説明

圧油エネルギ回収装置及びこれを用いた建設機械

【課題】電動用デバイスを備えていない建設機械に適用可能であって、油圧回路の負荷圧がリリーフ弁の設定圧力以上になったときにタンクに捨てられる圧油のエネルギを回収し、回収した圧油のエネルギを回生使用できる圧油エネルギ回収装置及びこれを用いた建設機械を提供する
【解決手段】油圧ポンプ2によって発生した圧油のエネルギを回収する圧油エネルギ回収装置であって、吐出回路Lpに管路を介して接続される蓄圧器17と、蓄圧器17の圧力を検出する圧力検出手段18と、リリーフ弁16の下流側に設けた固定絞り24と、吐出回路Lpの管路に設けられ、油圧ポンプ2から吐出される圧油の蓄圧器17への流出/遮断を切り替えるリリーフ切替手段25とを備え、リリーフ切替手段25は、固定絞り24の上流側の圧力が予め設定した圧力を超えたときには、油圧ポンプ2から吐出される圧油を蓄圧器17へ流出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の油圧システムに設けられる圧油エネルギ回収装置及びこれを用いた建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、油圧ショベルは、フロント作業機であるブーム、アーム、及びバケットのそれぞれを駆動する油圧シリンダと、旋回体や走行体のそれぞれを駆動する油圧モータ等からなる複数の油圧アクチュエータを有していて、これらの油圧アクチュエータを適宜操作することにより、土砂の掘削、移動等の作業を行うものである。
【0003】
このような油圧ショベルにおいて、油圧ポンプと、油圧ポンプから吐出される圧油により駆動される複数の油圧アクチュエータと、複数の油圧アクチュエータの作動方向及び作動速度を供給する圧油の切替によりそれぞれ制御する複数の方向切替弁と、この複数の方向切替弁を通ってタンクに連通するセンターバイパス回路とを備えた油圧システムを用いたものがある。
【0004】
複数の方向切替弁のすべてが中立の位置にあるとき、油圧ポンプから吐出されセンターバイパス回路を介しタンクに捨てられる圧油のエネルギを回収し、有効利用できる圧油のエネルギ回収装置として、複数の方向切替弁の下流に位置するセンターバイパス回路に、センターバイパス回路を通ってタンクに流出する圧油のエネルギを電気エネルギに変換する装置を配置したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−049810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来技術において、センターバイパス回路における方向切替弁を通過して出てきた圧油は余剰油なので、この圧油のエネルギにより発電した電気エネルギを回収することは、エネルギの有効活用が図れ、システムの効率を向上させる。
【0007】
このように、上述した従来技術は、システムの効率を向上させることはできるが、電気エネルギを利用する構成要素として、発電機、インバータ、バッテリなどの高価な電動デバイスを必要とする為、装置全体としてコスト高になってしまうという問題があった。また、回収した多大な電気エネルギを有効利用するには、エンジンのトルクをアシストする電動モータや、旋回用油圧モータに代わる旋回用電動モータ等の電動装置が必要となり、このため、これらを有するハイブリッド式建設機械等でなければ適用できないという問題があった。
【0008】
また、一般の油圧ショベルには、油圧機器の損傷を防止するために、油圧回路圧が過大にならないように、所定の圧力以上になると油圧ポンプの吐出油をタンクへ排出するリリーフ弁が設けられている。例えば、油圧ショベルのバケットで岩盤層を掘削する場合等は、アクチュエータの圧油が高圧となり、油圧ポンプの吐出回路の圧力がリリーフ弁の設定圧力以上となる場合がある。このようなときに、油圧ポンプの吐出油をリリーフ弁によりタンクに排出し、油圧機器の損傷を防止する。このようにして、リリーフ弁は、油圧機器の損傷を防止するが、タンクへ排出する吐出油のエネルギを有効に利用できないという問題があった。
【0009】
本発明は、上述の事柄に基づいてなされたもので、その目的は、高価な電動モータやインバータやバッテリ等の電動用デバイスを備えていない建設機械に適用可能であって、油圧回路の負荷圧がリリーフ弁の設定圧力以上になったときにタンクに捨てられる圧油のエネルギを回収し、回収した圧油のエネルギを回生使用できる圧油エネルギ回収装置及びこれを用いた建設機械を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、第1の発明は、油圧ポンプと、前記油圧ポンプにより駆動される複数の油圧アクチュエータと、前記油圧ポンプから吐出される圧油の流量及び方向を制御する複数の方向切替弁と、前記油圧ポンプと前記複数の方向切替弁とを接続する吐出回路と、前記油圧ポンプから吐出される圧油の圧力が設定値以上になったときに圧油をタンクへ排出するリリーフ弁とを有する油圧装置の、前記油圧ポンプによって発生した圧油のエネルギを回収する圧油エネルギ回収装置であって、前記吐出回路に管路を介して接続される蓄圧器と、前記蓄圧器の圧力を検出する圧力検出手段と、前記リリーフ弁の下流側に設けた固定絞りと、前記吐出回路の管路に設けられ、前記油圧ポンプから吐出される圧油の前記蓄圧器への流出/遮断を切り替えるリリーフ切替手段とを備え、前記リリーフ切替手段は、前記固定絞りの上流側の圧力が予め設定した圧力を超えたときには、前記油圧ポンプから吐出される圧油を前記蓄圧器へ流出させ、前記固定絞りの上流側の圧力が予め設定した圧力を超えないときには、前記油圧ポンプから吐出される圧油の前記蓄圧器へ流出を遮断するものとする。
【0011】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記吐出回路と前記蓄圧器との連通/遮断を制御する回生手段と、前記複数の油圧アクチュエータを駆動するために前記複数の方向切替弁を制御する各々の操作指令入力手段とを更に備え、前記回生手段は、前記操作入力手段の入力値に基づいて前記吐出回路と前記蓄圧器とを連通状態に制御することを特徴とする。
【0012】
更に、第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記油圧ポンプは可変容量機構を備えた可変容量型の油圧ポンプであって、前記可変容量機構に指令を出力するトルク指令手段を更に備え、前記トルク指令手段は、前記回生手段が前記吐出回路と前記蓄圧器とを連通状態に制御するときに、減トルク指令を出力することを特徴とする。
【0013】
また、第4の発明は、第1乃至第3の発明のいずれかにおいて、前記リリーフ弁の設定圧力値を変更可能とする設定値変更手段を更に備え、前記設定値変更手段は、前記圧力検出手段で検出された前記蓄圧器の圧力値に応じて、前記リリーフ弁の設定圧力値を制御することを特徴とする。
【0014】
更に、第5の発明は、建設機械であって、第1乃至第4の発明のいずれかを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、油圧回路の負荷圧がリリーフ弁の設定圧力以上になったときに、リリーフ弁からタンクに捨てられる圧油を回収するアキュムレータを設けたので、電動用デバイスを備えていない建設機械に適用可能であって、油圧システムを低コストで製作することができる。また、圧油のエネルギを電気エネルギに変換することなく、そのままアキュムレータに蓄え、アキュムレータに蓄えた圧油のエネルギをメイン回路に回生することができるので、電気エネルギへの変換ロスが無く、エネルギ消費効率が向上し、建設機械の大幅な燃費の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の圧油エネルギ回収装置及びこれを用いた建設機械の第1の実施の形態の構成を示す回路図である。
【図2】図1に示す本発明の圧油エネルギ回収装置及びこれを用いた建設機械の第1の実施の形態における方向切替弁を拡大して示すシンボル図である。
【図3】本発明の圧油エネルギ回収装置及びこれを用いた建設機械の第1の実施の形態における油圧ポンプと回生弁の制御フローを示すフローチャート図である。
【図4】本発明の圧油エネルギ回収装置及びこれを用いた建設機械の第1の実施の形態におけるポンプ容量指令の特性を示す特性図である。
【図5】本発明の圧油エネルギ回収装置及びこれを用いた建設機械の第1の実施の形態における減トルク制御を説明する特性図である。
【図6】本発明の圧油エネルギ回収装置及びこれを用いた建設機械の第1の実施の形態における減トルク指令の特性を示す特性図である。
【図7】本発明の圧油エネルギ回収装置及びこれを用いた建設機械の第2の実施の形態の構成を示す回路図である。
【図8】本発明の圧油エネルギ回収装置及びこれを用いた建設機械の第2の実施の形態におけるリリーフ回収弁及び電磁比例リリーフ弁の制御フローを示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の圧油エネルギ回収装置及びこれを用いた建設機械の実施の形態を図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0018】
図1は本発明の圧油エネルギ回収装置及びこれを用いた建設機械の第1の実施の形態の構成を示す回路図、図2は図1に示す本発明の圧油エネルギ回収装置及びこれを用いた建設機械の第1の実施の形態における方向切替弁を拡大して示すシンボル図である。第1の実施の形態において、本発明の圧油エネルギ回収装置は油圧ショベルに適用したものである。図1において、1は動力源であるエンジン、2はエンジン1に駆動される可変容量型の油圧ポンプを示す。この油圧ポンプ2は可変容量機構として例えば斜板を有していて、この斜板の傾転角を容量制御装置2aで調整することにより油圧ポンプ2の容量(押しのけ容積)を変化させ、圧油の吐出流量を制御している。
【0019】
油圧ポンプ2から吐出される圧油を旋回モータ3、アームシリンダ4、ブームシリンダ5の各アクチュエータへ供給する主回路Lpには、圧油の方向と流量を制御する方向切替弁6〜8と、油圧ポンプ2の過負荷を防止するために、主回路Lp内の圧力を制限するリリーフ弁16と、リリーフ弁16の下流側に圧力信号を発生させる固定絞り24とが設けられている。リリーフ弁16は、油圧配管内の圧力が設定圧力(Pr=Pr_set0)以上に上昇した場合に、主回路Lpの圧油を固定絞り24と戻り回路Ltとを介してタンク12へ逃がすものである。方向切替弁6〜8の下流側にはセンターバイパス回路Lcが設けられている。
【0020】
方向切替弁6〜8は、3位置6ポートの切替弁であって、その両パイロット操作部へ供給されるパイロット圧力により、各スプール位置を切り替えて、油圧ポンプ2からの圧油を各アクチュエータ3〜5に供給し駆動している。ここで、旋回用方向切替弁6は旋回モータ3に、アーム用方向切替弁7はアームシリンダ4に、ブーム用方向切替弁8はブームシリンダ5に、それぞれ対応している。また、各方向切替弁6〜8は、図2に示すように、油圧ポンプ2からの圧油が供給される入口ポート6a,7a,8aと、タンク12に連通する戻り回路Ltに接続される出口ポート6b,7b,8bと、中立位置のときに連通するセンターポート6c,7c,8cと、各アクチュエータ3〜5側に接続する接続ポート6d,6e,7d,7e,8d,8eと、パイロット操作部6f,6g,7f,7g,8f,8gと、中立復帰用のばね6h,6i,7h,7i,8h,8iとを有している。
【0021】
方向切替弁6〜8のパイロット操作部6f,6g,7f,7g,8f,8gへのパイロット圧力がゼロのときには、これら方向切替弁6〜8のスプールは中立位置に配置される。このことにより、各方向切替弁6〜8においてセンターポート6c,7c,8cが連通するので、油圧ポンプ2から供給される圧油は、主回路Lpと各方向切替弁6〜8とを直列に介してセンターバイパス回路Lcへ供給される。
【0022】
センターバイパス回路Lcの一端側は、方向切替弁6〜8の下流側に接続されていて、センターバイパス回路Lcの他端側は、タンク12へ連通する戻り回路Ltと接続されている。戻り回路Ltには、旋回用方向切替弁6,アーム用方向切替弁7,及びブーム用方向切替弁8の出口ポート6b,7b,8bがそれぞれ管路を介して接続されている。
【0023】
主回路Lpは、旋回用方向切替弁6のセンターポート6cの他に、入口ポート6aにアクチュエータである旋回モータ3側からの圧油の流出を防止するロードチェック弁9を介して接続されている。また、主回路Lpは、アーム用方向切替弁7の入口ポート7aとブーム用方向切替弁8の入口ポート8aとにアクチュエータであるアームシリンダ4側とブームシリンダ5側からの圧油の流出を防止するロードチェック弁10,11とを介してそれぞれ接続されている。
【0024】
さらに、主回路Lpは、2位置2ポートの切替弁であるリリーフ回収弁25と油圧ポンプ2からの圧油の流入のみを許可するチェック弁26とを介してアキュムレータ18に接続されている。チェック弁26とアキュムレータ18とは蓄圧回路Laにより接続されている。
【0025】
リリーフ回収弁25は、一端側にばね25bを有し、リリーフ弁16の下流側の圧力信号を指令圧とするように操作部25aに管路を接続して構成されている。指令圧であるリリーフ弁16の下流側の圧力信号がばね25bの所定のばね圧(予め設定された圧力)より低い場合には、ポートは遮断され、主回路Lpと蓄圧回路Laとは連通しない。一方、指令圧が予め設定された圧力を超えるとポートが連通し、主回路Lpから蓄圧回路Laへ圧油が流入する。例えば、主回路Lpの圧力が上昇し、リリーフ弁16が動作すると固定絞り24をリリーフした圧油が通過する。これに伴い固定絞り24の上流側に通過圧力損失が発生し、この圧力がリリーフ回収弁25の操作部に供給され、リリーフ回収弁25を開く。このことにより、主回路Lpの圧油が蓄圧回路Laへ導かれる。
【0026】
蓄圧回路Laに一端側を接続した管路の他端側に2位置2ポートの電磁切替弁である回生弁20が接続され、この回生弁20と直列に蓄圧回路La側からの圧油の流入のみを許可する回生チェック弁21の一端側が接続されている。この回生チェック弁21の他端側は、主回路Lpと接続されている。
【0027】
回生弁20は、一端側にばね20bを有し、コントローラ22からの電気指令が電磁操作部20aに出力されるように構成されている。コントローラから閉指令が出力される場合には、ポートは遮断され、蓄圧回路Laと主回路Lpとは連通しない。一方、開指令が出力されるとポートが連通し、蓄圧回路Laから主回路Lpへ圧油が流入する。
【0028】
各アクチュエータ3〜5への指令入力手段である操作レバーは、旋回レバー13、アームレバー14、及びブームレバー15で構成されている。各操作レバーは図示しないパイロット弁を有していて、各々が操作量にほぼ比例したパイロット圧力を発生する。旋回レバー13のパイロット圧力は、旋回用方向切替弁6の両操作部6f,6gに接続された各パイロット回路に発生し、アームレバー14のパイロット圧力は、アーム用方向切替弁7の操作部7f,7gに接続された各パイロット回路に発生する。同様に、ブームレバー15のパイロット圧力は、ブーム用方向切替弁8の操作部8f,8gに接続された各パイロット回路に発生する。
【0029】
旋回レバー13の各パイロット回路には、これらのパイロット圧力を検出する指令圧力センサ13aと13bとを設け、アームレバー14の各パイロット回路には、これらのパイロット圧力を検出する指令圧力センサ14aと14bとを設けている。同様に、ブームレバー15の各パイロット回路には、これらのパイロット圧力を検出する指令圧力センサ15aと15bとを設けている。これらの指令圧力センサ13a〜15bからの検出信号は、コントローラ22に入力されている。
【0030】
また、蓄圧回路Laと主回路Lpには、それぞれの回路圧力を検出する圧力センサ18,19が設けられていて、各検出信号はコントローラ22に入力されている。コントローラ22からは、油圧ポンプ2の容量制御装置2aに電気指令が出力されると共に、回生弁20の電磁操作部20aに電気指令が出力される。このことにより、コントローラ22が、油圧ポンプ2の容量制御と回生弁20の開閉制御を行う。
【0031】
次に、本発明の圧油エネルギ回収装置及びこれを用いた建設機械の第1の実施の形態における動作について説明する。
図1において、全ての操作レバー13〜15の操作量がゼロの場合、油圧ポンプ2から主回路Lpへ吐出される圧油は、方向切替弁6〜8のセンターポート6c〜8cを介して、全流量がセンターバイパス回路Lcへ供給される。この時、コントローラ22からの指令信号を受けて2aは、油圧ポンプ2の容量を最小としている。
【0032】
次に、操作レバーの1つであるアームレバー14が操作されると、アーム用方向切替弁7が切り替わり、主回路Lpの圧油はアームシリンダ4へ導かれ、ピストンロッドに連結したアームが駆動する。この状態において、アームの負荷が増加すると、主回路Lpの圧力が上昇するが、リリーフ弁16により上限圧が制限されることで、過負荷によるシステムの損傷を防止している。
【0033】
主回路Lpの圧力が上昇し、リリーフ圧力(Pr=Pr_set0)を超えるとリリーフ弁16が開き、固定絞り24に圧油が流入し、固定絞り24の上流に通過抵抗分の圧力を発生させる。この圧力がリリーフ回収弁25の設定圧以上に上昇すると、リリーフ回収弁25が開き、チェック弁26に圧油が導かれる。このリリーフ圧力は、蓄圧回路Laの圧力よりも高いので、チェック弁26が開動作し、主回路Lpの圧油を蓄圧回路Laへ導き、アキュムレータ17で圧油を蓄圧することが出来る。この結果、リリーフ弁16から戻り回路Ltへ捨てられる圧油エネルギを蓄圧回路Laに蓄えることが出来る。
【0034】
このように、リリーフ弁16の動作によって、蓄えられた圧油エネルギは、以下のように回生使用する。
例えば、旋回レバー13が操作されると、旋回用方向切替弁6が切り替わり、主回路Lpの圧油は旋回モータ3へ導かれ、駆動される。コントローラ22は、旋回レバー13の操作により発生するパイロット圧力値を入力し、これらの値と予め定めた設定値とを比較し、入力値が設定値を超えると、回生弁20に開指令を出力する。回生弁20が開動作すると、蓄圧回路Laに蓄えられた圧油は、回生チェック弁21を通り、主回路Lpに合流する。
【0035】
これにより、旋回モータ3が必要とする圧油の流量が蓄圧回路Laから供給されるので、油圧ポンプ2の吐出流量を減らすことが出来る。この結果、エンジン1の出力を減らすことが出来るので、燃費向上が図れる。
【0036】
次に、油圧ポンプ2と回生弁31の制御について図3を用いて説明する。図3は本発明の圧油エネルギ回収装置及びこれを用いた建設機械の第1の実施の形態における油圧ポンプと回生弁の制御フローを示すフローチャート図である。
まず、スタートの状態としては、例えば、オペレータが油圧ショベルのキースイッチ(図示せず)をONにした状態とする。
【0037】
ステップ(S101)では、各操作レバー13〜15の指令圧を検出する。具体的には、各圧力センサ13a〜15bからの各パイロット圧力のデータをコントローラ22に取り込む。
【0038】
ステップ(S102)では、検出した各操作レバーの指令圧の最大値を算出する。具体的には、ステップ(S101)で取り込んだ各パイロット圧力データの中から最大値Pi_maxを算出する。
【0039】
ステップ(S103)では、最大値Pi_maxが予め定めた設定圧力Pi_setより高いか否かの判断を行う。最大値Pi_maxが設定圧力Pi_setより高い場合は、ステップ(S104)に進み、それ以外の場合は、ステップ(S106)へ進む。
【0040】
ステップ(S104)では、蓄圧回路Laの圧力を検出する。具体的には、圧力センサ18からの蓄圧回路Laの圧力Pacのデータをコントローラ22に取り込む。
【0041】
ステップ(S105)では、蓄圧回路Laの圧力Pacが予め定めた回生するのに必要な設定圧力Pac_setより高いか否かの判断を行う。蓄圧回路Laの圧力Pacが設定圧力Pac_setより高い場合は、ステップ(S108)に進み、それ以外の場合は、ステップ(S106)へ進む。
【0042】
ステップ(S106)では、回生弁20へ閉指令を出力する。具体的には、コントローラ22から回生弁20の電磁操作部20aへの励磁信号を遮断する。このことにより、回生弁20は、閉状態となり、主回路Lpと蓄圧回路Laとは遮断される。
【0043】
ステップ(S107)では、油圧ポンプ2のトルク補正制御を実行しない。具体的には、コントローラ22から油圧ポンプ2の容量制御装置2aに対して後述する減トルク指令としてT=0を出力するので、補正信号は付加されない。ステップ(S107)を実行後スタートにリターンする。
【0044】
ステップ(S105)において、蓄圧回路Laの圧力Pacが設定圧力Pac_setより高いと判断された場合に進むステップ(S108)では、回生弁20へ開指令を出力する。具体的には、コントローラ22から回生弁20の電磁操作部20aへの励磁信号を出力する。このことにより、回生弁22は、開動作し連通状態となり、蓄圧回路Laに蓄えられた圧油は、回生チェック弁21を通り、主回路Lpに合流する。
【0045】
ステップ(S109)では、油圧ポンプ2のトルク補正制御を実行する。具体的には、後述する油圧ポンプ減トルク指令値ΔTを演算し、この減トルク指令値に相当する指令値を油圧ポンプ2の容量制御装置2bに対して出力する。ステップ(S109)を実行後ステップ(S101)へ戻る。
【0046】
次に、油圧ポンプ2の容量制御装置2bの容量制御等について図4乃至図6を用いて説明する。図4は本発明の圧油エネルギ回収装置及びこれを用いた建設機械の第1の実施の形態におけるポンプ容量指令の特性を示す特性図、図5は本発明の圧油エネルギ回収装置及びこれを用いた建設機械の第1の実施の形態における減トルク制御を説明する特性図、図6は本発明の圧油エネルギ回収装置及びこれを用いた建設機械の第1の実施の形態における減トルク指令の特性を示す特性図である。図4乃至図6において、図1乃至図3に示す符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0047】
油圧ポンプ2の容量制御装置2aへ出力される指令値は、コントローラ22において、以下のステップで算出されている。
(1)全ての操作レバー13〜15の指令圧である各圧力センサ13a,13b,14a,14b,15a,15bからの各パイロット圧力のデータをコントローラ22に取り込む。
(2)これらデータから最高圧力Pi_maxを演算する。
(3)算出した最高圧力Pi_maxと図4に示す予め設定されているポンプ容量指令特性とに基づき、油圧ポンプ2の指令容量qを算出し、この指令容量qが実現する指令値を容量制御装置2aへ出力している。
【0048】
このように、油圧ポンプ2の吐出容量は、全ての操作レバー13〜15の指令圧の最高圧力から決定されている。
【0049】
次に、減トルク制御について図5及び図6を用いて説明する。通常、油圧ポンプ2はエンジン1のストールを防止する為に、ポンプ吸収トルクを制限している。図5は縦軸をポンプ容量q、横軸をポンプ吐出圧力P(主回路Lpの圧力と等しい)として、ポンプ吐出圧力Pに対応したポンプ容量qの特性を示している。ここで、ポンプ吐出圧力Pが低い値の領域においては、ポンプ容量qは最大容量qmax出力可能であるが、ポンプ吐出圧力Pの増加に伴って制限トルクTを超えないように、ポンプ容量qを減少させている。この制限曲線以下にポンプ容量qを制御することで、ポンプの吸収トルクは制限トルクTを超えることはない。
【0050】
図6は縦軸を減トルク値ΔT、横軸を蓄圧回路圧力Pacとして、蓄圧回路圧力Pacに対応した減トルク値ΔTの特性を示している。減トルク値△Tは、予め設定された蓄圧回路Laの設定圧力Pac_setよりも蓄圧回路Laの圧力Pacが高い圧力の時に、上述した制限トルクTを△Tだけ減少させ、ポンプの吸収トルクを少なくする制御である。
【0051】
このように、蓄圧回路Laの圧力Pacが高ければ高い程、回生可能な動力が大きくなり、その分だけ油圧ポンプ2の出力トルクを少なくすることができる。油圧ショベルの場合、エンジン1の回転数を一定で運転するので、負荷トルクが下がれば、その結果エンジン1の出力を下げることになり、燃費削減効果を得ることが出来る。
【0052】
上述した本発明の圧油エネルギ回収装置及びこれを用いた建設機械の第1の実施の形態によれば、油圧回路の負荷圧がリリーフ弁16の設定圧力(Pr=Pr_set0)以上になったときに、リリーフ弁16からタンク12に捨てられる圧油を回収するアキュムレータ17を設けたので、電動用デバイスを備えていない建設機械に適用可能であって、油圧システムを低コストで製作することができる。また、圧油のエネルギを電気エネルギに変換することなく、そのままアキュムレータ17に蓄え、アキュムレータ17に蓄えた圧油のエネルギを主回路Lpに回生することができるので、電気エネルギへの変換ロスが無く、エネルギ消費効率が向上し、建設機械の大幅な燃費の向上が図れる。
【0053】
また、上述した本発明の圧油エネルギ回収装置及びこれを用いた建設機械の第1の実施の形態によれば、圧油エネルギを圧油の状態で蓄えることができるので、回生使用時の変換装置が不要となり変換ロスも発生しない。この結果、エネルギ消費効率が向上し、建設機械の大幅な燃費の向上が図れる。
【0054】
また、本実施の形態によれば、蓄圧回路Laの圧力Pacに基づく減トルク制御を行っているので、顕著な燃費削減効果を得ることが出来る。
【実施例2】
【0055】
以下、本発明の圧油エネルギ回収装置及びこれを用いた建設機械の第2の実施の形態を図面を用いて説明する。図7は本発明の圧油エネルギ回収装置及びこれを用いた建設機械の第2の実施の形態の構成を示す回路図、図8は本発明の圧油エネルギ回収装置及びこれを用いた建設機械の第2の実施の形態におけるリリーフ回収弁及び電磁比例リリーフ弁の制御フローを示すフローチャート図である。図7及び図8において、図1乃至図6に示す符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0056】
図7に示す本発明の圧油エネルギ回収装置及びこれを用いた建設機械の第2の実施の形態は、大略第1の実施の形態と同様の油圧源と作業機等とで構成されるが、以下の構成が異なる。
【0057】
第1の実施の形態における油圧パイロット式のリリーフ回収弁25を電磁切換式のリリーフ回収弁27に置き換え、設定圧固定であったリリーフ弁16を設定圧可変の電磁比例リリーフ弁28に置き換えている。また、リリーフ弁16の下流側に設けていた固定絞り24を省略している。コントローラ22からは、リリーフ回収弁25の電磁操作部25aと電磁比例リリーフ弁28の電磁操作部28aにそれぞれ電気指令が出力され各制御が行われる。
【0058】
次に、リリーフ回収弁25及び電磁比例リリーフ弁28の制御について図8を用いて説明する。
まず、スタートの状態としては、例えば、オペレータが油圧ショベルのキースイッチ(図示せず)をONにした状態とする。
【0059】
ステップ(S201)では、蓄圧回路Laの圧力Pacを検出する。具体的には、圧力センサ18からの蓄圧回路Laの圧力Pacのデータをコントローラ22に取り込む。
【0060】
ステップ(S202)では、蓄圧回路Laの圧力Pacが予め定めたアキュムレータ17の上限設定圧力Pac_h以上か否かの判断を行う。蓄圧回路Laの圧力Pacが設定圧力Pac_h以上の場合は、YESと判断されてステップ(S207)に進み、設定圧力Pac_h未満の場合は、NOと判断されてステップ(S203)へ進む。
【0061】
ステップ(S203)では、電磁比例リリーフ弁28の設定圧力PrをPr_set1に設定する。具体的には、コントローラ22から電磁比例リリーフ弁28の電磁操作部28aへ設定圧力に相当する電流信号が出力され、この電流入力に対応した所定の圧力(Pr_set1)が設定される。ここで、Pr_set1の値は、上述した第1の実施の形態におけるリリーフ弁16の設定圧力(通常のリリーフ弁設定圧力)Pr_set0よりも高い値であって、主回路Lpを含む油圧機器を保護するための最大限の圧力値としている。これは、後述するようにリリーフ回収弁28の開閉状態に関係なく、主回路Lpの上限圧力を通常のリリーフ弁設定圧力Pr_set0に制限するためである。
【0062】
ステップ(S204)では、主回路Lpの圧力Pdを検出する。具体的には、圧力センサ19からの主回路Lpの圧力Pdのデータをコントローラ22に取り込む。
【0063】
ステップ(S205)では、主回路Lpの圧力Pdが通常のリリーフ弁設定圧力Pr_set0以上か否かの判断を行う。主回路Lpの圧力Pdが設定圧力Pr_set0以上の場合は、YESと判断されてステップ(S206)に進み、設定圧力Pr_set0未満の場合は、NOと判断されてステップ(S208)へ進む。
【0064】
ステップ(S206)では、主回路Lpの圧力Pdが設定圧力Pr_set0以上なので、リリーフ回収弁27へ開指令を出力する。具体的には、コントローラ22からリリーフ回収弁27の電磁操作部27aへの励磁信号を出力する。このことにより、リリーフ回収弁27は開動作し連通状態となり、主回路Lpの圧油は、チェック弁26を介してすべて蓄圧回路Laへ流入する。
【0065】
ステップ(S208)では、主回路Lpの圧力Pdが設定圧力Pr_set0未満なので、リリーフする必要がないためリリーフ回収弁27へ閉指令を出力する。具体的には、コントローラ22からリリーフ回収弁27の電磁操作部27aへの励磁信号を遮断する。このことにより、リリーフ回収弁27は閉状態となり、主回路Lpから蓄圧回路Laへの圧油の流入は遮断される。
【0066】
一方、ステップ(S202)にて蓄圧回路Laの圧力Pacが設定圧力Pac_h以上と判断された場合には、アキュムレータ17に充分圧油が蓄えられていると判断され、ステップ(S207)で、電磁比例リリーフ弁28の設定圧力PrをPr_set0に設定する。具体的には、コントローラ22から電磁比例リリーフ弁28の電磁操作部28aへ設定圧力に相当する電流信号が出力され、この電流入力に対応した所定の圧力(Pr_set0)が設定され、ステップ(S208)へ進む。
【0067】
ステップ(S208)では、リリーフ回収弁27へ閉指令を出力する。このことにより、リリーフ回収弁27は閉状態となり、主回路Lpから蓄圧回路Laへの圧油の流入は遮断される。この結果、アキュムレータ17には、圧油が供給されなくなり、アキュムレータ17を保護することができる。
【0068】
ステップ(S206)とステップ(S208)のいずれかを実行後スタートにリターンする。
【0069】
上述した本発明の圧油エネルギ回収装置及びこれを用いた建設機械の第2の実施の形態によれば、上述した第1の実施の形態と同様な効果を得ることができる。
【0070】
また、上述した本発明の圧油エネルギ回収装置及びこれを用いた建設機械の第2の実施の形態によれば、アキュムレータ17の圧力を圧力センサ18で検出し、この検出圧力に応じて電磁比例リリーフ弁28の設定圧力を制御すると共に、リリーフ回収弁27を通常のリリーフ圧力で動作させているので、リリーフ回収弁27の開閉に関わらず、主回路Lpの上限圧力を制限することができる。また、アキュムレータ17の圧力が高い場合には、リリーフ回収弁27を閉制御して圧油の供給を遮断するので、アキュムレータ17を保護することができる。この結果、油圧機器の信頼性を向上させることができる。
【0071】
さらに、上述した本発明の圧油エネルギ回収装置及びこれを用いた建設機械の第2の実施の形態によれば、コントローラ22にて直接リリーフ回収弁27の開閉を制御するので、第1の実施の形態のようにリリーフ弁16から戻り回路Ltを介してタンク12へ捨てられる一部の圧油が生じない。圧油の全量をアキュムレータ17(蓄圧回路La)に蓄えることが出来るので、エネルギ回収効率を向上させることができる。
【符号の説明】
【0072】
1 エンジン
2 油圧ポンプ
3 旋回用方向切替弁
4 アーム用方向切替弁
5 ブーム用方向切替弁
6 旋回モータ
7 アームシリンダ
8 ブームシリンダ
9 ロードチェック弁
12 タンク
13 旋回レバー
14 アームレバー
15 ブームレバー
16 リリーフ弁
17 アキュムレータ
18 圧力センサ
19 圧力センサ
20 回生弁
21 回生チェック弁
25 リリーフ回収弁
27 リリーフ回収弁
28 電磁比例リリーフ弁
Lp 主回路
Lc センターバイパス回路
La 蓄圧回路
Lt 戻り回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧ポンプと、前記油圧ポンプにより駆動される複数の油圧アクチュエータと、前記油圧ポンプから吐出される圧油の流量及び方向を制御する複数の方向切替弁と、前記油圧ポンプと前記複数の方向切替弁とを接続する吐出回路と、前記油圧ポンプから吐出される圧油の圧力が設定値以上になったときに圧油をタンクへ排出するリリーフ弁とを有する油圧装置の、前記油圧ポンプによって発生した圧油のエネルギを回収する圧油エネルギ回収装置であって、
前記吐出回路に管路を介して接続される蓄圧器と、
前記蓄圧器の圧力を検出する圧力検出手段と、
前記リリーフ弁の下流側に設けた固定絞りと、
前記吐出回路の管路に設けられ、前記油圧ポンプから吐出される圧油の前記蓄圧器への流出/遮断を切り替えるリリーフ切替手段とを備え、
前記リリーフ切替手段は、前記固定絞りの上流側の圧力が予め設定した圧力を超えたときには、前記油圧ポンプから吐出される圧油を前記蓄圧器へ流出させ、前記固定絞りの上流側の圧力が予め設定した圧力を超えないときには、前記油圧ポンプから吐出される圧油の前記蓄圧器へ流出を遮断する
ことを特徴とする圧油エネルギ回収装置。
【請求項2】
請求項1記載の圧油エネルギ回収装置において、
前記吐出回路と前記蓄圧器との連通/遮断を制御する回生手段と、
前記複数の油圧アクチュエータを駆動するために前記複数の方向切替弁を制御する各々の操作指令入力手段とを更に備え、
前記回生手段は、前記操作入力手段の入力値に基づいて前記吐出回路と前記蓄圧器とを連通状態に制御する
ことを特徴とする圧油エネルギ回収装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の圧油エネルギ回収装置において、
前記油圧ポンプは可変容量機構を備えた可変容量型の油圧ポンプであって、前記可変容量機構に指令を出力するトルク指令手段を更に備え、
前記トルク指令手段は、前記回生手段が前記吐出回路と前記蓄圧器とを連通状態に制御するときに、減トルク指令を出力する
ことを特徴とする圧油エネルギ回収装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の圧油エネルギ回収装置において、
前記リリーフ弁の設定圧力値を変更可能とする設定値変更手段を更に備え、
前記設定値変更手段は、前記圧力検出手段で検出された前記蓄圧器の圧力値に応じて、前記リリーフ弁の設定圧力値を制御する
ことを特徴とする圧油エネルギ回収装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の圧油エネルギ回収装置を備えた
ことを特徴とする建設機械。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−2542(P2013−2542A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133636(P2011−133636)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】