明の一形態に係る固体撮像装置の歩留まりを向上できる。
【0048】
また、本発明に係る半導体装置は、N2又は希ガスによって満たされ、気密封止されたパッケージと、前記パッケージ内に設置されている前記固体撮像装置とを備える。
【0049】
この構成によれば、酸素及び水がパッケージ内にないことから、固体電解質層及び透明電極の酸化及び還元が進行しない。これにより、本発明の一形態に係る固体撮像装置は、安定した動作と高い信頼性とを実現できる。
【0050】
また、本発明に係るカメラは、前記固体撮像装置を備える。
【0051】
この構成によれば、本発明の一形態に係るカメラは、ダイナミックレンジが広い画像を撮影できるとともに、小型で光量調節機能がついた高機能及び高性能のカメラを実現できる。
【0052】
なお、本発明は、このような固体撮像装置として実現できるだけでなく、固体撮像装置に含まれる特徴的な手段をステップとする固体撮像装置の制御方法として実現したり、そのような特徴的なステップをコンピュータに実行させるプログラムとして実現したりすることもできる。そして、そのようなプログラムは、CD−ROM等の記録媒体及びインターネット等の伝送媒体を介して流通させることができるのは言うまでもない。
【0053】
さらに、本発明は、このような固体撮像装置の機能の一部又は全てを実現する半導体集積回路(LSI)として実現できる。
【0054】
また、本発明は、このような固体撮像装置を製造する固体撮像装置の製造方法として実現できる。
【発明の効果】
【0055】
以上より、本発明は、高感度及び広ダイナミックレンジを実現できるとともに、画像の時間的なずれの発生を抑制できる固体撮像装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るカメラの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る固体撮像装置のブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る画素ブロックを示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る白色画素の断面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る画素ブロックの回路図である。
【図6A】本発明の第1の実施形態に係る固体撮像装置による動作のフローチャートである。
【図6B】本発明の第1の実施形態に係る、蓄積電荷量と蓄積時間との関係を示す図である。
【図7A】本発明の第1の実施形態に係る光減衰フィルタの動作を示す断面図である。
【図7B】本発明の第1の実施形態に係る光減衰フィルタの動作を示す断面図である。
【図8】本発明の第1の実施形態に係る、WO3の光透過スペクトルを示す図である。
【図9】本発明の第1の実施形態に係る固体撮像装置の断面図である。
【図10A】本発明の第1の実施形態に係る固体撮像装置の製造過程における断面図である。
【図10B】本発明の第1の実施形態に係る固体撮像装置の製造過程における断面図である。
【図10C】本発明の第1の実施形態に係る固体撮像装置の製造過程における断面図である。
【図10D】本発明の第1の実施形態に係る固体撮像装置の製造過程における断面図である。
【図10E】本発明の第1の実施形態に係る固体撮像装置の製造過程における断面図である。
【図10F】本発明の第1の実施形態に係る固体撮像装置の製造過程における断面図である。
【図10G】本発明の第1の実施形態に係る固体撮像装置の製造過程における断面図である。
【図11A】本発明の第2の実施形態に係る光減衰フィルタの動作を示す断面図である。
【図11B】本発明の第2の実施形態に係る光減衰フィルタの動作を示す断面図である。
【図12】本発明の第4の実施形態に係る画素ブロックを示す図である。
【図13】本発明の第5の実施形態に係る画素ブロックを示す図である。
【図14】本発明の第5の実施形態に係る、蓄積電荷量と蓄積時間との関係を示す図である。
【図15】本発明の第5の実施形態に係る、蓄積電荷量と蓄積時間の関係を示す図である。
【図16】本発明の第6の実施形態に係る固体撮像装置の信号処理手順を示すフローチャートである。
【図17】本発明の第7の実施形態に係る固体撮像装置の信号処理手順を示すフローチャートである。
【図18A】本発明の第7の実施形態に係る固体撮像装置により撮像された画像例を示す図である。
【図18B】本発明の第7の実施形態に係る固体撮像装置により撮像された画像例を示す図である。
【図19】本発明の第8の実施形態に係る画素ブロックを示す図である。
【図20】本発明の第9の実施形態に係る画素ブロックを示す図である。
【図21】本発明の第10の実施形態に係る画素ブロックを示す図である。
【図22A】本発明の第11の実施形態に係る画素ブロックを示す図である。
【図22B】本発明の第11の実施形態に係る画素配置を示す図である。
【図23】本発明の第11の実施形態に係る画素ブロックの変形例を示す図である。
【図24】本発明の第12の実施形態に係る半導体装置を示す図である。
【図25】従来の固体撮像装置を示す図である。
【図26】従来の固体撮像装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照しながら、本発明の第1の実施形態に係る固体撮像装置を説明する。
【0058】
まず、本発明に係る固体撮像装置101を用いたカメラ(撮像装置)の構成を説明する。
【0059】
図1は、本発明に係るカメラ250の構成を示すブロック図である。
【0060】
図1に示すカメラ250は、例えば、デジタルカメラであり、レンズ200と、固体撮像装置101と、外部インターフェイス部204とを備える。
【0061】
固体撮像装置101は、レンズ200により集光された光を電気信号に変換することにより画像信号を生成する。この固体撮像装置101は、固体撮像素子201と、駆動回路202と、信号処理部203とを備える。
【0062】
上記構成を有するカメラ250による、外部に信号が出力されるまでの処理は以下のような順序に沿っておこなわれる。
【0063】
(1)レンズ200を光が通過し、通過した光が固体撮像素子201に入射する。
【0064】
(2)信号処理部203は、駆動回路202を通して固体撮像素子201を駆動し、固体撮像素子201からの出力信号を取り込む。
【0065】
(3)信号処理部203で処理した信号を、外部インターフェイス部204を通して外部に出力する。
【0066】
図2は、固体撮像素子201のブロック図である。
【0067】
図2に示す固体撮像素子201は、複数の単位画素1が二次元状(行列状)に配列された画素アレイ2と、垂直シフトレジスタ3と、水平シフトレジスタ4と、増幅部6と、ノイズ除去部7とを含む。
【0068】
画素アレイ2は、二次元状に配置された複数の画素ブロック80を含む。例えば、各画素ブロック80は、2行2列の4個の単位画素1を含む。なお、図2に示す画素ブロック80及び単位画素1の個数は一例であり、これ以外の数であってもよい。
【0069】
各単位画素1は、受光した光を電気信号(画素信号)に変換し、変換した画素信号を出力する。なお、以下では、単位画素1を単に画素と記す場合もある。
【0070】
垂直シフトレジスタ3及び水平シフトレジスタ4は、複数の単位画素1のうちいずれかを選択する。
【0071】
増幅部6は、単位画素1により出力された画素信号を増幅する。
【0072】
ノイズ除去部7は、増幅部6により増幅された画素信号の高周波ノイズを除去する帯域通過フィルタである。
【0073】
以上の構成により、垂直シフトレジスタ3及び水平シフトレジスタ4により選択された単位画素1の画素信号が固体撮像素子201から出力される。
【0074】
図3は、本発明の第1の実施形態に係る画素ブロック80内における画素配置を示す図である。図3に示すように画素ブロック80の各々は、2行2列に配置された4個の画素を含む。具体的には、画素ブロック80の各々は、特定の色の光のみを検出する3個の色信号画素と、全可視光線領域の光を検出する白色画素(WND画素)とを含む。3個の色信号画素は、赤色の光を赤色の色信号に変換する赤色画素(R画素)と、緑色の光を緑色の色信号に変換する緑色画素(G画素)と、青色の光を青色の色信号に変換する青色画素(B画素)とである。また、WND画素は、可視光を輝度信号に変換する。
【0075】
また、WND画素とG画素とは画素ブロック80内において対角に配置されている。つまり、画素ブロック80は、RGB原色系における2行2列のベイヤー配列において、2個あるG画素のうちの1個を非分光の白色画素に置き換えた構成である。
【0076】
本発明の第1の実施形態に係る固体撮像装置101では、このWND画素は、可視光の透過率を電気的に制御可能な光減衰フィルタを備えている。
【0077】
図4はWND画素の断面図である。
【0078】
図4に示すように、本発明の第1の実施形態に係る固体撮像装置101は、半導体基板20と、フォトダイオード11と、トランジスタ22と、金属配線23と、層間膜24及び25と、平坦化膜27と、マイクロレンズ28と、光減衰フィルタ16とを備える。
【0079】
半導体基板20は、例えば、シリコン基板である。
【0080】
フォトダイオード11は、半導体基板20の内部にイオン注入によって形成される。このフォトダイオード11は、光減衰フィルタ16を透過した可視光を受光し、受光した可視光を信号電荷に変換する。また、フォトダイオード11により光電変換された信号電荷が画素信号(輝度信号)として読み出される。
【0081】
トランジスタ22のゲートは、半導体基板20上に形成されている。
【0082】
金属配線23は、トランジスタ22のゲート等を電気的に接続する。また、トランジスタ22のゲートと金属配線23とは層間膜24を介して形成されている。例えば、金属配線23の材料は、Al又はCuである。また、図4では、配線層の数が2層の場合を示している。なお、配線層の数はこれ以外であってもよい。
【0083】
光減衰フィルタ16は、金属配線23の上方に層間膜25を介して形成されている。この光減衰フィルタ16は、透明電極32a及び32bと、活物質層33と、固体電解質層34とを含む。透明電極32aと透明電極32bとは、活物質層33と固体電解質層34との積層構造を挟む。言い換えると、固体電解質層34及び活物質層33は、透明電極32aと透明電極32bとの間に積層されている。このように光減衰フィルタ16は、キャパシタ構造である。
【0084】
また、透明電極32a及び32bは、それぞれ金属配線23と電気的に接続されている。また、半導体基板20上のトランジスタ22によって、この透明電極32a及び32b間に印加される電圧が制御される。
【0085】
具体的には、固体電解質層34は、絶縁性誘電体である。また、透明電極32aと透明電極32bとの間に印加される電圧の極性に応じて、固体電解質層34から活物質層33へ、又は、活物質層33から固体電解質層34へ、イオンが移動することにより、活物質層33の光の吸収スペクトルが変化する。これにより、光減衰フィルタ16の透過率が変化する。なお、光減衰フィルタ16の動作原理及び製造方法の詳細は後述する。
【0086】
図5は、本実施形態に係る画素ブロック80の回路図である。なお、図5において、W画素を白色画素1Wと記し、R画素、G画素及びB画素を色信号画素1Cと記している。
【0087】
色信号画素1Cは、フォトダイオード11(光電変換部)と、転送トランジスタ12と、リセットトランジスタ13と、増幅トランジスタ14と、選択トランジスタ15とを含む。
【0088】
白色画素1Wは、色信号画素1Cの構成に加え、さらに、光減衰フィルタ16と、光減衰フィルタ16に印加される電圧を制御するためのフィルタ制御トランジスタ17とを含む。
【0089】
光減衰フィルタ16は、フィルタ制御トランジスタ17を介して、電圧線18に接続されている。また、フィルタ制御トランジスタ17のゲートは、列選択線19に接続されている。ここで電圧線18には正電位と負電位との両方の電位が選択的に印加される。
【0090】
この構成により、電圧線18に電圧を印加するとともに、フィルタ制御トランジスタ17をONすることで、光減衰フィルタ16の透過率を減少させることができる。また、フィルタ制御トランジスタ17をONする期間を制御することで、光減衰フィルタ16の透過率を所望の透過率に設定できる。また、フィルタ制御トランジスタ17がOFFした状態で通常の撮像駆動が行われる。
【0091】
また、電圧線18に負電圧を印加したうえで、フィルタ制御トランジスタ17をONすることで、光減衰フィルタ16の透過率を元の状態に戻すことができる。
【0092】
また、光減衰フィルタ16の透過率の変更処理は、画素の撮像動作とは時系列に順番に行われる。つまり、後述する輝度信号の飽和測定と通常の撮像との前にフォトダイオード11に蓄積された電荷がリセットされる。
【0093】
この構成により、本実施形態に係る固体撮像装置101は、新たな信号線を設置することなく光減衰フィルタ16と単位画素1とを個別に動作させることができる。
【0094】
なお、本実施形態では、光減衰フィルタ16に対してフィルタ制御トランジスタ17を設けたが、電圧線18をパルス駆動にすることでフィルタ制御トランジスタ17を設けないことも可能である。具体的には、光減衰フィルタ16を動作させる期間中は、選択トランジスタ15をOFFにしておけばよい。また、露光期間中は電圧線18を0Vにしておけば、露光中に光減衰フィルタ16の透過率が変化することない。なお、フォトダイオード11からの読み出しの際は電圧線18に電圧が印加されるが、その際に透過率が変化してもすでに電荷蓄積後であれば擬似信号になることはない。よって、読み出し後に再び選択トランジスタ15をOFFにして光減衰フィルタ16をOFFにすればよい。
【0095】
この構成にすることで、余分なトランジスタが必要なくなるため、微細な画素に対しても画素ごとへの光減衰フィルタの搭載が可能となる。
【0096】
次に、本実施形態に係る信号処理部203について説明する。本発明のように、能動的に光減衰フィルタ16を駆動させるためには、光をどの程度減衰させる必要があるかを判定しなければならない。そこで本発明では、信号処理部203は、被写体を撮像する直前に輝度信号の飽和判定を行う。
【0097】
図2に示すように、信号処理部203は、飽和判定部210と、透過率制御部211とを備える。
【0098】
飽和判定部210は、WND画素ごとに、当該WND画素により変換された輝度信号が飽和しているか否かを判定する。
【0099】
透過率制御部211は、光減衰フィルタ16の透過率を変更する。具体的には、透過率制御部211は、画素アレイ2に含まれる複数の光減衰フィルタ16のうち、飽和判定部210により輝度信号が飽和していると判定されたWND画素に含まれる光減衰フィルタ16の透過率を下げる。
【0100】
図6Aは、この動作のフローチャートである。また、図6Bは、フォトダイオード11の蓄積電荷と蓄積時間との関係を示す図である。
【0101】
図6Aに示すように、まず、透過率制御部211は、光減衰フィルタ16の透過率を高い状態に設定する(S101)。次に、信号処理部203は、輝度信号が飽和するか否かを判定するために、固体撮像素子201に予め撮像を行わせる(S102)。具体的には、図6Bに示す、期間t1の間、固体撮像素子201は、露光を行う。
【0102】
次に、飽和判定部210は、複数の画素ブロック80のうち一つを選択する(S103)。
【0103】
次に、飽和判定部210は、選択した画素ブロック80に対して、ステップS102で生成された輝度信号に基づき、本番の撮像時に輝度信号が飽和するか否かを判定する(S104)。具体的には、飽和判定部210は、期間t1の蓄積電荷量Q1から、その傾きに相当するQ1/t1を算出する。そして、飽和判定部210は、算出した傾きに基づき、本番の撮像の露光時間t2で撮像した場合に、輝度信号が飽和するか否かを判定する。
【0104】
具体的には、飽和判定部210は、予め輝度信号の強度に対する閾値を設定しておき、ステップS102で生成された輝度信号が当該閾値を超える場合は、本番の撮影時に輝度信号が飽和すると判定する。
【0105】
飽和判定部210により輝度信号が飽和すると判定された場合(S104でYes)、透過率制御部211は、光減衰フィルタ16の透過率を下げる(S105)。
【0106】
一方、飽和判定部210により輝度信号が飽和しないと判定された場合(S104でNo)、光減衰フィルタ16の透過率を変更せず、選択した画素ブロック80の光減衰フィルタ16をOFF(高透過率の状態)にしておく。
【0107】
全ての画素ブロック80に対して、上記ステップS104及びS105の処理が終わっていない場合(S106でNo)、信号処理部203は、次の画素ブロック80を選択し(S103)、ステップS104以降の処理を行う。
【0108】
全ての画素ブロック80に対して、上記ステップS104及びS105の処理が終わった場合(S106でYes)、固体撮像装置101は、本番の撮像を行う(S107)。
【0109】
このように、蓄積効率に相当するQ/t1を透過率Tだけ減少させることで、飽和を防ぐことができる。このとき本番撮像の露光時間t2は低輝度の被写体の諧調が表現できるように設定する必要がある。そこで、飽和判定部210は、低輝度被写体の諧調表現が可能な露光時間t2に対してWND画素ごとに飽和判定を行う。
【0110】
具体的には、透過率制御部211は、蓄積効率Q1/t1の測定結果に基づき、光減衰フィルタ16の透過率をT(%)とした場合、WND画素の出力信号が以下の(式1)の関係を満たすように透過率Tを設定する。
【0111】
T×[Q1/(t1×100)]×t2<飽和蓄積電子数 ・・・ (式1)
【0112】
この構成によって、本発明の第1の実施形態に係る固体撮像装置101は、低輝度の被写体の明暗を鮮明に表現すると同時に、高輝度の画素領域に対して飽和しない広いダイナミックレンジを実現できる。また、この構成によって、固体撮像装置101は、高照度下における撮影又は高輝度被写体に対して、フォトダイオード11が飽和照度又は飽和輝度にあるか否かを判定する。これにより、固体撮像装置101は、光減衰フィルタ16の光透過率をフォトダイオード11が飽和しないように制御できるので、高照度下での撮像が可能となる。
【0113】
次に、高感度化について説明する。白色画素は3色全ての波長領域を検出できることから、白色画素の感度係数は色信号画素の感度係数に比べて大きい。よって、色差信号に用いる輝度信号Yとして白色画素から得られるW信号を用いることで輝度のS/N比が大幅に向上する。また、白色画素の輝度信号を用いてRGBの色信号を再構成することで、RGBのS/N比を向上させて高感度化が実現できる。
【0114】
例えば、YUV系の色空間ではY=0.299×R+0.587×G+0.114×Bであることから、W信号も同様にRGB色成分に分解できる。このとき画素ブロック80内のR、G、B画素の色信号にW画素を構成する色成分を加算すると、画素ブロック80としての色信号は増大するので、S/N比が向上する。また、R、G、B画素から得られた信号と、W信号を分解して得られた色信号との和を算出することによって新しい色信号R’、G’、B’を作成できる。さらに、新しい色信号R’、G’、B’から新たな輝度信号Y’を作成することにより、Y’U’V’のような色差信号を作ることができる。こうすることで、通常のベイヤー配列よりもR、B信号成分が増大する。これにより、輝度S/N比だけでなくRとBの色成分のS/N比も増大するので、高感度な撮像が可能となる。
【0115】
次に光減衰フィルタ16の構造と動作原理ついて説明する。
【0116】
図7A及び図7Bは、光減衰フィルタ16の断面構造及び駆動原理を示す図である。
【0117】
本実施形態における光減衰フィルタ16はエレクトロクロミック素子である。エレクトロクロミック素子とは電圧印加によって材料の吸収スペクトルが変化し、これにより色が変化する素子の総称である。例えば液晶のように電界に応じて液晶分子の配向が変化することにより、透過率が変化する素子もエレクトロクロミック素子の一つである。中でも、固体中のイオン移動によって引き起こされる酸化還元反応によって吸収スペクトルを変化させる固体電解質を用いたエレクトロクロミック素子は液晶のような偏光依存性もなく、特異なスペクトルを示す材料もあり、表示素子などに広く使われている。
【0118】
図7Aは、活物質層33が酸化状態である場合を示す。図7Aに示すように、透明電極32bに対して透明電極32aに正の電圧を印加することにより、活物質層33から固体電解質層34へイオンが移動すると同時に、活物質層33から電子が透明電極32aへ放出される。この状態において、光減衰フィルタ16は透明となる。
【0119】
図7Bは、還元状態を示している。図7Bに示すように、透明電極32bに対して透明電極32aに負の電圧を印加することで、固体電解質層34中の陽イオンが活物質層33に注入されると同時に、透明電極32aから活物質層33へ電子が注入される。
【0120】
なお、図7Aに示す酸化状態と、図7Bに示す還元状態とでは、光減衰フィルタ16に印加される電圧の極性が反転しているだけであり、印加電圧として、共に負、共に正、又は正及び負のいずれを用いてもかまわない。ただし、伝導イオンは基本的に陽イオンであるため、電界の方向とは逆向きに陽イオンが動くことになる。
【0121】
また、このエレクトロクロミック素子においては、活物質層33に、イオンの移動量に対応した酸化還元電流に相当する電流が出入りする。よって、電圧印加時間を調整することでイオンの移動量を制御できる。これにより、光の透過量を制御することが可能となるので、高照度下でも撮像が可能な固体撮像装置を実現できる。
【0122】
次に、光減衰フィルタ16の材料及び製造方法について説明する。
【0123】
本発明に係る固体撮像装置101では、光減衰フィルタ16に含まれる活物質層33がアモルファスのWO3、MoO3、IrO2で表記されるいずれか一つの材料で構成される。また、固体電解質層34は、少なくともZrO2、Ta25、Cr23、V25、SiO2、Nb25、HfO2、で示される材料の一つによって構成される。
【0124】
以下、活物質層33にWO3を用い、固体電解質層34にTa25を用いた場合を一例として説明する。なお、WO3とTa25との組み合わせはエレクトロクロミック素子では一般的な組み合わせの一つである。
【0125】
WO3とTa25との間でイオン移動を伴う酸化還元反応によって、WO3の電子構造が大きく変化する。よって、光減衰フィルタ16の状態を、透明状態と着色状態との間で、印加する電圧に応じて段階的に制御できる。ここで活物質層33の着色の原理を、WO3を例に説明する。WO3はイオン性の高い酸化物であり、WO3のWは価電子をOに奪われたW6+に近い状態で存在する。この状態では、WO3は約3.8eV程度のバンドギャップが存在する透明材料である。ここに水素又はアルカリ金属などが存在すると、当該水素又はアルカリ金属がWとOの間に入り込み、当該水素又はアルカリ金属が自身の電子をW側に与える還元反応を引き起こす。この還元電子がWのd電子準位を占有することが、光吸収に大きく寄与する。
【0126】
図8に水素導入前後におけるWO3の光透過スペクトルを示す。HxWO3は水素原子が化学量論比として不定比でWO3に導入された状態である。図8に示すように、水素がない状態では、WO3は可視光領域において透明度が非常に高いことがわかる。一方、水素を導入したHxWO3では、緑から赤にかけて強い光吸収が観測される。また、比較的光吸収が小さい青色領域においても、透過率が40%程度も低下している。もともと青色は視感度も低い色であることから、HxWO3は、十分な可視光線の光減衰フィルタとして機能する。
【0127】
また、活物質層33は、アモルファス膜の方が望ましい。WO3は結晶の場合、水素などのイオンが入るサイトが少なくなると同時に、イオン移動速度が遅くなることがわかっている。一方で、アモルファスはイオンが入るサイト数が多く、かつ、イオン伝導速度も結晶に比べて速いため、光減衰フィルタのON/OFFの切り替えが必要な本発明に適している。さらにアモルファスWO3は400℃以下の低温で成膜が可能であることから、アルミ配線などの低融点材料が共存しても成膜が可能であり、シリコンプロセスとの親和性も非常に高い。
【0128】
なお、Wと同属のMoの酸化物であるMoO3、又は、イオン性が強いIrの酸化物であるIrO2においても同様の動作原理によって透明状態と着色状態の間でエレクトロクロミック現象が生じる。このように、イオン移動によって光透過率が変化する透明酸化物材料のなかでも、WO3、MoO3、IrO2は応答性、及び製造の簡便性などから優れている。
【0129】
次に、固体電解質層34について説明する。本実施形態ではH+イオンを伝導イオンとして用いており、固体電解質層34と活物質層33との間でH+イオンを出し入れするために、H+イオンの貯蔵とH+イオンの移動とが容易である透明材料が求められる。また、伝導イオンは固体電解質層34及び活物質層33内の電界によって駆動されるため、固体電解質層34には絶縁性が求められる。ここで、ZrO2、Ta25、Cr23、V25、SiO2、Nb25、HfO2は絶縁性に優れた透明酸化物誘電体であるとともに、H+イオンを含有する。よって、これらの材料は活物質層33へのイオンの供給が可能である。
【0130】
ここで、H+イオンはイオン半径が最も小さいイオンであるため、イオンの拡散速度が速い。よって、H+イオンを用いることによって、高速な切り替え動作が可能な光減衰フィルタ16を実現できる。このようにH+イオンの伝導を用いることが、本実施形態において好適である。
【0131】
次に、本実施形態に係るWO3及びTa25を用いた光減衰フィルタ16を搭載した固体撮像装置101の製造方法の一例を説明する。
【0132】
本発明の実施形態に係る固体撮像装置101は、一組の活物質層33と固体電解質層34と戸を含むエレクトロクロミック素子を、最上層の配線の上部に層間膜を隔てて設けた構造である。以下、最上層配線以降の製造プロセスの詳細について説明する。図9は、本実施形態に係る固体撮像装置101の断面図である。図10A〜図10Gは、本実施形態に係る固体撮像装置101の最上層配線より上部の製造過程における断面図である。
【0133】
半導体基板20にイオン注入によって拡散領域52が形成されている。また、半導体基板20上に白色画素1Wの撮像領域51と周辺回路領域50とが形成されている。トランジスタ22は素子分離部53によって電気的に分離されている。
【0134】
トランジスタ22の形成後、BPSG(Boron Phospho Silicate Glass)などの絶縁体の層間膜24aを成膜し、成膜した層間膜24aをCMP(Chemical Mechanical Polishing)又はエッチバックによって平坦化する。その後、ドライエッチングによって層間膜24aにコンタクトホールを形成し、メタルCVD(Chemical Vapor Deposition)法によって、形成したコンタクトホール内に金属プラグ55aを形成する。金属プラグ55aが表面に露出した状態でアルミをスパッタなどで成膜した後、ドライエッチングで成膜したアルミをパターニングすることで金属配線23aを形成する。
【0135】
このようなプロセスを繰り返すことで多層配線構造を形成できる。本実施形態に係る固体撮像装置101は2層配線であるため、1層目の金属配線23aの上部に絶縁性の層間膜24bを形成したうえで当該層間膜24bを平坦化し、次に、金属プラグ55bを形成し、次に、2層目の金属配線23bを形成する。
【0136】
次に、光減衰フィルタ16の形成工程に移る。
【0137】
図10Aに示すように層間膜25をBPSGで形成し、形成した層間膜25を、CMPを用いて平坦化する。
【0138】
次に、図10Bに示すように、金属プラグ55cを形成する。ここで金属プラグ55cが表面に露出した状態にする。この状態で光減衰フィルタ16の下部の透明電極32b、固体電解質層34、及び活物質層33を積層成膜する(図10Cを参照)。このとき透明電極32bは金属プラグ55cに電気的に接続される。
【0139】
また、光減衰フィルタ16は基本的に光を透過させる必要があるため、下部の透明電極32b及び上部の透明電極32aは可視光に対して透明なITO)(Indium Tin Oxide)を用いる。また、透明電極32a及び32bの膜厚は、例えば、200nmである。
【0140】
なお、本実施形態では、2層アルミ配線の上部に光減衰フィルタ16を設けたが、画素構造においては特にこれに限る必要は無く、1層目アルミ配線と2層目アルミ配線との層間に光減衰フィルタ16を設けてもよい。
【0141】
次に、図10Dに示すようにドライエッチングによって素子分離のためのパターニングを行う。
【0142】
次に、BPSG又はFSG(SiOF)のような絶縁性の層間膜67を堆積させ、堆積した層間膜67をCMPにより平坦化する。その後、酸化膜ドライエッチングによって金属プラグ55d用のビアホールを形成する。次に、メタルCVDによって金属膜68を成膜する(図10E参照)。
【0143】
その後、図10Fに示すようにCMPによって活物質層33であるWO3が露出すまで金属膜68及び層間膜67を研磨し、その後、上部の透明電極32aを形成してパターニングを行う。このとき、透明電極32aが金属プラグ55dと電気的に接続されるようにする。その後、平坦化膜27を形成し、次に、マイクロレンズ28(図示せず)を形成する。
【0144】
次に透明電極32a及び32bと、固体電解質層34と、活物質層33との成膜方法について説明する。
【0145】
ITO電極(透明電極32a及び32b)はパルスレーザ成膜法(PLD法)を用いて作製する。PLD法では、パルスレーザを所望の材料に集光照射する。これにより、材料表面が瞬間的、及び局所的に高温化することで材料原子が蒸発する。蒸発した材料原子は、別の場所においた基板上に再付着する。このように、成膜が行われる。PLD法では、レーザ蒸発のターゲットに酸化物を使用し、かつ成膜雰囲気を酸素にすることで、均一性の高い酸化物成膜が可能となる。
【0146】
本実施形態に用いたITO電極はITOターゲットに、エキシマレーザであるKrFレーザ(波長248nm)を照射し、配線上にITOを成膜した。なお、成膜温度はアルミ配線が溶解しない温度である300℃で行った。
【0147】
なお、本実施形態ではPLD法を用いたが反応性スパッタ成膜法又は加熱蒸着法を用いてもよい。また、膜厚に関しては薄すぎると抵抗が増加してしまうため50nm以上が望ましい。一方、画素上に光減衰フィルタを作製することから、全体の膜厚が厚すぎるとマイクロレンズ28からフォトダイオード11までの距離がマイクロレンズ28の焦点距離よりも長くなってしまう。これにより集光度が下がってしまう。つまり、本実施形態ではITOの膜厚は200nmとしたが、膜厚はできるだけ薄いほうが望ましい。
【0148】
また、本実施形態では活物質層33と固体電解質層34とはそれぞれWO3とTa25とを用いており、それぞれ膜厚は300nmと200nmである。
【0149】
まず、透明電極32b上に酸素雰囲気中において成膜温度400℃でTa25を成膜する。なお、400℃よりも高い温度ではアルミ配線が溶解する恐れがあるため、アルミ配線以降の工程では400℃以下のプロセスでなければならない。しかし、低温での酸化物成膜は酸化が十分に進行しない。これにより、酸素の供給不足によって低密度で酸素欠損が大量に含まれてしまう。これが、絶縁性の低下及び透過率の低下の原因となる。よって、できる限り高温で成膜することが望ましく、本実施形態では、400℃で成膜を実施した。
【0150】
次に、その状態で400℃の水素アニールを1分間行うことでTa25中に水素を導入する。長時間の水素アニールはTa25を還元してしまう。これは、リーク電流の増加及び透明性の減少に繋がるだけでなく、ITO透明電極の導電率の低下の原因となる。よって過剰な水素が導入されないように最表面のTa25膜に低濃度の水素ドーピングをするためには、水素アニールの時間と流量とを制御する必要がある。水素アニールの場合、WO3が水素原子を取り込むのに400℃程度の温度が必要になるが、希塩酸に10秒から60秒程度浸すことで水素を導入することもできる。
【0151】
次に、再びPLD法により成膜温度200℃でTa25上にWO3を成膜する。水素導入を施したTa25から水素の脱離を防ぐため、WO3の成膜は300℃以下が望ましく、本実施形態では200℃でWO3を成膜した。
【0152】
なお、本実施形態では、活物質層33と固体電解質層34とにそれぞれWO3とTa25とを用いたが、これに限るものではなく、イオン移動によって透過スペクトルが変化する材料であればよい。例えば、活物質層33は、MoO3又はIrO2などでもよい。また固体電解質層34は、水素を含有し、イオン伝導が可能な透明絶縁体であればよい。例えば、固体電解質層34は、ZrO2、Ta25、Cr23、V25、SiO2、Nb25、HfO2のうちのいずれかでもよい。特に、ZrO2、Cr23、V25はイオン伝導性も優れているため有効な材料である。
【0153】
また、本実施形態では固体電解質層34の上に活物質層33を積層させたが、活物質層33の上に固体電解質層34を積層する構造でもかまわない。
【0154】
また、本実施形態ではWO3を200nm、Ta25を300nmとしたが、これ以外であってもよい。
【0155】
なお、活物質層33及び固体電解質層34の膜厚は、光の透過率、駆動速度、及び再現性の観点から非常に重要なパラメータである。膜厚が薄すぎると着色しても光が透過してしまい、光を十分に減衰させることができない。一方、膜厚が厚すぎるとデバイスの層構造全体の膜厚が厚くなるため、マイクロレンズ28の焦点距離よりも全体の膜厚が大きくなり、フォトダイオード11への集光効率が低下してしまう。さらに、膜圧が厚いと水素などのイオンが活物質層33の奥深くに侵入してしまう。これにより、逆電圧を印加することによって全てのイオンを放出させることで活物質を透明化するのに長時間を要する。そのため光減衰フィルタ16の動作速度が低減してしまう。しかも、繰り返しの動作によって活物質層33側に徐々に水素が残留することにより、透過率変調の再現性が徐々に失われてしまう。よって、高濃度水素(などの伝導イオン)を活物質層33と固体電解質層34との界面近傍で効率よくやり取りすることが動作速度、再現性、及び透過率の変調に対して重要となる。
【0156】
これに対して、本実施形態では、活物質層33の膜厚は200nmとすることで、繰り返し動作の再現性を確保している。なお、100nm以下にすると着色時においても透過率が80%以上になり、光減衰フィルタとしての機能を果たすには不十分である。また、1000nm以上とすると、活物質層33から固体電解質層34へのイオン伝導の際に、活物質層33側に水素が残留し透明性を確保することが困難である。よって、活物質層33は100nm以上かつ1000nm以下が望ましい。また、固体電解質層34には、活物質層33に挿入する十分な水素を含有でき、かつ活物質層33から効率よく水素を取り込むことができる体積が必要となる。よって、固体電解質層34の膜厚は活物質層33よりも厚い方が望ましい。
【0157】
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係る固体撮像装置は、固体電解質層34と活物質層33との間にSiO2、SiN、及びSiNのいずれか1つで構成される層を挿入した構造である点が第1の実施形態とは異なる。
【0158】
光減衰フィルタ16は、固体電解質層34を用いたエレクトロクロミック素子であるため、基本的に1対の透明電極32a及び32bと、絶縁体の固体電解質層34と、酸化還元反応が行われる活物質層33とが必要である。第1の実施形態に記載したが、活物質層33の電子移動はイオン移動に伴うものであるため、固体電解質層34は絶縁体でなければならない。これは、活物質層33が還元反応によって電子構造が変化し導電性をもつようになるため、固体電解質層34側にリーク電流があるとキャパシタ構造でありながら、単なる抵抗になってしまい酸化還元反応を生じさせることができないからである。
【0159】
しかし、典型的な固体電解質層34の材料であるTa25又はV25などの遷移金属酸化物は酸素欠損がリーク源になりやすい。また、素子の面積が大きくなればなるほど、これらのリークによって電力損失が生じることにより、十分なイオン移動を起こすことができなくなる。また、リーク電流によるジュール熱によって、欠陥が増殖しさらにリークが増加するといった信頼性に対する課題を抱えている。
【0160】
そこで、第2の実施形態では、キャパシタ構造の絶縁性を確保するために固体電解質層34と活物質層33との層間に絶縁性でありイオンのみを通す薄膜を挿入する。
【0161】
図11A及び図11Bに、本実施形態に係る光減衰フィルタ16Aの断面図を示す。
【0162】
図11A及び図11Bに示すように、光減衰フィルタ16Aは、光減衰フィルタ16の構成に加え、さらに、絶縁性層間膜44を備える。
【0163】
絶縁性層間膜44は、固体電解質層34と活物質層33との間に積層されている。本実施形態では、絶縁性層間膜44に厚さ5nmのSiO2膜を用いた。また、SiO2膜はプラズマCVDで成膜した。なお、SiO2膜の生成に反応性スパッタ法又はPLD法を用いてもかまわない。
【0164】
SiO2は絶縁性に優れており、水素及びLiなどのイオン移動にも適している。一方で、SiO2膜が厚すぎると電圧降下によって活物質層33に十分な電圧が印加されなくなるため、できる限り薄い方がよい。例えば、絶縁性層間膜44の厚さは1nmから10nm程度が望ましい。
【0165】
この構成にすることで、遷移金属酸化物から成る固体電解質層34にリーク源が存在しても、絶縁性を保つことが可能となるため、光減衰フィルタ16の歩留まりを向上させると同時に信頼性を飛躍的に向上させることができる。
【0166】
なお、絶縁性層間膜44は、SiON膜、又はSiN膜であってもよい。
【0167】
(第3の実施形態)
第3の実施形態では、固体電解質層34が、Li、Na、Agのいずれか1つを含むジルコニア、タンタル、クロム、バナジウム、ニオブ、ハフニウムの酸化物の一つによって構成される点が第1の実施形態と異なる。
【0168】
例えば、本実施形態では固体電解質層34は、LiV25で構成される。第1の実施形態に記載の光減衰フィルタのエレクトロクロミック素子のおけるイオン伝導媒体は水素イオンであるが、デバイスの信頼性の観点から必ずしも水素である必要は無い。活物質層33が透過率を変化させる原理は、活物質層33にイオンが挿入されるのと同時に電子も注入され、これにより中心金属イオンの原子価が減少する還元反応が起こるためである。よって、挿入するイオンは固体中をイオン移動ができるものであれば何でもよい。ただし、固体の中を拡散する元素であり、その制御性に優れたものが要求されることから、イオン伝導媒体としては、原子半径及びイオン半径の最も小さい水素が最も適しているといえる。
【0169】
しかし、一方でデバイス動作においては、動作環境による信頼性への影響、及びプロセスの歩留まりなどの観点から必ずしも水素が最適なわけではない。例えば、水素を用いた場合、高温動作による脱気などが起こりえる。
【0170】
第3の実施形態では、イオンとしてLi+を用いる。Liはイオン半径もHと並んで小さく、そのイオン化ポテンシャルも非常に小さいため、容易に酸化還元反応を引き起こす。また、第1の実施形態において、水素の導入方法として水素アニール又は酸による液浸について説明したが、いずれも水素の導入量を定量的に制御するのは困難な一面を持っている。Liであれば、成膜装置の固体材料源として取り扱いが可能となるため、定量的なLi導入が可能となる。Liの導入量は化学組成として不定比でもかまわないが、Liを成膜装置の固体材料源として用いるため、化学式としてLiV25と表記されるものを使用する。
【0171】
なお、本実施形態ではLiを用いたが、イオン化ポテンシャルが小さい元素であれば、酸化還元を引き起こし易いためアルカリ金属でもかまわない。ただし、イオンの拡散のためにはイオン半径が小さくなくてならず、Li又はNaが好適である。
【0172】
一方、多価イオンの場合はイオン自身が持つ静電ポテンシャルが大きくなり、イオン移動のための活性化エネルギーが非常に大きくなる。このため、電界によるイオン移動が困難となるため、原子価は1の方が望ましい。例えばAgを含有したAgV25などを用いてもかまわない。また、Li又はAgを含有し安定に存在できる固体電解質層34の材料が求められ、ジルコニア、タンタル、クロム、バナジウム、ニオブ、ハフニウムの酸化物が適している。
【0173】
これらの構成により、金属イオンをイオン伝導媒体に用いることで、定量的に組成制御した固体電解質の成膜が可能となる。これにより、高い均一性を有する光減衰フィルタを作製できることから、高歩留まりで高い信頼性の固体撮像装置を提供できる。
【0174】
(第4の実施形態)
第4の実施形態に係る固体撮像装置は、色信号画素としてR、G、B画素の代わりに補色系を用いている点が第1の実施形態とは異なる。
【0175】
補色系はシアン(Cy)、マゼンダ(Mg)、イエロー(Ye)の3色であり、ともにRGBの各色成分よりも波長領域が広域である。そのため、原色系よりも補色系を用いる方が高感度となる。
【0176】
図12は、第4の実施形態に係る画素ブロック80Aの構成を示す図である。図12に示すように画素ブロック80Aの各々は、2行2列に配置された4個の画素を含む。具体的には、画素ブロック80Aの各々は、シアンの光をシアンの色信号に変換するシアン画素(Cy画素)と、マゼンダの光をマゼンダの色信号に変換するマゼンダ画素(Mg画素)と、イエローの光をイエローの色信号に変換するイエロー画素(Ye画素)と、WND画素とを含む。また、WND画素とYe画素とは画素ブロック80内において対角に配置されている。
【0177】
白色画素による高感度化の課題は画素ブロック内に感度がまったく異なる画素が共存することにあり、色検出画素とW画素の感度差(飽和速度差)が問題であった。補色系は原色系に比べて高感度であり、色信号画素の感度と白色画素の感度とがより近くなるため、画素ブロック全体の感度が最も高い構成となる。よって、高ダイナミックレンジで超高感度な撮像が可能となる。
【0178】
(第5の実施形態)
本発明の第5の実施形態に係る固体撮像装置は、画素ブロック内に2つの白色画素を有する点が第1の実施形態とは異なる。また、一方の白色画素は光減衰フィルタによって感度が可変である。これにより、撮像面照度に合わせて光減衰フィルタの透過率を制御して感度可変画素を低感度化できる。よって、2つの白色画素の輝度信号の合計を用いる、又はどちらか一方を選択して用いることで高感度化及び広ダイナミックレンジ化を実現できる。
【0179】
以下、図面を参照としながら、本発明の第5の実施形態に係る固体撮像装置を説明する。図13は、第5の実施形態に係る画素ブロック80Bを示す図である。
【0180】
図13に示すように、画素ブロック80Bの各々は、2行2列に配置された4個の画素を含む。具体的には、画素ブロック80の各々は、特定の色の光のみを検出する2個の色信号画素と、全可視光線領域の光を検出する2個の白色画素とを含む。つまり、4個の画素のうち2個の画素を白色画素に置き換えた構成である。
【0181】
また、2個の色信号画素は、R画素と、B画素とである。また、2個の白色画素は、光減衰フィルタ16を搭載した感度可変のWND画素と、光減衰フィルタ16が搭載されていない感度変更不可のW画素とである。
【0182】
このように白色画素を二つも用いることで、通常はカラーフィルタによって捨てられてしまう波長領域の光もフォトダイオード11で光電変換される。これにより、高感度化を実現することが可能となる。
【0183】
信号処理部203は、W画素から輝度信号Wを取得し、WND画素から輝度信号WNDを取得する。このとき、WND画素は、フォトダイオード11の上部に設置した光減衰フィルタ16によってW画素よりも低感度にできる。本実施形態に係る光減衰フィルタ16は第1の実施形態に記載したエレクトロクロミック素子を用いているが、第1から第3の実施形態に記載のいずれかの構成であればよい。
【0184】
また、本実施形態では、W画素とWND画素は画素ブロック80B内において対角になるように配置されている。画像解像度は輝度信号の空間周波数によって決まる。よって、輝度信号を得るW画素とWND画素とを対角に配置することで、縦横ともに1行1列ずつ輝度信号を検出する画素が配置される。これにより、解像度を低下させることなく高感度化を実現できる。
【0185】
また、本実施形態では2つの色信号画素を赤色画素と青色画素とにした。このように、視感度の最も高い緑色信号を輝度信号W及びWNDに置き換えることで、ベイヤー配列に対して色差信号の誤差が最も小さくなる。これにより、色S/N比を低下させることなく高感度が達成できる。
【0186】
また、YCbCr色差空間は、一つの輝度信号Yと二つの色信号Cb、Crで表現される色空間である。ここで、CbはY−Bであり、CrはY−Rに特定の係数を掛けたものであり、輝度信号W+WNDを用いて直接Y−B及びY−Rを算出できる。通常、ベイヤー配列における輝度信号YはY=0.299×R+0.587×G+0.114×Bである。つまり、輝度信号Yの60%近くが緑色信号から成る。よって、緑色画素をW画素に置き換え、Y≒W又はY≒WND又はY≒W+WNDとすることでS/N比の低下を抑えて直接色差信号を作り出すことができる。
【0187】
図14は、本実施形態に係る画素ブロック80Bに含まれる各画素の、ある一定の照度下における蓄積電荷Qと蓄積時間tとの関係を示す図である。このグラフにおける傾きQ/tが画素感度となる。本実施形態では、W画素の感度係数が最も大きい。一方、図14に示すように、感度可変のWND画素は光減衰フィルタ16によって、最大でW画素の感度係数程度まで、感度係数を変化させることができる。また、WND画素の最小の感度係数は、光減衰フィルタ16の透過率を制御することにより色信号画素(R画素、B画素)の感度よりも大きくなるようにしている。
【0188】
この構成であれば輝度信号が飽和しない領域では色信号は飽和しないことがわかる。
【0189】
以下、感度可変のWND画素の導入によって高感度化と広ダイナミックレンジ化とが両立できる原理について詳細に説明する。
【0190】
図14に示すようにW画素は速く飽和電荷量に達してしまう。このとき、色信号画素の信号レベルは低いままであるため、S/N比の低下の原因となる。ここで、輝度信号YをY∝W+WNDとすると、実質上WND画素の飽和レベルが輝度信号Yの飽和レベルとなる。よって、WND画素を低感度化することにより、蓄積時間を長く取ることが可能となる。
【0191】
図15は、WND画素の感度をW画素の感度に比べて小さくした場合の蓄積電荷と露光時間との関係を示す図である。
【0192】
図15に示すようにY∝W+WNDであれば、画素ブロックの飽和時間をWNDで規定できる。このように、Yの蓄積時間を長くすると、色信号画素の蓄積電荷量も多くなり、画素ブロック全体のS/N比を向上させることが可能となる。よって信号処理部203ではW+WNDを用いた輝度信号の算出を行う必要がある。
【0193】
次に、輝度信号に含まれる色信号成分の比率を算出することで、赤色信号及び青色信号に対しても白色画素から得られた信号強度を用いてS/N比を向上させることができる。WND画素は透過率α分だけ感度が低下しているため、WND/αとすることでWと同一の感度係数となる。このとき、各色の白色画素に含まれる比率は次のようになる。
【0194】
赤色比率Rr=R/(WND/α)
青色比率Br=B/(WND/α)
緑色比率Gr={(WND/α)−R−B}/(WND/α)
【0195】
画素ブロック全体の輝度信号YをW+WNDで構成したとすると全体の色強度は以下のように置き直すことができる。
【0196】
赤色強度Ri=(W+WND)×赤色比率
青色強度Bi=(W+WND)×青色比率
緑色強度Gi=(W+WND)×緑色比率
【0197】
通常のベイヤー配列では、輝度信号YはR、G、Bの信号強度に視感度係数を掛ける演算で作り出すがためノイズ成分が増加する。一方、第5の実施形態に係る輝度信号はW+WNDの生データなので、輝度信号のS/N比はベイヤー配列よりも大きい。このS/N比のよい輝度信号を用いて色強度を算出することから、各色強度のS/N比も向上する。しかし、緑色に関してはGrを算出する際に減算処理が入るため、ベイヤー配列に比べるとS/N比が低下する。また、色差信号はこの演算で得られたRiとBiとを用いても作り出すことができる。また、輝度信号においても、W+WNDではなく、Y=0.299×Ri+0.587×Gi+0.114×Biとして再作成してもかまわない。
【0198】
(第6の実施形態)
上述した第5の実施形態の構成では、画素ブロック80Bに感度の異なるW画素とWND画素とが含まれているため、撮像面の照度に合わせてW信号とWND信号のどちらか一方を輝度信号として選択することで広ダイナミックレンジを実現できる。具体的には、一つの撮像面に輝度の高い被写体と輝度の低い被写体が共存した場合、輝度の低い被写体では高感度のW信号を輝度信号として用い、輝度の高い被写体は光減衰フィルタによって低感度化したWNDを用いることで同一画角内でのダイナミックレンジを拡大できる。
【0199】
このときの信号処理フローを、図16を用いて説明する。
【0200】
まず、信号処理部203は、画素ブロック80BごとにW画素の輝度信号測定を行い、W画素の感度係数からW信号が飽和するかどうかを判定する(S101〜S104)。これは図6Bで示すQ1/t1を測定し感度係数を算出することである。
【0201】
感度係数から必要露光時間t2でW画素が飽和する、又は飽和レベルに近いと判定した場合(S104でYes)、信号処理部203は、光減衰フィルタ16の光透過率を減少させてWND画素の感度係数を低減させる(S105)。このとき、露光時間t2でWND画素が飽和しない程度にまで透過率を減少させることが必要である。
【0202】
この状態において、信号処理部203は、輝度信号として低感度なWND信号を選択する(S201)。
【0203】
逆に、照度は低く輝度信号が小さい場合(S104でNo)、信号処理部203は、光減衰フィルタ16をOFFにして高感度なW信号を選択する(S202)。
【0204】
そして信号処理部203は、全ての画素ブロック80Bに対して、上記ステップS103以降の処理を繰り返した後(S106でYes)、必要露光時間t2で撮像を行う(S106)。そして、信号処理部203は、画素ブロック80Bごとに、選択した信号(W信号又はWND信号)を輝度信号として用いて、信号処理を行う。
【0205】
このように、本発明の第6の実施形態に係る固体撮像装置101は、画素ブロック80Bごとに選択した白色画素の信号を輝度信号として画像構成を行うことで広いダイナミックレンジを実現できる。なお、必要露光時間t2とは感度が最も低いR画素又はB画素のS/N比が十分取れる時間を意味しており、撮像装置の使用者が任意で決めることもできる。
【0206】
(第7の実施形態)
第7の実施形態に係る固体撮像装置は、全ての画素ブロックに含まれる光減衰フィルタ16のONとOFFとを一括で行う点が、第1、及び第5、第6の実施形態と異なる。
【0207】
画素ブロックごとに飽和判定を行ったうえで光減衰フィルタ16を駆動させることは、画角内のダイナミックレンジを広くできる反面、全ての画素ブロックを独立に駆動させる必要があるため、駆動系回路が複雑となりタイミング発生も複雑となる。そこで、本実施形態では、各画素ブロック上の光減衰フィルタ16を独立に制御することなくONとOFFとの2値を一括で制御する。
【0208】
図17は、第7の実施形態に係る信号処理のフローチャートである。
【0209】
まず、信号処理部203は、各画素ブロック80BのW信号を測定する(S101〜S102)。次に、信号処理部203は、画素アレイ2内に含まれる複数の画素ブロック80Bに、W信号が飽和する少なくとも一つの画素ブロック80Bが存在するか否かを判定する(S301)。
【0210】
飽和する画素ブロック80Bが無い場合(S301でNo)、信号処理部203は、全ての画素ブロック80Bに対してW信号を輝度信号として選択するとともに(S305)、全ての光減衰フィルタ16をOFFの状態のまま、撮像露光を行う(S107)。
【0211】
一方、飽和する画素ブロック80Bが存在する場合(S301でYes)、信号処理部203は、全ての光減衰フィルタ16をONにすることにより透過率を減少させる(S302)。このとき、画素ブロック80Bごとに透過率を独立で制御するのではなく、画素アレイ2内の全ての光減衰フィルタ16の透過率が同程度の透過率になるように制御する。
【0212】
次に、信号処理部203は、飽和する画素ブロック80Bでは透過率を減少させたWND信号を輝度信号として選択する(S303)。他方、信号処理部203は、飽和しない画素ブロック80Bに関してはW信号を輝度信号として選択する(S304)。次に、信号処理部203は、この状態で撮像露光を行う(S107)。
【0213】
これにより、本発明の第7の実施形態に係る固体撮像装置101は、同じ画角内において異なる感度を有する輝度信号を用いることができることから、広ダイナミックレンジを実現できる。
【0214】
本実施形態に係る固体撮像装置により出力される画像の一例を図18A及び図18Bに示す。図18Aは、光減衰フィルタ16をOFFにした状態で撮像し、W画素を輝度信号として選択した場合の画像を示す。このとき、輝度信号が飽和し白くつぶれている領域が存在する。
【0215】
図18Bは、光減衰フィルタ16を一括でON状態にして撮像した画像を示す図である。図18Bに示すように、図18Aでは輝度信号が飽和している領域に対しては、低感度のWND信号を輝度信号として用いているため、輝度信号が飽和することなく白つぶれがなくなり明暗諧調が表現できている。一方、低輝度の領域はW信号を輝度信号として用いているため、図18Aと同一の諧調が表現できている。このように飽和判定によって光減衰フィルタ16のONとOFFを制御することで、広いダイナミックレンジで高感度な画像を得ることができる。
【0216】
(第8の実施形態)
第8の実施形態では、2行2列の画素ブロックに含まれる2個の白色画素の全てに光減衰フィルタが搭載されている点が第1及び第5から第7の実施形態と異なる。
【0217】
先述したように高照度下においては、白色画素の早い飽和速度が画質の劣化の原因となる。これに対して、本実施形態では、2つの白色画素の両方に光減衰フィルタを設けて感度を制御することで広いダイナミックレンジと高感度化を実現する。
【0218】
図19は、第8の実施形態に係る画素ブロック80C内の色配置を示す図である。図19に示すように、画素ブロック80Cは、R画素と、B画素と、光減衰フィルタ16を設けた感度可変の白色画素である2個のWND画素とを含む。また、2個のWND画素は、対角に配置されている。
【0219】
また、本実施形態に係る固体撮像装置101は、図6Aに示す処理と同様に、画素ブロック80CごとにWND画素の輝度信号を測定し飽和判定を行うことで、光減衰フィルタの透過率を制御する。このとき、同じ画素ブロック80C内の2つのWND画素を同時に駆動する。
【0220】
この構成であれば高輝度の被写体及び高照度下の撮像において、輝度信号の飽和時間を長くできる。これにより、高感度で広ダイナミックレンジの撮像を実現することが出きる。
【0221】
(第9の実施形態)
図20は、第9の実施形態に係る画素ブロック80D内の色配列を示す図である。
【0222】
図20に示すように、画素ブロック80Dは、R画素と、G画素と、光減衰フィルタ16を設けた感度可変の白色画素であるWND画素と、光減衰フィルタ16を設けていない白色画素であるW画素とを含む。つまり、第9の実施形態の色配列は、ベイヤー配列の中で青色画素と緑色画素の1つとを白色画素に置きかえた構造である。
【0223】
ここで、青色画素は輝度信号の構成において最も視感度が低い色である。そのため、視感度が高い緑色成分ほど色S/N比を必要としない。そこで、高い色S/N比が必要である緑色画素を残し、視感度の低い青色画素を白色画素に置き換えた構造においても、画質の劣化を抑制して高感度な撮像が可能となる。このとき青色信号は白色画素から緑色及び赤色信号の差分を取る減算処理によって得ることができる。
【0224】
青色信号:B=(W2/α)−G−R
【0225】
先述の通り、減算処理はノイズを大きくすることからS/N比の低下の原因となるが、視感度の低い青色に対して行うことで色再現の劣化を抑制することが可能となる。この構成によって画質の劣化が無く、高感度で広ダイナミックレンジの撮像が可能となる。
【0226】
なお、本実施形態では解像度を最大限にするためにW画素とWND画素とを対角に配置したが、W画素とG画素とを対角に配置した構成でもよい。
【0227】
(第10の実施形態)
第10の実施形態では、補色系において、単位ブロック内に2個の白色画素を配置する例について説明する。
【0228】
図21は、第10の実施形態に係る画素ブロック80E内の色配列を示す図である。
【0229】
図21に示すように、画素ブロック80Eは、2個の補色系の色信号画素(Cy画素及びYe画素)と、光減衰フィルタ16を設けた感度可変の白色画素であるWND画素と、光減衰フィルタ16を設けていない白色画素であるW画素とを含む。
【0230】
また、2個の補色系の色信号画素として、シアン(Cy)、マゼンダ(Mg)、イエロー(Ye)のうち、感度の観点から視感度の高い緑成分が含まれるシアンとイエローとを用いることが望ましい。
【0231】
補色系は原色系に比べて検出波長領域が広域なため感度が高い。よって、色信号画素の感度と白色画素の感度とがより近くなるため、画素ブロック80E全体の感度が最も高くなる。これにより、高ダイナミックレンジで超高感度な撮像が可能となる。
【0232】
(第11の実施形態)
第5から第10の実施形態までは、ベイヤー配列に含まれる3色のうち、1色を削除して2個の白色画素を設けていた。模式的にはRGB→RB+W、又はMgCyYe→CyYe+Wといった形であり、色情報が一つ欠落することによる色再現性の低下が避けられない。
【0233】
そこで、第11の実施形態では、色配置の空間周波数を低下させて3色全てを配置する。これにより、減算処理を用いずに色再現性を確保できる。
【0234】
図22A及び図22Bは、第11の実施形態に係る画素ブロック80Fを示す図である。
【0235】
図22Aに示すように画素ブロック80Fは、4行4列の画素を含む。また、画素ブロック80Fは、2行2列に配置された4個のサブブロック81A及び81Bを含む。
【0236】
2種類の2行2列のサブブロック81A及び81Bが行方向及び列方向に交互に配置されている。つまり、2個のサブブロック81Aは、画素ブロック80Fの対角に配置される。また、2個のサブブロック81Bは、画素ブロック80Fの対角に配置される。
【0237】
サブブロック81A及びサブブロック81Bは、それぞれ、2行2列に配置された4個の画素を含む。
【0238】
例えば、第1のサブブロック81Aは、W画素と、WND画素と、R画素と、G画素とを含む。第2のサブブロック81Bは、W画素と、WND画素と、B画素と、G画素とを含む。また、サブブロック81A及び81Bにおいて、W画素とWND画素とは互いに対角に配置されている。
【0239】
このようにすることで、図22Bに示すように、全ての白色画素(W画素及びWND画素)の各々は、3色全ての色信号画素と隣接して配置される。よって、W画素及びWND画素の色再現はこれらの白色画素に隣接する色信号の比率で決定できる。つまり、W信号を構成する色成分は隣接するR信号とB信号及び2つのG信号を用いて表すことが可能となる。
【0240】
例えば、色信号の生データをそのまま用いてW信号を色成分に分解するとW=R+B+2×Gなる。よって、白色画素に加算処理で色を与えることができるので、色再現を減算処理することなく達成できる。
【0241】
なお、ここでは、W信号の演算に2×Gを用いたが、Gの平均値を用いてもよい。または、視感度を考慮してY=0.299×R+0.587×G+0.114×Bとしてもよい。
【0242】
また、本実施形態ではRGBの三原色を用いたが、CyMgYeの補色系であってもよい。補色系を用いた場合の色配置を図23に示す。補色系の場合は検出波長領域が広域なため、さらに高感度が実現できる。
【0243】
具体的には図23に示すように画素ブロック80Gは、4行4列の画素を含む。また、画素ブロック80Gは、2行2列に配置された4個のサブブロック81C及び81Dを含む。
【0244】
2種類の2行2列のサブブロック81C及び81Dが行方向及び列方向に交互に配置されている。
【0245】
例えば、第1のサブブロック81Cは、W画素と、WND画素と、Cy画素と、Ye画素とを含む。第2のサブブロック81Dは、W画素と、WND画素と、Mg画素と、Ye画素とを含む。
【0246】
なお、W画素とWND画素との配置は逆でもかまわない。
【0247】
(第12の実施形態)
第12の実施形態では、上述した固体撮像装置101を封止ガスが制御されたパッケージ内に設置する例を説明する。
【0248】
図24は、第12の実施形態に係る半導体装置150の断面図である。この半導体装置150は、封止ガス103によって満たされ、気密封止されたパッケージ110と、当該パッケージ110内に設置されている固体撮像装置101とを備える。パッケージ110は、台座100と、金属ワイヤー102と、封止ガラス104と、接続ピン105とを備える。
【0249】
固体撮像装置101は、セラミックの台座100の凹部内に接合されている。金属ワイヤー102は、固体撮像装置101と台座100とを電気的に接続する。接続ピン105は台座100に接続されている。また、金属ワイヤー102及び台座100を介して、固体撮像装置101と接続ピン105とは、電気的に接続されている。
【0250】
封止ガラス104は、台座100の凹部を封止する。
【0251】
封止ガラス104で封止された台座100の凹部には、封止ガス103が封入されている。ここで、封止ガス103には希ガス又はN2を用いる。希ガスを用いる場合はArが最も低コストで適している。また、固体電解質層34、活物質層33、透明電極32a及び32bは全て酸化物から構成されており、過剰な水素は還元反応を引き起こすためできる限り水素の供給源を遠ざける方が信頼性の観点から望ましい。なお、デバイス構造としては保護膜を形成しているものの、雰囲気中に含まれる水分などから供給される水素原子が徐々に酸化物を還元し、エレクトロクロミック特性を低下させる。そこで、Arなどの希ガス又はN2ガスのような不活性ガスでパッケージ110を封止することによって水素の供給源を絶つ。これにより、安定したデバイス動作を実現できるとともに、高い信頼性を確保することが可能となる。
【0252】
以上説明したように、上記実施形態の光減衰フィルタを搭載した固体撮像装置101は、被写体の輝度に合わせて撮像領域に到達する光の透過量を制御することがきることから、高照度下での撮像が可能となる。また、これらをベイヤー配列毎に設置することで低輝度と高輝度の被写体とを同時に諧調表現することが可能となる。
【0253】
以上、本発明の実施の形態に係る固体撮像装置について説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。
【0254】
また、上記実施の形態に係る固体撮像装置及びカメラに含まれる各処理部は典型的には集積回路であるLSIとして実現される。これらは個別に1チップ化されてもよいし、一部又は全てを含むように1チップ化されてもよい。
【0255】
また、集積回路化はLSIに限るものではなく、専用回路又は汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後にプログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、又はLSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。
【0256】
また、本発明の実施の形態に係る固体撮像装置及びカメラの機能の一部又は全てを、CPU等のプロセッサがプログラムを実行することにより実現してもよい。
【0257】
さらに、本発明は上記プログラムであってもよいし、上記プログラムが記録された記録媒体であってもよい。また、上記プログラムは、インターネット等の伝送媒体を介して流通させることができるのは言うまでもない。
【0258】
また、上記図において、各構成要素の角部及び辺を直線的に記載しているが、製造上の理由により、角部及び辺が丸みをおびたものも本発明に含まれる。
【0259】
また、上記各実施の形態に係る固体撮像装置、及びその変形例の機能のうち少なくとも一部を組み合わせてもよい。
【0260】
また、上記で用いた数字は、全て本発明を具体的に説明するために例示するものであり、本発明は例示された数字に制限されない。また、上記で示した各構成要素の材料は、全て本発明を具体的に説明するために例示するものであり、本発明は例示された材料に制限されない。
【0261】
また、上記のステップが実行される順序は、本発明を具体的に説明するために例示するためのものであり、上記以外の順序であってもよい。また、上記ステップの一部が、他のステップと同時(並列)に実行されてもよい。
【0262】
更に、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で当業者が思いつく各種変形を施したものも本発明の範囲内に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0263】
本発明は、固体撮像装置、半導体装置及びカメラに適用でき、例えば、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ、及び携帯電話機器等に好適である。
【符号の説明】
【0264】
1 単位画素
1C 色信号画素
1W 白色画素
2 画素アレイ
3 垂直シフトレジスタ
4 水平シフトレジスタ
6 増幅部
7 ノイズ除去部
11 フォトダイオード
12 転送トランジスタ
13 リセットトランジスタ
14 増幅トランジスタ
15 選択トランジスタ
16、16A 光減衰フィルタ
17 フィルタ制御トランジスタ
18 電圧線
19 列選択線
20 半導体基板
22 トランジスタ
23、23a、23b 金属配線
24、24a、24b、25、67 層間膜
27 平坦化膜
28 マイクロレンズ
32a、32b 透明電極
33 活物質層
34 固体電解質層
44 絶縁性層間膜
50 周辺回路領域
51 撮像領域
52 拡散領域
53 素子分離部
55a、55b、55c、55d 金属プラグ
68 金属膜
80、80A、80B、80C、80D、80E、80F、80G 画素ブロック
81A、81B、81C、81D サブブロック
100 台座
101 固体撮像装置
102 金属ワイヤー
103 封止ガス
104 封止ガラス
105 接続ピン
110 パッケージ
150 半導体装置
200 レンズ
201 固体撮像素子
202 駆動回路
203 信号処理部
204 外部インターフェイス部
210 飽和判定部
211 透過率制御部
250 カメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2次元状に複数の画素ブロックが配置されている画素アレイを備える固体撮像装置であって、
前記複数の画素ブロックの各々は、
第1の色の光を第1の色信号に変換する第1色信号画素と、
前記第1の色と異なる第2の色の光を第2の色信号に変換する第2色信号画素と、
可視光を第1輝度信号に変換する第1白色画素とを含み、
前記第1白色画素は、
透過率を電気的に制御可能な第1光減衰フィルタと、
前記第1光減衰フィルタを透過した可視光を受光し、受光した前記可視光を前記第1輝度信号に変換する第1光電変換部とを備える
固体撮像装置。
【請求項2】
前記固体撮像装置は、さらに、
前記第1輝度信号が飽和しているか否かを判定する飽和判定部と、
前記飽和判定部により前記第1輝度信号が飽和していると判定された場合、前記第1光減衰フィルタの透過率を下げる透過率制御部とを備える
請求項1記載の固体撮像装置。
【請求項3】
前記画素ブロックの各々は、2行2列に配置された4個の画素を含み、
前記4個の画素は、前記第1色信号画素と、前記第2色信号画素と、前記第1の色及び前記第2の色と異なる第3の色の光を第3の色信号に変換する第3色信号画素と、前記第1白色画素とである
請求項1又は2記載の固体撮像装置。
【請求項4】
前記第1の色は赤色であり、前記第2の色は青色であり、前記第3の色は緑色であり、
前記第1白色画素と前記第3色信号画素とは前記画素ブロック内において対角に配置されている
請求項3記載の固体撮像装置。
【請求項5】
前記第1の色はシアンであり、前記第2の色はマゼンダであり、前記第3の色はイエローであり、
前記第1白色画素と前記第3色信号画素とはとは前記画素ブロック内において対角に配置されている
請求項3記載の固体撮像装置。
【請求項6】
前記画素ブロックの各々は、2行2列に配置された4個の画素を含み、
前記4個の画素は、前記第1色信号画素と、前記第2色信号画素と、前記第1白色画素と、可視光を第2輝度信号に変換する第2白色画素とである
請求項1記載の固体撮像装置。
【請求項7】
前記第2白色画素は、
可視光の透過率を電気的に制御可能な第2光減衰フィルタと、
前記第2光減衰フィルタを透過した可視光を受光し、受光した前記可視光を前記第2輝度信号に変換する第2光電変換部とを備える
請求項6記載の固体撮像装置。
【請求項8】
前記第1の色は赤色であり、前記第2の色は青色である
請求項6又は7に記載の固体撮像装置。
【請求項9】
前記第1の色は赤色であり、前記第2の色は緑色である
請求項6又は7に記載の固体撮像装置。
【請求項10】
前記第1の色はシアンであり、前記第2の色はイエローである
請求項6又は7に記載の固体撮像装置。
【請求項11】
前記複数の画素ブロックの各々は、2行2列に配置された4個のサブブロックを含み、
前記4個のサブブロックは、
前記画素ブロックの対角に配置される2個の第1サブブロックと、
前記画素ブロックの対角に配置される2個の第2サブブロックとであり、
前記第1サブブロック及び前記第2サブブロックは、それぞれ、2行2列に配置された4個の画素を含み、
前記第1サブブロックに含まれる前記4個の画素は、前記第1色信号画素と、前記第2色信号画素と、前記第1白色画素と、可視光を第2輝度信号に変換する第2白色画素とであり、
前記第2サブブロックに含まれる前記4個の画素は、前記第2色信号画素と、前記第1の色及び前記第2の色と異なる第3の色の光を第3の色信号に変換する第3色信号画素と、前記第1白色画素と、前記第2白色画素とであり、
前記第1白色画素及び前記第2白色画素の各々は、1個の前記第1色信号画素と、2個の前記第2色信号画素と、1個の前記第3色信号画素とに隣接して配置されている
請求項1記載の固体撮像装置。
【請求項12】
前記第1から第3の色は、青色、緑色、赤色の組み合わせ、及びシアン、イエロー、マゼンダの組み合わせのいずれか一方である
請求項11記載の固体撮像装置。
【請求項13】
前記飽和判定部は、前記第1白色画素ごとに、当該第1白色画素により変換された第1輝度信号が飽和しているか否かを判定し、
前記透過率制御部は、前記画素アレイに含まれる複数の前記第1光減衰フィルタのうち、前記飽和判定部により前記第1輝度信号が飽和していると判定された前記第1白色画素に含まれる前記第1光減衰フィルタの透過率を下げる
請求項2記載の固体撮像装置。
【請求項14】
前記光減衰フィルタは、
第1透明電極及び第2透明電極と、
前記第1透明電極と前記第2透明電極との間に積層されている固体電解質層及び活物質層とを備え、
前記固体電解質層は、絶縁性誘電体であり、
前記第1透明電極と前記第2透明電極との間に印加される電圧の極性に応じて、前記固体電解質層から前記活物質層へ、又は、前記活物質層から前記固体電解質層へ、イオンが移動することにより、前記活物質層の光の吸収スペクトルが変化し、これにより、前記光減衰フィルタの透過率が変化する
請求項1〜13のいずれか1項に記載の固体撮像装置。
【請求項15】
前記活物質層は、アモルファスのWO3、MoO3、IrO2で構成されている
請求項14記載の固体撮像装置。
【請求項16】
前記固体電解質層は、ZrO2、Ta25、Cr23、V25、SiO2、Nb25、HfO2を含むとともに、水素を含有している
請求項14又は15記載の固体撮像装置。
【請求項17】
前記固体電解質層は、Li、Na又はAgを含む、ジルコニア、タンタル、クロム、バナジウム、ニオブ及びハフニウムの酸化物のうちいずれかを含む
請求項14又は15記載の固体撮像装置。
【請求項18】
前記光減衰フィルタは、さらに、
前記固体電解質と活物質層との間に積層された絶縁性層間膜を備え、
前記絶縁性層間膜は、SiO2、SiON、SiNのいずれか1つの材料で形成されている
請求項14〜17のいずれか1項に記載の固体撮像装置。
【請求項19】
2又は希ガスによって満たされ、気密封止されたパッケージと、
前記パッケージ内に設置されている請求項1〜18のいずれか1項に記載の固体撮像装置とを備える
半導体装置。
【請求項20】
請求項1〜18のいずれか1項に記載の固体撮像装置を備える
カメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図10E】
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【図10F】
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【図10G】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18A】
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【図18B】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22A】
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【図22B】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2012−84814(P2012−84814A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−231953(P2010−231953)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】