説明

圧力炊飯器

【課題】安価に多段階の圧力調整を可能とする。
【解決手段】炊飯鍋10を収容する炊飯器本体11と、炊飯器本体11に開閉可能に取り付けられた蓋体26と、炊飯鍋10内と外部とを連通する第1および第2の排気通路と、第1通気孔70を閉塞する第1弁体(球状部材76)を有し炊飯鍋10内を加圧可能な第1調圧弁67と、第2通気孔80,110を閉塞する第2弁体(被付勢部材84,球状部材115)を有し第1調圧弁67より低い圧力で炊飯鍋10内を加圧可能な第2調圧弁77,107と、オンオフ制御により第1および第2弁体をそれぞれ動作させ各通気孔を開閉する第1および第2駆動手段(ソレノイド49,53)とを備えた構成とする。または、2段階で進出可能なロッド117を有し各位置で第1弁体または第2弁体を動作させ各通気孔を開閉する1個の駆動手段(ソレノイド116)を備えた構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、炊飯器は、炊飯鍋を収容する炊飯器本体と、前記炊飯器本体に開閉可能に取り付けられた蓋体とを備え、前記炊飯器本体内部に配設した加熱手段によって前記炊飯鍋を加熱することにより、炊飯鍋内にセットした飯米を炊飯するものである。そのうち、圧力炊飯器は、前記蓋体内に設けた排気通路内に、その通気孔を閉塞する弁体を有する調圧弁を配設し、加熱手段による加熱量を制御することにより、炊飯鍋内を大気圧以上の所定圧力に制御する構成としている。
【0003】
しかし、加熱手段を制御することにより圧力調整を行う場合には、低圧に維持して炊飯を行う際に火力が低下してしまうため、炊き上げ状態が好ましくない。即ち、炊飯鍋の内部を最大で1.20atm近傍まで昇圧可能とした炊飯器において、炊飯鍋内を1.15atmの内圧に維持する場合には、通電率を変更することにより加熱量を低下させる。そうすると、それに伴って火力が低下することになるため、飯米の炊き上げ状態に大きな影響を及ぼすという不都合がある。
【0004】
そこで、近年の圧力炊飯器は、炊飯鍋内の圧力を多段階に調整可能とすることにより、炊飯条件に応じた加圧を可能としたものが提供されており、その圧力炊飯器に関連する先行技術文献情報としては次のものがある。
【0005】
【特許文献1】特開平11−262444号公報
【特許文献2】特開2000−93294号公報
【特許文献3】特開2003−174963号公報
【0006】
特許文献1には、転動可能な球状部材からなる弁体をケースの内部に上下一対に配設した調圧弁を搭載した圧力炊飯器が記載されている。この圧力炊飯器は、上下の球状部材を1つのソレノイドによって順番に移動可能として、通気孔を開放した状態、通気孔を1つの球状部材の荷重で閉塞した状態、および、通気孔を2つの球状部材の荷重で閉塞した状態の三段階の圧力制御を行えるようにしている。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の炊飯器では、垂直方向に球状部材を積層配置する必要があるため、調圧弁が大型化し、蓋体は勿論、炊飯器全体が大型化するという問題がある。また、積層状態の球状部材を移動させるのは、その作動が不安定であるという欠点がある。
【0008】
特許文献2には、転動可能な1つの球状部材からなる弁体を有する調圧弁を搭載した圧力炊飯器が記載されている。この圧力炊飯器は、ソレノイドによって前記球状部材を移動可能とするとともに、弁体の上方に電磁コイルを配設し、この電磁コイルの磁力で球状部材による通気孔への押圧(閉塞)力を調整することにより、多段階の圧力制御を行えるようにしている。
【0009】
この特許文献2に記載の炊飯器では、圧力センサとの組み合わせにより炊飯鍋内の圧力を細かく調整できるという利点を有するが、調圧弁の上方に電磁コイルを配設する必要があるため、やはり蓋体が大型化し、炊飯器全体が大型化するという問題があるうえ、コスト高になるという問題がある。
【0010】
特許文献3には、転動可能な球状部材からなる第1弁体を有する第1調圧弁と、先端に弁パッキンを配設した被付勢部材からなる第2弁体をスプリングによって付勢した第2調圧弁とを搭載した圧力炊飯器が記載されている。この圧力炊飯器は、前記第2調圧弁のスプリングによる付勢力をアームを介してモータによって調整可能とすることにより、多段階の圧力制御を行えるようにしている。
【0011】
この特許文献3に記載の炊飯器では、圧力センサとの組み合わせにより炊飯鍋内の圧力を細かく調整できるという利点を有するが、複雑なリンク機構を搭載する必要があるため、炊飯器全体がコスト高になるという問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、従来の問題に鑑みてなされたもので、安価に多段階の圧力調整が可能な圧力炊飯器を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するため、本発明の第1の圧力炊飯器は、炊飯鍋を収容する炊飯器本体と、前記炊飯器本体に開閉可能に取り付けられ前記炊飯鍋の開口部を閉塞する蓋体と、前記蓋体内に設けられ前記炊飯鍋内と外部とを連通する第1および第2の排気通路と、前記第1排気通路内に設けた第1通気孔を閉塞する第1弁体を有し、前記炊飯鍋内と外部とを遮断して炊飯鍋内を加圧可能な第1調圧弁と、前記第2排気通路内に設けた第2通気孔を閉塞する第2弁体を有し、前記炊飯鍋内と外部とを遮断して前記第1調圧弁より低い圧力で炊飯鍋内を加圧可能な第2調圧弁と、オン、オフ制御により前記第1および第2弁体をそれぞれ動作させ、各通気孔を開閉する第1および第2駆動手段とを備えた構成としている。
【0014】
前記圧力炊飯器では、第1および第2の排気通路の通気孔を、加圧可能な圧力が異なる第1および第2の調圧弁により開閉可能に閉塞するため、炊飯鍋内の圧力を多段階で調節することができる。しかも、これら調圧弁は、オン、オフ制御により動作する駆動手段で動作されるため、その動作を安定させることができる。しかも、圧力センサとの組み合わせによる複雑な作動および制御は不要であるため、コストダウンを図ることができる。
【0015】
また、本発明の第2の圧力炊飯器は、炊飯鍋を収容する炊飯器本体と、前記炊飯器本体に開閉可能に取り付けられ前記炊飯鍋の開口部を閉塞する蓋体と、前記蓋体内に設けられ前記炊飯鍋内と外部とを連通する第1および第2の排気通路と、前記第1排気通路内に設けた第1通気孔を閉塞する第1弁体を有し、前記炊飯鍋内と外部とを遮断して炊飯鍋内を加圧可能な第1調圧弁と、前記第2排気通路内に設けた第2通気孔を閉塞する第2弁体を有し、前記炊飯鍋内と外部とを遮断して前記第1調圧弁より低い圧力で炊飯鍋内を加圧可能な第2調圧弁と、2段階で進出可能なロッドを有し、各位置で前記第1弁体または第2弁体を動作させ、各通気孔を開閉する1個の駆動手段とを備えた構成としている。
【0016】
前記圧力炊飯器では、第1の圧力炊飯器と同様に、第1および第2の排気通路の通気孔を、加圧可能な圧力が異なる第1および第2の調圧弁により開閉可能に閉塞するため、炊飯鍋内の圧力を多段階で調節することができる。しかも、これら調圧弁は、2段階で進出可能なロッドを有する1個の駆動手段により動作されるため、その作動を安定させることができる。しかも、圧力センサとの組み合わせによる複雑な作動および制御は不要であるため、コストダウンを図ることができる。
【0017】
これらの圧力炊飯器では、前記第1弁体は、前記第1通気孔を転動により閉塞する球状部材からなり、前記駆動手段による非動作状態では前記第1通気孔を開状態とし、動作状態では前記第1通気孔を閉状態とすることが好ましい。このようにすれば、何らかの原因で駆動手段に異常が生じた場合には、第1調圧弁の第1弁体を構成する球状部材は、第1通気孔を開放した状態をなす。そのため、炊飯鍋内の圧力が高圧状態で停止されるという不都合を防止でき、安全性を高めることができる。
【0018】
また、前記第2弁体は、前記第2通気孔を付勢により閉塞する被付勢部材からなり、前記駆動手段による動作状態では非動作状態より前記第2通気孔を大きな付勢力で閉塞することが好ましい。
または、前記第2弁体は、前記第2通気孔を転動により閉塞する球状部材からなり、前記第2通気孔は、球状部材による開放状態で排気抵抗により前記炊飯鍋内を昇圧可能な開口面積であることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の圧力炊飯器では、第1および第2の排気通路の通気孔を、加圧可能な圧力が異なる第1および第2の調圧弁により閉塞するため、炊飯鍋内の圧力を多段階で調節することができる。しかも、これら調圧弁の駆動手段は、圧力センサとの組み合わせによる複雑な作動および制御は不要であるため、コストダウンを図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0021】
図1および図2は、本発明の第1実施形態に係る圧力炊飯器を示す。この圧力炊飯器は、電磁誘導加熱される炊飯鍋10を着脱可能に収容する炊飯器本体11と、該炊飯器本体11に回動可能に取り付けた蓋体26とからなり、この蓋体26の内側の面には内蓋61が着脱可能に取り付けられるものである。
【0022】
前記炊飯器本体11は、筒形状をなす胴体12と、該胴体12の下端開口を閉塞する底体13と、前記胴体12の上端開口を覆うように取り付ける肩体14とからなる外装体を備えている。この肩体14は、その中央部に炊飯鍋10を着脱可能に配置するための円形状の開口部15を備え、この開口部15の下部に、筒状をなす内胴16と、非導電性材料からなる受け皿状の保護枠17とが配設されている。この保護枠17の下部外周面には、誘導加熱コイル18がフェライトコア19を介して配設されている。また、炊飯鍋10の温度を検出するための炊飯鍋用温度センサ20が保護枠17を貫通して配設されている。さらに、肩体14には、背面側に蓋体26を開閉可能に取り付けるためのヒンジ受部21が設けられ、正面側に蓋体26のロック部を係止するロック穴22が設けられている。さらにまた、肩体14の正面上側には、操作基板23と、メニューシート24と、表面部材25とからなる操作部が設けられている。
【0023】
前記蓋体26は、肩体14のヒンジ受部21に開閉可能に取り付けられ、炊飯器本体11の開口部15を閉塞するもので、炊飯器本体11の外装体と共に外表面材を構成する上板27と、該上板27の底を閉塞する下板31と、該下板31の下面に着脱可能に装着される内蓋61とを備えている。そして、この蓋体26の内部には炊飯鍋10内と外部とを連通する第1および第2排気通路が設けられ、それぞれに炊飯鍋10内を大気圧以上に段階的に昇圧するための第1および第2の調圧弁67,77が設けられている。また、各排気通路は、その排気(大気)側で1つに合流しており、その出口部分に蒸気口ユニット97が着脱可能に配設されている。
【0024】
前記上板27には、その前部に蓋体26を開放操作するための操作部材28を回動可能に装着する装着孔29が設けられている。また、上板27の背部には、中央部に接続口が形成された蒸気口ユニット97の配設凹部30が設けられている。
【0025】
図1から図3に示すように、下板31は、前記肩体14の上側の凹状の窪み形状と対応する形状をなす。この下板31の背部には、肩体14のヒンジ受部21に軸着されるヒンジ接続部32が設けられている。このヒンジ接続部32には、ヒンジ受部21に貫通される軸33が配設されるとともに、蓋体26を開放方向に付勢するためのヒンジスプリング34が配設されている。また、下板31の前部には、肩体14のロック穴22にアンロック可能にロックするロック部材35が回動可能に取り付けられている。このロック部材35は、図示しないスプリングによってロック方向に付勢されている。さらに、このロック部材35の上部中央には、後述する第1ソレノイド49を動作させることによる加圧時に蓋体26の開放を防止するための開放防止用ロック片36が突設されている。
【0026】
また、下板31の底には、金属製のヒータカバー37を介して蓋ヒータ38が配設されるとともに、図示しない蓋用温度センサが配設されている。ヒータカバー37の外周部には、内蓋61との間を気密にシールするためのパッキン39が配設されている。さらに、下板31の上側には、炊飯時の熱および圧力によって変形するのを防止するために、金属製の補強部材40が配設されている。
【0027】
そして、本実施形態の下板31には、後述する内蓋61に設けられた第1および第2の調圧弁67,77を幅方向に隣接させて収容する第1および第2の収容部41,45と、各調圧弁67,77の駆動手段である第1および第2のソレノイド49,53と、第1および第2排気通路が合流する共通排気部58とがそれぞれ設けられている。
【0028】
前記第1収容部41は、図3および図4(A),(B)に示すように、第1排気通路の一部を構成するもので、後述する第1調圧弁67を収容する下端開口のドーム形状のものである。この第1収容部41の側壁前部には第1駆動用開口部42が設けられ、この第1駆動用開口部42にパッキン43が配設されている。また、前記ヒータカバー37において、この第1収容部41の下端開口と対応する位置は同様に開口され、これらの間がパッキン44によってシールされている。
【0029】
前記第2収容部45は、図3および図5(A),(B)に示すように、第2排気通路の一部を構成するもので、後述する第2調圧弁77を収容する上下端開口の筒状のものである。この第2収容部45の上端は第2駆動用開口部46であり、この第2駆動用開口部46にパッキン47が配設されている。また、前記ヒータカバー37において、この第2収容部45の下端開口と対応する位置は同様に開口され、これらの間がパッキン48によってシールされている。
【0030】
第1駆動手段である第1ソレノイド49は、図3および図4(A),(B)に示すように、2ポジションソレノイドであり、通電の有無により進退する第1ロッド50の先端に、パッキン43を介して球状部材76を押圧する第1押圧部材51が配設されている。そして、動作状態では通電(オン)により第1ロッド50を後退させ、パッキン43を介して第1調圧弁67の球状部材76を自重で転動させて加圧(閉)状態とする一方、非動作状態では遮断(オフ)により第1ロッド50を進出させ、球状部材76を転動させて非加圧(開)状態とするものである。なお、この第1押圧部材51には、オン状態でロック部材35の開放防止用ロック片36の下部に進入し、該ロック部材35の回動による蓋体26の開放を防止するリンク部材52が設けられている。
【0031】
第2駆動手段である第2ソレノイド53は、図3および図5(A),(B)に示すように、第1ソレノイド49と同様の2ポジションソレノイドであり、通電の有無により進退する第2ロッド54の先端に第2押圧部材55が配設されている。この第2押圧部材55は、通電による水平方向の動作を垂直方向の動作(押圧力)に変換するための台形突出部56を備えている。そして、通電(オン)により第2ロッド54を後退させ、パッキン47および垂直押圧部材57を介して第2調圧弁77のスプリング受部材93を下降させて高加圧状態とする一方、遮断(オフ)により第2ロッド54を進出させ、スプリング受部材を上昇させて低加圧状態とするものである。
【0032】
前記共通排気部58は、上板27の配設凹部30の接続口と対応する位置に設けた上下端開口の筒状のものである。この共通排気部58の上端開口部には、上板27との間をシールするとともに、後述する蒸気口ユニット97の接続部99との間をシールするパッキン59が配設されている。また、前記ヒータカバー37において、この共通排気部58の下端開口と対応する位置は同様に開口され、これらの間がパッキン60によってシールされている。
【0033】
前記内蓋61は、図6に示すように、金属製の内蓋本体62と、蓋パッキン65と、樹脂枠66とを備え、前記内蓋本体62に第1調圧弁67と第2調圧弁77とを一体的に取り付けたものである。
【0034】
前記内蓋本体62は、放熱板の役割をなすもので、各収容部41,45と対応する位置には炊飯鍋10内と連通する第1開口部63および第2開口部64が設けられている。前記蓋パッキン65は、炊飯鍋10の開口内周部に密着してシールするものである。前記樹脂枠66は、内蓋本体62の外周部に挟み込むことによって、蓋パッキン65を内蓋本体62との間に離脱不可能に装着するものである。
【0035】
前記第1調圧弁67は、図4(A),(B)および図7(A)に示すように、第1弁座部材68と、該第1弁座部材68を覆う第1カバー72と、これらの内部に収容する第1弁体である球状部材76とからなり、内蓋61の装着により前記第1収容部41内に収容されるものである。
【0036】
前記第1弁座部材68は、下端開口で上端を閉塞した台形筒状をなすものである。この第1弁座部材68には、その下端に内蓋本体62の第1開口部63に対して炊飯鍋10の側に嵌る第1フランジ部69が突設されている。また、平坦な上端閉塞面中央には、炊飯鍋10内が沸騰状態で、該炊飯鍋10の内圧が大気圧と同等になるように排気可能な開口面積の第1通気孔70が設けられている。さらに、外周部には、第1カバー72を固定する係止溝71が設けられている。
【0037】
前記第1カバー72は、後述する球状部材76を収容した状態で前記第1弁座部材68を覆うもので、前記係止溝71に係止される係止凸部73を備えている。この第1カバー72には、第1収容部41の第1駆動用開口部42に対応し、パッキン43を介して第1ソレノイド49の第1押圧部材51を進退可能に挿通する挿通孔74が設けられている。また、第1カバー72の上部には、周方向に所定間隔をもって排気孔75が設けられている。
【0038】
前記球状部材76は、転動により第1通気孔70を閉塞することにより、炊飯鍋10内の空気を外部に排気するのを防止して、炊飯鍋10内の圧力を昇圧するためのものである。本実施形態では、炊飯鍋10内の圧力が1.20から1.25atmに昇圧すると、その圧力で第1通気孔70上から離反するように転動する重量のものを使用している。
【0039】
前記第2調圧弁77は、図5(A),(B)および図7(B)に示すように、第2弁座部材78と、第2カバー81と、これらの内部に収容する第2弁体である被付勢部材84と、スプリング受部材93とからなり、内蓋61の装着により前記第2収容部45内に収容されるものである。
【0040】
前記第2弁座部材78は、上端開口で下端を閉塞した筒状をなすものである。この第2弁座部材78には、その下端に内蓋本体62の第2開口部64に対して炊飯鍋10の側に嵌る第2フランジ部79が突設されている。また、下端閉塞面には第2通気孔80が設けられている。ここで、この第2通気孔80の上端縁は、後述する被付勢部材84の弁パッキン90が圧接される部分であり、その内周面と閉塞面上面との稜部には、何ら面取り加工を施すことなく(非面取り状態)上面と内周面とのなす角が略90度に交わる状態とされている。
【0041】
前記第2カバー81は、後述する被付勢部材84およびスプリング受部材93を収容した状態で第2弁座部材78を覆うもので、内蓋本体62に対して挿通させた第2弁座部材78に係合させて取り付けられている。この第2カバー81には、第2収容部45の第2駆動用開口部46に対応する上端排気孔82と、側壁部に設けた側部排気孔83とが形成されている。
【0042】
前記被付勢部材84は、上下方向に延びる軸部85の下端に、付勢手段であるスプリング86の端部受部87と、弁パッキン90を装着するパッキン装着部89とを設けたものである。端部受部87は、軸部85から円板状に突出したもので、その外周部にはスプリング86の外周部を規制する規制凸部88が上向きに突設されている。前記パッキン装着部89は、端部受部87との間に環状の係止溝が形成されるように、断面逆T字形状に突出したものである。
【0043】
前記弁パッキン90は、被付勢部材84の軸心に沿って先(下)端に向けて先細に突出する略円錐形状のもので、その円錐部91の基部である上端には前記パッキン装着部89に装着するための被装着部92が設けられている。前記円錐部91は、第2弁座部材78の第2通気孔80の内部に嵌り込んで、その外周面と第2通気孔80の上端縁との線接触で閉塞するもので、その下端の直径は第2通気孔80の内径より小さく、その上端の直径は第2通気孔80の内径より大きいものである。ここで、円錐部91は、その中央断面において、軸心に対して対称に位置する一対の直線が交わる角度αを約40度から約130度の範囲としており、本実施形態では60度としている。ここで、40度より小さくした場合には、円錐部91が鋭角に突出するため、第2通気孔80内に完全に嵌合して脱圧できない現象が発生する。一方、130度より大きくした場合には、円錐部91が鈍角に突出するため、第2通気孔80を形成した第2弁座部材78に対して面接触に近くなるとともに、第2通気孔80を通過した蒸気が第2弁座部材78の内周面に対して鈍角に衝突するため、音鳴りが発生するとともに、シール性能の安定性が低下するため、好ましくない。前記被装着部92は、円錐部91の上端から水平方向に突出する断面横凹字形状のものである。この被装着部92の下端部は、水平方向にフランジ状に突出するストッパ部の役割をなし、円錐部91が第2通気孔80の内部に上端まで完全に嵌り込むことを防止するものである。
【0044】
前記スプリング受部材93は、付勢部材であるスプリング86の上端を位置決めして前記被付勢部材84を下向きに付勢するためのもので、前記軸部85の移動方向を規制する筒部94の外周に、スプリング86の端部受部95を設けたものである。筒部94は、下端開口で上端を閉塞したもので、その上端が第2カバー81の上端排気孔82から上方に突出するように配置される。端部受部95は、筒部94の上方から下向きに突出し、その外形が前記上端排気孔82と同一形状をなす筒状のもので、筒部94との間にスプリング86を規制する。この端部受部95には、該スプリング受部が第2カバー81内からスプリング86の付勢力によって離脱するのを防止するためにストッパ部96が径方向外向きに突設されている。
【0045】
このように構成した第2調圧弁77は、スプリング受部材93が、第2ソレノイド53が駆動(動作)されると、パッキン47および垂直押圧部材57を介して下向きに押圧され、第2カバー81内でスプリング86の付勢力に抗して下向きに移動する。その結果、スプリング86の下端に位置する被付勢部材84は、その弁パッキン90を介して第2通気孔80を閉塞する付勢力が変更される。本実施形態では、第2ソレノイド53の非動作状態(図5(A))では、炊飯鍋10内の圧力が1.15atmに昇圧すると、その圧力で被付勢部材84がスプリング86の付勢力に抗して上昇することにより排気し、動作状態(図5(B))では、炊飯鍋10内の圧力が1.20atmに昇圧すると、その圧力で被付勢部材84がスプリング86の付勢力に抗して上昇することにより排気するように構成している。即ち、第2ソレノイド53による動作状態では非動作状態より前記第2通気孔80を大きな付勢力で閉塞するように構成している。
【0046】
前記蒸気口ユニット97は、図1および図2に示すように、受け皿状の下ケース98と、該下ケース98に着脱可能に取り付けられる上ケース100と、これらケース間をシールする蒸気口パッキン102とを備え、配設凹部30の背部に位置する前記共通排気部58にパッキン59を介して着脱可能に接続されるものである。前記下ケース98は、その底壁の略中央部に共通排気部58に接続するための接続部99が設けられている。前記上ケース100は、蓋体26の表面形状と一致するように、上板27と一体的な曲面形状をなす上端閉塞面を有し、前記下ケース98に対して着脱可能に組み付けられるものである。この上ケース100には、前記下ケース98の側壁形状と一致するパッキン収容部101が設けられ、このパッキン収容部101にケース98,100間をシールする蒸気口パッキン102が配設されている。
【0047】
図4(A),(B)に示すように、前記蓋体26は、第1通気孔70を有する第1弁座部材68内、排気孔75を有する第1カバー72内、第1カバー72と第1収容部41との隙間から、内蓋本体62とヒータカバー37との隙間、共通排気部58内、および、排気口を有する蒸気口ユニット97内を経た経路が、炊飯鍋10内と外部とを連通させる第1排気通路を構成する。
【0048】
また、図5(A),(B)に示すように、第2通気孔80を有する第2弁座部材78内、上端排気孔82および側部排気孔83を有する第2カバー81内、第2カバー81と第2収容部45との隙間から、内蓋本体62とヒータカバー37との隙間、共通排気部58内、および、排気口を有する蒸気口ユニット97内を経た経路が、炊飯鍋10内と外部とを連通させる第2排気通路を構成する。
【0049】
前記構成の圧力炊飯器は、図示しない制御基板に実装されたマイコンによって、予め設定されたプログラムに従って炊飯制御や保温制御が実行される。そして、炊飯制御では、両方のソレノイド49,53を非動作状態とした非加圧状態、第1ソレノイド49のみを動作状態とした低加圧状態、および、両方のソレノイド49,53を動作状態とした高加圧状態の三段階の圧力制御を行いながら実行される。ここで、本実施形態では、両方のソレノイド49,53の非動作状態で非加圧状態とすることにより、ソレノイド49,53の故障やロッド50,54の動作不良などにより、炊飯鍋10内が加圧状態のままになることを防止している。
【0050】
具体的には、非加圧状態では、第1調圧弁67は、第1ソレノイド49により球状部材76が第1通気孔70上から離反され、開状態となっている。また、第2調圧弁77は、第2ソレノイド53によりスプリング受部材93が上昇し、炊飯鍋10内を1.15atmまで昇圧可能な付勢力で、被付勢部材84が第2通気孔80を閉塞している。そして、炊飯鍋10内は、大気圧と同等になるように排気可能な開口面積を有する第1通気孔70の開放により、昇圧不可能な非加圧状態となる。
【0051】
また、低加圧状態では、第1調圧弁67は、第1ソレノイド49により球状部材76が第1通気孔70上に転動し、炊飯鍋10内を1.20から1.25atmまで昇圧可能な閉状態となっている。また、第2調圧弁77は、非加圧状態と同様に、第2ソレノイド53によりスプリング受部材93が上昇し、炊飯鍋10内を1.15atmまで昇圧可能な付勢力で、被付勢部材84が第2通気孔80を閉塞している。そのため、炊飯鍋10内は、第2調圧弁77が動作する1.15atmまで昇圧可能な低加圧状態となる。
【0052】
さらに、高加圧状態では、第1調圧弁67は、低加圧状態と同様に、第1ソレノイド49により球状部材76が第1通気孔70上に転動し、炊飯鍋10内を1.20から1.25atmまで昇圧可能な閉状態となっている。また、第2調圧弁77は、第2ソレノイド53によりスプリング受部材93が下降し、炊飯鍋10内を1.20atmまで昇圧可能な付勢力で、被付勢部材84が第2通気孔80を閉塞している。そのため、炊飯鍋10内は、調圧弁67,77が動作する1.20atmまで昇圧可能な高加圧状態となる。また、第1調圧弁67は、第2調圧弁77が何等かの原因で動作不可能な状態になった際のリリーフ弁の役割もなす。
【0053】
このように、本実施形態の圧力炊飯器では、第1および第2の排気通路の通気孔70,80を、加圧可能な圧力が異なる第1および第2の調圧弁67,77により開閉可能に閉塞するため、炊飯鍋10内の圧力を多段階で調節することができる。また、これら調圧弁67,77は、オン、オフ制御により動作するソレノイド49,53で動作されるため、その動作を安定させることができる。しかも、圧力センサとの組み合わせによる複雑な作動および制御は不要であるため、コストダウンを図ることができる。その結果、加熱手段である誘導加熱コイル18による火力調整に頼ることなく、ユーザの好みに応じた飯米の炊き上げ状態を低コストで実現することができる。
【0054】
また、第1調圧弁67の第1弁体は、第1通気孔70を転動により閉塞する球状部材76からなり、非動作状態では前記第1通気孔70を開状態とするため、何らかの原因で第1ソレノイド49に異常が生じた場合には、第1通気孔70を開放した状態をなす。さらに、第2調圧弁77の第2弁体は、第2通気孔80を付勢により閉塞する被付勢部材84からなり、非動作状態では低加圧状態とするため、何らかの原因で第2ソレノイド53に異常が生じた場合には、第2通気孔80を低い付勢力で閉塞した状態をなす。そのため、炊飯鍋10内の圧力が高圧状態で停止されるという不都合を防止でき、安全性を高めることができる。
【0055】
次に、各調圧弁67,77による脱圧作用について具体的に説明する。
【0056】
前記第1調圧弁67では、図4(A)に示すように、球状部材76は、第1通気孔70上から離反して第1カバー72の内壁に当接した状態で、第1弁座部材68に当接する下端部が第1通気孔70の周囲に位置している。そのため、第1ソレノイド49を動作させると、自重での転動により図4(B)に示す加圧状態になる。そして、この状態で、炊飯鍋10内の圧力が上昇すると、球状部材76を重量に抗して押し上げるようにして、該球状部材76と第1通気孔70との隙間から蒸気が排気される。
【0057】
前記第2調圧弁77では、第1調圧弁67が閉状態で、図5(A)に示す状態で炊飯鍋10内が1.15atm以上に昇圧すると、また、図5(B)に示す状態で炊飯鍋10内が1.20atm以上に昇圧すると、スプリング86の付勢力に抗して被付勢部材84を押し上げるようにして、該被付勢部材84の弁パッキン90と第2通気孔80との隙間から蒸気が排気される。
【0058】
この際、第2調圧弁77は、弁パッキン90の円錐部91を第2通気孔80の内部に嵌め込んで、これらを線接触状態でシールする構成としているため、その閉塞精度を向上できる。しかも、炊飯鍋10内が昇圧し、被付勢部材84が付勢力に抗して後退する際には、左右への振動(移動)が第2通気孔80の縁により規制される。よって、調圧弁の作動時の異音の発生を抑制できるとともに、圧力調整に係る安定性を向上できる。また、この第2調圧弁77は、第2ソレノイド53により作動圧力を変更できるように構成しているため、スプリング86によって強い付勢力で閉塞している状態では、円錐部91が第2通気孔80に嵌り込んで外れない状態に至る可能性がある。しかし、本実施形態では、弁パッキン90の円錐部91の基部にストッパの役割をなす被装着部92を設けているため、弁パッキン90が第2通気孔80内に過剰に圧入されるという問題を確実に防止できる。
【0059】
図8および図9(A),(B),(C)は第2実施形態の圧力炊飯器を示す。この圧力炊飯器は、第2排気通路を構成する第2調圧弁107の第2通気孔110を、第1実施形態の第1調圧弁67と同様の球状部材115により構成した点で、第1実施形態と大きく相違している。
【0060】
具体的には、下板31に形成する第2実施形態の第1収容部41は、第1実施形態と同一であり、下端開口のドーム形状をなし、その側壁前部に第1駆動用開口部42が設けられ、この第1駆動用開口部42にパッキン43が配設されている。また、前記ヒータカバー37において、この第1収容部41の下端開口と対応する位置は同様に開口され、これらの間がパッキン44によってシールされている。
【0061】
また、第2収容部103は、第1収容部41と同様に、第2排気通路の一部を構成するもので、後述する第2調圧弁107を収容する下端開口のドーム形状のものである。この第2収容部103の側壁後部には第2駆動用開口部104が設けられ、この第2駆動用開口部104にパッキン105が配設されている。また、前記ヒータカバー37において、この第2収容部103の下端開口と対応する位置は開口され、これらの間がパッキン106によってシールされている。
【0062】
さらに、内蓋61は、第1実施形態と同様に、金属製の内蓋本体62と、蓋パッキン65と、樹脂枠66とを備え、前記内蓋本体62に第1調圧弁67と第2調圧弁107とを一体的に取り付けたものである。
【0063】
そのうち、第1調圧弁67は、第1弁座部材68と、該第1弁座部材68を覆う第1カバー72と、これらの内部に収容する第1弁体である球状部材76とからなり、内蓋61の装着により前記第1収容部41内に収容される第1実施形態と同一のものである。
【0064】
また、第2実施形態の第2調圧弁107は、第1調圧弁67と同様に、第2弁座部材108と、該第2弁座部材108を覆う第2カバー112と、これらの内部に収容する第2弁体である球状部材115とからなり、内蓋61の装着により前記第2収容部103内に収容されるものである。
【0065】
前記第2弁座部材108は、下端開口で上端を閉塞した台形筒状をなすものである。この第2弁座部材108には、その下端に内蓋本体62の第2開口部64に対して炊飯鍋10の側に嵌る第2フランジ部109が突設されている。また、平坦な上端閉塞面中央には、炊飯鍋10内が沸騰状態で、排気抵抗により炊飯鍋10の内圧が大気圧と同等に平衡されず、約1.15atmまで昇圧可能な直径(開口面積)の第2通気孔110が設けられている。なお、本実施形態の炊飯器の容積は2600〜4800cmであり、前記第2通気孔110の直径は1.7〜2.0mmに設定している。また、符号111は、球状部材115を第2通気孔110上に誘導するためのガイドである。なお、このガイドは、第1調圧弁67にも同様に設けてもよい。
【0066】
前記第2カバー112は、後述する球状部材115を収容した状態で前記第2弁座部材108を覆うものである。この第2カバー112には、第2収容部103の第2駆動用開口部104に対応し、パッキン105を介して第2ソレノイド53の第2押圧部材55を進退可能に挿通する挿通孔113が設けられている。また、第2カバー112の上部には、周方向に所定間隔をもって排気孔114が設けられている。
【0067】
前記球状部材115は、転動により第2通気孔110を閉塞することにより、炊飯鍋10内の空気を外部に排気するのを防止して、炊飯鍋10内の圧力を昇圧するためのものである。本実施形態では、炊飯鍋10内の圧力が1.20atmに昇圧すると、その圧力で第2通気孔110上から離反するように転動する重量のものを使用している。
【0068】
前記構成の圧力炊飯器は、図9(A)に示すように、両方のソレノイド49,53を非動作状態とした非加圧状態、図9(B)に示すように、両方のソレノイド49,53を動作状態とした低加圧状態、および、図9(C)に示すように、第1ソレノイド49のみを動作状態とした高加圧状態の三段階の圧力制御を行いながら実行される。なお、本実施形態では、第2ソレノイド53は、非動作状態で球状部材115によって第2通気孔110を閉塞させているが、動作状態で閉塞させるように構成してもよい。
【0069】
具体的には、図9(A)に示すように、非加圧状態では、第1調圧弁67は、第1ソレノイド49により球状部材76が第1通気孔70上から離反され、開状態となっている。また、第2調圧弁107は、第2ソレノイド53により球状部材115が第2通気孔110上に転動し、炊飯鍋10内を1.20atmまで昇圧可能な閉状態となっている。そして、炊飯鍋10内は、大気圧と同等になるように排気可能な開口面積を有する第1通気孔70の開放により、昇圧不可能な非加圧状態となる。なお、第2ソレノイド53の非動作状態で球状部材115によって第2通気孔110を開放する構成とした場合、この非加圧状態では、やはり第2ソレノイド53は非動作状態とし第2通気孔110は開放した状態とすることが好ましい。
【0070】
また、図9(B)に示すように、低加圧状態では、第1調圧弁67は、第1ソレノイド49により球状部材76が第1通気孔70上に転動し、炊飯鍋10内を1.20から1.25atmまで昇圧可能な閉状態となっている。また、第2調圧弁107は、第2ソレノイド53により球状部材115が第2通気孔110上から離反され、開状態となっている。そして、炊飯鍋10内は、排気抵抗により炊飯鍋10内を昇圧可能とした開口面積の第2通気孔110により、1.15atmまで昇圧可能な低加圧状態となる。
【0071】
さらに、図9(C)に示すように、高加圧状態では、第1調圧弁67は、第1ソレノイド49により球状部材76が第1通気孔70上に転動し、炊飯鍋10内を1.20から1.25atmまで昇圧可能な閉状態となっている。また、第2調圧弁107は、第2ソレノイド53により球状部材115が第2通気孔110上に転動し、炊飯鍋10内を1.20atmまで昇圧可能な閉状態となっている。そのため、炊飯鍋10内は、調圧弁67,107が動作する1.20atmまで昇圧可能な高加圧状態となる。
【0072】
このように、第2実施形態の圧力炊飯器では、第1実施形態と同様に、加圧可能な圧力が異なる第1および第2の調圧弁67,107により、炊飯鍋10内の圧力を多段階で調節することができる。しかも、これら調圧弁67,107は、オン、オフ制御により動作するソレノイド49,53で動作されるため、第1実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。
【0073】
図10および図11は第3実施形態の圧力炊飯器を示す。この圧力炊飯器は、各調圧弁67,107の駆動手段としてそれぞれ配設したソレノイド49,53の代わりに、2段階で進出可能なロッド117を有する1個のソレノイド116を用いた点で、第2実施形態と大きく相違している。
【0074】
具体的には、両方の調圧弁67,107の駆動手段であるソレノイド116は、非通電状態、第1通電状態、該第1通電状態より高電流を通電する第2通電状態の3状態で、それぞれロッド117の進出位置が可変される3ポジションソレノイドからなり、各位置で各弁体である球状部材76または球状部材115を動作させ、各通気孔70,110を開閉させる構成としている。そして、このロッド117の先端には、パッキン43を介して球状部材76を押圧する第1押圧部材118が配設されている。この第1押圧部材118には、前記各実施形態と同様に、オン状態でロック部材35の開放防止用ロック片36の下部に進入し、該ロック部材35の回動による蓋体26の開放を防止するためのリンク部材119が設けられている。そして、このリンク部材119には、第2収容部103のパッキン105の側に迂回するように略J字形状をなすロッド部材120が設けられている。そして、このロッド部材120の先端には、パッキン105を介して球状部材115を動作させる第2押圧部材121が配設されている。
【0075】
前記構成の圧力炊飯器は、図11(A)に示すように、ソレノイド116を非動作状態とした非加圧状態、図11(B)に示すように、ソレノイド116を第1動作(通電)状態とした高加圧状態、および、図11(C)に示すように、ソレノイド116を第2動作(通電)状態とした低加圧状態の三段階の圧力制御を行いながら実行される。
【0076】
具体的には、図11(A)に示すように、非加圧状態では、第1調圧弁67は、ソレノイド116により球状部材76が第1通気孔70上から離反され、開状態となっている。また、第2調圧弁107は、ソレノイド116により球状部材115が第2通気孔110上に転動し、炊飯鍋10内を1.20atmまで昇圧可能な閉状態となっている。そして、炊飯鍋10内は、大気圧と同等になるように排気可能な開口面積を有する第1通気孔70の開放により、昇圧不可能な非加圧状態となる。
【0077】
また、図11(C)に示すように、低加圧状態では、第1調圧弁67は、ソレノイド116により球状部材76が第1通気孔70上に転動し、炊飯鍋10内を1.20から1.25atmまで昇圧可能な閉状態となっている。また、第2調圧弁107は、ソレノイド116により球状部材115が第2通気孔110上から離反され、開状態となっている。そして、炊飯鍋10内は、排気抵抗により炊飯鍋10内を昇圧可能とした開口面積の第2通気孔110により、1.15atmまで昇圧可能な低加圧状態となる。
【0078】
さらに、図11(B)に示すように、高加圧状態では、第1調圧弁67は、ソレノイド116により球状部材76が第1通気孔70上に転動し、炊飯鍋10内を1.20から1.25atmまで昇圧可能な閉状態となっている。また、第2調圧弁107は、ソレノイド116により球状部材115が第2通気孔110上に転動し、炊飯鍋10内を1.20atmまで昇圧可能な閉状態となっている。そのため、炊飯鍋10内は、調圧弁67,107が動作する1.20atmまで昇圧可能な高加圧状態となる。
【0079】
このように、第3実施形態の圧力炊飯器では、前記各実施形態と同様に、加圧可能な圧力が異なる第1および第2の調圧弁67,107により、炊飯鍋10内の圧力を多段階で調節することができる。しかも、本実施形態では、調圧弁67,107は、2段階で進出可能なロッド117を有する1個のソレノイド116により動作されるため、無段階で動作される従来例と比較すると、その作動を大幅に安定させることができる。しかも、圧力センサとの組み合わせによる複雑な作動および制御は不要であるため、コストダウンを図ることができる。
【0080】
なお、本発明の炊飯器は、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0081】
例えば、駆動手段として1個のソレノイド116を用いた第3実施形態の圧力炊飯器は、第1調圧弁67および第2調圧弁107をそれぞれ球状部材76,115によって通気孔70,110を閉塞する第2実施形態と同一構成のものを使用したが、第1実施形態に示す第1調圧弁67と被付勢部材84を用いた第2調圧弁77との組み合わせでも同様に適用可能であり、同様の作用および効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の実施形態に係る圧力炊飯器を示す部分断面図である。
【図2】他の部分を切断した状態を示す部分断面図である。
【図3】上板を外した蓋体を示す斜視図である。
【図4】(A),(B)は第1調圧弁の動作を示す断面図である。
【図5】(A),(B)は第2調圧弁の動作を示す断面図である。
【図6】内蓋の上方斜視図である。
【図7】(A)は第1調圧弁を示す拡大断面図、(B)は第2調圧弁を示す拡大断面図である。
【図8】第2実施形態の圧力炊飯器の蓋体を示す平面図である。
【図9】各調圧弁の動作状態を示し、(A)は非加圧状態、(B)は低加圧状態、(C)は高加圧状態の断面図である。
【図10】第3実施形態の圧力炊飯器の蓋体を示す平面図である。
【図11】各調圧弁の動作状態を示し、(A)は非加圧状態、(B)は高加圧状態、(C)は低加圧状態の断面図である。
【符号の説明】
【0083】
10…炊飯鍋
11…炊飯器本体
18…誘導加熱コイル(加熱手段)
26…蓋体
49…第1ソレノイド(第1駆動手段)
50…第1ロッド
53…第2ソレノイド(第2駆動手段)
54…第2ロッド
58…共通排気部
61…内蓋
62…内蓋本体
65…蓋パッキン
66…樹脂枠
67…第1調圧弁
70…第1通気孔
76,115…球状部材
77,107…第2調圧弁
80,110…第2通気孔
84…被付勢部材
90…弁パッキン
93…スプリング受部材
97…蒸気口ユニット
116…ソレノイド
117…ロッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炊飯鍋を収容する炊飯器本体と、
前記炊飯器本体に開閉可能に取り付けられ前記炊飯鍋の開口部を閉塞する蓋体と、
前記蓋体内に設けられ前記炊飯鍋内と外部とを連通する第1および第2の排気通路と、
前記第1排気通路内に設けた第1通気孔を閉塞する第1弁体を有し、前記炊飯鍋内と外部とを遮断して炊飯鍋内を加圧可能な第1調圧弁と、
前記第2排気通路内に設けた第2通気孔を閉塞する第2弁体を有し、前記炊飯鍋内と外部とを遮断して前記第1調圧弁より低い圧力で炊飯鍋内を加圧可能な第2調圧弁と、
オン、オフ制御により前記第1および第2弁体をそれぞれ動作させ、各通気孔を開閉する第1および第2駆動手段と
を備えたことを特徴とする圧力炊飯器。
【請求項2】
炊飯鍋を収容する炊飯器本体と、
前記炊飯器本体に開閉可能に取り付けられ前記炊飯鍋の開口部を閉塞する蓋体と、
前記蓋体内に設けられ前記炊飯鍋内と外部とを連通する第1および第2の排気通路と、
前記第1排気通路内に設けた第1通気孔を閉塞する第1弁体を有し、前記炊飯鍋内と外部とを遮断して炊飯鍋内を加圧可能な第1調圧弁と、
前記第2排気通路内に設けた第2通気孔を閉塞する第2弁体を有し、前記炊飯鍋内と外部とを遮断して前記第1調圧弁より低い圧力で炊飯鍋内を加圧可能な第2調圧弁と、
2段階で進出可能なロッドを有し、各位置で前記第1弁体または第2弁体を動作させ、各通気孔を開閉する1個の駆動手段と
を備えたことを特徴とする圧力炊飯器。
【請求項3】
前記第1弁体は、前記第1通気孔を転動により閉塞する球状部材からなり、前記駆動手段による非動作状態では前記第1通気孔を開状態とし、動作状態では前記第1通気孔を閉状態とすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の圧力炊飯器。
【請求項4】
前記第2弁体は、前記第2通気孔を付勢により閉塞する被付勢部材からなり、前記駆動手段による動作状態では非動作状態より前記第2通気孔を大きな付勢力で閉塞するようにしたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の圧力炊飯器。
【請求項5】
前記第2弁体は、前記第2通気孔を転動により閉塞する球状部材からなり、前記第2通気孔は、球状部材による開放状態で排気抵抗により前記炊飯鍋内を昇圧可能な開口面積であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の圧力炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−326037(P2006−326037A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−155446(P2005−155446)
【出願日】平成17年5月27日(2005.5.27)
【出願人】(000002473)象印マホービン株式会社 (440)
【Fターム(参考)】