説明

固体炭素分解型セラミックス化学反応装置

【課題】固体炭素分解型セラミックス化学反応装置を提供する。
【解決手段】イオン伝導性セラミックス材料と、該セラミックス材料上に形成した電気化学的に固体カーボン(PM)を直接酸化除去できる触媒電極からなる化学反応機構とを有することを特徴とする化学反応装置、及びカソード、固体電解質及びアノードからなる化学反応器であって、アノードの表面で、固体電解質を介して供給される酸素イオンを利用して、C + 2O2− → CO + 4e-の反応により、固体カーボン(PM)を直接酸化除去するようにしたことを特徴とする化学反応器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体炭素分解型セラミックス化学反応装置に関するものであり、更に詳しくは、イオン伝導性セラミックス材料上に形成する電極により、電気を流すことにより、炭素系の粒子状物質(PM)等を、直接、連続的に分解することが可能なセラミックス化学反応器であり、更に、同時に、気体中の窒素酸化物等より酸素を引き抜き酸素イオン伝導性セラミックスを介して、ガス状炭化水素化合物等を電気化学的に酸化する化学反応機能を有する複合型酸化−還元セラミックス化学反応器、その電極材料、システム及び用途に関するものである。本発明は、固体炭素粒子物質や炭化水素及び窒素酸化物を電気化学的に分解可能であるため、例えば、自動車排ガス等の高温排ガスの浄化、揮発性有機化合物(VOC)の分解等へ好適に利用することができる。
【背景技術】
【0002】
生活環境の中には、人為的な発生による有害な有機物が放出されており、安全性の向上の観点において、それらの除去は重要な問題である。特に、近年、建築材料等に含まれる有機溶媒の放出によるシックハウス症等が問題となっている。また、化石燃料の燃焼による発電等のエネルギー生産や自動車等の排ガスにおいて、特に、重油燃焼に伴うディーゼル排ガス中の窒素酸化物、炭素系の粒子(PM:固体炭素とそれに付着するC以上の炭化水素)、炭化水素、一酸化炭素等の除去は、有害物質の低減といった観点から緊急を要する技術的なニーズの一つである。そのために、放出される排ガス中の固体炭素及び窒素酸化物や炭化水素等を同時に除去することが必要となる。
【0003】
この場合、例えば、窒素酸化物の還元分解と同時に、不完全燃焼の炭化水素や固体炭素、及び一酸化炭素の酸化といった異なる化学反応が共存して効率よく進むことが必要となる。既存の技術では、炭化水素、一酸化炭素、及び窒素酸化物のガス状の有害物質は、金属三元触媒等の活性触媒を利用して同時に分解されている。しかしながら、リーンバーンエンジン等では、空燃比の制御により還元反応が進まないため、窒素酸化物が浄化されにくいという問題がある。そこで、これらの物質は、酸化触媒と三元触媒を組み合わせて用いることで、反応雰囲気制御によりバッチ式に分解されている。そして、更に、高い酸素濃度条件下でも、高効率で窒素酸化物を還元分解できる技術が望まれている。また、PM等の固体炭素等が混在する場合は、それらを化学的に分解することは難しいので、物理的にフィルター等により除去することが行われている。
【0004】
しかしながら、フィルター等を利用する場合、定期的な交換・洗浄等が必要である。よって、窒素酸化物の分解と同時に、燃焼しにくい固体炭素や大分子量の炭化水素等を完全、かつ連続的に酸化分解することが望まれている。酸化分解と還元分解を同時に行う手段として、電気化学的に化学反応制御する方法がある。特に、イオン伝導体セラミックス等の電気化学セルを利用し、電気化学的に還元分解を進めることが期待できる。また、このようなイオン伝導型セラミックスセルで酸素引き込みにより還元を進める場合、同時に活性な酸素が放出される。そのため、それらを有効に利用する構造によりPM等の固体炭素を酸化燃焼させることで、同時に排ガス中の有害物質を連続的に除去できることが期待できる。更に、排ガス等は高温であるので、それらの条件下で安定に作動するセラミックス等の材料の開発、利用が望まれている。
【0005】
通常、酸素イオン伝導体セラミックスへ電流を流すことにより、電極上で供給される電子により酸素がイオン化され、そのイオンの伝導として、反対側の電極で電子と酸素を放出し、電気の流れとなる。この場合、電極材料として還元反応を促進する材料と酸化反応を促進する材料をそれぞれ配置することにより電気化学的な作用と触媒的な作用が共存するシステムが形成される。しかしながら、電極材料やその構造によりその特性は大きく変化する。また、通常の構造では、キャリア源となる酸素分子を直接引き込み、排出する。そのため、目的とする固体炭素、一酸化炭素、及び炭化水素等の酸化分解、及び窒素酸化物の還元分解と直接的な関係のない酸素の移動にエネルギーが利用される。
【0006】
このことは、総合的なエネルギー効率の低下をもたらす。そこで、反応に寄与しない酸素の出入りに使用される電力を低下させる構造を構築し、少ない電流で効率良く反応を進めることが必要である。また、PM等の固体炭素の酸化においては、放出される酸素を利用し、酸化を促進する酸化触媒となる材料や活性酸素やラジカル発生剤といった酸化反応を急速に進める機能を有する材料が配置されることが必要である。また、窒素酸化物の還元においては、還元触媒として作用する、遷移金属類の材料が電極付近に存在し、無害な窒素と酸素に分解することが必要となる。更に、排ガス等の高温条件でPMや窒素酸化物等を連続的に分解除去するためには、これらの反応促進材料を配置したセラミックス反応装置を作製し、効率よく電気を供給し、作動させる構造が必要である。
【0007】
従来、先行技術として、電気化学リアクターに関する技術及び固体炭素分解に関する技術が種々提案されている。電気化学リアクターに関するものとして、例えば、化学反応器(特許文献1)、窒素酸化物の除去システム(特許文献2)、窒素酸化物除去触媒(特許文献3)、化学反応器用電極材料(特許文献4)、窒素酸化物浄化用化学反応器(特許文献5)、電気化学セル型化学反応システム(特許文献6)、電気化学型化学反応システム及びその活性化方法(特許文献7)、触媒反応器(特許文献8、9、及び非特許文献1)、等が提案されている。また、固体炭素分解に関するものとして、例えば、排ガス処理装置(特許文献10、11)、ディーゼル自動車排煙除去装置(特許文献12)、等が提案されている。
【0008】
【特許文献1】特開2003−033648号公報
【特許文献2】特開2004−041965号公報
【特許文献3】特開2004−000913号公報
【特許文献4】特開2003−265950号公報
【特許文献5】特開2004−041975号公報
【特許文献6】特開2004−058028号公報
【特許文献7】特開2004−058029号公報
【特許文献8】米国特許第4902487号明細書
【特許文献9】特公平7−106290号公報
【特許文献10】特開2003−135928号公報
【特許文献11】特開2003−126654号公報
【特許文献12】特開2004−162681号公報
【非特許文献1】日本表面科学会編、環境触媒、共立出版株式会社、167頁(1997)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、粉塵等の炭素系粒子(PM)等を電気化学的に直接、かつ連続的に分解可能なセラミックス化学反応装置を開発することを目標として鋭意研究を積み重ねた結果、酸化ジルコニウム等の金属酸化物に異種元素(希土類金属、アルカリ土類金属等)を固溶し、酸素イオン伝導性による導電性を示す単結晶又は多結晶材料に電流を流すことにより所期の目的を達成し得ることを見出し、更に研究を重ねて、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明は、固体炭素分解型セラミックス化学反応装置を提供することを目的とするものである。また、本発明は、イオン伝導性セラミックス材料上に形成する電極により電気を流すことにより、炭素系の粒子状物質(PM)等を、直接、連続的に分解するセラミックス反応器を提供することを目的とするものである。また、本発明は、気体中の窒素酸化物等より酸素を引き抜き、これらを還元分解すると同時に、酸素イオン伝導性セラミックスを介して、酸素イオンをポンピングし、ガス状炭化水素化合物等を酸化することを可能とする複合型−酸化・還元セラミックス反応器、その電極材料及びそのシステムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)イオン伝導性セラミックス材料と、該セラミックス材料上に形成した電気化学的に固体カーボン(PM)を直接酸化除去できる触媒電極からなる化学反応機構とを有することを特徴とする化学反応装置。
(2)イオン伝導性セラミックス材料が、金属酸化物に、異種元素を固溶した単結晶又は多結晶材料である、前記(1)に記載の化学反応装置。
(3)金属酸化物が、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化ガリウム、又は酸化ビスマスであり、異種元素が、希土類金属、又はアルカリ土類金属である、前記(2)に記載の化学反応装置。
(4)触媒電極が、酸化物、又は貴金属の導電性材料からなる、前記(1)に記載の化学反応装置。
(5)触媒電極上で、固体カーボン(PM)を直接COに酸化し、除去する作用を有する前記(1)に記載の化学反応装置。
(6)触媒電極として、酸化剤及びアルミン酸カルシウムを用いる、前記(1)に記載の化学反応装置。
(7)電極を2ヶ所以上形成し、これらに電流を流すようにした、前記(1)に記載の化学反応装置。
(8)カソード、固体電解質及びアノードからなる化学反応器であって、アノードの表面で、固体電解質を介して供給される酸素イオンを利用して、
C + 2O2− → CO + 4e-
の反応により、固体カーボン(PM)を直接酸化除去するようにしたことを特徴とする化学反応装置。
(9)カソードで還元反応を行い、アノードで酸化反応を行う、前記(7)に記載の化学反応装置。
(10)カソードで、気体中の窒素酸化物及び/又は二酸化炭素を還元分解し、生じた酸素イオンを固体電解質を介してアノードに供給し、アノードで、炭化水素、一酸化炭素及び/又は固体カーボンを電気化学的に直接酸化する、前記(8)に記載の化学反応装置。
(11)化学反応装置が、排ガス浄化用化学反応装置である、前記(1)又は(8)に記載の化学反応装置。
(12)化学反応装置が、揮発性有機化合物浄化用化学反応装置である、前記(1)又は(8)に記載の化学反応装置。
(13)前記(1)又は(8)に記載の化学反応装置を具備し、該化学反応装置の還元反応及び/又は酸化反応を利用して有害物質を分解除去する機能を有することを特徴とする排ガス浄化装置。
(14)前記(1)から(8)に記載の化学反応装置を具備し、該化学反応装置の還元反応及び/又は酸化反応を利用して気相中の揮発性有機化合物(VOC)を分解除去する機能を有することを特徴とする気相浄化装置。
(15)前記(1)又は(8)に記載の化学反応装置を排ガス通路に複数配設したことを特徴とする排ガス浄化装置。
【0012】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明の化学反応装置は、電気化学的に固体カーボン(PM)を直接酸化除去できる触媒電極をイオン伝導性セラミックス材料上に形成した化学反応機構を有することを特徴とするものである。本発明の化学反応装置は、好適には、例えば、固体電解質の両面にカソード及びアノードの電極を具備し、該電極に電流を流す構造を有しており、カソードにおける還元反応で生じた酸素イオンを固体電解質を介してアノードに供給し、アノードで直接酸化反応により、固体カーボンをCOに変換し、除去する機能を有している。しかし、本発明の化学反応装置は、これに限定されるものではなく、例えば、少なくとも電気化学的に固体カーボン(PM)を直接酸化除去できる触媒電極をイオン伝導性セラミックス上に形成した化学反応機構を有するものであれば、本発明の化学反応装置として使用することが可能である。
【0013】
本発明において、上記イオン伝導性セラミックス材料としては、好適には、例えば、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化ガリウム、酸化ビスマス等の金属酸化物に異種元素を固溶した、酸素イオン伝導性による導電性を示す単結晶又は多結晶材料が例示され、また、異種元素として、例えば、希土類金属、アルカリ土類金属等が例示される。しかし、これらに制限されるものではなく、これらと同効のものであれば同様に使用することができる。また、上記電極材料としては、好適には、例えば、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化銅、酸化鉄、酸化マンガン、アルミン酸カルシウム(CaAl)、チタン酸塩等の酸化物材料や、白金、金、銀等の貴金属材料等の導電性材料が例示されるが、これらに制限されるものではなく、これらと同効の材料であれば、同様に使用することができる。
【0014】
上記電極材料は、例えば、上記導電性材料を2ヶ所以上、塗布及び/又は焼付けた構造に形成し、それらの材料を電極として電流を流せる構造に形成する。これらの具体的構造は、化学反応装置の使用目的、大きさ、種類等に応じて任意に設計することが可能である。例えば、本発明では、上記イオン伝導性セラミックス材料上に、触媒電極を形成し、該触媒電極の表面で、固体カーボンの直接酸化反応を行う構造を有する化学反応装置を構築することが可能であり、また、固体電解質の両側にカソード及びアノードの電極を取り付け、カソードで還元反応を行い、生じた酸素イオンを固体電解質を介してアノードに供給し、アノードで固体カーボンを直接酸化する酸化反応を行う構造を有する化学反応装置を構築することも可能である。本発明では、これらの化学反応装置の具体的構造については、装置の使用目的、種類、大きさ等に応じて任意に設計することができる。
【0015】
本発明において、例えば、カソード、固体電解質及びアノードからなる化学反応装置を構築した場合、該化学反応装置に電流を流すことで、カソードでは還元反応が起こり、同時に、アノードでは、上記還元反応で生じた酸素イオンを利用して、酸化反応を行うことができるので、アノードの表面で、固体カーボンを電気化学的に直接酸化除去することが可能となる。本発明の化学反応装置は、例えば、排ガス中の窒素酸化物及び固体カーボン等の有害物質の除去に好適に使用することができる。その場合、カソードで排ガス中の窒素酸化物、二酸化炭素等を還元分解し、生じた酸素イオンを固体電解質のイオン伝導性セラミックス材料を経由してアノードに供給し、アノードでは、該酸素イオンを利用して粉塵等の炭素系粒子(PM)、炭化水素、及び一酸化炭素等を電気化学的に直接、かつ連続的に酸化、除去することができる。
【0016】
近年、Ca12Al1433等のアルミン酸カルシウム等の材料で、電解により活性な酸素ラジカルを発生させる物質が報告されているが、これらの材料は、強力な酸化力のため、固体状の炭素においても生成する活性酸素ラジカルにより酸化反応を進めることが大いに期待される。しかしながら、それらを用いたPM等の固体炭素の分解事例は、これまで報告されていない。本発明では、このような電解制御により固体酸化を促進する材料と酸素イオンの移動及び酸素を放出する酸素イオン伝導体セラミックス材料を組み合わせることにより、効果的にPM等の固体炭素を連続的に分解可能な反応器を作製することができる。同時に、酸素イオン伝導体への酸素の引き込み(酸素吸収能)を利用し、窒素酸化物から酸素を引き抜き、安全な窒素への還元分解が期待できる。
【0017】
このとき、還元反応を選択的に促進させる酸化ニッケルや酸化銅等の還元可能な遷移金属酸化物を共存させることにより、効果的な還元反応が進められる。高温用酸素イオン伝導体としては、高温用燃料電池等での利用が期待されている、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化ガリウム及び酸化ビスマス等の材料を用いることが好ましい。それらを用い、酸素等のガスが自然に透過しない程度の緻密な膜構造を持ち、その膜構造を介して上記の材料を効果的に配置することで、目的の固体炭素材料とガス状有害物(窒素酸化物等)の同時、かつ連続的な分解除去が可能となる。
【0018】
本発明では、好適なものとして、例えば、酸化ジルコニウム、酸化セリウム等の酸素イオン伝導体セラミックス表面へ、白金等の電極材料及びCa12Al1433等のアルミン酸カルシウム、酸化ニッケル等の触媒材料を形成することで、化学反応装置を構築することができる。そして、固体炭素源としての炭素粉末をセラミックス化学反応装置上へ供給し、自己燃焼しない高温条件で加熱し、電気を供給することで、セラミックス化学反応装置から供給される酸素により電気化学的に炭素を連続的に燃焼させることができる。上記セラミックス化学反応装置において、炭素源と同時に共存する窒素酸化物等を分解させることができる。また、ガス成分中の炭化水素等をセラミックス化学反応装置で連続的に分解させることができる。
【0019】
本発明では、好適には、例えば、カソード、固体電解質及びアノードからなる化学反応器であって、カソードで、気体中の窒素酸化物及び/又は二酸化炭素を還元分解し、生じた酸素イオンを固体電解質を介してアノードに供給する化学反応器が用いられる。この場合、化学反応器は、上述の機能を有するものであれば、該化学反応器の構造、形状等は特に制限されるものではなく、任意の化学反応器を使用することができるが、本発明では、好適には、例えば、被処理物質の化学反応もしくはエネルギー変換反応を行うための化学反応器において、遷移金属の微細粒子、酸素欠損濃集部を有するイオン伝導体、及び電子伝導体を組み合わせて、(1)反応場となる遷移金属の微細粒子からなる還元相、(2)被処理物質を反応場に導入するための空間、(3)反応場となるイオン伝導体結晶構造の中に形成された酸素欠損濃集部、(4)イオン伝導体の酸素欠損濃集部に吸着する酸素分子をイオン化するために必要な電子を供給する電子伝導相、及び(5)イオン伝導体の酸素欠損でイオン化された酸素分子を反応系外に搬出するための経路となるイオン伝導相、を「基本単位」とする化学反応部を形成し、それにより、共存する酸素分子に対して被処理物質を別の吸着分解反応サイトにおいて選択的に吸着分解させるようにした化学反応器を使用することができる。
【0020】
次に、この化学反応器について更に詳細に説明すると、上記化学反応器において、被処理物質の反応に対して必要な「基本単位」は、(1)(例えば、NO分子のNに対する)反応場となる遷移金属の微細粒子構造、(2)被処理物質を反応場に導入するための空間(同時に被処理物質を反応場に限定させるためのナノ空間)、(3)(例えば、NO分子のOに対する)反応場となるイオン伝導体結晶構造の中に形成される酸素欠損濃集部、(4)イオン伝導体の酸素欠損濃集部に吸着する酸素分子をイオン化するために必要な電子を供給する電子伝導相、(5)イオン伝導体の酸素欠損でイオン化された酸素分子を反応系外に搬出するための経路となるイオン伝導相、の5つの要素から構成される。
【0021】
ここで、上記(1)において、「遷移金属」を使用する理由は、共有結合性の分子に対して遷移金属表面が選択吸着性を有するからであり、また、「微細粒子構造」とするのは、この吸着反応効率が、表面積の増大により高くなるからである。また、上記(2)において、還元相に接する「ナノ空間」が必要とされるのは、例えば、NO分子が速やかに吸着反応を生じせしめるための空間の大きさには制限があり、一方で、被処理物質の量が多い場合に(例えば、自動車排ガス等)、十分に処理できるための空間の大きさが必要であるからである。これらの相反する要求の解決のためには、ナノメートルスケールの空間が必要であり、その空間として、例えば、空孔が外側から内側に向かって細くなるもの、更には、排ガス等の流路方向に対して平行な、例えば、一方向貫通孔となるものが望ましいものとして例示される。それにより、被処理物質を、ナノメートルスケールの空間に流入又は拡散させ、イオン伝導体の酸素欠損濃集部に選択的に吸着させ、還元相表面における化学反応を促進させることができる。
【0022】
また、上記(3)の酸素欠損濃集部については、酸素を吸着し、同時に又はその後で電子を与える能力を有する物質又は構造であればよい。例えば、酸化物結晶として、その中に酸素欠損を有し、酸素を捕獲する能力を有するものが用いられる。電子を与える物質としては、酸化物の内で導電性を有するものが好ましい。また、上記(4)の電子伝導相については、電子伝導体又は導電体を密着して組み合わせることでもよい。更に、上記(5)において、酸素イオンを系外に排出するための伝導経路としてのイオン伝導体は、単体としても可能であるが、上記(3)と一体とすることが一般的に好適であり、あるいは、上記(4)と一体化する構造又は物質(いわゆる混合導電体)とすることも可能である。本発明では、好適には、例えば、遷移金属の微細粒子、酸素欠損濃集部を有するイオン伝導体、及び電子伝導体、を構成要素として、これらを、上記組成及び構造となるように、配置する。その場合、各構成成分は、好適には、粒子状で配置されるが、その形態は特に制限されるものではない。
【0023】
上記化学反応器では、例えば、被処理物質が燃焼排ガス中の窒素酸化物である場合、還元相において窒素酸化物を還元して酸素イオンを生成させ、イオン伝導相において酸素イオンを伝導させる。上記化学反応器の形態は、特に制限されるものではないが、好適には、例えば、管状、平板状、ハニカム状等が例示されるが、特に、管状、ハニカム状のように、一対の開口を有する貫通孔を一つ又は複数有しており、各貫通孔中に化学反応部が位置していることが好ましく、あるいは平板状の形態であり、その表面に化学反応部が位置することで、可能な限り大きな反応面積を有する形態であることも同様に好ましい。
【0024】
上記化学反応部において、還元相は、多孔質であって、反応の対象とする被処理物質を選択的に吸着するものであることが好ましい。この還元相では、被処理物質中に含まれる元素へ電子を供給してイオンを生成させ、生成したイオンをイオン伝導相へ伝達するために、導電性物質からなることが好ましい。また、還元相は、電子及びイオンの伝達を促進するために、電子伝導性とイオン伝導性の両特性を有する混合伝導性物質からなること、又は電子伝導性物質とイオン伝導性物質の混合物からなることがより好ましい。
【0025】
これらの導電性物質及びイオン伝導性物質は、特に限定されるものではないが、導電性物質としては、好適には、例えば、白金、パラジウム等の貴金属や、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化銅、ランタンマンガナイト、ランタンコバルタイト、ランタンクロマイト等の金属酸化物や、バリウム含有酸化物やセオライト等も用いられる。前記物質の少なくとも1種類以上を、少なくとも1種類以上のイオン伝導性物質との混合質として用いることも好ましい。また、イオン伝導性物質としては、好適には、例えば、イットリア又は酸化スカンジウムで安定化したジルコニア、酸化ガドリニウム又は酸化サマリウムで安定化したセリア、ランタンガレイト等が用いられる。この還元相は、電子伝導体に接するか若しくはナノメートルスケールに近接している。また、イオン伝導体に接する還元相は、これとは別のイオン伝導体までの還元相部分の一部若しくは全部を占めるだけの体積を有する。
【0026】
イオン伝導相は、イオン伝導性を有する固体電解質からなり、好ましくは、酸素イオン導電性を有する固体電解質からなる。酸素イオン伝導性を有する固体電解質としては、イットリア又は酸化スカンジウムで安定化したジルコニア、酸化ガドリニウム又は酸化サマリウムで安定化したセリア、ランタンガレイトが挙げられるが、これらに限定されるものではない。このイオン伝導相としては、好ましくは、高い導電性と強度を有し、長期安定性に優れたイットリア又は酸化スカンジウムで安定化したジルコニアが用いられ、また、比較的短時間の作動により、その使用目的を達することのできる用途の場合には、セリア系固体電解質も好ましく用いられる。
【0027】
上記構成からなる化学反応部は、高効率での被処理物質の吸着分解に加え、酸素分子の吸着と被処理物質の吸着分解を、各々の反応に適した別々の物質により同時に行うことが可能な構造を有する。即ち、酸化物の還元により生成もしくは当初から含まれる金属相(高反応性のためには、望ましくは超微粒子(10〜100nm径)の態様)と、その近傍に存在するイオン伝導相の酸素欠損濃集部(デバイ長による計算からの推定値では、5nm程度の領域)とが、接しており、かつ接触部周辺に数〜数100nm程度の微小空間が共存することにより、導入された被処理ガス中の酸素分子が酸素欠損濃集部に、被処理物質が金属相に各々選択的に吸着分解されることで、消費電力が著しく低減される。
【0028】
このような化学反応部の構造は、熱処理プロセス(ジルコニア−酸化ニッケル系で1400〜1450℃大気中での熱処理)に加え、化学反応システムへの通電処理又は還元雰囲気等での熱処理を行うことにより形成される。即ち、例えば、比較的容易に還元されやすい酸化物を用い、数100℃以上の高温下で通電することで還元相を形成する。その過程で、酸化還元反応による結晶相の体積変化により、被処理ガスの導入に適したナノメートルからミクロンメートルサイズの空孔の生成、還元相の再結晶による超微粒子化、更には、酸化還元反応を通じたイオン伝導相の酸素欠損濃集部の形成等の、高効率反応に好ましい微細構造が形成される。
【0029】
従来型の電気化学セル方式の化学反応システムにおいては、電気的に化学反応を促進させるための基本構造として、固体電解質を挟んだ2枚の電極(カソード及びアノード)若しくはいずれかの電極に触媒機能を付与したものが使われているが、上記化学反応器の特徴として、全体として電気回路を形成するような上記構造は必ずしも必要ではなく、反応を行う局所構造が活性化されるためには、基本的には、イオン伝導体と還元相の組合せのみを最低限具備することが必要条件となる。
【0030】
上記化学反応器では、このような微細構造を採用することにより、従来は、酸素分子の分解反応と同じ反応サイト(反応活性点)においてのみ可能であった、窒素酸化物の還元分解などの化学反応の反応場として、2種類以上の原子、分子又は化合物の同時又は短時間に並行及び競合して生じる反応に対し、異なる反応サイトを提供することで、反応の選択性を高め、その結果として、反応効率を飛躍的に向上させることが可能となる。
【0031】
このような構造を構成する物質としては、イオン伝導相と電子伝導相の組合せ、混合伝導相同士又はこれとイオン伝導相、電子伝導相との組合せが可能である。例えば、被処理物を窒素酸化物とした場合、還元相としては、ニッケル等の金属相が、高選択吸着性を示すため、より好ましい。還元相がイオン伝導体に接することにより、例えば、被処理物質を窒素酸化物とした場合に、還元相側で窒素酸化物中の窒素原子を吸着し、一方、イオン伝導体の酸素欠損で酸素原子を吸着することが、より効果的に行われることが可能となる。このため、上記構成成分を粒子状にして、一般に、粒子状の形態を有する還元相と、複数の同じく一般に粒子状であるイオン伝導体に対して、被処理物質が、より多く、かつ還元相とイオン伝導体の両者により同時に接することができる構造とすることが望ましい。
【0032】
次に、本発明の化学反応装置について更に具体的に説明すると、本発明では、セラミックス化学反応装置として、酸素イオン伝導体である酸化ジルコニウム、又は酸化セリウムセラミックス基板上へ、高温で電気を流すために、白金等の貴金属電極を形成し、更に、固体炭素の燃焼触媒となるアルミン酸カルシウム等や窒素酸化物還元触媒となる酸化ニッケル等を配置する構造をセラミックス化学反応装置へ形成する。本発明のセラミックス化学反応装置で固体炭素の分解と窒素酸化物の同時分解を試みるために、セラミックス反応装置上へ固体炭素の粉体を焼き付け、高温雰囲気で電解をかけ、電気の供給により、セラミックス化学反応装置で固体炭素が燃焼することを調べた結果、500℃において電解をかけると、表面の炭素が電気化学的に直接分解し、除去できることが分かった。更に、窒素酸化物(NOx)を共存させることにより、固体炭素と窒素酸化物が同時に電気化学的に分解することが分かった。
【0033】
次に、セラミックス化学反応装置で炭化水素と窒素酸化物の同時分解を試みるために、本発明のセラミックス化学反応装置を用い、窒素酸化物と炭化水素(エタン)を流通し、電解を試みた結果、セラミックス化学反応装置での電気化学的な酸素の出入りにより窒素酸化物の窒素への分解と炭化水素の二酸化炭素への分解が同時に進むことが確認できた。本発明の化学反応装置を利用することにより、例えば、自動車排ガス等に含まれる、PM等の固体炭素、窒素酸化物、及び未燃焼の炭化水素等を除去することが可能となる。
【0034】
自動車などの排ガス対策として、特に、ディーゼル排ガス中の窒素酸化物、炭素系の粒子、炭化水素、及び一酸化炭素等の有害物質を低減し、除去することが急務の課題となっているが、従来法では、例えば、炭化水素、一酸化炭素、及び窒素酸化物のガス状物質は、金属三元触媒等の活性触媒を利用して分解されており、また、炭素系の粒子(PM)が混在する場合には、物理的にフィルターによる分離除去と、その後の処分が行われている。フィルターによる除去の場合、フィルターの交換、洗浄等の問題があり、処理の効率及びコストの面で改善が必要とされている。これに対して、本発明では、排ガス中の窒素酸化物を還元分解すると同時に、還元反応で生じる酸素イオンを有効利用して、燃焼しにくい固体炭素や大分子量の炭化水素等を直接酸化除去することが可能であり、本発明は、特に、固体炭素が混在している排ガス中の有害物質を効率よく除去する浄化手段としてきわめて有用である。
【0035】
本発明のような、電気化学的に排ガス中の固体炭素(PM)を直接酸化除去できる化学反応装置はこれまで報告例がなく、本発明が最初である。また、触媒電極として、酸化剤/アルミン酸カルシウム(CaAl)を利用した例もこれまで報告例がなく、本発明が最初である。この触媒電極は、既存の貴金属触媒と比較しても高い優位性を有するものであることが本発明者らによって確認された。本発明は、特に、排ガス中の窒素酸化物等の還元分解で生じた酸素イオンを基板のイオン伝導性セラミックス材料中をポンピングすることで吸引し、該酸素イオンを利用して、電気化学的に固体炭素等を直接酸化除去するものであり、これまでに提案されたことのない新しい固体炭素分解型セラミックス化学反応装置を提供することを実現するものである。
【0036】
このように、本発明は、セラミックス反応装置に電流を流し、該化学反応装置の一ヶ所では酸化反応、他の箇所では還元反応という異なる反応を同時に起こして、例えば、排ガス中の有害物質を低消費電力で浄化することを可能とする新しい化学反応システムからなる化学反応装置を提供することを可能とするものである。そして、該化学反応装置を構成する、基板のイオン伝導性セラミックス材料及び該基板の上に形成する触媒電極の種類、形態、あるいは、カソード、固体電解質及びアノードの種類、形態等は、該化学反応装置の使用目的、種類及び大きさ等に応じて任意に設計することが可能であり、本発明では、それらの具体的構成は、特に制限されない。
【発明の効果】
【0037】
本発明により、1)酸化ジルコニウムや酸化セリウム等の酸素イオン伝導体セラミックス、白金等の電極材料及びアルミン酸カルシウムや酸化ニッケル等の触媒材料を組み合わせた化学反応機構を有する固体炭素分解型セラミックス化学反応装置を提供できる、2)該化学反応装置では、固体炭素粒子物質や炭化水素及び窒素酸化物を電気化学的に連続的に分解可能である、3)該化学反応装置は、自動車排ガス等の高温排ガスの浄化、揮発性有機化合物(VOC)の分解等へ利用できる、4)本発明のセラミックス化学反応装置では、酸化反応及び還元反応を電気化学的に同時、かつ連続的に進められることから、本発明の装置は、酸化還元反応を伴う化学反応リアクターとしても利用可能である、という格別の効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
次に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0039】
(セラミックス化学反応装置の作製)
0.2−0.5mmの厚さの酸化ジルコニウム及び酸化セリウムのイオン伝導性セラミックス基板(φ20mm)へ、触媒材料として市販白金ペースト(TR−707、田中貴金属(株))をスクリーンプリントし、150℃、1時間乾燥後、950℃、2時間焼成し、白金電極を2箇所(両面に)形成した。このとき、電極面積はφ10mmとし、膜厚は100μmとした。また、イオン伝導体基板と触媒材料が直接接触するように、白金等の電極を網目状にプリントした。更に、その表面へ、CaCO及びγ−Al(Ca:Al=12:14)を所定比で混合し、1000℃、酸素流通下で焼成し、アルミン酸カルシウム(Ca12Al1433)を合成した後、これを遊星ボールミルで粉砕したアルミン酸カルシウム粉末をポリエチレングリコール等の溶媒でペースト状にしたものを同様にスクリーンプリントで白金電極を覆うように塗布した。このときの膜厚は約100μmとした。更に、酸化ニッケルと酸化ジルコニウムを所定比(Ni:Zr=50:50)で混合し、ポリエチレングリコール等の溶媒でペースト状にしたものを同様にスクリーンプリントした。それらは、それぞれ1000−1500℃で焼成し、電極上に焼きつけ、作製した。図1に、セラミックス化学反応装置の模式図を示す。
【実施例2】
【0040】
(固体炭素のセラミックス化学反応装置での連続分解)
上記実施例1で製造したセラミックス化学反応装置のアノード(Anode)のアルミン酸カルシウム上へ、グラッシーカーボンのペーストをスクリーンプリントで塗布し、150℃で乾燥後、空気中500℃で焼成したものを作製した。塗布した炭素重量を測定した後、セラミックス化学反応装置へ電気を流すリード線(白金)を取り付け、石英管中で窒素酸化物(1000ppmNOガス)とHeの混合ガスを50ml/minで流通し、電気炉で500−550℃で加熱し、種々の電流(電圧)を供給することにより、セラミックス化学反応装置表面の炭素の減少量を調べた。また、このとき、酸素源は、窒素酸化物をセラミックス化学反応装置のカソード(Cathode)で分解し、生成する酸素を用いた。更に、このとき、同時分解される窒素酸化物の量もNOx分析計で測定した。
【0041】
図2に、550℃での電解前後での基板上の固体炭素の写真を示す。電解をかける前は温度を上げても炭素は除去できなかったが、1.5Vの電解を1−2時間かけた場合、表面の固体炭素が完全に除去できることが分かった。また、このとき、電流(電圧)を供給することにより、共存するNOxが同時に70ppm分解した。図3に、セラミックス化学反応装置での固体炭素及び窒素酸化物の同時分解結果(印加電圧と窒素酸化物分解量と生成炭素量の関係)を示す。また、表1(銀、白金及びアルミン酸カルシウム触媒の特性比較)に、セラミックス化学反応装置上の酸化電極材料を変えた場合の500℃でのセラミックス化学反応装置での固体炭素の電気化学的な分解結果を示す。アルミン酸カルシウムを電極材料として用いた場合、固体炭素の分解が最も早く進むことが確認できた。
【0042】
【表1】

【実施例3】
【0043】
(セラミックス化学反応装置での炭化水素と窒素酸化物の同時分解)
上記実施例2で用いたセラミックス化学反応装置に、ガス状の炭化水素(エタン)と窒素酸化物の混合ガスを流通させ、500℃でセラミックス化学反応装置へ0−2V電解をかけたときの炭化水素の分解量と生成する二酸化炭素の量を調べた。更に、窒素酸化物の分解量を調べた。その結果を図4に示す。500ppmエタン、1000ppmNOを流速50ml/minで流した場合、2Vの電解をかけた時、エタン70ppm(14%)が連続的に分解し、同時に200ppm(20%)のNOが除去できた。また、生成物として炭化水素及び窒素酸化物の分解に伴い、COとOの生成が確認できた。このときの消費電力は約34mWであり、微小な電力での分解が可能であることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上詳述したように、本発明は、固体炭素分解型セラミックス化学反応装置に係るものであり、本発明により、電気化学的に固体炭素(PM)を直接酸化除去できる化学反応装置を提供できる。また、触媒電極として酸化剤/アルミン酸カルシウム(CaAl)を利用することにより、貴金属触媒の場合と比較して優位性を有する化学反応装置を提供できる。本発明の化学反応装置は、気相中の窒素酸化物、二酸化炭素等を還元分解し、固体炭素粒子物質、炭化水素及び一酸化炭素を電気化学的に連続的に直接酸化除去する機能を有するので、例えば、自動車排ガス等の高温排ガスの浄化、揮発性有機化合物(VOC)の分解等へ利用できる。また、本発明の化学反応装置では、還元反応及び酸化反応を電気化学的に同時、かつ連続的に行うことができるので、本発明は、例えば、酸化還元反応を伴う化学反応リアクターとして利用できる。本発明は、微小な電力消費で、窒素酸化物の分解と固体炭素の除去を同時、かつ連続的に行うことができる新しいタイプのセラミックス化学反応装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の固体炭素分解型セラミックス化学反応装置の模式図を示す。
【図2】550℃での電解前後での基板上の固体酸素の写真を示す。
【図3】本発明の固体炭素分解型セラミックス化学反応装置での固体炭素及び窒素酸化物の同時分解結果(印加電圧と窒素酸化物分解量と生成炭酸量の関係)を示す。
【図4】本発明の固体炭素分解型セラミックス化学反応装置での炭化水素及び窒素酸化物の同時分解結果(印加電圧と窒素酸化物分解量と生成炭酸量の関係)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン伝導性セラミックス材料と、該セラミックス材料上に形成した電気化学的に固体カーボン(PM)を直接酸化除去できる触媒電極からなる化学反応機構とを有することを特徴とする化学反応装置。
【請求項2】
イオン伝導性セラミックス材料が、金属酸化物に、異種元素を固溶した単結晶又は多結晶材料である、請求項1に記載の化学反応装置。
【請求項3】
金属酸化物が、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化ガリウム、又は酸化ビスマスであり、異種元素が、希土類金属、又はアルカリ土類金属である、請求項2に記載の化学反応装置。
【請求項4】
触媒電極が、酸化物、又は貴金属の導電性材料からなる、請求項1に記載の化学反応装置。
【請求項5】
触媒電極上で、固体カーボン(PM)を直接COに酸化し、除去する作用を有する、請求項1に記載の化学反応装置。
【請求項6】
触媒電極として、酸化剤及びアルミン酸カルシウムを用いる、請求項1に記載の化学反応装置。
【請求項7】
電極を2ヶ所以上形成し、これらに電流を流すようにした、請求項1に記載の化学反応装置。
【請求項8】
カソード、固体電解質及びアノードからなる化学反応器であって、アノードの表面で、固体電解質を介して供給される酸素イオンを利用して、
C + 2O2− → CO + 4e-
の反応により、固体カーボン(PM)を直接酸化除去するようにしたことを特徴とする化学反応装置。
【請求項9】
カソードで還元反応を行い、アノードで酸化反応を行う、請求項7に記載の化学反応装置。
【請求項10】
カソードで、気体中の窒素酸化物及び/又は二酸化炭素を還元分解し、生じた酸素イオンを固体電解質を介してアノードに供給し、アノードで、炭化水素、一酸化炭素及び/又は固体カーボンを電気化学的に直接酸化する、請求項8に記載の化学反応装置。
【請求項11】
化学反応装置が、排ガス浄化用化学反応装置である、請求項1又は8に記載の化学反応装置。
【請求項12】
化学反応装置が、揮発性有機化合物浄化用化学反応装置である、請求項1又は8に記載の化学反応装置。
【請求項13】
請求項1又は8に記載の化学反応装置を具備し、該化学反応装置の還元反応及び/又は酸化反応を利用して有害物質を分解除去する機能を有することを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項14】
請求項1から8に記載の化学反応装置を具備し、該化学反応装置の還元反応及び/又は酸化反応を利用して気相中の揮発性有機化合物(VOC)を分解除去する機能を有することを特徴とする気相浄化装置。
【請求項15】
請求項1又は8に記載の化学反応装置を排ガス通路に複数配設したことを特徴とする排ガス浄化装置。

【図3】
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【図4】
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【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−198563(P2006−198563A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−14927(P2005−14927)
【出願日】平成17年1月24日(2005.1.24)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】