説明

固体撮像装置

【課題】 レンズの光軸ズレならびにフォーカス調整を無くし、生産性を高めた固体撮像装置を提供する。
【解決手段】 固体撮像素子が実装される透明基板の一部をレンズとして形成し、部品点数を削減する。この構成によればレンズ10aは固体撮像素子2の受光面2aに直接実装されることになるため、レンズ10aの光軸精度ならびにフォーカス精度は、主として透明基板10裏面(固体撮像素子実装面)の平坦度、固体撮像素子2表面(受光面)の平坦度、及び固体撮像素子の実装精度に依存するようになり、少なくとも従来のようにレンズを筐体に組み込む際のレンズの傾きやレンズおよび筐体自体の寸法精度による影響はなくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図4は、従来の固体撮像装置の概略的な構成を示す断面図であり、以下、図を参照して従来の固体撮像装置について説明する。ガラス等からなる透明基板1の一方の面(裏面)に固体撮像素子2が受光面2aを対向させてフェースダウン(フリップチップ)実装されており、Auからなるメッキバンプ等(不図示)を介して透明基板1の裏面に形成された導電パターン(不図示)との電気的な接続がなされている。導電パターンの固体撮像素子2が接続された側とは別の端部には、導電パターンの数に応じた金属製のリード3が接続されてその一部がレンズホルダ(筐体)4の外部に延出されており、当該リード3を介して固体撮像素子2に対する電気信号の入出力がなされる。尚、このリード3は可撓性基板(FPC)と置き換えて構成されることもあり得る。
【0003】
固体撮像素子2の受光面2aと対向する筐体4の部位は、受光面2aに外部から光を入射させるための入光領域として開口されており、その光路中には外部からの光を集光するレンズ5(図では凸レンズ)が配置されている。レンズ5は、その周縁部が筐体4の一部にて支持され接着剤により固定されている。
【0004】
係る従来の固体撮像装置は、以下の工程により製造される。まず、ガラス等からなる透明基板1にスパッタリング法等を用いてAu、Cu、Al等からなる導電パターン(不図示)を形成し、その上にAuからなるメッキバンプ(不図示)を形成する。次に固体撮像素子2の受光面2a側の平面上に設けられた外部出力端子(電極)(不図示)にAuからなるメッキバンプ(不図示)を形成する。その後、固体撮像素子2の受光面2aと透明基板1の導電パターン形成面とが向かい合わせになるようにして固体撮像素子2を透明基板1上にフェースダウン(フリップチップ)実装し、固体撮像素子2の側面および裏面に熱硬化型樹脂6等を塗布して硬化させる。そして、以上のようにして固体撮像素子2が実装された透明基板1を金属製のリード3(リードパターン)上に位置決め載置し、超音波接続工法により透明基板1上の導電パターンとリード3とを接合させる。次にリード3が接続された透明基板1をレンズホルダ4の形状をした金型(不図示)に入れ込んで樹脂によるインサートモールド成型を行う。最後にレンズホルダ4の上端部に設けられた凹部4aにレンズを落とし込んで接着剤等により固定し、固体撮像装置の製造が完了する。(例えば、特許文献1参照)
【0005】
尚、以上の製造工程において、通常は生産性を考慮して複数のリードパターンが形成された基板(リードフレーム)上に固体撮像装置を複数個同時に形成して最後に個々に切り離す。
【特許文献1】特開2002−62462号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、このような従来の固体撮像装置においては、製造する際にレンズを筐体上端部の凹部に落とし込んで固定するため、その際に傾けて落とし込んでしまうと固体撮像素子の受光面に対するレンズの光軸がずれる恐れがあった。レンズの光軸がずれると当然ながら良好な画像は得られない。また、製造時の工程数が多く複雑であるため製造時間が掛かり生産性が悪かった。
【0007】
また、レンズや筐体自体の寸法精度(加工精度)によってはレンズの傾き、即ち光軸ズレが必然的に生じてしまったり、製造後に固体撮像素子に対するレンズのフォーカス調整をしなければならなかった。
【0008】
本発明は、以上の課題に鑑みてなされたものであり、レンズの光軸ズレおよび製造後のフォーカス調整を無くし、更には製造工程の簡略化により生産性の向上を図ることが可能な固体撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
少なくとも、
一方の面に導電パターンが形成された透明基板と、
当該透明基板の導電パターンが形成された面に受光面を対向させて実装された固体撮像素子と、
前記透明基板および前記固体撮像素子を収納する筐体と、
当該筐体内部の前記固体撮像素子の受光面と対向する位置に配置されたレンズと、
で構成される固体撮像装置であって、
前記透明基板と前記レンズとは一体的に形成された1つの光学部材として構成されている固体撮像装置とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の固体撮像装置では、固体撮像素子が実装される透明基板に凹または凸形状の加工を施してレンズとしての機能を持たせているため、従来のようにレンズを別部材として用いる必要がなくなり、部品点数の削減、ならびにそれに伴う製造工程の簡略化が可能となる。また、従来ではレンズを筐体の一部にて支持する構成のため、筐体のレンズを支持する部分での製造時におけるレンズの傾きや、レンズ自体の寸法精度、更にはその部分における筐体自体の寸法精度によりレンズの光軸ズレが起こる可能性があったのに対し、本発明ではレンズを一体化した透明基板(光学部材)に直接固体撮像素子を実装しているため、固体撮像素子の受光面に対するレンズの光軸合わせは、主として透明基板裏面(固体撮像素子実装面)の平坦度、固体撮像素子表面(受光面側)の平坦度、及び固体撮像素子の実装精度に依存し、少なくとも従来のようにレンズと筐体の寸法精度による光軸ズレはなくなる。更には、そのレンズの光軸方向における実装精度の高さから、固体撮像装置組み立て後に行うレンズのフォーカス調整も不要となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は本発明による固体撮像装置の一実施形態を示す断面図、図2は透明基板を固体撮像素子実装面側から見た斜視図、図3は透明基板に固体撮像素子をフェースダウン実装した状態を示す側面図である。本実施形態では、固体撮像素子2が実装される透明基板10の一部に曲面加工が施してあり、固体撮像素子2がフェースダウン(フリップチップ)実装される側とは反対の面を凸レンズ10aとして一体的に形成してある。係る透明基板10の裏面(固体撮像素子実装面)には、従来の如く導電パターン11が形成されており、固体撮像素子2の受光面2a側に設けられた電極(不図示)と金属製のメッキバンプ12とACF(異方性導電フィルム)13を介して接続されている。導電パターンの一端部には可撓性基板(FPC)14が接続されており、筐体15の外部に延出されて固体撮像素子2に対する電気信号の入出力がなされる。
【0012】
上記の透明基板10は、例えば透明樹脂やセラミック等からなり、MID成形(立体成形)により一方の面を滑らかな曲面の凸レンズ10aとして形成してあり、それと対向する側の面は平坦な平板状に形成されて表面にスパッタリング法等を用いてAu、Cu、Al等からなる導電パターン11が形成してある。
【0013】
固体撮像素子2表面の電極と透明基板10裏面の導電パターン11との接続は、例えばAuからなるメッキバンプ12によりなされ、透明基板10裏面(導電パターン形成面)に添着されたACF(異方性導電フィルム)を介して加熱により固体撮像素子2と透明基板10との接着固定がなされている。尚、ACFの中央部は、固体撮像素子2の受光面2aに入射する光を妨げないように開口されている。
【0014】
固体撮像素子2が実装された透明基板10は、筐体15内部に組み込まれ接着剤により固定されている。従来ではレンズ5を別部材として筐体4の凹部4aに組み込む必要があったのに対し、本発明の固体撮像装置では透明基板10にレンズ10aが一体化されているためレンズの組み込み工程は不要である。従って、レンズを組み込む際に生じるレンズの傾きや、レンズ及び筐体自体の寸法精度に起因するレンズの光軸ズレが起こる心配はない。
【0015】
また、従来ではレンズ5を筐体4の一部(凹部4a)に組み込んでおり、筐体4やレンズ5自体の寸法精度によっては固体撮像素子2の受光面2aに対してレンズ5の焦点距離が変化するため、フォーカス調整機構を設けて固体撮像装置組み立て後にレンズ5のフォーカス調整を行う必要があったのに対し、本発明ではレンズ10aを直接固体撮像素子2上に実装する形となり、そのフォーカス精度は主として透明基板10裏面(固体撮像素子実装面)の平坦度、固体撮像素子2表面(受光面側)の平坦度、及び固体撮像素子の実装精度に依存し、少なくとも従来のようにレンズと筐体の寸法精度による影響は無くなるため、従来と比較してより高いフォーカス精度が得られフォーカス調整(機構)が不要となる。
【0016】
固体撮像素子2が実装された透明基板10は、レンズ形成面を上方に向けた状態で筐体15に収納されて接着剤により固定されており、係る筐体15の上端部は、外部の光を固体撮像素子2の受光面2aに入射させるため一部が開口されている。透明基板10のレンズ形成面周縁部10bは一部が平坦になっており、その部分を筐体15内面の開口部10c周縁に当接させて接着剤で固定することにより筐体15内部が封止された状態となっている。即ち、筐体15の開口部10cから固体撮像素子2の受光面2aに至るまでの光路中の空間は透明基板10により充填された状態となるため、従来のように光路中にゴミ等が入り込む可能性がなくなり良好な画像を得ることが可能となる。
【0017】
尚、上記の構成では筐体15を別体として透明基板10と接着固定するようにしたが、従来のように金型を用いてインサートモールド成形しても良い。但し、材質によっては透明基板10やFPC14がモールド時の熱により変形する恐れがあるので注意が必要である。
【0018】
また、透明基板10のレンズ形成面もしくは固体撮像素子実装面に赤外線遮断膜(不図示)を蒸着しておけば、赤外線カットフィルタを別部材として設けることなく赤外線遮断機能を持たせることも可能である。
【0019】
このように本発明の固体撮像装置では透明基板にレンズとしての機能を持たせて一体的に形成してあるため、レンズを別部材として組み込む必要がなくなり生産性が向上すると共に、それに伴い大規模な製造設備が不要となるため、固体撮像装置の低コスト化が可能となる。
【0020】
尚、本実施例では透明基板に一体形成したレンズを凸レンズとしたが、当然ながら凹レンズとして形成することも可能である。即ち、本発明の要旨は、透明基板にレンズとしての機能を持たせることであり、本発明の精神を逸脱しない範囲ではその他種々の形態をとり得る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明による固体撮像装置の一実施形態を示す断面図(実施例)
【図2】透明基板を固体撮像素子実装面側から見た斜視図(実施例)
【図3】透明基板に固体撮像素子をフェースダウン実装した状態を示す側面図(実施例)
【図4】従来の固体撮像装置の概略的な構成を示す断面図
【符号の説明】
【0022】
1 透明基板
2 固体撮像素子
2a 受光面
3 リード
4 レンズホルダ(筐体)
4a 凹部
5 レンズ
6 熱硬化型樹脂
10 透明基板
10a レンズ
10b レンズ形成面周縁部
10c 開口部
11 導電パターン
12 メッキバンプ
13 ACF(異方性導電フィルム)
14 FPC(可撓性基板)
15 筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、
一方の面に導電パターンが形成された透明基板と、
当該透明基板の導電パターンが形成された面に受光面を対向させて実装された固体撮像素子と、
前記透明基板および前記固体撮像素子を収納する筐体と、
当該筐体内部の前記固体撮像素子の受光面と対向する位置に配置されたレンズと、
で構成される固体撮像装置であって、
前記透明基板と前記レンズとは一体的に形成された1つの光学部材として構成されていることを特徴とする固体撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−13791(P2006−13791A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−186671(P2004−186671)
【出願日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(000166948)シチズンミヨタ株式会社 (438)
【Fターム(参考)】