説明

圧力検知用光ファイバケーブル

【課題】本発明は、市販されている通常の光ファイバを使用してその柔軟性を損なうことなく表面に安定した凹凸形状を設定することができる圧力検知用光ファイバケーブルを提供することを目的とするものである。
【解決手段】圧力検知用光ファイバケーブルは、光ファイバを有する芯部1と、複数の糸により編成されて芯部の表面に密着する組紐組織を有する被覆部2とを備え、被覆部2は、少なくとも糸径の最も大きい糸20が芯部1に巻き付くように螺旋状に配設されて外表面で突出している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部から加えられる圧力や振動等により光ファイバが変形することで生じる光伝送特性の変化を検知してその変形圧力を検知するために用いられる圧力検知用ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバが変形することで光伝送特性が変化する性質を利用して、外部からの圧力や振動により光ファイバを変形させてその変形圧力を検知する、もしくは測定対象物に生じる歪みや変形に伴って光ファイバも変形するように設置してその変形圧力を検知する圧力検知装置が提案されている。
【0003】
こうした光ファイバを使用した圧力検知装置の検知感度を増幅させる方法としては、例えば、特許文献1及び2のように光ファイバケーブルを被覆する樹脂に凹凸を形成する方法があるが、樹脂に凹凸を形成する場合には光ファイバケーブルの製造設備が大がかりになりコストが高くなる、製造可能な光ファイバの外径の大きさが制限される、光ファイバの表面に樹脂層が追加されるため柔軟性が損なわれ使用用途が制限されるという問題がある。
【0004】
また、特許文献3では、凹凸の代わりに被覆する樹脂層に凹部のみを形成することで検知感度を増幅させているが、こうした構造の光ファイバを製造するためには特殊な設備が必要となるためにコストが高くなり実用性に欠ける、製造可能な光ファイバの外径の大きさが制限される、光ファイバの表面に樹脂層が追加されるため柔軟性が損なわれ使用用途が制限されるといった同様の問題がある。
【0005】
また、特許文献4及び5では、光ファイバに線状体を螺旋状に巻き付け表面に凹凸を形成するようにしているが、接着剤等を使用して光ファイバに線状体を固定しない場合は取り扱い中に巻き付けた線状体がずれるために螺旋の間隔を一定にすることが困難となり検知精度が著しく低下し、また螺旋間隔がずれないように光ファイバに線状体を堅く巻いた場合は巻き付け時の締め付け力により光ファイバが変形して光の伝送損失が大きくなりセンサーとしての機能を失い本来の用途として使用できなくなる、さらに凹凸形状を安定させるために樹脂で固定する場合は前述の特許文献1から3と同様の問題が生じる。
【特許文献1】特開2000−227368号公報
【特許文献2】特開2002−23030号公報
【特許文献3】特開2005−337845号公報
【特許文献4】特開平7−190872号公報
【特許文献5】特開2006−208021号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、従来の検知感度を増幅させる方法としては、光ファイバの被覆層に凹凸形状を形成する場合には光ファイバ自体の柔軟性が損なわれて製造コストも大きくなるといった課題があり、光ファイバに線条体を螺旋状に巻き付ける場合には凹凸形状が不安定になるため検知精度が下がる課題がある。
【0007】
そこで、本発明は、市販されている通常の光ファイバを使用してその柔軟性を損なうことなく表面に安定した凹凸形状を設定することができる圧力検知用光ファイバケーブルを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る圧力検知用光ファイバケーブルは、光ファイバを有する芯部と、複数の糸により編成されて芯部の表面に密着する組紐組織を有する被覆部とを備え、前記被覆部は、少なくとも糸径の最も大きい糸が前記芯部に巻き付くように螺旋状に配設されて外表面で突出していることを特徴とする。さらに、前記被覆部は、少なくとも2種類以上の糸径の異なる糸により構成され、糸径の最も大きい糸とその他の糸の糸径の比率は2以上であり、糸径の最も大きい糸の硬さは、加重による直径の変化比が0.5以上であることを特徴とする。さらに、前記被覆部は、外表面全体に樹脂材料が付与されていることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る圧力検知装置は、上記の圧力検知用光ファイバケーブルを用いる。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、上記のような構成を有することで、複数の糸で編成された組紐組織を芯部の表面に密着させ、糸径の最も大きい糸を芯部に巻き付けるように螺旋状に配設して外表面に突出させているので、光ファイバに作用する糸径の最も大きい糸を安定した状態で芯部の周囲に保持することができる。
【0011】
すなわち、糸径の最も大きい糸は組紐組織内に編み込まれているので、他の糸と絡み合うことで螺旋状の状態が保持されてずれることがない。また、ケーブルが湾曲した場合には、湾曲状態に合せて組紐組織全体が柔軟に変形することができるため、ケーブル全体の柔軟性を損なうことがない。したがって、糸径の最も大きい糸を所定の間隔を空けながら螺旋状に組紐組織に編み込んでおけば、その間隔が変化することがほとんどなく長期間にわたって検知精度を維持することができる。
【0012】
そして、光ファイバ自体は市販されている通常のものを使用することができるため、従来のように表面に凹凸を形成する必要がなくなり、ケーブル自体の強度が従来より低下することもない。
【0013】
以上のように、本発明に係る圧力検知用光ファイバケーブルは従来の通常の光ファイバと同様の柔軟性及び強度を備えており、幅広い用途に使用することができる。また、光ファイバの周囲に複数の糸を用いて組紐組織を編成することは従来の組紐技術に基づいて連続して編成することができるので、低コストで短時間に製造することが可能となる。
【0014】
また、被覆部が少なくとも2種類以上の糸径の異なる糸により構成され、糸径の最も大きい糸とその他の糸の糸径の比率を2以上に設定し、糸径の最も大きい糸の硬さは、加重による直径の変化比が0.5以上に設定すれば、圧力検知精度をより高めることができる。なお、糸径の比率は、(最も糸径の大きい糸の直径)/(その他の糸の直径)により求める値である。また、加重による直径の変化比は、無荷重での見かけの直径と厚み計(Type G)での測定直径の比(厚み計測定直径/無荷重時の測定直径)で求める値である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る実施形態について詳しく説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するにあたって好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に本発明を限定する旨明記されていない限り、これらの形態に限定されるものではない。
【0016】
図1は、本発明に係る実施形態に関する外観図であり、図2は、そのX−X断面図である。なお、図1では、内部構造を説明するため被覆部の一部を除去して描画している。
【0017】
圧力検知用光ファイバケーブルは、光ファイバからなる芯部1と、複数の糸により編成されて芯部1の表面に密着する組紐組織からなる被覆部2とを備えている。
【0018】
芯部1は、公知の光ファイバを備えており、使用される光ファイバとしては、シングルモード光ファイバが好ましい。例えば、石英系のガラス光ファイバを使用するとよい。また、プラスチック光ファイバを使用することもできる。光ファイバは、光を伝送するコア層及びコア層の周囲を被覆するクラッド層を備えており、2つの層の屈折率の違いによりコア層内に入射した光は外部に漏れることなく伝送されるようになっている。
【0019】
被覆部2は、複数の糸が芯部1の周囲に螺旋状に巻き付くように芯部1の長手方向に延設され、各糸が互いに交差するように組まれて筒状の組紐組織に編成されている。被覆部2を構成する糸のうち最も糸径の大きい糸20がそれ以外の糸21よりも外表面に突出するように設定されている。そのため、被覆部2の表面には、糸20が所定間隔で螺旋状に突出した凸部が形成されている。凸部のケーブルの長手方向の間隔は、一定(誤差5mm以下)であることが望ましく、間隔の長さは用途に応じて適宜設定すればよい。例えば、人間の動作(足で踏む、手で掴む等)による圧力を検知する場合には50mm以下に設定するとよい。また、圧力検知の感度を向上させるために、最も糸径の大きい糸20及びその他の糸21の糸径の比率(=(最も糸径の大きい糸20の直径)/(その他の糸21の直径))は2以上とするのが好ましい。
【0020】
図1及び図2で記載されている被覆部2を構成する糸のうち最も糸径の大きい糸20は1本であるが、ケーブルの長手方向に一定間隔で凸部を構成できるのであれば被覆部2を構成する糸のうち最も糸径の大きい糸20を複数本用いて凸部を構成してもよい。
【0021】
被覆部2に用いられる糸としては、ポリエチレンテレフタレート、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PTT(ポリトリメチレンテレフタレート)等のポリエステル系繊維、ナイロン(ポリアミド繊維)、アラミド(芳香族ポリアミド繊維)、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフイン系繊維、フッ素繊維、ポリ乳酸繊維、アクリル等の合成繊維、レーヨン、アセテート等の化学繊維、綿、麻、ウール、絹等の天然繊維、セラミックス繊維、ガラス繊維、シリカ繊維等の無機繊維、銅、ステンレス等の金属繊維、炭素繊維等の繊維素材が挙げられ、これらの繊維素材を、撚糸、紡績、混繊、カバーリング、組紐等の方法により2種類以上複合して構成してもよい。
【0022】
被覆部2の凸部を形成する糸径の最も大きい糸20は、糸長方向の太さにムラが少なく、加重により芯部1を構成する光ファイバのクラッド層を屈曲することができる硬さを有する繊維素材を用いるとよい。糸の硬さの指標としては、無荷重での見かけの直径と厚み計(Type G)での測定直径の比(厚み計測定直径/無荷重時の測定直径)が0.5以上であることが好ましい。0.5以上の糸を用いることで、効率的に芯部1を構成する光ファイバを圧迫し、圧力の検知精度が良好となる。
【0023】
また、凸部を形成する糸の糸径のバラツキは、厚み計(Type G)で測定直径のCV値(測定直径の標準偏差/測定直径の平均値)が0.1以下であることが好ましい。0.1を超えると、圧力検知の際の検知結果のバラツキが大きくなり、検知精度が低下する。
【0024】
圧力検知用光ファイバケーブルCは、芯部1の周囲に密着して被覆部2を備えることで、外表面に圧力が加わると、被覆部の凸部に圧力が集中して加わるようになる。そして、圧力が集中した凸部が局所的に芯部1の光ファイバを圧迫し、光ファイバの圧迫された部分が変形して光の伝送特性を低下させるように作用するようになる。
【0025】
圧力検知用光ファイバケーブルは、公知の組紐装置を用いて製造することができる。例えば、連続して給送される光ファイバの周囲に組紐装置により複数の糸を交互に交差しながら組紐組織を連続して編成していくようにすればよい。
【0026】
圧力検知用光ファイバケーブルCには、外部圧力により圧縮されて変形する場合や曲げられて湾曲変形する場合など様々な変形圧力が加えられるが、被覆部2の凸部を形成する糸径の最も大きい糸20は組紐組織内に編み込まれているので、他の糸21と絡み合うことで螺旋状の状態が保持されてずれることがなく、一定の間隔が維持される。そして、ケーブルが湾曲変形した場合等には、変形状態に合せて組紐組織全体が柔軟に変形するようになり、ケーブル全体の柔軟性を損なうことがない。したがって、糸径の最も大きい糸を所定の間隔を空けながら螺旋状に組紐組織に編み込んでおけば、その間隔が変化することがほとんどなく長期間にわたって検知精度を維持することができる。
【0027】
こうした変形に伴う光ファイバの光伝送特性の低下を公知の方法により検知することで、ケーブルに加えられた圧力の位置や大きさを検知することができる。図3は、圧力検知装置の一例を示す模式図である。圧力検知用光ファイバケーブルCの一方の端部にレーザーダイオード等の発光素子からなる光源30を接続し、他方の端部にフォトダイオード等の受光素子31を接続して光源から光ファイバ内を伝送された光を受光し、受光した光を電気信号に変換して計測部32で計測する。計測部32では、光ファイバ内を伝送した光の減衰量を計測したり、もしくは光の反射量や光の振動数変化を光の減衰量と組み合わせて検知して光ファイバに加えられた圧力検知を行うようにすることができる。
【0028】
圧力が加わっていない状態において、圧力検知用光ファイバケーブルの光の伝送損失は、圧力検知用として使用するためには光の伝送損失が1dB/km以下であることが好ましく、本発明の圧力検知用光ファイバケーブルでは組紐組織を有する被覆部により芯部である光ファイバを被覆しているので、光ファイバの光伝送損失に与える影響はほとんどなく圧力検知用として好適である。
【0029】
圧力検知用光ファイバケーブルの耐久性や耐光性を向上させる方法としては、ケーブル表面にコーティングやラミネートを行う方法がある。コーティングする樹脂としては、ポリウレタン樹脂、フッ素系樹脂、塩化ビニール樹脂、ホットメルト樹脂、合成ゴム樹脂、熱可塑性樹脂等が、ラミネート材料としては熱可塑性フィルム、遮水性を有する織物や不織布、紙、人工皮革、フォーム等があるが、ケーブルの光伝送特性を低下させることなく耐久性や耐光性を向上できる材料および加工方法であればこれに限るものではない。
【0030】
また、圧力検知用光ファイバケーブルを構成する被覆部2の糸自体をコーティング、ラミネート等を行うことにより圧力検知用光ファイバケーブルの耐久性や耐光性を向上させる、または圧力検知用光ファイバケーブルを構成する被覆部2の糸に耐久性や耐光性に優れた糸を使用する方法もある。
【実施例】
【0031】
<実施例1>
被覆部2は、綿糸15本とタコ糸1本を用いて芯部1の光ファイバを覆うようにブレーディングマシン(国分鉄工製;101−L型)により2/2の丸打ち組紐加工を行い、タコ糸が約5mm間隔で凸部が形成する圧力検知用光ファイバケーブルAを試作した。
【0032】
芯部1の光ファイバとして、シングルモードガラス光ファイバ(住友電工株式会社製;λ=1310nm・0.324dB/km、λ=1550nm・0.192dB/km)を使用し、被覆部2に用いる糸としては、最も糸径の大きな糸にはタコ糸(株式会社ユタカメイク製;糸径1mm)、その他の糸には綿糸(日清紡製;100/2、s300t/m、平均糸径0.3mm)を使用した。
【0033】
使用したタコ糸の無荷重状態の直径をマイクロスコープ(ソニック株式会社製BS-D8000)で測定したところ平均1.03mmであり、厚み計(株式会社尾崎製作所製PEACOCK ダイヤルシックネスゲージType G)で測定した平均直径は0.85mm、標準偏差が0.05、バラツキの目安であるCV値は0.06であった。したがって、糸の硬さの目安である直径比は0.82、またタコ糸と綿糸の糸径の比率3.4であった。
【0034】
製造した圧力検知用光ファイバケーブルA(5m)の光伝送損失の評価試験を行った。光伝送損失を測定するために、ケーブルの一方の端部から光源(波長1550nm、レーザダイオード)の光を入射させ、他方の端部からケーブル内を伝送された光を計測装置(日置社製3661OPTICAL POWER METER)により計測し光伝送損失の測定を行った。比較のため、同じ長さで芯部と同一の光ファイバを用いて光伝送損失を測定した。
【0035】
圧力を加えていない状態で測定を行ったところ、測定された光伝送損失(dB/km)は、圧力検知用光ファイバケーブルでは0.94で、光ファイバでは0.97であった。両者の伝送損失は1dB/km以下でほぼ同じであり、ケーブルの被覆部による影響がなく圧力検知材料として使用可能であることがわかる。
【0036】
<実施例2>
実施例2として、被覆部2は、ポリエステル原着糸15本とポリエステル合撚糸A1本を用いて芯部1の光ファイバを覆うようにブレーディングマシン(国分鉄工製;101−L型)により2/2の丸打ち組紐加工を行い、黒原着組紐糸が約6mm間隔で凸部が形成する圧力検知用光ファイバケーブルBを試作した。
【0037】
芯部1の光ファイバとして、シングルモードガラス光ファイバ(住友電工株式会社製;λ=1310nm・0.324dB/km、λ=1550nm・0.192dB/km)を使用し、被覆部2に用いる最も糸径の大きな糸はポリエステル合撚糸Aを使用し、ポリエステル原着紡績糸(ユニチカファイバー株式会社製 E100 BK(ブラック))10/1を10本、s100t/mの撚数で合撚して構成しており、その他の糸はポリエステル原着紡績糸(ユニチカファイバー株式会社製 E100 BK(ブラック);30/2、s300t/m、糸径0.38mm)を使用した。
【0038】
ポリエステル合撚糸Aの無荷重状態の直径をマイクロスコープ(ソニック株式会社製BS-D8000)で測定したところ平均1.40mmであり、厚み計(株式会社尾崎製作所製PEACOCK ダイヤルシックネスゲージType G)で測定した平均直径0.73mm、標準偏差0.03、バラツキの目安であるCV値は0.038であった。したがって、糸の硬さの目安である直径比は0.52、またタコ糸と綿糸の糸径の比率3.7であった。
【0039】
圧力検知用光ファイバケーブルBの光伝送損失評価試験として、実施例1と同様に波長1550nmのレーザダイオードを光源に使用し、ケーブルの一方の端部から光を入射させ、他方の端部からケーブル内(5m)を伝送された光を計測装置(日置社製3661OPTICAL POWER METER)により計測した。その結果、圧力を加えていない状態で圧力検知用光ファイバケーブルBの光伝送損失は0.50(dB/km)で、1dB/km以下であることより、圧力検知材料として使用可能であることがわかる。
【0040】
<実施例3>
実施例3として、被覆部2は、ポリエステル原着糸15本とポリエステル合撚糸B1本を用いて芯部1の光ファイバを覆うようにブレーディングマシン(国分鉄工製;101−L型)により2/2の丸打ち組紐加工を行い、黒原着組紐糸が約6mm間隔で凸部が形成する圧力検知用光ファイバケーブルCを試作した。
【0041】
芯部1の光ファイバとして、シングルモードガラス光ファイバ(住友電工株式会社製;λ=1310nm・0.324dB/km、λ=1550nm・0.192dB/km)を使用し、被覆部2に用いる最も糸径の大きな糸であるポリエステル合撚糸Bは、ポリエステル原着紡績糸(ユニチカファイバー株式会社製 E100 BK(ブラック))10/1をz200t/mの撚数で撚糸加工した後に、それを16本、s100t/mの撚数で合撚して構成しており、その他の糸はポリエステル原着紡績糸(ユニチカファイバー株式会社製 E100 BK(ブラック);30/2、s300t/m、糸径0.38mm)を使用した。
【0042】
ポリエステル合撚糸Bの無荷重状態の直径をマイクロスコープ(ソニック株式会社製BS-D8000)で測定したところ平均1.24mmであり、厚み計(株式会社尾崎製作所製PEACOCK ダイヤルシックネスゲージType G)で測定した平均直径0.95mm、標準偏差0.027、バラツキの目安であるCV値は0.028であった。したがって、糸の硬さの目安である直径比は0.76、またタコ糸と綿糸の糸径の比率3.3であった。
【0043】
圧力検知用光ファイバケーブルCの光伝送損失評価試験として、実施例1と同様に波長1550nmのレーザダイオードを光源に使用し、ケーブルの一方の端部から光を入射させ、他方の端部からケーブル内(5m)を伝送された光を計測装置(日置社製3661OPTICAL POWER METER)により計測した。その結果、圧力を加えていない状態で圧力検知用光ファイバケーブルCの光伝送損失は0.85(dB/km)で、1dB/km以下であることより、圧力検知材料として使用可能であることがわかる。
【0044】
<実施例4>
実施例4として、被覆部2は、ポリエステル原着糸15本と黒原着組紐糸1本を用いて芯部1の光ファイバを覆うようにブレーディングマシン(国分鉄工製;101−L型)により2/2の丸打ち組紐加工を行い、黒原着組紐糸が約8.5mm間隔で凸部が形成する圧力検知用光ファイバケーブルDを試作した。
【0045】
芯部1の光ファイバとして、シングルモードガラス光ファイバ(住友電工株式会社製;λ=1310nm・0.324dB/km、λ=1550nm・0.192dB/km)を使用し、被覆部2に用いる最も糸径の大きな糸として黒原着組紐糸を使用し、これはポリエステル原着紡績糸(ユニチカファイバー株式会社製 E100 BK(ブラック))30/1をs300t/mで2本合撚した合撚糸をさらに16本丸打して構成しており、その他の糸にはポリエステル原着糸(ユニチカファイバー株式会社製 E100 BK(ブラック);30/2、s300t/m、糸径0.38mm)を使用した。
【0046】
使用した黒原着組紐糸の無荷重状態の直径をマイクロスコープ(ソニック株式会社製BS-D8000)で測定したところ平均1.29mmであり、厚み計(株式会社尾崎製作所製PEACOCK ダイヤルシックネスゲージType G)で測定した平均直径は1.15mm平均直径1.15mm、標準偏差0.071、バラツキの目安であるCV値は0.061であった。したがって、糸の硬さの目安である直径比は0.89、またタコ糸と綿糸の糸径の比率3.4であった。
【0047】
製造された圧力検知用光ファイバケーブルDを5m使用して光伝送損失の評価試験を行った。光伝送損失を測定するために、ケーブルの一方の端部から光源(波長1550nm、レーザダイオード)の光を入射させ、他方の端部からケーブル内を伝送された光を計測装置(日置社製3661OPTICAL POWER METER)により計測し光伝送損失の測定を行った。比較のため、同じ長さで芯部と同一の光ファイバを用いて光伝送損失を測定した。
【0048】
まず、圧力を加えていない状態で測定を行ったところ、測定された光伝送損失(dB/km)は、圧力検知用光ファイバケーブルDでは0.93で、光ファイバでは0.94であった。両者の伝送損失は1dB/km以下でほぼ同じであり、ケーブルの被覆部による影響がなく圧力検知材料として使用可能であることがわかる。
【0049】
<圧力検知機能評価>
製造した圧力検知用光ファイバケーブルA〜Dの圧力検知性能を評価した。厚さ2mm、一辺の長さ10cmの正方形のアクリル板の上に5cm間隔をおいて圧力検知用光ファイバケーブルを平行に載せ、その上に厚さ2mm、一辺の長さ10cmの正方形のアクリル板を載せ、その上に2kg、5kg、10kgの荷重を順次加えて光伝送損失を測定した。
【0050】
測定結果を図4に示す。縦軸には無荷重の時の伝送損失に対する比(=荷重付加したときの伝送損失/無負荷時の伝送損失)をとり、横軸に負荷荷重(gf/cm2)をとった。菱印が圧力検知用光ファイバケーブルの測定結果を示すグラフであり、四角印が光ファイバの測定結果を示すグラフである。
【0051】
この測定結果をみると、圧力検知用光ファイバケーブルA〜Dのいずれも25gf/cm2より光伝送損失が増加しており、光ファイバ単体と比較して低荷重での圧力検知が可能であることがわかる。特に圧力検知用光ファイバケーブルA及びDは光伝送損失が大きく変化しており、検知感度が高い圧力検知用光ファイバケーブルである。
【0052】
製造した圧力検知用光ファイバケーブルA〜Dの曲げ変形による光伝送損失の評価試験を行った結果を図5に示す。測定された伝送損失の単位はdB/kmである。また、光伝送損失の測定は、前述の評価試験で使用した光源及び計測装置を用いて行い、比較試料も同様に芯部の光ファイバ単体を使用し評価した。
【0053】
測定結果よれば、圧力検知用光ファイバケーブルA〜Dは、いずれも曲率半径が30mm以上では直線に設置したときよりは伝送損失が低下するが、いずれの場合も1dB以下であり、圧力検知用光ファイバケーブルとして十分使用可能であることがわかる。
【0054】
また、光伝送損失が1dBを超えるのは曲率半径が20mm以下になった時であり、本実施例の圧力検知用光ファイバケーブルA〜Dは、曲げに対する光損失特性が光ファイバ単体と同等であり、柔軟性に優れることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明に係る圧力検知用光ファイバケーブルは、長手方向に連続して形成された形状をしており、取り扱いが容易であるだけでなく柔軟性と耐久性に優れ、立体物の曲面に沿って張り合わせることができるなど優れた加工性・施工性も備えている。また圧力検知部媒体が光であるため防水等の対策も不要であるため設置する環境条件によらず圧力を検知することが可能であり、そのため、屋外での使用を含め汎用性が高く、外部から加わる圧力や振動を検知する装置に好適であり、警備・監視といったセキュリティ分野、土木・建築分野、自動車等の車両分野など様々な分野に用いることができる。
【0056】
例えば、広範囲の領域で人の体重を検知する簡易システムとして介護分野、建築分野、輸送分野、セキュリティ分野、また各種物体の有無を検知する圧力検知システムとして輸送分野、セキュリティ分野や各種産業設備等の一般産業分野に応用することができる。
【0057】
その他にも、大型システムとしては、敷地もしくは建造物の周辺に配置して人や動物の動きもしくは侵入を検知するセンサーやスイッチ、また車両やホール等の着席状況把握システムなど様々なシステムに適用でき、小型のシステムとしては、ベッドや椅子での離床や着座を検知するセンサーとして製品化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】圧力検知用光ファイバケーブルに関する外観図である。
【図2】図1のX−X断面図である。
【図3】圧力検知装置に関する模式図である。
【図4】圧力検知用光ファイバケーブルに荷重を加えた場合の光伝送損失に関するグラフである。
【図5】圧力検知用光ファイバケーブルを曲げ変形させた場合の光伝送損失に関する測定結果である。
【符号の説明】
【0059】
C 圧力検知用光ファイバケーブル
1 芯部
2 被覆部
20 糸径の最も大きい糸
21 その他の糸
30 光源
31 受光素子
32 計測部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバを有する芯部と、複数の糸により編成されて芯部の表面に密着する組紐組織を有する被覆部とを備え、前記被覆部は、少なくとも糸径の最も大きい糸が前記芯部に巻き付くように螺旋状に配設されて外表面で突出していることを特徴とする圧力検知用光ファイバケーブル。
【請求項2】
前記被覆部は、少なくとも2種類以上の糸径の異なる糸により構成され、糸径の最も大きい糸とその他の糸の糸径の比率は2以上であり、糸径の最も大きい糸の硬さは、加重による直径の変化比が0.5以上であることを特徴とする請求項1記載の圧力検知用光ファイバケーブル。
【請求項3】
前記被覆部は、外表面全体に樹脂材料が付与されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の圧力検知用光ファイバケーブル。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の圧力検知用光ファイバケーブルを用いた圧力検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−229311(P2009−229311A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−76561(P2008−76561)
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【出願人】(592029256)福井県 (122)
【出願人】(501262329)株式会社ユティック (6)
【Fターム(参考)】