説明

固体酸化物型電池

【課題】コンパクト化を容易に実現することのできる固体酸化物型電池において、運転時に電極特にアノード(燃料極)の劣化を抑制し、酸化還元サイクル特性を向上させ、賦活と発電を繰り返しても性能が劣化せず、高出力を安定的に維持できるようにした固体酸化物型電池を提供すること。
【解決手段】アノード材料を有するアノード、カソード材料を有するカソード、及び、アノードとカソードとの間に配置されたイオン伝導性の固体酸化物からなる電解質、を少なくとも有し、賦活時に固体炭素を該アノード材料に担持させ、発電時にアノードにおいて、少なくとも下記反応式(1)及び(2)
CO+C → 2CO (1)
CO+O2− → CO+2e (2)
を利用して発電する固体酸化物型電池であって、該アノード材料が電気伝導性を有する複合金属酸化物よりなることを特徴とする固体酸化物型電池、その固体酸化物型電池の発電方法、及び電気化学リアクター。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、賦活時に固体炭素をアノード材料に担持させ、発電時にその固体炭素を用いて発電する固体酸化物型電池に関する。
【背景技術】
【0002】
イオン伝導性の固体酸化物(酸化物イオン伝導体)からなる電解質層(固体電解質層)をカソード(空気極)とアノード(燃料極)との間に配置した積層構造を有する固体酸化物型電池(SOFC)は、第三世代の燃料電池として期待され、その開発が進んでいる。
【0003】
固体酸化物型電池は、アノードに還元剤、例えば、水素(H)、一酸化炭素(CO)、メタン(CH)等の炭化水素を含むガス(燃料ガス)を供給し、カソードに酸化剤、例えば、酸素(O)等を含むガス(例えば空気)を供給することにより発電するデバイスである(例えば、下記特許文献1参照)。
【0004】
固体酸化物型電池(SOFC)を用いた発電システムのコンパクト化を容易かつ確実に図ることのできる構成を有する固体酸化物型電池及び固体酸化物型電池の運転方法が提案された(特許文献2参照)。すなわち、アノード内部で、炭素及び水素を構成元素として少なくとも含む有機化合物の熱分解反応を進行させることにより得られる固体炭素を、固体の燃料(還元剤)として発電に利用する固体酸化物型電池である。以下、これを「RDCFC」(リチャージャブル・ダイレクトカーボン燃料電池)と略記する場合がある。
【0005】
固体炭素は液体状の電極活物質(還元剤)やガス状の電極活物質(還元剤)に比較してエネルギー密度が非常に高く、液体状やガス状の電極活物質をアノードに供給するための装置構成が不要となり、アノードの側の装置構成を簡素化することができるという特徴がある。
【0006】
しかしながら、かかる固体酸化物型電池においては、運転時の電極の劣化の抑制、酸化還元サイクル特性の向上、高出力を安定的に維持できるようにする等、更なる改良が求められていた。
【特許文献1】特開平9−129256号公報
【特許文献2】特開2005−071717号公報
【非特許文献1】Journal of the Electrochemical Society, 153(8), A1544〜A1546 (2006)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、RDCFCにおいて、運転時に電極特にアノード(燃料極)の劣化を抑制し、酸化還元サイクル特性を向上させ、賦活と発電を繰り返しても性能が劣化せず、高出力を安定的に維持できるようにした固体酸化物型電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、RDCFCにおいて、ニッケル(Ni)等の金属を、アノード材料に用いた場合、アノード中のニッケル(Ni)等が、カーバイドやカーボンウィスカーを生成させる原因になり、長期的な電極劣化の要因となることを見出した。すなわち、ニッケル(Ni)に溶解した炭素が析出して成長する際にニッケル(Ni)粒子を電極のネットワーク構造から脱落させてしまい、それが電極劣化の要因となる場合があることを見出した。また、ニッケル(Ni)等の金属が3次元的ネットワークを形成するような状態で存在すると、酸化還元サイクル時のニッケル(Ni)粒子の体積膨張・収縮により、それが電極劣化の要因となる場合があることも見出した。
【0009】
そこで、ニッケル(Ni)等の金属に代えて、特定の複合金属酸化物を用いることによって、上記電極劣化の要因が解消され、前記課題が解決できることを見出して本発明に至った。
【0010】
すなわち、本発明は、アノード材料を有するアノード、カソード材料を有するカソード、及び、アノードとカソードとの間に配置されたイオン伝導性の固体酸化物からなる電解質、を少なくとも有し、賦活時に固体炭素を該アノード材料に担持させ、発電時にアノードにおいて、少なくとも下記反応式(1)及び(2)
CO+C → 2CO (1)
CO+O2− → CO+2e (2)
を利用して発電する固体酸化物型電池であって、該アノード材料が電気伝導性を有する複合金属酸化物よりなることを特徴とする固体酸化物型電池を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、アノード材料を有するアノード、カソード材料を有するカソード、及び、アノードとカソードとの間に配置されたイオン伝導性の固体酸化物を含む電解質、を少なくとも有する固体酸化物型電池において、アノード材料に固体炭素を担持し、担持された固体炭素を二酸化炭素と反応させて気体の一酸化炭素に変換し、当該気体の一酸化炭素を酸化することにより発電する固体酸化物型電池の発電方法であって、該アノード材料が電気伝導性を有する複合金属酸化物よりなることを特徴とする固体酸化物型電池の発電方法を提供するものである。
【0012】
また、本発明は、アノード材料を有するアノード、カソード材料を有するカソード、及び、アノードとカソードとの間に配置されたイオン伝導性の固体酸化物からなる電解質、を少なくとも有し、賦活時に固体炭素を該アノード材料に担持させ、発電時にアノードにおいて、少なくとも下記反応式(1)及び(2)
CO+C → 2CO (1)
CO+O2− → CO+2e (2)
を利用して発電する固体酸化物型電池であって、該アノード材料が電気伝導性を有する複合金属酸化物よりなることを特徴とする電気化学リアクターを提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高い出力密度で長時間の発電が可能であり、燃料利用効率が高く、発電システムのコンパクト化が容易にできるRDCFCにおいて、運転時に電極特にアノード(燃料極)の劣化を抑制し、酸化還元サイクル特性を向上させ、賦活と発電を繰り返しても性能が劣化せず、高出力を安定的に維持するようにできる。
【0014】
また、リチウムイオン二次電池等の二次電池は充電に比較的時間がかかるという問題があった。これに対し、固体炭素は、熱分解反応により速やかに形成させることができるため、本発明の固体酸化物型電池は、アノードの燃料(固体炭素)のチャージを極めて迅速に行うことができ、発電システムにおいて、リチウムイオン二次電池等の二次電池のかわりに使用することもできる。
【0015】
また、本発明の固体酸化物型電池は、上記のように有機化合物の熱分解反応を行う場合に、固体炭素と共に水素を反応生成物として得ることができる。そのため、本発明の固体酸化物型電池は、水素発生装置としても利用することができる。
【0016】
更に、本願発明の固体炭素を酸化させる作用を応用して、例えば、ディーゼル排ガス中の固体炭素系化合物(PM:Particulate Matter)の除去にも利用可能である。すなわち、本願発明は、二次電池、燃料電池、水素発生装置としての応用のほか、上記のような排ガス除去等への応用も可能であり、電気化学リアクター(電気化学的な反応場を提供する装置)としての利用が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は、本発明の固体酸化物型電池の好適な一実施形態の基本構成を示す模式断面図である。以下、図1を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0018】
図1に示す固体酸化物型電池1は、主として、アノード2と、カソード3と、アノード2とカソード3との間に配置される電解質4とから構成されている。
【0019】
図1に示すアノード2は、アノード材料2a及びアノードの集電体2bを有している。また、図1に示すカソード3は、カソード材料3a及びカソードの集電体3bを有している。すなわち、本発明の固体酸化物型電池は、アノード材料2aを有するアノード2、カソード材料3aを有するカソード3、及び、アノード2とカソード3との間に配置されたイオン伝導性の固体酸化物からなる電解質4を少なくとも有している。
【0020】
アノード2のアノード材料2aは、1種のアノード材料よりなるものであってもよく、2種以上のアノード材料よりなる複合材料であってもよいが、少なくともそのうちの1種のアノード材料は、電気伝導性を有する複合金属酸化物よりなることを特徴としている。ここで、「電気伝導性を有する」とは、運転温度において10−4Scm−1以上であることを意味する。
【0021】
上記の「電気伝導性を有する複合金属酸化物」の電気伝導度は、運転温度において10−2Scm−1以上であることが好ましく、10−1Scm−1以上であることが特に好ましい。ここで、「電気伝導」とは、電子伝導、ホール伝導、酸化物イオン伝導及びプロトン伝導のうちの少なくとも1つからなる電気伝導、すなわち、それらのうちの1つ又は2つ以上が組み合わされた電気伝導を意味する。電気伝導度が低過ぎると、十分な出力特性が得られない場合がある。
【0022】
本発明の固体酸化物型電池のアノードは、金属粒子も合金粒子も含有していないか、又は、それらによる3次元的ネットワークが形成されない範囲を上限として金属粒子若しくは合金粒子を含有していることが好ましい。「3次元的ネットワーク」とは、アノードの厚さ方向にそれのみを通して電気伝導が可能の状態(通じる状態)をいう。金属粒子若しくは合金粒子による3次元的ネットワークが形成されていると、酸化と還元の繰り返しで、アノード材料が体積膨張と体積収縮を繰り返す結果、アノードが劣化する場合がある。
【0023】
また、本発明の固体酸化物型電池のアノード材料2aに用いられる複合金属酸化物は、それ自体で、3次元的ネットワークを形成していること、すなわち複合金属酸化物自体で、電子伝導可能な3次元的ネットワークを形成していることが、良好な電気伝導性を実現し、結果として十分な出力特性が得られる点で好ましい。
【0024】
本発明の固体酸化物型電池のアノード材料2aにおいては、少なくともそのうちの1種のアノード材料は、ペロブスカイト型結晶構造、パイロクロア型結晶構造又はフルオライト型結晶構造を有する複合金属酸化物よりなることが好ましい。
【0025】
ペロブスカイト型結晶構造を有する複合金属酸化物とは、いわゆるペロブスカイト型の結晶構造をとる複合金属酸化物をいい、下記一般式(G)で表わされる複合金属酸化物が好ましい。
1±a1±b3−δ (G)
[組成式(G)中、Aは、La、Sr、Ca、Y、Ba、Pr、Ce、K、Na、Sm、Pb、Nd、Gd、Bi、Ag、Cs、Rb、Tl、Cd、Eu、Mg、Dy、Li及びHoからなる群より選ばれる少なくとも1種を示し、Bは、Co、Cr、Mn、Ni、Ce、Gd、Al、Ti、Zr、Sc、Mg、Ga、Cu、Fe、Yb、Y、Nb、I、Ni、Sr、Bi、In、Ca、Sn、Ta、W、Th、U、Hf、Mo、Lu、Tm、Tb、Dy、Ho、Os、Rh、Ag、Tr、Sb、Zn、Pa、In、Re及びErからなる群より選ばれる少なくとも1種を示し、0≦a≦0.2、0≦b≦0.2であり、δは酸素欠損量である。]
【0026】
このうち、LaMnO、LaCoO、LaCrO等を母体とする物質がより好ましく、例えば、(LaSr)MnO系の複合金属酸化物(本発明では、これを「LSM」と略記する)、(LaSr)CoO系の複合金属酸化物(本発明では、これを「LSC」と略記する)が特に好ましいものとして挙げられる。
【0027】
また、組成式(G)において、Bが、MnをB全体に対して50モル%以上含有するものであることが、前記効果をより奏するために好ましい。また、組成式(G)において、Bが、CoをB全体に対して50モル%以上含有するものであること、又は、Bが、CoとFeを、それらの合計でB全体に対して50モル%以上含有するものであることが、前記効果を奏するために好ましい。
【0028】
そのほかのペロブスカイト型結晶構造を有する複合金属酸化物は、一般式、
A(B1−x1±a3−δ[式中、0≦x≦0.8、0≦a≦0.2である]において、AはBa、Sr、Ca等の2価のカチオンから少なくとも1種が選ばれ、BはCe、Zr、Ti等の4価のカチオンから少なくとも1種が選ばれ、Mは3価の希土類、Y、Sc、In、Yb、Nd、Gd、Al、Ga等から少なくとも1種が選ばれる。
【0029】
例えば、Ba(Ce1−xGd1±a[式中、0≦x≦0.8、0≦a≦0.2である]、Ca(Al1−xTi1±a[式中、0≦x≦0.8、0≦a≦0.2である]、Sr(Ce1−xYb1±a(式中、0≦x≦0.8、0≦a≦0.2である)、Sr(Zr1−x1±a(式中、0≦x≦0.8、0≦a≦0.2である)、Sr(Zr1−xSc1±a(式中、0≦x≦0.8、0≦a≦0.2である)等で表されるものも好ましい。具体的には、BaCe0.9Gd0.1、CaAl0.7Ti0.3、SrCe0.95Yb0.05、SrZr0.950.05、SrZr0.9Sc0.1等が挙げられる。
【0030】
一般式、La1−xSrGa1−y−zMg[式中、Mは、Co、Fe、Ni又はCuの何れか1種以上の元素を示し、x=0.05〜0.3、y=0〜0.29、z=0.01〜0.3、y+z=0.025〜0.3の範囲である。]で表されるランタンガレートも好ましい。具体的には、La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.15Co0.053−δ(式中、δは酸素欠損量を示す)等が挙げられる。
【0031】
好ましいアノード材料としては、具体的には、例えば、
La0.8Sr0.2MnO、La0.85Sr0.15MnO、La0.95Sr0.05MnO等の、La1−bSrMnO[bは、0≦b≦0.5]で表わされる化合物;
La0.8Sr0.2CoO、La0.85Sr0.15CoO、La0.95Sr0.05CoO等の、La1−dSrMnO[dは、0≦d≦0.5]で表わされる化合物;
La0.6Sr0.4Fe0.8Co0.2、La0.6Sr0.4Fe0.2Co0.8等の
La1−eSrFeCo1−f[eは0≦e≦0.5、fは0≦f≦1]で表わされる化合物;
La0.75Sr0.2Cr0.5Mn0.5等のLa1−gSrCr1−hMn[gは0≦g≦0.5、hは0≦h≦1]で表わされる化合物;
等が挙げられる。
【0032】
パイロクロア型結晶構造を有する複合金属酸化物とは、いわゆるパイロクロア型の結晶構造をとる複合金属酸化物をいい、Ln((Zr1−xTi1±a(式中、LnはSc、Y、La及び他のランタノイドからなる群より選ばれた1種以上の元素を示し、0≦x≦0.5、0≦a≦0.2である)が好ましいものとして挙げられる。具体的には例えば、Gd((Zr1−xTi1±a(式中、0≦x≦0.5、0≦a≦0.2である)、Y((Zr1−xTi1±a(式中、0≦x≦0.5、0≦a≦0.2である)等が挙げられる。
【0033】
フルオライト型結晶構造を有する複合金属酸化物とは、いわゆるフルオライト型の結晶構造をとる複合金属酸化物をいい、その中で好ましいものはセリア系複合金属酸化物で、Ce1−x(式中、MはGd、La、Y、Sc、Sm、Pr、Nd、Ca、Mg、Sr、Ba、Dy、Yb、Tb及び他の2価または3価のランタノイドからなる群から選ばれた1種以上の元素を示し、0≦x≦0.5である)で表されるものである。特に好ましいセリア系複合金属酸化物として、Ce0.8Gd0.22−δ(式中、δは酸素欠損量を示す)等が挙げられる。
【0034】
本発明の個体酸化物型電池におけるアノード材料としては、ペロブスカイト型結晶構造を有する複合金属酸化物が、金属粒子若しくは合金粒子を含有しなくても高い電気伝導性を有し、前記した本発明の効果をより奏する点で特に好ましい。
【0035】
上記アノード材料2aが2種以上のアノード材料よりなる複合材料である場合には、上記以外のアノード材料も複合金属酸化物であることが好ましい。更に、アノードにおいては、少なくとも電子伝導性とホール伝導性のどちらかを有する複合金属酸化物、及び、少なくとも酸化物イオン伝導性とプロトン伝導性のどちらかを有する複合金属酸化物の2種類以上のアノード材料を含有することが好ましい。ここで、「少なくとも電子伝導性とホール伝導性のどちらかを有する」とは、その電気伝導度が10−4Scm−1以上であることをいい、「少なくとも酸化物イオン伝導性とプロトン伝導性のどちらかを有する」とは、その電気伝導度が10−4Scm−1以上であることをいう。
【0036】
かかる「上記以外のアノード材料」としては、固体酸化物型燃料電池にアノード活物質として一般に用いられているものであれば特に限定はないが、発電の際に、十分な出力特性、耐久性等を確実に得る点からは、イットリアが配合された安定化ジルコニア(Y−ZrO)(以下、「YSZ」と略記する);Gd、La、Y、Sm、Nd、Ca、Mg、Sr、Ba、Dy及びYbからなる群より選ばれる少なくとも1種がドープされたCeO[このうち特に、GdがドープされたCeO(以下、「GDC」と略記する)、SmがドープされたCeO];Sc−ZrO(以下、「ScSZ」と略記する);Sm−CeO(以下、「SDC」と略記する);ランタンガレート;セリア系固溶体等が好ましいものとして挙げられる。
【0037】
安定化ジルコニア(YSZ)は特に限定はないが、下記一般式
(ZrO1−x(M
[式中、MはY、Sc、Sm、Al、Nd、Gd、Yb及びCeからなる群より選ばれた1種以上の元素を示す。ただしここで、MがCeの場合はMの代わりにCeOである。]、又は、下記一般式
(ZrO1−x(MO)
[式中、MはCa及びMgからなる群より選ばれた1種以上の元素を示す]
における、xが0<x≦0.3である固溶体が好ましい。特に好ましいものとしては、例えば、(ZrO1−x(Y(式中、0<x≦0.3)等が挙げられ、より好ましくは、式中、0.08≦x≦0.1である。また、更に好ましいものとしては(ZrO0.92(Y0.08等が挙げられる。
【0038】
なお、例えば「式中、Aは、Q、R及びTからなる群から選ばれた1種以上の元素を示す」という表現は、式中、AがQである固容体とAがRである固溶体の混合でもよいことを示すだけではなく、AとしてQとRとを同時に結晶サイトに有する固溶体をも示すものとする。以下、同様である。
【0039】
ここで、上記YSZの場合、Yの割合(Yの含有量)は、Y−ZrOに対して8〜10モル%であることが好ましい。また、上記GDCの場合、Gdの割合(Gdの含有量)は、ドープされたCeOに対して3〜50モル%が好ましく、8〜40モル%がより好ましく、10〜30モル%が更に好ましく、15〜25モル%であることが特に好ましい。更に、上記SmがドープされたCeOの場合、Smの割合(Smの含有量)は、ドープされたCeOに対して15〜40モル%であることが好ましい。また、特に好ましいセリア系固溶体としては、Ce0.8Gd0.22−δ(式中、δは酸素欠損量を示す)、Ce0.67Gd0.332−δ(式中、δは酸素欠損量を示す)等が挙げられる。
【0040】
ランタンガレートは特に限定はないが、一般式、La1−xSrGa1−y−zMg(式中、AはCo、Fe、Ni又はCuのいずれか1種以上の元素を示し、x=0.05〜0.3、y=0〜0.29、z=0.01〜0.3、y+z=0.025〜0.3の範囲である)で表される固溶体が好ましい。具体的には、La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.15Co0.053−δ(式中、δは酸素欠損量を示す)等が挙げられる。
【0041】
セリア系固溶体は特に限定はないが、Ce1−x(式中、MはGd、La、Y、Sc、Sm、Al、Pr、Nd、Ca、Mg、Sr、Ba、Dy、Yb、Tb、及び他の2価又は3価のランタノイドからなる群から選ばれた1種以上の元素を示す)における、xが0<x≦0.5である固溶体が好ましい。中でも、MがGdであるCe1−xGd(式中、0<x≦0.5)、又は、MがSmであるCe1−xSm(式中、0<x≦0.5)がより好ましく、何れの式においても、式中、0.03≦x≦0.4が特に好ましく、0.08≦x≦0.4が更に好ましく、0.1≦x≦0.4が最も好ましい。また、特に好ましいセリア系固溶体としては、Ce0.8Gd0.22−δ(式中、δは酸素欠損量を示す)、Ce0.67Gd0.332−δ(式中、δは酸素欠損量を示す)、Ce0.9Gd0.12−δ(式中、δは酸素欠損量を示す)等が挙げられる。
【0042】
本発明における好ましいアノード材料2aとしては、比較的高い電子伝導性と酸化物イオン伝導性の両方を有するという点で、LSMとGDCの複合材料であるLSM/GDC、LSC単独、LSCとGDCの複合材料であるLSC/GDC等が挙げられる。また、電子伝導性とプロトン伝導性の両方を有するという点で、LSMとSrCe1−iYb(iは、0≦i≦1)(以下、「SCYb」と略記する)の複合材料であるLSM/SCYb、LSCとSCYbの複合材料であるLSC/SCYb等が挙げられる。また、電子伝導性と酸化物イオン伝導性に加えてプロトン伝導性を有するという点で、LSCとGDCとSCYbの複合材料であるLSM/GDC/SCYb等が挙げられる。
【0043】
前記した通り、本発明の固体酸化物型電池のアノード2は、金属粒子と合金粒子の何れも含有していないか、又は、含有している場合でも、金属粒子若しくは合金粒子による3次元的ネットワークが形成されない程度に含有量が制限されていることが好ましい。すなわち、金属粒子も合金粒子も含有していないか、又は、含有している場合でも金属粒子若しくは合金粒子が孤立して存在する範囲に含有量が限られていることが好ましい。金属粒子若しくは合金粒子が、3次元的ネットワークが形成される程に含有されていると、賦活と発電により、アノード材料2aが体積膨張と体積収縮を繰り返してアノード2が劣化する場合がある。
【0044】
本発明においては、アノード材料2aとして金属粒子も合金粒子も実質上含まないことが特に好ましい。かかる「金属粒子若しくは合金粒子を含むアノード材料2a」としては、金属と金属酸化物粉末が混合され焼結されたサーメットが挙げられる。すなわち、本発明においては、アノード材料2aがサーメットでないことが好ましい。アノード材料2aがサーメットであると、アノード中の金属が、カーバイドやカーボンウィスカーを生成させる原因になり、長期的な電極劣化の要因となる場合がある。すなわち、金属に溶解した炭素が析出して成長する際に金属粒子を電極のフレーム構造から脱落させてしまい、それが電極劣化の要因となる場合がある。また、酸化還元サイクル時の金属粒子の体積膨張・収縮により、それが電極劣化の要因となる場合がある。
【0045】
本発明は、ニッケル(Ni)等の金属に代えて、アノード材料2aのうちの少なくとも1種のアノード材料に上記複合金属酸化物を用いることによって、上記電極劣化の要因が解消され、RDCFCの運転時にアノード(燃料極)の劣化が抑制され、酸化還元サイクル特性が向上し、賦活と発電を繰り返しても性能が劣化せず、高出力を安定的に維持できる。ただし、前記した本発明の効果を損なわない範囲においては金属を含有していてもよく、本発明は、アノード材料2aの組成から、少量の「金属粒子若しくは合金粒子」の含有を排除するものではない。アノード材料2a全体中に含有される「金属粒子若しくは合金粒子」は合計で10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、2質量%以下が特に好ましく、金属粒子も合金粒子も含まれていないことが更に好ましい。
【0046】
本発明の固体酸化物型電池においては、アノードとカソードが、互いに実質的に同じ金属元素を有する材料が3次元的ネットワークを形成してなるものであることが好ましい。「互いに実質的に同じ金属元素を有する」とは、各金属元素の組成比は異なっていてもよいが、同じ金属元素を有する複合金属酸化物であることを意味する。また、3次元的ネットワークを形成しない程度の少量の他の金属元素の相違はここに含まれる。但し、互いに全く同じ金属元素を有することが特に好ましい。そのことによって、製造プロセスの簡略化やコストダウンが可能になる。更に、アノード、カソードとして、互いに同じ金属元素を有すると共に、実質的に組成比も同じ複合金属酸化物を用いることが、浸漬、焼成等が同時にでき、製造プロセスの簡略化、コストダウン等がより達成できる点で更に好ましい。
【0047】
RDCFCにおいては、アノード材料2aの表面には、賦活時に有機化合物が熱分解反応することによって固体炭素が担持される。ここで、「固体炭素」には、炭素の他に、水素、酸素、イオウ等が含まれていてもよい。
【0048】
アノード膜厚は特に限定はないが、通常10μm〜5mmであり、好ましくは20μm〜1mm、より好ましくは30μm〜700μm、更に好ましくは40μm〜400μm、最も好ましくは50μm〜150μmである。アノード膜厚を厚くすることで、出力密度P(mW/cm)や後述するP/Tの値、及び、アノードの単位面積あたりの電荷移動量Q(mAh/cm)や後述するQ/Tの値を向上させることができる。ここで、Tは賦活時の時間である。
【0049】
なお、ここで言及したアノード(燃料極)の厚さは、後述の実施例で得られた空孔度での最適条件である。空孔度はアノード(燃料極)への燃料ガスの供給しやすさや、発生した一酸化炭素(CO)ガスの実効反応サイトへの移動しやすさや、熱分解炭素が析出に供する空間量に影響するため、空孔度が変わると厚さの最適条件は変わる可能性がある。例えば、空孔度が後述の実施例のアノード(燃料極)のものよりも大きければ、厚さの最適値はより厚い方にシフトする可能性があるが、上記アノード膜厚の数値を参考にして、得られたアノード(燃料極)の空孔度に合わせて適宜アノード膜厚は決定することが可能である。
【0050】
本発明の固体酸化物型電池の使用に際しては、賦活時(「賦活工程」ということもある)と発電時(「発電工程」ということもある)が存在する。賦活時には、固体炭素を該アノード材料2aに担持させる。
【0051】
そして、発電時には、この固体炭素を使用し、少なくとも後記する反応式(1)及び反応式(2)により電子を発生させる。また同時に、カソードでは、酸化性ガスに電子を供与し、イオン化した酸化物イオン(O2−)を電解質に注入する。
【0052】
このことにより、発電システムのコンパクト化を容易かつ確実にできる構成を有する固体酸化物型電池1が提供可能となる。また、発電によって、固体炭素を消費した後には、例えば、発電システムから固体酸化物型電池又はアノードを取り外すか若しくは取付けたままで、熱分解反応を行いアノード中のアノード材料に固体炭素を迅速に再生成させること、すなわち賦活により、固体酸化物型電池1を発電に繰り返し使用することも容易にできる。
【0053】
上記のように本発明の固体酸化物型電池は、従来のもののように反応ガスをアノードに供給するためのボンベ、改質器等の大きな設置スペースを必要とする設備が不要となるため、容易にコンパクト化を達成できる。なお、発電時だけでなく賦活時にも改質器が不要にできるので、それがコンパクト化に寄与する。本発明の固体酸化物型電池の大きさは特に限定はないが、0.5cm〜2000cmであることが好ましく、1cm〜100cmであることが特に好ましい。固体酸化物型電池の大きさが大きすぎる場合は、本発明の上記コンパクトにできるという特徴が生かせない。
【0054】
固体酸化物型電池の発電時の出力は特に限定はないが、0.01kW〜500kWが好ましく、0.05kW〜100kWであることが特に好ましく、30kW〜70kWであることが更に好ましい。本発明の固体酸化物型電池は、上記大きさの場合に上記出力を発生できる。
【0055】
賦活時に、固体炭素をアノード材料2aに担持させる方法としては、炭素と水素を構成元素として少なくとも含む有機化合物を該アノード2に導入し、該有機化合物の熱分解反応を進行させる方法が挙げられる。
【0056】
熱分解反応における温度は特に限定はないが、200〜1200℃の範囲が、該有機化合物の良好な熱分解反応速度を得る点で好ましい。賦活時において、該有機化合物の熱分解反応の温度が200℃未満であると、該有機化合物の熱分解反応(例えば、メタンの場合には、CH→C+2H)が十分に進行せず、十分量の固体炭素を得ることができない場合がある。また、1200℃を超える場合、アノード材料2aの熱劣化が激しくなる場合がある。上記と同様の観点から、熱分解反応の温度は300〜1000℃であることが特に好ましく、400〜800℃であることが更に好ましい。また、後述の実施例に示すように、熱分解炭素析出温度を変えることで、アノードの単位面積あたりの電荷移動量Q(mAh/cm)や後述するQ/Tの値を向上させることができる。ここで、Tは賦活時の時間である。
【0057】
熱分解反応に使用される「炭素と水素を構成元素として少なくとも含む有機化合物」は、酸素及び/又は硫黄を構成元素として更に含んでいてもよい。また、該有機化合物は1気圧、25℃の条件下で、気体であってもよく液体であってもよい。更に、還元剤として十分に機能する固体炭素をより容易かつ十分に得る観点から、有機化合物の炭素数は、1個〜100個であることが好ましく、1個〜10個であることが特に好ましく、1個〜6個であることが更に好ましい。
【0058】
上記のような有機化合物の好ましい例としては、メタン、エタン、プロパン、ブタン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等が挙げられる。中でも、取り扱い性や入手の容易性等の観点から、メタン、プロパン、ブタン又はメタノールが特に好ましい。中でも、高い出力密度と電荷移動量が得られることと、液状の分解物を生じないという観点から、プロパン又はブタンが主成分のものがより好ましい。「主成分」とは、50体積%以上含むことを意味する。
【0059】
アノード2の集電体2bの構成材料は電子伝導性を有し、かつ固体酸化物型電池1の作動温度領域において化学的及び物理的に安定であるものであればその形状及び構成材料は特に限定されず、公知の固体酸化物型燃料電池に備えられているものと同様のものを使用することができる。600℃〜1200℃で化学的及び物理的に安定であるものが好ましい。
【0060】
集電体2bには、賦活時に熱分解反応を行う際に、固体炭素の原料となる「炭素及び水素を構成元素として少なくとも含む有機化合物」の供給路(図示せず)が形成されている。また、この集電体2bは、固体酸化物型電池1を複数積層して使用する場合には、各単位セル間に配置されるセパレータとしての機能をも果たすものである。
【0061】
また、アノード2には、ガスの供給口(図示せず)及び放出口(図示せず)、並びに、これらの供給口と放出口とに接続されたガスの内部流路(図示せず)が設けられている。本発明の固体酸化物型電池は、一般の公知の燃料電池とは燃料の種類、使用方法、発電原理等は全く異なるが、ガスの供給口及び放出口並びにこれらの供給口と放出口とに接続されたガスの内部流路等の機械的外部構造については、一般の公知の燃料電池の構造と同様のものが使用できる。
【0062】
本発明の固体酸化物型電池1では、発電時に、反応生成ガスを外部に放出させるためのキャリアガスを実質的に導入しないことが好ましい。後述するように、キャリアガスを実質的に導入しないと、アノードにおいて反応式(1)で示される反応がより効率的に起こるので好ましい。またこれにより、発電時には装置構成をより極めてコンパクトにできる。
【0063】
発電時には、カソード2には、酸化剤を含むガス(例えば、空気)が供給され、カソード材料3aは、酸化剤の還元反応が進行する反応場となるものである。カソード材料3aの組成や形状については特に限定されず、公知の固体酸化物型燃料電池に備えられているカソードに一般に使用されているものと同様のものを使用することができる。例えば、(LaSr)MnO系の複合金属酸化物、(LaSr)CoO系の複合金属酸化物からなる材料等を好ましく使用することができる。特に好ましくは、例えば、La0.85Sr0.15MnO等が挙げられる。
【0064】
本発明の固体酸化物型電池において、アノードとカソードは、実質的に同じ組成を有する材料が集電体上に形成されて形成されていることが、浸漬、焼成等が同時にできるため、製造プロセスの簡略化、コストダウンが可能になる等のために好ましい。
【0065】
カソードの集電体3bの構成は先に述べたアノード2の集電体2bと同様であり、構成材料及び形状については特に限定されず、公知の固体酸化物型燃料電池に備えられているものと同様のものを使用することができる。なお、集電体3bには、空気等の酸化剤を含むガスをカソード室3aに供給するためのガス流路(図示せず)が形成されている。また、この集電体3bは、固体酸化物型電池を複数積層して使用する場合には、各単位セル間に配置されるセパレータとしての機能をも果たすものである。
【0066】
電解質4は、イオン伝導性の固体酸化物である。電解質4は、酸化物イオン(O2−)の移動媒体であると同時に、還元剤(先に述べた固体炭素)と酸化剤を含むガス(例えば空気)を直接接触させないための隔壁としても機能し、ガス不透過性の緻密な構造を有している。この電解質4の構成材料は特に限定されず、公知の固体酸化物型燃料電池に用いられる材料を使用することができるが、酸化物イオンの伝導性が高く、カソード3側の酸化性雰囲気からアノード2側の還元性雰囲気までの条件下で、化学的に安定で熱衝撃に強い材料から構成することが好ましい。
【0067】
かかる要件を満たす材料としては、例えば、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、スカンジア安定化ジルコニア(ScSZ)等の安定化ジルコニア;ランタンガレート;セリア系固溶体等が好ましいものとして挙げられる。
【0068】
安定化ジルコニアは特に限定はないが、
一般式(ZrO1−x(M
[式中、MはY、Sc、Sm、Al、Nd、Gd、Yb及びCeからなる群より選ばれた1種以上の元素を示す。ただしここで、MがCeの場合はMの代わりにCeOである。]、又は、
一般式(ZrO1−x(MO)
[式中、MはCa及びMgからなる群より選ばれた1種以上の元素を示す]
における、xが0<x≦0.3である固溶体が好ましい。特に好ましいものとしては、例えば、(ZrO1−x(Y(式中、0<x≦0.3)等が挙げられ、より好ましくは、式中、0.08≦x≦0.1である。また、更に好ましいものとしては(ZrO0.92(Y0.08等が挙げられる。
【0069】
電解質にイットリア安定化ジルコニア(YSZ)を用いることで、出力密度P(mW/cm)や後述するP/Tの値、及び、アノードの単位面積あたりの電荷移動量Q(mAh/cm)や後述するQ/Tの値を向上させることができる。ここで、Tは賦活時の時間である。
【0070】
なお、例えば「式中、Aは、Q、R及びTからなる群から選ばれた1種以上の元素を示す」という表現は、式中、AがQである固容体とAがRである固溶体の混合でもよいことを示すだけではなく、AとしてQとRとを同時に結晶サイトに有する固溶体をも示すものとする。以下、同様である。
【0071】
ランタンガレートは特に限定はないが、一般式、La1−xSrGa1−y−zMg(式中、AはCo、Fe、Ni又はCuの何れか1種以上の元素を示し、x=0.05〜0.3、y=0〜0.29、z=0.01〜0.3、y+z=0.025〜0.3の範囲である)で表される固溶体が好ましい。具体的には、La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.15Co0.053−δ(式中、δは酸素欠損量を示す)等が挙げられる。
【0072】
セリア系固溶体は特に限定はないが、Ce1−x(式中、MはGd、La、Y、Sc、Sm、Al、Pr、Nd、Ca、Mg、Sr、Ba、Dy、Yb、Tb、及び他の2価又は3価のランタノイドからなる群から選ばれた1種以上の元素を示す)における、xが0<x≦0.5である固溶体が好ましい。中でも、MがGdであるCe1−xGd(式中、0<x≦0.5)、又は、MがSmであるCe1−xSm(式中、0<x≦0.5)がより好ましく、何れの式においても、式中、0.03≦x≦0.4が特に好ましく、0.08≦x≦0.4が更に好ましく、0.1≦x≦0.4が最も好ましい。また、特に好ましいセリア系固溶体としては、Ce0.8Gd0.22−δ(式中、δは酸素欠損量を示す)、Ce0.67Gd0.332−δ(式中、δは酸素欠損量を示す)、Ce0.9Gd0.12−δ(式中、δは酸素欠損量を示す)等が挙げられる。特に、GDCを電解質4の材料として用いると、発電時の温度が750℃以下であっても、出力密度を充分大きくできるので好ましい。
【0073】
また、発電の際に、十分な出力特性を得る観点からは、かかる複合金属酸化物の導電率は、1000℃において、0.01〜10S/cmであることが好ましい。
【0074】
図1に示した固体酸化物型電池1の製造方法は特に限定されず、公知の固体酸化物燃料電池の製造に適用されている公知の薄膜製造技術を使用することができる。例えば、スキージ法、スクリーンプリンティング法、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法等のPVD法、熱CVD法、プラズマCVD法、レーザーCVD法等のCVD法、溶射法等が挙げられる。
【0075】
例えば、電解質4を形成する方法としては、例えば、公知のセラミックプロセスであるシート成形焼結法を例示することができる。より具体的には、原料及び溶媒を混合することによって得たスラリーをシート状に延ばし、乾燥させた後に、必要に応じてカッターナイフ等を用いて成形し焼成する。スラリーには、必要に応じて、バインダー、可塑剤、分散剤等の公知の添加剤を配合させてもよい。成形、焼成等の条件は、原料の組成に応じて適宜設定することができる。また、先に述べたPVD法、CVD法、溶射法等の薄膜形成法により、例えば、アノード2又はカソード3上に電解質層を形成することもできる。
【0076】
固体酸化物型電池1の運転方法は、固体炭素をアノード材料に担持させる賦活工程後、カソードに酸化剤を含むガスを供給し、固体炭素を還元剤として発電する発電工程とを少なくとも含む方法であれば特に限定されない。通常、賦活工程及び発電工程からなる作業を繰り返して使用する。
【0077】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、本発明の固体酸化物型電池は、図1に示した固体酸化物型電池1を複数積層した形態を有していてもよい。
【0078】
本発明の固体酸化物型電池1の構造は特に限定されるものではなく、例えば、平板状の電解質の層の一方の面にアノード、他方の面にカソードを形成した構造を有し、セパレータを介して順次積層したスタックからなる平板型の固体酸化物型電池の構成を有しているものであってもよく、円筒状の支持管の円筒面上にカソード、電解質の層及びアノードを順次形成し、積層させた構造を有する円筒型の固体酸化物型電池の構成を有しているものであってもよい。
【0079】
本発明においては、発電時にアノードにおいて、少なくとも、反応式(1)及び(2)を利用して発電を行う。
CO+C → 2CO (1)
CO+O2− → CO+2e (2)
【0080】
反応式(1)を利用することで、アノードの空間中に広く分布する固体炭素を、気体のCOに変換して燃料として消費するので、発電時において固体炭素の存在位置の影響を極めて小さくすることが可能になる。つまり、固体酸化物型電池では、一般的に電解質表面に近いところでの電極反応ほど発電への寄与が大きいので、電解質表面から遠いところに分布する固体炭素は消費されにくい。そのため、反応式(1)で示される反応が起きない場合と比べて高い燃料利用率を得ることができ、つまりはより長時間の発電が可能になる。
【0081】
加えて、反応式(2)によるCOの酸化反応は、下記反応式(3)又は反応式(4)による固体炭素の酸化反応よりも反応速度が大きいため、高い出力密度が得られる。反応式(2)を支配的に起こすには、(1)式や(3)式で生成した一酸化炭素(CO)をアノードに滞留する時間を長くすることや、系外から流入する酸素によって起こる一酸化炭素(CO)の酸化による消費を抑える等が挙げられる。
C+O2− → CO+2e (3)
C+2O2− → CO+4e (4)
【0082】
反応式(2)で消費される一酸化炭素(CO)の50モル%以上が反応式(1)で生成される固体酸化物型電池が好ましい。特に好ましくは60モル%以上、更に好ましくは70モル%以上である。反応式(2)を支配的に起こす手段としては、(1)式や(3)式で生成したCOをアノードに滞留する時間を長くさせることや、系外から流入する酸素によって起こるCOの酸化による消費を抑えるために、酸素の流入を遮断すること等が挙げられる。
【0083】
アノードにおいて反応式(1)で示される反応を起こすためには、電極反応(2)及び/又は(4)で生成したCOをアノード中に長く滞留させることが大事であり、そのために発電時のキャリアガスの導入を無くすことが好ましい。キャリアガスの導入を無くすためには、系外からの空気つまりは酸素の漏れこみを、シール性能を向上する等して、極力少なくし、酸素分圧の上昇による電圧低下を防ぐことが好ましい。
【0084】
発電工程において、カソードに供給する酸化剤を含むガスは、入手容易性から空気であることが好ましい。また、同様の観点から、酸化剤は酸素であることが好ましい。
【0085】
また、発電時における固体酸化物型電池1の電荷移動量や出力密度を向上させる観点から、アノード2に、該アノード2における反応生成ガスを外部に放出させるためのキャリアガスを供給しないことが好ましい。
【0086】
アノードの総面積をS(cm)、25℃1気圧でのアルゴンガスの流量をF(cm/秒)としたとき、F/Sの値が6.1(cm/秒)となるように、25℃1気圧のアルゴンガスを、賦活後発電前にアノードに導入して測定した開回路電圧が0.6V以上となる上記の固体酸化物型電池が好ましい。ここで、F/Sは、アノードの単位面積あたりのアルゴンガスの流量である。
【0087】
F/Sの値が6.1(cm/秒)となるように、アルゴンガスの流量F(cm/秒)を調整して求めた開回路電圧が0.6V以上となるように、固体酸化物型電池の組成、構造、設定等を調整すれば、短時間の賦活で、高出力密度で長時間の発電が可能になる。本発明の固体酸化物型電池ではこのような条件に設定することが可能であり、また、このような条件に設定すれば、上記性能に優れた固体酸化物型電池が得られる。この場合の開回路電圧は、より好ましくは0.7V以上、特に好ましくは0.9V以上、更に好ましくは1.0V以上である。
【0088】
アルゴンガスを流量F(cm/秒)でアノードに流すが、それは本発明の固体酸化物型電池の構成を特定するためにモニターとして流すのであって、本発明の固体酸化物型電池の使用時にその流量F(cm/秒)でアルゴンガスを流すことを意味しない。
【0089】
F/Sの値が6.1(cm/秒)のときの開回路電圧が0.6V以上となるようにするということは、下記反応式(1)及び(2)が効率よく進行するということを意味している。
CO+C → 2CO (1)
CO+O2− → CO+2e (2)
【0090】
F/Sの値が6.1(cm/秒)となるように、アルゴンガスの流量F(cm/秒)を調整して求めた開回路電圧が0.6V以上となるように固体酸化物型電池の組成、構造、設定等を調整することが好ましい。具体的には、上記したように、系外からの空気すなわち酸素の漏れこみを、シール性能を向上する等して極力少なくしたり、アノードの大気への開口径を小さくしたりして、大気からアノードへの酸素の流入を抑制する等して、反応式(1)及び/又は反応式(2)における一酸化炭素(CO)の損失を軽減することによって実現される。この場合の開回路電圧は、より好ましくは0.7V以上、特に好ましくは0.9V以上、更に好ましくは1.0V以上である。
【0091】
また、F/Sの値が0.30(cm/秒)となるように、25℃1気圧のアルゴンガスを、賦活後発電前にアノードに導入して測定した開回路電圧が0.7V以上となるようにした固体酸化物型電池も、上記と同様の理由で好ましい。また、それを実現する手段も上記と同様である。この場合の開回路電圧は、より好ましくは0.8V以上、特に好ましくは1.0V以上、更に好ましくは1.2V以上である。
【0092】
また、F/Sの値が6.1(cm/秒)となるように、25℃1気圧のドライ水素ガスを、賦活後発電前にアノードに導入して測定した開回路電圧が0.9V以上となるようにした固体酸化物型電池も、上記と同様の理由で好ましい。また、それを実現する手段も上記と同様である。この場合の開回路電圧は、より好ましくは1.2V以上、特に好ましくは1.25V以上、更に好ましくは1.3V以上である。
【0093】
この場合のドライ水素ガスは、本発明の固体酸化物型電池の構成を特定するためにモニターとして流すのであって、本発明の固体酸化物型電池の使用方法に関係するものではない。水素ガスを、賦活後発電前にアノードに導入して測定した開回路電圧が一定の値以上になるということは、アノード反応において、反応式(1)及び(2)が効率よく進行しているということを意味し、このような構成の固体酸化物型電池は、短時間の賦活で、高出力密度で長時間の発電が可能になる。
【0094】
開回路電圧測定に際しての、ガスの流量F(cm/秒)は特に限定はなく、アノードの総面積S(cm)に応じて、F/Sが所定の値になるように決められる。
【0095】
また、本発明の固体酸化物型電池は、賦活時の時間をT(分)、アノードの単位面積あたりの電荷移動量をQ(mAh/cm)としたときのQ/Tの値を1(mAh/(cm・分))以上にすることができる。また、1(mAh/(cm・分))以上になるように、組成、構造、設定等が調整された固体酸化物型電池が好ましい。具体的には、上記したように、系外からの空気すなわち酸素の漏れこみを、シール性能を向上する等して極力少なくしたり、アノードの大気への開口径を小さくしたり、大気からアノードへの酸素の流入を抑制したりして、反応式(1)及び/又は反応式(2)における一酸化炭素(CO)の損失を軽減することによって実現される。Q/Tの値は特に好ましくは10(mAh/(cm・分))以上、更に好ましくは20(mAh/(cm・分))以上である。
【0096】
賦活時の時間T(分)とは、固体炭素をアノード材料に担持させ終わるまでの時間をいい、アノードの単位面積あたりの電荷移動量Q(mAh/(cm・分))とは、発電時に取り出せるアノードの単位面積あたりの電荷量をいう。Tを短くすれば、必然的にQは小さくなるが、その比(Q/T)を上記の値以上にした固体酸化物型電池が好ましい。ただし、賦活に要する時間T(分)には上限があり、それ以上賦活してもQが上昇しない点(以下、「Tの上限値」という)が存在するので、上記比(Q/T)は、TがTの上限値以下の部分のみで定義される。「賦活時の時間T(分)」とは、固体炭素をアノード材料に担持させ終わるまでの時間である。Tの上限値は固体炭素をアノード材料に担持できる空間が無くなるまでの時間である。上記した(特に)好ましいQ/Tの値等の意味は、TがTの上限値になるまでのTの何れかある1点において上記Q/Tの値になるような固体酸化物型電池が(特に)好ましいという意味である。以下、「アノードの単位面積あたりの電荷移動量」を、単に「電荷移動量」ということがある。
【0097】
Q/Tの値が1(mAh/(cm・分))以上の固体酸化物型電池において、発電時の温度は特に限定はないが、750℃以下に設定しても十分な性能がでるため、かかる範囲で発電することが好ましい。
【0098】
また、本発明の固体酸化物型電池は、上記賦活時の時間をT(分)、出力密度をP(mW/cm)としたときのP/Tの値を5(mW/(cm・分))以上にすることができる。また、5(mW/cm・分)以上になるように、組成、構造、設定等が調整された固体酸化物型電池が好ましい。P/Tの値は特に好ましくは7(mW/(cm・分))以上、更に好ましくは10(mW/(cm・分))以上である。
【0099】
具体的には、上記したように、系外からの空気すなわち酸素の漏れこみを、シール性能を向上する等して極力少なくしたり、アノードの大気への開口径を小さくしたりして、大気からアノードへの酸素の流入を抑制して、反応式(1)及び/又は反応式(2)における一酸化炭素(CO)の損失を軽減することによって実現される。
【0100】
P/Tの値が5(mW/(cm・分))以上の固体酸化物型電池において、発電時の温度は特に限定はないが、750℃以下に設定しても十分な性能がでるため、かかる範囲で発電することが好ましい。
【0101】
本発明の固体酸化物型電池において、賦活工程での温度は400〜1000℃が好ましく、600〜900℃が特に好ましい。温度が低すぎると、熱分解反応の反応速度が小さくなり賦活工程の時間が長くかかる場合がある。一方、高すぎると、熱分解成分と析出炭素の平衡関係で析出炭素量が少なくなる場合がある。また、発電工程での温度は400〜1000℃が好ましく、500〜900℃がより好ましく、600〜750℃が特に好ましい。温度が低すぎると反応式(1)が進行しにくくなることや、セル(電極及び電解質)の抵抗が大きくなるために、出力密度が低下する場合がある。一方、高すぎると、セルや周辺部材の劣化が早まる場合がある。
【0102】
本発明の固体酸化物型電池は、発電時の温度750℃以下で、出力密度が50(mW/cm)以上にすることができる。また、出力密度が50(mW/cm)以上になるように、組成、構造、設定等が調整された固体酸化物型電池が好ましい。特に、電解質としてGDCを用いることによって、発電時の温度が750℃以下であっても、出力密度を50(mW/cm)以上にすることができる。また、発電時の温度が700℃以下であっても、電荷移動量を17(mAh/cm)以上にすることができる。
【0103】
また、本発明の固体酸化物型電池は、電流密度9.3mA/cmで発電したときの燃料利用効率を60%以上にできる。また、燃料利用効率60%以上になるように、組成、構造、設定等が調整された固体酸化物型電池が好ましい。ここで「燃料利用効率」とは、賦活工程でアノード材料に担持させた固体炭素量に対する、反応式(4)を仮定し電荷移動量から計算した消費炭素量の割合である。
【0104】
また、本発明の固体酸化物型電池は、電流密度80mA/cmで発電したときの燃料利用効率を20%以上にできる。また、燃料利用効率20%以上になるように、組成、構造、設定等が調整された固体酸化物型電池が好ましい。ここで「燃料利用効率」とは、賦活工程でアノード材料に担持させた固体炭素量に対する、反応式(4)を仮定し電荷移動量から計算した消費炭素量の割合である。特に好ましくは30%以上、更に好ましくは40%以上である。
【0105】
具体的には、上記したように、系外からの空気すなわち酸素の漏れこみを、シール性能を向上する等して極力少なくしたり、アノードの大気への開口径を小さくしたりして大気からアノードへの酸素の流入を抑制して、反応式(1)及び/又は反応式(2)における一酸化炭素(CO)について損失を軽減することによって実現される。
【0106】
上記は本願発明を主として燃料電池として利用する際の最良の形態の一例を示したものであるが、本願発明は、二次電池、水素発生装置、排ガス除去等への応用、すなわち、電気化学リアクターとしての利用も可能であり、この場合も上記に準じて適宜実施可能である。
【実施例】
【0107】
以下、実施例を挙げて本発明について更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0108】
<RDCFC製造例>
電解質として厚さ0.3mmのScSZ(Sc doped ZrO)ディスクを使用し、アノード(燃料極)、カソード(空気極)として、何れもLSM/GDC複合電極を用いたセルを作成した。具体的には、何れも(LaO.85SrO.15MnO)/(GdO.2CeO.82−x)複合電極を用いたセルを作成した。LaO.85SrO.15MnOは、前記式(G)で表わされるABO[AはSr及びLa、かつBはMn]なる組成を有し、ペロブスカイト型結晶構造を有する複合金属酸化物である。
【0109】
焼成条件は、1200℃で4時間焼成した。アノード(燃料極)、カソード(空気極)の膜厚は、何れも65μmとした。電極の面積は、何れも0.55cmとした。
【0110】
<賦活(チャージング)・発電例>
開回路状態において、純ドライプロパン(C)を50ccmで供給し、アノード(燃料極)表面上に炭素を析出させた。賦活(チャージング)時間は5分間、温度は900℃とした。その後、Arを200ccmで1時間供給し、C、H、CO等の残留ガスを除去した。
【0111】
アノード(燃料極)内がAr雰囲気となっている中、電流密度を一定に保って、上記RDCFCの発電実験を行った。酸化剤として純酸素(O)を用い、発電は900℃で行った。
【0112】
<分析>
発電後、Ar80ccmと純酸素(O)1ccmを供給し、発電に使われなかった炭素を除去して、その反応ガスをガスクロマトグラフィーで分析した。分析は10分ごとに行い、CO、COの生成量の経時変化を測定することにより、残留炭素量を決定した。炭素析出量は発電実験と同様の条件で純ドライプロパン(C)を供給し、そのままAr100ccmとO1ccmを供給し、炭素を燃焼除去することで行った。発電実験を終了させた後、アノード(燃料極)は集電体(Au)についたものを、カソード(空気極)は電解質上に残ったものをXRDで分析し、RDCFC発電によるLSMの分解がないことを確認した。
【0113】
<発電特性>
図2に、LSM/GDC複合電極を用いたRDCFCにおける、発電時の電流密度を80、160、240、280mA/cmと変化させたときの発電特性を示す。縦軸は出力密度[mW/cm]である。900℃で純ドライプロパン(C)を流量50ccmで、5分間賦活(チャージング)することにより、発電温度900℃で電流密度80mA/cmにおいて、120分以上発電することができた。また、全体的に安定した発電を行うことができた。
【0114】
発電時の電流密度を高くしていくと最大出力密度が増大し、電流密度240mA/cmにおいて、最高出力密度は131mW/cmに達した。電流密度を大きくしていくと、発電時間は小さくなる傾向が観察できた。
【0115】
<発電容量と燃料利用率>
図3に、LSM/GDC複合電極を用いたRDCFCの、種々の電流密度[mA/cm]における電荷移動量(以下、「発電容量」という)[mWh/cm]を示す。発電容量は、電流密度と発電時間との積で定義される。発電容量を決定する因子としては、賦活(チャージング)時の炭素析出量と、燃料利用率とがある。ここで、燃料利用率は、発電に関わる電荷移動が、すべて
C+2O2− → CO+4e
の反応によるものであると仮定して計算した、発電に使われた炭素量の炭素析出量に対する比率である。
【0116】
<まとめ>
純ドライプロパン(C)をチャージングガスに用いたRDCFCにおいて、アノード材料としてLSM/GDC複合電極を用いると、発電温度900℃、電流密度240mA/cmにおいて、最大出力密度131mW/cmを達成し、電流密度80mA/cmで120分間以上発電することができた。
【0117】
LSM/GDC複合電極をアノード(燃料極)に用いたRDCFCでは、Ni/GDCをアノード(燃料極)に用いた場合と比較して、炭素析出量と発電容量が若干低下するものの、燃料利用率をほぼ同等の値に維持することができ、RDCFCの実用化に向けて大きく前進した。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明の固体酸化物型電池は、アノード(燃料極)の劣化がなく、賦活と発電を繰り返しても性能が悪化せず、高出力を安定的に維持できるので、携帯機器(小型電子機器)等の電源、そのバックアップ用電源、ハイブリッド車向けの補助電源等として広く利用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】本発明の固体酸化物型電池の好適な一実施形態の基本構成を示す模式断面図である。
【図2】本発明の固体酸化物型電池の、発電時の種々の電流密度における発電特性(縦軸は出力密度[mW/cm])の一例を示すグラフである。
【図3】本発明の固体酸化物型電池の、電流密度[mA/cm]を変化させたときの電荷移動量(発電容量)[mWh/cm]の一例を示すグラフである。
【符号の説明】
【0120】
1 固体酸化物型電池(RDCFC)
2 アノード
2a アノード材料
2b アノードの集電体
3 カソード
3a カソード材料
3b カソードの集電体
4 電解質

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノード材料を有するアノード、カソード材料を有するカソード、及び、アノードとカソードとの間に配置されたイオン伝導性の固体酸化物からなる電解質、を少なくとも有し、賦活時に固体炭素を該アノード材料に担持させ、発電時にアノードにおいて、少なくとも下記反応式(1)及び(2)
CO+C → 2CO (1)
CO+O2− → CO+2e (2)
を利用して発電する固体酸化物型電池であって、該アノード材料が電気伝導性を有する複合金属酸化物よりなることを特徴とする固体酸化物型電池。
【請求項2】
上記アノード材料が、運転温度において10−2Scm−1以上の電気伝導度を有する複合金属酸化物よりなる請求項1記載の固体酸化物型電池。
【請求項3】
上記アノードが、金属粒子も合金粒子も含有していないか又はそれらによる3次元的ネットワークが形成されない範囲で金属粒子若しくは合金粒子を含有している請求項1又は請求項2記載の固体酸化物型電池。
【請求項4】
上記電気伝導性を有する複合金属酸化物が、ペロブスカイト型結晶構造、パイロクロア型結晶構造又はフルオライト型結晶構造を有するものである請求項1ないし請求項3の何れかの請求項記載の固体酸化物型電池。
【請求項5】
上記ペロブスカイト型結晶構造を有する複合金属酸化物が、下記組成式(G)
1±a1±b3−δ (G)
[組成式(G)中、Aは、La、Sr、Ca、Y、Ba、Pr、Ce、K、Na、Sm、Pb、Nd、Gd、Bi、Ag、Cs、Rb、Tl、Cd、Eu、Mg、Dy、Li及びHoからなる群より選ばれる少なくとも1種を示し、Bは、Co、Cr、Mn、Ni、Ce、Gd、Al、Ti、Zr、Sc、Mg、Ga、Cu、Fe、Yb、Y、Nb、I、Ni、Sr、Bi、In、Ca、Sn、Ta、W、Th、U、Hf、Mo、Lu、Tm、Tb、Dy、Ho、Os、Rh、Ag、Tr、Sb、Zn、Pa、In、Re及びErからなる群より選ばれる少なくとも1種を示し、0≦a≦0.2、0≦b≦0.2であり、δは酸素欠損量である。]
を有するものである請求項4記載の固体酸化物型電池。
【請求項6】
組成式(G)において、Bが、MnをB全体に対して50モル%以上含有するものである請求項5記載の固体酸化物型電池。
【請求項7】
組成式(G)において、Bが、B全体に対して、Coを50モル%以上含有するものであるか又はCoとFeをそれらの合計で50モル%以上含有するものである請求項5記載の固体酸化物型電池。
【請求項8】
該アノード材料がLSM又はLSCである請求項1ないし請求項7の何れかの請求項記載の固体酸化物型電池。
【請求項9】
上記アノードにおいて、少なくとも電子伝導性とホール伝導性のどちらかを有する複合金属酸化物、及び、少なくとも酸化物イオン伝導性とプロトン伝導性のどちらかを有する複合金属酸化物を含有する請求項1ないし請求項8の何れかの請求項記載の固体酸化物型電池。
【請求項10】
該アノードと該カソードが、互いに実質的に同じ金属元素を有する材料が3次元的ネットワークを形成してなるものである請求項1ないし請求項9の何れかの請求項記載の固体酸化物型電池。
【請求項11】
アノード材料を有するアノード、カソード材料を有するカソード、及び、アノードとカソードとの間に配置されたイオン伝導性の固体酸化物を含む電解質、を少なくとも有する固体酸化物型電池において、アノード材料に固体炭素を担持し、担持された固体炭素を二酸化炭素と反応させて気体の一酸化炭素に変換し、当該気体の一酸化炭素を酸化することにより発電する固体酸化物型電池の発電方法であって、該アノード材料が電気伝導性を有する複合金属酸化物よりなることを特徴とする固体酸化物型電池の発電方法。
【請求項12】
上記アノード材料が、運転温度において10−2Scm−1以上の電気伝導度を有する複合金属酸化物よりなる請求項11記載の固体酸化物型電池の発電方法。
【請求項13】
上記アノードが、金属粒子も合金粒子も含有していないか又はそれらによる3次元的ネットワークが形成されない範囲で金属粒子若しくは合金粒子を含有している請求項11又は請求項12記載の固体酸化物型電池の発電方法。
【請求項14】
上記電気伝導性を有する複合金属酸化物が、ペロブスカイト型結晶構造、パイロクロア型結晶構造又はフルオライト型結晶構造を有するものである請求項11ないし請求項13の何れかの請求項記載の固体酸化物型電池の発電方法。
【請求項15】
該アノードと該カソードが、互いに実質的に同じ金属元素を有する材料が3次元的ネットワークを形成してなるものである請求項11ないし請求項14の何れかの請求項記載の固体酸化物型電池の発電方法。
【請求項16】
アノード材料を有するアノード、カソード材料を有するカソード、及び、アノードとカソードとの間に配置されたイオン伝導性の固体酸化物からなる電解質、を少なくとも有し、賦活時に固体炭素を該アノード材料に担持させ、発電時にアノードにおいて、少なくとも下記反応式(1)及び(2)
CO+C → 2CO (1)
CO+O2− → CO+2e (2)
を利用して発電する固体酸化物型電池であって、該アノード材料が電気伝導性を有する複合金属酸化物よりなることを特徴とする電気化学リアクター。
【請求項17】
上記アノード材料が、運転温度において10−2Scm−1以上の電気伝導度を有する複合金属酸化物よりなる請求項16記載の電気化学リアクター。
【請求項18】
上記アノードが、金属粒子も合金粒子も含有していないか又はそれらによる3次元的ネットワークが形成されない範囲で金属粒子若しくは合金粒子を含有している請求項16又は請求項17記載の電気化学リアクター。
【請求項19】
上記電気伝導性を有する複合金属酸化物が、ペロブスカイト型結晶構造、パイロクロア型結晶構造又はフルオライト型結晶構造を有するものである請求項16ないし請求項18の何れかの請求項記載の電気化学リアクター。
【請求項20】
上記アノードにおいて、少なくとも電子伝導性とホール伝導性のどちらかを有する複合金属酸化物、及び、少なくとも酸化物イオン伝導性とプロトン伝導性のどちらかを有する複合金属酸化物を含有する請求項16ないし請求項19の何れかの請求項記載の電気化学リアクター。
【請求項21】
該アノードと該カソードが、互いに実質的に同じ金属元素を有する材料が3次元的ネットワークを形成してなるものである請求項16ないし請求項20の何れかの請求項記載の電気化学リアクター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−152014(P2009−152014A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−327970(P2007−327970)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】