説明

固形物又はこれを含む飲料の生分解処理装置

【課題】粘性が強く流動性の低い食品やゼリー状の固形物から成るゼリー状飲料を通常の液体飲料と一緒に低コストで生分解処理することができる生分解処理装置を提供する。
【解決手段】貯留槽1からの飲料等(被処理物)を受け入れて、前記被処理物を微生物分解することにより、前記被処理物の流動性を増加させるか若しくは前記被処理物中の固形物を流動化させる反応槽2と、前記貯留槽内の被処理物を前記反応槽の底部へ所定圧力を加えて送出するポンプ5と、前記反応槽からの被処理物を受けて入れて曝気処理する曝気槽3と、前記曝気槽からの被処理物を受け入れて前記被処理物から固形物を分離する固液分離槽4とを備えており、前記反応槽において、前記ポンプからの圧力により、前記被処理物を、前記反応槽の底部から支持板2b及び腐植物質層2cの中を上昇・通過させ、その過程で前記被処理物を効率的に微生物分解させるようにした、飲料の生分解処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、賞味期限切れなどによる廃棄物としての、生クリームやカスタードクリームなどのようなペースト状の粘性が高く流動性の低い食品、又はゼリー状の固形物から成るゼリー状飲料を、他の飲料と一緒に微生物分解するのに適した、飲料の生分解処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、生クリームやカスタードクリームなどのようなペースト状の粘性が高く流動性の低い食品が、賞味期限切れなどにより、コーヒーやコーラなどの一般の液体飲料と一緒にゴミとして廃棄されることがある。また、近年は、柔らかいゼリー状(ゲル状)に形成された固形物(半固形物を含む。以下同じ)を柔軟な金属製もしくはプラスチック製の袋状容器などに封入した飲用製品(ゼリー状の飲料。例えば、コカ・コーラカスタマーマーケティング株式会社(東京都港区六本木6−2−31)が製造販売する清涼飲料水(ゼリー飲料)の「朝バナナ」(商標)、ハウスウェルネスフーズ株式会社(兵庫県伊丹市鋳物師3−20)が製造販売する清涼飲料水(ゼリー飲料)の「1日分のビタミン」(商標)、株式会社マンナンライフ(群馬県富岡市上小林137)が製造販売する洋生菓子の「蒟蒻畑」(商標)など))の販売が増加しているが、これらが、賞味期限切れなどにより、コーヒーやコーラなどの一般の液体飲料と一緒にゴミとして廃棄されることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−275893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前述のような粘性が強く流動性の低い食品やゼリー状飲料とコーヒーやコーラなどの通常の液体の飲料とでは、同じ廃棄物でも、互いに粘性や流動性が全く異なるので、従来は、その生分解処理を一緒に行うことは問題が多く、別個に処理することも少なくなかった。しかしながら、粘性が強く流動性の低い食品やゼリー状飲料とコーヒーやコーラなどの通常の液体の飲料とは、日常生活上は互いに近似した場面で販売・消費されるものであるから、それらを別々の方法で別個に生分解処理することは、廃棄物処理のコストを増大化させるものであり、望ましくない。そこで、本発明者は、このような粘性が強く流動性の低い食品やゼリー状飲料とコーヒーやコーラなどの通常の液体の飲料とを、一緒に微生物処理するための方法を研究してきた。
【0005】
本発明は、このような研究の結果、創作されたものであって、粘性が強く流動性の低い食品やゼリー状の固形物から成るゼリー状飲料を、コーヒーやコーラなどの通常の液体の飲料と一緒に、低コストで且つ効率的に微生物(バクテリアや菌類を含む)による生分解処理を行うことができる、飲料の生分解処理装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決するための本発明による飲料の生分解処理装置は、生クリームやカスタードクリームなどのようなペースト状の粘性が高く流動性の低い食品又はゼリー状の固形物から成るゼリー状飲料、及びその他の飲料(以下「被処理物」という)を、廃棄物として貯留する貯留槽と、前記貯留槽からの被処理物を受け入れて、前記被処理物を微生物分解することにより、前記被処理物の流動性を増加させるか若しくは前記被処理物中の固形物を流動化させる反応槽と、前記貯留槽内の被処理物を前記反応槽の底部又はその上方へ所定圧力を加えて送出するポンプと、前記反応槽からの被処理物を受けて入れて曝気処理する曝気槽と、前記曝気槽からの被処理物を受け入れて前記被処理物から固形物を分離する固液分離槽と、を備えており、前記反応槽は、前記反応槽の底部又はその上方に配置され、前記貯留槽と配管を介して接続されており、前記貯留槽からの被処理物を受け入れる流入部と、前記受入部の上方に配置されており、前記腐植物質層をその下方から支持すると共に、前記被処理物中の固形物が自らを通過するときに、腐植物質層での微生物分解が効率的に行なわれるように前記固形物を物理的に細かく分割するための、網状もしくは格子状に形成された支持板と、前記支持板の上方に配置されており、微生物が増殖可能に構成されており、前記被処理物が通過可能な多数の微小な隙間を内部に有しており、前記被処理物が自らの内部を上昇する過程で前記被処理物を微生物分解して前記被処理物の流動性を増加させるか若しくは前記被処理物中の固形物を流動化させる腐植物質層と、前記腐植物質層の上方に配置されており、前記腐植物質層からの被処理物を他の槽に送出する流出部と、を含むように構成されており、前記ポンプは、前記貯留槽から前記流入部に流入した被処理物が前記支持板及び前記腐植物質層中を上昇・通過できるように、且つ、前記被処理物が前記腐植物質層中に一定時間だけ滞留・流動した後に通過するように前記被処理物が前記腐植物質層内を所定の速度で上昇・移動するように、前記貯留槽から前記流入部に流入する被処理物に対して所定の圧力を加えるように構成されている、ことを特徴とするものである。
【0007】
また、本発明による飲料の生分解処理装置は、生クリームやカスタードクリームなどのようなペースト状の粘性が高く流動性の低い食品又はゼリー状の固形物から成るゼリー状飲料、及びその他の飲料(以下「被処理物」という)を、廃棄物として貯留する貯留槽と、前記貯留槽からの被処理物を受け入れて、前記被処理物を微生物分解することにより、前記被処理物の流動性を増加させるか若しくは前記被処理物中の固形物を流動化させる第1反応槽と、前記貯留槽内の被処理物を前記第1反応槽の底部又はその上方へ所定圧力を加えて送出するポンプと、前記第1反応槽と直列に接続され、前記第1反応槽からの被処理物を受け入れて、前記被処理物をさらに微生物分解する第2反応槽と、前記第2反応槽又はこの後段の反応槽からの被処理物を受けて入れて曝気処理する曝気槽と、前記曝気槽からの被処理物を受け入れて前記被処理物から固形物を分離する固液分離槽と、を備えており、前記第1反応槽は、前記第1反応槽の底部又はその上方に配置され、前記貯留槽と配管を介して接続されており、前記貯留槽からの被処理物を受け入れる流入部と、前記流入部の上方に配置されており、後記の牡蠣殻層と腐植物質層をその下方から支持すると共に、前記被処理物中の固形物が自らを通過するときに、後記の腐植物質層での微生物分解が効率的に行なわれるように前記固形物を物理的に細かく分割するための、網状もしくは格子状に形成された支持板と、前記支持板の上方に配置されており、前記被処理物中の鉄分(腐植物質層での微生物分解を阻害する要素となる鉄分)を除去するための多数の牡蠣殻が配置されている牡蠣殻層と、前記牡蠣殻層の上方に配置されており、微生物が増殖可能に構成されており、前記被処理物が通過可能な多数の微小な隙間を内部に有しており、前記被処理物が自らの内部を上昇する過程で前記被処理物を微生物分解して前記被処理物の流動性を増加させるか若しくは前記被処理物中の固形物を流動化させる腐植物質層と、前記腐植物質層の上方に配置され、前記腐植物質層中を上昇する過程で流動性化し又は流動性が増した被処理物を前記第1反応槽の上方からのオーバーフローにより前記第2反応槽に流出させるスクリーンと、を含むように構成されており、前記ポンプは、前記貯留槽から前記流入部に流入した被処理物が前記支持板及び前記腐植物質層中を上昇・通過できるように、且つ、前記被処理物が前記腐植物質層中に一定時間だけ滞留・流動した後に通過するように前記被処理物が前記腐植物質層内を所定の速度で上昇・移動するように、前記貯留槽から前記流入部に流入する被処理物に対して所定の圧力を加えるように構成されている、ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、本発明においては、前記貯留槽からの被処理物は、前記反応槽の底部の流入部内に送出される。このとき、被処理物(ゼリー状固形物などを含む)は、前記ポンプにより所定の圧力が加えられながら送出されるので、前記流入部内に留まることなく、固形物も含めて、上方の網状もしくは格子状の支持板を上昇・通過する(このとき、前記被処理物中の固形物は、前記支持板により、微生物分解が促進されるように、細かく分割される)。このように細分化(細かく分割)されながら前記支持板を通過した固形物を含む被処理物は、さらに前記腐植物質層の中を上昇・通過しながら微生物分解され、その結果、前記被処理物は全体として流動化し又は流動性を増加される。
【0009】
もし、前記被処理物がコーヒーやジュースなどの通常の液体飲料だけならば、前記貯留槽からの被処理物は前記反応槽の「上方から」投入するだけでよいし、ましてや、前記貯留槽からの被処理物に前記ポンプにより所定の圧力(固形物を含む被処理物が前記腐植物質層中を上昇・通過できるような圧力)を加えながら前記反応槽の下方の流入部に送出する必要はない(被処理物が通常の液体飲料だけならば、前記反応槽の「上方から」投入すれば、それだけで、前記被処理物は、その自重だけにより、前記腐植物質層の中を所定速度で下降・通過し、その過程で微生物分解される)。しかし、コーヒーやジュースなどの通常の液体飲料だけでなく、これと一緒に、生クリームやカスタードクリームなどのようなペースト状の粘性が高く流動性の低い食品、又はゼリー状の固形物から成るゼリー状飲料をも、前記反応槽の「上方から」投入するようにした場合は、本発明者の実験によると、前記ゼリー状飲料や液体飲料の自重だけでは、前記被処理物中のゼリー状飲料の固形物などが、前記腐植物質層の内部に入り込むことができず前記腐植物質層の上表面の上に留まってへばり付いて目詰まりを起こしてしまい、ひいては、通常の液体飲料さえも前記目詰まりによって前記腐植物質層の中に入り込むことができなくなってしまう。
【0010】
そこで、本発明では、前述のように、前記貯留槽からの被処理物を、前記反応槽の下方に配置された流入部内に、前記ポンプにより所定の圧力を加えながら送出し、この所定の圧力により、前記被処理物を、前記反応槽の「下方から」、前記網状もしくは格子状の支持板を通過させて細かく分割した上で前記腐植物質層の中を所定速度で上昇・通過させるようにした。これにより、本発明では、前記被処理物に含まれる生クリームやカスタードクリームなどのようなペースト状の粘性が高く流動性の低い食品又はゼリー状の固形物から成るゼリー状飲料を、通常の液体飲料と一緒に、前記腐植物質層の中で所定時間、微生物と接触させて生分解処理させて流動化させることができるようになる。よって、本発明によれば、粘性が強く流動性の低い食品やゼリー状の固形物から成るゼリー状飲料とコーヒーやコーラなどの通常の液体の飲料とを、別々に生分解処理することなく、両者を一緒に低コストで且つ効率的に生分解処理することができるようになる。
【0011】
また、本発明では、前記の網状もしくは格子状の支持板という1つの部品に、前記腐植物質層をその下方から支持する機能と、前記被処理物中の固形物が自らを通過するときに前記固形物を物理的に細かく分割して前記腐植物質層中での微生物分解を促進させる機能とを兼ねさせるようにしているので、飲料の生分解処理装置の部品点数を削減して装置の低コスト化を実現することができるようになる。
【0012】
以上のように、本発明によれば、前記支持板に腐植物質層の支持機能と固形物の細分化機能とを兼ねさせたことによって部品点数の削減による装置の低コスト化を実現すると共に、前述のように前記ポンプからの圧力を使用して被処理物を反応槽の下方の底部から上昇させて上方の腐植物質層中を上昇・通過させるようにし、これによって、前記腐植物質層の目詰まり(従来のように固形物などを含む飲料を前記腐植物質層の「上方から」投下したときに腐植物質層の上表面に固形物などがへばり付くことによって生じていた目詰まり)が発生することを防止して装置の連続運転を可能にする(前記目詰まりの発生による生分解処理作業の中断を防止する)ことによる装置のランニングコストの低減化と、固形物やペースト状物質などを含む飲料の効率的な微生物分解の促進化とを、実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態による飲料の生分解処理装置の概略を示す概念図である。
【図2】本発明の実施例1による飲料の生分解処理装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は本発明の一実施形態に係る飲料の生分解処理装置の概略を示す概念図である。図1において、1は廃棄物としての缶コーヒーなどの通常の液体飲料や生クリームやカスタードクリームなどのようなペースト状の粘性が高く流動性の低い食品又はゼリー状の固形物から成るゼリー状飲料などを含む被処理物が投入される貯留槽、2は前記貯留槽1内の被処理物(固形物などの流動性を有していない成分を含む被処理物)を受け入れて微生物分解して流動化させる反応槽、3は前記反応槽2からの被処理物(前記反応槽2により流動化された被処理物)を受け入れて曝気処理する曝気槽、4は前記曝気槽3からの被処理物を受け入れて固液分離する沈殿槽、である。
【0015】
また、図1において、5は前記貯留槽1中の被処理物を配管6を介して前記反応槽2の底部の流入部2aに所定の圧力を加えながら送り出す水中ポンプ、2bは前記流入部2aの上に配置されており多数の穴か隙間を有するように網状または格子状に形成された金属製又はプラスチック製の支持板、2cは前記支持板2bに支持されており、好気性微生物がその中で繁殖する腐植物質から成り、前記流入部2aに流入された被処理物(固形物など流動化していない成分を含む被処理物)をそれが上昇・通過する過程で微生物と接触させて生分解するための腐植物質層、2dは前記腐植物質層2cの上方に配置されており前記腐植物質層2c内を上昇・通過して生分解され流動化された被処理物をいったん貯めて前記曝気槽に送るための流出部、7は前記流出部2d内の被処理物を配管8を介して前記曝気槽3に送るためのオーバーフロー用のフィルター機能を有するスクリーン、9は前記反応槽2のスクリーン7からの被処理物をいったん前記曝気槽3の下方に移動させるための仕切板、10は前記曝気槽3の上方に配置されており前記曝気槽3で曝気処理された被処理物を配管11を介して前記沈殿槽4に送るためのオーバーフロー用のフィルター機能を有するスクリーン、12は前記沈殿槽4の上方に配置され、前記沈殿槽4内で固液分離された後の液体を放流管13から外部の河川などに放流するためのオーバーフロー用のフィルター機能を有するスクリーン、である。
【0016】
また、図1において、14は前記反応槽2の前記流入部2a中に配置され、ブロア15からの空気を前記反応槽2内に供給するための散気口、16は前記曝気槽3の下方に配置され、ブロア17からの空気を微小なマイクロナノバブルとして前記曝気槽3内の被処理物に供給するためのナノバブル発生部、18は前記曝気槽3内の被処理物とマイクロナノバブルを撹拌・混合するため撹拌機、である。
【0017】
前記腐植物質層2cは、例えば、植物の葉や茎などの動植物遺体が土壌生物によって分解・再合成されること(腐植)によりできた有機成分から成る暗色無定形(コロイド状)の物質とこの中で増殖可能な微生物を併せ含み、前記被処理物が自らの内部を通過可能な多数の隙間もしくは穴を有している層である。また、前記支持板2bは、前記腐植物質層2cをその下方から支持する機能と、前記被処理物中の固形物等が自らを通過するときに前記固形物等を物理的に細かく分割・分断して前記腐植物質層2cで微生物分解され易くする機能とを併せ有している、例えば直径が約1mmの細かい網目を有する網状もしくは格子状の板である。
【0018】
本実施形態においては、前記貯留槽1に貯留された被処理物は、所定量ずつ、前記ポンプ5により所定の圧力を加えられながら、配管6を介して前記反応槽2の底部の流入部2aに送られる。前記流入部2aに送られた被処理物は、ゼリー状の固形物なども含んでいるが、それらの固形物も、他の液体飲料と一緒に、前記ポンプ5からの吐出圧力により、前記流入部2aの上の支持板2bを上昇・通過する。このとき、前記固形物は、前記支持板2bの網目状もしくは格子状部分により、細かく分割されて、微生物分解され易い状態に変換される。前記支持板2bを上昇・通過した被処理物は、前記腐植物質層2cの中を上昇するが、このときも、前記ポンプ5からの吐出圧力により、前記分割された固形物も他の液体飲料と一緒に前記腐植物質層2cの中を一定速度で上昇する(図1の矢印α参照)。この前記腐植物質層2cの中を上昇する過程で、前記腐植物質層2c内の微生物により前記被処理物中の液体だけでなく固形物も生分解されるので、前記固形物を含めて被処理物の全体が流動化される。
【0019】
前記の腐植物質層2cを通過する過程で生分解され流動化された被処理物は、その後、オーバーフローにより前記スクリーン7から配管8を介して曝気槽3に送られて曝気処理される。前記の曝気処理された被処理物は、その後、オーバーフローにより前記スクリーン10から配管11を介して沈殿槽4に送られる。そして、前記沈殿槽4内で前記被処理物が個体分離された後、前記沈殿槽4内の液状部分はオーバーフローにより前記スクリーン12を介して放流管13により放流される。なお、前記沈殿槽4内の固形部分は、別途焼却処理などで廃棄されてもよいし前記貯留槽1内に戻すようにしてもよい。
【0020】
以上のように、本実施形態によれば、前記貯留槽1からの被処理物を、前記反応槽2の下方に配置された流入部2a内に、前記ポンプ5により所定の圧力を加えながら流入させ、この所定の圧力を加えながら流入された被処理物を前記網状もしくは格子状の支持板2bを介して細かく分割した上で前記腐植物質層の中を所定速度で上昇させるようにしているので、前記被処理物に含まれるゼリー状の固形物やペースト状物質などを、通常の液体飲料と一緒に、前記腐植物質層の中で所定時間、微生物と接触させて生分解処理させることができる。よって、本実施形態では、前記反応槽2で処理した後の被処理物は、全体として流動化されているので、次段の曝気槽3に移行させ曝気処理することができる。よって、本実施形態によれば、粘性が強く流動性の低い食品やゼリー状の固形物から成るゼリー状飲料とコーヒーやコーラなどの通常の液体の飲料とを、別々に生分解処理することなく、両者を一緒に、低コストで且つ効率的に生分解処理することができる。
【0021】
また、特に本実施形態では、前記の網状もしくは格子状の支持板2bという1つの部品に、前記腐植物質層2cをその下方から支持する機能と、前記被処理物中の固形物が自らを通過するときに前記固形物を物理的に細かく分割して前記腐植物質層で微生物分解され易くする機能とを兼ねさせるようにしているので、生分解装置の部品点数を削減することができ、装置の低コスト化を実現することができる。
【実施例1】
【0022】
本発明の実施例1による飲料の生分解処理装置を図2を参照して説明する。図2は本実施例1による飲料の生分解処理装置を示す概略図である。図2において、21は賞味期限切れとなった飲料が入った金属製缶や生クリームやゼリー状飲料などが入った金属製の袋状容器などから内容物を取り出して粉砕するためのプレス機(粉砕機)、22は前記プレス機(粉砕機)21により取り出され粉砕された飲料、生クリーム、又はゼリー状飲料等の内容物(以下「被処理物」という)を貯留しておく貯留槽、22aは貯留槽22内の被処理物を撹拌するための撹拌機、である。
【0023】
前記プレス機(粉砕機)21により取り出され粉砕され前記貯留槽22に貯留される被処理物としては、例えば、コーヒーやコーラなどの通常の液体飲料、ゼリー状の固形物(半固形物を含む)から成るゼリー状飲料、生クリーム、カスタードクリームもしくは練乳などのようなペースト状の粘性が高く流動性の低い食品、プリンや寒天などの固形化(半固形化を含む)食品などが含まれる。これらは、通常の液体飲料と近似の場面で販売・消費されているため、通常の液体飲料と一緒に生分解処理することが、販売・消費後の廃棄物処理の効率化・低コスト化などの観点などから望ましいものである。
【0024】
また図2において、23は前記貯留槽22内の被処理物をいったん貯めておくためのバッファ槽、24は前記貯留槽22と前記バッファ槽23とを接続する配管、24aは前記配管24の途中部分に設置された開閉弁、25は前記バッファ槽23内に設置された水中ポンプ、26は前記バッファ槽23と後記の反応槽側とを接続する配管、26aは前記配管26の途中部分に設置され前記配管26内の被処理物の移動量を計測するための流量計、である。
【0025】
また、図2において、27は前記バッファ槽23からの被処理物が前記ポンプ25及び配管26により流入される第1反応槽、28は前記第1反応槽27と直列接続された第2反応槽、29は前記第2反応槽28と直列接続された第3反応槽、30は前記第3反応槽28と直列接続されており前記第3反応槽28からの被処理物を第1曝気槽32に送出する前の流量調整などのために使用されるバッファ槽、である。本実施例1では、被処理物の微生物処理を行うために、前述のように3つの反応槽27,28,29が直列に接続されている。また、本実施例1では、前記各反応槽27,28,29の底部には、それぞれ、エアレーション(図示せず)が備えられており、このエアレーションからの空気(図2の符号A参照)が前記各反応槽27,28,29内に供給されることにより、前記腐植物質層中の微生物の活動を活発化させると共に泡の上昇効果により被処理物の上昇を助長する。
【0026】
次に、前記第1反応槽27の内部構成を図2を参照して説明する。図2において、27aは前記バッファ槽23からの被処理物が前記ポンプ25の吐出圧により前記配管26を介して流入する流入部、27bは前記流入部27aの上方に配置された例えば約1−1.2mm程度の微小な穴を多数個有する金網製の支持板(被処理物中の固形物を細分化して微生物分解を容易にすると共に、後述の牡蠣殻層及び腐植物質層を下方から支持するためのもの)、27cは前記支持板27bの上側に配置されその中を通過する被処理物から鉄分(微生物分解を阻害する鉄分)を除去するための牡蠣殻層、27dは前記牡蠣殻層27cの上側に配置された腐植物質層であって動植物遺体が分解・再合成されてできる腐植物質とその中で繁殖可能な好気性微生物(所定の担体に担持されている微生物)とが例えば直径約50cm程度の樹脂製のネット状の袋の中に収容されているものが、複数個、配置されて成る腐植物質層、27eは前記腐植物質層27dの上側に配置された例えば約1−1.2mm程度の微小な穴を多数個有する金網(腐植物質層27dからの粉体が舞い上がることを抑えるためのもの)、27fは前記金網27eの上方に配置された流出部、27gは前記流出部27f内の被処理物をオーバーフローにより配管27hを介して隣接する第2反応槽28の底部へ送出するためのフィルター機能を有するスクリーン、である。
【0027】
次に、前記第2反応槽28の構成を図2を参照して説明する。図2において、28aは第2反応槽28の底部に配置され前記第1反応槽27からの被処理物が前記配管27hを介して流入する流入部、28bは前記流入部28aの上方に配置された金網製の支持板(後述の牡蠣殻層及び腐植物質層を支持すると共に、被処理物中の固形分を細分化するためのもの)、28cは前記支持板28bの上側に配置されその中を通過する被処理物から鉄分を除去するための牡蠣殻層、28dは前記牡蠣殻層28cの上側に配置された腐植物質層、28eは前記腐植物質層28dの上側に配置された金網(腐植物質層28dからの粉体が舞い上がることを抑えるためのもの)、28fは前記金網28eの上方に配置された流出部、28gは前記流出部28f内の被処理物をオーバーフローにより配管28hを介して隣接する第3反応槽29の底部へ送出するためのフィルター機能を有するスクリーン、である。
【0028】
次に、前記第3反応槽29の構成を図2を参照して説明する。図2において、29aは第3反応槽29の底部に配置され前記第2反応槽28からの被処理物が前記配管28hを介して流入する流入部、29bは前記流入部29aの上方に配置された金網製の支持板(後述の牡蠣殻層及び腐植物質層を支持すると共に、被処理物中の固形分を細分化するためのもの)、29cは前記支持板29bの上側に配置されその中を通過する被処理物から鉄分を除去するための牡蠣殻層、29dは前記牡蠣殻層29cの上側に配置された腐植物質層、29eは前記腐植物質層29dの上側に配置された金網(腐植物質層29dからの粉体が舞い上がることを抑えるためのもの)、29fは前記金網29eの上方に配置された流出部、29gは前記流出部29f内の被処理物(前記反応槽27,28,29中の微生物を含んでいる)をオーバーフローにより配管29hを介して隣接するバッファ槽30の底部へ送出するためのフィルター機能を有するスクリーン、である。
【0029】
次に、図2において、32は前記バッファ槽30からの被処理物(前記反応槽27,28,29中の微生物を含んでいる)がスクリーン30a及び配管31を介して流入される第1曝気槽、33はこの第1曝気槽内の被処理物がオーバーフローにより移動可能に直列接続された第2曝気槽である。前記各曝気槽32,33には、それぞれ各槽の内部を図示のように左右に仕切る仕切板32a,33aが配置されている。また、前記各曝気槽32,33の底部にはブロア(図示せず)からの空気を微小なマイクロナノバブルBに変換して各曝気槽32,33内に供給するナノバブル発生部(図示せず)が備えられている。前記マイクロナノバブルBは、前記被処理物中をゆっくりと上昇する微細な泡で、微生物を含んだ被処理物に十分な酸素を与え曝気を促進するためのものである。また前記各曝気槽32,33には、それらの中の被処理物を撹拌するための撹拌機32b,33bが配置されている。
【0030】
次に、図2において、34は前記第2曝気槽33からの被処理物(前記微生物を含んでいる)がオーバーフローにより流入される沈殿槽、34aは前記沈殿槽34を図示のように左右に仕切る仕切板、35は前記沈殿槽34内の被処理物(前記微生物を含んでいる)がオーバーフローにより移動可能に接続されたバッファ槽、36は前記バッファ槽35内の液体(前記沈殿槽34で固液分離された後の液状部分)を外部の河川などに放流するための放流管、37は前記第1曝気槽32、第2曝気槽33、沈殿槽34、及びバッファ槽35の各底部とそれぞれ各開閉弁38a,38b,38c,38dを介して接続された配管であって、各槽の底部に沈殿した固形物の除去などのメンテナンスなどの用途に使用される配管である。
【0031】
次に、本実施例1の動作を作業工程順に説明する。まず作業工程1では、プレス機(粉砕機)21により缶や金属箔製袋などの容器をプレスしながら内容物である液体やペースト状物質やゼリー状固形物などを取り出し粉砕する。この場合のプレスによる破砕は他の破砕による場合より容器を飛び出す圧力により内容物がより細かく粉砕されるというメリットがある。
【0032】
作業工程2では、前記プレス機(粉砕機)21により粉砕された有機性液状廃棄物(液体、ペースト状物質、固形物などを含む)を貯留槽22に入れ、水道水(望ましくは前記各反応槽の中で使用される微生物を含んだ水)などで希釈し撹拌機22aで撹拌して酸素を供給し、前処理を実施する。なお、前記貯留槽22には、作業工程1で処理された廃棄物とは別に、他の有機性液状廃棄物も投入可能である。
【0033】
作業工程3では、作業工程2の前処理の終了した被処理物を水中ポンプ25で圧力を加えながら第1反応槽27の底部の流入部27aに流入させる。前記流入部27aに流入した被処理物は、前記ポンプ25からの圧力により、前記金網製の支持板27bを上昇・通過し、この過程で前記被処理物中の固形物は後工程の微生物分解が促進されるように細かく分割・分断される。前記金網製の支持板27bを通過した被処理物は、前記ポンプ25の圧力により、さらに、その上の牡蠣殻層27cの中を上昇・通過し、この過程で被処理物中の鉄分(微生物の活動を阻害する要因となる鉄分)が除去される。前記牡蠣殻層27cを通過した被処理物は、前記ポンプ25の圧力により、さらに、その上の腐植物質層27dの中を上昇・通過し、この過程で、被処理物が微生物分解され、被処理物中の固形部分は流動化され液状部分はより流動性を増加させられる。前記腐植物質層27dを通過した被処理物は、前記金網27eを介して流出部27fに上昇する。前記流出部27fに上昇した被処理物は、オーバーフローにより前記スクリーン27gと配管27hを介して隣接する第2反応槽28の底部へ送出される。
【0034】
ここで、前記貯留槽22からの被処理物(ゼリー状固形物などを含む)が前記ポンプ25の圧力により前記の金網製の支持板27b、牡蠣殻層27c、及び腐植物質層27dの下方から、それらの中を上昇・通過する動作の詳細について説明しておく。もし、従来のように、前記貯留槽22からの被処理物(ゼリー状固形物などを含む)を、牡蠣殻層や腐植物質層の上方から、被処理物の自重だけで、牡蠣殻層や腐植物質層の中を下降・通過させようとするときは、被処理物中のゼリー状の固形物などが牡蠣殻層や腐植物質層の上側表面にへばり付いて目詰まりしてしまうため、固形物はもちろん液状部分さえも牡蠣殻層や腐植物質層の中に入り込むことができなくなってしまう。また、仮に、被処理物(ゼリー状固形物などを含むもの)の一部が、その自重だけで、牡蠣殻層や腐植物質層の上方からその中に下降することができるとしても、その下降のためには極めて多くの時間が掛かるので、効率的な微生物処理はできない。そこで、本実施例1では、前述のように、被処理物(ゼリー状固形物などを含む)を、前記ポンプ25の圧力により、前記の金網製の支持板27b、牡蠣殻層27c、及び腐植物質層27dの下方から、それらの中を上昇・通過させるようにした。これにより、本実施例1では、前記被処理物(ゼリー状固形物などを含む)は、まず前記支持板27bを上昇・通過する過程で後工程の微生物分解が促進されるように細かく分割され、前記牡蠣殻層27cを上昇・通過する過程で後工程の微生物分解を阻害する鉄分が除去され、さらに前記腐植物質層27dを上昇・通過する過程で微生物分解されるので、前記ゼリー状固形分なども分解されて被処理物全体が流動化されるようになる。なお、もし本実施例1のように前記ポンプ25からの圧力により被処理物を前記の支持板27b、牡蠣殻層27c、及び腐植物質層27dの「下方から」上昇・通過させるのではなく、前記の支持板27b、牡蠣殻層27c、及び腐植物質層27dの「上方から」ポンプ圧力により下降・通過させるようにしたときは、前記第1反応槽27の上方を(ポンプ圧力が逃げないように)密閉構造とする必要があり装置が高コスト化してしまうという問題が生じてしまう。これに対して、本実施例1では、前記ポンプ25の圧力により、被処理物(ゼリー状固形物などを含む)を、前記の金網製の支持板27b、牡蠣殻層27c、及び腐植物質層27dの下方から、それらの中を上昇・通過させるようにしたので、前記第1反応槽27の上方を密閉構造とする必要はない。
【0035】
また、ここで、本実施例1において、前記ポンプ25からの圧力により被処理物を前記の支持板27b、牡蠣殻層27c、及び腐植物質層27dの下方から上昇・通過させるためのポンプ25の吐出圧について説明しておく。本実施例1では、被処理物(ゼリー状固形物などを含む)が微生物と接触して十分に分解されるだけの時間、前記被処理物を前記腐植物質層27dの中で滞留・流動させる必要がある。したがって、前記ポンプ25の吐出圧は、被処理物(ゼリー状固形物などを含む)が微生物と接触して十分に分解される時間だけ前記腐植物質層27dの中で滞留・流動し、その後に通過するような速度となるように、調整される必要がある。そして、このような前記ポンプ25の吐出圧の調整は、例えば前記配管26の途中部分に設けられた流量計26aの値から得られる単位時間当たりの流量などに基づいて、マイクロコンピュータなどで自動制御することもできるし、作業員が手作業で制御することもできる。なお、前記の「被処理物(ゼリー状固形物などを含む)が微生物と接触して十分に分解されるために被処理物が前記腐植物質層27dの中で滞留・流動すべき時間」は、前記腐植物質層27dの容量や生分解能力により個々的に定まるものである。例えば、前記「滞留・流動すべき時間」は、前記腐植物質層27dの容量が大きくなれば(前記腐植物質層27dの生分解能力が同じままでも)少なくて済むようになるし、前記腐植物質層27dの生分解能力が高くなれば(前記腐植物質層27dの容量が同じままでも)少なくて済むようになる。なお、本発明者が実験に使用した生分解装置においては、前記第1反応槽27の全体の容量は約1m、その中の腐植物質層27dの容量は約30cmであったが、本発明者の実験によると、前記配管26中の被処理物の単位時間当たり流量(前記貯留槽22から前記第1反応槽27への被処理物の送出速度)は1分間当たり約15〜20リットル程度(この場合の前記腐植物質層27d内での被処理物の上昇速度は、1分間当たり約1.5〜2cm程度)が適当であり、この場合は約1トン/時の生分解処理が可能であった。
【0036】
次に、前記第1反応槽27から送出された被処理物は、前記第2反応槽28の流入部28aに流入した後、前記第1反応槽27からのオーバーフローにより順次新たに流入される被処理物との水圧差などにより(前記ポンプ25からの圧力によるものではない)、前記の支持板28b、牡蠣殻層28c、腐植物質層28d、金網28eの中を上昇・通過し、流出部28fに移動する。すなわち、前記第2反応槽28に送られた被処理物は、前記第1反応槽27で微生物分解され流動化され若しくは流動性が増加されているので、前記ポンプ25からの圧力によることなく、前記第1反応槽27からのオーバーフローにより順次新たに流入される被処理物との水圧差などだけにより、前記の支持板28b、牡蠣殻層28c、腐植物質層28dの中を上昇・通過することができる。
【0037】
次に、前記第2反応槽28から前記スクリーン28g及び配管28hを介して送出された被処理物は、前記第3反応槽29の流入部29aに流入した後、前記第2反応槽28からのオーバーフローにより順次新たに流入される被処理物との水圧差などにより(前記ポンプ25からの圧力によるものではない)、前記の支持板29b、牡蠣殻層29c、腐植物質層29d、金網29eの中を上昇・通過し、流出部29fに移動する。この第3反応槽29の流出部29fから前記スクリーン29g及び配管29hを介して送出された被処理物は、いったんバッファ槽30に貯められた後、オーバーフローにより前記第1曝気槽32に送られる。
【0038】
次に、作業工程5においては、前記第3反応槽29からの被処理物が前記バッファ槽30に送出される。このバッファ槽30は、前記第1曝気槽32に送出する前の調整に使用されるものである。前記バッファ槽30内の被処理物は、オーバーフローにより前記スクリーン30a及び配管31を介して、第1曝気槽32の上部に送られる。
【0039】
次に、作業工程6では、前記第1曝気槽32の上部に送られた被処理物は、仕切板32aの図示右側を仕切板32aに沿って下降し前記第1曝気槽32の底部に達した後、仕切板32aの図示左側に移動してその中を浮遊する。その後、前記被処理物は、前記仕切板32aの図示左側で、前記マイクロナノバブルBと撹拌機32bにより曝気処理される。前記第1曝気槽32で曝気処理された被処理物は、前記第1曝気槽32の図示左上端部から、オーバーフローにより隣接する第2曝気槽33の上部に移動する。前記第2曝気槽33の上部に送られた被処理物は、仕切板33aの図示右側を仕切板33aに沿って下降し前記第2曝気槽33の底部に達した後、仕切板33aの図示左側に移動してその中を浮遊する。その後、前記被処理物は、前記仕切板33aの図示左側で、前記マイクロナノバブルBと撹拌機33bにより曝気処理される。前記各曝気槽32,33内においては、前述のようにマイクロナノバブルが供給されているので、前記曝気槽32,33内の微生物を含んだ被処理物に十分な酸素が供給され曝気が促進される。この曝気時に発生し浮遊・上昇する泡は、微生物を含んでおり形が崩れにくいものなので、前記各曝気槽32,33内の被処理物の上面で掬い取って処理層(前記貯留槽22など)に戻すこともできる。
【0040】
次に、作業工程7では、前記沈殿槽34内に凝集材を投入し、被処理物中の固形物を沈殿分離する。沈殿した固形物は、排水口(開閉バルブ38c参照)から廃棄する(又は、沈殿した固形物は、廃棄する代わりに、回収して腐植物質と混ぜて微生物の育成のために使用するようにしてもよい)。また、前記沈殿槽34内の上澄み液は、次段のバッファ槽35にオーバーフローにより移動させて溜めた後、河川などに放流する(又は、前記上澄み液は、特にそれが河川などへの放水が可能な基準値に達していない場合、放流する代わりに、前記貯留槽22の中に、被処理物を希釈するための希釈水として投入するようにしてもよい)。
【0041】
以上のように、本実施例1においては、前記貯留槽22からの被処理物は、前記第1反応槽27の底部の流入部27aに送出される。このとき、被処理物は、前記ポンプ25により所定の圧力が加えられながら送出されるので、前記流入部27c内に留まることなく、その中の固形物も含めて、上方の支持板27bを上昇・通過する(このとき、前記被処理物中の固形物は、前記支持板27bにより、微生物分解が促進されるように細かく分割される)。このように細かく分割されながら前記支持板27bを通過した固形物を含む被処理物は、前記牡蠣殻層27cの中を上昇・通過しながら鉄分(微生物分解を阻害する要素)を除去された後、前記腐植物質層27dの中を上昇・通過しながら微生物分解され、その結果、前記被処理物は全体として流動化し又は流動性を増加される。
【0042】
もし、前記被処理物がコーヒーやジュースなどの通常の液体飲料だけならば、前記貯留槽22からの被処理物は前記第1反応槽27の上方から投入するだけでよいし、ましてや、前記貯留槽22からの被処理物に前記ポンプ25により所定の圧力を加えながら前記第1反応槽27の下方の流入部27aに送出する必要はない(被処理物が通常の液体飲料だけならば、前記第1反応槽27の「上方から」投入すれば、それだけで、前記被処理物は、その自重により(ポンプからの圧力は不要)、前記腐植物質層の中を所定速度で下降・通過し、その過程で微生物分解される)。
【0043】
しかし、コーヒーやジュースなどの通常の液体飲料だけでなく、これと一緒に、生クリームやカスタードクリームなどのようなペースト状の粘性が高く流動性の低い食品、又はゼリー状の固形物から成るゼリー状飲料をも、前記第1反応槽27の上方から投入するようにした場合は、本発明者の実験によると、これらの被処理物(液体飲料、ペースト状食品、ゼリー状飲料など)の自重だけでは、前記被処理物中のゼリー状飲料の固形物やペースト状物質などが、前記腐植物質層27dの内部に入り込むことができず前記腐植物質層27dの上表面にへばり付いて前記腐植物質層27dの目詰まりを起こしてしまい、ひいては、通常の液体飲料さえも前記目詰まりにより前記腐植物質層27dの中に入り込むことができなくなってしまう。
【0044】
そこで、本実施例1では、前述のように、前記貯留槽22からの被処理物を、前記第1反応槽27の下方に配置された流入部27a内に、前記ポンプ25により所定の圧力を加えながら送出し、この所定の圧力を加えながら送出した被処理物を、前記圧力で下方から上昇させて、前記支持板27b(例えば網状もしくは格子状の板)を介して細かく分割した上で前記牡蠣殻層27c及び腐植物質層27dの中を所定速度で上昇・通過させるようにした。これにより、本実施例1では、前記被処理物に含まれる生クリームやカスタードクリームなどのようなペースト状の粘性が高く流動性の低い食品又はゼリー状の固形物から成るゼリー状飲料を、通常の液体飲料と一緒に、前記腐植物質層27dの中で所定時間、微生物と接触させて生分解処理させて流動化させることができるようになった。よって、本実施例1によれば、粘性が強く流動性の低い食品やゼリー状の固形物から成るゼリー状飲料とコーヒーやコーラなどの通常の液体の飲料とを別々に生分解処理することなく、両者を一緒に低コストで効率的に生分解処理することができるようになった。
【0045】
また、本実施例1では、前記の網状もしくは格子状の支持板27bに、前記腐植物質層27d及び牡蠣殻層27cをその下方から支持する機能と、前記被処理物中の固形物が自らを通過するときに前記固形物を物理的に細かく分割して前記腐植物質層27d中での微生物分解を促進させる機能とを兼ねさせるようにしているので、飲料の生分解処理装置の部品点数を削減して装置の低コスト化を実現することができるようになる。
【0046】
以上のように、本実施例1によれば、前記支持板27bに腐植物質層27dの支持機能と固形物の細分化機能とを兼ねさせたことによって部品点数の削減による装置の低コスト化を実現すると共に、前述のように前記ポンプ25からの圧力を使用して被処理物を反応槽27の底部の「下方から」その上方の腐植物質層27d中を上昇・通過させることによって前記腐植物質層27dの目詰まり(固形物などを含む飲料を前記腐植物質層の「上方から」投下したときに腐植物質層の表面に固形物などがへばり付くことによって生じる目詰まり)の発生を防止して装置の連続運転を可能にする(前記目詰まりの発生による生分解処理作業の中断を防止する)ことによる装置のランニングコストの低減化と、固形物などを含む飲料の微生物分解の促進化とを、併せ実現することができる。
【0047】
なお、以上の実施例1では、主としてゼリー状固形物(ゼリー状飲料)又は生クリームやカスタードクリームなどのようなペースト状の粘性が高く流動性の低い食品と一般の液体飲料とを一緒に生分解処理するための装置として説明したが本発明はこれに限られることなくは、例えば、プリンや寒天などの固形化(半固形化を含む)食品、及び/又は、缶入りコーンスープや野菜ジュースや飲むヨーグルト(ヨーグルトを液状に加工した飲み物)などのようなコロイド溶液などの流動性が低い液状材料から成る飲料と、一般の液体飲料とを一緒に生分解処理するために使用することもできることは勿論である。
【符号の説明】
【0048】
1,22 貯留槽
2,27,28,29 反応槽
2a,27a,28a,29a 流入部
2b,27b,28b,29b 支持板
2c,27d,28d,29d 腐植物質層
2d,27f,28f,29f 流出部
7,10,12,27g,28g,29g,30a スクリーン
3,32,33 曝気槽
4,34 沈殿槽
5,25 ポンプ
6,8,11,24,26,27h,28h,29h,31,37 配管
13,36 放流管
14,16 散気口
15,17 ブロア
18,22a,32b,33b 撹拌機
23,30,35 バッファ槽
27c,28c,29c 牡蠣殻層
27e,28e,29e 金網
32a,33a,34a 仕切板
38a,38b,38c,38d 開閉弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生クリームやカスタードクリームなどのようなペースト状の粘性が高く流動性の低い食品又はゼリー状の固形物から成るゼリー状飲料、及びその他の飲料(以下「被処理物」という)を、廃棄物として貯留する貯留槽と、
前記貯留槽からの被処理物を受け入れて、前記被処理物を微生物分解することにより、前記被処理物の流動性を増加させるか若しくは前記被処理物中の固形物を流動化させる反応槽と、
前記貯留槽内の被処理物を前記反応槽の底部又はその上方へ所定圧力を加えて送出するポンプと、
前記反応槽からの被処理物を受けて入れて曝気処理する曝気槽と、
前記曝気槽からの被処理物を受け入れて前記被処理物から固形物を分離する固液分離槽と、を備えており、
前記反応槽は、
前記反応槽の底部又はその上方に配置され、前記貯留槽と配管を介して接続されており、前記貯留槽からの被処理物を受け入れる流入部と、
前記受入部の上方に配置されており、後記の腐植物質層をその下方から支持すると共に、前記被処理物中の固形物が自らを通過するときに、腐植物質層での微生物分解が効率的に行なわれるように前記固形物を物理的に細かく分割するための、網状もしくは格子状に形成された支持板と、
前記支持板の上方に配置されており、微生物が増殖可能に構成されており、前記被処理物が通過可能な多数の微小な隙間を内部に有しており、前記被処理物が自らの内部を上昇する過程で前記被処理物を微生物分解して前記被処理物の流動性を増加させるか若しくは前記被処理物中の固形物を流動化させる腐植物質層と、
前記腐植物質層の上方に配置されており、前記腐植物質層の中を上昇・通過した被処理物が流入する流出部と、を含むように構成されており、
前記ポンプは、前記貯留槽から前記流入部に流入した被処理物が前記支持板及び前記腐植物質層中を上昇・通過できるように、且つ、前記被処理物が前記腐植物質層内に一定時間だけ滞留・流動した後に通過するように前記被処理物が前記腐植物質層の中を所定の速度で上昇・移動するように、前記貯留槽から前記流入部に流入する被処理物に対して所定の圧力を加えるように構成されている、
ことを特徴とする、生クリームやカスタードクリームなどのようなペースト状の粘性が高く流動性の低い食品又はゼリー状の固形物から成るゼリー状飲料を他の飲料と一緒に微生物分解するのに適した、飲料の生分解処理装置。
【請求項2】
生クリームやカスタードクリームなどのようなペースト状の粘性が高く流動性の低い食品又はゼリー状の固形物から成るゼリー状飲料、及びその他の飲料(以下「被処理物」という)を、廃棄物として貯留する貯留槽と、
前記貯留槽からの被処理物を受け入れて、前記被処理物を微生物分解することにより、前記被処理物の流動性を増加させるか若しくは前記被処理物中の固形物を流動化させる第1反応槽と、
前記貯留槽内の被処理物を前記第1反応槽の底部又はその上方へ所定圧力を加えて送出するポンプと、
前記第1反応槽と直列に接続され、前記第1反応槽からの被処理物を受け入れて、前記被処理物をさらに微生物分解する第2反応槽と、
前記第2反応槽又はこの後段の反応槽からの被処理物を受けて入れて曝気処理する曝気槽と、
前記曝気槽からの被処理物を受け入れて前記被処理物から固形物を分離する固液分離槽と、を備えており、
前記第1反応槽は、
前記第1反応槽の底部又はその上方に配置され、前記貯留槽と配管を介して接続されており、前記貯留槽からの被処理物を受け入れる流入部と、
前記流入部の上方に配置されており、後記の牡蠣殻層と腐植物質層をその下方から支持すると共に、前記被処理物中の固形物が自らを通過するときに、腐植物質層での微生物分解が効率的に行なわれるように前記固形物を物理的に細かく分割するための、網状もしくは格子状に形成された支持板と、
前記支持板の上方に配置されており、前記被処理物中の鉄分(腐植物質層での微生物分解を阻害する鉄分)を除去するための多数の牡蠣殻が配置されている牡蠣殻層と、
前記牡蠣殻層の上方に配置されており、微生物が増殖可能に構成されており、前記被処理物が通過可能な多数の微小な隙間を内部に有しており、前記被処理物が自らの内部を上昇する過程で前記被処理物を微生物分解して前記被処理物の流動性を増加させるか若しくは前記被処理物中の固形物を流動化させる腐植物質層と、
前記腐植物質層の上方に配置され、前記腐植物質層中を上昇・通過する過程で流動性化し又は流動性が増した被処理物を前記第1反応槽の上方からのオーバーフローにより前記第2反応槽に流出させるスクリーンと、を含むように構成されており、
前記ポンプは、前記貯留槽から前記流入部に流入した被処理物が前記支持板及び前記腐植物質層中を上昇・通過できるように、且つ、前記被処理物が前記腐植物質層内に一定時間だけ滞留・流動した後に通過するように前記被処理物が前記腐植物質層の中を所定の速度で上昇・移動するように、前記貯留槽から前記流入部に流入する被処理物に対して所定の圧力を加えるように構成されている、
ことを特徴とする、生クリームやカスタードクリームなどのようなペースト状の粘性が高く流動性の低い食品又はゼリー状の固形物から成るゼリー状飲料を他の飲料と一緒に微生物分解するのに適した、飲料の生分解処理装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−91142(P2012−91142A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−242332(P2010−242332)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(510287429)株式会社大畠産業 (1)
【Fターム(参考)】