説明

固定クリップ

【課題】比較的簡単な構成で回転ズレが生じない固定クリップを得る。
【解決手段】枝線用固定クリップ10Aは、一つの大径クランプ部11と2つの小径クランプ部12、13と位置ズレ防止ピン1とを一体成形した樹脂成形品よりなる。大径クランプ部11は、開口21とこの開口21を挟む断面C状の把持部11aとからなり、開口21に対向する大径クランプ部11の中心部11cから開口21に向かう方向(第1の方向)に棒状に伸びて位置ズレ防止ピン1が形成される。さらに、小径クランプ部12及び13は、中心部11cから開口21に向かう上記第1の方向と反対の第2の方向において、大径クランプ部11上に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車に配策されるワイヤーハーネス等の電線群に固定される固定クリップに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車に配索されるワイヤーハーネス等の電線群に固定される固定クリップとして、例えば、枝線用固定クリップがある。枝線用固定クリップは幹線となる電線群に固定されるともに、電線群から分岐した枝線をも固定することが可能なクリップであり、例えば、特許文献1で開示されている。
【0003】
特許文献1で開示された枝線用固定クリップは、幹線(電線群)を押し込み挿入する断面C状の把持部を設けた大径クランプ部と、該大径クランプ部の外周面に、断面C状の把持部を設けた複数の小径クランプ部を隣接させて突設し、これら複数の小径クランプ部に、幹線上で折り返された枝線の折り返し部分をそれぞれ押し込んで固定する構成としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−369352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1で開示された枝線用固定クリップでは、断面C状の把持部に電線群を押し込み挿入することにより、電線群を把持している関係上、C状の断面に沿った回転ズレが生じるため、枝線固定用の小径クランプ部の位置精度が劣化するという問題点があった。
【0006】
すなわち、特許文献1に開示された枝線用固定クリップ等で代表される、従来の固定クリップによる電線群の固定方法では、C状の断面に沿った固定クリップの回転ズレが生じてしまうという問題点があった。
【0007】
この発明は上記問題点を解決するためになされたもので、比較的簡単な構成で回転ズレが生じない固定クリップを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る請求項1記載の固定クリップは、複数の電線からなる電線群に固定される固定クリップであって、C状の断面形状を有し、前記C状の開口部分から前記電線群を内部にはめ込むことにより前記電線群を把持する電線群用把持部と、前記電線群用把持部における前記開口部分に対向する前記C状の中心部から前記開口部分に向かう第1の方向に棒状に伸びて前記把持部に連結して形成される棒状の突起部とを備える。
【0009】
請求項2記載の固定クリップは、請求項1記載の固定クリップであって、前記C状の中心部から前記第1の方向と反対方向の第2の方向において前記電線群用把持部上に形成され、前記電線群の一部が分岐した所定の枝線を把持可能な枝線用把持部をさらに備える。
【0010】
請求項3記載の固定クリップは、請求項1記載の固定クリップであって、前記C状の中心部から前記第1の方向と反対方向の第2の方向において前記電線群用把持部上に形成され、所定の取り付け部に形成された取付穴の縁部を把持可能な取付穴用把持部をさらに備える。
【0011】
請求項4記載の固定クリップは、請求項1記載の固定クリップであって、前記C状の中心位置から前記第1の方向と反対方向の第2の方向において前記電線群用把持部上に形成され、所定の被係止部を係止可能な係止部をさらに備える。
【発明の効果】
【0012】
この発明における請求項1記載の固定クリップにおける電線群用把持部が電源群を把持している際、棒状に伸びる突起部がC状の断面形状内において複数の電線を左右にかき分けて挿入されるため、電線群用把持部によるC状の断面に沿って回転する動きは突起部の存在によって確実に防止される。
【0013】
その結果、電源群用把持部によるC状の断面に沿った回転によるズレを確実に防止して、電線群に対し回転ズレなく安定して固定可能な固定クリップを得ることができる効果を奏する。
【0014】
加えて、回転ズレの防止用に新たに設けられた構成は棒状の突起部のみであるため、比較的簡単な構成で上記効果を達成することができる。
【0015】
請求項2記載の本願発明である固定クリップは、枝線用把持部を備えることによって、電線群を把持しながら、さらに、電線群に対する回転ズレなく所定の枝線を把持することができる。
【0016】
請求項3記載の本願発明である固定クリップは、取付穴用把持部を備えることによって、電線群を把持しながら、さらに、電線群に対する回転ズレなく、所定の取り付け部に取り付けることができる。
【0017】
請求項4記載の本願発明である固定クリップは、係止部を備えることによって、電線群を把持しながら、さらに、電線群に対する回転ズレなく、所定の被係止部を係止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の実施の形態1である枝線用固定クリップの断面構成を模式的に示す説明図である。
【図2】実施の形態1の枝線用固定クリップによる被覆電線及び枝線の固定方法を模式的に示す説明図である。
【図3】枝線用固定クリップの被覆電線に対する固定状態を模式的に示す説明図である。
【図4】この発明の実施の形態2である取付穴用固定クリップの支持体への取り付け状態を模式的に示す説明図である。
【図5】実施の形態2の取付穴用固定クリップの他の態様であるジョイントコネクタ機構部分を示す正面図である。
【図6】取付穴用固定クリップの他の態様における支持体に取り付けられた部分を模式的に示す平面図である。
【図7】この発明の実施の形態3である係止用固定クリップの断面形状を模式的に示す説明図である。
【図8】実施の形態3におけるジョイントコネクタ機構と被係止部の係止状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<実施の形態1>
図1はこの発明の実施の形態1である枝線用固定クリップ10Aの断面構成を模式的に示す説明図である。
【0020】
同図に示すように、実施の形態1の枝線用固定クリップ10Aは、一つの大径クランプ部11と2つの小径クランプ部12、13と位置ズレ防止ピン1とを一体成形した樹脂成形品よりなる。これらの部材1,11〜13の形成材料として、例えばポリプロピレン(PP)等の熱可塑性樹脂が考えられる。
【0021】
電線群用把持部である大径クランプ部11は、開口21(開口部分)とこの開口21を挟む断面C状の把持部11aとからなり、開口21に対向する大径クランプ部11の中心部11cから開口21に向かう方向(第1の方向;図中下方向)に棒状に伸びて位置ズレ防止ピン1(突起部)が大径クランプ部11と一体形成される。
【0022】
枝線用把持部である小径クランプ部12及び13は、中心部11cから開口21に向かう上記第1の方向と反対の第2の方向(図中上方向)において、大径クランプ部11上に一体形成される。
【0023】
小径クランプ部12及び13も、大径クランプ部11と同様、開口22及び23とこれら開口22及び23を挟む断面C状の把持部12a及び13aとからなる。小径クランプ部12及び13は、把持部12a及び13aの側面の一部を連続させていると共に、開口22及び23の対向位置にある把持部12a及び13aの外周面の中心部12c及び13cを、大径クランプ部11の外周面の中心部11c近傍に設けることにより、大径クランプ部11と小径クランプ部12及び13とを連続一体化している。
【0024】
大径クランプ部11の開口21は把持対象となる後述する被覆電線31の直径よりも小さくし、開口11の両端より外広がりの挿入ガイド部11bを突設している。同様に、小径クランプ部12及び13の開口22及び23も把持対象となる後述する枝線32及び33の直径より小さくして、その両端より外広がりの挿入ガイド部12b,13bを突設している。
【0025】
大径クランプ部11の把持部11aの内周面には、左右に所要長さの一対のリブ部14を周方向に形成し、把持部11a内に挿入される被覆電線31の外周面にリブ部14の内周面が密接するようにしている。
【0026】
図2は、実施の形態1の枝線用固定クリップ10Aによる被覆電線31並びに枝線32及び33の固定方法を模式的に示す説明図である。なお、図2では直接的に図示していないが枝線32及び33は被覆電線31の一部が分岐した電線を意味する。
【0027】
同図に示すように、電線群である被覆電線31は所定の延在方向に向けて伸びる複数の裸線導体2(電線)を被覆部3により被覆して形成される。
【0028】
図2に示すように、大径クランプ部11の開口21を押し広げるようにして把持部11a内に被覆電線31を挿入してはめ込むことにより被覆電線31を把持する。その結果、枝線用固定クリップ10Aは被覆電線31に固定される。
【0029】
図3は枝線用固定クリップ10Aの被覆電線31に対する固定状態を模式的に示す説明図である。
【0030】
同図(a) ,(b) に示すように、被覆電線31が把持部11a内に挿入されるとともに、位置ズレ防止ピン1が大径クランプ部11のC状断面内において複数の裸線導体2を左右にかき分けて挿入される。
【0031】
なお、同図(a) ,(b) の違いは被覆電線31の把持部11a内への挿入方向に相違に伴う、位置ズレ防止ピン1、小径クランプ部12及び13の設置位置・角度が相違する点である。同図(a) ,(b) に示すように、作業者が所望する設置位置・角度で枝線用固定クリップ10Aを被覆電線31に固定することができる。
【0032】
このため、大径クランプ部11のC状の断面に沿った大径クランプ部11の回転方向DRの動きは、複数の裸線導体2内に挿入される位置ズレ防止ピン1の存在によって確実に防止される。
【0033】
その結果、大径クランプ部11のC状の断面に沿った回転方向DRの回転ズレを確実に防止して、被覆電線31に対し回転ズレなく安定して固定可能となる枝線用固定クリップ10Aを得ることができる効果を奏する。
【0034】
加えて、回転ズレの防止用に新たに設けられた構成は位置ズレ防止ピン1のみであるため、比較的簡単な構成で上記効果を達成することができる。
【0035】
なお、位置ズレ防止ピン1の長さは、大径クランプ部11の被覆電線31に対する取り付け時に、大径クランプ部11の回転方向DRの動きを確実に防止すべく、中心部11cから開口21までの距離の半分以上の長さで形成することが望ましい。
【0036】
次に、小径クランプ部12及び13の開口22及び23を押し広げるようにして把持部12a,13a内に枝線32及び33をそれぞれ挿入してはめ込むことにより、枝線32及び33は小径クランプ部12及び13によって把持される。
【0037】
また、枝線32及び33を使用する場合、枝線32及び33を固定している小径クランプ部12及び13の開口22及び23が、大径クランプ部11の外方、即ち、被覆電線31の外方を向いている。このため、小径クランプ部12及び13に挿入されている枝線32及び3を上方へ引き出すように引っ張ると、大径クランプ部11を被覆電線31に固定したままの状態で、被覆電線31から分岐して得られる枝線32及び33を取り外すことが容易にできる。
【0038】
さらに、被覆電線31の外周面には、大径クランプ部11の内周面に周方向に形成されたリブ部14が密接するため、枝線用固定クリップ10Aが被覆電線31に対して軸線方向に位置ズレすることを防止できる。加えて、小径クランプ部12及び13の側面を互いに連続して一体に形成していることにより、個々の小径クランプ部12及び13の強度が増し、把持力の耐久性を高めることができる。
【0039】
なお、図2に示すように、複数の裸線導体2の全体を被覆部3で覆って被覆電線31を形成している場合は、大径クランプ部11によって被覆電線31を把持する時に位置ズレ防止ピン1は被覆部3を貫通する必要がある。この場合、位置ズレ防止ピン1のみを、PPより強度の高い材質(例えばPBT(ポリブチレンテレフタレート(polybutylene terephthalate))を用いることにより、位置ズレ防止ピン1が被覆部3を確実に貫通するようにすることが望ましい。
【0040】
また、複数の裸線導体2よりなる電線群の一部もしくは全部が露出している場合、その露出部分に大径クランプ部11を固定することができる。したがって、被覆部3を貫通させる強度は必要なくなるため、位置ズレ防止ピン1を他の部材11〜13と同様にPPで構成することで十分対応可能である。
【0041】
このように、実施の形態1の枝線用固定クリップ10Aは、枝線用把持部である小径クランプ部12及び13を備えることによって、電線群である被覆電線31を大径クランプ部11により把持しながら、さらに、被覆電線31対する回転方向DRの回転ズレなく、被覆電線31から分岐する枝線32及び33を把持することができる。
【0042】
<実施の形態2>
図4はこの発明の実施の形態2である取付穴用固定クリップ10Bの支持体への取り付け状態を模式的に示す説明図である。
【0043】
同図に示されるように、取付穴用固定クリップ10Bにおいて、把持部15a、基部15b及び把持部15cからなるジョイントコネクタ機構15は、大径クランプ部11の中心部11cから開口21に向かう第1の方向と反対の第2の方向(図中上方向)において、大径クランプ部11上に一体形成される。なお、大径クランプ部11の構造及び大径クランプ部11による被覆電線31に対する把持内容は実施の形態1の枝線用固定クリップ10Aと同様であるため、説明を省略する。
【0044】
ジョイントコネクタ機構15を構成する基部15b及び把持部15a,15cは、大径クランプ部11と同じ材質のPP等からなり、大径クランプ部11と一体形成される。
【0045】
基部15bは、ジョイントコネクタ機構15における中心線に沿う幹の部分であり、把持部15a,15cは、この基部15bから図中左右に張り出すように形成されている。
【0046】
把持部15a及び15cは、第一梁部及び第二梁部として機能し、自動車のボディ部などの取り付け部となる支持体7に形成された取付穴7Aの縁部を把持する部分である。把持部15a,15cは、大径クランプ部11の中心部11cに対して基部15bを含む一の平面に沿って基部15bの両側へ張り出して形成されている。なお、基部15bを含む一の平面は、図4では紙面に沿う平面である。
【0047】
把持部15aは、取付穴7Aに挿入される部分であり、基部15bから斜めに張り出して形成され、基部15bにおける頂上部15tから下方へ徐々に広がる形状を有している。このように基部15bから斜めに張り出した把持部15aは、基部15b側へ収縮するように可撓性を有している。把持部15aの最も幅の広い部分は、取付穴7Aの幅よりも大きな幅で形成され、取付穴7Aに押し付けられることにより、基部15b側へ収縮しながら取付穴7A内に進入する。そして、把持部15aは、取付穴7Aに挿入されることによって取付穴7Aの裏側(図中上側)の縁部に当接する。
【0048】
把持部15cは、基部15bからほぼ垂直に張り出して形成され、取付穴7Aの幅よりも大きな幅で形成され、取付穴7Aの表側(図中下側)の縁部に当接する部分である。すなわち、把持部15aと把持部15cとが、取付穴7Aの縁部を表裏の両側から把持する。
【0049】
以下、取付穴用固定クリップ10Bの自動車のボディなどの支持体7に取り付けられる手順について説明する。以下、取付穴用固定クリップ10Bを用いて、支持体7に固定する作業を行う人を作業者と称する。
【0050】
まず、作業者は、一方の手で取付穴用固定クリップ10B(大径クランプ部11の外周部分等)を持ち、被覆電線31を保持する取付穴用固定クリップ10Bの把持部15aを取付穴7Aに挿入する。
【0051】
その結果、取付穴7Aに挿入された把持部15aは、取付穴7Aの裏側の縁部に当接し、取付穴7Aに挿入されない把持部15cは、取付穴7Aの表側の縁部に当接する。これにより、把持部15aと把持部15cとが、取付穴7Aの縁部を表裏の両側から把持し、取付穴用固定クリップ10Bは、支持体7に取り付けられる。したがって、取付穴用固定クリップ10Bにより把持される被覆電線31は、取付穴用固定クリップ10Bを通じて支持体7に固定される。
【0052】
このように、実施の形態2の取付穴用固定クリップ10Bでは、取付穴用把持部であるジョイントコネクタ機構15を備えることによって、電線群である被覆電線31を大径クランプ部11により把持しながら、さらに、被覆電線31に対する回転方向DRの回転ズレなく、支持体7に取り付けることができる効果を奏する。
【0053】
(他の態様)
図5は、実施の形態の2の取付穴用固定クリップ10Bの他の態様であるジョイントコネクタ機構部分を示す正面図である。図6は取付穴用固定クリップ10Bの他の態様における支持体7に取り付けられた部分を模式的に示す平面図である。
【0054】
次に、図5及び図6を参照しつつ、実施の形態2の取付穴用固定クリップ10Bの他の態様について説明する。他の態様に係るジョイントコネクタ機構16は、図4に示されたジョイントコネクタ機構15と比較して、把持部16a,16cの部分が異なる構成を有している。
【0055】
図5及び図6において示される他の態様は、ジョイントコネクタ機構15がジョイントコネクタ機構16に置き換わる点を除いて、図4で示した構成と同様である。
【0056】
ジョイントコネクタ機構16も、ジョイントコネクタ機構15と同様に、全体的に一の平面に沿った薄い扁平形状に形成された部材であり、基部16b、把持部16a,16c及びアーム部14が形成されている。但し、ジョイントコネクタ機構16において、把持部16a,16c及びその付け根の部分の基部16bの構成材料は、PP等が用いられ、ジョイントコネクタ機構15と同様、図示しない大径クランプ部11と一体形成される。
【0057】
ジョイントコネクタ機構16における把持部16a,16cは、ジョイントコネクタ機構15の把持部15a,15cと同様に第一梁部及び第二梁部として機能し、支持体7に形成された取付穴7Aの縁部を把持する部分である。ジョイントコネクタ機構16における把持部16a,16cも、基部16bにおける頂上部16t側(図5において上側)の部分において、基部16bを含む一の平面に沿って基部16bの両側へ張り出して形成されている。
【0058】
ジョイントコネクタ機構16における把持部16aは、支持体7に設けられた長穴状の取付穴7Aの広い方の幅(図6において横方向の幅)よりも小さく、かつ、狭い方の幅(図6において上下方向の幅)よりも大きな幅で形成されている。また、把持部16aは、その長手方向が取付穴7Aの長手方向に沿うようにして取付穴7Aに挿入される。
【0059】
そして、ジョイントコネクタ機構16の基部16bが、約90度回転されることにより、把持部16aは、取付穴7Aの裏側の縁部に当接する。
【0060】
また、ジョイントコネクタ機構16における把持部16cは、取付穴7Aの広い方の幅よりも大きな幅で形成され、取付穴7Aの表側の縁部に当接する部分である。すなわち、把持部16aと把持部16cとが、取付穴7Aの縁部を表裏の両側から把持する。なお、ジョイントコネクタ機構16の把持部16cは、回転前及び回転後のいずれにおいても取付穴7Aの表側の縁部に当接した状態である。
【0061】
このように図5及び図6で示したジョイントコネクタ機構16を有する取付穴用固定クリップ10Bの他の態様によっても、支持体7の取付穴7Aに取付穴用固定クリップ10Bを取り付けることができる。
【0062】
<実施の形態3>
図7はこの発明の実施の形態3である係止用固定クリップ10Cの断面形状を模式的に示す説明図である。
【0063】
同図に示されるように、係止用固定クリップ10Cにおいて、ボックス部18及びアーム片19を有するジョイントコネクタ機構17は、大径クランプ部11の中心部11cから開口21に向かう第1の方向と反対の第2の方向(図中上方向)において、大径クランプ部11上に一体形成される。なお、大径クランプ部11の構造及び大径クランプ部11の被覆電線31に対する固定内容は実施の形態1の枝線用固定クリップ10Aと同様であるため、説明を省略する。
【0064】
ジョイントコネクタ機構17を構成するボックス部18及びボックス部18の穴部18h内に設けられるアーム片19は、PP等お熱可塑性樹脂にからなり、大径クランプ部11と一体形成される。また、穴部18hは、把持部11aの幅方向に沿って幅W18の領域を有している。
【0065】
ジョイントコネクタ機構17は、ボックス部18の上面に、係止爪19aを先端に設けたアーム片19を水平方向に突設した形状としている。
【0066】
図8はジョイントコネクタ機構17と被係止部の係止状態を示す説明図であり、同図(a) は被係止部側の要部斜視図であり、同図(b) は係止状態の要部断面図であり、同図(c) は係止状態の上部から視た状態を模式的に示す説明図である。なお、同図(c) において、被係止部材40下に存在するジョイントコネクタ機構17は実際には見えないが便宜上、実線で示している。
【0067】
実施の形態3の係止用固定クリップ10Cを取り付ける被覆電線31には外周部に被覆部3を有しており、例えば、被覆電線31より分岐する枝線(図示せず、図2の枝線32,33に相当)の端末部分に被係止部材40を接続している。被係止部材40は、ジョイントコネクタ機構17に着脱自在に係止する被係止部41をケース42の外面に突設して構成されている。なお、被係止部41の被係止部材40の長手方向に沿った幅W41は、穴部18hの幅W18より少し狭くなるように形成される。
【0068】
被係止部41は図8(a)〜(c) に示すように、コ字状の係止枠41aの中央横枠41bに係止溝41cを設けた形状で、係止枠41aにジョイントコネクタ機構1のアーム片19を挿入方向D1に沿って挿入して、係止爪19aを係止溝41cに係止することにより、被係止部材40を係止用固定クリップ10Cのジョイントコネクタ機構17に係止することができる。
【0069】
このように、実施の形態3の係止用固定クリップ10Cでは、係止部であるジョイントコネクタ機構17を備えることによって、電線群である被覆電線31を大径クランプ部11により把持しながら、さらに、被覆電線31に対する回転方向DRの回転ズレなく、被係止部材40を係止することができる効果を奏する。
【符号の説明】
【0070】
1 位置ズレ防止ピン
2 裸線導体
3 被覆部
7 支持体
7A 取付穴
10A 枝線用固定クリップ
10B 取付穴用固定クリップ
10C 係止用固定クリップ
11 大径クランプ部
12,13 小径クランプ部
15〜17 ジョイントコネクタ機構
31 被覆電線
32,33 枝線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電線からなる電線群に固定される固定クリップであって、
C状の断面形状を有し、前記C状の開口部分から前記電線群を内部にはめ込むことにより前記電線群を把持する電線群用把持部と、
前記電線群用把持部における前記開口部分に対向する前記C状の中心部から前記開口部分に向かう第1の方向に棒状に伸びて前記把持部に連結して形成される棒状の突起部とを備える、
固定クリップ。
【請求項2】
請求項1記載の固定クリップであって、
前記C状の中心部から前記第1の方向と反対方向の第2の方向において前記電線群用把持部上に形成され、前記電線群の一部が分岐した所定の枝線を把持可能な枝線用把持部をさらに備える、
固定クリップ。
【請求項3】
請求項1記載の固定クリップであって、
前記C状の中心部から前記第1の方向と反対方向の第2の方向において前記電線群用把持部上に形成され、所定の取り付け部に形成された取付穴の縁部を把持可能な取付穴用把持部をさらに備える、
固定クリップ。
【請求項4】
請求項1記載の固定クリップであって、
前記C状の中心位置から前記第1の方向と反対方向の第2の方向において前記電線群用把持部上に形成され、所定の被係止部を係止可能な係止部をさらに備える、
固定クリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−239514(P2011−239514A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−106960(P2010−106960)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】