説明

固体粒子の製造装置、固体粒子の製造方法及び塗布液

【課題】より微細な固体粒子を得る。
【解決手段】固体粒子の製造装置1は、固体材料と液体の混合物を収容する容器2と、その容器2内の混合物を加圧する加圧装置3と、容器2内の混合物を加熱する加熱装置4と、容器2内の混合物を液体の沸点が固体材料の融点以上となる圧力に加圧し、加圧状態の液体の沸点より低く固体材料の融点以上の温度に加熱して、固体材料が液体中で溶融した溶融混合物を生成するように加圧装置3及び加熱装置4を制御する制御装置8と、容器2内の溶融混合物を容器2外に噴霧する噴霧装置6と、その噴霧装置6により溶融混合物が噴霧され、固体材料が粒子化されて形成された固体粒子を回収する回収装置7とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体粒子を製造する固体粒子の製造装置及び固体粒子の製造方法に関し、さらに、固体粒子を有する塗布液に関する。
【背景技術】
【0002】
固体粒子の一つである金属粒子の製造方法としては、金属ブロックを機械的に粉砕して金属粒子を製造する粉砕法や金属溶湯流に水を吹き付けて金属粒子を製造する水アトマイズ法、金属溶湯流にガスを吹き付けて金属粒子を製造するガスアトマイズ法などの様々な方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、前述の金属粒子としては、例えば、ハンダボールが挙げられる。近年、ハンダボールは、BGA(Ball Grid Array)の小型高密度実装技術の進化により、百マイクロメートル前後の小サイズになっている。今後さらにボールサイズが数マイクロメートル以下に小さくなると、このようなハンダボールを含む塗布液をインクジェット方式の塗布ヘッドで吐出させることが可能になる。このため、その用途は大幅に増えると予想され、数マイクロメートル以下のサイズのハンダボール(マイクロハンダボール)が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−323411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述の金属粒子の製造では、数マイクロメートル以下のサイズの微細な金属粒子を製造することは困難である。このため、より微細な固体粒子を得ることは難しい。
【0006】
本発明は上記を鑑みてなされたものであり、その目的は、より微細な固体粒子を得ることができる固体粒子の製造装置、固体粒子の製造方法及び塗布液を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係る固体粒子の製造装置は、固体材料と液体の混合物を収容する容器と、容器内の混合物を加圧する加圧装置と、容器内の混合物を加熱する加熱装置と、容器内の混合物を液体の沸点が固体材料の融点以上となる圧力に加圧し、加圧状態の液体の沸点より低く固体材料の融点以上の温度に加熱して、固体材料が液体中で溶融した溶融混合物を生成するように加圧装置及び加熱装置を制御する制御装置と、容器内の溶融混合物を容器外に噴霧する噴霧装置と、噴霧装置により溶融混合物が噴霧され、固体材料が粒子化されて形成された固体粒子を回収する回収装置とを備える。
【0008】
本発明の実施形態に係る固体粒子の製造方法は、固体材料と液体の混合物を液体の沸点が固体材料の融点以上となる圧力に加圧し、加圧状態の液体の沸点より低く固体材料の融点以上の温度に加熱して、固体材料が液体中で溶融した溶融混合物を生成し、生成した溶融混合物を噴霧し、固体材料を粒子化して固体粒子を形成し、形成した固体粒子を回収する。
【0009】
本発明の実施形態に係る塗布液は、固体材料と液体の混合物を液体の沸点が固体材料の融点以上となる圧力に加圧し、加圧状態の液体の沸点より低く固体材料の融点以上の温度に加熱して、固体材料が液体中で溶融した溶融混合物を生成し、生成した溶融混合物を噴霧して固体材料を粒子化することによって形成された固体粒子を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、より微細な固体粒子を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る固体粒子の製造装置の概略構成を示す図である。
【図2】図1に示す製造装置が行う固体粒子の製造処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る固体粒子の製造装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について図1及び図2を参照して説明する。
【0013】
図1に示すように、本発明の第1の実施形態に係る固体粒子の製造装置1は、固体材料と液体の混合物を収容する容器2と、その容器2内の混合物を加圧する加圧装置3と、容器2内の混合物を加熱する加熱装置4と、容器2内の混合物を撹拌する撹拌装置5と、容器2内の溶融混合物を容器2外に噴霧する噴霧装置6と、その噴霧装置6の噴霧により生じる複数の固体粒子を回収する回収装置7と、各部を制御する制御装置8とを備えている。
【0014】
容器2は、箱形状に形成されており、固体材料と液体の混合物を収容する。例えば、固体材料としては低温ハンダ(例えば液相温度141℃)が用いられ、液体としては水が用いられる。
【0015】
加圧装置3は、加圧ポンプ(図示せず)などを備えており、チューブやパイプなどの加圧経路3aにより容器2に接続されており、容器2内の混合物に対して加圧を行う。この加圧装置3は制御装置8に電気的に接続されており、その駆動が制御装置8により制御される。加圧装置3の加圧力は制御装置8が加圧ポンプに対する印加電圧などを変更することで調整可能である。
【0016】
加熱装置4は、ヒータ(図示せず)などを備えており、容器2内の混合物に対して加熱を行う。この加熱装置4は制御装置8に電気的に接続されており、その駆動が制御装置8により制御される。加熱装置4の加熱温度は制御装置8がヒータに対する印加電圧などを変更することで調整可能である。なお、制御装置8は、容器2内あるいは容器2の外面に設けた温度計(図示せず)を用いてフィードバック制御により加熱温度を設定された温度で一定に保持することが可能である。
【0017】
撹拌装置5は、容器2内に設けられたブラシ状の回転部5aと、その回転部5aを支持する回転軸5bと、その回転軸5bを回転させるモータなどの駆動部5cとを備えている。駆動部5cは制御装置8に電気的に接続されており、その駆動が制御装置8により制御される。この撹拌装置5は、駆動部5cにより回転軸5bを介して回転部5aを回転させ、容器2内の混合物を撹拌する。撹拌装置5の撹拌力は制御装置8が駆動部5cに対する印加電圧などを変更することで調整可能である。なお、回転部5aとしては、ブラシ状の回転部以外にも、スクリュー状やプロペラ状、クシ状、板状などの回転部を用いることが可能である。また、撹拌装置5としては、容器2内の混合物に超音波振動などの振動を与える振動装置を用いても良い。
【0018】
噴霧装置6は、溶融混合物を噴出する噴出口6aを有しており、溶融混合物が流れるチューブやパイプなどの噴出経路6bにより容器2に接続されており、回収装置7に対して噴出口6aから溶融混合物を噴霧する。噴出経路6bの途中には、電磁弁などの調整弁6cが設けられている。この調整弁6cは制御装置8に電気的に接続されており、その駆動が制御装置8により制御される。制御装置8は調整弁6cの開度を制御し、噴霧の開始や停止、さらには噴霧力の調整を行うことが可能である。
【0019】
また、噴出経路6bであるチューブやパイプなどの外周には、ヒータ6dが巻かれている。このヒータ6dも制御装置8に電気的に接続されており、その駆動が制御装置8により制御される。ヒータ6dの加熱温度は制御装置8がヒータ6dに対する印加電圧などを変更することで調整可能である。制御装置8は、前述の加熱装置4の加熱温度と同じ温度になるようにヒータ6dの加熱温度を設定された温度で一定に保持する。
【0020】
回収装置7は、分散液を収容する回収容器11と、その回収容器11内を減圧する減圧装置12と、回収容器11内の温度を低下させる冷却装置13と、回収容器11内の分散液を撹拌する撹拌装置14と、回収容器11内に分散液を供給する液供給部15と、多数の固体粒子を含む分散液である塗布液を貯留する貯留部16とを備えている。
【0021】
回収容器11は、箱形状に形成されており、噴霧装置6の噴出口6aが開口する内壁を有している。この回収容器11は分散液を収容しており、その分散液上に噴霧用の空間を有している。したがって、噴霧装置6の噴出口6aは側壁の上側に設けられている。なお、噴霧装置6の噴出口6aは天井壁などに設けられても良い。
【0022】
減圧装置12は、排気ポンプ(図示せず)などを備えており、気体が流れるチューブやパイプなどの排気経路12aにより回収容器11に接続されており、回収容器11内の気体を排気して減圧を行う。この減圧装置12は制御装置8に電気的に接続されており、その駆動が制御装置8により制御される。減圧装置12の減圧力は制御装置8が排気ポンプに対する印加電圧などを変更することで調整可能である。
【0023】
冷却装置13は、ペルチェ素子あるいは熱交換器や圧縮機などを備えており、回収容器11内を冷却する。この冷却装置13は制御装置8に電気的に接続されており、その駆動が制御装置8により制御される。冷却装置13の冷却温度は制御装置8が冷却装置13に対する印加電圧や制御信号などを変更することで調整可能である。制御装置8は、回収容器11内あるいは回収容器11の外面に設けた温度計(図示せず)を用いてフィードバック制御により冷却温度を設定された温度で一定に保持することが可能である。
【0024】
撹拌装置14は、回収容器11内の分散液に超音波振動などの振動を与える振動装置である。この撹拌装置14は、制御装置8に電気的に接続されており、その駆動が制御装置8により制御される。撹拌装置14の撹拌力は制御装置8が撹拌装置14に対する印加電圧などを変更することで調整可能である。なお、撹拌装置14としては、容器2内の分散液をかき回すブラシ状やスクリュー状、プロペラ状、クシ状、板状などの回転部を用いても良い。
【0025】
液供給部15は、分散液を貯留するタンクや供給ポンプ(図示せず)などを備えており、分散液が流れるチューブやパイプなどの供給経路15aにより回収容器11に接続されており、その回収容器11内に分散液を供給する。この液供給部15の供給ポンプは制御装置8に電気的に接続されており、その駆動が制御装置8により制御される。分散液としては、例えば、水や油、フラックスなどが用いられる。また、界面活性剤を含む分散液が用いられても良い。
【0026】
貯留部16は、塗布液が流れるチューブやパイプなどの排出経路16aにより回収容器11に接続されており、その回収容器11内から多数の固体粒子を含む分散液である塗布液を回収して収容する。排出経路16aの途中には、電磁弁などの開閉弁16bが設けられている。この開閉弁16bは制御装置8に電気的に接続されており、その駆動が制御装置8により制御される。制御装置8は開閉弁16bの開閉を制御して回収の開始や停止を行うことが可能である。
【0027】
制御装置8は、各部を集中的に制御するマイクロコンピュータ、さらに、各種情報や各種プログラムなどを記憶する記憶部、操作者からの操作を受け付ける操作部(いずれも図示せず)を備えている。各種情報には、制御用の各種情報が含まれており、制御用の各種情報としては、例えば、加圧装置3用の加圧値や加熱装置4用の加熱温度、撹拌装置5用の撹拌速度、減圧装置12用の減圧値、冷却装置13用の冷却温度、撹拌装置14用の振動度などの情報が予め設定されている。
【0028】
次に、前述の製造装置1が行う固体粒子の製造動作(製造方法)について説明する。なお、製造装置1の制御装置8が各種プログラム及び各種情報に基づいて固体粒子の製造処理を実行する。なお、分散液は液供給部15により回収容器11内に予め供給されている。
【0029】
図2に示すように、制御装置8は、加圧装置3及び加熱装置4を制御し、容器2内の混合物を液体の沸点が固体材料の融点以上となる圧力に加圧し、その後、加圧状態の液体の沸点より低く固体材料の融点以上の温度に加熱して、固体材料が液体中で溶融した溶融混合物を生成する(ステップS1)。例えば、液相温度が141℃の低温ハンダを固体材料として用い水を液体として用いた場合には、容器2内の圧力を4.5気圧程度に加圧することで、沸点が150℃程度となるので、水の沸点を低温ハンダの融点より高くすることが可能である。
【0030】
これにより、まず、容器2内の混合物は加圧装置3により液体の沸点が固体材料の融点以上となる圧力に加圧され、その後、加圧状態の混合物が加熱装置4により加圧状態の液体の沸点より低く固体材料の融点以上の温度に加熱される。このため、容器2内の混合物は、液体が蒸発(沸騰)せずに固体材料が液体中で溶融した溶融混合物となる。
【0031】
また、制御装置8は、撹拌装置5を制御し、容器2内の溶融混合物を撹拌する(ステップS2)。これにより、容器2内の溶融混合物は撹拌装置5により撹拌され、溶融混合物中の溶融状態の固体材料は粒状にせん断され、微小な液滴として液体中に分散される。したがって、容器2内の溶融混合物は、多数の液滴状態の固体材料が液体中に存在する溶融混合物となる。
【0032】
その後、制御装置8は、調整弁6cを開け、噴霧装置6により容器2内の溶融混合物、すなわち多数の液滴状態の固体材料を含む溶融混合物を容器2外、すなわち回収装置7の回収容器11内に噴霧し(ステップS3)、その噴霧により生成される複数の固体粒子を回収容器11により回収する(ステップS4)。
【0033】
これにより、まず、多数の液滴状態の固体材料を含む溶融混合物は噴霧装置6の噴出口6aから回収容器11の空間に霧状に噴出され、多数の溶融混合物粒となる。個々の溶融混合物粒中に含まれる多数の液滴状態の固体材料は液体の蒸発によりさらに微細化され、最終的に多数の微細な固体粒子となる(詳しくは、後述する)。その後、各固体粒子は重力により回収容器11内の分散液中に落下し、回収容器11内に回収される。
【0034】
前述の噴霧では、溶融混合物中の多数の液滴状態の固体材料は容器2外に噴霧されることによってさらに微細化されている。詳述すると、溶融混合物は容器2外に放出されることで加圧装置3による加圧から開放される。溶融混合物が加圧から開放されると、その周囲の雰囲気の圧力が低下するので、加圧装置3による加圧によって沸点が上げられていた溶融混合物中の液体の沸点が下がる。溶融混合物中の液体は沸点を上げることで蒸発が抑えられていたが、沸点(圧力)が下がったことにより急激に蒸発する。
【0035】
したがって、噴霧によって粒化された個々の溶融混合物粒中にも液体が含まれるので、この液体が蒸発することによる急激な体積膨張によって溶融混合物粒が粉砕されてさらに細かく粒化され、微小な固体材料の粒(液体が気化したので固体材料だけとなる)となる。このとき、液体が蒸発するときの気化熱によって溶融状態の固体材料は熱を奪われて固化し、固体粒子となる。固体材料の粒同士は気化熱によって固化するので、粉砕後に接触したとしても一体になることは防止される。このようにして、噴霧のみによる微細化以上に細かい固体粒子を得ることができる。
【0036】
その後、制御装置8は、所定のタイミングで開閉弁16bを開き、多数の固体粒子を含む分散液である塗布液を回収する(ステップS5)。これにより、回収容器11内の多数の固体粒子を含む分散液が回収容器11から排出経路16aを介して貯留部16に回収され、塗布液として用いられることになる。この塗布液を用いる塗布装置としては、例えば、インクジェット塗布装置やディスペンサ塗布装置、印刷装置などが挙げられる。このような塗布装置により塗布液が塗布対象物上に所定の塗布パターンで塗布される。なお、回収容器11内の分散液が塗布液として貯留部16により回収されて無くなると、制御装置8は、液供給部15を制御し、回収容器11内に分散液を所定量だけ供給する。
【0037】
このような固体粒子の製造工程において、制御装置8は、撹拌装置14を制御し、回収容器11内の分散液を例えば常時あるいは噴射前から撹拌する。これにより、回収容器11内の分散液は撹拌され、分散液中の多数の固体粒子は互いに付着することがなく、分散液中にほぼ均一に分散されるので、所望の濃度の塗布液を確実に生成することができる。
【0038】
また、制御装置8は、噴出経路6bを加熱するヒータ6dを制御し、そのヒータ6dの加熱温度を前述の加熱装置4の加熱温度と同じ温度になるように一定に保持する。これにより、溶融混合物が噴出経路6bを通過する最中に溶融混合物中の固体材料が固化してしまうことを防止することができる。そのため、ヒータ6dは噴出経路6bの全長にわたって覆うように設けられることがより好ましい。
【0039】
また、制御装置8は、噴霧装置6による溶融混合物の噴霧前、減圧装置12を制御し、回収装置7の回収容器11内を減圧して所定圧(大気圧より低い圧)に維持する。これにより、回収容器11内は減圧されて大気圧より低い減圧雰囲気になる。さらに、制御装置8は、噴霧前に冷却装置13を制御し、回収容器11内の温度を低下させて所定温度(常温よりも低い温度)に維持する。これにより、回収容器11内の温度が低下し、回収容器11内は常温(熱したり冷やしたりしない自然な温度)より低い低温雰囲気となる。
【0040】
したがって、溶融混合物は減圧雰囲気であって低温雰囲気中に噴霧されるため、回収容器11内に噴霧された溶融混合物中の液体の沸点は下がることになり、また、回収容器11内の温度が常温より低いため、回収容器11内が常温常圧の通常雰囲気中である場合に比べ、回収容器11内に噴霧された溶融混合物中の固体材料を急冷することができる。ただし、必ずしも回収容器11内を減圧したり、回収容器11内の温度を低下させたりする必要はなく、常温常圧の通常雰囲気のままでも良い。
【0041】
さらに、加熱された液体の噴霧直前の沸点(加圧状態の液体の沸点)よりも沸点が下がれば良いので、減圧雰囲気や常圧雰囲気だけではなく、容器2内の圧力よりも低い加圧雰囲気としても良い。ただし、容器2内の圧力に対して回収容器11内の圧力が低ければ低いほど、沸点が急激に下がることになるので、液体のより激しい蒸発を生じさせることができ、これによる固体材料のより細かな微細化が期待できるため好ましい。
【0042】
以上説明したように、本発明の第1の実施形態によれば、固体材料と液体の混合物を液体の沸点が固体材料の融点以上となる圧力に加圧し、さらに、加圧状態の液体の沸点より低く固体材料の融点以上の温度に加熱して、固体材料が液体中で溶融した溶融混合物を生成し、生成した溶融混合物を噴霧することによって、溶融混合物が粒状となって多数の溶融混合物粒となり、加えて、それらの溶融混合物粒は各々含有する液体の蒸発によりさらに細かく粒化され、最後に多数の微細な固体粒子だけとなる。これにより、数マイクロメートルのサイズより微細な固体粒子を得ることができる。
【0043】
また、容器2内の溶融混合物を撹拌することによって、溶融混合物中の溶融状態の固体材料は粒状にせん断され、微小な液滴として液体中に分散される。これにより、多数の液滴状態の固体材料を含む溶融混合物が容器2外に噴射され、噴射により生成される多数の溶融混合物粒中の個々に複数の液滴状態の固体材料が存在することになる。したがって、それらの溶融混合物粒中の複数の液滴状態の固体材料は液体の蒸発によりさらに細かく粒化されるので、より微細な固体粒子を確実に得ることができる。ただし、必ずしも容器2内の溶融混合物を撹拌する必要はなく、撹拌しない状態のままでも良い。
【0044】
また、噴霧装置6の噴出口6aが開口する内壁を有する回収容器11内を減圧することによって、溶融混合物は大気圧(1気圧)より低い減圧雰囲気中に噴霧されるため、回収容器11内に噴霧された溶融混合物中の液体の沸点はより一層下がることになる。これにより、回収容器11内が常圧の通常雰囲気中である場合に比べ、溶融混合物中の液体が急速に蒸発するので、回収容器11内に噴霧された溶融混合物中の固体材料を急冷することが可能となる。したがって、固化前の固体材料の粒同士が接触して一体となることを抑止することができ、その結果、より微細な固体粒子を確実に得ることができる。
【0045】
また、回収容器11内の温度を常温より低下させることによって、溶融混合物は常温より低い低温雰囲気中に噴霧されることになる。これにより、回収容器11内が常温の通常雰囲気中である場合に比べ、回収容器11内の温度が低下しているので、回収容器11内に噴霧された溶融混合物中の固体材料を急冷することが可能となる。したがって、固化前の固体材料の粒同士が接触して一体となることを抑止することができ、その結果、より微細な固体粒子を確実に得ることができる。
【0046】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態について図3を参照して説明する。
【0047】
本発明の第2の実施形態は基本的に第1の実施形態と同様である。第2の実施形態では、第1の実施形態との相違点について説明し、第1の実施形態で説明した部分と同一部分は同一符号で示し、その説明も省略する。
【0048】
図3に示すように、本発明の第2の実施形態に係る固体粒子の製造装置1において、撹拌装置14は回収容器11内の分散液を循環させる循環装置である。この撹拌装置14は、回収容器11内の分散液を循環させるためのチューブやパイプなどの循環経路14aと、その循環経路14aに沿って分散液を流す駆動源となるポンプ14bと、分散液の濃度を検出する濃度検出部14cとを備えている。
【0049】
循環経路14aの一端は回収容器11の底面に接続されており、その他端は回収容器11の側壁に接続されている。また、ポンプ14bは循環経路14aの途中に設けられている。このポンプ14bは制御装置8に電気的に接続されており、その駆動が制御装置8により制御される。濃度検出部14cも制御装置8に接続されており、検出した分散液の濃度を制御装置8に送信する。なお、循環経路14aの途中には、排出経路16aが接続されている。
【0050】
この撹拌装置14は、ポンプ14bにより回収容器11内の分散液を循環経路14aに流し、その循環経路14aを介して回収容器11内に戻して循環させる。これにより、回収容器11内の分散液が撹拌され、分散液中の多数の固体粒子は回収容器11内の分散液中にほぼ均一に分散される。撹拌装置14の撹拌力は制御装置8がポンプ14bに対する印加電圧などを変更することで調整可能である。制御装置8は濃度検出部14cにより検出された分散液の濃度に基づいて、その濃度が所定濃度(制御装置8の記憶部に設定された濃度の許容範囲)となった場合、開閉弁16bを開け、排出経路16aを介して所望の濃度で多数の固体粒子を含有する分散液を塗布液として貯留部16により回収する。
【0051】
なお、濃度検出部14cにより検出された分散液の濃度が記憶部に設定された濃度の許容範囲よりも大きい場合には、制御装置8によって液供給部15から分散液を供給するように制御を行うようにしても良い。この場合、液供給部15からは、一度に予め設定された量ずつ分散液を供給するようにし、その後に濃度検出部14cにより検出された濃度がまだ許容範囲よりも大きい場合に、更に、設定量の分散液を供給するようにしても良い。
【0052】
以上説明したように、本発明の第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、撹拌装置14として循環装置を用いることによって、回収容器11内の分散液を確実に撹拌することができる。また、濃度検出部14cを設け、その濃度検出部14cにより検出した分散液の濃度に応じて回収容器11内の分散液の回収を制御することから、所望の濃度の塗布液を確実に生成して回収することができる。
【0053】
(他の実施形態)
なお、本発明に係る前述の実施形態は例示であり、発明の範囲はそれらに限定されない。前述の実施形態は種々変更可能であり、例えば、前述の実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素が削除されても良く、さらに、異なる実施形態に係る構成要素が適宜組み合わされても良い。
【0054】
前述の実施形態においては、固体材料としてハンダなどの金属材料を用いることが可能であるが、これに限るものではなく、例えば、固体材料として他の金属材料、あるいは樹脂などの高分子材料などを用いることも可能である。なお、他の金属材料としては、液体として水を用いる場合には、融点が水の1気圧下での沸点(100℃)に近い融点を有するものがより好ましく、例えば、インジウム(融点157℃)やリチウム(融点179℃)を用いることも可能である。
【0055】
また、前述の実施形態においては、回収装置7の回収容器11内では液体が気化するため、その気化した液体(蒸気)を回収して排出するようにしても良く、また、分散液として水を用いる場合には、回収した蒸気を凝縮しその液体を分散液として再利用することも可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 固体粒子の製造装置
2 容器
3 加圧装置
4 加熱装置
5 撹拌装置
6 噴霧装置
6a 噴出口
7 回収装置
8 制御装置
11 回収容器
12 減圧装置
13 冷却装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体材料と液体の混合物を収容する容器と、
前記容器内の前記混合物を加圧する加圧装置と、
前記容器内の前記混合物を加熱する加熱装置と、
前記容器内の前記混合物を前記液体の沸点が前記固体材料の融点以上となる圧力に加圧し、加圧状態の前記液体の沸点より低く前記固体材料の融点以上の温度に加熱して、前記固体材料が前記液体中で溶融した溶融混合物を生成するように前記加圧装置及び前記加熱装置を制御する制御装置と、
前記容器内の前記溶融混合物を前記容器外に噴霧する噴霧装置と、
前記噴霧装置により前記溶融混合物が噴霧され、前記固体材料が粒子化されて形成された固体粒子を回収する回収装置と、
を備えることを特徴とする固体粒子の製造装置。
【請求項2】
前記容器内の前記溶融混合物を撹拌する撹拌装置を備えることを特徴とする請求項1記載の固体粒子の製造装置。
【請求項3】
前記噴霧装置は、前記容器内の前記溶融混合物を前記容器外に噴出する噴出口を有しており、
前記回収装置は、前記噴出口が開口する内壁を有する回収容器と、前記回収容器内を減圧する減圧装置とを具備していることを特徴とする請求項1又は2記載の固体粒子の製造装置。
【請求項4】
前記回収装置は、前記回収容器内の温度を低下させる冷却装置を具備していることを特徴とする請求項3記載の固体粒子の製造装置。
【請求項5】
前記固体材料はハンダであり、前記液体は水であることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の固体粒子の製造装置。
【請求項6】
固体材料と液体の混合物を前記液体の沸点が前記固体材料の融点以上となる圧力に加圧し、加圧状態の前記液体の沸点より低く前記固体材料の融点以上の温度に加熱して、前記固体材料が前記液体中で溶融した溶融混合物を生成し、
生成した前記溶融混合物を噴霧し、前記固体材料を粒子化して固体粒子を形成し、
形成した前記固体粒子を回収することを特徴とする固体粒子の製造方法。
【請求項7】
前記溶融混合物を噴霧する前に前記溶融混合物を撹拌することを特徴とする請求項6記載の固体粒子の製造方法。
【請求項8】
前記溶融混合物を大気圧より低い減圧雰囲気下に噴霧することを特徴とする請求項6又は7記載の固体粒子の製造方法。
【請求項9】
前記溶融混合物を常温より低い低温雰囲気下に噴霧することを特徴とする請求項8記載の固体粒子の製造方法。
【請求項10】
前記固体材料ははんだであり、前記液体は水であることを特徴とする請求項6、7、8又は9記載の固体粒子の製造方法。
【請求項11】
固体材料と液体の混合物を前記液体の沸点が前記固体材料の融点以上となる圧力に加圧し、加圧状態の前記液体の沸点より低く前記固体材料の融点以上の温度に加熱して、前記固体材料が前記液体中で溶融した溶融混合物を生成し、生成した前記溶融混合物を噴霧して前記固体材料を粒子化することによって形成された固体粒子を有することを特徴とする塗布液。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−130898(P2012−130898A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−287580(P2010−287580)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000002428)芝浦メカトロニクス株式会社 (907)
【Fターム(参考)】