説明

圧縮機、圧縮機の製造方法、軸封部材の交換方法、軸封部材と回転動力伝達部材の交換方法

【課題】軸封部材を容易に交換可能な圧縮機を提供することを目的とする。
【解決手段】圧縮機能を有する内部機構が組み付けられた圧縮機(1)の外殻を構成するハウジング(2、3、6)を閉じ、ハウジング(3)に設けられた駆動軸口(110)に、軸封部材(16)を駆動軸口110の軸線方向より組み付け、軸封部材(16)の組み付けられた駆動軸口(110)に、圧縮機内部に回転動力を伝達する回転動力伝達部材(102)を差込み、ハウジング(3)と回転動力伝達部材(102)とをシールすることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、冷凍サイクル等に用いられる開放型圧縮機において、動力伝達シャフトの軸封手段として、ハウジングとシャフトとの間に位置する軸封部材が用いられてきた。(例えば特許文献1)。しかし、軸封部材は、長期の使用によって経年劣化を起こすことがある。経年劣化を起こした軸封部材は交換を行う必要があるが、軸封部材はハウジング内に配置されており、交換を行うには圧縮機のハウジングを分解する必要があるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−197939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記のような問題点に鑑みてなされたもので、軸封部材を容易に交換可能な圧縮機及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するにあたり、請求項1に記載の発明は、圧縮機(1)の外殻を構成し、駆動軸口(110)を具備するハウジング(3)と、ハウジング(3)内に組み付けられた圧縮機構と、駆動軸口(110)に外部より組み付けられた軸封部材(16)と、圧縮機(1)を駆動する外部動力源より回転動力を与えられるプーリー(100)と、プーリー(100)と接続され、圧縮機構の回転動力受け入れ部(108)へと回転動力を伝達する回転体であって、ハウジング(3)の外部より駆動軸口(110)に差し込まれ、軸封部材(16)を貫く回転動力伝達部材(102)とを有することを特徴とする。
【0006】
回転動力伝達部材(102)がハウジング(3)の外部より差し込まれていることにより、回転動力伝達部材(102)を取外すことで軸封部材(16)の取外しを行うことができる。よって、ハウジング(3)を分解することなく軸封部材(16)を交換することができる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、軸封部材(16)は、回転動力伝達部材(102)と摺動接触しているシール部(16)と、シール部(16)と別部材にて構成されるシール部(16)を保持する固定用保持器(104)とから構成されることを特徴とする。
【0008】
シール部(16)と固定用保持器(104)が分離可能な別部材であることにより、シール部(16)だけでなく、シール部(16)と接触する固定用保持器(104)をも交換、もしくは接触部を洗浄することができ、交換後の軸封性能をより確実なものにできる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1と請求項2に記載の発明において、回転動力伝達部材(102)に雄型の結合部と、回転動力受け入れ部(108)に雌型の結合部とを備え、雄型の結合部と雌型の結合部とを連結することで動力を伝達する構造を有することを特徴とする。
【0010】
上記動力伝達構造を有することにより、雌型の結合部側と比較して雄型の結合部側を細くすることができる。よって、雄型の結合部側との接触部摺速が小さくなる為、摺動接触部分の磨耗を低減することができる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1と請求項2と請求項3のいずれか一項に記載の圧縮機において、回転動力伝達部材(102)とプーリー(100)が別部材にて構成されていることを特徴とする
回転動力伝達部材(102)とプーリー(100)が分離可能であるため、軸封部材(16)だけでなく回転動力伝達部材(102)をも交換、もしくは摺動接触部を洗浄することができ、交換後の軸封性能をより確実なものにできる。
請求項5に記載の発明は、圧縮機能を有する内部機構が組み付けられた圧縮機(1)の外殻を構成するハウジング(2、3、6)を閉じ、ハウジング(3)に設けられた駆動軸口(110)に、軸封部材(16)を駆動軸口110の軸線方向より組み付け、軸封部材(16)の組み付けられた駆動軸口(110)に、圧縮機内部に回転動力を伝達する回転動力伝達部材(102)を差込むことを特徴とする。
【0012】
回転動力伝達部材(102)を取外すことで軸封部材(16)の取外しを行うことができる為、ハウジング(3)を分解することなく軸封部材(16)を交換することが可能な圧縮機を製造することができる。
【0013】
請求項6に記載の発明は、圧縮機(1)の外殻を構成するハウジング(3)に設けられた駆動軸口(110)より、圧縮機内部に回転動力を伝達する回転動力伝達部材(102)を引き抜き、回転動力伝達部材(102)を取除いた駆動軸口(110)より、回転動力伝達部材(102)とハウジング(3)との間をシールしていた軸封部材(16)を取外し、新たな軸封部材を駆動軸口(110)に組み付け、新たな軸封部材が組み付けられた駆動軸口(110)に回転動力伝達部材(102)を差し込むことを特徴とする。
【0014】
上記交換手順により、ハウジング(3)を分解することなく軸封部材(16)を交換することができる。
【0015】
請求項7に記載の発明は、圧縮機(1)の外殻を構成するハウジング(3)に設けられた駆動軸口(110)より、圧縮機内部に回転動力を伝達する回転動力伝達部材(102)を引き抜き、回転動力伝達部材(102)を取除いた駆動軸口(110)より、回転動力伝達部材(102)とハウジング(3)との間をシールしていた軸封部材(16)を取外し、新たな軸封部材を駆動軸口(110)に組み付け、新たな軸封部材が組み付けられた駆動軸口(110)に新たな回転動力伝達部材を差し込むことを特徴とする。
【0016】
上記交換手順により、ハウジング(3)を分解することなく軸封部材(16)と回転動力伝達部材(102)とを交換することができる。
【0017】
尚、上記各手段に付した括弧内の符号は、後述する実施例記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例1及び第3実施例における圧縮機を示す断面図である。
【図2】実施例1及び第3実施例における圧縮機を示す断面図である。
【図3】実施例2における圧縮機の一部を示す一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態を図1、図2を用いて説明する。本実施形態は、本発明の圧縮機及び圧縮機の製造方法を車両用空調装置に適用したものである。
【0020】
図1は本実施形態における圧縮機を示す図である。
【0021】
圧縮機1は、車両空調冷凍サイクル用の可変容量コンプレッサである。圧縮機1はフロントハウジング3、シリンダブロック2、リアハウジング6から構成される外殻を持つ。シリンダブロック2の、フロントハウジング3と接する面、及びリアハウジング6と接する面には、図示しないシール部材であるOリングが組み付けられている。前述のフロントハウジング3、シリンダブロック2、リアハウジング6は、シリンダブロック2と、リアハウジング6との間にバルブプレート5が挟み込まれた状態で、図示しないスルーボルトなどによって締結されている。
【0022】
リアハウジング6内には、圧縮される冷媒が吸入される吸入室7が設けられている。また、シリンダブロック2内には、吸入室7より導入された冷媒が圧縮される圧縮室13が複数設けられている。そして、リアハウジング6内には、圧縮された冷媒が吐出される吐出室8が設けられている。
【0023】
前述の吸入室7とシリンダブロック2内に設けられた圧縮室13は、図示しない吸入ポートによって接続されている。そして、前述の吸入ポートには、吸入ポートを開閉する図示しない吸入弁が設けられている。また、図示しない吐出ポートには、前述の吐出弁のリフト量を制限する、図示しないリテーナが設けられている。前述のリテーナは、バルブプレート5に図示しないボルトにより固定されている。
【0024】
フロントハウジング3には、開口部である駆動軸口110が設けられている。また、フロントハウジング3には、斜板室4が設けられている。そして、駆動軸口110にはラジアルベアリング9が圧入固定されている。また、フロントハウジング3には、図示しない軌道輪が設けられている。そして、フロントハウジング3には、前述の軌道輪を介して、ベアリング14が保持されている。
【0025】
シリンダブロック2には、ラジアルベアリング10と、ニードルベアリング11とが組み付けられている。回転動力を伝達するシャフト18は、上記ラジアルベアリング9と、ラジアルベアリング10と、ニードルベアリング11とによって回転可能な状態で支持されている。
【0026】
シャフト18には、ラグプレート19が一体に固定されている。また、ラグプレート19は、ベアリング14と接する反対の面に、ラグプレート側リンク機構部22を備えている。斜板20はシャフト18の軸方向に貫通する円筒部83を備えている。円筒部83内部には、図示しないピンにて、スリーブ82が図示しないピンを中心に稼動可能に固定されている。そして、シャフト18はスリーブ82を貫通している。これにより、斜板20は、シャフト18の軸方向に傾斜することができる。また、斜板20は、シャフト18の軸方向にスライド移動することができる。スリーブ82は、シャフト18軸方向より、フロントハウジング側に設けられたバネ77と、リアハウジング側に設けられたバネ78により、反発力を受けている。バネ77は、圧縮機運転時は圧縮機容量の最小側への制御を補助する。これにより、圧縮機停止時には常に容量の少ない側に保ち、再起動時の動力を低減する。また、バネ78はスリーブ82を最大容量側に付勢する力を与える。これにより、容量復帰制御を助ける役割をする。
【0027】
前述のラグプレート側リンク機構部22と斜板側リンク機構部31がピン30にて、斜板側リンク機構部31に設けられた長穴の範囲にて稼動可能なように結合されている。ラグプレート側リンク機構部22と斜板側リンク機構部31が結合されていることにより、斜板20はシャフト18と連動して回転運動を行う。
【0028】
斜板20が備える斜板側リンク機構部31の反対面には、スラストベアリング55が組み付けられている。そして、前述のスラストベアリング55を斜板20とで挟むように、揺動斜板17が配置される。また、斜板20と揺動斜板17とのシャフト18径方向の間には、ベアリング54がワッシャ57を介してナット56によって組み付けられている。
【0029】
これにより、揺動斜板17に対して斜板20は、シャフト18の周方向に回転することができる。
【0030】
シリンダブロック2には、シリンダブロック側取付け穴60が設けられている。また、フロントハウジング3には、フロントハウジング側取付け穴61が設けられている。そして、シリンダブロック側取付け穴60とフロントハウジング側取付け穴61には、スライドシャフト50が組み付けられている。前述のスライドシャフト50には、ガイドレール51が一体に固定されている。
【0031】
揺動斜板17には、シュー52がピン53により、組み付けられている。また、シュー52は前述のガイドレール51を挟み込むように組みつけられている。これにより、揺動斜板17はガイドレール51に沿ってスライド移動することができる。また、揺動斜板17はガイドレール51に阻まれて、シャフト18周方向の回転を行うことはできない。よって、シャフト18の回転運動は、斜板20によって、シャフト18軸方向の動きとして揺動斜板17に伝達される。
【0032】
シリンダブロック2内には、複数のシリンダボア23が配置されている。揺動斜板17とシリンダボア23はロッド81にて連結されている。ロッド81は、棒状部分と、その両端に形成された2つの球状部分にて構成されている。よって、揺動斜板17には、ロッド81の一方の球状部分がサークリップ85によって連結されている。ロッド81のもう一方の球状部分には、ピストン24がサークリップ87によって連結されている。ピストン24は、揺動斜板17によるシャフト18軸方向の運動をロッド81により伝達される。これにより、ピストン24はシリンダボア23内にて往復運動を行う。
【0033】
リアハウジング6には制御弁28が設けられている。斜板20が収められている斜板室4には、制御弁28により流量を制御された制御ガスが導入される。リアハウジング6、バルブプレート5、シリンダブロック2には、図示しない制御ガスを導入する通路が構成されている。斜板20は導入された制御ガスによって傾きを変化させる。また、斜板室4を減圧する際には、図示しない通路を通じて吸入室7へと制御ガスが抜かれる。この斜板20の傾きの変化により、揺動斜板17の運動量が変化する。よって、揺動斜板17と連動する、ピストン24のストローク量を変化させることができる。
【0034】
フロントハウジング3の開口部には、駆動軸口110が形成されている。駆動軸口110には、フロントハウジング3の外部より、軸封部材ホルダ104が挿入され、サークリップ106にて固定されている。軸封部材ホルダ104には、シャフト18との間を密閉する、弾性変形可能なシール部材であるリップシール16が組み付けられている。このリップシール16をシャフト18が貫き、リップシール16の内面と摺動接触することにより、気密を保つことができる。リップシール16は、サークリップ105にて固定されている。よって、軸封部材ホルダ104は、リップシール16を固定し、所定の位置にて保持する固定用保持器としての機能を持つ。また、軸封部材ホルダ104の外周部分にはシール部材であるOリング107が組み付けられている。これにより、フロントハウジング3と、軸封部材ホルダ104との円筒嵌合面の気密性を確保している。
【0035】
シャフト18のフロントハウジング3側先端部にはシャフト18の軸線方向に窪み、狭まる凹部であるテーパ締結部108が設けられている。このテーパ締結部108にて内部圧縮機構は、回転動力伝達部材であるハブ102より回転動力を受け取る。また、テーパ締結部108内にはネジ穴109が設けられている。テーパ締結部108には、凸型のテーパ部を持つ回転動力伝達部材であるハブ102がセンタボルト103により組みつけられている。また、ハブ102にはボルト101によりプーリー100が締結されており、外部動力によりプーリー100に与えられた回転動力はハブ102へ伝達される。ハブ102は、テーパ締結部108にて生じる摩擦力によりシャフト18に回転動力を伝達することができる。
【0036】
ハブ102はリップシール16内面に摺動可能に内接し、圧縮機内部と外部とを隔絶している。また、リップシール16はフロントハウジング3外部より挿入された軸封部材ホルダ104にサークリップ105にて取外し可能に組みつけられている為、フロントハウジング外部より、取外し交換することができる。
【0037】
次に、本実施形態における圧縮機1の製造方法を、図2を用いて説明する。図2は、圧縮機1の内部圧縮機構を組み付け、フロントハウジング3を閉じた状態を示す図である。尚、図1と同様の部材については同じ符号を付した。
【0038】
上述した斜板20を含む圧縮機構と、フロントハウジング3を組み付けた後、軸封部材ホルダ104外周に設けられた溝部に、弾性変形可能なシール部材であるOリング107を組み付ける。この際、Oリング107にはシリコングリス等の気密性を高め、シール部材を保護する効果を持つオイルを塗布しておくことが好ましい。次に、軸封部材ホルダ104の内面に、リップシール16を組み付ける。このリップシール16にもシリコングリス等の気密性を高め、シール部材を保護する効果を持つオイルを塗布しておくことが好ましい。そして、軸封部材ホルダ104の内面に組み付けられたリップシール16をサークリップ105にて固定する。
【0039】
次に、ラジアルベアリング9が圧入されたフロントハウジング3の駆動軸口110に、軸封部材ホルダ104を組み付ける。そして、駆動軸口110に組み付けられた軸封部材ホルダ104をサークリップ106にて固定する。
【0040】
次に、軸封部材ホルダ104が組み付けられた駆動軸口110にハブ102を差し込む。そして、センタボルト103を、シャフト18のネジ穴109に締結することにより、ハブ102を固定する。その後、ハブ102にプーリー100を組み付ける。ハブ102に設けられたネジ穴と、プーリー100に設けられたネジ穴の位置を合わせた後に、ボルト101にて締結する。
【0041】
上記手順により、フロントハウジングを開けることなく、リップシール16と、軸封部材ホルダ104、プーリー100より分離可能なハブ102等のリップシール16と摺動接触する部品を容易に交換することが可能な圧縮機を製造することができる。
【0042】
次に、本実施形態おける圧縮機の軸封部材の交換方法を説明する。尚、実際の作業に伴い、前もって冷媒を抜き取る等の作業が必要であるが、ここでは割愛する。
【0043】
まず、プーリー100はボルト101にてハブ102に固定されているため、ボルト101を取外す。これにより、プーリー100を取外すことができる。次に、ハブ102をシャフト18に締結しているセンタボルト103を取外す。これによりハブ102とシャフト18の締結が解除され、フロントハウジング3の開口部より、ハブ102を抜き取ることができる。
【0044】
次にフロントハウジング3の開口部より、サークリップ106を取外す。これにより、軸封部材ホルダ104をフロントハウジング3の開口部より取外すことができる。取外した軸封部材ホルダより、サークリップ105を取外す。これにより、軸封部材ホルダよりリップシール16を取外すことができる。
【0045】
この後、取外した各部品の点検及び清掃を行う。点検の結果、必要があれば、リップシール16に加えて、ハブ102と軸封部材ホルダ104、Oリング107を新たなものと交換する。そして、リップシール16に加えて、必要があればハブ102と軸封部材ホルダ104、Oリング107 の交換が終了した後、取外しと逆の手順にて組み付けを行う。
【0046】
以上の様に本実施形態では、フロントハウジングを開けることなく、リップシール16の交換作業を行える圧縮機を構成することができる。また、リップシール16を保持する軸封部材ホルダ104や、プーリー100より分離可能なハブ102等のリップシール16と摺動接触する部品を容易に交換することができる。そして、シャフト18側を凹部、ハブ102側を凸部とするテーパ締結構造により、シャフト18と比較して、ハブ102の凸部を細くすることができる。これにより、リップシール16との摺動接触部分が小さくなる為、リップシール16の磨耗を低減することができる。
【0047】
(第2実施形態)
次に本発明の第2実施形態を図3を用いて説明する。
【0048】
第1実施形態では、プーリー100及び図示しない外部動力源に掛けられた図示しないベルトのテンションによる負荷を、フロントハウジング3内のラジアルベアリング9にて受ける構造であったが、本実施形態では図3に示すプーリー500を支持するラジアルベアリング402を、フロントハウジング400のボス部405の外周と、プーリー500の内面との間に設けている。
【0049】
図3は本実施形態における圧縮機の一部を示す図である。
【0050】
フロントハウジング400は、ボス部405を備えている。
プーリー500の内面には、ラジアルベアリング402がサークリップ512によって固定されている。ラジアルベアリング402が組み付けられたプーリー500は、前述のボス部405に組み付けられた後に、アウタサークリップ506にて固定されている。フロントハウジング400の内部には、シャフト404が組み付けられている。シャフト404の先端部には、シャフト404軸線方向に窪み、狭まる凹部であるテーパ締結部508が設けられている。また、テーパ締結部508内にはネジ穴509が設けられている。テーパ締結部508には、凸型のテーパ部を持つ回転動力伝達部材であるセンタハブ502がセンタボルト503により組みつけられている。
【0051】
フロントハウジング400の内面には、リップシール401が、インナサークリップ505によって組み付けられている。そして、センタハブ502は、リップシール401を貫通し、リップシール401の内面に摺動接触することにより、フロントハウジング400と、センタハブ502との間の気密性を確保している。
【0052】
センタハブ502には、回転防止を目的とした、ピン510が圧入固定されている。また、センタハブ502には、インナハブ501が組み付けられている。前述のインナハブ501は、センタハブ502を貫通するセンタボルト503にて、シャフト404に締結されている。また、前述のインナハブ501の外周には、弾性変形可能なゴムにて構成されるゴムダンパ507を介して、アウタハブ504が組み付けられている。
アウタハブ504と、前述のプーリー500は、プーリーボルト511にて締結されている。これにより、外部動力によりプーリー500に与えられた回転動力はセンタハブ502へ伝達される。センタハブ502は、テーパ締結部508にて生じる摩擦力によりシャフト404に回転動力を伝達することができる。
【0053】
次に本実施形態における圧縮機の製造方法を図3を用いて説明する。尚、上記実施形態と同様の部分については説明を割愛する。
【0054】
上述した斜板を含む圧縮機構と、フロントハウジング400を組付けた後、駆動軸口406の内面にリップシール401を組み付ける。このリップシール401にはシリコングリス等の気密性を高め、シール部材を保護する効果を持つオイルを塗布しておくことが好ましい。その後、駆動軸口406の内面に組み付けられたリップシール401をインナサークリップ505にて固定する。
【0055】
次に、プーリー500の内面にラジアルベアリング402を圧入する。そして、ラジアルベアリング402をサークリップ512にてプーリー500の内面に固定する。その後、ラジアルベアリング402を組み付けたプーリー500をフロントハウジング400のボス部405へと組み付ける。そして、ボス部405の端部にアウタサークリップ506を装着する。これにより、ラジアルベアリング402及びプーリー500はフロントハウジングに回転可能に固定される。
【0056】
次に、ピン510が圧入されたセンタハブ502を、リップシール401を外部より貫くように挿入する。そして、ゴムダンパ507を圧入することにより一体とされたインナハブ501とアウタハブ504を、センタハブ502に重ねる。このとき、インナハブ501に設けられた組み付け穴513に、センタハブ502に組み付けられたピン510が勘合するようにする。そして、センタボルト503にて、インナハブ501と、センタハブ502と、シャフト404とを締結する。
【0057】
次に、アウタハブに設けられた固定穴514と、プーリー500に設けられた固定ネジ穴515とをプーリーボルト511にて締結する。
【0058】
上記手順により、フロントハウジングを開けることなく、リップシール401を容易に交換することが可能な圧縮機を製造することができる。
【0059】
次に、本実施形態おける圧縮機の軸封部材の交換方法を説明する。尚、実際の作業に伴い、前もって冷媒を抜き取る等の作業が必要であるが、ここでは割愛する。
【0060】
まず、インナハブ501より、センタボルト503を取外す。次に、アウタハブ504と、プーリー500とを固定しているプーリーボルト511を取外す。これにより、インナハブ501、ゴムダンパ507、アウタハブ504を取外すことができるようになる。よって、インナハブ501、ゴムダンパ507、アウタハブ504を取外す。次に、センタハブ502をフロントハウジング400の駆動軸口406より抜き取る。
【0061】
次に、インナサークリップ505を駆動軸口406より取外す。これにより、リップシール401を取外すことができるようになる。
【0062】
この後、取外した各部品の点検及び清掃を行う。点検の結果、必要があれば、リップシール401に加えて、センタハブ502を新たなものと交換する。そして、交換が終了した後、取外しと逆の手順にて組付けを行う。
【0063】
以上の様に本実施形態では、フロントハウジングを開けることなく、リップシール401及びリップシール401と摺動接触するセンタハブ502を容易に交換することができる。
【0064】
以上により、フロントハウジングを開けることなく、リップシール401及びリップシール401と摺動接触するセンタハブ502を容易に交換することが可能な圧縮機を提供することができる。また、第1実施形態に示す圧縮機と比較して、ベルトによる荷重に対するプーリー500の負荷を軽減することができる。
【0065】
(他の実施形態)
上記実施形態では、揺動斜板型圧縮機における軸封構造を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、斜板ピストン型圧縮機、クランクピストン型圧縮機、スクロール型圧縮機等においても同様に軸封構造を構成することができる。
【0066】
また、上記実施形態では、ハブ102とシャフト18の締結はテーパ締結構造にて行ったが、本発明はこれに限定されるものではなく、スプライン嵌合やキー嵌合等を用いてもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、ハブ102とシャフト18の回転動力伝達構造として、凹部と凸部によるテーパ締結を用いているが、本発明はこれに限定するものではない。
【0068】
また、上記実施形態では、リップシール16として、弾性変形するゴム素材にて組成されたリップシールを用いているが、本発明はこれに限定されるものではなく、メカシール等を用いるようにしてもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、リップシール16よりも先にOリング107を組み付けたが、本発明はこれに限定されるものではなく、逆の手順にて行ってもよい。
【0070】
また、上記実施形態ではリップシール16が組み付けられた状態の軸封部材ホルダ104を駆動軸口110に組み付けたが、本発明はこれに限定されるものではなく、軸封部材ホルダ104を駆動軸口110に組み付けた後に、リップシール16の組み付けを行ってもよい。
【符号の説明】
【0071】
1…圧縮機
2…シリンダブロック
3…フロントハウジング
4…斜板室
16…軸封部材
18…シャフト
100…プーリー
101…ボルト
102…ハブ
103…センタボルト
104…軸封部材ホルダ
105…サークリップ
106…サークリップ
107…Oリング
108…テーパ締結部
109…ネジ穴
110…駆動軸口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機(1)の外殻を構成し、駆動軸口(110)を具備するハウジング(3)と、
前記ハウジング(3)内に組み付けられた圧縮機構と、
前記駆動軸口(110)に外部より組み付けられた軸封部材(16)と、
前記圧縮機(1)を駆動する外部動力源より回転動力を与えられるプーリー(100)と、
前記プーリー(100)と接続され、前記圧縮機構の回転動力受け入れ部(108)へと回転動力を伝達する回転体であって、前記ハウジング(3)の外部より前記駆動軸口(110)に差し込まれ、前記軸封部材(16)を貫く回転動力伝達部材(102)とを有することを特徴とする圧縮機。
【請求項2】
前記軸封部材(16)は、
前記回転動力伝達部材(102)と摺動接触しているシール部(16)と、
前記シール部(16)と別部材にて構成される前記シール部(16)を保持する固定用保持器(104)とから構成されることを特徴とする請求項1に記載の圧縮機。
【請求項3】
前記回転動力伝達部材(102)に、雄型の結合部と、
前記回転動力受け入れ部(108)に、雌型の結合部とを備え、
前記雄型の結合部と前記雌型の結合部とを連結することで動力を伝達する構造を有することを特徴とする請求項1または2に記載の圧縮機。
【請求項4】
前記回転動力伝達部材(102)と前記プーリー(100)が別部材にて構成されていることを特徴とする請求項1ないし3にいずれか一項に記載の圧縮機。
【請求項5】
圧縮機能を有する内部機構が組み付けられた圧縮機(1)の外殻を構成するハウジング(2、3、6)を閉じ、
前記ハウジング(3)に設けられた駆動軸口(110)に、軸封部材(16)を前記駆動軸口(110)の軸線方向より組み付け、
前記軸封部材(16)の組み付けられた前記駆動軸口(110)に、前記圧縮機内部に回転動力を伝達する回転動力伝達部材(102)を差込むことを特徴とする圧縮機の製造方法。
【請求項6】
圧縮機(1)の外殻を構成するハウジング(3)に設けられた駆動軸口(110)より、
前記圧縮機内部に回転動力を伝達する回転動力伝達部材(102)を引き抜き、
前記回転動力伝達部材(102)を取除いた前記駆動軸口(110)より、前記回転動力伝達部材(102)と前記ハウジング(3)との間をシールしていた軸封部材(16)を取外し、新たな軸封部材を前記駆動軸口(110)に組み付け、
前記新たな軸封部材が組み付けられた前記駆動軸口(110)に前記回転動力伝達部材(102)を差し込むことを特徴とする軸封部材の交換方法。
【請求項7】
圧縮機(1)の外殻を構成するハウジング(3)に設けられた駆動軸口(110)より、
前記圧縮機内部に回転動力を伝達する回転動力伝達部材(102)を引き抜き、
前記回転動力伝達部材(102)を取除いた前記駆動軸口(110)より、前記回転動力伝達部材(102)と前記ハウジング(3)との間をシールしていた軸封部材(16)を取外し、新たな軸封部材を前記駆動軸口(110)に組み付け、
前記新たな軸封部材が組み付けられた前記駆動軸口(110)に新たな回転動力伝達部材を差し込むことを特徴とする軸封部材と回転動力伝達部材の交換方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−174635(P2010−174635A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−15020(P2009−15020)
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【Fターム(参考)】